説明

通信装置および通信制御方法

【課題】TDM網において伝送されたデータに対応するパケットを、パケット交換網で伝送させる際の揺らぎの発生を抑制する。
【解決手段】実施の1形態の通信装置12は、第1TDM網200および第2TDM網205において時分割で伝送されるべき複数のデジタル信号に対応する複数のパケットについて、各パケットの属性に応じて異なる送出期間を定めたタイミング情報を保持する。そして、第1TDM網200において時分割で伝送された複数のデジタル信号に対応する複数のパケットのそれぞれを、タイミング情報にしたがって、各パケットの属性に応じた送出期間内にパケット交換網18へ送出することにより、各パケットを時分割でパケット交換網18へ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ通信技術に関し、特に、TDM(Time Division Multiplexing)網において伝送されたデータを、パケット交換網で伝送させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声サービス等のTDM64kbps×Nのデータは、1.5Mbps→6Mbps→50Mbps VC3(Virtual Container 3)→150Mbps STM1(Synchronous Transport Module level-1)というように、SONET/SDH網に多重収容され伝送されていた。イーサネット(登録商標)の普及および安価化により、従来のTDM64kbps×Nのデータをパケット化し、イーサネットによる中継網を使用して伝送する技術が提案されてきている(例えば、非特許文献1および2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IETF RFC5086,“Structure-Aware Time Division Multiplexed (TDM) Circuit Emulation Service over Packet Switched Network (CESoPSN)”、[online]、[平成22年9月27日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc5086.txt>
【非特許文献2】IETF RFC4842,“Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy (SONET/SDH) Circuit Emulation over Packet (CEP)”、[online]、[平成22年9月27日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc4842.txt>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のTDM64kbps×Nのユーザデータをそれぞれパケット化、多重化した後、そのパケットを大容量のパケット交換網へ伝送する場合、ユーザ数(すなわちTDM回線数)の増減による揺らぎが発生し、伝送品質の低下を招くことがあった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、TDM網において伝送されたデータに対応するパケットを、パケット交換網で伝送させる際の揺らぎの発生を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信装置は、デジタル信号の送信元である第1のTDM(Time Division Multiplexing)網と、そのデジタル信号の送信先である第2のTDM網とを仲介するパケット交換網に対して、パケットを送出する装置であって、第1および第2のTDM網において時分割で伝送されるべき複数のデジタル信号に対応する複数のパケットについて、各パケットの属性に応じて異なる送出期間を定めた情報を保持するタイミング保持部と、第1のTDM網において時分割で伝送された複数のデジタル信号に対応する複数のパケットのそれぞれを、各パケットの属性に応じた送出期間内にパケット交換網へ送出することにより、各パケットを時分割でパケット交換網へ送出する送出部と、を備える。
【0007】
複数のデジタル信号に対応する複数のパケットのそれぞれは、各デジタル信号に対してCEP(Circuit Emulation over Packet)処理を実行した(以下では、「CEP化」もしくは「パケット化」とも呼ぶ。)結果としてのパケットであってもよい。本明細書におけるCEP化は、TDM網で伝送されたデジタル信号にIPヘッダを付加してIPパケットとすることや、MACヘッダを付加してイーサネットフレームとすること等を含む。また、MPLS(Multi-Protocol Label Switching)のラベルが付加されたIPパケットやイーサネットフレームとすることも含む。パケットの属性は、そのパケットにより伝送されるデータの送信元であるユーザの情報、TDM回線の種類(通信速度等)、またはCEP化(パケット化)のレイテンシ値のいずれか1つであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0008】
送出部は、互いに属性が異なる複数のパケットそれぞれの送出時間を異ならせることで、各パケットをいわば時分割多重でパケット交換網へ送出してもよい。「いわば時分割多重で送出する」とは、TDM網から受け付けられたユーザパケットを、予め定められた周期内の予め定められた時間に送出することでもよい。言い換えれば、複数のユーザパケットのそれぞれに時分割で帯域を割り当てて各ユーザパケットを順次送出することでもよい。
【0009】
この態様によると、パケット交換網に対してTDM伝送の概念が取り入れられて各パケットの送出期間が異なるものとなることで、パケット交換網に収容するユーザ数(言い換えればTDM回線数)に増減が生じても、各パケットの衝突を回避できる。これにより、揺らぎの発生を抑制して、パケット交換網における伝送品質を確保できる。揺らぎの発生を抑制できることで、揺らぎに対応するためのメモリ量の削減が可能になるとともに、揺らぎの発生を考慮した伝送網・通信装置の設計も容易化できる。
【0010】
なお、この態様の通信装置は、TDM網とパケット交換網の境界に設置されて、TDMデータのパケット化を実行する装置であってもよい。また、パケット交換網の内部に設置されて、TDMデータに対応するパケットをパケット交換網の内部で中継する装置であってもよい。
【0011】
第1のTDM網から、時分割で伝送された複数のデジタル信号を取得する取得部と、取得された複数のデジタル信号をパケット交換網において伝送させるための所定のデータ形式へ変換することにより、複数のデジタル信号に対応する複数のパケットを設定する変換部と、をさらに備えてもよい。
【0012】
所定のデータ形式は、パケット交換網がレイヤ3網である場合にはIPパケットの形式でもよく、パケット交換網がレイヤ2網である場合にはイーサネットフレームの形式でもよく、MPLSラベルが付加された形式でもよい。この態様によると、TDM網とパケット交換網の境界に設置されて、TDMデータのパケット化を実行する装置において、複数のパケットを時分割でパケット交換網へ送出することにより、パケットの送出における揺らぎの発生を抑制できる。
【0013】
タイミング保持部は、パケット交換網を監視もしくは試験するためのパケットの送出期間を、複数のデジタル信号に対応する複数のパケットの送出期間と重複しないように定めた情報を保持し、送出部は、複数のデジタル信号に対応する複数のパケットとは異なるタイミングで、監視もしくは試験するためのパケットをパケット交換網へ送出してもよい。
【0014】
パケット交換網を監視もしくは試験するためのパケットは、パケット交換網を保守するために予め定められたパケット交換網特有のパケットであってもよい。例えば、OAM(Operation Administration and Maintenance)用途のパケットであってもよく、試験用途のLONGパケットであってもよく、インチャネル制御監視用途のパケットであってもよい。
【0015】
この態様によると、TDM網を介して伝送されたユーザデータに対応するパケット、いわゆる主信号とは別に、パケット交換網を監視もしくは試験するためのパケットの伝送期間が確保される。これにより、主信号としてのパケットと保守用途のパケットとの衝突を回避でき、揺らぎの発生を抑制できる。
【0016】
タイミング保持部は、第1のTDM網において1つのデジタル信号の伝送に割り当てられた期間を、パケット交換網に対するパケット送信の基準となる期間とし、複数のパケットそれぞれの送出期間として、上記の基準となる期間の異なる一部を割り当てることを定めた情報を保持してもよい。
【0017】
TDM網において1つのデジタル信号の伝送に割り当てられた期間は、125マイクロ(μ)秒であってもよく、この場合、TDM伝送と親和性の高い125μ秒×Nのマルチフレーム構成を使用して、パケットデータを送出してもよい。SONET/SDHを含むTDM伝送では所定期間(例えば125μ秒)単位でのフレーム構成であるため、パケット交換網へのパケットの送出周期をその所定期間にあわせて構成することで、装置構成の複雑化を回避できる。
【0018】
タイミング保持部は、複数のパケットそれぞれの送出期間として、それぞれのパケット化におけるレイテンシ値に応じて、所定の一定期間における異なる送出期間を固定的に割り当てることを定めた情報を保持してもよい。
【0019】
RFC5086に記載されているように、CEP化処理には複数種のCEP化レイテンシを選択可能としている。通信帯域の有効利用と、遅延量とのトレードオフを考慮してレイテンシ値は選択されるが、固定的に数種のCEP化レイテンシ値に対してのパケット伝送領域(伝送期間)を確保することで、複雑なアルゴリズムを要することなく、各パケットに対する領域割り当てが可能になる。
【0020】
タイミング設定部をさらに備えてもよい。タイミング保持部は、複数のパケットそれぞれに対して割り当て済の送出期間を示す情報を保持し、タイミング設定部は、複数のデジタル信号とは異なる新たなデジタル信号に対応する新たなパケットを送出すべき際、他のパケットに対して未割り当ての送出期間を新たなパケットに対して割り当て、送出部は、新たなパケットに対して割り当てられた送出期間内に新たなパケットをパケット交換網へ送出してもよい。
【0021】
この態様によると、新たなパケットに対する領域割り当てを管理者・運用者等の手によらず自動化できる。また、様々なCEP化レイテンシ値に対応する複数のパケットのそれぞれに対して空き領域を柔軟に割り当てることが可能になり、通信帯域を有効に活用できる。例えば、パケットを伝送するための通信帯域を、実際には伝送されないパケットのために固定的に確保することなく、実際に伝送対象となるパケットに必要な分だけを割り当てることができる。
【0022】
本発明の別の態様は、通信制御方法である。この方法は、デジタル信号の送信側である第1のTDM網と、そのデジタル信号の受信側である第2のTDM網とを仲介するパケット交換網に対して、パケットを送出する装置により実行される方法であって、第1のTDM網において時分割で伝送された複数のデジタル信号に対応する複数のパケットのそれぞれを、各パケットの属性に応じて予め定められた送出期間内にパケット交換網へ送出することにより、各パケットを時分割でパケット交換網へ送出するステップを備える。この態様においても、上述したように、複数のパケットを時分割でパケット交換網へ送出することにより、パケットの送出における揺らぎの発生を抑制できる。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、TDM網において伝送されたデータに対応するパケットを、パケット交換網で伝送させる際の揺らぎの発生を抑制する通信装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態としての通信システムの構成を示す図である。
【図2】CEP化の動作を模式的に示す図である。
【図3】従来の通信装置の構成を模式的に示す図である。
【図4】各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第1の方法を示す図である。
【図5】各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第2の方法を示す図である。
【図6】各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第3の方法を示す図である。
【図7】各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第1〜第3の方法を具現化した例を示す図である。
【図8】図7に対応するフレーム構成を全64フレーム分示す図である。
【図9】図1の通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図10】タイミング制御部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
【図11】タイミング情報の構成を示す図である。
【図12(a)】図1の通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図12(b)】図1の通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】第1の変形例における通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】第2の変形例の概念を示す図である。
【図15】第2の変形例におけるタイミング設定部の動作を説明するための図である。
【図16】第4の変形例における通信システムの構成を示す図である。
【図17】図16のパケット中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、実施の形態としての通信システムの構成を示す。通信システム10では、TDM回線201〜TDM回線204を含む第1TDM網200と、TDM回線206〜TDM回線209を含む第2TDM網205との間で送受される連続信号(ビットストリーム)としてのデジタル信号(以下、「TDMデータ」とも呼ぶ。)を、レイヤ2網であるパケット交換網18が中継する。具体的には、パケット交換網18において、間欠信号であるパケットとしてTDMデータの内容を中継する。
【0027】
通信装置12、通信装置14、通信装置16のそれぞれは、TDM回線に対するインタフェースと、パケット交換網18に対するインタフェースとの両方を備え、TDMデータとパケットとを相互に変換するCEP化処理(およびDeCEP化処理)の実行装置である。これらは、CEPインタフェース盤ともいえる。
【0028】
通信装置12は、TDM回線201〜TDM回線204を介して伝送されたTDMデータを回線毎にCEP化し、多重化する。そして、回線毎のパケットデータ(以下、「ユーザパケット」とも呼ぶ。)を、ギガビットイーサネット(以下、「GbE」と呼ぶ。)を介してパケット交換網18へ送出する。パケット交換網18では、パケットスイッチングによりパケット毎にGbE212やGbE213へ伝送される。パケットを受信した通信装置14または通信装置16は、ユーザパケットを分離後、DeCEP化し、TDMデータに復元してTDM回線206〜TDM回線209へ送出する。これにより、第1TDM網200から第2TDM網205に亘るデータ伝送サービスが実現される。
【0029】
例えば、TDM回線201のTDMデータが通信装置12においてCEP化されると、そのパケットはGbE211〜パケット交換網18〜GbE212〜通信装置14と伝送され、DeCEP化された結果のTDMデータがTDM回線206へ送出される。また、TDM回線209のTDMデータが通信装置16においてCEP化されると、そのパケットはGbE213〜パケット交換網18〜GbE211〜通信装置12と伝送され、DeCEP化された結果のTDMデータがTDM回線203へ送出される。本実施の形態におけるGbE211〜GbE213の通信速度は1Gbpsであることとする。
【0030】
図2は、CEP化の動作を模式的に示す。本実施の形態におけるCEP化とは、TDM回線で伝送された連続信号を、パケット交換網18を介して伝送可能なパケット(すなわち間欠信号)に変換することである。連続信号は所定のCEP化レイテンシ値にしたがってパケット化される。言い換えれば、連続信号としてのTDMデータ(以下、「ユーザデータ」とも呼ぶ。)をCEP化レイテンシ値が示す時間単位でパケット化する。図2は、64kbps(8ビット/125μ秒)の連続信号を、CEP化レイテンシ125μ秒・1ミリ(m)秒・8m秒のそれぞれでCEP化した例を示している。同図ではCEPに必要な情報を簡易に「OH」と示している。「OH」は、送信元MACアドレスや宛先MACアドレスを含むものであってよく、詳細はRFC5086やRFC4842において規定される。
【0031】
ここで、TDMデータに対応するパケットをパケット交換網において伝送させる際に揺らぎが発生する状況を説明する。図3は、従来の通信装置20の構成を模式的に示す。CEP化部22は、TDM回線301〜TDM回線304において伝送された複数のTDMデータをそれぞれCEP化し、その結果である複数のパケットを送出する。
【0032】
OAMパケット送出部24は、OAM用途のパケット(以下、「OAMパケット」とも呼ぶ。)を送出する。このOAMパケットには、パケット交換網18の任意区間における接続の正常性を調べるためのコンティニュイティチェックメッセージが含まれる。コンティニュイティチェックメッセージの例としては、ITU−T Recommendation Y.1731や、IEEE802.1agにより標準化されたイーサネットOAM(以下、「ETH−OAM」とも呼ぶ。)がある。試験パケット送出部26は、試験用途のパケット(以下、「試験パケット」とも呼ぶ。)を送出する。インチャネルパケット送出部28は、他の通信装置とのインチャネル制御監視用途のパケット(以下、「インチャネルパケット」とも呼ぶ。)を送出する。
【0033】
図3の通信装置20では、衝突ポイント30〜衝突ポイント36においてパケットの衝突が発生する。具体的には、通信装置20の内部において複数のパケットが一時に伝送されることによりパケット送出の遅延が生じ、揺らぎを生じる結果となる。以下、衝突ポイント30〜衝突ポイント36のそれぞれを具体的に説明する。
【0034】
1.衝突ポイント30
TDM回線301〜TDM回線304のTDMデータがCEP化され、一つのラインに合流する際にユーザパケット同士の衝突による揺らぎが発生する。この揺らぎは、ユーザ(TDM回線)数の増減により、増減したユーザパケットの送出に要する時間分の揺らぎを、増減にかかわらない他のユーザパケットに与えてしまう。
2.衝突ポイント32
ユーザパケットが1ラインに合流後、OAMパケットがさらに合流する際に、OAMパケットの送出に要する時間分の揺らぎをユーザパケットに与えてしまう。
3.衝突ポイント34
ユーザパケットが1ラインに合流後、試験パケットがさらに合流する際に、試験パケットの送出に要する時間分の揺らぎをユーザパケットに与えてしまう。試験パケットは、パケット長が比較的長い場合があり、大きな揺らぎの発生要因となりうる。
4.衝突ポイント36
ユーザパケットが1ラインに合流後、インチャネルパケットがさらに合流する際に、インチャネルパケットの送出に要する時間分の揺らぎをユーザパケットに与えてしまう。
【0035】
次に図1を参照して、揺らぎが発生した場合の問題点を説明する。ここでは、通信装置12がTDMデータをCEP化したユーザパケットをパケット交換網18へ送出し、通信装置14がそのパケットをパケット交換網18から取得してDeCEP化し、TDMデータを復元する場合を考える。TDMデータは連続信号であるため、一定時間に一定量の送信データが準備されなくてはならない。言い換えれば、通信装置14は、一定時間に一定量のパケットをパケット交換網18から取得しなければならない。ここで、通信装置12にてパケットの揺らぎが発生すると、通信装置14へのパケットの到達遅れが発生し、通信装置14は一定時間に一定量のデータを受信できなくなる。その結果、通信装置14において、TDM回線へ送出する信号にデータエラーが発生してしまう。
【0036】
このようなエラーの発生を回避するため、これまでは、DeCEPを行う装置(例えば通信装置14)は、揺らぎを十分に吸収可能なバッファメモリを具備する必要があった。しかし、このような解決方法では、
1.揺らぎ吸収用バッファとしてのメモリ量増加に伴ってハード規模が増大する。
2.TDMデータの伝送に揺らぎ吸収バッファにおけるデータ保持量相当分の遅延が発生する。最大の揺らぎを想定したバッファを保持する場合には、遅延量も最大となる。
3.揺らぎを考慮に入れた複雑なシステム(回線)の設計や管理が必要となる。
等の問題があった。
【0037】
すなわち、これまでは、複数のTDM64kbps×NのCEP化データ(例えばイーサネットフレーム等のパケット)をイーサネットへ多重送出する際、多重化に伴う揺らぎの発生、言い換えれば、CEP装置側での揺らぎの発生は許容されていた。その代わりに、対向のDeCEP装置で十分な揺らぎ吸収バッファを用意することで、復元したTDMデータを連続信号として送出することを担保していた。しかしこの方式では上記の問題を生じるため、本実施の形態では、CEP化・多重化を実施する際、各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる仕組み、すなわちTDMの概念を取り入れることで、CEP化装置における揺らぎの発生そのものを抑制する技術を提案する。
【0038】
以下では、本実施の形態のCEP化装置(例えば通信装置12)において、各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる仕組みを説明し、その後、通信装置の機能構成を詳細に説明する。
【0039】
図4は、各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第1の方法を示す。第1の方法では、GbE211の通信帯域(言い換えればパケット送出期間)を予め一定周期Tで分割しておく。複数のTDM回線201〜TDM回線204(ユーザ1〜ユーザn)のTDMデータを通信装置12においてパケット化し、GbE211を介してパケット交換網18へ送出する場合、一定周期Tの中をユーザ1〜ユーザnのそれぞれに対して時分割で帯域を割り当てる。すなわち、あるTDMデータに対応するユーザパケットは、予め割り当てられた送出期間内で送出し、その送出期間外では送出しない。これにより、ユーザの増減が発生しても残存するユーザへの影響を排除することができ、ユーザの増減により発生するユーザパケットの揺らぎを抑制できる。
【0040】
図5は、各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第2の方法を示す。第2の方法は第1の方法に対してさらに工夫を加えたものであり、GbE211の通信帯域に関する一定周期Tを、125μ秒×nのマルチフレーム構成とする。そして、それぞれの125μ秒区間内においてユーザ1〜ユーザnというように時分割で帯域を割り当てる。TDM(SONET/SDHを含む)伝送では125μ秒単位でのフレーム構成となっているため、パケット送出についても125μ秒の周期性で構成することにより、データ処理やメモリ配備等のハードウェア構成をシンプルに実現できる。
【0041】
なお図5では、一定周期Tを8m秒としており、一定周期Tを125μ秒×64のマルチフレーム構成に分割している。CEP化レイテンシ125μ秒のパケット長は典型的にはイーサネットフレームの規定により64バイトである。さらに各フレーム間に20バイトの間隔(InterFrame Gap:IFG)を設ける必要があるため実質的には1ユーザ当り84バイトとなり、1Gbpsの通信帯域においては672ナノ(n)秒の送出時間を占有する。したがって、GbE211における125μ秒のフレームには、約186ユーザ(TDM回線×186)を収納できることになる。
【0042】
図6は、各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第3の方法を示す。第3の方法は第1または第2の方法に対してさらに工夫を加えたものであり、ユーザパケットの送出期間(図6の主信号用パケット領域)と重複しないように、監視用途もしくは試験用途のパケットの送出期間を別途設ける。すなわち、同図の監視用・試験用パケット領域において、OAMパケット・試験パケット・インチャネルパケット(以下では、これらのパケットを総称して「保守用パケット」とも呼ぶ。)を送出する。これにより、ユーザパケットと保守用パケットとの衝突を回避してパケット揺らぎを抑制する。
【0043】
図7は、各パケットに対して時分割で帯域を割り当てる第1〜第3の方法を具現化した例を示す。同図においても図5と同様に、一定周期8m秒の中を125μ秒×64のマルチフレーム構成とする。そして、フレーム125μ秒#1〜#64のそれぞれについて、CEP化レイテンシ125μ秒のパケットへ割り当てるべき送信期間(125μ秒レイテンシ領域)、CEP化レイテンシ値1m秒のパケットへ割り当てるべき送信期間(1m秒レイテンシ領域)、CEP化レイテンシ値8m秒のパケットへ割り当てるべき送信期間(8m秒レイテンシ領域)、各種の保守用パケットへ割り当てるべき送信期間(OAM領域・試験用領域・インチャネル用領域)を予め固定的に定める。これにより、通信帯域の割り当てにおいて複雑なアルゴリズムが不要となり、帯域割当処理を容易化できる。その結果、帯域割当処理を高速化でき、またハードウェアによる実現も容易となり更なる高速化を実現できる。
【0044】
図7の例では、CEP化レイテンシ125μ秒のパケットは、フレーム125μ秒#1〜#64のそれぞれで送信される必要がある(1マルチまたは非マルチといえる)。したがって、各フレームの40μ秒に収容可能なユーザ数は、1ユーザ当り672n秒を占有するため、59ユーザとなる。また、CEP化レイテンシ値1m秒のパケットは、フレーム125μ秒#1〜#8で1回、フレーム125μ秒#9〜#16で1回、すなわち8フレームごとに送信されればよい(8マルチといえる)。したがって、8フレームの480μ秒(60μ秒×8)に収容可能なユーザ数は、1ユーザ当り672n秒を占有するため、712ユーザとなる。
【0045】
また、CEP化レイテンシ値8m秒のパケットは、フレーム125μ秒#1〜#64で1回、すなわち64フレームごとに送信されればよい。ただし、後述の図10で示すように、ここでは48フレームごとに送信されることとする(48マルチといえる)。したがって、48フレームの960μ秒(20μ秒×48)に収容可能なユーザ数は、1ユーザ当り960n秒を占有するため、960ユーザとなる。このように、CEP化レイテンシ値が大きいほど、1パケットにおいて(OHやパディングデータを除いた)ユーザデータが占める割合が大きくなり、効率的なデータ伝送となる。しかし、小さなレイテンシ値(例えば125μ秒)のみを許容可能なユーザも存在するため、各レイテンシ値に対する帯域の割当量は、各レイテンシ値を使用するユーザ数等に応じて適宜設計されてよい。
【0046】
実際には、フレーム125μ秒#1の1m秒レイテンシ領域において模式的に示すように、各レイテンシ領域を、個々のパケットを送信するためのタイムスロットに分割している。例えば、フレーム125μ秒#1の1m秒レイテンシ領域には89個のタイムスロットが設けられる。ユーザパケットおよび保守用パケットのそれぞれは、予め割り当てられたタイムスロットのいずれかを使用(占有)してパケット交換網へ送出される。
【0047】
図8は、図7に対応するフレーム構成を全64フレーム分示す。同図のフレーム番号1〜8は、図7のフレーム125μ秒#1〜#8に対応する。一部既述したが、CEP化レイテンシ125μ秒のパケットは1マルチ(非マルチ)で送出され、CEP化レイテンシ値1m秒のパケットは8マルチで送出され、CEP化レイテンシ値8m秒のパケットは48マルチで送出される。例えば、フレーム番号1の1m秒領域#1で送出されたユーザパケットは、次にフレーム番号9の1m秒領域#1で送出され、さらに次にフレーム番号17の1m秒領域#1で送出される。また、OAMパケット・試験パケット・インチャネルパケットはいずれも8マルチで送出される。
【0048】
なお、図7および図8では、CEP化レイテンシ値として125μ秒・1m秒・8m秒の3種類を示したが、ユーザが許容可能な遅延時間に応じて様々な種類のCEP化レイテンシ値のパケットが生成・送出されてよい。また、種々のCEP化レイテンシ値のパケットに対して送出可能期間が予め固定的に割り当てられてよいことはもちろんである。また、保守用パケットについても、監視もしくは試験の必要に応じた頻度で送出されてよいことはもちろんである。言い換えれば、異なる属性を有する複数種類のパケットについて、各種類のパケットに対する通信帯域の割当量は、通信システム10に対する要求条件や、通信システム10を用いた実験等により適宜決定されてよい。以下、図7および図8の方式を実現するための通信装置の構成を説明する。
【0049】
図9は、図1の通信装置12の機能構成を示すブロック図である。通信装置12は、TDMI/F終端部50で総称されるTDMI/F終端部50a、TDMI/F終端部50b、TDMI/F終端部50c、TDMI/F終端部50dと、パケットI/F終端部52と、変換部54と、監視・試験実行部60と、パケット多重部62と、パケット分離部64と、タイミング制御部66とを備える。変換部54は、CEP処理部56で総称されるCEP処理部56a、CEP処理部56b、CEP処理部56c、CEP処理部56dと、DeCEP処理部58で総称されるDeCEP処理部58a、DeCEP処理部58b、DeCEP処理部58c、DeCEP処理部58dとを含む。通信装置14および通信装置16についても同様の機能構成となる。
【0050】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリ、HDDをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ブロック図においては、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0051】
TDMI/F終端部50は、TDM回線201〜TDM回線204のそれぞれを終端して、各TDM回線からユーザデータを取得(受信)し、また、各TDM回線へユーザデータを送出する。パケットI/F終端部52は、GbE211を終端して、GbE211へユーザパケットを送出し、また、GbE211からユーザパケットを取得(受信)する。
【0052】
CEP処理部56は、TDMI/F終端部50からユーザデータを取得して一時的にバッファする。CEP処理部56は、CEP化処理の実行タイミングである旨がタイミング制御部66から通知された際、ユーザデータを予め定められたCEP化レイテンシ値に応じてパケット化することによりユーザパケットへ変換する。そして、ユーザパケットをパケット多重部62へ送出する。
【0053】
DeCEP処理部58は、パケット分離部64からユーザパケットを取得すると、そのユーザパケットを揺らぎ吸収バッファに格納することなく、そのユーザパケットからユーザデータを抽出することによりユーザデータ(TDMデータ)を復元する。そして、ユーザデータを即時にTDMI/F終端部50へ送出する。
【0054】
監視・試験実行部60は、通信装置12およびパケット交換網18に対する所定の監視処理および試験処理を実行する。監視・試験実行部60は、OAMパケット・試験パケット・インチャネルパケットのそれぞれの送出タイミングである旨がタイミング制御部66から通知された際、これらのパケットを生成してパケット多重部62へ送出する。また、他の装置から送信された保守用パケットを、パケット分離部64を介して受け付け、通信装置12およびパケット交換網18の正常性や、試験結果を判定する。
【0055】
パケット多重部62は、CEP処理部56a〜CEP処理部56dから送出されたユーザパケットと、監視・試験実行部60から送出された各種の保守用パケットとを一括して受け付けてパケットI/F終端部52へ送出する。パケット分離部64は、各ユーザのユーザパケットをパケットI/F終端部52から一括して取得し、ユーザパケットの属性に対応するDeCEP処理部58へユーザパケットを送出(分配)する。また、保守用パケットをパケットI/F終端部52から取得して監視・試験実行部60へ送出する。
【0056】
タイミング制御部66は、ユーザデータをCEP化すべきタイミングを検出して、その旨を示す情報をCEP処理部56a〜CEP処理部56dへ逐次通知する。また、保守用パケットを送出すべきタイミングを検出して、その旨を示す情報を監視・試験実行部60へ逐次通知する。
【0057】
図10は、タイミング制御部66の詳細な機能構成を示すブロック図である。タイミング制御部66は、タイマ部70と、タイミング検出部78と、タイミングテーブル80と、タイミング信号送出部82と、タイミング設定部84とを含む。タイマ部70は、マルチフレームタイマ72と、フレームタイマ74と、カウンタ76とを含む。
【0058】
カウンタ76は、8n秒の経過毎にカウントアップするカウンタであり、そのカウンタ値は一定周期8m秒を上限として、0〜999999の範囲となる。なお、999999の次は0に戻る、すなわち一定周期8m秒の経過で0に戻る。フレームタイマ74は、個々のフレーム時間すなわち125μ秒の経過を監視するタイマであり、カウンタ76のカウンタ値が15625の倍数になるたびに125μ秒の経過を検出してフレーム番号(1〜64)をカウントアップする。マルチフレームタイマ72は、マルチフレーム時間すなわち一定周期8m秒の経過を監視するタイマであり、カウンタ76のカウンタ値が0に戻るたびに一定周期Tの経過として検出する。
【0059】
タイミングテーブル80は、ユーザパケットおよび保守用パケット(以下、総称する場合、単に「パケット」とも呼ぶ。)の送出タイミングの定義情報(以下、「タイミング情報」とも呼ぶ。)を保持する。
【0060】
図11は、タイミング情報の構成を示す。同図のユーザパケット定義テーブル90にはユーザパケットの送出タイミングが記録され、OAMパケット定義テーブル92にはOAMパケットの送出タイミングが記録される。また、インチャネルパケット定義テーブル94にはインチャネルパケットの送出タイミングが記録され、試験パケット定義テーブル96には試験パケットの送出タイミングが記録される。同図のユーザ番号フィールドにはユーザデータの識別情報(ユーザのIDやTDM回線のID等)が格納される。OAM番号フィールドにはOAMパケットの識別情報が格納される。インチャネル番号フィールドおよび試験番号フィールドについても同様である。
【0061】
パケット送出タイミングフィールドには、一定周期T(8m秒)においてパケットを送出すべきタイミングが格納される。例えば、ユーザ番号xのユーザデータに対応するユーザパケットは、一定周期8m秒において125μ秒経過のたびに(8m秒に亘り合計64回)送出される必要がある。したがって、一定周期8m秒における最初のフレーム(図7のフレーム125μ秒#1)における125μ秒レイテンシ領域のタイムスロットの1つである「e」が1回目の送出タイミングとして設定される。2回目以降の送出タイミングとしては、8n秒カウンタのカウンタ値「15625」(すなわち125μ秒)の倍数を「e」に加算した値が設定される。
【0062】
また、ユーザ番号1のユーザデータに対応するユーザパケットは、一定周期8m秒において1m秒経過のたびに(8m秒に亘り合計8回)送出される必要がある。したがって、フレーム125μ秒#1〜#8のいずれかにおける1m秒レイテンシ領域のタイムスロットの1つである「a」が1回目の送出タイミングとして設定される。2回目以降の送出タイミングとしては、カウンタ76におけるカウンタ値「125000」(すなわち1m秒)の倍数を「a」に加算した値が設定される。ユーザ番号2および4のパケットについても同様である。
【0063】
また、ユーザ番号3のユーザデータに対応するユーザパケットは、一定周期8m秒に亘り1回送出される必要がある。したがって、フレーム125μ秒#1〜#64のいずれかにおける8m秒レイテンシ領域のタイムスロットの1つである「c」がその送出タイミングとして設定される。なお、OAMパケット・インチャネルパケット・試験パケットに対しても、フレーム125μ秒#1〜#64に予め用意された保守用パケットのためのタイムスロットが設定される。
【0064】
図10に戻り、タイミング検出部78は、マルチフレームタイマ72から一定周期8m秒の経過を示す通知、フレームタイマ74からフレーム時間である125μ秒の経過を示す通知、カウンタ76から現在のカウンタ値を逐次受け付ける。そして、タイミングテーブル80のタイミング情報を参照して、各パケットの送出タイミングとなったか否かを判定する。
【0065】
タイミング検出部78は、いずれかのユーザパケットの送出タイミングに至ったことを検出すると、そのユーザパケットの送出元(CEP処理部56a〜CEP処理部56dのいずれか)に対して、CEP化処理の開始およびユーザパケットの送出を指示するための所定の信号(以下、「タイミング信号」とも呼ぶ。)をタイミング信号送出部82から送信させる。また、タイミング検出部78は、いずれかの保守用パケットの送出タイミングに至ったことを検出すると、監視・試験実行部60に対して、その保守用パケットの送出を指示するためのタイミング信号をタイミング信号送出部82から送信させる。
【0066】
タイミング設定部84は、ユーザパケットおよび保守用パケットの送出タイミングをタイミングテーブル80へ格納する。具体的には、まず、タイミング情報において送出タイミングが定義されていない新規のユーザデータがCEP処理部56において受け付けられたことを検出する。例えば、新規のユーザパケットの送出要求をCEP処理部56から受け付ける。そのときタイミング設定部84は、そのユーザパケットのレイテンシ値に応じたパケット送出タイミングをタイミング情報へ設定する。
【0067】
図11の例では、CEP化レイテンシ値1m秒のユーザパケットを送出することが可能な最初のタイムスロットとして、複数のタイムスロット「a」・「b」・「d」等が予め定められている。タイミング設定部84は、これら複数のタイムスロットのうち、既存のユーザパケットにより使用されていない(タイミング情報に未登録の)タイムスロットを新規のユーザパケット(CEP化レイテンシ値1m秒)へ割り当てる。2回目以降の送出タイミングとしては、CEP化レイテンシ値に応じた固定値、CEP化レイテンシ125μ秒の場合は15625の倍数値、CEP化レイテンシ値1m秒の場合は125000の倍数値を、最初のタイムスロットの値に加算することにより設定する。
【0068】
また、タイミング設定部84は、送出タイミングがタイミング情報に定義されていない新規の保守用パケットの送出要求を監視・試験実行部60から受け付け、その保守用パケットの送出タイミングをタイミング情報へ設定する。この場合もユーザパケットの時と同様に、保守用パケットを送出可能な複数のタイムスロットが予め定められており、タイミング設定部84は、これら複数のタイムスロットのうち、既存の保守用パケットにより使用されていないタイムスロットを新規の保守用パケットへ割り当てる。
【0069】
変形例として、タイミング情報の設定内容は通信システム10の管理者や運用者により決定されてもよい。この場合、タイミング設定部84は、タイミング情報の更新内容(新規ユーザデータの追加情報等)を外部の保守端末から受け付けてもよく、その更新内容にしたがってタイミング情報を更新してもよい。
【0070】
以上の構成による動作を以下説明する。図12(a)および図12(b)は、図1の通信装置12の動作を示すフローチャートである。図12(a)はTDM網からパケット網へのデータ中継処理の動作を示しており、図12(b)はパケット網からTDM網へのデータ中継処理の動作を示している。図1の通信装置14および通信装置16における動作も同様である。
【0071】
まず図12(a)を説明する。TDMI/F終端部50は、接続されたTDM回線から、そのTDM回線において時分割で伝送されたユーザデータを取得する。ユーザデータが取得されると(S10のY)、CEP処理部56は、そのユーザデータを所定のバッファへ一時的に格納する(S12)。新規のユーザデータである場合(S14のY)、CEP処理部56は新規のユーザデータを受け付けた旨をタイミング制御部66へ通知し、タイミング制御部66は他のパケットの送出期間として未割当の期間を新規のユーザデータの送出タイミングとして決定する(S16)。既存のユーザデータである場合は(S14のN)、S16はスキップされる。ユーザデータを未取得であれば(S10のN)、S12〜S16はスキップされる。
【0072】
タイミング制御部66は、いずれかのパケットの送出タイミングに至ったことを検出すると(S18のY)、CEP化および/またはパケットの送出を指示するためのタイミング信号を、送出タイミングを迎えたパケットの送出元であるCEP処理部56もしくは監視・試験実行部60へ通知する(S20)。タイミング信号を受け付けたCEP処理部56は、所定のバッファへ格納していたユーザデータをパケット化(CEP化)し(S22)、ユーザパケットをパケット多重部62へ送出する。またタイミング信号を受け付けた監視・試験実行部60は、保守用パケットをパケット多重部62へ送出する。パケット多重部62は、受け付けたユーザパケットもしくは保守用パケットを、受付順にパケットI/F終端部52へ順次送出する。パケットI/F終端部52は、それらのパケットを受付順にGbE211を介してパケット交換網18へ順次送出する(S24)。パケットの送出タイミングでなければ(S18のN)、S20〜S24はスキップされる。
【0073】
次に図12(b)を説明する。パケットI/F終端部52は、GbE211を介して、パケット交換網18からユーザパケットを取得する。ユーザパケットが取得されると(S30のY)、パケット分離部64は、ユーザパケットに含まれる属性情報に応じて、ユーザパケットに対応するユーザデータを復元すべきDeCEP処理部58へユーザパケットを提供する。ユーザパケットを受け付けたDeCEP処理部58は、そのユーザパケットを揺らぎ吸収バッファに格納して遅延させることなく、そのユーザパケットを即時にDeCEP化してTDMデータを復元し、TDMI/F終端部50へ送出する(S32)。TDMI/F終端部50は、TDMデータをTDM回線へ送出する(S34)。なお、パケットI/F終端部52において保守用パケットが取得された場合は、パケット分離部64は、その保守用パケットを監視・試験実行部60へ提供し、監視・試験実行部60はその保守用パケットを用いて所定の監視処理もしくは試験処理を実行する。ユーザパケットを未取得であれば(S30のN)、S32およびS34はスキップされる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0075】
第1の変形例を説明する。
上記実施の形態の通信装置12は、TDM回線201〜TDM回線204のそれぞれから、ユーザ1のデータ〜ユーザ4のデータを受け付けた。変形例としての通信装置12は、1つのTDM回線において時分割で伝送された複数のユーザそれぞれのデータを取得してもよい。図13は、第1の変形例における通信装置12の機能構成を示すブロック図である。通信装置12は、1つのTDMI/F終端部50とTDM多重・分離部68を備える。TDMI/F終端部50は、1つのTDM回線209からユーザ1〜ユーザ4のTDMデータを取得する。TDM多重・分離部68は、各ユーザのTDMデータを、各ユーザの属性に応じたCEP処理を実行するCEP処理部56a〜56dのいずれかへ提供する。第1の変形例においても、タイミング制御部66がCEP化のタイミングを制御することによりパケット揺らぎを抑制できる。
【0076】
第2の変形例を説明する。
上記実施の形態では、図7および図8で示したように、一定周期8m秒におけるフレーム125μ秒#1〜#64のそれぞれに対して、各CEP化レイテンシ値のユーザパケットおよび保守用パケットの送出可能期間が予め固定的に割り当てられることとした。変形例では、各CEP化レイテンシ値のユーザパケットおよび保守用パケットの送出可能期間は、CEP化レイテンシ値にかかわらず、割当時点における125μ秒全体での空き領域から動的に割り当てられてもよい。
【0077】
図14は、第2の変形例の概念を示す。1.開始時においては、CEP化レイテンシ値がともに1m秒であるパケット101とパケット102とを送出している。このパケット101とパケット102は8フレーム毎に送出される。パケットにより占有された送出期間を示す占有領域情報には、割当済領域111と割当済領域112とが記録されている。割当済領域111と割当済領域112もまた8フレームごとに記録される。
【0078】
2.ユーザパケット追加時には、CEP化レイテンシ値8m秒のパケット103の送出が追加される。このパケット103は、一定周期8m秒においてフレーム125μ秒#64でのみ送出される。ここでは、フレーム125μ秒#64にパケット103のデータ長を送出可能な空き領域が存在したため、フレーム125μ秒#64にパケット103の送出期間が設定されたこととしている。そして、フレーム125μ秒#64に対する占有領域情報に、割当済領域113が記録される。
【0079】
3.ユーザパケット追加時には、CEP化レイテンシ125μ秒のパケット104の送出が追加される。このパケット104は、一定周期8m秒の毎フレームで送出される。ここでは、フレーム125μ秒#1〜#64における同一のタイムスロットにパケット104のデータ長を送出可能な空き領域が存在したため、各フレームにパケット103の送出期間が設定されたこととしている。そして、フレーム125μ秒#1〜#64に対する占有領域情報に、割当済領域114が記録される。なお、図14の占有領域情報はタイミングテーブル80に保持される。すなわち、タイミングテーブル80は、タイミング情報に加えて、既存のパケットに対して割当済の通信帯域を示す情報を保持し、言い換えれば既存のパケットに対して未割当の空き帯域を示す情報を保持する。
【0080】
図15は、第2の変形例におけるタイミング設定部84の動作を説明するための図である。タイミング設定部84は、パケット交換網18への新たなデータの送出が要求されたことを検出すると、そのデータのサービス速度およびCEP化レイテンシ値にもとづき新たなパケット(ユーザパケット・保守用パケット)のデータ長を算出する。そして、そのデータ長とGbE211の通信帯域(通信速度)にもとづき新たなパケットの送出に要する時間を算出する。タイミング設定部84は、タイミングテーブル80に保持された占有領域情報を参照して、新たなパケットの送出タイミング(例えば、図15のa〜e等)を決定し、その送出タイミングをタイミング情報へ記録する。
【0081】
第2の変形例によれば、現在のパケット占有領域と追加するパケット長から時分割周期内における追加パケットの挿入位置を柔軟に決定することができる。これにより、CEP化レイテンシ値および各レイテンシ値のパケット数に自由度を持たせることができる。
【0082】
なお、特定のCEP化レイテンシ値のパケットを固定領域に割り当てる実施の形態の方式と、各パケットを空き領域に柔軟に割り当てる第2の変形例の方式とを組み合わせてもよい。例えば、基本的には、特定のCEP化レイテンシ値のパケットを固定領域に割り当ててもよい。その一方、いずれかのレイテンシ値の割当領域に対するパケットの割当数が上限に達した場合、そのレイテンシ値のパケットの送出タイミングを、本来は他のレイテンシ値のパケットのための割当領域における空き領域に割り当ててもよい。これにより、パケットに対して通信帯域を割り当てる際の効率性を維持しつつ、通信帯域を有効利用できる。
【0083】
第3の変形例を説明する。
上記実施の形態においては、通信装置12のタイミング制御部66は、CEP処理部56および監視・試験実行部60に対してタイミング信号を通知した。変形例では、パケット多重部62に対して各パケットに関するタイミング信号を通知してもよい。この場合、CEP処理部56はTDMデータを受け付けると即時にCEP化し、ユーザパケットをパケット多重部62へ送出する。監視・試験実行部60もまた監視および試験の必要に応じて保守用パケットを即時にパケット多重部62へ送出する。パケット多重部62は、CEP処理部56から受け付けたユーザパケットと、監視・試験実行部60から受け付けた保守用パケットを所定のバッファへ一時的に格納する。そして、タイミング信号を受け付けた際、そのタイミング信号で指定されたパケットをパケットI/F終端部52へ送出する。第3の変形例によれば、タイミング制御部66がパケット送出のタイミングを制御することにより、実施の形態と同様にパケット揺らぎを抑制できる。
【0084】
第4の変形例を説明する。
上記実施の形態では、TDM網とパケット交換網との間のCEP化処理(DeCEP化処理)を実行する通信装置においてパケット送出のタイミングを制御する技術を説明した。この技術思想は、パケット交換網内部でパケットを中継する通信装置へも適用可能であり、以下ではこの例を説明する。
【0085】
図16は、第4の変形例における通信システム10の構成を示す。パケット交換網18には、パケット中継装置120で総称されるパケット中継装置120a、パケット中継装置120b、パケット中継装置120c、パケット中継装置120dが含まれる。これらの装置はGbE等のパケット伝送路により接続されており、相互にパケットを交換することによって、通信装置12〜通信装置14間、通信装置12〜通信装置16間、通信装置14〜通信装置16間に亘りパケットが伝送される。なおパケット中継装置120は、典型的には、レイヤ2スイッチもしくはレイヤ3スイッチである。
【0086】
図17は、図16のパケット中継装置120の機能構成を示すブロック図である。パケット中継装置120は、実施の形態で既述したパケットI/F終端部52に対応するパケットI/F終端部52a〜パケットI/F終端部52dと、実施の形態と同様の監視・試験実行部60と、実施の形態で既述したタイミング制御部66に対応するタイミング制御部66a〜タイミング制御部66dとを備える。パケット中継装置120はさらに、パケットスイッチ部122と、パケット送出部124で総称されるパケット送出部124a〜パケット送出部124dとを備える。以下、実施の形態で既述した構成については適宜記載を省略する。
【0087】
パケットI/F終端部52a〜パケットI/F終端部52dは、パケット伝送路にて伝送されたパケットを受け付けてパケットスイッチ部122へ送出し、パケット送出部124a〜パケット送出部124dから受け付けたパケットをパケット伝送路へ送出する。パケットスイッチ部122は、パケットに設定されたアドレス(例えばIPアドレスや、MACアドレス、MPLSのラベル値)に応じて転送先を決定し、その転送先のパケット送出部124に対してパケットを送出する。
【0088】
パケット送出部124a〜パケット送出部124dは、複数の方路のそれぞれから入力されてパケットスイッチ部122により中継されたパケットを一括して受け付けて所定のバッファへ格納する。そして、タイミング制御部66a〜タイミング制御部66dからタイミング信号を受け付けた際に、バッファに格納しておいたパケットをパケットI/F終端部52a〜パケットI/F終端部52dへ送出する。
【0089】
タイミング制御部66a〜タイミング制御部66dは、パケット送出部124a〜パケット送出部124dそれぞれで送出されるべきパケットの送出タイミングを定めたタイミング情報を保持する。このタイミング情報も、実施の形態のタイミング情報と同様に、パケットの属性、例えば送信元のユーザやTDM回線のID毎に異なる送出タイミングが定められている。そして、送出タイミングを迎えたパケットの送出を指示するタイミング信号をパケット送出部124a〜パケット送出部124dへ送出する。これにより、パケット送出部124a〜パケット送出部124dのそれぞれに、パケット伝送路へ送出すべき複数のパケットを異なるタイムスロットにて送出させる。
【0090】
パケット中継装置120においても、CEP化装置(通信装置12等)と同様に、パケットの衝突が発生することがある。例えば、パケットスイッチ部122におけるパケット転送後のパケット送出処理において、複数の方路から入力された複数のユーザパケットの衝突や、ユーザパケットと保守用パケットの衝突が発生することがあり、その結果、揺らぎを生じることがある。本変形例のパケット中継装置120によれば、パケット中継装置120からパケット伝送路に対するパケットを時分割で送出することにより、パケットの送出処理におけるパケット同士の衝突を回避して、揺らぎの発生を抑制できる。
【0091】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0092】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0093】
10 通信システム、 12,14,16 通信装置、 50 TDMI/F終端部、 52 パケットI/F終端部、 54 変換部、 56 CEP処理部、 58 DeCEP処理部、 60 監視・試験実行部、 62 パケット多重部、 64 パケット分離部、 66 タイミング制御部、 84 タイミング設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号の送信元である第1のTDM(Time Division Multiplexing)網と、そのデジタル信号の送信先である第2のTDM網とを仲介するパケット交換網に対して、パケットを送出する装置であって、
前記第1および第2のTDM網において時分割で伝送されるべき複数のデジタル信号に対応する複数のパケットについて、各パケットの属性に応じて異なる送出期間を定めた情報を保持するタイミング保持部と、
前記第1のTDM網において時分割で伝送された複数のデジタル信号に対応する複数のパケットのそれぞれを、各パケットの属性に応じた送出期間内に前記パケット交換網へ送出することにより、各パケットを時分割で前記パケット交換網へ送出する送出部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1のTDM網から、時分割で伝送された複数のデジタル信号を取得する取得部と、
取得された複数のデジタル信号を前記パケット交換網において伝送させるための所定のデータ形式へ変換することにより、前記複数のデジタル信号に対応する複数のパケットを設定する変換部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記タイミング保持部は、前記パケット交換網を監視もしくは試験するためのパケットの送出期間を、前記複数のデジタル信号に対応する複数のパケットの送出期間と重複しないように定めた情報を保持し、
前記送出部は、前記複数のデジタル信号に対応する複数のパケットとは異なるタイミングで、前記監視もしくは試験するためのパケットを前記パケット交換網へ送出することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記タイミング保持部は、前記第1のTDM網において1つのデジタル信号の伝送に割り当てられた期間を、前記パケット交換網に対するパケット送信の基準となる期間とし、前記複数のパケットそれぞれの送出期間として前記基準となる期間の異なる一部を割り当てることを定めた情報を保持することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記タイミング保持部は、前記複数のパケットそれぞれの送出期間として、それぞれのパケット化におけるレイテンシ値に応じて、所定の一定期間における異なる送出期間を固定的に割り当てることを定めた情報を保持することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
タイミング設定部をさらに備え、
前記タイミング保持部は、前記複数のパケットそれぞれに対して割り当て済の送出期間を示す情報を保持し、
前記タイミング設定部は、前記複数のデジタル信号とは異なる新たなデジタル信号に対応する新たなパケットを送出すべき際、他のパケットに対して未割り当ての送出期間を前記新たなパケットに対して割り当て、
前記送出部は、前記新たなパケットに対して割り当てられた送出期間内に前記新たなパケットを前記パケット交換網へ送出することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
デジタル信号の送信側である第1のTDM網と、そのデジタル信号の受信側である第2のTDM網とを仲介するパケット交換網に対して、パケットを送出する装置により実行される方法であって、
前記第1のTDM網において時分割で伝送された複数のデジタル信号に対応する複数のパケットのそれぞれを、各パケットの属性に応じて予め定められた送出期間内に前記パケット交換網へ送出することにより、各パケットを時分割で前記パケット交換網へ送出するステップを備えることを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−119760(P2012−119760A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265216(P2010−265216)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】