説明

通信装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化速度の異なるコーデックを利用可能な通信装置において、コーデックを適切に使い分けることが可能な通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】IPFAX装置1002は、ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化を行う第1コーデック手段と、第1コーデック手段よりも高速に画像の符号化及び復号化を行う第2コーデック手段と、通信速度の異なる回線で画像を送受信可能な送受信手段と、送受信手段により、回線のうちで通信速度が速い回線で画像を送受信するときは、第2コーデック手段により画像を符号化又は復号化するように第2コーデック手段を制御し、回線のうちで通信速度が遅い回線で画像を送受信するときは、第1コーデック手段により画像を符号化又は復号化するように第1コーデック手段を制御する制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムに関し、特に、IP網とアナログ網を用いてファックス送受信可能な通信装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IP網を利用してファックス送受信を行うIPFAXが注目されている。NTT(登録商標)の公衆IP網であるNGN網でもコンテンツのひとつにIPFAXが挙げられている。
【0003】
このNGN網での通信速度は最大1Mbpsであることからも分かるように、IPFAXの通信速度は高速であり、これまでのアナログ回線を用いたファックスより短時間で画像を送受信することが可能である。
【0004】
また、IPFAXの高速性を生かし、データ量の多い、高解像度ファックスやカラーファックスなどに用いられることが期待されている。
【0005】
さらに、IP網であるから、従来のアナログ網に必要であった電話回線の増設や、モデムハードウェアの増設なしに、同時通信数を容易に増やすことができ、マルチセッションが可能となる。
【0006】
なお、従来のアナログファックスも、T.38GWを介して公衆IP網に接続することが可能である。詳しくは既知の技術であるため割愛するが、IPFAX同士は呼接続をSIP、データ通信をT.38プロトコルで行う。
【0007】
これに関し、T.38GWは、SIP呼接続をアナログ電話の呼接続、T.38プロトコルをT.30プロトコルにリアルタイム変換し、アナログファックスとの相互通信を可能とするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
IPFAXがT.38GWを介してアナログファックスと通信する際には、V.17アナログファックスの最高通信速度である14400bpsより通信速度を上げることができない制約がある。
【0009】
このように、従来のアナログファックス同士の通信では、通信速度が遅いため、画像の符号化、復号化をソフトウェアCODECで行っても十分間に合う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−92671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、例えば、NGN網は最高で1Mbpsを帯域保障するが、符号化、復号化をソフトウェアCODECで行った場合、処理が遅く、公衆IP網の性能を最大限引き出すことができない。
【0012】
更に、NGN網は時間当たりの従量課金であるため、速度が遅いことはユーザに余計な出費を強いることになる。
【0013】
従って、画像の符号化、復号化をハードウェアCODECで行うことが望ましいことはもちろんであるが、マルチセッションにおいて、通信回線分の専用ハードウェアCODECをIPFAX機に搭載することはコスト的に不利である。従って、全ての通信においてハードウェアCODECが使用できるとは限らない。
【0014】
一方、上述したようにIPFAXがT.38GWを介してアナログファックスと通信する際には、アナログファックスの最高通信速度である14400bpsより通信速度を上げることができない制約があるため、ソフトウェアCODECでも十分処理が間に合う。
【0015】
また、IPFAX同士の通信においても、公衆IP網ではなく、構内IP網であれば時間が多少掛かっても課金対象とはならないためソフトCODECを使用し、ある程度低速通信になったとしても通信料金が増えることが無い。
【0016】
本発明の目的は、ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化速度の異なるコーデックを利用可能な通信装置において、コーデックを適切に使い分けることが可能な通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1の通信装置は、ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化を行う第1コーデック手段と、前記第1コーデック手段よりも高速に前記画像の符号化及び復号化を行う第2コーデック手段と、通信速度の異なる回線で前記画像を送受信可能な送受信手段と、前記送受信手段により、前記回線のうちで通信速度が速い回線で前記画像を送受信するときは、前記第2コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第2コーデック手段を制御し、前記回線のうちで通信速度が遅い回線で前記画像を送受信するときは、前記第1コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第1コーデック手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化速度の異なるコーデックを利用可能な通信装置において、コーデックを適切に使い分けることが可能な通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信装置を含む通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるIPFAX装置のブロック図である。
【図3】図1におけるIPFAX装置同士のファックス通信を示すシーケンス図である。
【図4】図1におけるIPFAX装置とT.38GW先のアナログファックスとのファックス通信を示すシーケンス図である。
【図5】図2における操作部に表示されるハードウェアCODEC使用有無画面の一例である。
【図6】図2における操作部に表示されるハードウェアCODECを使用する通信速度の閾値設定画面の一例である。
【図7】IPFAX装置のCPUにより実行されるファックス送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】IPFAX装置のCPUにより実行されるファックス受信処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る通信装置を含む通信システム100の概略構成を示す図である。
【0022】
図1において、通信システム100は、構内IP網1001、公衆IP網1003、IPFAX装置1002,1004,1007、T.38GW1005、及びアナログファックス1006で構成されている。
【0023】
上記IPFAX装置1002,1004,1007は、本発明の通信装置に対応し、本実施の形態においては、IPFAX装置1002を中心に説明していく。また、IPFAX装置1004は、公衆IP網1003に接続されている。また、IPFAX装置1007は、構内IP網1001に接続されている。
【0024】
なお、本来は、公衆IP網1003用のゲートウェイ、構内IP網1001用のゲートウェイ、及びセッション接続を管理するSIPサーバなどが必要となるが、ここでは割愛する。また、IPFAX装置1002,1004,1007に共通する説明をするときは、単にIPFAX装置と記載する。
【0025】
図1において、通信速度が異なる回線は、公衆IP網1003を用いる回線、及びT.38GW、アナログファックス1006間のアナログ網を含む回線となっている。
【0026】
図2は、図1におけるIPFAX装置1002のブロック図である。
【0027】
図2において、IPFAX装置1002は、操作部2002、スキャナ2003、CPU2004、主記憶装置2005、NVRAM2009を含む。また、IPFAX装置1002は、ハードウェアCODEC2010(ハードウェアコーデック)、ネットワークデバイス2011、及びプリンタ2013を含む。
【0028】
CPU2004は演算装置であり、IPFAX装置1002全体の制御を行う。
【0029】
操作部2002は、キーボード、表示部等で構成され、オペレータが各種入力操作を行うためのものである。スキャナ2003は、送信画像の読み込みを行う。プリンタ2013は、受信画像の印刷を行う。
【0030】
NVRAM2009はユーザ設定などが記録される。ハードウェアCODEC2010は符号、復号化を行うハードウェアである。
【0031】
主記憶装置2005はCPU2004が動作させるプログラムや画像データを格納するために用いる。また、主記憶装置2005には、送受信画像格納領域2006、符号復号領域2007、及びソフトウェアCODEC領域2008が設けられている。ソフトウェアCODEC領域2008には、ソフトウェアCODEC(ソフトウェアコーデック)を実行するためのプログラムが記憶されている。これをCPU2004が実行することにより、ソフトウェアCODEC機能を実現できる。
【0032】
送受信画像格納領域2006は、スキャナ2003が読み取った送信画像を一時的に格納するか、受信画像を一次格納する領域である。
【0033】
符号復号領域2007は、ソフトウェアCODEC領域2008に記憶されたソフトウェアCODEC、及びハードウェアCODEC2010が符号、または復号化した後のデータを一時的に格納する領域である。
【0034】
ソフトウェアCODEC領域2008はCPU2004が読み込み動作させるソフトウェアCODECのプログラムが格納される領域である。
【0035】
ネットワークデバイス2011はIPFAX装置1002をネットワークに接続するもので、IPデータ送受信を行う。このネットワークデバイス2011は、アナログ網に接続されたアナログファックス1006にもファックスの送受信可能である。従って、通信速度の異なる回線で画像を送受信可能となっている。
【0036】
本実施の形態では、上述したソフトウェアCODECが、ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化を行う第1コーデック手段に対応する。一方、ハードウェアCODEC2010は、第1コーデック手段よりも高速に前記画像の符号化及び復号化を行う第2コーデック手段に対応する。
【0037】
なお、符号化及び復号化速度が遅いコーデックは必ずしもソフトウェアCODECとは限らない。例えば符号化及び復号化速度が異なる2つ以上のハードウェアCODECが搭載されることもあり得る。
【0038】
他のIPFAX装置1004,1007も同様の構成となっている。
【0039】
図3は、図1におけるIPFAX装置同士のファックス通信を示すシーケンス図である。
【0040】
このシーケンス図は、図1では、IPFAX装置1002とIPFAX装置1004とのファックス通信、または、IPFAX装置1002とIPFAX装置1007とのファックス通信を示す。
【0041】
この図3では例として、IPFAX装置1002が送信機、IPFAX装置1004が受信機とした場合のファックス通信を示している。
【0042】
図3において、IPFAX装置1002はIPFAX装置1004へセッション(呼)接続要求を送信し、セッション接続を行う(ステップS3001)。本来であれば、構内IP網1001から公衆IP網1003へ接続するためのゲートウェイが必要である、またセッション接続にはSIPを用いるなど制御が必要であるが、既知の技術のため割愛する。
【0043】
セッション接続によりセッションが確立すると、IPFAX装置1002はT.38 CNGをIPFAX装置1004へ送信する(ステップS3002)。
【0044】
次いで、IPFAX装置1004はT.38 CEDを送信する(ステップS3003)。受信側であるIPFAX装置1004はT.38 DISによって能力宣言をし、IPFAX装置1002がそれを受信する(ステップS304)。
【0045】
送信側であるIPFAX装置1002はT.38DCSによって能力宣言を返し、IPFAX装置1004がそれを受信する(ステップS305)。通常、通信相手がT.38GW先のアナログファックスか否かは、T.30勧告書によると、送られてきたDISあるいはDCSのbit3及びbit121を解析することで分かる。
【0046】
このケースでは、DIS/DCS解析の結果IPFAX装置1002、IPFAX装置1004ともにT.38GWを経由していないIPFAXであるということが分かる。
【0047】
次いで、IPFAX装置1002,1004は、T.38 TCFを送受信し(ステップS306)、T.38 CFRを送受信し(ステップS3007)、画像通信が行われる(ステップS3008)。この送受信の詳細についても、既知の技術であるのでここでは割愛する。画像の送受信が行われると、セッションの切断が行われ(ステップS3009)、本処理を終了する。
【0048】
図4は、図1におけるIPFAX装置とT.38GW1005先のアナログファックス1006とのファックス通信を示すシーケンス図である。
【0049】
このシーケンス図は、図1では、IPFAX装置1002とアナログファックス1006とのファックス通信を示す。
【0050】
図4において、IPFAX装置1002はアナログファックス1006へセッション(呼)接続要求を送信し、セッション接続を行う(ステップS4001)。T.38GW1005は、IPFAX装置1002からのIPFAXのセッション接続要求をアナログのセッション接続要求へ変換し、アナログファックス1006へ接続要求する。具体的に例えば、SIPのINVITEをアナログ呼接続のダイアル要求へと変換することである。
【0051】
セッション接続によりセッションが確立すると、IPFAX装置1002はT.38GW1005へT.38 CNGを送信する(ステップS4002)。T.38GW1005によってT.38 CNGはアナログトーンのCNGへ変換され、アナログファックス1006へ送信される(ステップS4003)。
【0052】
アナログファックス1006は、アナログトーンのTONE CEDをT.38GW1005へ送信する(ステップS4004)。TONE CEDは、T.38GW1005によってT.38CEDへ変換され、IPFAX装置1002へ送信される(ステップS4005)。
【0053】
次いで、アナログファックス1006はT.30 DISをT.38GW1005へ送信し(ステップS4006)、T.38GW1005はT.30DISをT.38 DISへ変換し、IPFAX装置1002へ送信する(ステップS4007)。この例では、IPFAX装置1002が、送信されたT.38 DISのbit3及びbit121を解析すると、IPFAX装置1002が通信相手として画像送信しようとしている相手がT.38GW先のアナログファックスであるということが分かる。
【0054】
IPFAX装置1002はT.38GW1005へT.38 DCSを送信する(ステップS4008)。T.38GW1005によってT.38 DCSはT.30 DCSへ変換され、アナログファックス1006へ送信される(ステップS4009)。
【0055】
IPFAX装置1002はT.38GW1005へT.38 TCFを送信する(ステップS4010)。T.38GW1005によってT.38 TCFはT.30 TCFへ変換され、アナログファックス1006へ送信される(ステップS4011)。
【0056】
次いで、アナログファックス1006はT.30 CFRをT.38GW1005へ送信し(ステップS4012)、T.38GW1005はT.30CFRをT.38 CFRへ変換し、IPFAX装置1002へ送信する(ステップS4013)。
【0057】
その後、IPFAX装置1002はT.38GW1005へT.38画像を送信する(ステップS4014)。T.38GW1005によってT.38画像はT.30画像へ変換され、アナログファックス1006へ送信される(ステップS4015)。
【0058】
そして、セッションの切断が行われる(ステップS4016)。具体的にはIPFAX装置1002がSIPのBYEを発行し、それを受けたT.38GW1005がアナログファックス1006の回線開放を行うことになる。
【0059】
SIPやT.38GWは既知の技術であるため割愛するが、アナログファックス1006がIPFAX装置1002へ画像送信する場合でも基本的には変わりはなく、T.38GWが逆の変換を行うことになる。
【0060】
ただし、その場合、IPFAX装置1002はT.38GWからT.38 DCSを受け取ることになる。IPFAX装置1002が受け取ったT.38 DCSのbit3及びbit121を解析することで、IPFAX装置1002が通信相手として画像受信しようとしている相手がT.38GW1005先の、アナログファックス1006であるということが分かる。
【0061】
図5は、図2における操作部2002に表示されるハードウェアCODEC2010使用有無画面の一例である。
【0062】
この画面により、ユーザが、構内IP網1001において、IPFAX同士の通信、例えばIPFAX装置1002とIPFAX装置1007が画像送受信する際に、画像の符号、復号化にハードウェアCODEC2010を用いるか否かを設定することができる。
【0063】
ハードウェアCODEC使用有無画面5001には、「使用しない」ボタン5002、「使用する」ボタン5003が表示される。ここで設定した内容は、図2におけるNVRAM2009に保存され、IPFAXの電源切断時にも消去されない。
【0064】
図6は、図2における操作部2002に表示されるハードウェアCODEC2010を使用する通信速度の閾値設定画面の一例である。
【0065】
実際の通信速度が、ユーザがこの画面で設定した閾値より高速な場合、ハードウェアCODEC2010による画像の符号、復号化が行われる。一方、実際の通信速度が、ユーザがこの画面で設定した閾値より低速な場合、ソフトウェアCODECによる画像の符号、復号化が行われる。
【0066】
実際の通信速度を求めるには、例えば、セッション接続時にSIPを用いる場合、SIPでセッション接続する際に使用されるセッション記述プロトコルSDPを参照する。SDPにおける帯域指定タイプ”b=”を解析する。あるいはタイプ”a=”のビットレートを解析することで通信速度を求めることができる。
【0067】
閾値設定画面6001には、閾値6002、数値を増やすボタン6003、数値を減らすボタン6004が表示される。この例では、1kbps単位での調整が可能である。
ここで設定した内容は、図2のNVRAM2009に保存され、IPFAXの電源切断時にも消去されない。
【0068】
図7は、IPFAX装置1002のCPU2004により実行されるファックス送信処理の手順を示すフローチャートである。
【0069】
この図7のフローチャートは、IPFAX装置1002が、IPFAX装置1004、T.38GW先のアナログファックス1006、及びIPFAX装置1007のいずれに送信する場合にも適用される。
【0070】
図7において、まずユーザによりIPFAX送信が開始される(ステップS7000)。次いで、ハードウェアCODEC2010のリソースの取得を試みる(ステップS7001)。これは、ハードウェアCODEC2010がIPFAX機上に1つ以上存在しているので、そのうちの1つを使用宣言することである。
【0071】
例えば、IPFAX装置1002上に1つのハードウェアCODEC2010があると仮定する。最初のセッションはハードウェアCODECのリソースを取得できる。最初のセッション接続のファックス通信が完了する前に、次のセッション接続のファックス通信を行う場合は1つしかないハードウェアCODEC2010が使用中であるため、ハードウェアCODEC2010のリソースを取得できない。
【0072】
ハードウェアCODEC2010リソースはファックス通信が完了すると解放されるので、そのとき取得することが可能となる。
【0073】
次いで、ハードウェアCODEC2010のリソースを取得できたか否か判別する(ステップS7002)。ステップS7002の判別の結果、ハードウェアCODEC2010のリソースが取得できたとき(ステップS7002でYES)、通信相手が構内IP網1001に接続されているか否か判別する(ステップS7003)。図1の場合は、通信相手がIPFAX装置1007か否かを判別することとなる。
【0074】
通信相手の判別は、相手の電話番号の先頭の数字に意味を持たせておき、例えば0発信であれば公衆網、0発信でなければ構内網としておくことで可能となる。また、IPFAX装置1002機内に登録したアドレス帳に通信相手が構内IP網1001に接続されているか公衆IP網1003に接続されているかを記述しておくことで、判別することも可能である。
【0075】
ステップS7003の判別の結果、通信相手が構内IP網1001に接続されていないとき(ステップS7003でNO)、セッション接続要求を送信することでセッションが接続される(ステップS7004)。SIPであればINVITEである。
【0076】
次いで、通信相手からDISを受信すると、通信相手がT.38GW1005先のアナログファックス1006であるか否か解析する(ステップS7005)。解析の結果が、通信相手がアナログファックス1006であるか否かを判別する(ステップS7006)。
【0077】
ステップS7006の判別の結果、通信相手がアナログファックス1006ではないとき(ステップS7006でNO)、図6で説明したIPFAX通信速度閾値が実際の通信速度未満か否か判別する(ステップS7007)。
【0078】
ステップS7007の判別の結果、IPFAX通信速度閾値が実際の通信速度未満のとき(ステップS7007でYES)、ハードウェアCODEC2010を使用して送信画像の符号化する符号処理を行う(ステップS7008)。
【0079】
次いで、符号化された画像を公衆IP網1003に接続されたIPFAX装置1004へ送信する(ステップS7009)。画像送信が完了すると、IPFAX装置1002はハードウェアCODEC2010を解放する(ステップS7010)。そして、セッションを切断し(ステップS7011)、本処理を終了する。
【0080】
上記ステップS7002の判別の結果、ハードウェアCODEC2010のリソースが取得できなかったとき(ステップS7002でNO)、通信相手にセッション接続要求を送信し、セッションを接続し(ステップS7017)、ステップS7015に進む。
【0081】
上記ステップS7003の判別の結果、通信相手が構内IP網1001に接続されているとき(ステップS7003でYES)、構内IP網1001のIPFAX装置1007に対してセッション接続要求を送信し、セッションが接続される(ステップS7012)。
【0082】
次いで、図5で説明した構内IP網1001ならハードウェアCODEC2010を使用する設定となっているか否かを判別する(ステップS7013)。ステップS7013の判別の結果、ハードウェアCODEC2010を使用する設定となっているとき(ステップS7013でYES)、上記ステップS7008に進む。
【0083】
一方、ハードウェアCODEC2010を使用する設定となっていないとき(ステップS7013でNO)、直ちにハードウェアCODEC2010のリソースを解放する(ステップS7014)。このように、画像通信前に解放することにより、マルチセッションでIPFAX同時通信が行われる際にも、ハードウェアCODEC2010のリソース利用に無駄が生じない。
【0084】
次いで、ソフトウェアCODECを使用して送信画像の符号化する符号処理を行い(ステップS7008)、符号化した画像を通信相手へ送信し、上記ステップS7011へ進む。
【0085】
また、上記ステップS7006の判別の結果、通信相手がアナログファックス1006であるとき(ステップS7006でYES)、上記ステップS7014に進む。さらに、ステップS7007の判別の結果、IPFAX通信速度閾値が実際の通信速度未満ではないとき(ステップS7007でNO)、上記ステップS7014に進む。
【0086】
図8は、IPFAX装置1002のCPU2004により実行されるファックス受信処理の手順を示すフローチャートである。
【0087】
この図8のフローチャートは、IPFAX装置1002が、IPFAX装置1004、T.38GW先のアナログファックス1006、及びIPFAX装置1007のいずれから受信する場合にも適用される。
【0088】
図8において、通信相手からセッション接続要求を受信する(ステップS8001)。すなわちSIPでのINVITEを受信する。
【0089】
次いで、ハードウェアCODEC2010のリソースの取得を試みる(ステップS8002)。次いで、ハードウェアCODEC2010のリソースを取得できたか否か判別する(ステップS8003)。ステップS8003の判別の結果、ハードウェアCODEC2010のリソースが取得できたとき(ステップS8003でYES)、通信相手が構内IP網1001に接続されているか否か判別する(ステップS8004)。図1の場合は、通信相手がIPFAX装置1007か否かを判別することとなる。
【0090】
通信相手の判別は、例えばセッション接続にSIPを用いる場合、SIPでセッション接続する際に使用されるセッション記述プロトコルSDPを参照することで可能となる。メディアタイプ”m=”を解析し、m=applicationであれば公衆IP網1003、m=imageであれば構内IP網1001であると判別する。または、通信相手のURIのドメイン名を参考にする。または、IPFAX装置1002機内に登録したアドレス帳に通信相手が構内IP網1001に接続されているか公衆IP網1003に接続されているかを記述しておくことで判別することも可能である。
【0091】
ステップS8004の判別の結果、通信相手が構内IP網1001に接続されていないとき(ステップS8004でNO)、セッション接続要求を送信することでセッションが接続される(ステップS8005)。
【0092】
次いで、通信相手からDISを受信すると、通信相手がT.38GW1005先のアナログファックス1006であるか否か解析する(ステップS8006)。解析の結果が、通信相手がアナログファックス1006であるか否かを判別する(ステップS8007)。
【0093】
ステップS8007の判別の結果、通信相手がアナログファックス1006ではないとき(ステップS8007でNO)、図6で説明したIPFAX通信速度閾値が実際の通信速度未満か否か判別する(ステップS8008)。
【0094】
ステップS8008の判別の結果、IPFAX通信速度閾値が実際の通信速度未満のとき(ステップS8008でYES)、画像を受信する(ステップS8009)。そして、ハードウェアCODEC2010を使用して受信した画像の復号化する復号処理を行う(ステップS8010)。復号が完了すると、IPFAX装置1002はハードウェアCODEC2010を解放する(ステップS8011)。そして、セッションを切断し(ステップS8012)、本処理を終了する。
【0095】
上記ステップS8003の判別の結果、ハードウェアCODEC2010のリソースが取得できなかったとき(ステップS8003でNO)、通信相手にセッション接続要求を送信し、セッションを接続し(ステップS8018)、ステップS8016に進む。
【0096】
上記ステップS8004の判別の結果、通信相手が構内IP網1001に接続されているとき(ステップS8004でYES)、構内IP網1001のIPFAX装置1007に対してセッション接続要求を送信し、セッションが接続される(ステップS8013)。
【0097】
次いで、図5で説明した構内IP網1001ならハードウェアCODEC2010を使用する設定となっているか否かを判別する(ステップS8014)。ステップS8014の判別の結果、ハードウェアCODEC2010を使用する設定となっているとき(ステップS8014でYES)、上記ステップS8009に進む。
【0098】
一方、ハードウェアCODEC2010を使用する設定となっていないとき(ステップS8014でNO)、直ちにハードウェアCODEC2010のリソースを解放する(ステップS8015)。
【0099】
次いで、画像を受信し(ステップS8016)、ソフトウェアCODECを使用して受信した画像の復号化する復号処理を行い(ステップS8017)、上記ステップS8012に進む。
【0100】
また、上記ステップS8007の判別の結果、通信相手がアナログファックス1006であるとき(ステップS8007でYES)、上記ステップS8015に進む。さらに、ステップS8008の判別の結果、IPFAX通信速度閾値が実際の通信速度未満ではないとき(ステップS8008でNO)、上記ステップS8015に進む。
【0101】
上述した図7のステップS7009、及び図8のステップS8009は、通信速度の異なる回線で前記画像を送受信可能な送受信手段に対応する。また、図7のステップS7008、及び図8のステップS8010は、制御手段に対応する。すなわち、これらのステップでは、回線のうちで通信速度が速い回線で画像を送受信するときは、ハードウェアCODECにより画像を符号化又は復号化するように制御している。さらに、図7のステップS7015、及び図8のステップS8017も、制御手段に対応する。すなわち、これらのステップでは、回線のうちで通信速度が遅い回線で画像を送受信するときは、ソフトウェアCODECにより記画像を符号化又は復号化するように制御している。
【0102】
さらに、図7,8では、回線が画像を送受信する際に課金されない回線(構内IP網)のときには、ソフトウェアCODECにより画像を符号化又は復号化するように制御している。また、図7,8では、通信速度が予め設定された閾値を超えたときにハードウェアCODECにより前記画像を符号化又は復号化するように制御している。通信速度が予め設定された閾値を超えないときにソフトウェアCODECにより画像を符号化又は復号化するように制御している。
【0103】
以上説明した実施の形態によれば、公衆IP網のIPFAX同士の通信など高速網で課金が発生する場合には、高速なハードウェアCODECが使用できる。
【0104】
また、公衆IP網のT.38GW先のアナログファックスとの通信など低速な通信の場合には、低速なソフトウェアCODECを使用する。
【0105】
さらに、構内IP網など高速だが課金対象とならない通信にはソフトウェアCODECを使用することで、別の回線において、課金対象である公衆IP網のIPFAX同士の高速通信が行える。
【0106】
また、図7、8の処理によれば、通信速度が速い回線で画像を送受信するときは、ハードウェアCODECにより画像を符号化又は復号化するように制御する。一方、通信速度が遅い回線で画像を送受信するときは、ソフトウェアCODECにより画像を符号化又は復号化するように制御する。その結果、ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化速度の異なるコーデックを利用可能な通信装置において、コーデックを適切に使い分けることが可能となる。
【0107】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0108】
1001 構内IP網
1002,1004,1007 IPFAX装置
1003 公衆IP網
1005 T.38GW
1006 アナログファックス
2004 CPU
2005 主記憶装置
2008 ソフトウェアCODEC領域
2010 ハードウェアCODEC
2011 ネットワークデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化を行う第1コーデック手段と、
前記第1コーデック手段よりも高速に前記画像の符号化及び復号化を行う第2コーデック手段と、
通信速度の異なる回線で前記画像を送受信可能な送受信手段と、
前記送受信手段により、前記回線のうちで通信速度が速い回線で前記画像を送受信するときは、前記第2コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第2コーデック手段を制御し、前記回線のうちで通信速度が遅い回線で前記画像を送受信するときは、前記第1コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第1コーデック手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回線が前記画像を送受信する際に課金されない回線のときには、前記第1コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第1コーデック手段を制御することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、通信速度が予め設定された閾値を超えたときに前記第2コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第2コーデック手段を制御し、通信速度が予め設定された閾値を超えないときに前記第1コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第1コーデック手段を制御することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1コーデック手段は、ソフトウェアコーデックであり、前記第2コーデック手段はハードウェアコーデックであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信速度が異なる回線は、IP網を用いる回線、及びアナログ網を含む回線であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化を行う第1コーデック手段と、前記第1コーデック手段よりも高速に前記画像の符号化及び復号化を行う第2コーデック手段と、を備えた通信装置の制御方法であって、
通信速度の異なる回線で前記画像を送受信可能な送受信ステップと、
前記送受信ステップにより、前記回線のうちで通信速度が速い回線で前記画像を送受信するときは、前記第2コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第2コーデック手段を制御し、前記回線のうちで通信速度が遅い回線で前記画像を送受信するときは、前記第1コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第1コーデック手段を制御する制御ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
ファックスで送受信される画像の符号化及び復号化を行う第1コーデック手段と、前記第1コーデック手段よりも高速に前記画像の符号化及び復号化を行う第2コーデック手段と、を備えた通信装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
通信速度の異なる回線で前記画像を送受信可能な送受信ステップと、
前記送受信ステップにより、前記回線のうちで通信速度が速い回線で前記画像を送受信するときは、前記第2コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第2コーデック手段を制御し、前記回線のうちで通信速度が遅い回線で前記画像を送受信するときは、前記第1コーデック手段により前記画像を符号化又は復号化するように前記第1コーデック手段を制御する制御ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−46295(P2013−46295A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183865(P2011−183865)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】