説明

通信装置及び通信装置の制御方法

【課題】
通信装置の内部に温度検出用の素子を備えることなく冷却ファンを制御し冷却する。
【解決手段】
パケット受送信部11のポート112〜115に接続される機器の数及び機器との間の接続速度に応じて冷却ファン2の回転数を制御する。1Gbpsでリンクを確立したポートの数が0の場合、電源ブロック12から冷却ファン2へ出力する電力の電圧値は0Vであり、冷却ファン2は停止する。1Gbpsでリンクを確立したポートの数が1又は2の場合、電圧値は8Vであり、冷却ファン2は低速モードで回転する。1Gbpsでリンクを確立したポートの数が3又は4の場合、電圧値は12Vであり、冷却ファン2は高速モードで回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関し、特に、冷却ファンを備える通信装置において、装置の内部温度を一定温度以下に抑えるように、冷却ファンの回転数を制御する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有線ネットワーク及び無線ネットワークを構築するために、スイッチングハブやルーター等の通信装置が使用される。近年、10ギガビット・イーサーネット(登録商標)、1ギガビット・イーサネット(登録商標)等のプロトコルを用いた高速有線ネットワーク、IEEE802.11n等のプロトコルを用いた高速無線ネットワークが実用化されている。これらネットワークの高速化に伴う負荷の増大に伴い、通信装置の冷却が課題となっている。
【0003】
一般に、パーソナルコンピュータや通信装置等の半導体素子を用いた電子機器において、半導体素子の発熱に依る電子機器内部の温度上昇に伴ういわゆる熱暴走等の不具合を抑止するために、電子機器内部を空冷する冷却ファンが使用されている。更に、電子機器内部の温度を検出し、検出された温度に応じて冷却ファンの回転数を制御することで、消費電力の低減、冷却ファンによる騒音の低減、冷却ファンの長寿命化を図る技術が知られている。ここで、電子機器内部の温度を検出し、電子機器内部の温度を一定に保つためには、温度検出用の素子や専用のマイクロコンピュータが必要となる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−196499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、温度検出用の素子を電子機器内部に備える必要がある。更に、このような温度検出用の素子の装置内での位置によっては、装置内部の冷却が必要な箇所の温度と、検出された温度が等しくなるとは限らないという問題があった。本発明は、温度検出用の素子を用いることなく、冷却ファンを制御し、電子機器内部の温度を一定以下に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
通信システムにおいてパケットを中継する通信装置であって、パケットの受送信を行うパケット受送信部と、パケット受送信部の使用率を検出する使用率検出部と、供給される電力の電圧値に応じた回転数で回転し通信装置を冷却する冷却ファンと、冷却ファンへ所定の出力電圧値で電力を供給する電源ブロックと、パケット受送信部の使用率に応じて電源ブロックの出力する出力電圧値を制御する電圧制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
通信装置においては、パケット受送信を行うパケット受送信部が主な熱源となる。ここで、パケット受送信部の発熱量は、その使用率に依存する。本願発明は、パケット受送信部の使用率に応じ、通信装置の内部温度が一定値以下となる冷却ファンの回転数を、予め実験・シミュレーションなどの数値演算、装置設計上の設定値、あるいは通信装置が使用される使用環境における各種のパラメータ等により導きだし、パケット受送信部の使用率と冷却ファンの回転数を対応づける。そして、通信装置の使用時において、使用率検出部を用いてパケット受送信部の使用率を検出する。前記パケット受送信部の使用率と冷却ファンの回転数との対応関係に基づき、所定の電圧値で冷却ファンへ電力を供給し、所定の回転数で冷却ファンを回転させる制御を行う。
【0008】
また、本発明に係るパケット受送信部は、通信システムの備える端末とケーブルにより接続される有線接続部を備えるものとしてもよい。この場合、使用率検出部は、有線接続部に接続される端末の数及び端末との接続速度に応じたパケット受送信部の使用率を検出する。
【0009】
パケット受送信部が有線接続部を備える場合、パケット受送信部の負荷は、例えば、1Giga bit per second(以下、Gbpsと記す)等の高速な通信速度で接続されている端末の数に、依存する。よって、有線接続部に接続される端末の数及び端末との接続速度に基づいて、パケット受送信部の使用率を検出することが可能である。
【0010】
また、本発明に係るパケット受送信部は、通信システムの備える端末と無線通信により接続される無線接続部を備えるものとしてもよい。この場合、使用率検出部は、無線接続部の備える送信アンプの使用率に応じたパケット受送信部の使用率を検出する。
【0011】
パケット受送信部が無線接続部を備える場合、パケット受送信部の負荷は、無線接続部の備える送信アンプの使用率に依存する。よって、無線接続部の備える送信アンプの使用率に基づいて、パケット受送信部の使用率を検出することが可能である。
【0012】
また、本発明に係る冷却ファンは通信装置から脱着可能であり、冷却ファンが通信装置に装着されているか否かを検知するファン検知部を備えるものとしてもよい。ファン検知部により冷却ファンが装着されていないことが検知される場合、パケット受送信部の動作を制限する。
【0013】
冷却ファンが通信装置に接続されていない場合、通信装置は、制限モードに移行する。制限モードにおいては、例えば、パケット受送信部の備える有線接続部において、1Gbps等の高速な通信速度で接続の確立を行う端末の数を制限する。また、制限モードにおいては、例えば、パケット受送信部の備える無線接続部において、送信アンプの使用率を一定値以下になるように動作を抑止する。以上の動作により、冷却ファンが接続されていない場合に、パケット受送信部が行う処理に伴う発熱を低減し、温度上昇に伴う不具合を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予めパケット受送信部の使用率と冷却ファンの回転数との対応関係を設定し、この対応関係に基づいた制御を行うことで、過度に冷却ファンを回転させることなく、また、温度検出用の素子を用いることなく、通信装置の内部の温度を一定値以下に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例に係るハードウェア構成図
【図2】第1実施例に係る通信装置の動作フロー図
【図3】第1実施例に係る冷却ファンの状態の一例
【図4】第1実施例に係る通信装置の状態遷移図
【図5】第2実施例に係る無線パケット受送信部のハードウェア構成図
【図6】第2実施例に係る通信装置の動作フロー図
【図7】第2実施例に係る通信装置の状態遷移図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施例>
図1に第1実施例に係る通信装置1のハードウェア構成図を示す。通信装置1は通信部10と冷却ファン2を備える。通信部10は、パケット受送信部11、電源ブロック12、使用率検出部13、パルス検出IC14を備える。冷却ファン2は、通信部10から着脱可能であり、通信部10を冷却するために用いられる。
【0017】
パケット受送信部11は、通信装置1の外部に存在する一又は複数の通信機能を備える機器とパケットを用いて情報の送受信を行う。第1実施例におけるパケット受送信部11は、スイッチ素子111とポート112乃至115を備える。ポート112乃至115は、外部に存在する機器と有線により接続される。スイッチ素子111は、通信装置1の外部に存在するパーソナルコンピュータ(以下、PCと記す)3等の機器から、ポート112乃至115を通じパケットを受け取る。更に、該パケットに含まれる情報を用いて、ポート112乃至115を通じて外部に存在する機器へとパケットを転送する。本実施例において、通信装置1の備えるポートの数を4ポートとしているが、ポートの数を任意の数へ変更することは当然に可能である。
【0018】
スイッチ素子111は、ポート112乃至115に接続された機器に応じて、パケットの転送速度を変更する。ここで、スイッチ素子111は、例えば、レイヤー2スイッチ機能、レイヤー3スイッチ機能、又はルーター機能等を有する素子である。スイッチ素子111は、通信装置1の外部に存在する機器と機器の状態に応じて10Gbps、1Gbps、100Mega bit per second(以下、Mbpsと記す)、10Mbps等の速度で接続される。スイッチ素子111と機器との接続速度は、スイッチ素子111と機器が接続され、リンクが確立する際に決定される。
【0019】
本実施例において、スイッチ素子111は、ポート112乃至115を通じ、外部の機器と1Gpbs又は100Mbps以下の接続速度でリンクを確立する。スイッチ素子111が外部の機器と1Gbpsで接続する場合、100Mbps以下の速度で接続する場合と比較して、パケットの送受信に係る処理による負荷が増大する結果、パケット送受信部11の発熱量が増す。本実施例では、かかるパケット送受信部11の発熱を冷却するために、外部の機器と1Gbpsでリンクが確立されたポートの数に応じて冷却ファン2の回転数を増減させる。パケット送受信部11の備える全ポートの数と、接続速度1Gbpsでリンクが確立されたポートの数の比を使用率として定義する。
【0020】
電源ブロック12には、通信装置1の外部に存在する電源から電力が供給される。電源ブロック12は、外部から供給された電力を元に、通信部10及び冷却ファン2に対して電力を供給する。なお、電源ブロック12は、後述する使用率検出部13より出力されるファン回転数制御信号に応じた所定の電圧値で冷却ファン2へと電力を出力し、この電圧値に応じて冷却ファン2は所定の回転数で回転する。
【0021】
使用率検出部13は、CPU131、ROM132、RAM133を備える。CPU131は、スイッチ素子111の制御を行うとともに、パケット受送信部11を監視し電源ブロック12の制御を行う。ROM132には、通信装置1の動作に係るファームウェア及びパケット受送信部11の使用率と冷却ファン2の回転数とを対応づける情報など制御に係る設定が格納される。RAM133は、CPU131が演算を行うための記憶領域として用いられる。使用率検出部13の備えるCPU131は、パケット受送信部11の備えるスイッチ素子111と接続され、パケット受送信部11の使用率を検出する。ここで、実施例1における、使用率検出部13により検出される使用率は、パケット受送信部11の備えるポートに接続されている機器の数、及び機器との接続速度により決定される。このようにして検出されたパケット受送信部11の使用率をもとに、ファン回転数制御信号を電源ブロック12に出力する。電源ブロック12は、ファン回転数制御信号に応じて、冷却ファン2に対して、所定の電圧値で電力を出力する。そして、冷却ファン2は、所定の回転数で回転する。パケット受送信部11と、電源ブロック12と、使用率検出部13との動作により、パケット受送信部11の使用率に応じて、冷却ファン2の回転数を制御することが可能となる。
【0022】
冷却ファン2に対し電力が供給され、冷却ファン2が回転している場合、冷却ファン2からパルス信号がパルス検出IC14へ入力される。パルス検出IC14は、パルス信号が冷却ファン2から入力されている旨を使用率検出部13の備えるCPU131へ通知する。パルス検出IC14の動作により、冷却ファン2が通信部10に接続されているか否かを検出することが可能となる。また、パルス信号は、冷却ファン2が一定回数回転する度に出力される信号である。パルス検出IC14は、パルス信号の入力頻度から、冷却ファン2の回転数を検出し、CPU131へ通知する。
【0023】
冷却ファン2が通信部10に接続されていない場合、CPU131は、パケット受送信部11を制御し、通信機能を制限した制限モードとして通信機器1を動作させる。本実施例における制限モードは、例えば、パケット受送信部11の全てのポートについて、1Gbpsでの接続を禁止し、強制的に100Mbps以下の速度でリンクを確立させるモードである。これにより、冷却ファン2が装着されていない場合に、パケット送受信部11の発熱を低減させ、パケット送受信部11の熱暴走等の異常動作を防止することが可能となる。
【0024】
第1実施例に係る通信装置1の動作フロー図を図2に示す。ステップS0において、通信装置1に外部の電源から電力が供給され、通信装置1が起動する。ステップS0に続き、電源ブロック12から冷却ファン2に対し電力が供給され、冷却ファン2が起動する(S2)。ここで、パルス検出IC14が冷却ファン2からパルス信号が入力されているか否かを検出する(S4)。パルス信号が検出されない、即ち、冷却ファン2が通信部10に接続されていない場合(S4:NO)、通信装置1は、制限モードへ移行する(S6)。通信装置1が制限モードに設定されている場合、パルス信号が入力されているか否かを再度検出する(S4)。
【0025】
パルス信号が検出された、即ち、冷却ファン2が通信部10に接続されている場合(S4:YES)、通信装置1が制限モードに設定されている場合は、制限モードを解除する(S8)。そして、パケット受送信部11の使用率を、使用率検出部13が検出する(S10)。ここで、パケット受送信部11の使用率と冷却ファン2の回転数との対応関係に関する情報は、ROM132に格納されている。格納されている情報に基づき、冷却ファン2の回転数が、ステップS10において検出されたパケット受送信部11の使用率に応じた回転数となるように、CPU131はファン回転数制御信号を電源ブロック12に出力する。電源ブロック12は入力されたファン回転数制御信号に応じた電圧値で電力を冷却ファン2に供給する。そして、冷却ファン2はパケット受送信部11の使用率に応じた回転数で回転する(S12)。使用率検出部13が、パケット受送信部11の使用率の変化を検出しない場合(S14:NO)、ステップS12で決定された回転数で冷却ファンは回転し続ける。パケット受送信部11の使用率の変化が検出された場合(S14:YES)、ステップS10に移行し、冷却ファン2の回転数を再度決定する。
【0026】
パケット受送信部11の使用率を示すリンク状態、このリンク状態に対応する冷却ファン2の状態、及び電源ブロック12から冷却ファン2へ出力される電圧値との対応関係の一例を図3に示す。パケット受送信部11の使用率と冷却ファン2の回転数の対応関係は、予め、実際に通信装置1を稼働させデータを収集し、パケット受送信部11がいかなる使用率であっても、通信装置1の内部の温度を一定値以下に抑えられるように決定する。また、対応関係に係る情報は、使用率検出部13の備えるROM132に格納される。尚、対応関係に係る情報は、実稼動によるデータの収集のほか、シミュレーションなどの数値演算、装置設計上の設定値、あるいは通信装置1が使用される使用環境における各種のパラメータに基づいて算出、設定することも可能である。
【0027】
以下、図3に示す対応関係に基づいた通信装置1の動作を説明する。パケット受送信部11が備えるポート112乃至115のうち、1Gbpsでリンクを確立したポートの数が0ポートの場合、電源ブロック12から冷却ファン2へ出力する電力の電圧値は0Vであり、冷却ファン2は停止する。1Gbpsでリンクを確立したポートの数が1又は2ポートの場合、電源ブロック12から冷却ファン2へ出力する電力の電圧値は8Vであり、冷却ファン2は低速モードで回転する。1Gbpsでリンクを確立したポートの数が3又は4ポートの場合、電源ブロック12から冷却ファン2へ出力する電力の電圧値は12Vであり、冷却ファン2は高速モードで回転する。
【0028】
第1実施例に係る通信装置1の状態遷移図を図4に示す。パケット受送信部11の備える4つのポートのうち、全てのポートの通信速度が1Gbps未満である場合、通信装置1全体の発熱量が少ない。この場合、通信装置1の電源ブロック12は冷却ファン2への電力供給を停止し、通信装置1はファン停止状態M1となる。ファン停止状態M1において、通信部10と冷却ファン2との接続が切断される場合、制限モードM0へと状態が遷移する。制限モードM0において、通信部10へ冷却ファン2が接続された場合、再度ファン停止状態M1へと状態が遷移する。
【0029】
ファン停止状態M0において、パケット受送信部11の備える4つのポートのうち、全てのポートの通信速度が1Gbps未満である場合、状態は遷移せず、ファン停止状態M0のままである。ファン停止状態M0において、1ポート又は2ポートについて外部の機器との間に確立された通信速度が1Gbpsとなった場合、冷却ファン2が低速で回転する低速モードM2へと状態が遷移する。また、ファン停止状態M0において、3ポート又は4ポートについて外部の機器との間に確立された通信速度が1Gbpsとなった場合、冷却ファン2が低速モードと比較して高速で回転する高速モードM3へと状態が遷移する。
【0030】
低速モードM2において、全てのポートについて外部の機器との間に確立された通信速度が1Gbps未満となった場合、ファン停止状態M1へと状態が遷移する。また、低速モードM2において、3ポート又は4ポートについて外部の機器との間に確立された速度が1Gbpsとなった場合、高速モードM3へと状態が遷移する。高速モードM3において、全てのポートについて外部の機器との間に確立された通信速度が1Gbps未満となった場合、ファン停止状態M0へと状態が遷移する。また、高速モードM3において、1ポート又は2ポートについてのみ外部の機器との間に確立された速度が1Gbpsとなった場合、低速モードM2へと状態が遷移する。
【0031】
<第2実施例>
以下、第2実施例について述べる。第2実施例に係る通信装置は、第1実施例に係る通信部10が備えるパケット受送信部11を、外部の機器と無線通信によりパケットの送受信を行う無線パケット受送信部11Bへと変更した通信部を備える通信装置である。その他の構成については第1実施例の通信装置1(図1)と同様の構成を備えている。以下の説明では、同じ構成については通信装置1と同じ符号を用いて説明する。
【0032】
第2実施例に係る通信装置が備える無線パケット受送信部11Bを図5に示す。無線パケット受送信部11Bは、RF MAC素子111B、RF PHY素子112B、送信アンプ113B、受信アンプ114B、Tx/Rx Switch115B、バッファ116B、ローパスフィルタ117B、アナログデジタルコンバータ118B、アンテナ119Bを備える。
【0033】
RF MAC素子111Bは、CPU131により制御され、無線ネットワークにおけるパケット受送信に係る処理のうちデジタルベースバンド処理を行い、RF PHY素子112Bと信号の送受信を行う素子である。RF PHY素子112Bは、RF MAC素子111Bとアンテナ119B間で、論理信号とアナログ信号の変換処理を行う素子である。
【0034】
送信アンプ113Bは、RF PHY素子112Bから入力される信号を増幅し、Tx/Rx Switch115Bを通じてアンテナ119Bに出力する電力増幅回路である。送信アンプ113Bは、RF PHY素子112Bから出力される参照電圧信号Vrefがハイレベルの場合オンとなり、ローレベルの場合にオフとなる。通信装置が外部の機器にパケットを送信する際、送信アンプ113Bはオン状態となる。
【0035】
第2実施例に係る通信装置において、送信アンプ113Bの消費電力が最も高い。よって、送信アンプ113Bが単位時間あたりどれだけの時間オンになっているかという割合、即ち送信アンプ113Bの使用率を計測することで、通信装置の単位時間あたりの発熱量を検出することが可能となる。単位時間あたり送信アンプ113Bがオンとなっている時間を計測するためには、参照電圧信号Vrefがハイレベルとなっている時間を計測すればよい。単位時間あたりVrefがハイレベルになっている割合を表す値をVref負荷率と呼ぶこととする。例えば、Vref負荷率が100%の場合、計測した単位時間において、送信アンプ113Bが常にオンとなっていることを意味する。また、Vref負荷率が10%の場合、計測した単位時間において、送信アンプ113Bが10%の時間だけオンになっているということを意味する。Vref負荷率、即ち、通信装置の備える送信アンプ113Bの使用率を無線パケット受送信部11Bの使用率として定義する。
【0036】
なお、無線通信のスループットの向上のため、RF PHY素子112BとTx/Rx Switch115B間に複数の経路及び複数の送信アンプ113Bを設け、アンテナ119Bから異なる周波数の電磁波を外部の機器へと送信する場合がある。かかる場合においては、通信装置の備える全送信アンプ113BのVref負荷率の平均値を無線パケット受送信部11Bの使用率として定義する。
【0037】
受信アンプ114Bは、Tx/Rx Switch115Bを通じて、アンテナ119Bが受信した信号をRF PHY112Bに入力する低雑音増幅回路である。Tx/Rx Switch115Bは、無線パケット受送信部11Bがパケット受信状態(Rx)の場合受信アンプ114Bを、パケット送信状態(Tx)の場合送信アンプ113Bを、アンテナ119Bと接続させるスイッチ回路である。
【0038】
バッファ116B、ローパスフィルタ117B、アナログデジタルコンバータ118Bは、Vref負荷率を計測するために使用される。なお、Vref負荷率を計測するためには、参照電圧Vrefの単位時間あたりの時間積分を計測すればよい。よって、他の時間積分機能を有する回路をバッファ116B、ローパスフィルタ117B、アナログデジタルコンバータ118Bに換えて用いることは当然可能である。バッファ116Bには、RF PHY素子112Bが送信アンプ113Bのオンオフ状態を制御するために用いる参照電圧信号Vrefが入力される。そして、バッファ116Bは、Vref負荷率を計測するために、一定時間、参照電圧信号Vrefをローパスフィルタ117Bに出力する。ここでローパスフィルタ117BはRC積分回路として動作し、バッファ116Bを通じて入力される参照電圧信号Vrefの時間積分を電圧値としてアナログデジタルコンバータ118Bへ出力する。アナログデジタルコンバータ118Bは、入力された参照電圧信号Vrefの時間積分を示す電圧値即ちVref負荷率をデジタル信号へと変換し、使用率検出部13の備えるCPU131へと出力する。
【0039】
第2実施例に係る装置の動作フロー図について図6に示す。ステップS20において通信装置が起動される。そして、冷却ファン2に電力を供給し、冷却ファン2の回転を開始する(S22)。ここで、冷却ファン2からパルス検出用IC14に対し、冷却ファン2が通信部に接続されていることを通知する信号であるパルス信号が出力されているか否かを検出する(S24)。ここで、冷却ファン2からパルス信号が出力されていなかった場合(S24:NO)において、通信装置が複数の送信アンプ113Bを備える場合、動作させる送信アンプ113Bの数を制限する(S26)。そして、通信装置は、初期化を行い、無線パケット受送信部11Bはパケットの送受信を開始する(S44)。
【0040】
ステップS24において、冷却ファン2からパルス検出用IC14に対してパルス信号が出力されていた場合(S24:YES)であって、動作可能な送信アンプ113Bの数が制限されている場合は、制限の解除を行う(S28)。次に、通信装置の初期化を行いパケットの送受信を開始する(S30)。その後、Vref負荷率を検出する(S32)。そして、ROM132に格納されるVref負荷率と冷却ファン2の回転数との対応関係を参照する(S34)。検出されたVref負荷率と該対応関係に基づいて冷却ファン2の回転数を変更する(S36)。
【0041】
次に、冷却ファン2から、パルス検出IC14にパルス信号が入力されているか否かの判断を行う(S38)。冷却ファン2から、パルス検出IC14にパルス信号が入力されていない場合、即ち、冷却ファン2が通信部に接続されていない場合(S38:NO)、前記ステップS26に移行する。冷却ファン2から、パルス検出IC14にパルス信号が入力されている場合(S38:YES)、パルス信号に基づいて冷却ファン2の回転数の計測を行う(S40)。そして、冷却ファン2の回転数が期待値内にあるか否かを検出する(S42)。ここで、冷却ファン2の回転数が期待値内に無い場合(S42:NO)、前記ステップS26に移行する。冷却ファン2の回転数が期待値内の場合、ステップS32に移行し、一定時間の周期でVref負荷率を検出する。
【0042】
図7に第2実施例に係る通信装置の状態遷移図を示す。第2実施例に係る通信装置は、装置起動時、冷却ファン2の回転が停止しているファン停止状態M1Bである。冷却ファン2と通信部の接続を切断することで、制限モードM0Bへと状態は遷移する。また、制限モードM0Bにおいて、冷却ファン2と通信部とを接続することで、ファン停止状態M1Bへと状態は遷移する。
【0043】
ファン停止状態M1Bにおいて、冷却ファン2と通信部の接続が切断されず、Vref負荷率が10%未満である場合、状態は遷移しない。ファン停止状態M1Bにおいて、Vref負荷率が10%以上、50%未満となった場合、冷却ファン2が低速回転を行う低速モードM2Bへと状態が遷移する。ファン停止状態M1Bにおいて、Vref負荷率が50%以上となった場合、冷却ファン2が高速回転を行う高速モードM3Bへと状態が遷移する。
【0044】
低速モードM2Bにおいて、Vref負荷率が10%未満となった場合、ファン停止状態M1Bへと状態が遷移する。また、低速モードM2Bにおいて、Vref負荷率が50%以上となった場合、高速モードM3Bへと状態が遷移する。高速モードM3Bにおいて、Vref負荷率が10%未満となった場合、ファン停止状態M1Bへと状態が遷移する。また、高速モードM3Bにおいて、Vref負荷率が10%以上50%未満となった場合、低速モードM2Bへと状態が遷移する。以上、Vref負荷率とファン回転数の対応関係は、予め、実際に通信装置を稼働させてデータを収集し、いかなるVref負荷率においても、通信装置の内部を一定温度以下に抑え、不具合が発生しないように決定する。また、対応関係に係る情報は、使用率検出部13の備えるROM132に格納される。尚、対応関係に係る情報は、実稼動によるデータの収集のほか、シミュレーションなどの数値演算、装置設計上の設定値、あるいは通信装置が使用される使用環境における各種のパラメータに基づいて算出、設定することも可能である。
【0045】
以下、本明細書に開示の実施例の奏する作用効果について述べる。第1実施例においては、通信装置1の備えるパケット受送信部11のポート112乃至115に接続される機器の数、及び、機器との間に確立された接続速度に応じて、冷却ファン2の回転数を制御する。1Gbps等の高速な接続速度で外部の機器とリンクが確立されたポートの数に応じて、パケット受送信部11の発熱量は大きく変化するため、冷却ファン2の回転数を適切に制御することが可能となる。
【0046】
第2実施例において、Vref負荷率、即ち、通信装置1Bの備えるパケット受送信部11Bの送信アンプ113Bが単位時間あたりのオン状態となる時間に基づき、パケット受送信部11Bの使用率を定義する。そして、その使用率に基づき、冷却ファン2の回転数を制御する。送信アンプ113Bがオン状態となっている時間に応じて、無線パケット受送信部11Bの発熱量は大きく変化するため、冷却ファン2の回転数を適切に制御することが可能となる。
【0047】
第1実施例、第2実施例、ともに、冷却ファン2が通信部に接続されていない場合、制限モードに移行する。これにより、パケット受送信部11及び無線パケット受送信部11Bが行う処理に伴う発熱を低減し、温度上昇に伴う不具合を防止することが可能となる。
【0048】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、通信装置は、第1実施例に係るパケット受送信部11と第2実施例に係る無線パケット受送信部11Bとをともに備えてもよい。この場合、パケット受送信部11の使用率及び無線パケット受送信部11Bの使用率に基づき、冷却ファン2の回転数を定めればよい。
【0049】
なお、第1実施例における、ポート112乃至115は有線接続部の一例である。また、第2実施例における、RF MAC素子111B、RF PHY素子112B、送信アンプ113B、受信アンプ114B、Tx/Rx Switch115B、アンテナ119Bは無線接続部の一例である。第2実施例における、無線パケット受送信部11Bはパケット受送信部の一例である。
【0050】
なお、第1実施例における低速モードM2及び第2実施例における低速モードM2Bにおける、冷却ファン2への入力電圧値及び冷却ファン2の回転数の一例を示すと、入力電圧値は8V、回転数は3000rpmである。なお、rpmは1秒間あたりの回転数を表す単位であり、revolutions per minuteの略である。また、第1実施例における高速モードM3及び第2実施例における高速モードM3Bにおける冷却ファン2への入力電圧値及び冷却ファン2の回転速度についての一例を示すと、入力電圧値は12V、回転数は4500rpmである。第1実施例及び第2実施例においては、制限モードM0B、ファン停止状態M1B、低速モードM2B、高速モードM3Bの4つの状態を備えるが、ファンの回転数を更に段階的に制御するための状態を設けることは当然に可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 通信装置
10 通信部
11 パケット受送信部
111 スイッチ
112乃至115 ポート
12 電源ブロック
13 使用率検出部
131 CPU
132 ROM
133 RAM
14 パルス検出IC
2 冷却用ファン
3 PC
11B 無線パケット受送信部
111B RF MAC素子
112B RF PHY素子
113B 送信アンプ
114B 受信アンプ
115B Tx/Rx Switch
116B バッファ
117B ローパスフィルタ
118B アナログデジタルコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムにおいてパケットを中継する通信装置であって、
パケットの受送信を行うパケット受送信部と、
前記パケット受送信部の使用率を検出する使用率検出部と、
供給される電圧値に応じた回転数で回転し前記通信装置を冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンへ所定の出力電圧値で電力を供給する電源ブロックと、
前記パケット受送信部の使用率に応じて前記電源ブロックの出力する前記出力電圧値を制御する電圧制御部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記パケット受送信部は、通信システムの備える端末とケーブルにより接続される有線接続部を備え、
前記使用率検出部は、前記有線接続部に接続される前記端末の数及び前記端末との接続速度に応じた前記パケット受送信部の使用率を検出することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記パケット受送信部は、通信システムの備える端末と無線通信により接続される無線接続部を備え、
前記使用率検出部は、前記無線接続部の備える送信アンプの使用率に応じた前記パケット受送信部の使用率を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記冷却ファンは前記通信装置から脱着可能であり、
前記冷却ファンが前記通信装置に装着されているか否かを検知するファン検知部を備え、
前記ファン検知部により前記冷却ファンが装着されていないことが検知される場合、前記パケット受送信部の動作を制限することを特徴とする請求項1乃至3に記載の通信装置。
【請求項5】
通信システムにおいてパケットを中継する通信装置の制御方法であって、
パケット受送信部がパケットを受送信する工程と、
前記パケット受送信部の使用率を検出する工程と、
冷却ファンへ前記使用率に応じた出力電圧値で電力を供給する工程と、
を備えることを特徴とする通信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59033(P2012−59033A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201898(P2010−201898)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】