説明

通信線用の分岐コネクタ

【課題】複数のワイヤハーネスの中継接続と、ワイヤハーネスの通信線同士の分岐接続を1つの分岐接続部で行うことができ、かつ、分岐接続部で発生する伝送波形の歪みを緩和することができる分岐コネクタを提供する。
【解決手段】対向する両側に、夫々通信線に接続した相手方コネクタを嵌合する第1、第2コネクタ嵌合部を隔壁をあけて設けたコネクタハウジングと、前記両側の第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ突出させる複数の端子部をジョイント部の両側より突出させた分岐接続用のバスバーとを備え、前記バスバーの少なくともジョイント部より突出する両側の端子部の基部側を磁性体で被覆していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信線用の分岐コネクタに関し、特に、車載LAN等の通信ネットワークの分岐接続部で生じる伝送波形の歪みを緩和する機能を備えた分岐コネクタとして用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載LAN等の通信ネットワークにおいて、通信線の分岐接続部に発生する伝送波形の歪みを緩和するため、種々の技術が提供されている。
例えば、本出願人は、特開2007−110195号公報(特許文献1)において、図8に示す分岐装置1を提供している。該分岐装置1はハウジング内に、ジョイント部2aと、該ジョイント部2aより突出する複数の端子部2bを備えた分岐接続用のバスバー2を収容し、該バスバー2の各端子部2bに筒状のフェライト3を取り付けている。各端子部2bには通信線4の端末の端子5が接続されて、複数の通信線4が分岐接続される。
このように、バスバー2の端子部2bにフェライト3からなる磁性体を設けることにより、分岐部で発生する伝送波形の歪みを緩和することができる。
なお、特許文献1では、分岐装置1に各通信線4をそれぞれ接続しているが、通信線4の端末に予めコネクタを接続しておき、分岐装置1にコネクタ接続する構成としたものもある。
【0003】
しかしながら、特許文献1の分岐装置1では、分岐装置1の一方側から1つのワイヤハーネスの複数の通信線を接続して分岐接続しているものであるため、1つのバスを複数のワイヤハーネスを接続して形成する場合、複数のコネクタが必要となり、部品点数が増加すると共に、作業工数が増大する問題がある。
ワイヤハーネスは製造工程において別個に製造され、車両配索時にコネクタ接続される。よって、1つのバスを構成するワイヤハーネス同士を接続する場合には、下記2通りの方法にて接続されていた。
接続方法1は、図9(A)に示すように、ワイヤハーネスW/H1の2極端末コネクタ6-1、6−2、6−3を分岐コネクタ7のポートごとに個別に嵌合し、別の分岐方向W/H2も同様に2極端末コネクタ9−1、9−2、9−3を分岐コネクタと嵌合接続する必要がある。
また、接続方法2として、1つのバスを構成するワイヤハーネス同士を接続する場合には、図9(B)に示すように、ワイヤハーネスW/H1の端末コネクタ6を分岐コネクタ7に嵌合し、分岐接続された電線wを中継コネクタ8に接続し、該中継コネクタ8をワイヤハーネスW/H2の端末コネクタ9と嵌合接続する必要がある。
【0004】
さらに、ワイヤハーネスが第1バスと第2バスからなる場合には、図10に示すように、さらに構成が複雑となる。即ち、第1バスのワイヤハーネスW/H3、第2バスのワイヤハーネスW/H4は夫々端末コネクタ6A、6Bを分岐コネクタ7A、7Bに接続し、かつ、端末コネクタ6Aと6Bで分岐接続された電線wA,wBを中継コネクタ8に接続し、該中継コネクタ8を第1、第2バスと接続する他のワイヤハーネスW/H5の端末コネクタ9と接続している。
【0005】
このように、1つのバスを形成するワイヤハーネス同士を接続する場合、複数のバスのワイヤハーネス同士を接続する場合のいずれにおいても、必要なコネクタの個数が増加すると共に、コネクタも極数が多い大型コネクタとなる。
よって、1つの分岐コネクタに設けるフェライトを一体に形成しても、フェライトが少なくとも分岐コネクタの個数分は必要となり、コスト高になる問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−110195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、1つのバスを構成する通信線からなるワイヤハーネス同士を接続し、または、複数のバスを構成する通信線を含むワイヤハーネスを同一バスの通信線同士を1つの分岐コネクタで接続できるようにし、コネクタの個数を低減し、かつ、該1つの分岐コネクタに設ける磁性体で分岐接続部に発生する伝送波形の歪みを緩和することができる分岐コネクタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、対向する両側に、夫々通信線に接続した相手方コネクタを嵌合する第1、第2コネクタ嵌合部を隔壁をあけて設けたコネクタハウジングと、
前記両側の第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ突出させる複数の端子部をジョイント部の両側より突出させた分岐接続用のバスバーとを備え、
前記バスバーの少なくともジョイント部より突出する両側の端子部の基部側を磁性体で被覆していることを特徴とする通信線用の分岐コネクタを提供している。
【0009】
前記構成からなる本発明の通信線用の分岐コネクタによれば、コネクタハウジングの両側に設けた第1、第2コネクタ嵌合部に、別個に設けたワイヤハーネスの端末に接続された相手方コネクタをそれぞれ嵌合接続することにより、コネクタハウジング内の分岐接続用のバスバーを介して別個に設けたワイヤハーネス同士を中継接続するだけでなく、ワイヤハーネスの通信線同士を分岐接続することもできる。即ち、本発明によれば、1つの分岐コネクタで、異なる複数のワイヤハーネス同士の中継接続とワイヤハーネスの通信線同士の分岐接続の両方を実現することができる。
【0010】
これにより、従来例に示したような異なる複数のワイヤハーネス同士の中継接続と、ワイヤハーネスの通信線同士の分岐接続とを異なるコネクタで行った場合と比較して部品点数を低減することができると共に、コネクタの接続作業等の作業工数を低減することができる。また、部品点数を低減したことにより接続構造全体として小型化を図ることもできる。
また、コネクタハウジング内に収容したバスバーの端子部に磁性体を被覆しているため、分岐部で発生する伝送波形の歪みを緩和することができる。
【0011】
前記バスバーのジョイント部を前記第1コネクタ嵌合部に収容して一方側の端子部を該第1コネクタ嵌合部に突出させると共に、該ジョイント部から突出する他方側の前記端子部を前記隔壁を貫通させて前記第2コネクタ嵌合部に突出させていることが好ましい。
前記構成によれば、バスバーの端子部の先端側のみを隔壁を貫通させて第2コネクタ嵌合部に突出させればよいため、端子部の基部側に予め磁性体を被覆した状態でバスバーをコネクタハウジング内に収容して取り付けることができる。よって、バスバーに磁性体を設ける作業をコネクタハウジング外で容易に行うことができる。
【0012】
前記分岐コネクタを介して接続するワイヤハーネスが1つのバスからなる場合には、前記第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ嵌合する前記相手方コネクタは、1つのバスを構成する通信線からなるワイヤハーネスの端末に接続され、前記バスバーを介して1つのバスを構成するワイヤハーネス同士を接続している。
前記構成によれば、分岐コネクタおよび該分岐コネクタに接続されるワイヤハーネス端末のコネクタの極数を少なくして小型のコネクタとすることができる。
前記従来例で示した構成では、通信線同士の分岐接続を端末コネクタ6と分岐コネクタ7の接続のみで行っているため極数が多くなる。これに対し、本発明では、通信線同士の分岐接続を、分岐コネクタの第1コネクタ嵌合部に一方のワイヤハーネス端末のコネクタを接続し、第2コネクタ嵌合部に他方のワイヤハーネス端末のコネクタを接続することにより行っているため、1つあたりのコネクタの極数を低減することができる。
【0013】
また、複数のバスを接続する場合には、前記第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ嵌合する前記相手方コネクタは、複数バスの通信線からなるワイヤハーネスの端末に接続され、前記バスバーは各バス毎に分離して設けて、バス毎にワイヤハーネス同士を接続している。
前記ワイヤハーネスが複数のバスからなる場合、即ち、第1バスの通信線と第2バスの通信線とを集束したワイヤハーネスからなる場合には、従来例で示した構成では各バス毎に分岐コネクタを設けているため、バスの数が増えるほど分岐コネクタの個数も増加する。これに対し、本発明では、ワイヤハーネスが複数のバスを構成する通信線からなる場合でも分岐コネクタの個数は1つであるため、ワイヤハーネスが複数のバスを構成する通信線からなる場合に本発明の部品点数および作業工数を低減する効果が顕著となる。
【0014】
また、相違するバスの通信線は夫々別のワイヤハーネスとして結束し、各ワイヤハーネス毎に前記相手方コネクタを接続し、前記第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ複数の相手方コネクタを嵌合し、各バス毎に分離して設けた前記バスバーと接続してもよい。
【0015】
前記各通信線は差動伝送の平衡通信線路を構成する一対の通信線を備えたツイストペア電線からなる場合には、これら一対の通信線端末の端子を上下2段に端子収容室を設けた前記相手方コネクタに挿入係止している一方、
前記バスバーを上下2段に設け、該バスバーの端子部を前記相手方コネクタの前記端子と接続している。
【0016】
前記磁性体は、前記コネクタハウジング内に収容する全てのバスバーの前記ジョイント部及び該ジョイント部から突設する前記端子部の基部を埋設している塊状の1つの磁性体とし、該磁性体の両側より前記両側の端子部を突出させていることが好ましい。
前記磁性体はフェライトからなり、前記バスバーをモールドするか、若しくは2つの磁性体でバスバーをはめ合わせて一体として、前記第1コネクタ嵌合部に内嵌する1つの塊状に形成することができる。
【0017】
前記構成によれば、分岐コネクタに設ける磁性体を一体化しているため、サイズ、部品点数を大幅に低減することができる。
特に、ワイヤハーネスが複数のバスを構成する通信線からなる場合、従来例で示した構成では分岐コネクタが複数になるため、1つの分岐コネクタに収容する磁性体を一体に形成して1つとしても、分岐コネクタの個数分だけ磁性体が必要となるが、本発明の分岐コネクタでは、バスの数にかかわらず分岐コネクタを1つにすることができるため、従来の磁性体よりトータルの容積を小さくすることができる。また、バスバーと磁性体をモールドすればさらに個数を2個から1個に減らすこともできる。
【0018】
前記磁性体は前記隔壁の両側面に配置して第1、第2コネクタ嵌合部に配置する一対の平板材から形成し、各平板材に前記バスバーの両側の各端子部を夫々貫通させる貫通穴を設けている構成としてもよい。
前記構成によれば、磁性体の個数を2つにすることができ、各端子部にそれぞれ磁性体を設ける場合と比較して部品点数を低減することができ、かつ、端子部への磁性体の取り付けも容易にすることができる。
【0019】
前記磁性体を中空部を有する円筒状とし、前記バスバーの両側の各端子部を前記各磁性体の中空部にそれぞれ貫通させている構成としてもよい。
前記構成によれば、各端子部に磁性体をそれぞれ取り付けるため、磁性体の個数を低減することはできないが、磁性体を端子部の個数が異なるバスバーに汎用することができ、磁性体の汎用性を高めることができる。
【0020】
前記磁性体がフェライトからなることが好ましい。特に、Ni−Znを成分に含む材料で形成されたフェライトであることが好ましい。
また、前記磁性体を材料抵抗の低いMn−Znフェライト、ケイ素鋼板、パーマロイ、アモルファス金属磁性体により形成してもよい。上記材料は導電性部材であるため、この場合には、磁性体と前記バスバーの端子部との間に絶縁物の隙間を設けて非接触としている。
【0021】
前記バスバーで分岐接続されると共に前記磁性体で分岐部に発生する伝送波形の歪みを緩和している前記通信線は、車載LANを構成する通信線からなり、車両に搭載される電子制御ユニットと接続される。
【発明の効果】
【0022】
前述したように、本発明によれば、コネクタハウジングの両側に設けた第1、第2コネクタ嵌合部に、ワイヤハーネスの端末に接続された相手方コネクタを対向して嵌合接続することにより、コネクタハウジング内の分岐接続用のバスバーを介して両側のワイヤハーネス同士を中継接続すると共に、各ワイヤハーネスの通信線同士を分岐接続することもできる。
これにより、両側のワイヤハーネスの通信線の接続と、各ワイヤハーネスの通信線の分岐接続とを、それぞれ異なるコネクタで行った場合と比較して部品点数を低減することができると共に、コネクタの接続作業等の作業工数を低減することができる。
また、コネクタハウジング内に収容したバスバーの端子部に磁性体を被覆しているため、分岐部で発生する伝送波形の歪みを緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の通信線用の分岐コネクタ10は、コネクタハウジング11の対向する両側に第1コネクタ嵌合部11aと第2コネクタ嵌合部11bを備えている。該第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bに、第1ワイヤハーネスW/H1の端末に接続した相手方コネクタ21(以下、コネクタ21と称す)と第2ワイヤハーネスW/H2の端末に接続した相手方コネクタ22(以下、コネクタ22と称す)をそれぞれ嵌合接続することにより、コネクタハウジング11内に収容したバスバー12を介して第1ワイヤハーネスW/H1と第2ワイヤハーネスW/H2を中継接続すると共に、第1ワイヤハーネスW/H1の通信線同士、第2ワイヤハーネスW/H2の通信線同士を分岐接続する構成としている。
【0024】
詳細には、前記分岐コネクタ10は、図2に示すように、樹脂製のコネクタハウジング11の対向する両側に第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bを設け、該第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bを隔壁11cで仕切っている。該隔壁11cには、後述するバスバー12の端子部12bを貫通させるための貫通穴11dを複数穿設している。
前記第1コネクタ嵌合部11aの周壁内面に段差部11eを設け、該段差部11eから隔壁11cまでの間の空間を磁性体収容空間11fとしている。該磁性体収容空間11fを囲む周壁内面には、磁性体13を係止固定するための係止爪11gを突設している。また、第1コネクタ嵌合部11aの開口端側の周壁内面にコネクタ21を係止固定するための係止溝11hを設けている。同様に、第2コネクタ嵌合部11bの開口端側の周壁内面にもコネクタ22を係止固定するための係止溝11iを設けている。
【0025】
前記コネクタハウジング11内に収容される分岐接続用のバスバー12は、導電性金属板を所要形状に打ち抜いて形成しており、帯状のジョイント部12aと、該ジョイント部12aの両端縁より突出する複数のタブ状の端子部12bとからなる。本実施形態では、1つのバスバー12のジョイント部12aより両側に3つずつ端子部12bを突設している。
また、本実施形態では、図2(A)に示すように、バスバー12を上下2段で配置し、かつ、図2(B)に示すように、水平方向に2列で配置して、同一形状のバスバー12を合計4個配置している。
前記バスバー12のうち、一方の上下2段の2つのバスバー(図2(B)中の上側)を後述する第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の第1バスを構成するツイストペア電線20Aと接続される第1バスバー12Aとし、他方の上下2段の2つのバスバー(図2(B)中の下側)を第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の第2バスを構成するツイストペア電線20Bと接続される第2バスバー12Bとしている。
【0026】
前記4個全てのバスバー12を、図1(A)に示すように、粉末状のフェライトを固めて塊状とした1つの磁性体13でモールドして、該バスバー12のジョイント部12aと端子部12bの基部側を磁性体13に埋設し、端子部12bの先端側を磁性体13の両側より突出させている。
前記磁性体13は、Ni−Znを成分に含む材料で形成されたフェライトからなり、コネクタハウジング11の第1コネクタ嵌合部11aに設けた磁性体収容空間11fに内嵌される直方体形状としている。
一体に形成したバスバー12と磁性体13を、コネクタハウジング11の第1コネクタ嵌合部11aの先端開口より挿入し、図2に示すように、バスバー12のジョイント部12aおよび磁性体13を第1コネクタ嵌合部11aの磁性体収容空間11fに収容し、磁性体13を係止爪11gで係止して、バスバー12および磁性体13を位置決め固定している。このとき、バスバー12の一方側の端子部12bを第1コネクタ嵌合部11aに突出させると共に、他方側の端子部12bを隔壁11cの貫通穴11dを貫通させて第2コネクタ嵌合部11b内に突出させている。
【0027】
前記分岐コネクタ10により接続される第1ワイヤハーネスW/H1と第2ワイヤハーネスW/H2は、車載LANのCAN通信回路を構成するものであり、各通信線は差動伝送の平衡通信線路を構成する一対の通信線を備えたツイストペア電線20からなる。該ツイストペア電線20は、CAN−H回路を構成する通信線20HとCAN−L回路を構成する通信線20Lを撚り合わせて形成しており、ツイストペア電線20を複数組集束して第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2をそれぞれ形成している。
本実施形態では、第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2共にそれぞれ6組のツイストペア電線20を集束しており、6組のツイストペア電線20のうち、3組のツイストペア電線20Aが第1バスを構成し、残りの3組のツイストペア電線20Bが第2バスを構成する。
【0028】
前記第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の各通信線20H、20Lの端末に雌端子23を接続し、該雌端子23をコネクタ21、22の端子収容室21a、22aに挿入係止して、第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の端末にコネクタ21、22を接続している。コネクタ21、22の端子収容室21a、22aは、分岐コネクタ10のバスバー12に設けた端子部12bと対応するように、上下2段で並設している。図3(A)に示すように、上段の端子収容室21a、22aには、ツイストペア電線20のうちの通信線20Hの端末に接続された雌端子23が収容される一方、下段の端子収容室21a、22aには、ツイストペア電線20のうちの通信線20Lの端末に接続された雌端子23が収容されている。
【0029】
前記第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の端末に接続されたコネクタ21、22を、図3に示すように、分岐コネクタ10の第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bに嵌合接続すると、第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の各通信線20H、20L端末の雌端子23が分岐コネクタ10のバスバー12の端子部12bと接続される。このとき、コネクタ21、22に設けた係止片21b、22bの係止爪21c、22cがコネクタハウジング11の係止溝11h、11iにそれぞれ挿入係止されて、分岐コネクタ10の第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bにコネクタ21、22が収容固定される。
【0030】
詳細には、第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の第1バスを構成するツイストペア電線20Aのうち、一方の通信線20H同士が上段の第1バスバー12A−1を介して接続されると共に、他方の通信線20L同士が下段の第1バスバー12A−2を介して接続される。
同様に、第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2の第2バスを構成するツイストペア電線20Bのうち、一方の通信線20H同士が上段の第2バスバー12B−1を介して接続されると共に、他方の通信線20L同士が下段の第2バスバー12B−2を介して接続される。
即ち、第1ワイヤハーネスW/H1の通信線と第2ワイヤハーネスW/H2の通信線が各バス毎に全て接続されている。
【0031】
前記第1ワイヤハーネスW/H1と第2ワイヤハーネスW/H2とは、ワイヤハーネスの製造工程において、それぞれ別個に製造されるものであり、第1ワイヤハーネスW/H1の端末に接続されたコネクタ21と第2ワイヤハーネスW/H2の端末に接続されたコネクタ22は、それぞれワイヤハーネスの車両配索時に第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bに嵌合接続される。
これにより、コネクタハウジング11内のバスバー12を介して第1ワイヤハーネスW/H1と第2ワイヤハーネスW/H2が中継接続されると共に、第1ワイヤハーネスW/H1の通信線同士、第2ワイヤハーネスW/H2の通信線同士が分岐接続される。
前記第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2のコネクタ21、22が接続された端末と反対側の端末には、車両に搭載される電子制御ユニット(図示せず)が接続される。
【0032】
前記構成によれば、コネクタハウジング11の両側に設けた第1、第2コネクタ嵌合部11a、11bに第1、第2ワイヤハーネスW/H1、W/H2のコネクタ21、22をそれぞれ接続することにより、コネクタハウジング11内のバスバー12を介して同一バス路線となる2つのワイヤハーネス同士を中継接続すると共に、第1ワイヤハーネスW/H1の通信線同士、第2ワイヤハーネスW/H2の通信線同士を分岐接続することもできる。即ち、前記分岐コネクタ10によれば、1つの分岐コネクタ10で、第1ワイヤハーネスW/H1の通信線と第2ワイヤハーネスW/H2の通信線の接続、および、第1ワイヤハーネスW/H1の通信線同士の分岐接続、第2ワイヤハーネスW/H2の通信線同士の分岐接続の両方を実現することができる。
これにより、第1ワイヤハーネスW/H1と第2ワイヤハーネスW/H2の中継接続と、ワイヤハーネスの通信線同士の分岐接続とを異なるコネクタで行った場合と比較して部品点数を低減することができると共に、コネクタの接続作業等の作業工数を低減することができる。
【0033】
また、コネクタハウジング11内に収容するバスバー12の端子部12bの基部側を磁性体13に埋設しているため、分岐部で発生する伝送波形の歪みを磁性体13により緩和することができる。また、分岐コネクタ10の磁性体13を一体に形成して1つとして、この1つの磁性体13に全てのバスバー12の端子部12bの基部を埋設しているため、磁性体13の個数を大幅に低減することができる。
なお、第1ワイヤハーネスW/H1と第2ワイヤハーネスW/H2が2つのバスからなる通信線で構成している場合に限らず、3つ以上のバスからなる通信線で構成してもよく、この場合には、バスの数に合わせて各段のバスバーの個数も3個以上としている。
【0034】
図4に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、バスバー12の端子部12bに取り付ける磁性体の形状を第1実施形態と相違させている。
本実施形態の磁性体33−1、33−2は、図4(A)に示すように矩形の平板材とし、該磁性体33−1、33−2にバスバー12の端子部12bを貫通させるための貫通穴33aを複数設けている。該貫通穴33aはバスバー12の端子部12bと略同一幅とし、磁性体33−1、33−2の貫通穴33aにバスバー12の端子部12bを圧入する構成としている。前記磁性体33−1、33−2は、Ni−Znを成分に含む材料で形成されたフェライトからなる。
【0035】
本実施形態では、前記磁性体33を2つ設け、バスバー12のジョイント部12aから一方側へ突出する端子部12bを一方の磁性体33の貫通穴33aに貫通させると共に、ジョイント部12aから他方側へ突出する端子部12bを他方の磁性体33の貫通穴33aに貫通させて、端子部12bの基部に磁性体33を取り付け、該磁性体33をバスバー12のジョイント部12aの両側に配置している。
【0036】
前記のように磁性体33を取り付けたバスバー12をコネクタハウジング11の第1コネクタ嵌合部11aに挿入し、2つの磁性体33を第1コネクタ嵌合部11aの奥端に設けた磁性体収容空間11f内に内嵌して位置決め固定している。このとき、第1実施形態と同様、バスバー12のジョイント部12aを第1コネクタ嵌合部11aの磁性体収容空間11fに配置し、バスバー12の一方側の端子部12bを第1コネクタ嵌合部11aに突出させると共に、他方側の端子部12bを隔壁11cの貫通穴11dを貫通させて第2コネクタ嵌合部11b内に突出させている。
【0037】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、1つの分岐コネクタ10で、異なるワイヤハーネス同士の中継接続とワイヤハーネスの通信線同士の分岐接続の両方を実現することができると共に、バスバー12の端子部12bの基部側を磁性体33の貫通穴33aに貫通させているため、分岐部で発生する伝送波形の歪みを磁性体33により緩和することができる。
また、バスバー12に磁性体33を取り付けた状態でコネクタハウジング11内に収容する構成としているため、コネクタハウジング11外でバスバー12に磁性体33を容易に取り付けることができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
図5に、第2実施形態の第1変形例を示す。
本変形例では、第2コネクタ嵌合部11bの構造と磁性体33の取付位置を第2実施形態と相違させている。
詳細には、第1コネクタ嵌合部11aと同様、第2コネクタ嵌合部11bの周壁内面にも段差部11eを設けて、該段差部11eから隔壁11cまでの空間を磁性体収容空間11fとしている。該磁性体収容空間11fの周壁内面には磁性体33を位置決め固定するための係止爪11gを設けている。
【0039】
前記バスバー12の一方の端子部12bにのみ磁性体33を取り付けた状態で、該バスバー12と磁性体33を第1コネクタ嵌合部11aに挿入するのに対して、他方の端子部12bに取り付ける磁性体33は第2コネクタ嵌合部11bに挿入している。第2コネクタ嵌合部11bに挿入された磁性体33の貫通穴33aに、隔壁11cの貫通穴11dを通して第2コネクタ嵌合部11bに突出する端子部12bが圧入され、磁性体33が第2コネクタ嵌合部11bの磁性体収容部11fに内嵌固定される。
なお、第1コネクタ嵌合部11aに挿入される磁性体33は、バスバー12を第1コネクタ嵌合部11aに挿入した後にバスバー12に取り付けてもよい。
他の構成及び作用効果は第2実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
なお、前記バスバーのジョイント部を、コネクタハウジング11の成形時にモールドして隔壁に埋設し、該ジョイント部から両側の端子部を第1、第2コネクタ嵌合部に突出させておき、該第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ端子部が貫通する貫通穴をあけた平板状の磁性体を嵌合してもよい。
【0041】
図6に、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、コネクタハウジング11内に収容するバスバー12を各段に1つとしており、同一段に配置される全ての端子部12bがジョイント部12aにより連結されている。
前記分岐コネクタ10に接続される第1、第2ワイヤハーネスは1つのバスを構成する通信線のみからなる。
【0042】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、1つの分岐コネクタ10で、異なるワイヤハーネス同士の中継接続とワイヤハーネスの通信線同士の分岐接続の両方を実現することができると共に、バスバー12の端子部12bの基部側を磁性体13に埋設しているため、分岐部で発生する伝送波形の歪みを磁性体13により緩和することができる。
また、前記実施形態と同様のコネクタハウジング11を用いると、分岐コネクタ10に接続できる1つのバスあたりの通信線の本数を増加させることができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
また、第2、第3実施形態の磁性体を本実施形態のバスバーに取り付ける構成としてもよい。
【0043】
図7に、本発明の第4実施形態を示す。
本実施形態では、バス毎に設けたワイヤハーネスW/H3、W/H4、W/H5、W/H6の端末にそれぞれコネクタ21A、21B、22A、22Bを接続している。コネクタ21A、21Bを分岐コネクタ10の第1コネクタ嵌合部11aに嵌合する一方、コネクタ22A、22Bを第2コネクタ嵌合部11bに嵌合して、ワイヤハーネスW/H3とW/H5を第1バスバー12Aを介して接続して第1バスを構成し、ワイヤハーネスW/H4とW/H6を第2バスバー12Bを介して接続して第2バスを構成している。
上記構成とすると、ワイヤハーネスはバス毎に形成しておくことができる。
なお、本実施形態では、コネクタハウジング11、バスバー12および磁性体の構成を第1実施形態と同様の構成としているが、これらをいずれの実施形態の構成としてもよい。
【0044】
本発明の第1〜第4実施形態において、用いている磁性体がケイ素鋼板、パーマロイ、アモルファス磁性体などの金属磁性体もしくは材料抵抗が低いMn−Znのフェライトを使う場合は、前記バスバーの端子部との間に絶縁物を挟んで隙間を設けて非接触として使用している。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の分岐コネクタは、車載LAN・OA(Office Automation)・FA(Factory Automation)等の通信回路に好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の分岐コネクタと該分岐コネクタに接続するワイヤハーネスを示す概略図、(B)は磁性体を設けたバスバーの斜視図である。
【図2】分岐コネクタを示し(A)は垂直断面図、(B)は水平断面図である。
【図3】分岐コネクタにワイヤハーネスのコネクタを接続した状態を示し、(A)は垂直断面図、(B)は水平断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示し、(A)は磁性体の斜視図、(B)は分岐コネクタの垂直断面図、(C)は分岐コネクタの水平断面図である。
【図5】第2実施形態の第1変形例を示し、(A)は分岐コネクタの垂直断面図、(B)は分岐コネクタの水平断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す図面である。
【図7】本発明の第4実施形態を示す図面である。
【図8】従来例を示す図面である。
【図9】(A)(B)はワイヤハーネスが1つのバスからなる場合の従来例の問題点を示す図面である。
【図10】ワイヤハーネスが2つのバスからなる場合の従来例の問題点を示す図面である。
【符号の説明】
【0047】
10 分岐コネクタ
11 コネクタハウジング
11a 第1コネクタ嵌合部
11b 第2コネクタ嵌合部
12 バスバー
12a ジョイント部
12b 端子部
13 磁性体
20A 第1バスを構成するツイストペア電線
20B 第2バスを構成するツイストペア電線
21、22 コネクタ
33 磁性体
33a 貫通穴
43 磁性体
43a 中空部
W/H1 第1ワイヤハーネス
W/H2 第2ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する両側に、夫々通信線に接続した相手方コネクタを嵌合する第1、第2コネクタ嵌合部を隔壁をあけて設けたコネクタハウジングと、
前記両側の第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ突出させる複数の端子部をジョイント部の両側より突出させた分岐接続用のバスバーとを備え、
前記バスバーの少なくともジョイント部より突出する両側の端子部の基部側を磁性体で被覆していることを特徴とする通信線用の分岐コネクタ。
【請求項2】
前記バスバーのジョイント部を前記第1コネクタ嵌合部に収容して一方側の端子部を該第1コネクタ嵌合部に突出させると共に、該ジョイント部から突出する他方側の前記端子部を前記隔壁を貫通させて前記第2コネクタ嵌合部に突出させている請求項1に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項3】
前記第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ嵌合する前記相手方コネクタは、1つのバスを構成する通信線からなるワイヤハーネスの端末に接続され、前記バスバーを介して1つのバスを構成するワイヤハーネス同士を接続しており、
あるいは、前記第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ嵌合する前記相手方コネクタは複数バスの通信線からなるワイヤハーネスの端末に接続され、前記バスバーは各バス毎に分離して設けて、バス毎にワイヤハーネス同士を接続している請求項1または請求項2に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項4】
バス毎に設けたワイヤハーネスの端末にそれぞれ前記相手方コネクタを接続し、前記第1、第2コネクタ嵌合部にそれぞれ複数の相手方コネクタを嵌合し、各バス毎に分離して設けた前記バスバーと接続している請求項1または請求項2に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項5】
前記各通信線は差動伝送の平衡通信線路を構成する一対の通信線を備えたツイストペア電線からなり、これら一対の通信線端末の端子を上下2段に端子収容室を設けた前記相手方コネクタに挿入係止している一方、
前記バスバーを上下2段に設け、該バスバーの端子部を前記相手方コネクタの前記端子と接続している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項6】
前記磁性体は、前記コネクタハウジング内に収容する全てのバスバーの前記ジョイント部及び該ジョイント部から突設する前記端子部の基部を埋設している塊状の1つの磁性体とし、該磁性体の両側より前記両側の端子部を突出させている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項7】
前記磁性体はフェライトからなり、前記バスバーをモールドして前記第1コネクタ嵌合部に内嵌する1つの塊状に形成している請求項6に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項8】
前記磁性体は前記隔壁の両側面に配置して第1、第2コネクタ嵌合部に配置する一対の平板材から形成し、各平板材に前記バスバーの両側の各端子部を夫々貫通させる貫通穴を設けている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項9】
前記磁性体を中空部を有する円筒状とし、前記バスバーの両側の各端子部を前記各磁性体の中空部にそれぞれ貫通させている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項10】
前記磁性体がフェライトからなる請求項8または請求項9に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項11】
前記磁性体はケイ素鋼板、パーマロイ、アモルファス磁性体もしくは材料抵抗が低いMn−Znのフェライトからなり、該磁性体と前記バスバーの端子部との間に隙間を設けて非接触としている請求項8または請求項9に記載の通信線用の分岐コネクタ。
【請求項12】
前記バスバーで分岐接続されると共に前記磁性体で分岐部に発生する伝送波形の歪みを緩和している前記通信線は、車載LANを構成する通信線からなり、車両に搭載される電子制御ユニットと接続される請求項1乃至請求項11に記載の通信線用の分岐コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−176688(P2009−176688A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16952(P2008−16952)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】