通信装置
【課題】ローカル装置へ供給される直流電圧の変動に伴う、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えられる通信装置を提供する。
【解決手段】本発明の歩行者保護装置1は、歩行者衝突検出装置10と、一対の通信線11と、歩行者保護制御装置12とを備えている。タッチセンサ102の正極電源端子102gには、抵抗1031を介して、通信線11の一方の電圧が印加される。負極電源端子102hには、抵抗1032を介して、通信線11の他方の電圧が印加される。通信線11の電圧は、互いに逆位相となるように変化している。これにより、正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧を、互いに逆位相となるように変化させることができる。そのため、正極電源端子102g側と負極電源端子102h側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となって相殺され、全体としてノイズの放射を抑えられる。
【解決手段】本発明の歩行者保護装置1は、歩行者衝突検出装置10と、一対の通信線11と、歩行者保護制御装置12とを備えている。タッチセンサ102の正極電源端子102gには、抵抗1031を介して、通信線11の一方の電圧が印加される。負極電源端子102hには、抵抗1032を介して、通信線11の他方の電圧が印加される。通信線11の電圧は、互いに逆位相となるように変化している。これにより、正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧を、互いに逆位相となるように変化させることができる。そのため、正極電源端子102g側と負極電源端子102h側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となって相殺され、全体としてノイズの放射を抑えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローカル装置の接続されたスレーブコントローラと、マスタコントローラとからなる通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車において、車両制御の高精度化や高機能化が進んでいる。それに伴って、さまざまな車両情報を得るため、数多くのセンサ装置が用いられるようになってきた。これらのセンサ装置は、例えば通信線によって車両制御装置に接続され、互いに情報をやり取りしている。このようなシステムとして、従来、図12に示すようなものがあった。車両制御装置12'は、イグニッションスイッチ6'を介してバッテリ7'の正極端子に接続されている。バッテリ7'の負極端子は車体に接地、つまり、車体グランドに接続されている。センサ装置103'は、一対の通信線11'を介して車両制御装置12'に接続されている。また、センサ装置103'には、センサ102'が接続されている。
【0003】
センサ装置103'は、電源回路1030'と、制御判定回路1036'と、通信インタフェース回路1037'とから構成されている。一対の通信線11'は、端子BA、BBを介して電源回路1030'と通信インタフェース回路1037'に接続されている。電源回路1030'の出力端子は、端子SAを介してセンサ102'の正極電源端子102g'に接続されている。センサ102'の負極電源端子102h'が接続される端子SBは、センサ装置103'のグランド、つまり、回路グランドに接続されている。
【0004】
車両制御装置12'は、図13に示すように、車体グランドを基準として、通信線11'を介してセンサ装置103'に直流電圧を供給する(給電フェーズ)。また、給電フェーズで供給される直流電圧の範囲内の所定電圧で、通信線11'の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより、通信インタフェース回路1037'を介してセンサ装置103'と通信する(通信フェーズ)。
【0005】
センサ装置103'の電源回路1030'は、給電フェーズにおいて、通信線11'を介して供給される直流電圧から、センサ102'に供給する直流電圧を作り出し出力する。図14に示すように、給電フェーズのとき、センサ102'に供給される直流電圧は、車体グランドに対して安定している。しかし、通信フェーズになると、通信線11'の電圧の変化に伴って、車体グランドに対して全体的に高電圧側にシフトする。しかも、通信線11'の電圧の変化に同期して、ともに同相でパルス状に変化する。センサ装置103'からセンサ102'までの配線が長い場合、又はセンサ102'自体が長い導線によって構成されている場合、供給される直流電圧が同相でパルス状に変化することで、配線やセンサ102'自体からノイズが放射される可能性があった。
【0006】
従来、このようなシステムにおいて、ノイズの放射を抑えることができるものとして、特開2005−277546号公報に開示されている通信装置がある。この通信装置は、マスタコントローラと、スレーブコントローラとからなり、通信線によって接続されている。スレーブコントローラには、終端回路が設けられている。終端回路は、通信線の電位の遷移に関わらず、スレーブコントローラの入力インピーダンスを通信線のインピーダンスと整合させる回路である。そのため、インピーダンスの不整合に伴う通信線やスレーブコントローラからのノイズの放射を抑えることができる。
【特許文献1】特開2005−277546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述したシステムにおいては、センサに供給される直流電圧が、通信線の電圧の変化に同期して、ともに同相でパルス状に変化することによってノイズが放射される。そのため、終端回路を設け、スレーブコントローラの入力インピーダンスを通信線のインピーダンスと整合させたとしても、ノイズの放射を抑えられるものではない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ローカル装置へ供給される直流電圧の変動に伴う、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えることができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、通信線の電圧をローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給することで、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えられることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の通信装置は、一対の通信線と、通信線に接続され、通信線を介して供給される直流電圧により作動するとともに、接続されるローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子に直流電圧を供給するスレーブコントローラと、通信線に接続され、通信線に直流電圧を供給するとともに、通信線の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることによりスレーブコントローラと通信するマスタコントローラとからなる通信装置において、スレーブコントローラは、通信線の電圧をローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ローカル装置へ供給される直流電圧の変動に伴う、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えることができる。マスタコントローラは、通信状態のとき、通信線の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させる。スレーブコントローラは、通信線の電圧を、ローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給する。そのため、ローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子の電圧を、互いに逆位相とすることができる。これにより、正極電源端子側から放射されるノイズと、負極電源端子側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となる。従って、ノイズの電界が相殺され、全体としてノイズの放射を抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載の通信装置は、請求項1に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、通信線の電圧を、抵抗を介してローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする。この構成によれば、ローカル装置に供給される電流を抑えることができる。そのため、ローカル装置の消費電力を抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の通信装置は、請求項1又は2に記載の通信装置において、さらに、ローカル装置は、抵抗と、抵抗の両端にそれぞれ接続され、反抵抗側の端部に正極電源端子及び負極電源端子がそれぞれ構成される線状の一対の導体とからなり、物体が衝突して荷重が加わると、一対の導体が短絡し、正極電源端子と負極電源端子との間の抵抗値が変化するタッチセンサであることを特徴とする。この構成によれば、タッチセンサ自体からのノイズの放射を抑え、物体の衝突を検出することができる。タッチセンサは、線状の導体を有しており、これがアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、本構成とすることで、タッチセンサ自体からのノイズの放射を抑え、物体の衝突を検出することができる。
【0014】
請求項4に記載の通信装置は、請求項3に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、タッチセンサの正極電源端子と負極電源端子との間の電圧を増幅する差動増幅回路を有することを特徴とする。この構成によれば、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。タッチセンサの正極電源端子と負極電源端子の電圧は、通信線の電圧に同期して互いに逆位相となるようにパルス状に変化している。タッチセンサは、物体が衝突して荷重が加わると、正極電源端子と負極電源端子との間の抵抗が減少する。それに伴って、正極電源端子と負極電源端子との間の電圧も変化する。そのため、正極電源端子と負極電源端子との間の電圧を差動増幅回路によって差動増幅することで、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。
【0015】
請求項5に記載の通信装置は、請求項4に記載の通信装置において、さらに、差動増幅回路は、入力端子の入力抵抗がタッチセンサの抵抗より大きいことを特徴とする。この構成によれば、差動増幅回路への電流の流れ込みを抑え、タッチセンサに充分な電流を供給することができる。そのため、差動増幅回路への電流の流れ込みに伴うタッチセンサの出力電圧の低下を抑えることができる。なお、差動増幅回路の入力端子の入力抵抗は、タッチセンサの抵抗の500倍以上であると好ましい。さらに、1000倍以上であるとより好ましい。
【0016】
請求項6に記載の保護装置は、請求項4又は5に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、差動増幅回路の出力電圧を保持する出力保持回路を有することを特徴とする。この構成によれば、差動増幅回路の出力電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。
【0017】
請求項7に記載の保護装置は、請求項6に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、通信線の電圧の変化に基づいて、直流電圧が供給される給電状態と、電圧を変化させ通信する通信状態とを判定する状態判定回路を有し、出力保持回路は、状態判定回路が給電状態であると判定したとき、差動増幅回路の出力を保持することを特徴とする。この構成によれば、通信状態のときにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。通信状態のとき、タッチセンサに供給される直流電圧はパルス状に変化している。そのため、給電状態のときに差動増幅回路の出力電圧を保持することで、通信状態のときにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサの抵抗の変化を確実に検出することができる。
【0018】
請求項8に記載の保護装置は、請求項1又は2に記載の通信装置において、さらに、ローカル装置は、正極電源端子及び負極電源端子が線状の配線を介してスレーブコントローラに接続されていることを特徴とする。この構成によれば、ローカル装置とスレーブコントローラとを接続する配線からのノイズの放射を抑えることができる。配線は線状の導体によって構成されており、これがアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、本構成とすることで、配線からのノイズの放射を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態は、本発明に係る通信装置を、バンパーに衝突した歩行者を保護する歩行者保護装置に適用した例を示す。
【0020】
まず、図1及び図2を参照して歩行者保護装置の全体構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態における歩行者保護装置の全体構成に関する模式的平面図である。図2は、バンパー周辺の構成に関する斜視図である。
【0021】
図1に示すように、歩行者保護装置1(通信装置)は、歩行者衝突検出装置10と、一対の通信線11と、歩行者保護制御装置12(マスタコントローラ)と、ピラーエアバッグ展開装置13、14と、ピラーエアバッグ15とから構成されている。
【0022】
歩行者衝突検出装置10は、バンパー2への歩行者の衝突を検出する装置であり、バンパー2の周辺に配設されている。通信線11は、歩行者保護制御装置12から歩行者衝突検出装置10に電圧を供給するとともに、歩行者保護制御装置12と歩行者衝突検出装置10との間で指令や検出結果を送受信するための信号線である。歩行者保護制御装置12は、歩行者衝突検出装置10の検出結果に基づいてピラーエアバッグ15を展開するための点火信号を出力する装置であり、車両中央部に配設されている。ピラーエアバッグ展開装置13、14は、歩行者保護制御装置12からの点火信号に基づいてピラーエアバッグ15を展開させる装置であり、フロントピラー周辺に配設されている。ピラーエアバッグ展開装置13、14は、歩行者保護制御装置12に接続されている。ピラーエアバッグ15は、ピラーエアバッグ展開装置13、14によってフロントウインドウの前方に展開され、バンパー2に衝突した歩行者を保護する装置であり、フロントピラー周辺に配設されている。
【0023】
図2に示すように、歩行者衝突検出装置10は、センサ保持板100と、光ファイバーセンサ101と、タッチセンサ102(ローカル装置)と、衝突検出回路103(スレーブコントローラ)とから構成されている。センサ保持板100は、光ファイバーセンサ101及びタッチセンサ102を保持するための樹脂からなる略長方形板状の部材である。光ファイバーセンサ101は、衝突の衝撃による荷重が加わると伝送される光量が減少する長尺状のセンサである。タッチセンサ102は、衝突の衝撃による荷重が加わると抵抗値が減少する長尺状のセンサである。衝突検出回路103は、光ファイバーセンサ101によって伝送された光量、及びタッチセンサ102の抵抗値に基づいてバンパー2への歩行者の衝突を検出する回路である。
【0024】
ここで、バンパー2は、バンパーカバー20と、バンパーアブソーバー21とから構成されている。車両ボディーの構成部材であるサイドメンバー30、31の前端部には、バンパー2の取付け部材であるバンパーリインホースメント32が固定されている。バンパーカバー20は、バンパーアブソーバー21を介してバンパーリインホースメント32に固定されている。バンパーアブソーバー21とバンパーリインホースメント32の間には、センサ保持板100に保持された光ファイバーセンサ101及びタッチセンサ102が配設されている。光ファイバーセンサ101及びタッチセンサ102は、それぞれ衝突検出回路103に接続されている。
【0025】
次に、図3〜図8を参照してタッチセンサについて詳細に説明する。ここで、図3及び図4は、タッチセンサの模式的断面図及びそのA−A矢視断面図である。図5は、タッチセンサの等価回路図である。図6及び図7は、物体が衝突したときのタッチセンサの模式的断面図及びそのB−B矢視断面図である。図8は、物体が衝突したときのタッチセンサの等価回路図である。
【0026】
図3及び図4に示すように、タッチセンサ102は、弾性を有する円筒状の絶縁部材102aと、絶縁部材102aの内周面に螺旋状に配設される線状の導体からなる電極102b〜102eとから構成されている。電極102b、102dは、絶縁部材102aの内周面に互いに対向して配置されている。電極102c、102eも、絶縁部材102aの内周面に互いに対向して配置されている。図5に示すように、電極102b、102cの一端は、互いに電気的に接続されている。電極102d、102eの一端も、互いに電気的に接続されている。また、電極102c、102eの他端は、抵抗102fを介して互いに電気的に接続されている。抵抗102fは1〜2kΩに設定されている。さらに、電極102b、102dの他端は、それぞれ正極電源端子102g及び負極電源端子102hを構成している。
【0027】
図6及び図7に示すように、剛性を有する基部4上に配設されたタッチセンサ102の長手方向のいずれかに物体5が衝突して荷重が加わると、絶縁部材102aが変形し、内周面に配設されている電極102b、102eが電気的に接触する。また、電極102c、102dも電気的に接触する。そのため、図8に示すように、抵抗102fが短絡されることとなり、正極電源端子102g及び負極電源端子102h間の抵抗値が減少する。
【0028】
次に、図9及び図10を参照して歩行者保護装置の回路構成について詳細に説明する。ここで、図9は、歩行者保護装置の回路ブロック図である。図10は、差動増幅回路の回路図である。
【0029】
図9に示すように、歩行者保護制御装置12は、イグニッションスイッチ6を介してバッテリ7の正極端子に接続されている。バッテリ7の負極端子は車体に接地、つまり、車体グランドに接続されている。また、歩行者保護制御装置12は、通信線11を介して歩行者衝突検出装置10に接続されている。さらに、ピラーエアバッグ展開装置13、14にそれぞれ接続されている。歩行者保護制御装置12は、イグニッションスイッチ6を介して供給されるバッテリの直流電圧によって作動し、車体グランドを基準として、通信線11を介して歩行者衝突検出装置10に直流電圧を供給する。また、供給される直流電圧の範囲内の所定電圧で、通信線11の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより歩行者衝突検出装置10と通信する。そして、通信によって得られた歩行者衝突検出装置10の検出結果に基づいて、ピラーエアバッグ展開装置13、14に点火信号を出力する。
【0030】
衝突検出装置103は、電源回路1030と、抵抗1031、1032と、状態判定回路1033と、差動増幅回路1034と、出力保持回路1035と、制御回路1036と、通信インタフェース回路1037とから構成されている。
【0031】
電源回路1030は、通信線11を介して歩行者保護制御装置12から供給される直流電圧によって充電され、衝突検出回路103内の各部に供給する直流電圧を出力する回路である。電源回路1030の2つの入力端子は、端子BA、BBを介して通信線11にそれぞれ接続されている。また、出力端子は、衝突検出回路103内の各部に接続(図略)されている。
【0032】
抵抗1031、1032は、通信線11の電圧をタッチセンサ102の正極電源端子102g及び負極電源端子102hにそれぞれ供給するとともに、タッチセンサ102に流れる電流を制限するための素子である。抵抗1031の一端は、端子BAを介して通信線11の一方に接続されている。また、他端は、端子SAを介してタッチセンサ102の正極電源端子102gに接続されている。抵抗1032の一端は、端子BBを介して通信線11の他方に接続されている。また、他端は、端子SBを介してタッチセンサ102の負極電源端子102hに接続されている。
【0033】
状態判定回路1033は、通信線11の電圧の変化に基づいて、直流電圧が供給される給電フェーズと、電圧を変化させ通信する通信フェーズとを判定し、給電フェーズであると判定したとき、所定の信号を出力する回路である。状態判定回路1033の入力端子は、端子BAを介して通信線11の一方に接続されている。また、出力端子は、出力保持回路1035に接続されている。
【0034】
差動増幅回路1034は、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧を差動増幅する回路である。差動増幅回路103fの2つの入力端子は、端子SA、SBを介してタッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとにそれぞれ接続されている。また、出力端子は、出力保持回路1035に接続されている。
【0035】
より具体的には、差動増幅回路103は、図10に示すように、オペアンプ1034a、1034bと、抵抗1034c〜1034hと、コンデンサ1034i〜1034lとから構成されている。
【0036】
オペアンプ1034aの非反転入力端子は、抵抗1034cを介して端子SBに接続されている。反転入力端子は、抵抗1034dを介して回路グランドに接地されている。また、非反転入力端子及び反転入力端子は、コンデンサ1034i、1034jを介して回路グランドに接地されている。さらに、出力端子と反転入力端子との間には、抵抗1034eが接続されている。端子SBに入力される電圧が所定の増幅率で増幅されるよう、抵抗1034c〜1034eの値が設定されている。
【0037】
オペアンプ1034bの非反転入力端子は、抵抗1034fを介して端子SAに接続されている。反転入力端子は、抵抗1034gを介してオペアンプ1034aの出力端子に接続されている。また、非反転入力端子及び反転入力端子は、コンデンサ1034k、1034lを介して回路グランドに接地されている。出力端子と反転入力端子との間には、抵抗1034hが接続されている。オペアンプ1034aの出力電圧と端子SAに入力される電圧の差電圧が所定の増幅率で増幅されるよう、抵抗1034f〜1034hの値が設定されている。さらに、出力端子は、出力保持回路1035に接続されている。
【0038】
このように、差動増幅回路1034の入力端子は、オペアンプ1034a、1034bの非反転入力端子に接続されている。そのため、差動増幅回路1034の入力端子の入力抵抗を、タッチセンサ102の抵抗102fの1000倍以上にすることができる。
【0039】
図9に示すように、出力保持回路1035は、状態判定回路1033の出力信号に基づいて、差動増幅回路1034の出力電圧を保持する回路である。出力保持回路1035の一方の入力端子は、状態判定回路1033の出力端子に接続されている。もう一方の入力端子は、差動増幅回路1034の出力端子に接続されている。出力端子は、制御判定回路1036に接続されている。
【0040】
制御回路1036は、通信インタフェース回路1037を介して入力される歩行者保護制御装置12からの指令に基づいて動作し、光ファイバーセンサ101によって伝送された光量の検出結果、及び出力保持回路1035の保持した差動増幅回路1034の出力電圧をデータに変換して通信インタフェース回路1037に出力する回路である。制御回路1036の入力端子は、出力保持回路1035の出力端子に接続されている。また、光入力端子及び光出力端子は、光ファイバーセンサ101にそれぞれ接続されている。さらに、データ入出力端子は、通信インタフェース回路1037に接続されている。
【0041】
通信インタフェース回路1037は、通信線11を介して歩行者保護制御装置12と指令及び検出結果を送受信する回路である。通信インタフェース回路1037は、通信線11の電圧を互いに逆位相となるようパルス状に変化させことにより、歩行者保護制御装置12から送信される指令を受信し、データに変換して制御回路1036に出力する。また、制御回路1036から出力される衝突に関する検出結果のデータを、通信線11の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより、歩行者保護制御装置12に送信する。通信インタフェース回路1037の2つの通信入出力端子は、端子BA、BBを介して通信線11にそれぞれ接続されている。また、データ入出力端子は、制御回路1036のデータ入出力端子に接続されている。
【0042】
次に、図9を参照するとともに、必要に応じ図10及び図11を参照して歩行者保護装置の動作について説明する。ここで、図11は、衝突検出回路の端子BA、BB、SA、SBにおける電圧波形を示すグラフである。
【0043】
イグニッションスイッチ6がオンすると、バッテリ7の直流電圧が歩行者保護制御装置12に供給される。直流電圧が供給されることで、歩行者保護制御装置12は作動を開始する。歩行者保護制御装置12は、図11に示すように、端子BAがVsup、端子BBが車体グランドになるように、通信線11を介して衝突検出回路103に直流電圧を供給する(給電フェーズ)。電源回路1030は、通信線11を介して供給される直流電圧によって充電され、衝突検出回路103内に電源電圧として直流電圧を供給する。直流電圧が供給されることで、衝突検出回路103は作動を開始する。その後、歩行者保護制御装置12は、図11に示すように、給電フェーズで供給される直流電圧の範囲内の所定電圧で、通信線11の電圧、つまり、端子BA、BBの電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより、衝突検出回路103との間で指令や検出結果を送受信する(通信フェーズ)。以降、給電フェーズと通信フェーズが繰り返される。
【0044】
タッチセンサ102の正極電源端子102gが接続される端子SAには、抵抗1031を介して端子BAの電圧が印加される。また、タッチセンサ102の負極電源端子102hが接続される端子SBには、抵抗1032を介して端子BBの電圧が印加される。タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間には、抵抗102fが接続されている。そのため、端子BAと端子BBとの間の電圧が、抵抗1031、1032、及び抵抗102fによって分圧されることとなる。従って、図11に示すように、端子SA、SBの電圧は、端子BA、BBの電圧に同期し、互いに逆位相となる。つまり、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧が、通信線11の電圧に同期して常に互いに逆位相となる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102g側から放射されるノイズと、負極電源端子102h側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となる。これにより、ノイズの電界が相殺され、全体としてタッチセンサ102からのノイズの放射が抑えられる。さらに、タッチセンサ102に流れる電流は、抵抗1031、1032によって制限されている。そのため、タッチセンサ102の消費電力を抑えることができる。
【0045】
タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧は、差動増幅回路1034によって差動増幅される。図10において、差動増幅回路1034の入力抵抗は、タッチセンサ102の抵抗102fの1000倍以上であり、より大きい。そのため、抵抗1031、1032に流れる電流が差動増幅回路1034に流れ込み、タッチセンサ102の出力電圧が低下してしまうことはない。
【0046】
バンパー2に何も衝突していない場合、図11に示す端子SAと端子SBとの間の電圧が差動増幅回路1034によって差動増幅される。これに対し、バンパー2に歩行者が衝突すると、衝突の衝撃による荷重が加わり、タッチセンサ102は短絡状態となる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧はほぼ0Vとなる。それに伴って、差動増幅回路1034の出力電圧もほぼ0Vとなる。
【0047】
状態判定回路1033は、通信線11の電圧の変化に基づいて給電フェーズと通信フェーズとを判定し、給電フェーズのとき、図11に示すように、所定の信号をt1のタイミングで出力する。出力保持回路1035は、状態判定回路1033の出力信号に基づいて、t1のタイミングで差動増幅回路1034の出力電圧を保持する。そのため、差動増幅回路1034の出力電圧の変化、及び、通信フェーズにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサ102の抵抗値の変化を検出することができる。
【0048】
制御回路1036は、通信インタフェース回路1037を介して入力される歩行者保護制御装置12からの指令に基づいて動作し、光ファイバーセンサ101によって伝送された光量の検出結果、及び出力保持回路1035の保持した差動増幅回路1034の出力電圧をデータに変換して通信インタフェース回路1037に出力する。通信インタフェース回路1037は、指令に対応した検出結果を、通信線11を介して歩行者保護制御装置12に送信する。歩行者保護制御装置12は、衝突検出回路103から送信された検出結果に基づいて歩行者の衝突の有無を判定する。そして、歩行者が衝突した判定した場合、点火信号を出力し、ピラーエアバッグ展開装置13、14を介してピラーエアバッグ15を展開させ歩行者を保護する。
【0049】
最後に、効果について説明する。本実施形態によれば、タッチセンサ102へ供給される直流電圧の変動に伴う、タッチセンサ102からのノイズの放射を抑えることができる。抵抗1031、1032を介して通信線11の電圧を印加することで、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧を、互いに逆位相とすることができる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102g側から放射されるノイズと、負極電源端子102h側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となる。これにより、ノイズの電界が相殺され、全体としてタッチセンサ102からのノイズの放射が抑えられる。また、抵抗1031、1032を介して電圧を印加することで、タッチセンサ102に流れる電流を制限することができる。そのため、タッチセンサ102の消費電力を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、アンテナ媒体として機能しやすいタッチセンサ102自体からのノイズの放射を抑え、歩行者の衝突を検出することができる。タッチセンサ102は、線状の導体からなる電極102b〜102eによって構成されており、これがアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、本構成とすることで、タッチセンサ102自体からのノイズの放射を抑え、歩行者の衝突を検出することができる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧を差動増幅回路1034で差動増幅することで、タッチセンサ102の抵抗値の減少を確実に検出することができる。タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧は、通信線の電圧に同期して互いに逆位相となるようにパルス状に変化している。衝突の衝撃による荷重が加わると、タッチセンサ102は短絡状態となる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧はほぼ0Vに変化する。それに伴って、差動増幅回路1034の出力電圧もほぼ0Vに変化する。そのため、正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧を差動増幅回路1034によって差動増幅することで、タッチセンサ102の抵抗値の変化を確実に検出することができる。また、差動増幅回路1034の入力抵抗を規定する抵抗1034c、1034fの抵抗値を、タッチセンサ102の抵抗102fに比べ大きくすることで、差動増幅回路1034への電流の流れ込みが抑えられ、タッチセンサ102の出力電圧の低下を抑えることができる。
【0052】
加えて、本実施形態によれば、出力保持回路1035を設けることで、差動増幅回路1034の出力電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサ102の抵抗値の変化を検出することができる。また、状態判定回路1033が給電フェーズであると判定したときに、出力保持回路1035が差動増幅回路1034の出力電圧を保持することで、通信フェーズにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサ102の抵抗値の変化を検出することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、衝突検出回路103が、線状の導体からなる電極102b〜102eによって構成されたタッチセンサ102に直流電圧を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。衝突による衝撃を検出できる他のセンサに、線状の配線を介して直流電圧を供給する場合においても適用できる。この場合、配線がアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、同様の構成とすることで、センサへ供給される直流電圧の変動に伴う、センサと衝突検出回路とを接続する配線からのノイズの放射を抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態では、本発明に係る通信装置を、歩行者保護装置に適用した例を挙げているが、これに限られるものではない。同様の構成であれば、当然、歩行者保護装置に限らず他の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態における歩行者保護装置の全体構成に関する模式的平面図である。
【図2】図1におけるバンパー周辺の構成に関する斜視図である。
【図3】タッチセンサの模式的断面図である。
【図4】図3におけるA−A矢視断面図である。
【図5】タッチセンサの等価回路図である。
【図6】物体が衝突したときのタッチセンサの模式的断面図である。
【図7】図6におけるB−B矢視断面図である。
【図8】物体が衝突したときのタッチセンサの等価回路図である。
【図9】歩行者保護装置の回路ブロック図である。
【図10】差動増幅回路の回路図である。
【図11】衝突検出回路の端子BA、BB、SA、SBにおける電圧波形を示すグラフである。
【図12】従来の車両制御装置及びセンサ装置からなるシステムのブロック図である。
【図13】センサ装置の端子BA、BBにおける電圧波形を示すグラフである。
【図14】センサ装置の端子SA、SBにおける電圧波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1・・・歩行者保護装置(通信装置)、10・・・歩行者衝突検出装置、100・・・センサ保持板、101・・・光ファイバーセンサ、102・・・タッチセンサ(ローカル装置)、102a・・・絶縁部材、102b〜102e・・・電極、102f・・・抵抗、102g・・・正極電源端子、102h・・・負極電源端子、103・・・衝突検出回路(スレーブコントローラ)、1030・・・電源回路、1031、1032・・・抵抗、1033・・・状態判定回路、1034・・・差動増幅回、1034a、1034b・・・オペアンプ、1034c〜1034h・・・抵抗、1034i〜1034l・・・コンデンサ、1035・・・出力保持回路、1036・・・制御回路、1037・・・通信インタフェース回路、11・・・通信線、12・・・歩行者保護制御装置(マスタコントローラ)、13、14・・・ピラーエアバッグ展開装置、15・・・ピラーエアバッグ、2・・・バンパー、20・・・バンパーカバー、21・・・バンパーアブソーバー、30、31・・・サイドメンバー、32・・・バンパーリインホースメント、4・・・基部、5・・・物体、6・・・イグニッションスイッチ、7・・・バッテリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローカル装置の接続されたスレーブコントローラと、マスタコントローラとからなる通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車において、車両制御の高精度化や高機能化が進んでいる。それに伴って、さまざまな車両情報を得るため、数多くのセンサ装置が用いられるようになってきた。これらのセンサ装置は、例えば通信線によって車両制御装置に接続され、互いに情報をやり取りしている。このようなシステムとして、従来、図12に示すようなものがあった。車両制御装置12'は、イグニッションスイッチ6'を介してバッテリ7'の正極端子に接続されている。バッテリ7'の負極端子は車体に接地、つまり、車体グランドに接続されている。センサ装置103'は、一対の通信線11'を介して車両制御装置12'に接続されている。また、センサ装置103'には、センサ102'が接続されている。
【0003】
センサ装置103'は、電源回路1030'と、制御判定回路1036'と、通信インタフェース回路1037'とから構成されている。一対の通信線11'は、端子BA、BBを介して電源回路1030'と通信インタフェース回路1037'に接続されている。電源回路1030'の出力端子は、端子SAを介してセンサ102'の正極電源端子102g'に接続されている。センサ102'の負極電源端子102h'が接続される端子SBは、センサ装置103'のグランド、つまり、回路グランドに接続されている。
【0004】
車両制御装置12'は、図13に示すように、車体グランドを基準として、通信線11'を介してセンサ装置103'に直流電圧を供給する(給電フェーズ)。また、給電フェーズで供給される直流電圧の範囲内の所定電圧で、通信線11'の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより、通信インタフェース回路1037'を介してセンサ装置103'と通信する(通信フェーズ)。
【0005】
センサ装置103'の電源回路1030'は、給電フェーズにおいて、通信線11'を介して供給される直流電圧から、センサ102'に供給する直流電圧を作り出し出力する。図14に示すように、給電フェーズのとき、センサ102'に供給される直流電圧は、車体グランドに対して安定している。しかし、通信フェーズになると、通信線11'の電圧の変化に伴って、車体グランドに対して全体的に高電圧側にシフトする。しかも、通信線11'の電圧の変化に同期して、ともに同相でパルス状に変化する。センサ装置103'からセンサ102'までの配線が長い場合、又はセンサ102'自体が長い導線によって構成されている場合、供給される直流電圧が同相でパルス状に変化することで、配線やセンサ102'自体からノイズが放射される可能性があった。
【0006】
従来、このようなシステムにおいて、ノイズの放射を抑えることができるものとして、特開2005−277546号公報に開示されている通信装置がある。この通信装置は、マスタコントローラと、スレーブコントローラとからなり、通信線によって接続されている。スレーブコントローラには、終端回路が設けられている。終端回路は、通信線の電位の遷移に関わらず、スレーブコントローラの入力インピーダンスを通信線のインピーダンスと整合させる回路である。そのため、インピーダンスの不整合に伴う通信線やスレーブコントローラからのノイズの放射を抑えることができる。
【特許文献1】特開2005−277546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述したシステムにおいては、センサに供給される直流電圧が、通信線の電圧の変化に同期して、ともに同相でパルス状に変化することによってノイズが放射される。そのため、終端回路を設け、スレーブコントローラの入力インピーダンスを通信線のインピーダンスと整合させたとしても、ノイズの放射を抑えられるものではない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ローカル装置へ供給される直流電圧の変動に伴う、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えることができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、通信線の電圧をローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給することで、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えられることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の通信装置は、一対の通信線と、通信線に接続され、通信線を介して供給される直流電圧により作動するとともに、接続されるローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子に直流電圧を供給するスレーブコントローラと、通信線に接続され、通信線に直流電圧を供給するとともに、通信線の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることによりスレーブコントローラと通信するマスタコントローラとからなる通信装置において、スレーブコントローラは、通信線の電圧をローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ローカル装置へ供給される直流電圧の変動に伴う、スレーブコントローラとローカル装置との間の配線、又はローカル装置からのノイズの放射を抑えることができる。マスタコントローラは、通信状態のとき、通信線の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させる。スレーブコントローラは、通信線の電圧を、ローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給する。そのため、ローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子の電圧を、互いに逆位相とすることができる。これにより、正極電源端子側から放射されるノイズと、負極電源端子側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となる。従って、ノイズの電界が相殺され、全体としてノイズの放射を抑えることができる。
【0012】
請求項2に記載の通信装置は、請求項1に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、通信線の電圧を、抵抗を介してローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする。この構成によれば、ローカル装置に供給される電流を抑えることができる。そのため、ローカル装置の消費電力を抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の通信装置は、請求項1又は2に記載の通信装置において、さらに、ローカル装置は、抵抗と、抵抗の両端にそれぞれ接続され、反抵抗側の端部に正極電源端子及び負極電源端子がそれぞれ構成される線状の一対の導体とからなり、物体が衝突して荷重が加わると、一対の導体が短絡し、正極電源端子と負極電源端子との間の抵抗値が変化するタッチセンサであることを特徴とする。この構成によれば、タッチセンサ自体からのノイズの放射を抑え、物体の衝突を検出することができる。タッチセンサは、線状の導体を有しており、これがアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、本構成とすることで、タッチセンサ自体からのノイズの放射を抑え、物体の衝突を検出することができる。
【0014】
請求項4に記載の通信装置は、請求項3に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、タッチセンサの正極電源端子と負極電源端子との間の電圧を増幅する差動増幅回路を有することを特徴とする。この構成によれば、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。タッチセンサの正極電源端子と負極電源端子の電圧は、通信線の電圧に同期して互いに逆位相となるようにパルス状に変化している。タッチセンサは、物体が衝突して荷重が加わると、正極電源端子と負極電源端子との間の抵抗が減少する。それに伴って、正極電源端子と負極電源端子との間の電圧も変化する。そのため、正極電源端子と負極電源端子との間の電圧を差動増幅回路によって差動増幅することで、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。
【0015】
請求項5に記載の通信装置は、請求項4に記載の通信装置において、さらに、差動増幅回路は、入力端子の入力抵抗がタッチセンサの抵抗より大きいことを特徴とする。この構成によれば、差動増幅回路への電流の流れ込みを抑え、タッチセンサに充分な電流を供給することができる。そのため、差動増幅回路への電流の流れ込みに伴うタッチセンサの出力電圧の低下を抑えることができる。なお、差動増幅回路の入力端子の入力抵抗は、タッチセンサの抵抗の500倍以上であると好ましい。さらに、1000倍以上であるとより好ましい。
【0016】
請求項6に記載の保護装置は、請求項4又は5に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、差動増幅回路の出力電圧を保持する出力保持回路を有することを特徴とする。この構成によれば、差動増幅回路の出力電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。
【0017】
請求項7に記載の保護装置は、請求項6に記載の通信装置において、さらに、スレーブコントローラは、通信線の電圧の変化に基づいて、直流電圧が供給される給電状態と、電圧を変化させ通信する通信状態とを判定する状態判定回路を有し、出力保持回路は、状態判定回路が給電状態であると判定したとき、差動増幅回路の出力を保持することを特徴とする。この構成によれば、通信状態のときにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサの抵抗値の変化を確実に検出することができる。通信状態のとき、タッチセンサに供給される直流電圧はパルス状に変化している。そのため、給電状態のときに差動増幅回路の出力電圧を保持することで、通信状態のときにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサの抵抗の変化を確実に検出することができる。
【0018】
請求項8に記載の保護装置は、請求項1又は2に記載の通信装置において、さらに、ローカル装置は、正極電源端子及び負極電源端子が線状の配線を介してスレーブコントローラに接続されていることを特徴とする。この構成によれば、ローカル装置とスレーブコントローラとを接続する配線からのノイズの放射を抑えることができる。配線は線状の導体によって構成されており、これがアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、本構成とすることで、配線からのノイズの放射を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施形態は、本発明に係る通信装置を、バンパーに衝突した歩行者を保護する歩行者保護装置に適用した例を示す。
【0020】
まず、図1及び図2を参照して歩行者保護装置の全体構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態における歩行者保護装置の全体構成に関する模式的平面図である。図2は、バンパー周辺の構成に関する斜視図である。
【0021】
図1に示すように、歩行者保護装置1(通信装置)は、歩行者衝突検出装置10と、一対の通信線11と、歩行者保護制御装置12(マスタコントローラ)と、ピラーエアバッグ展開装置13、14と、ピラーエアバッグ15とから構成されている。
【0022】
歩行者衝突検出装置10は、バンパー2への歩行者の衝突を検出する装置であり、バンパー2の周辺に配設されている。通信線11は、歩行者保護制御装置12から歩行者衝突検出装置10に電圧を供給するとともに、歩行者保護制御装置12と歩行者衝突検出装置10との間で指令や検出結果を送受信するための信号線である。歩行者保護制御装置12は、歩行者衝突検出装置10の検出結果に基づいてピラーエアバッグ15を展開するための点火信号を出力する装置であり、車両中央部に配設されている。ピラーエアバッグ展開装置13、14は、歩行者保護制御装置12からの点火信号に基づいてピラーエアバッグ15を展開させる装置であり、フロントピラー周辺に配設されている。ピラーエアバッグ展開装置13、14は、歩行者保護制御装置12に接続されている。ピラーエアバッグ15は、ピラーエアバッグ展開装置13、14によってフロントウインドウの前方に展開され、バンパー2に衝突した歩行者を保護する装置であり、フロントピラー周辺に配設されている。
【0023】
図2に示すように、歩行者衝突検出装置10は、センサ保持板100と、光ファイバーセンサ101と、タッチセンサ102(ローカル装置)と、衝突検出回路103(スレーブコントローラ)とから構成されている。センサ保持板100は、光ファイバーセンサ101及びタッチセンサ102を保持するための樹脂からなる略長方形板状の部材である。光ファイバーセンサ101は、衝突の衝撃による荷重が加わると伝送される光量が減少する長尺状のセンサである。タッチセンサ102は、衝突の衝撃による荷重が加わると抵抗値が減少する長尺状のセンサである。衝突検出回路103は、光ファイバーセンサ101によって伝送された光量、及びタッチセンサ102の抵抗値に基づいてバンパー2への歩行者の衝突を検出する回路である。
【0024】
ここで、バンパー2は、バンパーカバー20と、バンパーアブソーバー21とから構成されている。車両ボディーの構成部材であるサイドメンバー30、31の前端部には、バンパー2の取付け部材であるバンパーリインホースメント32が固定されている。バンパーカバー20は、バンパーアブソーバー21を介してバンパーリインホースメント32に固定されている。バンパーアブソーバー21とバンパーリインホースメント32の間には、センサ保持板100に保持された光ファイバーセンサ101及びタッチセンサ102が配設されている。光ファイバーセンサ101及びタッチセンサ102は、それぞれ衝突検出回路103に接続されている。
【0025】
次に、図3〜図8を参照してタッチセンサについて詳細に説明する。ここで、図3及び図4は、タッチセンサの模式的断面図及びそのA−A矢視断面図である。図5は、タッチセンサの等価回路図である。図6及び図7は、物体が衝突したときのタッチセンサの模式的断面図及びそのB−B矢視断面図である。図8は、物体が衝突したときのタッチセンサの等価回路図である。
【0026】
図3及び図4に示すように、タッチセンサ102は、弾性を有する円筒状の絶縁部材102aと、絶縁部材102aの内周面に螺旋状に配設される線状の導体からなる電極102b〜102eとから構成されている。電極102b、102dは、絶縁部材102aの内周面に互いに対向して配置されている。電極102c、102eも、絶縁部材102aの内周面に互いに対向して配置されている。図5に示すように、電極102b、102cの一端は、互いに電気的に接続されている。電極102d、102eの一端も、互いに電気的に接続されている。また、電極102c、102eの他端は、抵抗102fを介して互いに電気的に接続されている。抵抗102fは1〜2kΩに設定されている。さらに、電極102b、102dの他端は、それぞれ正極電源端子102g及び負極電源端子102hを構成している。
【0027】
図6及び図7に示すように、剛性を有する基部4上に配設されたタッチセンサ102の長手方向のいずれかに物体5が衝突して荷重が加わると、絶縁部材102aが変形し、内周面に配設されている電極102b、102eが電気的に接触する。また、電極102c、102dも電気的に接触する。そのため、図8に示すように、抵抗102fが短絡されることとなり、正極電源端子102g及び負極電源端子102h間の抵抗値が減少する。
【0028】
次に、図9及び図10を参照して歩行者保護装置の回路構成について詳細に説明する。ここで、図9は、歩行者保護装置の回路ブロック図である。図10は、差動増幅回路の回路図である。
【0029】
図9に示すように、歩行者保護制御装置12は、イグニッションスイッチ6を介してバッテリ7の正極端子に接続されている。バッテリ7の負極端子は車体に接地、つまり、車体グランドに接続されている。また、歩行者保護制御装置12は、通信線11を介して歩行者衝突検出装置10に接続されている。さらに、ピラーエアバッグ展開装置13、14にそれぞれ接続されている。歩行者保護制御装置12は、イグニッションスイッチ6を介して供給されるバッテリの直流電圧によって作動し、車体グランドを基準として、通信線11を介して歩行者衝突検出装置10に直流電圧を供給する。また、供給される直流電圧の範囲内の所定電圧で、通信線11の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより歩行者衝突検出装置10と通信する。そして、通信によって得られた歩行者衝突検出装置10の検出結果に基づいて、ピラーエアバッグ展開装置13、14に点火信号を出力する。
【0030】
衝突検出装置103は、電源回路1030と、抵抗1031、1032と、状態判定回路1033と、差動増幅回路1034と、出力保持回路1035と、制御回路1036と、通信インタフェース回路1037とから構成されている。
【0031】
電源回路1030は、通信線11を介して歩行者保護制御装置12から供給される直流電圧によって充電され、衝突検出回路103内の各部に供給する直流電圧を出力する回路である。電源回路1030の2つの入力端子は、端子BA、BBを介して通信線11にそれぞれ接続されている。また、出力端子は、衝突検出回路103内の各部に接続(図略)されている。
【0032】
抵抗1031、1032は、通信線11の電圧をタッチセンサ102の正極電源端子102g及び負極電源端子102hにそれぞれ供給するとともに、タッチセンサ102に流れる電流を制限するための素子である。抵抗1031の一端は、端子BAを介して通信線11の一方に接続されている。また、他端は、端子SAを介してタッチセンサ102の正極電源端子102gに接続されている。抵抗1032の一端は、端子BBを介して通信線11の他方に接続されている。また、他端は、端子SBを介してタッチセンサ102の負極電源端子102hに接続されている。
【0033】
状態判定回路1033は、通信線11の電圧の変化に基づいて、直流電圧が供給される給電フェーズと、電圧を変化させ通信する通信フェーズとを判定し、給電フェーズであると判定したとき、所定の信号を出力する回路である。状態判定回路1033の入力端子は、端子BAを介して通信線11の一方に接続されている。また、出力端子は、出力保持回路1035に接続されている。
【0034】
差動増幅回路1034は、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧を差動増幅する回路である。差動増幅回路103fの2つの入力端子は、端子SA、SBを介してタッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとにそれぞれ接続されている。また、出力端子は、出力保持回路1035に接続されている。
【0035】
より具体的には、差動増幅回路103は、図10に示すように、オペアンプ1034a、1034bと、抵抗1034c〜1034hと、コンデンサ1034i〜1034lとから構成されている。
【0036】
オペアンプ1034aの非反転入力端子は、抵抗1034cを介して端子SBに接続されている。反転入力端子は、抵抗1034dを介して回路グランドに接地されている。また、非反転入力端子及び反転入力端子は、コンデンサ1034i、1034jを介して回路グランドに接地されている。さらに、出力端子と反転入力端子との間には、抵抗1034eが接続されている。端子SBに入力される電圧が所定の増幅率で増幅されるよう、抵抗1034c〜1034eの値が設定されている。
【0037】
オペアンプ1034bの非反転入力端子は、抵抗1034fを介して端子SAに接続されている。反転入力端子は、抵抗1034gを介してオペアンプ1034aの出力端子に接続されている。また、非反転入力端子及び反転入力端子は、コンデンサ1034k、1034lを介して回路グランドに接地されている。出力端子と反転入力端子との間には、抵抗1034hが接続されている。オペアンプ1034aの出力電圧と端子SAに入力される電圧の差電圧が所定の増幅率で増幅されるよう、抵抗1034f〜1034hの値が設定されている。さらに、出力端子は、出力保持回路1035に接続されている。
【0038】
このように、差動増幅回路1034の入力端子は、オペアンプ1034a、1034bの非反転入力端子に接続されている。そのため、差動増幅回路1034の入力端子の入力抵抗を、タッチセンサ102の抵抗102fの1000倍以上にすることができる。
【0039】
図9に示すように、出力保持回路1035は、状態判定回路1033の出力信号に基づいて、差動増幅回路1034の出力電圧を保持する回路である。出力保持回路1035の一方の入力端子は、状態判定回路1033の出力端子に接続されている。もう一方の入力端子は、差動増幅回路1034の出力端子に接続されている。出力端子は、制御判定回路1036に接続されている。
【0040】
制御回路1036は、通信インタフェース回路1037を介して入力される歩行者保護制御装置12からの指令に基づいて動作し、光ファイバーセンサ101によって伝送された光量の検出結果、及び出力保持回路1035の保持した差動増幅回路1034の出力電圧をデータに変換して通信インタフェース回路1037に出力する回路である。制御回路1036の入力端子は、出力保持回路1035の出力端子に接続されている。また、光入力端子及び光出力端子は、光ファイバーセンサ101にそれぞれ接続されている。さらに、データ入出力端子は、通信インタフェース回路1037に接続されている。
【0041】
通信インタフェース回路1037は、通信線11を介して歩行者保護制御装置12と指令及び検出結果を送受信する回路である。通信インタフェース回路1037は、通信線11の電圧を互いに逆位相となるようパルス状に変化させことにより、歩行者保護制御装置12から送信される指令を受信し、データに変換して制御回路1036に出力する。また、制御回路1036から出力される衝突に関する検出結果のデータを、通信線11の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより、歩行者保護制御装置12に送信する。通信インタフェース回路1037の2つの通信入出力端子は、端子BA、BBを介して通信線11にそれぞれ接続されている。また、データ入出力端子は、制御回路1036のデータ入出力端子に接続されている。
【0042】
次に、図9を参照するとともに、必要に応じ図10及び図11を参照して歩行者保護装置の動作について説明する。ここで、図11は、衝突検出回路の端子BA、BB、SA、SBにおける電圧波形を示すグラフである。
【0043】
イグニッションスイッチ6がオンすると、バッテリ7の直流電圧が歩行者保護制御装置12に供給される。直流電圧が供給されることで、歩行者保護制御装置12は作動を開始する。歩行者保護制御装置12は、図11に示すように、端子BAがVsup、端子BBが車体グランドになるように、通信線11を介して衝突検出回路103に直流電圧を供給する(給電フェーズ)。電源回路1030は、通信線11を介して供給される直流電圧によって充電され、衝突検出回路103内に電源電圧として直流電圧を供給する。直流電圧が供給されることで、衝突検出回路103は作動を開始する。その後、歩行者保護制御装置12は、図11に示すように、給電フェーズで供給される直流電圧の範囲内の所定電圧で、通信線11の電圧、つまり、端子BA、BBの電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより、衝突検出回路103との間で指令や検出結果を送受信する(通信フェーズ)。以降、給電フェーズと通信フェーズが繰り返される。
【0044】
タッチセンサ102の正極電源端子102gが接続される端子SAには、抵抗1031を介して端子BAの電圧が印加される。また、タッチセンサ102の負極電源端子102hが接続される端子SBには、抵抗1032を介して端子BBの電圧が印加される。タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間には、抵抗102fが接続されている。そのため、端子BAと端子BBとの間の電圧が、抵抗1031、1032、及び抵抗102fによって分圧されることとなる。従って、図11に示すように、端子SA、SBの電圧は、端子BA、BBの電圧に同期し、互いに逆位相となる。つまり、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧が、通信線11の電圧に同期して常に互いに逆位相となる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102g側から放射されるノイズと、負極電源端子102h側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となる。これにより、ノイズの電界が相殺され、全体としてタッチセンサ102からのノイズの放射が抑えられる。さらに、タッチセンサ102に流れる電流は、抵抗1031、1032によって制限されている。そのため、タッチセンサ102の消費電力を抑えることができる。
【0045】
タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧は、差動増幅回路1034によって差動増幅される。図10において、差動増幅回路1034の入力抵抗は、タッチセンサ102の抵抗102fの1000倍以上であり、より大きい。そのため、抵抗1031、1032に流れる電流が差動増幅回路1034に流れ込み、タッチセンサ102の出力電圧が低下してしまうことはない。
【0046】
バンパー2に何も衝突していない場合、図11に示す端子SAと端子SBとの間の電圧が差動増幅回路1034によって差動増幅される。これに対し、バンパー2に歩行者が衝突すると、衝突の衝撃による荷重が加わり、タッチセンサ102は短絡状態となる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧はほぼ0Vとなる。それに伴って、差動増幅回路1034の出力電圧もほぼ0Vとなる。
【0047】
状態判定回路1033は、通信線11の電圧の変化に基づいて給電フェーズと通信フェーズとを判定し、給電フェーズのとき、図11に示すように、所定の信号をt1のタイミングで出力する。出力保持回路1035は、状態判定回路1033の出力信号に基づいて、t1のタイミングで差動増幅回路1034の出力電圧を保持する。そのため、差動増幅回路1034の出力電圧の変化、及び、通信フェーズにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサ102の抵抗値の変化を検出することができる。
【0048】
制御回路1036は、通信インタフェース回路1037を介して入力される歩行者保護制御装置12からの指令に基づいて動作し、光ファイバーセンサ101によって伝送された光量の検出結果、及び出力保持回路1035の保持した差動増幅回路1034の出力電圧をデータに変換して通信インタフェース回路1037に出力する。通信インタフェース回路1037は、指令に対応した検出結果を、通信線11を介して歩行者保護制御装置12に送信する。歩行者保護制御装置12は、衝突検出回路103から送信された検出結果に基づいて歩行者の衝突の有無を判定する。そして、歩行者が衝突した判定した場合、点火信号を出力し、ピラーエアバッグ展開装置13、14を介してピラーエアバッグ15を展開させ歩行者を保護する。
【0049】
最後に、効果について説明する。本実施形態によれば、タッチセンサ102へ供給される直流電圧の変動に伴う、タッチセンサ102からのノイズの放射を抑えることができる。抵抗1031、1032を介して通信線11の電圧を印加することで、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧を、互いに逆位相とすることができる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102g側から放射されるノイズと、負極電源端子102h側から放射されるノイズの電界も互いに逆位相となる。これにより、ノイズの電界が相殺され、全体としてタッチセンサ102からのノイズの放射が抑えられる。また、抵抗1031、1032を介して電圧を印加することで、タッチセンサ102に流れる電流を制限することができる。そのため、タッチセンサ102の消費電力を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、アンテナ媒体として機能しやすいタッチセンサ102自体からのノイズの放射を抑え、歩行者の衝突を検出することができる。タッチセンサ102は、線状の導体からなる電極102b〜102eによって構成されており、これがアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、本構成とすることで、タッチセンサ102自体からのノイズの放射を抑え、歩行者の衝突を検出することができる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧を差動増幅回路1034で差動増幅することで、タッチセンサ102の抵抗値の減少を確実に検出することができる。タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hの電圧は、通信線の電圧に同期して互いに逆位相となるようにパルス状に変化している。衝突の衝撃による荷重が加わると、タッチセンサ102は短絡状態となる。そのため、タッチセンサ102の正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧はほぼ0Vに変化する。それに伴って、差動増幅回路1034の出力電圧もほぼ0Vに変化する。そのため、正極電源端子102gと負極電源端子102hとの間の電圧を差動増幅回路1034によって差動増幅することで、タッチセンサ102の抵抗値の変化を確実に検出することができる。また、差動増幅回路1034の入力抵抗を規定する抵抗1034c、1034fの抵抗値を、タッチセンサ102の抵抗102fに比べ大きくすることで、差動増幅回路1034への電流の流れ込みが抑えられ、タッチセンサ102の出力電圧の低下を抑えることができる。
【0052】
加えて、本実施形態によれば、出力保持回路1035を設けることで、差動増幅回路1034の出力電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサ102の抵抗値の変化を検出することができる。また、状態判定回路1033が給電フェーズであると判定したときに、出力保持回路1035が差動増幅回路1034の出力電圧を保持することで、通信フェーズにおける電圧の変化の影響を受けることなく、タッチセンサ102の抵抗値の変化を検出することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、衝突検出回路103が、線状の導体からなる電極102b〜102eによって構成されたタッチセンサ102に直流電圧を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。衝突による衝撃を検出できる他のセンサに、線状の配線を介して直流電圧を供給する場合においても適用できる。この場合、配線がアンテナ媒体として機能し、本来ノイズを放射しやすい。しかし、同様の構成とすることで、センサへ供給される直流電圧の変動に伴う、センサと衝突検出回路とを接続する配線からのノイズの放射を抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態では、本発明に係る通信装置を、歩行者保護装置に適用した例を挙げているが、これに限られるものではない。同様の構成であれば、当然、歩行者保護装置に限らず他の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態における歩行者保護装置の全体構成に関する模式的平面図である。
【図2】図1におけるバンパー周辺の構成に関する斜視図である。
【図3】タッチセンサの模式的断面図である。
【図4】図3におけるA−A矢視断面図である。
【図5】タッチセンサの等価回路図である。
【図6】物体が衝突したときのタッチセンサの模式的断面図である。
【図7】図6におけるB−B矢視断面図である。
【図8】物体が衝突したときのタッチセンサの等価回路図である。
【図9】歩行者保護装置の回路ブロック図である。
【図10】差動増幅回路の回路図である。
【図11】衝突検出回路の端子BA、BB、SA、SBにおける電圧波形を示すグラフである。
【図12】従来の車両制御装置及びセンサ装置からなるシステムのブロック図である。
【図13】センサ装置の端子BA、BBにおける電圧波形を示すグラフである。
【図14】センサ装置の端子SA、SBにおける電圧波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
1・・・歩行者保護装置(通信装置)、10・・・歩行者衝突検出装置、100・・・センサ保持板、101・・・光ファイバーセンサ、102・・・タッチセンサ(ローカル装置)、102a・・・絶縁部材、102b〜102e・・・電極、102f・・・抵抗、102g・・・正極電源端子、102h・・・負極電源端子、103・・・衝突検出回路(スレーブコントローラ)、1030・・・電源回路、1031、1032・・・抵抗、1033・・・状態判定回路、1034・・・差動増幅回、1034a、1034b・・・オペアンプ、1034c〜1034h・・・抵抗、1034i〜1034l・・・コンデンサ、1035・・・出力保持回路、1036・・・制御回路、1037・・・通信インタフェース回路、11・・・通信線、12・・・歩行者保護制御装置(マスタコントローラ)、13、14・・・ピラーエアバッグ展開装置、15・・・ピラーエアバッグ、2・・・バンパー、20・・・バンパーカバー、21・・・バンパーアブソーバー、30、31・・・サイドメンバー、32・・・バンパーリインホースメント、4・・・基部、5・・・物体、6・・・イグニッションスイッチ、7・・・バッテリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の通信線と、該通信線に接続され、該通信線を介して供給される直流電圧により作動するとともに、接続されるローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子に直流電圧を供給するスレーブコントローラと、該通信線に接続され、該通信線に直流電圧を供給するとともに、該通信線の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより該スレーブコントローラと通信するマスタコントローラとからなる通信装置において、 該スレーブコントローラは、該通信線の電圧を該ローカル装置の該正極電源端子及び該負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記スレーブコントローラは、前記通信線の電圧を、抵抗を介して前記ローカル装置の前記正極電源端子及び前記負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記ローカル装置は、抵抗と、該抵抗の両端にそれぞれ接続され、反抵抗側の端部に前記正極電源端子及び前記負極電源端子がそれぞれ構成される線状の一対の導体とからなり、物体が衝突して荷重が加わると、一対の該導体が短絡し、前記正極電源端子と前記負極電源端子との間の抵抗値が変化するタッチセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記スレーブコントローラは、前記タッチセンサの前記正極電源端子と前記負極電源端子との間の電圧を増幅する差動増幅回路を有することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記差動増幅回路は、入力端子の入力抵抗が前記タッチセンサの前記抵抗より大きいことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記スレーブコントローラは、前記差動増幅回路の出力電圧を保持する出力保持回路を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記スレーブコントローラは、前記通信線の電圧の変化に基づいて、直流電圧が供給される給電状態と、電圧を変化させ通信する通信状態とを判定する状態判定回路を有し、
前記出力保持回路は、該状態判定回路が給電状態であると判定したとき、前記差動増幅回路の出力を保持することを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記ローカル装置は、前記正極電源端子及び前記負極電源端子が線状の配線を介して前記スレーブコントローラに接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項1】
一対の通信線と、該通信線に接続され、該通信線を介して供給される直流電圧により作動するとともに、接続されるローカル装置の正極電源端子及び負極電源端子に直流電圧を供給するスレーブコントローラと、該通信線に接続され、該通信線に直流電圧を供給するとともに、該通信線の電圧を互いに逆位相となるようにパルス状に変化させることにより該スレーブコントローラと通信するマスタコントローラとからなる通信装置において、 該スレーブコントローラは、該通信線の電圧を該ローカル装置の該正極電源端子及び該負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記スレーブコントローラは、前記通信線の電圧を、抵抗を介して前記ローカル装置の前記正極電源端子及び前記負極電源端子にそれぞれ供給することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記ローカル装置は、抵抗と、該抵抗の両端にそれぞれ接続され、反抵抗側の端部に前記正極電源端子及び前記負極電源端子がそれぞれ構成される線状の一対の導体とからなり、物体が衝突して荷重が加わると、一対の該導体が短絡し、前記正極電源端子と前記負極電源端子との間の抵抗値が変化するタッチセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記スレーブコントローラは、前記タッチセンサの前記正極電源端子と前記負極電源端子との間の電圧を増幅する差動増幅回路を有することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記差動増幅回路は、入力端子の入力抵抗が前記タッチセンサの前記抵抗より大きいことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記スレーブコントローラは、前記差動増幅回路の出力電圧を保持する出力保持回路を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記スレーブコントローラは、前記通信線の電圧の変化に基づいて、直流電圧が供給される給電状態と、電圧を変化させ通信する通信状態とを判定する状態判定回路を有し、
前記出力保持回路は、該状態判定回路が給電状態であると判定したとき、前記差動増幅回路の出力を保持することを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記ローカル装置は、前記正極電源端子及び前記負極電源端子が線状の配線を介して前記スレーブコントローラに接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−172364(P2008−172364A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1776(P2007−1776)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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