説明

通信装置、通信システムおよび通信方法

【課題】データの種類および目的等に応じて適切にデータ伝送を行なうことが可能な通信装置、通信システムおよび通信方法を提供する。
【解決手段】通信装置は、複数個の論理チャネルを含んだ周波数の異なる複数個の通信信号を通信相手から受信する受信部62と、受信した通信信号の回線状態を測定する測定部53と、論理チャネルの各々に通信信号を割り当てる通信信号割り当て部51と、論理チャネルごとにマージン値を設定し、対応する論理チャネルに設定したマージン値を通信信号のマージン値とするマージン設定部55と、測定した回線状態から通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部51と、通信信号の割り当て結果および決定した通信速度を通信相手に通知する送信部61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システムおよび通信方法に関し、特に、周波数の異なる複数個の信号を用いて通信する通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電話回線を利用して高速のデータ通信を行なうxDSL(x Digital Subscriber Line:デジタル加入者線)方式には、たとえばADSL(Asymmetric DSL:非対称デジタル加入者線)およびVDSL(Very high-bit-rate DSL:超高速デジタル加入者線)などがある。
【0003】
xDSLの変調方式には、使用する伝送周波数帯域を複数の細かい帯域に分けて通信を行なうDMT(Discrete Multi-Tone:離散マルチトーン)変調方式がある。たとえば、フルレートADSL(8Mbps/12Mbps)では、約1MHzの伝送周波数帯域を256個のサブチャネル(4kHzの帯域幅)に分割している。
【0004】
DMT変調方式を用いたマルチキャリア通信システムでは、データ通信を開始する前に、互いに接続された通信装置間の回線状態をチェックするトレーニングを行なう。このトレーニングでは、分割されたサブチャネルごとに信号対雑音比(以下、SNR(Signal to Noise Ratio)とも称する。)を観測し、観測結果に応じて、サブチャネルの搬送波であるサブキャリアに割り当てるビット数の配分を設定する。これにより、回線状態に応じた通信速度が自動的に設定される(ベストエフォート方式)。トレーニング完了後、通信装置間のリンク(接続)が確立されると、設定された通信速度でデータ通信が開始される。通常は、データ通信中において通信速度の動的な変更は行なわない。
【0005】
また、xDSL装置では、測定したSNRから所定のマージン値(以下、SNRマージンとも称する。)を減算したSNRの条件下で通信信号が所定の受信品質を満たすように各サブキャリアにビット数を配分する。すなわち、SNRマージンは伝送誤りを防止するためのマージン値である。ここで、SNRは各サブチャネルで異なり、xDSLの一般的な使用条件では周波数の低いサブチャネルほどSNRが大きい。SNRマージンを設定することにより伝送誤りに対する通信信号の耐性を調整することができる。
【0006】
また、xDSL装置では、伝送時のバースト誤りの影響を低減するため、伝送データを時間軸方向に分散させて伝送するインタリーブ処理が採用されている。xDSL装置では、このインタリーブ処理とFEC(Forward Error Correction)およびCRC(Cyclic Redundancy Check)とを組み合わせた符号化処理が行なわれている。ここで、インタリーブ処理のパラメータとして、時間軸における伝送データの分散度合いを決めるインタリーブ深さがある。このインタリーブ深さを設定することによりバースト誤りに対する通信信号の耐性を調整することができる。すなわち、インタリーブ深さが大きくなるほどバースト誤りに対する通信信号の耐性が向上する。その一方で時間軸における伝送データの分散度合いが大きくなるため、ある伝送データ集合の最終データが受信側に到着する時間が大きくなり、伝送遅延時間が増大する。なお、インタリーブ深さの設定が1である、とはインタリーブ処理が行なわれないことを意味する。
【0007】
ところで、一般的な電話回線は、複数の回線を束ねた電話ケーブルに収容されるため、近接する2つの電話回線間では、電磁的な結合による漏話(クロストーク)が生じる。QOS(Quality of Service)の観点から、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)およびFTP(File Transfer Protocol)によるデータのダウンロードにおいては伝送速度が比較的小さくても差し支えはなく、また、伝送誤りが生じた場合にデータ再送を行なうことも許容される。しかしながら、近年、リアルタイム伝送を利用したIP電話、テレビ電話、対戦型ゲームおよびビデオ配信等の需要が増加している。たとえば映像のストリーミング配信では大容量のデータを伝送し、かつ配信が途切れないように誤り率を小さくして通信の安定化を図る必要がある。さらに、通話用データでは伝送遅延時間を小さくする必要がある。
【0008】
ここで、国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU−T)で勧告化されたG.992.1(非特許文献1参照)では、ADSL通信を行なう2台の通信装置間の物理的な伝送路1個に対して、インタリーブ深さの異なる2個の論理的なデータパス(以下、論理チャネルとも称する。)を使用できることが定められている。このようなxDSL装置では、インタリーブ深さを設定することにより伝送誤りに対する通信信号の耐性を調整することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「非対称デジタル加入者線(ADSL)送受信機」,ITU-T勧告 G.992.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、SNRマージンを大きく設定すると誤り率が小さくなるが、サブキャリアに割り当てるビット数が減ることから伝送速度が小さくなる。
【0011】
ここで、非特許文献1記載の通信装置では、すべてのサブキャリアで同一のSNRマージンしか設定できない。このため、要求される誤り率の小さい方の論理チャネルにあわせて各サブキャリアのSNRマージンを大きく設定する必要があり、いずれか一方の論理チャネルの伝送速度が必要以上に小さくなってしまう。したがって、非特許文献1記載の通信装置では、データの種類および目的等に応じて適切にデータ伝送を行なうことができないという問題点があった。
【0012】
それゆえに、本発明の目的は、データの種類および目的等に応じて適切にデータ伝送を行なうことが可能な通信装置、通信システムおよび通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信装置は、複数個の論理チャネルを含んだ周波数の異なる複数個の通信信号を通信相手から受信する受信部と、受信した複数個の通信信号の回線状態を測定する測定部と、複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の通信信号を割り当てる通信信号割り当て部と、論理チャネルごとにマージン値を設定し、通信信号に対応する論理チャネルに設定したマージン値を通信信号のマージン値として決定するマージン設定部と、測定した回線状態から通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部と、通信信号の割り当て結果および決定した通信速度を通信相手に通知する送信部とを備える。
【0014】
またこの発明のさらに別の局面に係わる通信装置は、複数個の論理チャネルを含んだ周波数の異なる複数個の通信信号を通信相手に送信する送信部と、通信相手が測定した複数個の通信信号の回線状態を通信相手から取得する受信部と、複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の通信信号を割り当てる通信信号割り当て部と、論理チャネルごとにマージン値を設定し、通信信号に対応する論理チャネルに設定したマージン値を通信信号のマージン値として決定するマージン設定部と、取得した回線状態から通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において通信相手が受信する複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部とを備え、送信部は、決定した通信速度で複数個の通信信号を通信相手に送信する。
【0015】
好ましくは、通信信号割り当て部は、測定された回線状態および設定された論理チャネルのマージン値に基づいて、複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の通信信号を割り当てる。
【0016】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信システムは、第1の通信装置および第2の通信装置を備える通信システムであって、第1の通信装置は、周波数の異なる複数個の通信信号を第2の通信装置に送信する送信部を備え、第2の通信装置は、第1の通信装置から複数個の通信信号を受信する受信部と、受信した複数個の通信信号の回線状態を測定する測定部と、複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の通信信号を割り当てる通信信号割り当て部と、論理チャネルごとにマージン値を設定し、通信信号に対応する論理チャネルに設定したマージン値を通信信号のマージン値として決定するマージン設定部と、測定した回線状態から通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部と、通信信号の割り当て結果および決定した通信速度を第1の通信装置に通知する送信部とを備え、第1の通信装置における送信部は、通知された通信速度で複数個の通信信号を第2の通信装置に送信する。
【0017】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信方法は、第1の通信装置および第2の通信装置を備える通信システムにおける通信方法であって、第1の通信装置が、周波数の異なる複数個の通信信号を第2の通信装置に送信するステップと、第2の通信装置が、第1の通信装置から受信した複数個の通信信号の回線状態を測定するステップと、第2の通信装置が、複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の通信信号を割り当て、かつ、論理チャネルごとにマージン値を設定し、通信信号に対応する論理チャネルに設定したマージン値を通信信号のマージン値として決定するステップと、第2の通信装置が、測定した回線状態から通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定するステップと、第2の通信装置が、通信信号の割り当て結果および決定した通信速度を第1の通信装置に通知するステップと、第1の通信装置が、通知された通信速度で複数個の通信信号を第2の通信装置に送信する送信ステップとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、データの種類および目的等に応じて適切にデータ伝送を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システム、およびこの通信システムにおける通信装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】入力データ処理部および制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通信装置が下り方向の割り当てテーブルを生成する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る通信装置における設定値テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る通信装置における割り当てテーブルの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る通信装置が割り当てテーブルを生成する動作を概念的に示すグラフ図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る通信装置が上り方向の割り当てテーブルを生成する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る通信システム、およびこの通信システムにおける通信装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0022】
図1を参照して、通信システム100は、通信装置である局側装置1と、同じく通信装置である端末側装置2とを備える。局側装置1と端末側装置2とは、電話回線を介して接続される。局側装置1は、複数個のサブキャリアに対応する複数個の通信信号を通信相手である端末側装置2へ送信する。また、端末側装置2は、複数個のサブキャリアに対応する複数個の通信信号を通信相手である局側装置1へ送信する。なお、通信システムは、局側装置1および端末側装置2をそれぞれ複数台備える構成であってもよく、また、1台の局側装置1が、複数台の端末側装置2と通信を行なう構成であってもよい。たとえば、局側装置1が複数台の通信装置を備え、複数台の通信装置の各々が1対1で複数台の端末側装置2と通信を行なう構成とすることができる。さらに、少なくとも1台の局側装置1が、この通信システムにおける他の局側装置1および端末側装置2の監視および制御を行なう管理装置としての機能を有していてもよい。
【0023】
局側装置1は、送信部61と、受信部62と、記憶部8と、制御部17と、入力データ処理部10と、出力データ処理部32とを備える。送信部61は、変調器(IFFT)12と、パラレル・シリアル(P/S)変換器14と、デジタル・アナログ変換器(DAC)16と、ドライバ部20と、ハイブリッド回路22とを含む。受信部62は、ハイブリッド回路22と、低雑音アンプ24と、アナログ・デジタル変換器(ADC)26と、シリアル・パラレル(S/P)変換器28と、復調器(FFT)30とを含む。
【0024】
入力データ処理部10は、通信相手である端末側装置2に伝送する入力データに後述する種々の信号処理を行ない、信号処理した入力データを複数個のサブキャリアに割り当てる。そして、入力データ処理部10は、各サブキャリアのデータを変調器12へ出力する。
【0025】
変調器12は、入力データ処理部10から受けた各サブキャリアのデータを高速フーリエ逆変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)によりデジタル変調する。そして、変調器12は、デジタル変調信号をパラレル・シリアル変換器14へ出力する。
【0026】
パラレル・シリアル変換器14は、変調器12から受けた並列信号を、直列信号に変換して、デジタル・アナログ変換器16へ出力する。
【0027】
デジタル・アナログ変換器16は、パラレル・シリアル変換器14から受けたデジタル信号をアナログ信号に変換して、ドライバ部20へ出力する。
【0028】
ドライバ部20は、デジタル・アナログ変換器16から受けたアナログ信号を所定のレベルに増幅して、ハイブリッド回路22へ出力する。
【0029】
ハイブリッド回路22は、ドライバ部20から受けたアナログ信号を通信信号として電話回線を介して端末側装置2へ送信する。また、ハイブリッド回路22は、端末側装置2から電話回線を介して受信した通信信号であるアナログ信号を低雑音アンプ24へ出力する。
【0030】
低雑音アンプ24は、ハイブリッド回路22から受けたアナログ信号を所定のレベルに調整した後、アナログ・デジタル変換器26へ出力する。
【0031】
アナログ・デジタル変換器26は、低雑音アンプ24から受けたアナログ信号をデジタル信号に変換して、シリアル・パラレル変換器28へ出力する。
【0032】
シリアル・パラレル変換器28は、アナログ・デジタル変換器26から受けた直列信号を並列信号に変換して、復調器30へ出力する。
【0033】
復調器30は、シリアル・パラレル変換器28から受けたデータを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)によりデジタル復調する。そして、復調器30は、デジタル復調したサブキャリア毎のデータを出力データ処理部32へ出力する。
【0034】
出力データ処理部32は、復調器30から受けたサブキャリア毎のデータから元のデータを復元して、外部へ出力する。また、出力データ処理部32は、復元したデータの一部または全部を受信データ情報として制御部17へ出力する。
【0035】
制御部17は、入力データ処理部10、変調器(IFFT)12、復調器(FFT)30および出力データ処理部32等、通信装置内の各ブロックを制御する。
【0036】
図2は、入力データ処理部および制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図2を参照して、入力データ処理部10は、論理チャネル生成部(データ入力部)41と、誤り訂正符号化部42〜44と、インタリーブ処理部45〜47と、データ割り当て処理部48とを含む。制御部17は、サブキャリア割り当て(通信信号割り当て)/通信速度決定部51と、変調方式決定部52と、SNR測定部53と、誤り率測定部54と、パラメータ設定部(マージン設定部)55と、サブキャリアソート部56とを含む。
【0037】
論理チャネル生成部41は、外部からデータを入力し、入力データから論理チャネルCH1〜CH3のデータを生成して誤り訂正符号化部42〜44へ出力する。
【0038】
誤り訂正符号化部42〜44は、論理チャネル生成部41から受けた論理チャネルCH1〜CH3のデータにたとえばCRC処理およびFEC処理を行ない、インタリーブ処理部45〜47へ出力する。
【0039】
インタリーブ処理部45〜47は、誤り訂正符号化部42〜44から受けた論理チャネルCH1〜CH3のデータに対して、パラメータ設定部55が論理チャネルごとに設定したインタリーブ深さに基づいてインタリーブ処理を行ない、データ割り当て処理部48へ出力する。
【0040】
データ割り当て処理部48は、後述する割り当てテーブルが表わす論理チャネルとサブキャリアとの対応関係に基づいて、インタリーブ処理部45〜47から受けた論理チャネルCH1〜CH3のデータを並べ替え、変調器12へ出力する。
【0041】
なお、制御部17における各ブロックの動作は後述する。また、端末側装置2の構成および基本動作は局側装置1と同様あるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0042】
次に、本発明の実施の形態に係る通信装置が、論理チャネルに割り当てる通信信号および通信信号の通信速度を決定する際の動作について説明する。
【0043】
[動作]
図3は、本発明の実施の形態に係る通信装置が下り方向の割り当てテーブルを生成する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0044】
局側装置1および端末側装置2が通信を行なっている状態において、局側装置1は、局側装置1および端末側装置2間の通信信号の受信品質を監視している。
【0045】
より詳細には、局側装置1において、制御部17における誤り率測定部54は、出力データ処理部32から受けた受信データ情報に基づいて、端末側装置2から局側装置1への通信方向(以下、上り方向とも称する。)の通信信号の誤り率を算出する。
【0046】
一方、端末側装置2において、制御部17における誤り率測定部54は、出力データ処理部32から受けた受信データ情報に基づいて、局側装置1から端末側装置2への通信方向(以下、下り方向とも称する。)の通信信号の誤り率を算出する。そして、端末側装置2における制御部17は、入力データ処理部10等を制御して、誤り率の算出結果を通信信号に含めて局側装置1へ送信する。そして、局側装置1において、誤り率測定部54は、出力データ処理部32から受けた受信データ情報から、下り方向の通信信号の誤り率を抽出する。
【0047】
局側装置1は、下り方向の通信信号の誤り率、または上り方向の通信信号の誤り率が所定値以上である場合には(S1でYES)、上りおよび下りの回線を切断する制御を行なう(S2)。
【0048】
そして、本発明の実施の形態に係る通信システムにおいてトレーニングが開始される。より詳細には、上りおよび下りの回線が切断されると、局側装置1および端末側装置2は初期化を行なう(S3およびS11)。たとえば、局側装置1および端末側装置2における制御部17は、変調器12および復調器30等を制御して無変調信号を送受信することにより、各々のドライバ部20および低雑音アンプ24に含まれるAGC(Auto Gain Control)回路のゲイン設定等を行なう。なお、局側装置1または端末側装置2に対する電源投入時、あるいは使用者が初期化のコマンドを局側装置1または端末側装置2に投入した場合に、局側装置1および端末側装置2が初期化を行なう構成であってもよい。
【0049】
初期化が終了すると、局側装置1は、上り方向および下り方向の設定値テーブルをそれぞれ生成する(S4)。より詳細には、局側装置1におけるパラメータ設定部55は、論理チャネルごとにSNRマージン、データレートおよびインタリーブ深さを設定する。たとえば、記憶部8は、論理チャネルごとのSNRマージン、データレートおよびインタリーブ深さが定められた設定値テーブルを記憶する。パラメータ設定部55は、複数個の設定値テーブルのいずれか1個を選択して、論理チャネルごとのSNRマージン、データレートおよびインタリーブ深さを設定する。
【0050】
図4は、本発明の実施の形態に係る通信装置における設定値テーブルの一例を示す図である。
【0051】
図4を参照して、たとえば、論理チャネルCH1は、VoIP(Voice over Internet Protocol)すなわち通話データに対応する。論理チャネルCH2は、ストリーミング配信される映像データに対応する。論理チャネルCH3は、通常の映像データに対応する。
【0052】
設定値テーブルは、局側装置1および端末側装置2間の通信に用いられる複数個の論理チャネルと各パラメータ、すなわちデータレート、SNRマージンおよびインタリーブ深さとの対応関係を表わすテーブルである。上り方向の設定値テーブルは上り方向の通信に用いられる論理チャネルと各パラメータとの対応関係を表わし、下り方向の設定値テーブルは下り方向の通信に用いられる論理チャネルと各パラメータとの対応関係を表わす。
【0053】
パラメータ設定部55は、論理チャネルCH1のデータレートを1Mbpsに設定し、SNRマージンを10dBに設定し、インタリーブ深さを1に設定する。また、論理チャネルCH2のデータレートを20Mbpsに設定し、SNRマージンを1dBに設定し、インタリーブ深さを8に設定する。また、論理チャネルCH3のデータレートを10Mbpsに設定し、SNRマージンを10dBに設定し、インタリーブ深さを4に設定する。
【0054】
このように、VoIPすなわち通話データに対応する論理チャネルCH1については伝送遅延時間を短くするためにインタリーブ深さを1とし、その一方でバースト誤りに対する耐性が弱くなるのでSNRマージンを10dBと高めに設定して伝送誤りに対する耐性を強くする。また、ストリーミング配信される映像データに対応する論理チャネルCH2についてはSNRマージンを1dBと低めに設定して伝送速度を大きくし、その一方でインタリーブ深さを8としてバースト誤りに対する耐性を強くする。
【0055】
再び図3を参照して、局側装置1は、生成した下り方向の設定値テーブルを端末側装置2へ送信する。より詳細には、局側装置1における制御部17のパラメータ設定部55は、生成した下り方向の設定値テーブルを入力データ処理部10へ出力する。下り方向の設定値テーブルは、入力データ処理部10において、誤り訂正符号化等の信号処理およびサブキャリアへの割り当てが行なわれ、変調器12、P/S変換器14、デジタル・アナログ変換器16、ドライバ部20およびハイブリッド回路22を介して端末側装置2へ送信される(S5)。
【0056】
また、局側装置1は、たとえばPN(Pseudo Noise)系列の信号(以下、テスト信号とも称する。)を通信信号として端末側装置2へ送信する。テスト信号は、設定値テーブルと同様に、入力データ処理部10、変調器12、P/S変換器14、デジタル・アナログ変換器16、ドライバ部20およびハイブリッド回路22を介して端末側装置2へ送信される(S6)。
【0057】
端末側装置2は、局側装置1から受信したテスト信号のSNRを測定する。より詳細には、端末側装置2において、復調器30は、テスト信号に対応するデータをシリアル・パラレル変換器28から受けてデジタル復調し、コンスタレーションを制御部17へ出力する。制御部17におけるSNR測定部53は、復調器30から受けたコンスタレーションに基づいて、テスト信号の信号対雑音比を測定する(S12)。ここで、コンスタレーションとは、変調信号の同相(I相)成分および直交(Q相)成分からなるIQ座標軸平面におけるシンボル点配置のことである。
【0058】
端末側装置2は、テスト信号のSNR測定結果および局側装置1から受信した下り方向の設定値テーブルに基づいて、複数個の論理チャネルにそれぞれ割り当てる1個または複数個のサブキャリアを決定し、また、局側装置1から送信する複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する。たとえば、端末側装置2は、局側装置1が通信信号の送信に用いる複数個の論理チャネル、複数個のサブキャリアおよび各サブキャリアに割り当てるビット数の対応関係を表わす下り方向の割り当てテーブルを生成し、局側装置1へ送信する(S13〜S15)。
【0059】
より詳細には、端末側装置2におけるサブキャリアソート部56は、テスト信号のSNR測定結果に基づいて複数個のサブキャリアをたとえばSNRの小さい順にソートし、ソート結果をサブキャリア割り当て/通信速度決定部51へ出力する(S13)。また、サブキャリアソート部56は、テスト信号のSNR測定結果もサブキャリア割り当て/通信速度決定部51へ出力する。
【0060】
サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、出力データ処理部32から受けた受信データ情報から、局側装置1が送信した下り方向の設定値テーブルを抽出する。そして、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、サブキャリアソート部56から受けたソート結果、テスト信号のSNR測定結果、ならびに抽出した下り方向の設定値テーブルが表わす論理チャネルごとのSNRマージンおよびデータレートに基づいて、複数個の論理チャネルにそれぞれ割り当てるサブキャリアを決定し、かつ各サブキャリアに割り当てるビット数すなわち各通信信号の通信速度を決定する。サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、複数個の論理チャネルにそれぞれ割り当てるサブキャリア、および各サブキャリアに割り当てるビット数を表わす下り方向の割り当てテーブルを生成し、論理チャネル生成部41および変調方式決定部52へ出力する(S14)。
【0061】
下り方向の割り当てテーブルは、入力データ処理部10、変調器12、P/S変換器14、デジタル・アナログ変換器16、ドライバ部20およびハイブリッド回路22を介して局側装置1へ送信される(S15)。
【0062】
図5は、本発明の実施の形態に係る通信装置における割り当てテーブルの一例を示す図である。図6は、本発明の実施の形態に係る通信装置が割り当てテーブルを生成する動作を概念的に示すグラフ図である。なお、図5に示す割り当てテーブルでは理解を容易にするために論理チャネルごとのSNRマージンおよびデータレートが含まれているが、割り当てテーブルにはこれらを含めなくてもよい。また、以下では、説明を簡単にするために、サブキャリア番号と称するときは特に断りのない限りサブキャリアソート部56がソートを行なった後の番号を意味するものとする。
【0063】
図5および図6を参照して、サブキャリアは、SNRの小さい順に1番から整列されている。
【0064】
サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、SNRの小さい順にソートされたサブキャリアを、SNRマージンの小さい論理チャネルから順番に割り当てる。なお、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、SNRが同じである複数個のサブキャリアについては、周波数の低いサブキャリアから順にソートする。また、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、論理チャネルのデータレートを実現するために必要な数のサブキャリアを論理チャネルに割り当てる。
【0065】
より詳細には、まず、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、ソート後のサブキャリアを割り当てる論理チャネルの順番を決定する。たとえば、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、論理チャネルCH1〜CH3のうち、SNRマージンが1dBと最も小さい論理チャネルCH2を1番とする。そして、SNRマージンが10dBと同じである論理チャネルCH1およびCH3のうち、インタリーブ深さが小さい論理チャネルCH1を2番とする。そして、論理チャネルCH3を3番とする。
【0066】
次に、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、ソート後のサブキャリアを1番目に割り当てる論理チャネルCH2のSNRマージンに基づいて、論理チャネルCH2に割り当てるサブキャリアおよび論理チャネルCH2に割り当てたサブキャリアに対応する通信信号の通信速度を決定する。
【0067】
サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、テスト信号のSNR測定結果すなわちSNR測定部53が測定した通信信号のSNRの条件下で通信信号が所定の受信品質を満たすことができる通信速度よりも低い通信速度を、通信相手からの通信信号の通信速度として決定する。すなわち、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、測定した通信信号のSNRよりもさらにSNRマージンだけ劣化したSNRの条件下で通信信号の誤り率が所定値未満となる通信速度を、通信相手からの通信信号の通信速度として決定する。
【0068】
具体的には、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、たとえば、サブキャリア1における通信信号のSNRが10dBである場合には、10dBよりもさらに論理チャネルCH2のSNRマージンの1dBだけ劣化した9dBのSNRの条件下で、サブキャリア1における通信信号の誤り率が10-7未満となる3ビットがサブキャリア1に割り当て可能であると判断する。
【0069】
そして、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、このようにして算出した各サブキャリアに割り当て可能なビット数に基づいて、論理チャネルCH2に、データレート20Mbpsを確保するために必要なサブキャリア1〜サブキャリア30を割り当てる。また、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、論理チャネルCH2に割り当てたサブキャリア1〜サブキャリア30の割り当てビット数を、論理チャネルCH2のSNRマージンに基づいて算出したビット数とする。
【0070】
次に、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、ソート後のサブキャリアを2番目に割り当てる論理チャネルCH1のSNRマージンに基づいて、未割り当てのサブキャリアのうち、論理チャネルCH1に割り当てるサブキャリアおよび論理チャネルCH1に割り当てたサブキャリアに対応する通信信号の通信速度を決定する。
【0071】
具体的には、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、たとえば、サブキャリア31における通信信号のSNRが19dBである場合には、19dBよりもさらに論理チャネルCH2のSNRマージンの10dBだけ劣化した9dBのSNRの条件下で、サブキャリア31における通信信号の誤り率が10-7未満となる3ビットがサブキャリア31に割り当て可能であると判断する。
【0072】
そして、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、このようにして算出した各サブキャリアに割り当て可能なビット数に基づいて、論理チャネルCH1に、データレート1Mbpsを確保するために必要なサブキャリア31〜サブキャリア40を割り当てる。また、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、論理チャネルCH1に割り当てたサブキャリア31〜サブキャリア40の割り当てビット数を、論理チャネルCH1のSNRマージンに基づいて算出したビット数とする。
【0073】
次に、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、ソート後のサブキャリアを3番目に割り当てる論理チャネルCH3のSNRマージンに基づいて、未割り当てのサブキャリアのうち、論理チャネルCH3に割り当てるサブキャリアおよび論理チャネルCH3に割り当てたサブキャリアに対応する通信信号の通信速度を決定する。
【0074】
具体的には、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、たとえば、サブキャリア41における通信信号のSNRが22dBである場合には、22dBよりもさらに論理チャネルCH3のSNRマージンの10dBだけ劣化した12dBのSNRの条件下で、サブキャリア41における通信信号の誤り率が10-7未満となる6ビットがサブキャリア41に割り当て可能であると判断する。
【0075】
そして、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、算出した各サブキャリアに割り当て可能なビット数に基づいて、論理チャネルCH3に、データレート10Mbpsを確保するために必要なサブキャリア41〜サブキャリア46を割り当てる。また、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、論理チャネルCH3に割り当てたサブキャリア41〜サブキャリア46の割り当てビット数を、論理チャネルCH3のSNRマージンに基づいて算出したビット数とする。
【0076】
再び図3を参照して、局側装置1は、端末側装置2から受信した下り方向の割り当てテーブルが表わす、複数個のサブキャリアに対応する複数個の通信信号の通信速度に基づいて、たとえば複数個の通信信号の変調方式をそれぞれ決定する。より詳細には、局側装置1における制御部17の変調方式決定部52は、出力データ処理部32から受けた受信データ情報から、端末側装置2が送信した下り方向の割り当てテーブルを抽出する。そして、変調方式決定部52は、抽出した下り方向の割り当てテーブルに基づいて複数個のサブキャリアに対応する複数個の通信信号の変調方式をそれぞれ決定し、決定した変調方式を変調器12へ通知する。変調器12は、制御部17からの通知内容が表わす変調方式で各サブキャリアのデータをそれぞれ変調する(S7)。
【0077】
端末側装置2における変調方式決定部52は、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51から受けた下り方向の割り当てテーブルに基づいて、局側装置1から送信される通信信号の変調方式を認識し、復調器30へ通知する。復調器30は、制御部17からの通知内容が表わす変調方式で各サブキャリアの通信信号をそれぞれ復調する(S16)。
【0078】
より詳細には、変調方式決定部52は、たとえば、サブキャリア1の割り当てビット数が3であるため、3に対応するシンボルレートの小さい8−PSK(Phase Shift Keying)をサブキャリア1の通信信号の変調方式と決定する。また、変調方式決定部52は、サブキャリア41の割り当てビット数が6であるため、6ビットに対応するシンボルレートの大きい64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)をサブキャリア41の通信信号の変調方式と決定する。
【0079】
図7は、本発明の実施の形態に係る通信装置が上り方向の割り当てテーブルを生成する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0080】
図7を参照して、ステップS21〜ステップS24およびステップS31は、図3に示すフローチャートのステップS1〜ステップS4およびステップS11と同様である。
【0081】
局側装置1は、生成した上り方向の設定値テーブルを端末側装置2へ送信する(S25)。また、局側装置1における制御部17のパラメータ設定部55は、生成した上り方向の設定値テーブルをサブキャリア割り当て/通信速度決定部51へ出力する。
【0082】
また、端末側装置2は、テスト信号を局側装置1へ送信する(S32)。
局側装置1は、端末側装置2から受信したテスト信号のSNRを測定する(S26)。
【0083】
局側装置1は、テスト信号のSNR測定結果および自ら生成した上り方向の設定値テーブルに基づいて、複数個の論理チャネルにそれぞれ割り当てる1個または複数個のサブキャリアを決定し、また、端末側装置2から送信する複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する。たとえば、局側装置1は、端末側装置2が通信信号の送信に用いる複数個の論理チャネル、複数個のサブキャリアおよび各サブキャリアに割り当てるビット数の対応関係を表わす上り方向の割り当てテーブルを生成し、端末側装置2へ送信する(S27〜S29)。
【0084】
端末側装置2は、局側装置1から受信した上り方向の割り当てテーブルが表わす、複数個のサブキャリアに対応する複数個の通信信号の通信速度に基づいて、たとえば複数個の通信信号の変調方式をそれぞれ決定する。端末側装置2は、制御部17からの通知内容が表わす変調方式で各サブキャリアのデータをそれぞれ変調する(S33)。
【0085】
局側装置1における変調方式決定部52は、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51から受けた上り方向の割り当てテーブルに基づいて、端末側装置2から送信される通信信号の変調方式を認識し、復調器30へ通知する。復調器30は、制御部17からの通知内容が表わす変調方式で各サブキャリアの通信信号をそれぞれ復調する(S30)。
【0086】
ところで、非特許文献1記載の通信装置では、すべてのサブキャリアで同一のSNRマージンしか設定できないため、データの種類および目的等に応じて適切にデータ伝送を行なうことができないという問題点があった。しかしながら、本発明の実施の形態に係る通信装置では、パラメータ設定部55は、論理チャネルごとにSNRマージンを設定する。そして、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、測定した通信信号のSNRよりもさらにSNRマージンだけ劣化したSNRの条件下で通信信号の誤り率が所定値未満となる通信速度を、通信相手からの通信信号の通信速度として決定する。
【0087】
したがって、本発明の実施の形態に係る通信装置では、論理チャネルに対応するデータの種類および目的等に応じてSNRマージンを設定することができ、適切にデータ伝送を行なうことができる。
【0088】
[変形例]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、たとえば以下の変形例も含まれる。
【0089】
(1) サブキャリアの割り当て
本発明の実施の形態に係る通信装置では、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、算出した各サブキャリアに割り当て可能なビット数に基づいて、論理チャネルのデータレートを確保するために必要な数のサブキャリアを論理チャネルに割り当てる構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、論理チャネルCH1〜CH3の各々に割り当てるサブキャリアの比率が予め定められている場合には、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、テスト信号のSNR測定結果およびSNRマージンを用いずにサブキャリアを論理チャネルに割り当てることが可能である。具体的には、論理チャネルCH1〜CH3の各々に割り当てるサブキャリアの比率が1:1:1である場合、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、サブキャリア1を論理チャネルCH1に割り当て、サブキャリア2を論理チャネルCH2に割り当て、サブキャリア3を論理チャネルCH3に割り当て、さらにサブキャリア4以降も同様に論理チャネルCH1〜CH3にサブキャリアを順次割り当てる構成とすることができる。
【0090】
(2) 論理チャネルの設定
パラメータ設定部55は、局側装置1および端末側装置2間の通信に用いられる複数個の論理チャネルのうちのいずれか1個を最も誤り率の小さい、伝送誤りに対する耐性の強い論理チャネルとして使用する構成であってもよい。たとえば、パラメータ設定部55は、すべての論理チャネルの中で論理チャネルCH1のSNRマージンが最大となるように設定し、インタリーブ深さが最大となるように設定する。そして、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、論理チャネルCH1に、複数個のサブキャリアのうちSNRが最大であるサブキャリアを少なくとも割り当てる。
【0091】
前述のように、本発明の実施の形態に係る通信装置における制御部17は、下り方向の通信信号の誤り率、または上り方向の通信信号の誤り率が所定値以上である場合には(S1でYES)、上りおよび下りの回線を切断して再トレーニングを行なう(S2)構成である。しかしながら、このようにすべての論理チャネルの中で論理チャネルCH1を最も誤り率の小さい、伝送誤りに対する耐性の強い論理チャネルとして使用する場合には、制御部17は、論理チャネルCH1に割り当てられるサブキャリアについては回線切断および再トレーニングを行なわず、通信を継続する構成とすることができる。このような構成により、通信の安定化の要求が非常に強いデータの伝送を適切に行なうことができる。
【0092】
(3) ビットテーブルの生成および送信
本発明の実施の形態に係る通信システムでは、下り方向の割り当てテーブルを生成する際、端末側装置2は、下り方向のテスト信号のSNR測定結果および局側装置1から受信した下り方向の設定値テーブルに基づいて、下り方向の割り当てテーブルを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。端末側装置2が、下り方向のテスト信号のSNR測定結果を局側装置1へ送信する。そして、局側装置1が、下り方向のテスト信号のSNR測定結果および下り方向の設定値テーブルに基づいて、下り方向の割り当てテーブルを生成し、端末側装置2へ送信する。そして、端末側装置2が、局側装置1から受信した下り方向の割り当てテーブルに基づいて、局側装置1から送信される通信信号の変調方式を認識する構成とすることも可能である。
【0093】
また、上り方向の割り当てテーブルを生成する際、局側装置1が、上り方向のテスト信号のSNR測定結果および上り方向の設定値テーブルを端末側装置2へ送信する。そして、端末側装置2が、上り方向のテスト信号のSNR測定結果および上り方向の設定値テーブルに基づいて上り方向の割り当てテーブルを生成し、局側装置1へ送信する。そして、局側装置1が、端末側装置2から受信した下り方向の割り当てテーブルに基づいて、端末側装置2から送信される通信信号の変調方式を認識する構成とすることも可能である。
【0094】
(4) SNR
本発明の実施の形態に係る通信装置では、サブキャリア割り当て/通信速度決定部51は、通信信号のSNR測定結果よりもさらにSNRマージンだけ劣化したSNRの条件下で通信信号の誤り率が所定値未満となる通信速度を、通信相手が送信する通信信号の通信速度として決定する構成であるとしたが、SNRに限らず、通信信号の回線状態を表わす指標であればSNRの代わりとして用いることが可能である。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1 局側装置(通信装置)、2 端末側装置(通信装置)、10 入力データ処理部(データ入力部)、12 変調器(IFFT)、14 パラレル・シリアル(P/S)変換器、16 デジタル・アナログ変換器(DAC)、17 制御部、20 ドライバ部、22 ハイブリッド回路、24 低雑音アンプ、26 アナログ・デジタル変換器(ADC)、28 シリアル・パラレル(S/P)変換器、30 復調器(FFT)、32 出力データ処理部、51 サブキャリア割り当て(通信信号割り当て)/通信速度決定部、52 変調方式決定部、53 SNR測定部、54 誤り率測定部、55 パラメータ設定部(マージン設定部)、56 サブキャリアソート部、61 送信部、62 受信部、100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の論理チャネルを含んだ周波数の異なる複数個の通信信号を通信相手から受信する受信部と、
前記受信した複数個の通信信号の回線状態を測定する測定部と、
前記複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の前記通信信号を割り当てる通信信号割り当て部と、
前記論理チャネルごとにマージン値を設定し、前記通信信号に対応する前記論理チャネルに設定したマージン値を前記通信信号のマージン値として決定するマージン設定部と、
前記測定した回線状態から前記通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において前記複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように前記複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部と、
前記通信信号の割り当て結果および前記決定した通信速度を前記通信相手に通知する送信部とを備える通信装置。
【請求項2】
複数個の論理チャネルを含んだ周波数の異なる複数個の通信信号を通信相手に送信する送信部と、
前記通信相手が測定した前記複数個の通信信号の回線状態を前記通信相手から取得する受信部と、
前記複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の前記通信信号を割り当てる通信信号割り当て部と、
前記論理チャネルごとにマージン値を設定し、前記通信信号に対応する前記論理チャネルに設定したマージン値を前記通信信号のマージン値として決定するマージン設定部と、
前記取得した回線状態から前記通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において前記通信相手が受信する前記複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように前記複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部とを備え、
前記送信部は、前記決定した通信速度で前記複数個の通信信号を前記通信相手に送信する通信装置。
【請求項3】
前記通信信号割り当て部は、前記測定された回線状態および前記設定された論理チャネルのマージン値に基づいて、前記複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の前記通信信号を割り当てる請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
第1の通信装置および第2の通信装置を備える通信システムであって、
前記第1の通信装置は、
周波数の異なる複数個の通信信号を前記第2の通信装置に送信する送信部を備え、
前記第2の通信装置は、
前記第1の通信装置から前記複数個の通信信号を受信する受信部と、
前記受信した複数個の通信信号の回線状態を測定する測定部と、
前記複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の前記通信信号を割り当てる通信信号割り当て部と、
前記論理チャネルごとにマージン値を設定し、前記通信信号に対応する前記論理チャネルに設定したマージン値を前記通信信号のマージン値として決定するマージン設定部と、
前記測定した回線状態から前記通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において前記複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように前記複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定する通信速度決定部と、
前記通信信号の割り当て結果および前記決定した通信速度を前記第1の通信装置に通知する送信部とを備え、
前記第1の通信装置における送信部は、前記通知された通信速度で前記複数個の通信信号を前記第2の通信装置に送信する通信システム。
【請求項5】
第1の通信装置および第2の通信装置を備える通信システムにおける通信方法であって、
前記第1の通信装置が、周波数の異なる複数個の通信信号を前記第2の通信装置に送信するステップと、
前記第2の通信装置が、前記第1の通信装置から受信した複数個の通信信号の回線状態を測定するステップと、
前記第2の通信装置が、前記複数個の論理チャネルの各々に1個または複数個の前記通信信号を割り当て、かつ、前記論理チャネルごとにマージン値を設定し、前記通信信号に対応する前記論理チャネルに設定したマージン値を前記通信信号のマージン値として決定するステップと、
前記第2の通信装置が、前記測定した回線状態から前記通信信号のマージン値だけ劣化した回線状態において前記複数個の通信信号の誤り率がそれぞれ所定値未満となるように前記複数個の通信信号の通信速度をそれぞれ決定するステップと、
前記第2の通信装置が、前記通信信号の割り当て結果および前記決定した通信速度を前記第1の通信装置に通知するステップと、
前記第1の通信装置が、前記通知された通信速度で前記複数個の通信信号を前記第2の通信装置に送信する送信ステップとを含む通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−142672(P2011−142672A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61291(P2011−61291)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2006−54920(P2006−54920)の分割
【原出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(502312498)住友電工ネットワークス株式会社 (212)
【Fターム(参考)】