説明

通信装置

【課題】電力付加効率の低下を抑制して出力電力を低下可能な通信装置を提供する。
【解決手段】ベースバンド信号発生器1は、送信すべき変調出力を与える。定振幅位相変調器2は、変調出力に基づいて、振幅が一定の定振幅高周波信号を生成する。振幅信号発生手段7Aは、変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号を発生する。パルス幅変調器8は、振幅信号の振幅に比例したオン期間の比率を有する論理パルス信号を発生してスイッチング手段5へ出力する。スイッチング手段5は、定振幅高周波信号を論理パルス信号によって断続してバースト状の信号を発生し、その発生したバースト状の信号を増幅して帯域通過フィルタ6へ出力する。帯域通過フィルタ6は、バースト状の信号を濾波し、送信出力を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振幅が変調された高周波信号を出力する通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話システム(セルラ電話システム)や無線ローカルエリアネットワーク(以下無線LAN(Local Area Network)と略する)に代表されるデジタル移動無線通信の普及が急速に進行し、データ伝送速度も高速化している。高速な伝送速度を実現するためには、伝送信号の帯域幅または信号対雑音電力比(以下SNR(Signal to Noise Ratio)と略記する)を大きくする必要がある。受信機における雑音電力は、帯域幅に比例するため、高速伝送を行うためにはSNRを高くする必要があり、送信電力は高いことが望ましい。
【0003】
一方、このような無線通信システムでは、端末装置の小型化や、電池寿命を長くするための低消費電力化への要求が強い。送信電力増幅回路は、無線装置、特に無線送受信回路における消費電流の多くを占めており、送信電力増幅回路は、高効率であることが望ましい。かつてのアナログ方式や欧州におけるGSM(Global System for Mobile communications)携帯電話システムでは、送信信号の振幅が一定となる周波数変調(FM)が用いられているため、C級やF級と呼ばれる高効率な飽和増幅回路が送信電力増幅回路に用いられてきた。
【0004】
近年、実用化されている無線システムでは、周波数有効利用の観点からπ/4シフトQPSKなどの帯域制限された位相変調や16QAMなどの多値振幅位相変調が盛んに用いられるようになっている。これら振幅が変動する信号をC級やF級などの非線形な飽和増幅回路で増幅すると、非線形歪みにより隣接チャネルへの漏洩電力が増加し変調精度が劣化して受信側の誤り率が劣化する。このためバックオフ、すなわち平均送信電力に対する増幅回路の飽和出力電力の比を大きくとり、電力増幅回路がA級またはAB級動作、すなわち直線増幅するよう設計されている。しかしながらバックオフの大きな電力増幅回路は電力効率が低く、端末装置には消費電力や放熱の観点から望ましくない。特に、近年、無線LANや地上デジタルテレビジョン放送で実用化され、次世代携帯電話システムで採用が検討されているOFDM(直交周波数分割多重)などのマルチキャリア(多搬送波)伝送方式ではPAPR(Peak to Anverage Power Ratio:尖頭電力対平均電力比)がより高くなるため、さらに大きなバックオフが必要となり、電力効率の低い送信電力増幅回路を用いざるを得ない。このため端末の送信電力を低くして消費電力を抑える必要があり、携帯電話にあっては基地局あたりのサービスエリアを小さくする必要がある。あるいは消費電力の増加を許容すると、電池寿命が短くならざるを得ない。また、テレビジョン放送用送信機(放送機)においては従来のアナログ放送機以上の消費電力を許容して実用に供している。
【0005】
なお、上記C級やF級増幅器などの飽和増幅回路では、増幅回路の直流電源電圧を変動させると出力信号の振幅を変化させることができる。従って、高周波入力信号に対して非線形歪みを伴う増幅器であっても、位相変動を伴わない全搬送波の振幅変調を終段の飽和増幅回路で行うことができる。この場合、共振回路等を出力に設けて搬送波の高調波成分を除去する構成が取られる。このような飽和増幅回路による終段振幅変調の構成とすれば、高い電力効率が得られ、アナログ音声や画像伝送に用いる全搬送波の振幅変調に対しては、実用上支障のない程度の変調歪みを有する振幅変調出力が得られる。このような終段振幅変調は、真空管回路にあってはプレート変調、バイポーラトランジスタ回路にあってはコレクタ変調、電界効果トランジスタ回路にあってはドレイン変調と呼ばれ、中波および短波ラジオ放送、アナログテレビジョン放送の映像信号、および航空管制通信用無線電話機などの送信装置において、その創生期から今日まで盛んに用いられている。
【0006】
ところが、短波による洋上航空管制通信や遠洋船舶無線電話、アマチュア無線で用いられる抑圧搬送波単側波帯(SSB−SCまたは単にSSBと略されることが多い)の振幅変調では変調出力に位相変動あるいは位相反転を伴うため終段変調を用いることができない。従って変調器出力をA級またはAB級増幅器により直線増幅せざるを得ず、上記した近年の無線システム同様、効率の低い電力増幅回路を用いていた。
【0007】
このような振幅および位相の双方に変動を伴う変調信号の送信装置の電力効率の問題を解決するために、飽和増幅回路により終段振幅変調を行うEER(Envelope elimination and restoration:包絡線消去および再生)型増幅器が考案されている(非特許文献1)。このEER型増幅器は、変調器の出力を包絡線検波して得た振幅信号と、同変調器の出力をリミタにより振幅制限して位相変動のみを伴った定振幅高周波信号との2つの信号に分離し、定振幅高周波信号を入力として上記飽和増幅回路で電力増幅し、振幅信号を振幅変調信号増幅回路により所要レベルまで増幅した振幅変調入力として、同飽和増幅回路により終段振幅変調を行うものである。
【0008】
しかしながら、非特許文献1による方式では、電力増幅回路の効率は改善されるものの、振幅変調信号増幅回路にA級またはAB級増幅器による直線増幅器が必要であり、かつ、終段変調に要する変調入力信号電力は送信電力とほぼ均しい。最終的な電力効率は両増幅回路の効率の積となるので、送信装置としての電力効率の改善はわずかに留まり、今日までほとんど用いられていない。
【0009】
この点を改良するために、振幅変調信号増幅回路にS級増幅回路を用いて高効率化を図った技術が、例えば、特許文献1,2および非特許文献2などに開示されている。
【0010】
図12は、従来の技術による無線送信装置200のブロック図である。従来の無線送信装置200は、変調器201と、局部発振器202と、リミタ203と、高周波増幅回路204と、電力増幅回路205と、包絡線検波器206と、振幅変調信号増幅回路207とを備える。
【0011】
変調器201は、送信データもしくはベースバンド信号により、搬送波を変調して送信すべき変調出力信号を出力する。局部発振器202は、搬送波を発生し、その発生した搬送波を変調器201へ出力する。リミタ203は、変調器201の出力を振幅制限して振幅一定の定振幅高周波信号を出力する。
【0012】
高周波増幅回路204は、リミタ203から出力された定振幅高周波信号を増幅する。電力増幅回路205は、振幅変調信号増幅回路207から出力された振幅変調信号を直流電源として動作し、高周波増幅回路204の出力を所要の送信電力まで増幅する。
【0013】
包絡線検波器206は、変調器201の出力信号の振幅変動、すなわち包絡線を検出する。振幅変調信号増幅回路207は、包絡線検波器206から得られる振幅信号を増幅する。
【0014】
振幅変調信号増幅回路207は、パルス幅変調器2071と、低域通過フィルタ2072とを含む。パルス幅変調器2071は、サンプリングあるいはPWMキャリアと呼ばれるサンプリング信号の一定周期毎に、包絡線検波器206から得られる振幅信号をサンプリングし、振幅信号の瞬時値(サンプル値)に比例したパルス幅を持つ矩形パルスを出力する。即ち、パルス幅変調器2071は、振幅信号をパルス幅変調(以下、PWMと略記する)し、PWM信号を出力する。
【0015】
低域通過フィルタ2072は、パルス幅変調器2071から出力されたPWM信号から振幅信号成分を取り出す。そして、低域通過フィルタ2072の遮断周波数は、振幅信号の周波数帯域よりも高く、かつ、PWM信号のサンプリング周波数fsよりも低くなるよう設計される。
【0016】
図13は、PWM信号のスペクトラム図である。一般に、PWM信号のスペクトラムは、もしも入力信号が周波数Wfで帯域制限されているならば、図13に示すようにPWM入力信号(この場合は上記振幅信号)に等しいスペクトラムの基本波成分208と、上記サンプリング周波数およびその高調波を中心とした、同サンプリング信号と上記PWM入力信号との相互変調により生じるスイッチング歪み波成分209とを有している。従って、上記遮断周波数を図13に示すWfとすれば、歪み波成分209は、低域通過フィルタ2072によって除去される。なお、図13は、入力信号が周波数Wfで帯域制限された場合のPWM信号出力の一般的な例を示したものであり、以下に説明する従来の技術による無線送信装置200のPWM信号に対応するものではない。
【0017】
図14は、図12に示す無線送信装置200における信号のタイミングチャートである。図12に示す従来の無線送信装置200の動作を、周波数fmの正弦波の変調入力信号に対して、中心周波数fcの搬送波に抑圧搬送波両側波帯の振幅変調を行う場合を例にして、図14を参照しながら説明する。
【0018】
変調器201は、送信データに基づいて局部発振器202から出力された搬送波を変調し、波形wv1に示す変調出力をリミタ203および包絡線検波器206へ出力する。リミタ203は、変調器201からの変調出力の振幅を制限して波形wv2からなる定振幅信号を高周波増幅回路204へ出力する。高周波増幅回路204は、定振幅信号(波形wv2)を増幅して電力増幅回路205へ出力する。
【0019】
一方、包絡線検波器206は、変調器201から受けた変調出力(波形wv1)を包絡線検波し、全波整流による脈流状の信号(波形wv3)を振幅変調信号増幅回路207のパルス幅変調器2071へ出力する。
【0020】
振幅変調信号増幅回路207において、パルス幅変調器2071は、脈流状の信号(波形wv3)を包絡線検波器206から受け、その受けた脈流状の信号(波形wv3)をサンプリング周期でサンプリングし、脈流状の信号(波形wv3)の振幅に応じた幅を有するPWM信号(波形wv4)を低域通過フィルタ2072へ出力する。
【0021】
低域通過フィルタ2072は、PWM信号(波形wv4)のスイッチング歪み成分209を除去し、振幅変調信号(波形wv6)を電力増幅回路205へ出力する。
【0022】
そうすると、電力増幅回路205は、高周波増幅回路204から出力された定振幅信号(波形wv2)を増幅しつつ、振幅変調信号(波形wv6)で振幅変調を行い、所要の電力まで増幅され、かつ、位相および振幅共に波形wv1と同等の波形wv7に示す出力信号を出力する。
【0023】
従来、電力増幅回路205の出力電力制御法として、次の3つの方法が知られている。
【0024】
(1)電力増幅回路205への入力電力自体を変化させることにより、出力電力を制御する。
【0025】
(2)電力増幅回路205への入力電力レベルを一定とし、電力増幅回路205内の能動素子の動作点を変化させることにより、出力電力を制御する。
【0026】
(3)電力増幅回路205の動作点および入力電力レベルを一定とし、電力増幅回路205の出力側に可変減衰器を接続し、出力電力を変化させる。
【特許文献1】特開平6−217209号公報
【特許文献2】特表2002−500846号公報
【非特許文献1】L. R. Kahn, “Single-Sideband Transmission by Envelope Elimination and Restoration”, Proceedings of the I. R. E., Vol. 40, pp. 803-806, July 1952.
【非特許文献2】F. H. Raab, ほか, “L-band transmitter using Kahn EER Technique”, IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques, Vol. 46, No. 12, December 1998.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかし、従来の出力電力制御法においては、次の問題がある。即ち、上述した(1)の制御法では、電力増幅回路の効率最大点から外れた動作となり、結果として効率低下を招く。また、(2)の制御法では、(1)の制御法と同じように、動作点が変わるため、電力付加効率が最大となる動作を保証するものではない。更に、(3)の制御法では、電力増幅回路自体は、電力付加効率の最大点を保持することができるが、不必要なエネルギーを減衰器を用いて消費させて出力させることになり、全体で評価する場合の効率が低下する。
【0028】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電力付加効率の低下を抑制して出力電力を低下可能な通信装置を提供することにある。
【0029】
また、この発明の別の目的は、電力付加効率の低下および変調誤差の増大を抑制して出力電力を低下可能な通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この発明によれば、通信装置は、パルス出力手段と、定振幅信号発生手段と、スイッチング手段と、帯域通過フィルタとを備える。パルス出力手段は、変調出力信号の振幅に比例したデューティー比を有する論理パルス信号を出力するパルス幅変調における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、変調出力信号に基づいて、パルス幅変調の変調度を低下させて前記論理パルスを出力する。定振幅信号発生手段は、変調出力信号に基づいて定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を信号レベルを一定に保持して出力する。スイッチング手段は、定振幅信号発生手段から受けた定振幅高周波信号をパルス出力手段から受けた論理パルス信号によって断続する。帯域通過フィルタは、スイッチング手段によって断続された定振幅高周波信号を濾波し、その濾波した信号を送信信号として出力する。
【0031】
また、この発明によれば、通信装置は、パルス出力手段と、定振幅信号発生手段と、スイッチング手段と、帯域通過フィルタとを備える。パルス出力手段は、変調出力信号の振幅に比例したデューティー比を有する論理パルス信号を出力するパルス幅変調における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、変調出力信号に基づいて、パルス幅変調の変調度を低下させて論理パルスを出力する。定振幅信号発生手段は、変調誤差が変調誤差上限値よりも大きい領域において、変調出力信号に基づいて信号レベルを低下して定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を出力する。スイッチング手段は、定振幅信号発生手段から受けた定振幅高周波信号をパルス出力手段から受けた論理パルス信号によって断続する。帯域通過フィルタは、スイッチング手段によって断続された定振幅高周波信号を濾波し、その濾波した信号を送信信号として出力する。
【0032】
好ましくは、パルス出力手段は、変調誤差が変調誤差上限値よりも大きい領域において、変調誤差が変調誤差上限値に達したときの変調度を維持して論理パルス信号を出力する。
【0033】
好ましくは、定振幅信号発生手段は、変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、変調出力信号に基づいて定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を信号レベルを一定に保持して出力する。
【発明の効果】
【0034】
この発明においては、変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、パルス幅変調における変調度を低下させることによって、出力電力が低下される。
【0035】
従って、この発明によれば、電力付加効率の低下を抑制して出力電力を低下できる。
【0036】
また、この発明においては、変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、パルス幅変調における変調度を低下させることによって、出力電力が低下され、変調誤差が変調誤差上限値よりも大きい領域において、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを低下させることによって、出力電力が低下される。
【0037】
従って、この発明によれば、電力付加効率の低下および変調誤差の増大を抑制して出力電力を低下できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0039】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による通信装置のブロック図である。この発明の実施の形態1による通信装置10は、ベースバンド信号発生器1と、定振幅位相変調器2と、局部発振器3と、高周波増幅回路4と、スイッチング手段5と、帯域通過フィルタ6と、振幅信号発生手段7と、パルス幅変調器8とを備える。
【0040】
ベースバンド信号発生器1は、送信データに応じて、送信すべき変調出力信号に対応するベースバンド信号を発生し、その発生したベースバンド信号を定振幅位相変調器2および振幅信号発生手段7へ出力する。
【0041】
定振幅位相変調器2は、ベースバンド信号発生器1からベースバンド信号を受け、局部発振器3から搬送波を受ける。そして、定振幅位相変調器2は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Moduration)における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、ベースバンド信号に応じて、送信すべき変調出力信号と等しい位相変動になるように搬送波を位相変調し、一定の振幅を有する定振幅高周波信号を生成するとともに、その生成した定振幅高周波信号を信号レベルを保持して高周波増幅回路4へ出力する。
【0042】
局部発振器3は、搬送波を発生し、その発生した搬送波を定振幅位相変調器2へ出力する。高周波増幅回路4は、定振幅位相変調器2によって位相変調された定振幅高周波信号を増幅する。
【0043】
スイッチング手段5は、スイッチング回路51と、電力増幅回路52とから構成される。スイッチング回路51は、高周波増幅回路4によって増幅された定振幅高周波信号を、パルス幅変調器8から受けたPWM信号の論理パルスにより断続してバースト状信号とし、そのバースト状信号を電力増幅回路52へ出力する。
【0044】
電力増幅回路52は、スイッチング回路51から出力されたバースト状信号を所要の出力電力となるように増幅して出力信号を帯域通過フィルタ6へ出力する。より具体的には、電力増幅回路52は、一定の振幅を有するバースト状信号を電力増幅回路52に対して十分な出力が得られるように、十分な振幅まで増幅するための励振増幅を行う。
【0045】
帯域通過フィルタ6は、スイッチング手段5から出力されたバースト状信号を濾波し、PWM信号によるスイッチングで生じた不要波成分を除去して送信すべき変調出力信号を出力する。
【0046】
振幅信号発生手段7は、ベースバンド信号発生器1からベースバンド信号を受ける。そして、振幅信号発生手段7は、外部から指示信号INST_Dを受けると、パルス幅変調における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、その受けたベースバンド信号に基づいて、送信すべき変調出力信号の振幅に比例し、かつ、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号を生成する。そして、振幅信号発生手段7は、その生成した振幅信号をパルス幅変調器8へ出力する。
【0047】
また、振幅信号発生手段7は、外部から指示信号INST_Iを受けると、パルス幅変調における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、ベースバンド信号に基づいて、送信すべき変調出力信号の振幅に比例し、かつ、パルス幅変調における変調度を増加させるための振幅信号を生成し、その生成した振幅信号をパルス幅変調器8へ出力する。
【0048】
パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7から振幅信号を受け、その受けた振幅信号の振幅に比例したデューティー比を有する論理パルス信号を生成し、その生成した論理パルス信号をスイッチング手段5のスイッチング回路51へ出力する。即ち、パルス幅変調器8は、振幅信号の振幅によってパルス幅変調されたPWM信号を生成し、その生成したPWM信号をスイッチング回路51へ出力する。
【0049】
帯域通過フィルタ6の通過帯域幅は、変調出力信号の帯域幅よりも広く、かつ、サンプリング信号によるサンプリング周波数よりも十分低いものである。また、高周波増幅回路4および電力増幅回路52は、電力効率が高いC級、F級などの飽和増幅回路からなる。また、通信装置10が小出力の送信機である場合、電力増幅回路52は、省略されてもよい。
【0050】
図2は、図1に示すパルス幅変調器8の動作を詳細に説明するための図である。パルス幅変調器8は、サンプリングパルスまたはPWMキャリア等のサンプリング信号に同期し、一定周期毎に入力信号の瞬時値(サンプル値)に比例したパルス幅を持つ矩形パルスを出力する。より具体的には、パルス幅変調器8は、入力信号ISを反転入力とし、サンプリング信号としての三角波TRAを非反転入力とし、入力信号ISを三角波TRAと比較し、PWM信号PWMSを生成する。この場合、サンプリング信号のサンプリング周波数は、送信すべき変調出力信号の帯域幅より高く、好ましくは、この帯域幅の3倍以上を用いる。
【0051】
図3は、変調誤差および電力効率と出力電力との関係を示す図である。直線k1は、電力効率を表し、直線k2は、変調誤差を表す。パルス幅変調における変調度を変化させて、電力増幅回路52がオフになる時間を長く取ることによって出力電力を低下させる方法においては、電力効率は、出力電力に対して一定であり(直線k1参照)、変調誤差は、出力電力の低下に伴って大きくなる(直線k2参照)。
【0052】
電力効率および変調誤差がそれぞれ直線k1および直線k2によって表される理由について説明する。図4は、パルス幅変調における変調度を変えたときの信号の変化を示す図である。図4の(a)は、変調度が100%である場合を示し、図4の(b)は、変調度が100%よりも低い場合を示す。
【0053】
変調度が100%である場合、パルス幅変調器8は、上述した方法によって、PWM信号PWMS1を生成し、その生成したPWM信号PWMS1をスイッチング回路51へ出力する。
【0054】
スイッチング回路51は、高周波増幅回路4から受けた定振幅高周波信号をPWM信号PWMS1によって断続し、バースト信号BST1を生成する。(図4の(a)参照)。
【0055】
また、変調度が100%よりも低い場合、パルス幅変調器8は、上述した方法によって、PWM信号PWMS2を生成し、その生成したPWM信号PWMS2をスイッチング回路51へ出力する。
【0056】
スイッチング回路51は、高周波増幅回路4から受けた定振幅高周波信号をPWM信号PWMS2によって断続し、バースト信号BST2を生成する。(図4の(b)参照)。
【0057】
そうすると、バースト信号BST1のバースト幅BW1の変化は、バースト信号BST2のバースト幅BW2の変化よりも大きくなる。その結果、変調度が100%である場合、例えば、最大10点の標本化点で変調信号の包絡線信号IS1の振幅を表現し、変調度が100%よりも低い場合、例えば、6点の標本化点で変調信号の包絡線信号IS2の振幅を表現する。
【0058】
従って、変調度が100%である場合、包絡線信号IS1の振幅は、10階調で表現され、変調度が100%よりも低い場合、包絡線信号IS2の振幅は、6階調で表現される。
【0059】
そうすると、ディジタル信号処理における標本化周波数を一定とした場合に、変調度を低下すると、サンプルポイント数の低下に繋がる。そして、このサンプルポイント数の低下は、振幅情報の再生において量子化誤差の増大に繋がり、結果として変調誤差が大きくなる。但し、電力増幅回路52は、電力付加効率が最大である点で動作するため、電力効率は、低下しない。
【0060】
従って、パルス幅変調における変調度を変化させて、電力増幅回路52がオフになる時間を長く取ることによって出力電力を低下させる方法においては、図3に示すように、電力効率は、出力電力に対して一定であり(直線k1参照)、変調誤差は、出力電力の低下に伴って大きくなる(直線k2参照)。
【0061】
そこで、この発明においては、変調誤差に変調誤差上限値THを設け、変調誤差が変調誤差上限値TH以下になる領域REG1において、パルス幅変調における変調度を低下させて出力電力を低下させることにした。
【0062】
図5は、図1に示す通信装置10における信号のタイミングチャートである。なお、図5における各波形は、周波数fmの正弦波の変調入力信号に対して、周波数fcの搬送波に抑圧搬送波両側波帯の振幅変調を行う場合を例に説明したものである。
【0063】
図1に示す通信装置10の動作を、図5を参照しながら説明する。まず、ベースバンド信号発生器1は、式(1)に示す変調出力波形に対応したベースバンド信号の同相成分I(t)並びにQ(t)を発生し、その発生したベースバンド信号の同相成分I(t)並びにQ(t)を定振幅位相変調器2および振幅信号発生手段7へ出力する。
【0064】
【数1】

【0065】
式(1)において、A(t)およびφ(t)は、次式によって表される。
【0066】
【数2】

【0067】
なお、式(2)において、Arg(x,y)は、x軸の正方向から座標(x,y)までの角を表す。
【0068】
このように、ベースバンド信号発生器1は、波形wv1からなる信号を発生して定振幅位相変調器2および振幅信号発生手段7へ出力する。
【0069】
局部発振器3は、搬送波を発生して定振幅位相変調器2へ出力する。定振幅位相変調器2は、ベースバンド信号発生器1からベースバンド信号(波形wv1)を受け、局部発振器3から搬送波を受ける。そして、定振幅位相変調器2は、ベースバンド信号(波形wv1)に基づいて搬送波を変調し、次式によって表される一定の振幅を有する定振幅高周波信号(波形wv2)を生成し、その生成した定振幅高周波信号を高周波増幅回路4へ出力する。
【0070】
【数3】

【0071】
なお、定振幅位相変調器2は、たとえば、次式によって表されるベースバンド信号に変換した後、通常の直交変調器により搬送波を変調する構成としてもよい。
【0072】
【数4】

【0073】
または、定振幅位相変調器2は、ベースバンド信号I(t)およびQ(t)により直交変調して得られる式(1)の信号を、リミタ(振幅制限回路)を介して出力する構成としてもよい。
【0074】
なお、以下、図5で示す波形例は、周波数fmの正弦波の変調入力信号に対して、周波数fcの搬送波に抑圧搬送波両側波帯の振幅変調を行う時の一例を示したものであり、次式が成立するときに相当する。
【0075】
【数5】

【0076】
一方、振幅信号発生手段7は、ベースバンド信号発生器1からベースバンド信号(波形wv1)を受ける。そして、振幅信号発生手段7は、外部から指示信号INST_Dを受けると、ベースバンド信号(波形wv1)に基づいて、式(2)中のA(t)で示す信号からなり、かつ、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号(波形wv3)を発生し、その発生した振幅信号(波形wv3)をパルス幅変調器8へ出力する。
【0077】
このように、正弦波の変調入力信号に対する抑圧搬送波両側波帯の振幅変調を行う場合には、図5の波形wv3に示す全波整流による脈流状の信号が出力される。
【0078】
パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7から振幅信号(波形wv3)を受け、その受けた振幅信号(波形wv3)の振幅に応じたパルス幅を有するPWM信号(波形wv4)を生成し、その生成したPWM信号(波形wv4)をスイッチング手段5のスイッチング回路51へ出力する。
【0079】
そうすると、スイッチング回路51は、高周波増幅回路4から定振幅高周波信号(波形wv2)を受け、パルス幅変調器8からPWM信号(波形wv4)を受ける。そして、スイッチング回路51は、定振幅高周波信号(波形wv2)をPWM信号(波形wv4)によって断続してバースト状信号(波形wv5)を発生し、その発生したバースト状信号(波形wv5)を電力増幅回路52へ出力する。電力増幅回路52は、バースト状信号(波形wv5)を増幅して帯域通過フィルタ6へ出力する。
【0080】
このように、位相のみが変調された定振幅高周波信号(波形wv2)は、高周波増幅回路4で増幅され、その後、スイッチング手段5によりよって断続・増幅され、波形wv5に示すように、PWM信号(波形wv4)、即ち、振幅信号A(t)の値に比例したオン期間の比率(デューティー比)で断続された高周波信号となって出力される。一般に、サンプリング周波数fsで断続された中心周波数fcの正弦波(fs<fc)のスペクトラムは、基本波成分fcとfc±fsにスペクトルを有するので、信号を中心周波数fcの帯域通過フィルタ6に通せば、振幅(包絡線)は、スイッチング手段5のオン期間の比率(デューティー比)に比例した信号が得られる。つまり、振幅信号A(t)に比例した振幅を有し、かつ、位相がφ(t)で変調された信号が出力される。
【0081】
従って、帯域通過フィルタ6は、所要の電力まで増幅され、かつ、位相および振幅が共に所望の値に変調された波形wv7に示す出力信号を出力する。
【0082】
このように、通信装置10は、変調誤差が変調誤差上限値TH以下である領域REG1において、パルス幅変調における変調度を低下させることによって出力電力を低下する。そして、領域REG1においては、電力効率は、出力電力に対して一定である。
【0083】
従って、この発明によれば、電力付加効率の低下を抑制して出力電力を低下できる。
【0084】
また、通信装置10は、送信すべき変調出力信号を定振幅化した定振幅高周波信号(波形wv2)を、送信すべき変調出力信号の振幅に比例したデューティー比を有する論理パルス(波形wv4)によって断続して増幅し、帯域通過フィルタ6を通すことによって振幅変調を行う。その結果、送信出力の振幅変動は、論理パルスのデューティー比によって高精度に制御され、負帰還無し、あるいは少ない帰還率の負帰還により、直線性が良好な振幅変調がなされる。
【0085】
図6は、図1に示す通信装置10における信号の他のタイミングチャートである。なお、図6に示す信号のタイミングチャートは、パルス幅変調における変調度を図5に示す場合よりも低下させたときの信号のタイミングチャートである。
【0086】
通信装置10は、図5において説明した動作と同様の動作を行ない、波形wv1→波形wv2→波形wv31→波形wv41→波形wv51からなる経路を経て波形wv71を出力信号として出力する。
【0087】
この場合、振幅信号発生手段7は、外部からの指示信号INST_Dに応じて、パルス幅変調における変調度を図5に示す場合よりも低下させるための振幅信号(=波形wv31)を生成してパルス幅変調器8へ出力する。
【0088】
そうすると、パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7からの振幅信号(=波形wv31)をパルス幅変調してPWM信号(=波形wv41)を生成してスイッチング回路51へ出力する。そして、スイッチング回路51は、高周波増幅回路4からの定振幅高周波信号(=波形wv2)をパルス幅変調器8からの振幅信号(=波形wv41)によって断続し、バースト状信号(=波形wv51)を生成して電力増幅回路52へ出力する。
【0089】
そして、電力増幅回路52は、バースト状信号(=波形wv51)を増幅し、帯域通過フィルタ6は、出力信号(=波形wv71)を出力する。
【0090】
この場合、図6に示すPWM信号(=波形wv41)のオフ期間は、図5に示すPWM信号(=波形wv4)のオフ期間よりも長くなっているので、振幅信号(=波形wv31)に基づいてPWM信号(=波形wv41)を生成するパルス幅変調器8は、パルス幅変調における変調度を低下させてPWM信号(=波形wv41)を生成することになる。
【0091】
また、図6に示す出力信号(=波形wv71)は、図5に示す出力信号(=波形wv7)よりも振幅が小さく、出力信号(=波形wv71)の電力が低下している。
【0092】
このように、実施の形態1においては、変調誤差が変調誤差上限値TH以下である領域REG1において、パルス幅変調の変調度を低下させることによって出力信号の電力を低下させる。
【0093】
従って、この発明によれば、電力効率の低下を抑制して出力電力を低下できる。
【0094】
なお、上記においては、パルス幅変調における変調度を低下させて出力電力を低下させる場合について説明したが、振幅信号発生手段7は、外部から指示信号INST_Iを受けると、パルス幅変調における変調度を上昇するための振幅信号を生成するので、実施の形態1においては、変調誤差が変調誤差上限値TH以下である領域REG1において、パルス幅変調における変調度を変えることによって出力電力を変える(即ち、出力電力を増減する)ことができる。
【0095】
また、振幅信号発生手段7は、指示信号INST_Dを外部から受ける度に、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号を生成し、指示信号INST_Iを外部から受ける度に、パルス幅変調における変調度を上昇するための振幅信号を生成するが、変調度の低下幅および変調度の上昇幅は、一定であってもよく、変化してもよい。
【0096】
上述したように、振幅信号発生手段7は、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号(=波形wv31)を生成し、パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7から受けた振幅信号(=波形wv31)の振幅に応じて、変調度を低下させてPWM信号(=波形wv41)を生成するので、振幅信号発生手段7およびパルス幅変調器8は、変調誤差が変調誤差上限値TH以下である領域REG1において、パルス幅変調の変調度を低下させてPWM信号(=論理パルス)を出力する「パルス出力手段」を構成する。
【0097】
[実施の形態2]
図7は、この発明の実施の形態2による通信装置のブロック図である。実施の形態2による通信装置10Aは、図1に示す通信装置10の高周波増幅回路4および振幅信号発生手段7をそれぞれ高周波増幅回路4Aおよび振幅信号発生手段7Aに代えたものであり、その他は、通信装置10と同じである。
【0098】
高周波増幅回路4Aは、外部から指示信号INST1を受けると、定振幅位相変調器2によって位相変調された定振幅高周波信号を増幅し、その増幅した定振幅高周波信号を信号レベルを保持してスイッチング回路51へ出力する。
【0099】
また、高周波増幅回路4Aは、外部から指示信号INST2_Dを受けると、定振幅位相変調器2によって位相変調された定振幅高周波信号の信号レベルを減衰し、その減衰した定振幅高周波信号をスイッチング回路51へ出力する。
【0100】
更に、高周波増幅回路4Aは、外部から指示信号INST2_Iを受けると、定振幅位相変調器2によって位相変調された定振幅高周波信号の信号レベルを増加させ、その増加させた定振幅高周波信号をスイッチング回路51へ出力する。
【0101】
振幅信号発生手段7Aは、外部から指示信号INST1_Dを受けると、実施の形態1における振幅信号発生手段7と同じように、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号を生成し、その生成した振幅信号をパルス幅変調器8へ出力する。
【0102】
また、振幅信号発生手段7Aは、外部から指示信号INST1_Iを受けると、実施の形態1における振幅信号発生手段7と同じように、パルス幅変調における変調度を上昇させるための振幅信号を生成し、その生成した振幅信号をパルス幅変調器8へ出力する。
【0103】
更に、振幅信号発生手段7Aは、外部から指示信号INST2を受けると、パルス幅変調における変調度を一定にするための振幅信号を生成し、その生成した振幅信号をパルス幅変調器8へ出力する。
【0104】
図8は、変調誤差および電力効率と出力電力との他の関係を示す図である。図8において、直線k3は、電力効率を表し、直線k4は、変調誤差を表す。出力電力を変化させる方法として、パルス幅変調における変調度を一定に保持し、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを変化させる方法を採用した場合、パルス幅変調における変調度は、一定であるので、実施の形態1において説明した変調度の低下による変調誤差の増大はない。
【0105】
一方、電力増幅回路は、電力付加効率の最大点からずれた点で動作するので、電力効率は、低下する。
【0106】
従って、電力効率は、出力電力の低下に伴って低下し(直線k3参照)、変調誤差は、出力電力に対して一定となる(直線k4参照)。
【0107】
出力電力を変化させる方法として、パルス幅変調における変調度を変える方法を採用した場合、図3に示すように、出力電力が領域REG1よりも更に低下すると、変調誤差は、変調誤差上限値THよりも更に大きくなる(直線k2参照)。
【0108】
また、出力電力を変化させる方法として、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを変化させる方法を採用した場合、図8に示すように、出力電力の低い領域では、電力効率が低下する(直線k3参照)。
【0109】
そこで、実施の形態2においては、パルス幅変調における変調度を変化させて出力電力を変化させる方法と、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを変化させて出力電力を変化させる方法とを組み合わせることによって、電力効率の低下を最小限に抑制し、かつ、変調誤差の増大を最小限に抑制することにした。
【0110】
図9は、変調誤差および電力効率と出力電力との更に他の関係を示す図である。図9において、曲線k5は、電力効率を表し、曲線k6は、変調誤差を表す。
【0111】
実施の形態2においては、変調誤差が変調誤差上限値TH以下である領域REG1においては、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを一定に保持し、かつ、パルス幅変調における変調度を変化させて出力電力を変化させ、変調誤差が変調誤差上限値THよりも大きい領域REG2においては、パルス幅変調における変調度を一定に保持し、かつ、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを変化させて出力電力を変化させる。そして、領域REG2においては、パルス幅変調における変調度を変調誤差が変調誤差上限値THに達する変調度に保持する。
【0112】
領域REG1,2における通信装置10Aの動作について説明する。まず、領域REG1においては、通信装置10Aは、実施の形態1における通信装置10と同じ動作によって、パルス幅変調における変調度を変化させて出力電力を変化させる。
【0113】
この場合、高周波増幅回路4Aは、外部から受けた指示信号INST1に応じて、定振幅位相変調器2から受けた定振幅高周波信号を増幅し、その増幅した定振幅高周波信号の信号レベルを一定に保持して定振幅高周波信号をスイッチング回路51へ出力する。また、振幅信号発生手段7Aは、外部からの指示信号INST1_D,INST1_Iに応じて、パルス幅変調における変調度を増減させるための振幅信号を生成してパルス幅変調器8へ出力する。
【0114】
次に、領域REG2における通信装置10Aの動作について説明する。図10は、図7に示す通信装置10Aにおける信号のタイミングチャートである。ベースバンド信号発生器1は、上述下方法によってベースバンド信号(=波形wv21)を発生し、その発生したベースバンド信号(=波形wv21)を定振幅位相変調器2および振幅信号発生手段7Aへ出力する。
【0115】
そして、局部発振器3は、搬送波を発生して定振幅位相変調器2へ出力する。定振幅位相変調器2は、ベースバンド信号発生器1からベースバンド信号(波形wv21)を受け、局部発振器3から搬送波を受ける。そして、定振幅位相変調器2は、ベースバンド信号(波形wv21)に基づいて搬送波を変調し、上述した方法によって一定の振幅を有する定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を高周波増幅回路4Aへ出力する。
【0116】
高周波増幅回路4Aは、外部から指示信号INST2_Dを受けると、定振幅位相変調器2から受けた定振幅高周波信号を減衰し、その減衰した定振幅高周波信号(=波形wv22)をスイッチング回路51へ出力する。
【0117】
一方、振幅信号発生手段7Aは、ベースバンド信号発生器1からベースバンド信号(波形wv21)を受ける。そして、振幅信号発生手段7Aは、外部から指示信号INST2を受けると、ベースバンド信号(波形wv21)に基づいて、式(2)中のA(t)で示す信号からなり、かつ、パルス幅変調における変調度を変調誤差が変調誤差上限値THに達する変調度に保持するための振幅信号(波形wv23)を発生し、その発生した振幅信号(波形wv23)をパルス幅変調器8へ出力する。
【0118】
パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7Aから振幅信号(波形wv23)を受け、その受けた振幅信号(波形wv23)の振幅に応じたパルス幅を有するPWM信号(波形wv24)を生成し、その生成したPWM信号(波形wv24)をスイッチング回路51へ出力する。
【0119】
そうすると、スイッチング回路51は、高周波増幅回路4Aから定振幅高周波信号(波形wv22)を受け、パルス幅変調器8からPWM信号(波形wv24)を受ける。そして、スイッチング回路51は、定振幅高周波信号(波形wv22)をPWM信号(波形wv24)によって断続してバースト状信号(波形wv25)を発生し、その発生したバースト状信号(波形wv25)を電力増幅回路52へ出力する。電力増幅回路52は、バースト状信号(波形wv25)を増幅して帯域通過フィルタ6へ出力する。
【0120】
そして、帯域通過フィルタ6は、上述したように、所要の電力まで増幅され、かつ、位相および振幅が共に所望の値に変調された波形wv27に示す出力信号を出力する。
【0121】
このように、通信装置10Aは、領域REG2においては、信号レベルを減衰した定振幅高周波信号(=波形wv22)を電力増幅回路52へ入力することによって出力電力を低下させる。
【0122】
図11は、図7に示す通信装置10Aにおける信号の他のタイミングチャートである。
【0123】
通信装置10Aは、図10において説明した動作と同様の動作を行ない、波形wv21→波形wv221→波形wv23→波形wv24→波形wv251からなる経路を経て波形wv271を出力信号として出力する。
【0124】
この場合、振幅信号発生手段7Aは、外部からの指示信号INST2に応じて、パルス幅変調における変調度を変調誤差が変調誤差上限値THになる変調度に保持するための振幅信号(=波形wv23)を生成してパルス幅変調器8へ出力する。そして、パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7Aからの振幅信号(=波形wv23)をパルス幅変調してPWM信号(=波形wv24)を生成してスイッチング回路51へ出力する。
【0125】
また、高周波増幅回路4Aは、外部からの指示信号INST2_Dに応じて、定振幅位相変調器2から受けた定振幅高周波信号の信号レベルを更に減衰し、その減衰した定振幅高周波信号(=波形wv221)をスイッチング回路51へ出力する。
【0126】
そうすると、スイッチング回路51は、高周波増幅回路4Aからの定振幅高周波信号(=波形wv221)をパルス幅変調器8からの振幅信号(=波形wv24)によって断続し、バースト状信号(=波形wv251)を生成して電力増幅回路52へ出力する。
【0127】
そして、電力増幅回路52は、バースト状信号(=波形wv251)を増幅し、帯域通過フィルタ6は、出力信号(=波形wv271)を出力する。
【0128】
この場合、図11に示すバースト状信号(=波形wv251)は、図10に示すバースト状信号(=波形wv25)よりも振幅が低くなっているので、帯域通過フィルタ6は、出力信号(=波形wv27)よりも振幅が低い出力信号(=波形wv271)を出力する。つまり、定振幅高周波信号(=波形wv221)をスイッチング回路51へ入力することによって出力電力が低下する。
【0129】
従って、電力増幅回路52への入力信号の信号レベルを低下することによって、電力効率の低下を最小限に抑制して出力電力を低下させることができる。
【0130】
なお、上記においては、電力増幅回路への入力信号の信号レベルを低下させて出力電力を低下させる場合について説明したが、高周波増幅回路4Aは、外部から指示信号INST2_Iを受けると、定振幅位相変調器2からの定振幅高周波信号の信号レベルを上昇し、その上昇した定振幅高周波信号をスイッチング回路51へ出力するので、実施の形態2においては、変調誤差が変調誤差上限値THよりも大きい領域REG2において、電力増幅回路52への定振幅高周波信号の信号レベルを変えることによって出力電力を変える(即ち、出力電力を増減する)ことができる。
【0131】
また、高周波増幅回路4Aは、指示信号INST2_Dを外部から受ける度に、定振幅位相変調器2からの定振幅高周波信号の信号レベルを減衰し、指示信号INST2_Iを外部から受ける度に、定振幅位相変調器2からの定振幅高周波信号の信号レベルを上昇させるが、定振幅高周波信号の信号レベルの低下幅および定振幅高周波信号の信号レベルの上昇幅は、一定であってもよく、変化してもよい。
【0132】
上述したように、振幅信号発生手段7Aは、領域REG1において、パルス幅変調における変調度を低下させるための振幅信号(=波形wv31)を生成し、パルス幅変調器8は、振幅信号発生手段7Aから受けた振幅信号(=波形wv31)の振幅に応じて、変調度を低下させてPWM信号(=波形wv41)を生成するので、振幅信号発生手段7Aおよびパルス幅変調器8は、変調誤差が変調誤差上限値TH以下である領域REG1において、パルス幅変調の変調度を低下させてPWM信号(=論理パルス)を出力する「パルス出力手段」を構成する。
【0133】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0134】
この発明は、電力付加効率の低下を抑制して出力電力を低下可能な通信装置に適用される。また、この発明は、電力付加効率の低下および変調誤差の増大を抑制して出力電力を低下可能な通信装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】この発明の実施の形態1による通信装置のブロック図である。
【図2】図1に示すパルス幅変調器の動作を詳細に説明するための図である。
【図3】変調誤差および電力効率と出力電力との関係を示す図である。
【図4】パルス幅変調における変調度を変えたときの信号の変化を示す図である。
【図5】図1に示す通信装置における信号のタイミングチャートである。
【図6】図1に示す通信装置における信号の他のタイミングチャートである。
【図7】この発明の実施の形態2による通信装置のブロック図である。
【図8】変調誤差および電力効率と出力電力との他の関係を示す図である。
【図9】変調誤差および電力効率と出力電力との更に他の関係を示す図である。
【図10】図7に示す通信装置における信号のタイミングチャートである。
【図11】図7に示す通信装置における信号の他のタイミングチャートである。
【図12】従来の技術による無線送信装置のブロック図である。
【図13】PWM信号のスペクトラム図である。
【図14】図12に示す無線送信装置における信号のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0136】
1 ベースバンド信号発生器、2 定振幅位相変調器、3,202 局部発振器、4,4A,204 高周波増幅回路、5 スイッチング手段、6 帯域通過フィルタ、7,7A 振幅信号発生手段、8 パルス幅変調器、10,10A 通信装置、51 スイッチング回路、5,205 電力増幅回路、200 無線送信装置、201 変調器、203 リミタ、206 包絡線検波器、207 振幅変調信号増幅回路、2071 パルス幅変調器、2072 低域通過フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調出力信号の振幅に比例したデューティー比を有する論理パルス信号を出力するパルス幅変調における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、前記変調出力信号に基づいて、前記パルス幅変調の変調度を低下させて前記論理パルスを出力するパルス出力手段と、
前記変調出力信号に基づいて定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を信号レベルを一定に保持して出力する定振幅信号発生手段と、
前記定振幅信号発生手段から受けた定振幅高周波信号を前記パルス出力手段から受けた論理パルス信号によって断続するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段によって断続された定振幅高周波信号を濾波し、その濾波した信号を送信信号として出力する帯域通過フィルタとを備える通信装置。
【請求項2】
変調出力信号の振幅に比例したデューティー比を有する論理パルス信号を出力するパルス幅変調における変調誤差が変調誤差上限値以下である領域において、前記変調出力信号に基づいて、前記パルス幅変調の変調度を低下させて前記論理パルスを出力するパルス出力手段と、
前記変調誤差が前記変調誤差上限値よりも大きい領域において、前記変調出力信号に基づいて信号レベルを低下して定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を出力する定振幅信号発生手段と、
前記定振幅信号発生手段から受けた定振幅高周波信号を前記パルス出力手段から受けた論理パルス信号によって断続するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段によって断続された定振幅高周波信号を濾波し、その濾波した信号を送信信号として出力する帯域通過フィルタとを備える通信装置。
【請求項3】
前記パルス出力手段は、前記変調誤差が前記変調誤差上限値よりも大きい領域において、前記変調誤差が前記変調誤差上限値に達したときの変調度を維持して前記論理パルス信号を出力する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記定振幅信号発生手段は、前記変調誤差が前記変調誤差上限値以下である領域において、前記変調出力信号に基づいて定振幅高周波信号を生成し、その生成した定振幅高周波信号を信号レベルを一定に保持して出力する、請求項2に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−159343(P2009−159343A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335545(P2007−335545)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、支出負荷行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「空間軸上周波数有効利用技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】