説明

通信装置、通信システムおよび通信速度切り替え方法

【課題】通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることが可能な通信装置、通信システムおよび通信速度切り替え方法を提供する。
【解決手段】通信装置202は、他の装置から送信される複数種類の速度の通信データを受信して処理するためのマルチレート受信処理部33と、速度切り替え情報が取得されると、マルチレート受信処理部33を、切り替え元の速度の通信データを受信可能な状態から、切り替え元の速度の通信データおよび速度切り替え情報が示す切り替え先の速度の通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、マルチレート受信処理部33が速度切り替え用受信状態へ遷移したことを示す状態遷移完了情報を出力するための受信制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システムおよび通信速度切り替え方法に関し、特に、複数種類の速度の通信データを受信可能な通信装置、この通信装置を備えた通信システム、および通信速度切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。これに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)およびFTTH(Fiber To The Home)等のブロードバンドアクセスが可能な装置も急速に普及してきている。
【0003】
IEEE Std 802.3ah(登録商標)−2004(非特許文献1)には、複数の宅側装置(ONU:Optical Network Unit)が光通信回線を共有して局側装置(OLT:Optical Line Terminal)とのデータ伝送を行なう媒体共有形通信である受動的光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の1つの方式が開示されている。すなわち、PONを通過するユーザ情報およびPONを管理運用するための制御情報を含め、すべての情報がイーサネット(登録商標)フレームの形式で通信されるEPON(Ethernet(登録商標) PON)と、EPONのアクセス制御プロトコル(MPCP(Multi-Point Control Protocol))およびOAM(Operations Administration and Maintenance)プロトコルとが規定されている。局側装置と宅側装置との間でMPCPフレームをやりとりすることによって、宅側装置の加入、離脱、および上りアクセス多重制御などが行なわれる。また、非特許文献1では、MPCPメッセージによる、新規宅側装置の登録方法、帯域割り当て要求を示すレポート、および送信指示を示すゲートについて記載されている。
【0004】
なお、1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PONの次世代の技術として、IEEE802.3av(登録商標)−2009として標準化が行なわれた10G−EPONすなわち通信速度が10ギガビット/秒相当のEPONにおいても、アクセス制御プロトコルはMPCPが前提となっている。
【0005】
局側装置から宅側装置へのPON回線において1ギガビット/秒の通信速度と10ギガビット/秒の通信速度とを切り替える構成の一例として、たとえば、特開2009−296231号公報(特許文献1)には、以下のような通信装置が開示されている。すなわち、この通信装置は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントまたはポイントツーマルチポイントの通信を行なう光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)である。このOLTにおいて、速度変更手段は、上記ONUに送信するデータを一時的に格納するキューのキュー長および/または該キューに流入するデータの流入速度および/または該キューに流入するデータの流入加速度を推定する。速度変更手段は、通信速度が第1の速度の状態において、上記キュー長が第1の閾値以上および/または上記流入速度が第2の閾値以上および/または上記キュー長と上記流入速度と上記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値以上になった場合には、速度変更メッセージをONUへ送信し、ONUからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度よりも速い第2の速度に切り替える。また、速度変更手段は、通信速度が第2の速度の状態において、上記キュー長が第1の閾値よりも小さい第4の閾値以下および/または上記流入速度が第2の閾値よりも小さい第5の閾値以下および/または上記キュー長と上記流入速度と上記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値よりも小さい第6の閾値以下になった場合には、速度変更メッセージをONUへ送信し、ONUからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度に切り替える。また、機能休止手段は、接続されているすべてのONUが使用していない通信速度の信号処理手段を休止させる。
【0006】
このように、特許文献1に記載の通信装置は、未使用の通信速度に関係する機能を休止させて消費電力を低減することを目的としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3ah(登録商標)-2004
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−296231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載の通信装置では、速度変更メッセージを送信してから変更確認応答を受信するまでの間、特定のONUへのデータ送信を一時的に停止し、ONUへ送信するデータを蓄積する。そして、変更確認応答の受信を契機として特定のONUへのデータ送信を再開する。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載の通信装置は、通信速度を切り替えるために、切り替え先の通信速度を有するデータの受信準備が可能となるまでONUへの下り送信を停止する構成である。これは、データのロス無しで通信速度を切り替えるために、通信速度の切り替え準備が完了したことを示す情報をONUがOLTに伝えるまで、OLTからONUへの下り送信を停止させる必要があるからである。
【0011】
このような特許文献1に記載の技術を超えて、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させる技術が望まれる。
【0012】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることが可能な通信装置、通信システムおよび通信速度切り替え方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信装置は、他の装置から送信される複数種類の速度の通信データを受信可能な通信装置であって、上記通信データを受信して処理するためのマルチレート受信処理部と、上記通信データの速度の切り替えを示す速度切り替え情報を取得するための速度切り替え情報取得部と、上記速度切り替え情報取得部によって上記速度切り替え情報が取得されると、上記マルチレート受信処理部を、切り替え元の速度の上記通信データを受信可能な状態から、上記切り替え元の速度の上記通信データおよび上記速度切り替え情報が示す切り替え先の速度の上記通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、上記マルチレート受信処理部が上記速度切り替え用受信状態へ遷移したことを示す状態遷移完了情報を出力するための受信制御部とを備える。
【0014】
このような構成により、通信速度を切り替える際に、通信データのロスが生じることを防ぐことができ、また、他の装置において通信データの送信が中断され、通信装置において通信データの受信の遅延が発生することを防ぐことができる。したがって、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。また、通信速度を切り替える際に、他の装置から通信装置へ送信すべき通信データが他の装置において滞留することを防ぐことができる。これにより、通信データを蓄積するための他の装置におけるバッファ容量を低減することができる。
【0015】
好ましくは、上記マルチレート受信処理部は、上記通信データの速度に対応して設けられ、対応の上記速度の通信データを受信して処理するための複数のシングルレート受信処理部を含み、上記受信制御部は、上記速度切り替え情報取得部によって上記速度切り替え情報が取得されると、上記マルチレート受信処理部を、切り替え元の上記速度に対応する上記シングルレート受信処理部が動作可能な状態から、上記切り替え元の速度に対応する上記シングルレート受信処理部および上記速度切り替え情報が示す切り替え先の上記速度に対応する上記シングルレート受信処理部が動作可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、上記受信制御部は、上記切り替え先の速度に対応する上記シングルレート受信処理部が上記他の装置から対応の上記速度の通信データを受信すると、上記切り替え元の速度に対応する上記シングルレート受信処理部の動作を停止させる。
【0016】
これにより、通信装置は、切り替え先の新しい速度で通信データを受信すると、瞬時に切り替え元の古い速度に対応するシングルレート受信処理部の動作を停止させることができる。すなわち、切り替え先の速度の通信データを受信したことに応答して、速度切り替え用受信状態から切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部が動作可能な状態への切り替えを瞬時に行なうことができるため、多種類の速度の通信データを並行して受信する状態の期間を最小限にすることができる。したがって、通信装置の消費電力を低減することができる。また、通信装置の通信データの受信処理能力を、少種類の速度の通信データを処理可能なレベルに設定することが可能となる。
【0017】
より好ましくは、上記受信制御部は、上記切り替え先の速度に対応する上記シングルレート受信処理部が、1つの通信装置を宛先とする上記通信データのうち、自己の上記通信装置を宛先とする上記通信データであって上記切り替え先の速度を有する上記通信データを上記他の装置から受信すると、上記切り替え元の速度に対応する上記シングルレート受信処理部の動作を停止させる。
【0018】
このような構成により、複数の通信装置へブロードキャストするためのブロードキャスト通信データが他の装置から複数の速度で送信される場合でも、ブロードキャスト通信データのロス、および複数の速度のブロードキャスト通信データを同時受信することによる誤動作を防ぐことができる。すなわち、複数の速度のブロードキャスト通信データが送受信される通信システムにおいても、通信速度の切り替えを適切に行なうことが可能となる。
【0019】
より好ましくは、上記通信装置は、さらに、各上記シングルレート受信処理部によって処理された通信データを受けて、上記通信データを受けた順番で上記通信データを出力するための通信データ多重化部を備える。
【0020】
このような構成により、切り替え元または切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部が動作可能な状態と速度切り替え用受信状態との間の切り替えの際に通信データの処理順序が狂うことを防ぐことができる。
【0021】
より好ましくは、上記通信データはフレームであり、上記通信データ多重化部は、上記シングルレート受信処理部に対応して設けられ、対応の上記シングルレート受信処理部から受けた上記フレームを少なくとも1つ分蓄積しうるバッファを複数含む。
【0022】
このような構成により、最小限の1フレーム分のバッファ容量で、速度切り替え用受信状態から切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部が動作可能な状態へ切り替える際における通信データのロスを防ぐことができる。
【0023】
好ましくは、上記速度切り替え情報取得部は、上記他の装置から送信される上記速度の切り替え指示を上記速度切り替え情報として受信し、上記通信装置は、さらに、上記受信制御部から上記状態遷移完了情報を受けて、上記通信データの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を上記他の装置へ送信するための切り替え報告部を備える。
【0024】
このような構成により、他の装置からの通信速度の切り替え指示に従って通信装置が通信速度の切り替え準備を行ない、この準備完了を他の装置に報告する一連のシーケンスを実現することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信システムは、複数種類の速度の通信データを送信可能な第1の通信装置と、上記第1の通信装置から送信される上記複数種類の速度の通信データを受信可能な第2の通信装置とを備え、上記第2の通信装置は、上記第1の通信装置から送信される上記通信データを受信して処理するためのマルチレート受信処理部と、上記通信データの速度の切り替えを示す速度切り替え情報を取得するための速度切り替え情報取得部と、上記速度切り替え情報取得部によって上記速度切り替え情報が取得されると、上記マルチレート受信処理部を、切り替え元の速度の上記通信データを受信可能な状態から、上記切り替え元の速度の上記通信データおよび上記速度切り替え情報が示す切り替え先の速度の上記通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、上記マルチレート受信処理部が上記速度切り替え用受信状態へ遷移したことを示す状態遷移完了情報を出力するための受信制御部とを含む。
【0026】
このような構成により、通信速度を切り替える際に、通信データのロスが生じることを防ぐことができ、また、第1の通信装置において通信データの送信が中断され、第2の通信装置において通信データの受信の遅延が発生することを防ぐことができる。したがって、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。また、通信速度を切り替える際に、第1の通信装置から第2の通信装置へ送信すべき通信データが第1の通信装置において滞留することを防ぐことができる。これにより、通信データを蓄積するための第1の通信装置におけるバッファ容量を低減することができる。
【0027】
好ましくは、上記第1の通信装置は、上記通信データの速度の切り替え指示を上記第2の通信装置へ送信し、上記速度切り替え情報取得部は、上記第1の通信装置から送信された上記速度の切り替え指示を上記速度切り替え情報として受信し、上記第2の通信装置は、さらに、上記受信制御部から上記状態遷移完了情報を受けて、上記通信データの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を上記第1の通信装置へ送信するための切り替え報告部を含み、上記第1の通信装置は、上記速度の切り替え指示を上記第2の通信装置へ送信した後、少なくとも上記切り替え準備完了情報を上記第2の通信装置から受信するまでの間、上記切り替え元の速度の通信データを上記第2の通信装置へ送信する。
【0028】
このように、第1の通信装置が、速度切り替え指示を第2の通信装置へ送信した後、通信データの送信を停止せずに継続する構成により、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。
【0029】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信速度切り替え方法は、複数種類の速度の通信データを送信可能な第1の通信装置と、上記第1の通信装置から送信される上記複数種類の速度の通信データを受信可能な第2の通信装置とを備える通信システムにおける通信速度切り替え方法であって、上記第1の通信装置が、上記通信データの速度の切り替え指示を上記第2の通信装置へ送信するステップと、上記第2の通信装置が、上記第1の通信装置から送信された上記速度の切り替え指示を受信するステップと、上記第2の通信装置が、切り替え元の速度の上記通信データを受信可能な状態から、上記切り替え元の速度の上記通信データおよび上記速度の切り替え指示が示す切り替え先の速度の上記通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移するステップと、上記第2の通信装置が、上記通信データの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を上記第1の通信装置へ送信するステップと、上記第1の通信装置が、上記切り替え準備完了情報を上記第2の通信装置から受信して、上記切り替え先の速度の上記通信データを上記第2の通信装置へ送信するステップと、上記第2の通信装置が、上記切り替え先の速度の上記通信データを上記第1の通信装置から受信して、上記速度切り替え用受信状態から、上記切り替え先の速度の上記通信データを受信可能な状態に遷移するステップとを含む。
【0030】
このような構成により、通信速度を切り替える際に、通信データのロスが生じることを防ぐことができ、また、第1の通信装置において通信データの送信が中断され、第2の通信装置において通信データの受信の遅延が発生することを防ぐことができる。したがって、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。また、通信速度を切り替える際に、第1の通信装置から第2の通信装置へ送信すべき通信データが第1の通信装置において滞留することを防ぐことができる。これにより、通信データを蓄積するための第1の通信装置におけるバッファ容量を低減することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る局側装置におけるOSUの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る局側装置における送信処理部およびその周辺構成を詳細に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る宅側装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置および宅側装置が通信速度切り替え処理を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置および宅側装置間のデータの流れ、ならびに通信速度切り替え処理のシーケンスを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける各速度のフレーム受信状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0034】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。
【0035】
図1を参照して、PONシステム301は、局側装置201と、光ファイバであるN本のPON回線1〜N(203−1〜203−N)と、N個の光カプラ204−1〜204−Nと、複数の宅側装置(ONU)202とを備える。局側装置201は、光回線ユニット(以下、OSU(Optical Subscriber Unit)とも称する)1〜N(92−1〜92−N)と、集線部93と、局側装置201の全体的な制御を行なう制御部91とを含む。ここで、Nは1以上の整数である。また、宅側装置から上位ネットワーク(以下「アップリンク」とも称する。)への方向を上り方向と称し、アップリンクから宅側装置への方向を下り方向と称する。
【0036】
ここでは、PONシステム301において、各PON回線は1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PON、および10ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONである10G−EPONに対応しており、アップリンクは10ギガビット/秒の通信速度を実現するイーサネット(登録商標)に対応すると仮定して説明する。また、MPCPフレームによってONUの登録、離脱、ONUへの帯域割り当て、ONUからの帯域要求、通信速度の切り替え指示およびONUへのスリープ(動作停止)指示などが行なわれると仮定して説明する。
【0037】
PONシステム301は、1Gbps(ギガビット/秒)および10Gbpsの速度のフレームすなわちパケットを送信可能な局側装置201と、局側装置201から送信される1Gbpsおよび10Gbpsの速度のフレームを受信可能な複数の宅側装置202とを備える。たとえば、1フレームのデータ長は、64バイト〜1522バイトの可変長である。
【0038】
より詳細には、局側装置201は、GE−PONおよび10G−EPONに対応するPON回線を複数回線収容する。1本のPON回線には1または複数のONUが接続される。局側装置201は、これらのPON回線からのデータを1または複数の通信回線を有するアップリンクに多重する。また、局側装置201は、アップリンクからのデータを振り分けて各PON回線における各宅側装置へ送信する。また、局側装置201は、PON回線の上り帯域および下り帯域を各宅側装置に割り当てる。
【0039】
具体的には、局側装置201は、N本のPON回線1〜Nに接続され、このN本のPON回線を終端する。各OSUは、PON回線に対応して設けられ、対応のPON回線に接続された1または複数のONUとフレームを送受信する。PON回線1〜Nは、光カプラ204−1〜204−Nにそれぞれ接続されており、これらの光カプラを介して各ONU202に接続されている。
【0040】
集線部93は、複数のOSU経由で各ONUから受信した上りフレームをアップリンクへ送信する。具体的には、集線部93は、OSU1〜N(92−1〜92−N)からの上りフレームを多重してアップリンクに送信するとともに、アップリンクから受信した下りフレームを適切なOSUに振り分ける処理を行なう。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係る局側装置におけるOSUの構成を示す図である。
【0042】
図2を参照して、OSU92は、集線IF(Interface)部81と、制御IF部82と、受信処理部83と、送信処理部84と、PON送受信部85と、PON制御部65と、上りフレームを蓄積するFIFO87と、下りフレームを蓄積するFIFO88とを含む。
【0043】
PON送受信部85は、PON線路の親局側起点として、対応のPON回線である1本の光ファイバと接続される。PON送受信部85は、この光ファイバを介して各ONUと双方向通信が行なえるように、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号を受信し、電気信号に変換して受信処理部83に出力するとともに、送信処理部84から受けた電気信号を別波長の下り光信号に変換して送信する。たとえば、PON送受信部85は、送信処理部84から受けた1Gbpsの電気信号を1490nm帯の下り光信号に変換し、送信処理部84から受けた10Gbpsの電気信号を1570nm帯の下り光信号に変換して送信する。
【0044】
受信処理部83は、PON送受信部85から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じてPON制御部65またはFIFO87にフレームを振り分ける。具体的には、データフレームをFIFO87に出力し、制御フレームをPON制御部65に出力する。
【0045】
また、受信処理部83は、どのロジカルリンクからフレームをいつ受信するかを示すグラント情報を送信処理部84から受けて、バースト受信を支援するための制御信号をPON送受信部85へ出力してもよい。また、受信処理部83は、このグラント情報を受けて、当該グラント情報に示されていない受信フレームをフィルタリングする、すなわち廃棄するようにしてもよい。また、受信処理部83は、MPCPフレームに対して、受信時のタイムスタンプを上書きして出力するようにしてもよい。
【0046】
集線IF部81は、FIFO87に蓄積された上りフレームを集線部93へ出力する。また、集線IF部81は、集線部93からフレームを受けると、当該フレームが通常のデータフレームである場合にはFIFO88に出力し、当該フレームが制御フレームである場合にはPON制御部65へ出力する。
【0047】
集線IF部81は、PON制御部65から制御フレームを受けた場合には、FIFO87からのフレーム列の合間において、当該制御フレームをFIFO87からのフレームよりも優先して集線部93へ出力する。
【0048】
送信処理部84は、FIFO88またはPON制御部65が送信すべきフレームを有する場合、優先順位に従ってそのフレームを受け取り、PON送受信部85に出力する。このとき、送信処理部84は、MPCPフレームに対して、送信時のタイムスタンプを上書きして出力するようにしてもよい。
【0049】
PON制御部65は、MPCPおよびOAMなど、PON回線の制御および管理に関する局側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている各ONUとMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、ONUの登録、離脱および帯域割り当てを含めた上りアクセス制御、帯域割り当ておよび下り通信速度の切り替えを含めた下りアクセス制御、ならびにONUへのスリープ指示を含めたONUの運用管理などを行なう。
【0050】
制御IF部82は、制御部91からの指示に基づいて、集線IF部81、受信処理部83、送信処理部84、およびPON制御部65への設定を行ない、これら各ユニットの状態を制御部91に通知する。また、これら各ユニットに異常が発生した場合は、制御部91からの指示に依らず、異常が発生したユニットの状態を制御部91に通知する。PON送受信部85への設定および状態通知は、受信処理部83を経由して行なわれる。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態に係る局側装置における送信処理部およびその周辺構成を詳細に示す図である。
【0052】
図3を参照して、バッファ部66と、フレーム分離化部51と、1G送信フォーマット変換部52と、10G送信フォーマット変換部53と、1G符号化部54と、10G符号化部55とが、図2に示す送信処理部84の一部に相当する。また、1G送信部56と、10G送信部57とが、図2に示すPON送受信部85の一部に相当する。
【0053】
バッファ部66と、フレーム分離化部51と、1G送信フォーマット変換部52と、10G送信フォーマット変換部53と、1G符号化部54と、10G符号化部55とが、たとえば1つのLSI(Large Scale Integration)に含まれる。また、PON制御部65は、たとえば1つのCPU(Central Processing Unit)に含まれる。
【0054】
バッファ部66は、FIFO88を介して集線IF部81から受けたデータフレーム、およびPON制御部65から受けた制御フレームを蓄積する。
【0055】
フレーム分離化部51は、バッファ部66において蓄積されたフレームを取り出し、取り出したフレームを1Gbps(ギガビット/秒)の速度で送信すべきフレームと10Gbps(ギガビット/秒)の速度で送信すべきフレームとに分離し、1G送信フォーマット変換部52および10G送信フォーマット変換部53へそれぞれ出力する。
【0056】
1G送信フォーマット変換部52は、フレーム分離化部51から受けたフレームを、たとえばPCS(Physical Coding Sublayer)に対応するフォーマットに変換し、変換したフレームを出力する。
【0057】
1G符号化部54は、1G送信フォーマット変換部52から受けたフレームに対してたとえばPCSに対応する誤り訂正等の符号化を行ない、符号化したフレームを出力する。
【0058】
1G送信部56は、1G符号化部54から受けた1Gbpsの電気信号であるフレームを1Gbpsに対応する波長の下り光信号に変換してPON回線203へ送信する。
【0059】
10G送信フォーマット変換部53は、フレーム分離化部51から受けたフレームを、たとえばPCSに対応するフォーマットに変換し、変換したフレームを出力する。
【0060】
10G符号化部55は、10G送信フォーマット変換部53から受けたフレームに対してたとえばPCSに対応する誤り訂正等の符号化を行ない、符号化したフレームを出力する。
【0061】
10G送信部57は、10G符号化部55から受けた10Gbpsの電気信号であるフレームを10Gbpsに対応する波長の下り光信号に変換してPON回線203へ送信する。
【0062】
図4は、本発明の実施の形態に係る宅側装置の構成を示す図である。
【0063】
図4を参照して、宅側装置202は、マルチレート受信処理部33と、1G受信フォーマット変換部15と、10G受信フォーマット変換部16と、フレーム多重化部19と、受信制御部20と、PON制御部(速度切り替え情報取得部,切り替え報告部)21とを備える。マルチレート受信処理部33は、シングルレート受信処理部31,32を含む。シングルレート受信処理部31は、1G受信部11と、1G復号化部13とを含む。シングルレート受信処理部32は、10G受信部12と、10G復号化部14とを含む。フレーム多重化部19は、バッファ17,18を含む。
【0064】
1G復号化部13と、10G復号化部14と、1G受信フォーマット変換部15と、10G受信フォーマット変換部16と、フレーム多重化部19と、受信制御部20とが、たとえば1つのLSIに含まれる。また、PON制御部21は、たとえば1つのCPUに含まれる。
【0065】
マルチレート受信処理部33は、局側装置201から送信される複数種類の速度のフレームたとえば1Gbpsおよび10Gbpsのフレームを受信して処理する。マルチレート受信処理部33において、シングルレート受信処理部31,32は、フレームの速度に対応して設けられ、対応の速度のフレームを受信して処理する。すなわち、シングルレート受信処理部31は、対応の1Gbpsの速度を有するフレームを受信して処理する。また、シングルレート受信処理部32は、対応の10Gbpsの速度を有するフレームを受信して処理する。
【0066】
より詳細には、1G受信部11は、PON回線203経由で局側装置201から1Gbpsに対応する波長の光信号を受信し、受信した光信号を電気信号である1Gbpsのフレームに変換して出力する。このフレームは、たとえばPCSに対応するフォーマットを有する。
【0067】
1G復号化部13は、1G受信部11から受けたフレームに対してたとえばPCSに対応する誤り訂正等の復号化を行ない、復号化したフレームを出力する。
【0068】
1G受信フォーマット変換部15は、1G復号化部13から受けたフレームを所定のフォーマットに変換し、変換したフレームを出力する。また、1G受信フォーマット変換部15は、1G復号化部13からフレームを受けると、これに応答して対応の速度のフレームを受けたことを示す受信情報を受信制御部20へ出力する。
【0069】
10G受信部12は、PON回線203経由で局側装置201から10Gbpsに対応する波長の光信号を受信し、受信した光信号を電気信号である10Gbpsのフレームに変換して出力する。このフレームは、たとえばPCSに対応するフォーマットを有する。
【0070】
10G復号化部14は、10G受信部12から受けたフレームに対してたとえばPCSに対応する誤り訂正等の復号化を行ない、復号化したフレームを出力する。
【0071】
10G受信フォーマット変換部16は、10G復号化部14から受けたフレームを所定のフォーマットに変換し、変換したフレームを出力する。また、10G受信フォーマット変換部16は、10G復号化部14からフレームを受けると、これに応答して対応の速度のフレームを受けたことを示す受信情報を受信制御部20へ出力する。
【0072】
フレーム多重化部19は、シングルレート受信処理部31,32の各々によって処理されたフレームを受ける。そして、フレーム多重化部19は、これらのフレームを、受けた順番で出力する。フレーム多重化部19において、バッファ17,18は、たとえばFIFO(First In First Out)であり、シングルレート受信処理部31,32にそれぞれ対応して設けられ、対応のシングルレート受信処理部から受けたフレームを少なくとも1つ分蓄積する。
【0073】
より詳細には、FIFO17は、1G受信フォーマット変換部15から受けたフレームを少なくとも1つ分蓄積する。FIFO18は、10G受信フォーマット変換部16から受けたフレームを少なくとも1つ分蓄積する。フレーム多重化部19は、FIFO17から出力されるフレームおよびFIFO18から出力されるフレームを、その出力された順番で出力する。また、フレーム多重化部19は、FIFO17から出力されるフレームおよびFIFO18から出力されるフレームのうち、データフレームを図示しないパーソナルコンピュータ等のユーザ端末へ送信し、制御フレームをPON制御部21へ出力する。
【0074】
受信制御部20は、PON制御部21とは別個の専用ハードウェアによって実現される。受信制御部20は、電源供給制御およびクロック供給制御等を行なうことにより、1G受信部11、1G復号化部13、10G受信部12および10G復号化部14の動作開始および動作停止を切り替える。また、受信制御部20は、PON制御部21との間で制御情報の送受信を行なう。
【0075】
PON制御部21は、MPCPおよびOAM等、PON回線の制御および管理に関する宅側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されているOLTとMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、フレームの速度切り替え等のアクセス制御などを行なう。
【0076】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る局側装置および宅側装置が通信速度の切り替えを行なう際の動作について図面を用いて説明する。本発明の実施の形態では、局側装置201および宅側装置202を動作させることによって、本発明の実施の形態に係る通信速度切り替え方法が実施される。よって、本発明の実施の形態に係る通信速度切り替え方法の説明は、以下の局側装置201および宅側装置202の動作説明に代える。なお、以下の説明においては、適宜図1〜図4を参照する。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置および宅側装置が通信速度切り替え処理を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【0078】
図6は、本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける局側装置および宅側装置間のデータの流れ、ならびに通信速度切り替え処理のシーケンスを示す図である。
【0079】
図5および図6を参照して、まず、局側装置201(OLT)は、1Gbpsの下りフレームを宅側装置(ONU)202へ送信し(ステップS1)、宅側装置202は、局側装置201からの1Gbpsの下りフレームを受信している状態である(ステップS21)。
【0080】
次に、局側装置201は、下りフレームの速度の切り替えを示す速度切り替え指示を宅側装置202へ送信する。より詳細には、OSU92におけるPON制御部65は、速度切り替え指示を示す制御フレームを生成し、PON送受信部85を介して宅側装置202へ送信する(ステップS2)。
【0081】
次に、局側装置201は、速度切り替え指示を宅側装置202へ送信した後、少なくとも切り替え準備完了情報を宅側装置202から受信するまでの間、すなわち、少なくとも図6に示す期間T1において、切り替え元の速度たとえば1Gbpsのフレームを宅側装置202へ継続して送信する(ステップS3)。
【0082】
次に、宅側装置202は、局側装置201から送信された速度切り替え指示を示す制御フレームを受信する。より詳細には、宅側装置202におけるPON制御部21は、速度切り替え指示を示す制御フレームをフレーム多重化部19から受ける(ステップS11)。
【0083】
次に、宅側装置202は、局側装置201から速度の切り替え指示を受信すると、切り替え元の速度のフレームを受信可能な状態から、切り替え元の速度のフレームおよび速度切り替え指示が示す切り替え先の速度のフレームを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移する。たとえば、宅側装置202は、1Gbpsのフレームを受信可能なシングルレート受信状態から、1Gbpsのフレームおよび10Gbpsのフレームの両方を受信可能なマルチレート受信状態に遷移する。
【0084】
より詳細には、PON制御部21は、速度切り替え指示を示す制御フレームを受けて、状態遷移指示を受信制御部20へ出力する(ステップS12)。
【0085】
受信制御部20は、PON制御部21から状態遷移指示を受けて、マルチレート受信処理部33を、切り替え元の速度のフレームを受信可能な状態から、切り替え元の速度のフレームおよび速度切り替え情報が示す切り替え先の速度のフレームを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させる。言い換えれば、受信制御部20は、マルチレート受信処理部33が現在受信可能な切り替え元の速度のフレームに加えて、速度切り替え情報が示す切り替え先の速度のフレームも受信可能な状態に遷移させる。
【0086】
すなわち、受信制御部20は、マルチレート受信処理部33を、切り替え元の速度に対応するシングルレート受信処理部31が動作可能な状態から、切り替え元の速度に対応するシングルレート受信処理部31および速度切り替え情報が示す切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部32が動作可能な速度切り替え用受信状態に遷移させる。たとえば、受信制御部20は、1G受信部11および1G復号化部13が動作するシングルレート受信状態から、1G受信部11、1G復号化部13、10G受信部12および10G復号化部14が動作するマルチレート受信状態に遷移させる(ステップS22)。
【0087】
そして、受信制御部20は、マルチレート受信処理部33が速度切り替え用受信状態へ遷移したことを示す状態遷移完了情報をPON制御部21へ出力する(ステップS23)。
【0088】
次に、宅側装置202におけるPON制御部21は、受信制御部20から状態遷移完了情報を受けて、下りフレームの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を示す制御フレームを生成し、局側装置201へ送信する(ステップS13)。
【0089】
次に、局側装置201は、宅側装置202から切り替え準備完了情報を示す制御フレームを受信する(ステップS4)。
【0090】
次に、局側装置201は、現在送信すべき下りフレームの中に、切り替え元の速度たとえば1Gbpsを有するフレームが残っている場合には、当該未送信のフレームを宅側装置202へ送信する。すなわち、宅側装置202がマルチレート受信状態にあることから、局側装置201は、図6に示す期間T2において、未送信の1Gbpsのフレームを宅側装置202へ送信することが可能となる(ステップS5)。
【0091】
次に、局側装置201は、切り替え先の速度たとえば10Gbpsのフレームを宅側装置202へ送信する(ステップS6)。
【0092】
次に、宅側装置202は、切り替え先の速度である10Gbpsのフレームを局側装置201から受信すると、速度切り替え用受信状態から、切り替え先の速度である10Gbpsのフレームを受信可能な状態に遷移する。
【0093】
より詳細には、受信制御部20は、切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部32が局側装置201から対応の速度のフレームすなわち10Gbpsのフレームを受信すると(ステップS24)、切り替え元の速度すなわち1Gbpsのフレームに対応するシングルレート受信処理部31の動作を停止させる(ステップS25)。
【0094】
すなわち、受信制御部20は、1G受信部11、1G復号化部13、10G受信部12および10G復号化部14が動作するマルチレート受信状態から、10G受信部12および10G復号化部14が動作するシングルレート受信状態に遷移させる。ただし、受信制御部20は、受信中の1Gbpsのフレームが存在する場合には、シングルレート受信処理部31が当該フレームの受信処理を完了するまで待ち、当該フレームの受信処理の完了後、シングルレート受信処理部31の動作を停止させる。
【0095】
図7は、本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける各速度のフレーム受信状態の一例を示す図である。
【0096】
図7において、状態Aは、宅側装置202においてユニキャストフレームおよびブロードキャストフレームの別を判断せずにマルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移を行なうと仮定した構成における受信状態を示している。また、状態Bは、ユニキャストフレームおよびブロードキャストフレームの別を判断してマルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移を行なう宅側装置202における受信状態を示している。
【0097】
ここで、ユニキャストフレームは、1つの宅側装置を宛先とするフレームであり、たとえばフレームにおけるLLID(Logical Link Identification)が1つの宅側装置を示すフレームである。
【0098】
また、ブロードキャストフレームには、たとえばディスカバリフレームおよびマルチキャストフレームが含まれる。
【0099】
図7を参照して、たとえば、宅側装置202において、時刻t1において1GbpsのユニキャストフレームU1が到着し、時刻t2において1Gbpsおよび10GbpsのブロードキャストフレームBC1がそれぞれ到着し、時刻t3において1GbpsのユニキャストフレームU2が到着し、時刻t4において10GbpsのユニキャストフレームU3が到着し、時刻t5において1Gbpsおよび10GbpsのブロードキャストフレームBC2がそれぞれ到着し、時刻t6において10GbpsのユニキャストフレームU4が到着する。ここで、時刻t1までに宅側装置202は速度切り替え用受信状態へ遷移していると仮定する。
【0100】
前述のように、受信制御部20は、1G受信フォーマット変換部15または10G受信フォーマット変換部16から受けた受信情報に基づいて、切り替え先の速度を有するフレームを局側装置201から受信したことを検出する。
【0101】
ここで、受信制御部20がユニキャストフレームおよびブロードキャストフレームの別を判断せずにマルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移を行なう構成では、以下のような問題が生じる。すなわち、受信制御部20は、1Gbpsおよび10Gbpsのマルチレート受信状態において、10GbpsのブロードキャストフレームBC1を受けた10G受信フォーマット変換部16から受信情報を受けると、時刻t3において1Gbpsおよび10Gbpsのマルチレート受信状態から10Gbpsのシングルレート受信状態へ遷移する。そうすると、宅側装置202は、時刻t3において受信すべき1GbpsのユニキャストフレームU2を受信できなくなってしまう(状態A)。
【0102】
これに対して、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、ユニキャストフレームおよびブロードキャストフレームの別を判断してマルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移を行なう。たとえば、受信制御部20は、時刻t2において10Gbpsを有するブロードキャストフレームBC1を受信した場合には、切り替え先の速度を有するフレームを局側装置201から受信したと判断しない。そして、受信制御部20は、時刻t4において10Gbpsを有するユニキャストフレームU3を受信した場合に、切り替え先の速度を有するフレームを局側装置201から受信したと判断する。
【0103】
すなわち、受信制御部20は、切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部32が、1つの宅側装置202を宛先とするフレームのうち、自己の宅側装置202を宛先とするフレームであって切り替え先の速度を有するフレームを局側装置201から受信すると、切り替え元の速度に対応するシングルレート受信処理部31の動作を停止させる。これにより、宅側装置202は、時刻t3において受信すべき1GbpsのユニキャストフレームU2を受信することができ、そして、時刻t4においてシングルレート受信状態へ正しく遷移することができる(状態B)。
【0104】
このような構成により、PONシステム301において、ブロードキャストフレームが複数の速度で送信される場合でも、当該ブロードキャストフレームのロス、および複数の速度のブロードキャストフレームを同時受信することによる誤動作を防ぐことができる。すなわち、複数の速度のブロードキャストフレームを送受信するPONシステムにおいても、通信速度の切り替えを適切に行なうことが可能となる。
【0105】
以上のように、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、局側装置201から速度切り替え指示を受信すると、受信制御部20は、マルチレート受信処理部33を、切り替え元の速度のフレームを受信可能な状態から、切り替え元の速度のフレームおよび速度切り替え情報が示す切り替え先の速度のフレームを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させる。すなわち、局側装置201がフレームの速度を切り替える際に、宅側装置202は、2つの速度のフレームを受信可能な状態とする。
【0106】
このような速度切り替え用受信状態を設ける構成により、通信速度を切り替える際に、下りフレームのロスが生じることを防ぐことができ、また、局側装置201の下りフレーム送信に空き時間が発生し、宅側装置202においてフレーム受信の遅延が発生することを防ぐことができる。したがって、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、特許文献1に記載の技術を超えて、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。
【0107】
また、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、通信速度を切り替える際に、局側装置201から宅側装置202へ送信すべき下りフレームが局側装置201において滞留することを防ぐことができる。これにより、下りフレームを蓄積するための局側装置201におけるバッファ容量を低減することができる。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、受信制御部20は、切り替え先の速度に対応するシングルレート受信処理部が局側装置201から対応の速度のフレームを受信すると、切り替え元の速度に対応するシングルレート受信処理部の動作を停止させる。すなわち、局側装置201がフレームの速度を切り替える際に、宅側装置202は、切り替え先の速度を有するフレームを受信するまでの間、2つの速度のフレームを受信可能な状態とする。
【0109】
ここで、宅側装置202において、受信制御部20が設けられず、PON制御部21がマルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移を実行すると仮定した構成を考える。このような構成では、以下のような問題が生じる。すなわち、図6を参照して、PON制御部21が、たとえば10G受信フォーマット変換部16からの受信情報を割り込みとして受けてから(ステップS31)、シングルレート受信状態への切り替え指示をマルチレート受信処理部33へ出力する(ステップS32)までに時間T3を要してしまう。
【0110】
これに対して、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、CPU等が実行するプログラムで実現されるPON制御部21とは別に、LSI等の専用ハードウェアで実現される受信制御部20を設ける。これにより、宅側装置202は、切り替え先の新しい速度でフレームを受信すると、瞬時に切り替え元の古い速度に対応するシングルレート受信処理部の動作を停止させることができる。
【0111】
すなわち、切り替え先の速度のフレームを受信したことに応答して、マルチレート受信状態からシングルレート受信状態への切り替えを瞬時に行なうことができるため、並行して複数の速度のフレームを受信するマルチレート受信状態の期間を最小限にすることができる。
【0112】
したがって、PON制御部21がマルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移を実行する構成と比べて、マルチレート受信状態からシングルレート受信状態への遷移時間を時間T3短縮することができる。これにより、宅側装置202の消費電力を低減することができる。また、宅側装置202におけるFIFO17,18の容量を最小限の1フレーム分にすることができる。さらに、宅側装置202のフレーム受信処理能力を、1種類の速度のフレームを処理可能なレベルに設定することが可能となる。
【0113】
また、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、フレーム多重化部19は、各シングルレート受信処理部によって処理されたフレームを受けて、フレームを受けた順番でフレームを出力する。
【0114】
このような構成により、シングルレート受信状態およびマルチレート受信状態間の切り替えの際にフレームの処理順序が狂うことを防ぐことができる。
【0115】
また、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、フレーム多重化部19は、シングルレート受信処理部に対応して設けられ、対応のシングルレート受信処理部から受けたフレームを少なくとも1つ分蓄積しうる複数のバッファ17,18を含む。
【0116】
このような構成により、最小限の1フレーム分のバッファ容量で、マルチレート受信状態からシングルレート受信状態へ切り替える際におけるフレームのロスを防ぐことができる。
【0117】
また、本発明の実施の形態に係る宅側装置では、PON制御部21は、局側装置201から送信される速度の切り替え指示を受信する。そして、PON制御部21は、受信制御部20から状態遷移完了情報を受けて、フレームの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を局側装置201へ送信する。
【0118】
このような構成により、局側装置201からの通信速度の切り替え指示に従って宅側装置202が通信速度の切り替え準備を行ない、この準備完了を局側装置201に報告する一連のシーケンスを実現することができる。
【0119】
また、本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置201は、速度切り替え指示を宅側装置202へ送信した後、少なくとも切り替え準備完了情報を宅側装置202から受信するまでの間、切り替え元の速度を有するフレームを宅側装置202へ送信する。
【0120】
このように、局側装置201が、速度切り替え指示を宅側装置202へ送信した後、下りフレーム送信を停止せずに継続する構成により、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることができる。
【0121】
[変形例]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、たとえば以下の変形例も含まれる。
【0122】
なお、本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、局側装置201および宅側装置202は、1Gbpsおよび10Gbpsの2種類のフレームを送受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。通信速度はこれら以外の値であってもよく、また、3種類以上の速度のフレームを送受信する構成であってもよい。すなわち、PONシステム301は、複数種類の速度のフレームを送信可能な局側装置201と、局側装置201から送信される複数種類の速度のフレームを受信可能な1または複数の宅側装置202とを備える構成であればよい。
【0123】
また、本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、下り方向において、1種類の速度のフレームを受信している状態から他の1種類の速度のフレームを受信している状態へ切り替える構成であるとしたが、これに限定するものではない。1または複数種類の速度のフレームを受信している状態から1または複数種類の速度のフレームを受信している状態へ切り替える場合でも、切り替え元の速度のフレームを受信可能な状態から、切り替え元の速度のフレームおよび速度切り替え情報が示す切り替え先の速度のフレームを受信可能な状態に遷移させる構成により、通信データの速度を切り替える際における通信データの伝送能力を向上させることが可能である。
【0124】
また、本発明の実施の形態に係るPONシステムでは、フレームすなわちバーストデータを送受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。局側装置および宅側装置間で連続的なデータが送受信される構成であってもよい。
【0125】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置では、PON制御部21は、局側装置201から送信される速度の切り替え指示を速度切り替え情報として受信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。宅側装置202が、局側装置201以外の装置から速度切り替え情報を受信する構成であってもよいし、宅側装置202自身が自立的に速度の切り替えの必要性を判断し、速度切り替え情報を生成する構成であってもよい。
【0126】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
11 1G受信部
12 10G受信部
13 1G復号化部
14 10G復号化部
15 1G受信フォーマット変換部
16 10G受信フォーマット変換部
17,18 バッファ
19 フレーム多重化部
20 受信制御部
21 PON制御部(速度切り替え情報取得部,切り替え報告部)
31,32 シングルレート受信処理部
33 マルチレート受信処理部
51 フレーム分離化部
52 1G送信フォーマット変換部
53 10G送信フォーマット変換部
54 1G符号化部
55 10G符号化部
56 1G送信部
57 10G送信部
65 PON制御部
66 バッファ部
81 集線IF部
82 制御IF部
83 受信処理部
84 送信処理部
85 PON送受信部
87,88 FIFO
91 制御部
92−1〜92−N 光回線ユニット
93 集線部
201 局側装置(OLT)
202 宅側装置(ONU)
203−1〜203−N PON回線
204−1〜204−N 光カプラ
301 PONシステム。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置から送信される複数種類の速度の通信データを受信可能な通信装置であって、
前記通信データを受信して処理するためのマルチレート受信処理部と、
前記通信データの速度の切り替えを示す速度切り替え情報を取得するための速度切り替え情報取得部と、
前記速度切り替え情報取得部によって前記速度切り替え情報が取得されると、前記マルチレート受信処理部を、切り替え元の速度の前記通信データを受信可能な状態から、前記切り替え元の速度の前記通信データおよび前記速度切り替え情報が示す切り替え先の速度の前記通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、前記マルチレート受信処理部が前記速度切り替え用受信状態へ遷移したことを示す状態遷移完了情報を出力するための受信制御部とを備える、通信装置。
【請求項2】
前記マルチレート受信処理部は、前記通信データの速度に対応して設けられ、対応の前記速度の通信データを受信して処理するための複数のシングルレート受信処理部を含み、
前記受信制御部は、前記速度切り替え情報取得部によって前記速度切り替え情報が取得されると、前記マルチレート受信処理部を、切り替え元の前記速度に対応する前記シングルレート受信処理部が動作可能な状態から、前記切り替え元の速度に対応する前記シングルレート受信処理部および前記速度切り替え情報が示す切り替え先の前記速度に対応する前記シングルレート受信処理部が動作可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、
前記受信制御部は、前記切り替え先の速度に対応する前記シングルレート受信処理部が前記他の装置から対応の前記速度の通信データを受信すると、前記切り替え元の速度に対応する前記シングルレート受信処理部の動作を停止させる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記受信制御部は、前記切り替え先の速度に対応する前記シングルレート受信処理部が、1つの通信装置を宛先とする前記通信データのうち、自己の前記通信装置を宛先とする前記通信データであって前記切り替え先の速度を有する前記通信データを前記他の装置から受信すると、前記切り替え元の速度に対応する前記シングルレート受信処理部の動作を停止させる、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置は、さらに、
各前記シングルレート受信処理部によって処理された通信データを受けて、前記通信データを受けた順番で前記通信データを出力するための通信データ多重化部を備える、請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信データはフレームであり、
前記通信データ多重化部は、
前記シングルレート受信処理部に対応して設けられ、対応の前記シングルレート受信処理部から受けた前記フレームを少なくとも1つ分蓄積しうるバッファを複数含む、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記速度切り替え情報取得部は、前記他の装置から送信される前記速度の切り替え指示を前記速度切り替え情報として受信し、
前記通信装置は、さらに、
前記受信制御部から前記状態遷移完了情報を受けて、前記通信データの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を前記他の装置へ送信するための切り替え報告部を備える、請求項1から5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
複数種類の速度の通信データを送信可能な第1の通信装置と、
前記第1の通信装置から送信される前記複数種類の速度の通信データを受信可能な第2の通信装置とを備え、
前記第2の通信装置は、
前記第1の通信装置から送信される前記通信データを受信して処理するためのマルチレート受信処理部と、
前記通信データの速度の切り替えを示す速度切り替え情報を取得するための速度切り替え情報取得部と、
前記速度切り替え情報取得部によって前記速度切り替え情報が取得されると、前記マルチレート受信処理部を、切り替え元の速度の前記通信データを受信可能な状態から、前記切り替え元の速度の前記通信データおよび前記速度切り替え情報が示す切り替え先の速度の前記通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移させ、前記マルチレート受信処理部が前記速度切り替え用受信状態へ遷移したことを示す状態遷移完了情報を出力するための受信制御部とを含む、通信システム。
【請求項8】
前記第1の通信装置は、前記通信データの速度の切り替え指示を前記第2の通信装置へ送信し、
前記速度切り替え情報取得部は、前記第1の通信装置から送信された前記速度の切り替え指示を前記速度切り替え情報として受信し、
前記第2の通信装置は、さらに、
前記受信制御部から前記状態遷移完了情報を受けて、前記通信データの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を前記第1の通信装置へ送信するための切り替え報告部を含み、
前記第1の通信装置は、前記速度の切り替え指示を前記第2の通信装置へ送信した後、少なくとも前記切り替え準備完了情報を前記第2の通信装置から受信するまでの間、前記切り替え元の速度の通信データを前記第2の通信装置へ送信する、請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
複数種類の速度の通信データを送信可能な第1の通信装置と、
前記第1の通信装置から送信される前記複数種類の速度の通信データを受信可能な第2の通信装置とを備える通信システムにおける通信速度切り替え方法であって、
前記第1の通信装置が、前記通信データの速度の切り替え指示を前記第2の通信装置へ送信するステップと、
前記第2の通信装置が、前記第1の通信装置から送信された前記速度の切り替え指示を受信するステップと、
前記第2の通信装置が、切り替え元の速度の前記通信データを受信可能な状態から、前記切り替え元の速度の前記通信データおよび前記速度の切り替え指示が示す切り替え先の速度の前記通信データを受信可能な速度切り替え用受信状態に遷移するステップと、
前記第2の通信装置が、前記通信データの速度の切り替え準備が完了したことを示す切り替え準備完了情報を前記第1の通信装置へ送信するステップと、
前記第1の通信装置が、前記切り替え準備完了情報を前記第2の通信装置から受信して、前記切り替え先の速度の前記通信データを前記第2の通信装置へ送信するステップと、
前記第2の通信装置が、前記切り替え先の速度の前記通信データを前記第1の通信装置から受信して、前記速度切り替え用受信状態から、前記切り替え先の速度の前記通信データを受信可能な状態に遷移するステップとを含む、通信速度切り替え方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−15597(P2012−15597A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147583(P2010−147583)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】