説明

通信装置および通信方法

【課題】最大通信距離を確保しつつ通信媒体である非接触ICカードが長時間近接状態にあっても発熱で破損または性能低下することがないようにする。
【解決手段】リーダ/ライタ10の送信回路12、アンテナ13または受信回路14にて非接触ICカード20との距離に応じて変化する電気的な状態をデータ処理部11が検知する。送信電圧変更回路15は、データ処理部11から距離に応じた値の制御信号を受けて送信回路12の直流電源電圧である送信電圧Vccの値を変更し、非接触ICカード20が遠方にあるときに送信電圧Vccの値を高くして最大通信距離を確保し、非接触ICカード20が近づくに従って送信電圧Vccの値を低くして、非接触ICカード20の受信電圧が過多にならないようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置および通信方法に関し、特に非接触IC(Integrated Circuit)チップを搭載したカードや携帯端末などの通信媒体との間で通信を行う通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば駅の改札口に設置されている自動改札機や店舗の精算所に設置されている電子決済用端末においては、リーダ/ライタとして機能する通信装置が組み込まれていたり外付けされていたりしている。その通信装置は、通信媒体が近づくことによって、送信されている搬送波を通信媒体が受信することにより通信媒体に電力を供給し、その搬送波を変調することにより通信媒体との間で通信を行っている。
【0003】
通信媒体との通信は、通信装置のアンテナから放射される磁界の強度を強くすることによって最大通信可能距離を延ばすことができる。しかし、磁界の強度を強くすると、通信装置に通信媒体が近づいたときに、通信媒体の受信電圧が過大になり、その過大な受信電圧による発熱によって通信媒体のICチップの破壊や通信性能の低下を招来することがある。
【0004】
これに対し、通信媒体の側に保護回路を設け、通信媒体が通信装置から過度な磁界強度を受けた場合に、保護回路が動作し、過大電力を抵抗を介してグランドに逃がすようにすることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−276554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通信媒体の保護回路が動作した場合、過大な受信電圧を抵抗で消費させているのでICチップへの直接的な損傷は避けられているものの、通信媒体内での総発熱量に変化があるわけではないので、通信媒体の発熱を実質的に抑制することはできないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、通信媒体と通信が可能になる最大通信可能距離を短くすることなく通信媒体が長時間近接した状態にあっても通信媒体が発熱で破損または性能低下することがないようにした通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記の課題を解決するために、通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信装置であって、前記通信媒体との距離に応じて変化する電圧または電流の電気的な状態を検知し、検知した前記電気的な状態に対応する前記距離に応じた制御信号を出力する状態検知部と、前記制御信号に従って送信回路における電源電圧を変更する送信電圧変更部と、を備える通信装置が提供される。
【0009】
また、本発明では、通信装置が通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信方法であって、前記通信装置における送信回路の電源電圧を所定の電圧にセットし、前記通信媒体との距離に応じて変化する前記通信装置内の電気的な状態を検知し、検知した前記電気的な状態に対応する前記距離が短くなるに従って前記電源電圧を低減させる、通信方法が提供される。
【0010】
このような通信装置および通信方法によれば、通信媒体が通信装置の近くにないとき、通信装置の送信回路における電源電圧を最大にすることができ、通信媒体が通信装置に近づくに従って送信回路の電源電圧を低下させることができる。これにより、通信待機時に通信媒体との通信が可能になる最大通信可能距離を長くでき、通信媒体が通信装置に近づいて通信を開始した後は、通信媒体での受信電圧が過多になることはない。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の通信装置および通信方法は、通信装置に対して通信媒体が遠方の場合、送信回路における電源電圧を最大にして大きい磁界強度を維持できるので最大限の通信可能距離を得ることができるという利点がある。一方、通信媒体が通信装置の近傍にある場合、通信装置が送信回路の電源電圧を低減していることにより、通信媒体は、受信電圧が過多になることはないので破損または性能低下を防止でき、通信装置も、送信回路における電源電圧の低減により電力の消費を低減できるという利点がある。
【0012】
また、通信装置に通信媒体を近づけたときに、通信装置がその送信回路の電源電圧を低減していることで通信媒体の受信電圧が過大になることはないことから、通信装置が備える送信回路の電源電圧を低減させる機能は、間接的に通信媒体の保護回路と同等の機能を有することになる。このため、通信媒体では、保護回路を不要にしたり簡略化したりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るリーダ/ライタおよび非接触ICカードの概略構成を示すブロック図である。
【図2】リーダ/ライタにおける非接触ICカードとの距離と検出電圧との関係を示す図である。
【図3】リーダ/ライタ−非接触ICカード距離とカード受信電圧との関係を示す図である。
【図4】送信回路の送信電圧と磁界強度との関係を示す図である。
【図5】送信回路の送信電圧とカード受信電圧との関係を示す図である。
【図6】送信電圧変更回路の一例を示すブロック図である。
【図7】送信電圧変更回路の変形例を示すブロック図である。
【図8】データ処理部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、非接触ICカードと通信を行うリーダ/ライタに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は実施の形態に係るリーダ/ライタおよび非接触ICカードの概略構成を示すブロック図、図2はリーダ/ライタにおける非接触ICカードとの距離と検出電圧との関係を示す図、図3はリーダ/ライタ−非接触ICカード距離とカード受信電圧との関係を示す図、図4は送信回路の送信電圧と磁界強度との関係を示す図、図5は送信回路の送信電圧とカード受信電圧との関係を示す図である。
【0016】
リーダ/ライタ10は、データ処理部11、送信回路12、アンテナ13および受信回路14を備えており、送信回路12は、送信電圧変更回路15を有している。非接触ICカード20は、アンテナ21、検波/復調部22、データ処理部23および変調部24を備えている。
【0017】
このリーダ/ライタ10の特徴的な部分は、第1に、送信回路12内で送信電圧変更部として機能する送信電圧変更回路15を設けていることである。第2には、データ処理部11がアンテナ13、送信回路12または受信回路14の電気的な状態を検知して送信回路12の送信電圧変更回路15に制御信号を送る、状態検知部としての機能を有していることである。なお、図示では、アンテナ13、送信回路12および受信回路14の状態検知を同時に行っているように示している。しかし、アンテナ13、送信回路12および受信回路14のいずれにおいても、非接触ICカード20との距離に対応して電圧または電流の変化する回路部分があるので、そのような回路部分の電気的な状態の検知は、いずれか1つでよい。
【0018】
ここで、リーダ/ライタ10は、アンテナ13から搬送波を出力していて、非接触ICカード20が通信可能距離の範囲内に入ると、その搬送波が非接触ICカード20のアンテナ21によって受信される。非接触ICカード20では、受信した搬送波を整流し、所定の電圧に調整して電源を生成する。
【0019】
リーダ/ライタ10がデータ処理部11で処理したデータを非接触ICカード20に送信する場合、送信回路12は、搬送波をデータによって変調し、変調された信号をアンテナ13を介して送信する。
【0020】
非接触ICカード20では、アンテナ21で受信した信号を検波/復調部22で検波および復調してデータを復元し、そのデータは、データ処理部23に入力され、データ処理される。
【0021】
非接触ICカード20からリーダ/ライタ10にデータを送信する場合は、非接触ICカード20がリーダ/ライタ10から無変調の搬送波を受信している状態で、変調部24がデータによる変調を行い、アンテナ21が受信している搬送波を変化させる。リーダ/ライタ10では、その非接触ICカード20の側の変化がアンテナ13に電流変化として現われるので、それを受信回路14が検波、復調してデータを復元し、データ処理部11に送出する。
【0022】
リーダ/ライタ10と非接触ICカード20との間で以上の通信を行うとき、リーダ/ライタ10では、データ処理部11がアンテナ13、送信回路12または受信回路14の電気的な状態を検知して、送信電圧変更回路15に制御信号を送出している。送信電圧変更回路15は、その制御信号に従って、送信回路12における直流電源電圧である送信電圧Vccの値を変更する。これにより、非接触ICカード20が長時間近接状態にあっても発熱で破損または性能低下することがないようにしている。
【0023】
つまり、リーダ/ライタ10に非接触ICカード20がかざされた場合、リーダ/ライタ10のアンテナ13、送信回路12、受信回路14などの各ポイントにおいて電圧や電流の電気的な変化が生じる。たとえば、図2にリーダ/ライタ−非接触ICカード距離zと受信回路14の検出電圧Vrwとの関係を示しているが、遠くにある非接触ICカード20がリーダ/ライタ10に近づくに従って受信回路14の検出電圧Vrwが小さくなるよう変化している。このような非接触ICカード20との距離に対する受信回路14の電気的な変化の検出を、ここでは、状態検知と呼んでいる。
【0024】
電気的変化の具体例としては、受信回路14がアンテナ13から受けた搬送波(13.56MHz)を整流することによって得られる直流電圧の変化がある。この直流電圧は、リーダ/ライタ10と非接触ICカード20との間の距離に応じて変化するため、その電圧値は、リーダ/ライタ10と非接触ICカード20との間のおよその距離を表していることになる。なお、上記の電気的な変化を示す状態としては、受信回路14における検出電圧Vrw以外に、アンテナ13における送受信信号の電圧、送信回路12においてアンテナ13に供給する前の送信信号の電圧があり、いずれの電圧も非接触ICカード20との距離と相関関係がある。
【0025】
データ処理部11は、電気的変化を検出した電圧と基準値とを比較し、その結果を制御信号として送信電圧変更回路15に送信する。送信電圧変更回路15は、制御信号の値に応じて送信回路12内の送信電圧Vccを変更し、リーダ/ライタ10のアンテナ13から放射される磁界の磁界強度を制御する。図4に示すように、送信電圧Vccの大きさを変化させたときの磁界強度Hは、単調増加になることから、送信電圧Vccの大きさを変更することで、磁界強度Hの大きさを任意に変更することができる。これにより、図5に示すように、非接触ICカード20のカード受信電圧Vcardも、リーダ/ライタ10の送信電圧Vccの大きさに応じて変化し、送信電圧Vccの大きさを変更することで、カード受信電圧Vcardの大きさを任意に変更することができる。
【0026】
リーダ/ライタ10の送信電圧Vccは、従来では、ある一意の値であったが、本発明では、非接触ICカード20との距離に応じて送信電圧Vccを複数の任意の値に制御し、これによって、カード受信電圧Vcardの抑制制御をしている。以下では、説明のため、送信電圧Vccは、Vcc大、Vcc中、Vcc小の3段階に切り替えるとして説明する。ここで、Vcc大は、通信可能距離を設定するのに必要な送信回路12の最大の直流電源電圧であり、Vcc小は、非接触ICカード20がリーダ/ライタ10に最も近い位置にあるときに、非接触ICカード20と安定して通信が可能な送信回路12の最小の直流電源電圧である。
【0027】
送信電圧Vccは、図2に示したように、Vcc大、Vcc中およびVcc小に切り替えたときに、リーダ/ライタ10と非接触ICカード20との距離の変化に対する検出電圧Vrwの変化は、それぞれの値で同じ変化の傾向を有している。ここで、図1の状態検知として図2の検出電圧Vrwを用いた場合を考えると、データ処理部11は、検出電圧Vrwを2つの基準値V1,V3と比較することになる。したがって、制御信号は、非接触ICカード20がリーダ/ライタ10の最大通信距離zmaxより遠方から距離z1に近づくまでは、送信電圧VccをVcc大に設定し、距離z1から距離z2までの間は、送信電圧VccをVcc中に設定し、距離z2より近い場合は、送信電圧VccをVcc小に設定する信号となる。送信電圧VccがVcc大からVcc中へ切り替えられると、検出電圧Vrwは、V1からV2へ変化し、Vcc中からVcc小へ切り替えられると、検出電圧Vrwは、V3からV4へ変化することになる。
【0028】
制御信号によって送信回路12の送信電圧Vccが切り替えられたときの非接触ICカード20でのカード受信電圧Vcardは、図3に示した振る舞いとなる。すなわち、送信回路12の送信電圧VccがVcc大に設定されている場合、非接触ICカード20をリーダ/ライタ10のアンテナ13に近づけると、まず、距離zmaxにおいてカード受信電圧Vcardが非接触ICカード20の通信可能下限電圧Vmin以上となり、非接触ICカード20が動作可能となり、通信を開始する。
【0029】
ここで、非接触ICカード20の保護回路が動作を開始するカード受信電圧Vcardの絶対最大定格電圧をVsatとすると、送信電圧VccがVcc大の場合、Vsatに対応する距離z1’から0の範囲において、カード受信電圧VcardがVsat以上となる。このとき、カード受信電圧Vcardは非接触ICカード20の絶対最大定格電圧Vsatを超えるため、非接触ICカード20のICチップの発熱やそれによる破損、保護回路の動作により通信が不安定な状態となる。同様にして、送信電圧VccがVcc中のときには、距離z2’において、カード受信電圧Vcardは、Vsatになる。なお、送信電圧VccがVcc小では、いずれの距離においても、カード受信電圧Vcardは、Vsat未満であるが、Vcc大およびVcc中に比べ、カード受信電圧Vcardが非接触ICカード20の通信可能下限電圧Vmin以上となる距離が小さくなる。すなわち、通信可能である最大距離が小さい。
【0030】
通信待機時の初期状態において、リーダ/ライタ10の送信回路12の送信電圧Vccは、最大通信距離を確保するために磁界強度Hが最大となるVcc大に設定されているとする。このとき、図3の説明で述べたとおり、リーダ/ライタ10に遠方から非接触ICカード20を近づけると、距離zmaxにおいて、リーダ/ライタ10と非接触ICカード20とが通信を開始する。このとき、検出電圧Vrwは、図2に示したように、単調に減少する。図3に示したように、距離z1’において、カード受信電圧VcardをVsat未満とするためには、その手前の距離z1(>z1’)において、送信電圧VccをVcc中に切り替える必要がある。この切り替えのために使用される検出信号は、検出電圧Vrwであり、データ処理部11は、これを基準値V1と比較し、Vrw≦V1となった場合、送信電圧変更回路15に制御信号を送る。送信電圧VccがVcc大からVcc中へ切り替えられると、検出電圧Vrwは、V1からV2へと遷移する。Vcc中においても、非接触ICカード20がリーダ/ライタ10にさらに近づくと、Vcc大のときと同様に、検出電圧Vrwは、単調に減少していく。
【0031】
Vcc中では、距離z2’において、カード受信電圧Vcardが再びVsat以上となることから、その手前の距離z2(>z2’)において、送信電圧VccをVcc小に変更する。このとき、データ処理部11は、電圧比較のための基準電圧を基準値V3に設定することにより、検出電圧Vrwが基準値V3以下となった場合に、制御信号によって、送信電圧VccをVcc小に設定することが可能となる。Vcc小では、いかなる距離においてもカード受信電圧VcardがVsat未満のため、非接触ICカード20のICチップの発熱やそれによる破損、通信性能の劣化を防ぐことが可能になる。
【0032】
ここで、非接触ICカード20が動作する距離は、Vcc小<Vcc中<Vcc大であるので、非接触ICカード20と通信していない初期状態では、Vcc大に設定し、リーダ/ライタ10に遠方から非接触ICカード20がかざされた場合であっても、より通信し易い状態にしている。
【0033】
なお、非接触ICカード20がリーダ/ライタ10から遠ざかる場合、リーダ/ライタ10は、非接触ICカード20との間の距離が大きくなるに従って送信電圧VccをVcc小から段階的にVcc中、Vcc大と順に切り替えるようなことはしない。たとえば、リーダ/ライタ10は、非接触ICカード20との通信が終了後、非接触ICカード20からの応答がなくなると、非接触ICカード20が近傍にいないと判断し、送信電圧VccをVcc大に切り替え、次の非接触ICカード20との通信に備える。
【0034】
以上の実施の形態では、送信電圧Vccを3段階に変更する場合について述べたが、これに限定されるものではない。送信電圧Vccをさらに多くの段階で切り替えるようにすることもでき、その場合は、切り替え時におけるカード受信電圧Vcardの変化幅を小さくすることができるので、非接触ICカード20は、リーダ/ライタ10との通信をより安定して行うことが可能になる。逆に、送信電圧Vccを2段階に変更すれば、データ処理部11の構成およびその処理を簡素化することができる。
図6は送信電圧変更回路の一例を示すブロック図である。
【0035】
送信電圧変更回路15は、データ処理部11から制御信号を受ける切替回路31と、出力電圧の異なる複数の電圧レギュレータ321,322,・・・,32nおよびダイオードD1,D2,・・・,Dnとを備えている。電圧レギュレータ321,322,・・・,32nおよびダイオードD1,D2,・・・,Dnは、可変したい送信電圧Vccの数だけ備えている。上述の例では、送信電圧Vccは、Vcc大、Vcc中およびVcc小の3つの電圧が必要なので、n=3となる。
【0036】
切替回路31は、制御信号を受ける入力と、許可信号を出力するn個の出力とを有し、制御信号の値に応じて、n個の出力の1つが選択され、選択された1つの出力から許可信号が出力される。
【0037】
電圧レギュレータ321,322,・・・,32nは、それぞれ、許可信号を受ける制御入力を有し、切替回路31から許可信号を受けることにより、入力電圧Vinを調整してそれぞれ所定の値の出力電圧Voutを出力する。切替回路31によって選択された電圧レギュレータ321,322,・・・,32nの1つが出力する出力電圧Voutは、送信電圧Vccとなる。
図7は送信電圧変更回路の変形例を示すブロック図である。
【0038】
この送信電圧変更回路15は、データ処理部11から制御信号を受けるスイッチ回路41と、入力電圧Vinを所定の電圧に調整する電圧レギュレータ42とを備えている。スイッチ回路41は、n個のスイッチSW1,SW2,・・・,SWnを有し、これらの一方はそれぞれ抵抗R1,R2,・・・,Rnに接続され、他方はそれぞれグランドに接続されている。電圧レギュレータ42の出力は、抵抗Routの一端に接続され、その他端は、この送信電圧変更回路15の出力に接続されるとともに、抵抗R1,R2,・・・,Rnに接続されている。抵抗R1,R2,・・・,Rnは、それぞれ値が異なっており、電圧レギュレータ42の出力の抵抗Routと組み合わせることによって、それぞれ分圧比の異なるn個の分圧器を構成している。
【0039】
スイッチ回路41は、制御信号を受けると、スイッチSW1,SW2,・・・,SWnの1つを選択してオン制御する。たとえば、すべてのスイッチSW1,SW2,・・・,SWnがオフの状態からスイッチSW1が選択されてオン状態になると、送信電圧変更回路15は、電圧レギュレータ42の出力電圧と、抵抗Routおよび抵抗R1の分圧比とで決まる出力電圧Voutを出力し、これが送信電圧Vccとなる。
【0040】
なお、図6および図7に示す送信電圧変更回路15の例では、リーダ/ライタ10と非接触ICカード20との間の距離に応じてそれぞれ段階的に異なる値の複数の出力電圧の中から1つを選択して送信電圧Vccとしている。しかし、送信電圧変更回路15に出力電圧を連続して変化できる電圧レギュレータを使用し、距離を表す制御信号を受けることで、送信電圧Vccを距離に応じて連続して変化させることもできる。
図8はデータ処理部の処理の流れを示すフローチャートである。
データ処理部11の処理は、リーダ/ライタ10に接続された上位機器から開始コマンドを受けることにより開始される。
【0041】
データ処理部11は、まず、送信回路12の送信電圧Vccを最大の電圧Vcc大にセットする制御信号を送信電圧変更回路15に送出し、非接触ICカード20との通信距離を最大にする(ステップS1)。次に、データ処理部11は、アンテナ13、送信回路12または受信回路14の電気的な状態を検知する(ステップS2)。ここでは、電気的な状態として受信回路14の検出電圧Vrwを検知するとする。次に、データ処理部11は、検知した検出電圧Vrwが基準値V1より低下したかどうかを判断し(ステップS3)、検出電圧Vrwが基準値V1より低下していない間は、受信回路14の状態である検出電圧Vrwの監視を継続する。
【0042】
検出電圧Vrwが基準値V1より低下した場合、データ処理部11は、送信回路12の送信電圧Vccを電圧Vcc中にセットする制御信号を送信電圧変更回路15に送出する(ステップS4)。次に、データ処理部11は、受信回路14の電気的な状態である検出電圧Vrwを検知し(ステップS5)、検知した検出電圧Vrwが基準値V3より低下したかどうかを判断する(ステップS6)。検出電圧Vrwが基準値V3より低下していない間は、検出電圧Vrwの監視が継続される。
【0043】
検出電圧Vrwが基準値V3より低下した場合、データ処理部11は、送信回路12の送信電圧Vccを電圧Vcc小にセットする制御信号を送信電圧変更回路15に送出する(ステップS7)。次に、データ処理部11は、受信回路14の受信状態を検知し(ステップS8)、それが非接触ICカード20からの返信であるかどうかを判断する(ステップS9)。非接触ICカード20の返信がある間は、送信回路12の送信電圧Vccを変更する必要がないので、受信回路14の受信状態の監視を継続する。非接触ICカード20の返信がなくなれば、非接触ICカード20は、リーダ/ライタ10の近傍にないので、ステップS1に戻り、次の非接触ICカード20との通信に備えて、データ処理部11は、送信回路12の送信電圧Vccを電圧Vcc大にセットし、遠方にある非接触ICカード20と通信できるようにする。
【0044】
以上の実施の形態では、通信装置として非接触ICカードと通信を行うリーダ/ライタに適用した場合を例に説明したが、通信媒体として非接触通信機能を有する携帯電話などの携帯端末と通信を行うリーダ/ライタにも適用可能である。また、上記のような機能を有する通信装置は、リーダ/ライタ機能を有する携帯電話などの携帯端末にも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10……リーダ/ライタ、11……データ処理部、12……送信回路、13……アンテナ、14……受信回路、15……送信電圧変更回路、20……非接触ICカード、21……アンテナ、22……検波/復調部、23……データ処理部、24……変調部、31……切替回路、321,322,・・・,32n……電圧レギュレータ、41……スイッチ回路、42……電圧レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信装置であって、
前記通信媒体との距離に応じて変化する電圧または電流の電気的な状態を検知し、検知した前記電気的な状態に対応する前記距離に応じた制御信号を出力する状態検知部と、
前記制御信号に従って送信回路における電源電圧を変更する送信電圧変更部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記状態検知部は、アンテナの送受信信号、受信回路の受信信号および前記送信回路の送信信号のいずれか1つを前記電気的な状態として検知する請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記状態検知部は、検知した前記電気的な状態に対応する前記距離が短くなるに従って前記電源電圧を低減させる前記制御信号を出力する請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信電圧変更部は、前記電源電圧を、前記通信媒体で受信される受信電圧が前記通信媒体の保護回路の動作開始電圧である絶対最大定格電圧を超えない範囲で変更する請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記送信電圧変更部は、互いに異なる電圧を前記電源電圧として出力する複数の電圧レギュレータと、前記制御信号に応じて前記電圧レギュレータの1つを選択する切替回路とを有する請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
前記送信電圧変更部は、互いに異なる分圧比を有し、所定の電圧を分圧し、前記電源電圧として出力する複数の分圧器と、前記制御信号の値に応じて前記分圧器の1つを選択するスイッチ回路とを有する請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
通信装置が通信媒体に対し電力の供給をしつつ通信を行う通信方法であって、
前記通信装置における送信回路の電源電圧を所定の電圧にセットし、
前記通信媒体との距離に応じて変化する前記通信装置内の電気的な状態を検知し、
検知した前記電気的な状態に対応する前記距離が短くなるに従って前記電源電圧を低減させる、
通信方法。
【請求項8】
前記通信装置内の前記電気的な状態は、アンテナを介し受信回路が受ける搬送波の電圧である請求項7記載の通信方法。
【請求項9】
前記電源電圧を低減した後で、前記通信媒体からの返信がなくなると、前記電源電圧を前記所定の電圧にセットする段階に戻る請求項7記載の通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−232927(P2011−232927A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102037(P2010−102037)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】