説明

通信装置

【課題】CANトランシーバの省電力モードを解除する際に、タイミング調整を不要とする。
【解決手段】スタンバイ端子STBを備えたCANコントローラ18と、送信端子Txと接続される送信信号入力端子Txaと、送信信号入力端子Txaの信号レベルに基づく論理レベルの信号を生成しネットワークバスNBに送出する送信回路22とを有し、動作モードを省電力モードに移行し、或いは省電力モードを解除するCANトランシーバ12を備え、省電力モードの間は、送信信号入力端子TxaにHレベルを入力し送信回路22にレセッシブを送出させるECU1において、省電力モードの解除を指示する指示信号Saが出力されたときから所定時間Tの間、CANトランシーバ12の送信信号入力端子TxaにCANコントローラ18の送信端子Txの信号に代えてHレベルの信号を入力し送信回路22にレセッシブを送出させる遅延回路14を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CANプロトコルに則って通信する通信装置に係り、特に、消費電力を抑える省電力モードに動作モードを移行可能な通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)によって制御される多くの電装品が搭載されており、それぞれのECUが車内LANで相互に通信可能に接続されてデータを送受することで協調制御を行っている。車内LANの通信プロトコルとしては、国際標準機構(ISO:International Organization for Standardization)で標準規格されているCAN(Controller Area Network)プロトコルが広く用いられている。
【0003】
ところで、ECUには、一般に、制御対象の電装品を制御しなくても良い場合等に消費電力を抑える省電力モードに動作モードを移行するもがあり、省電力モード移行時には、CAN通信のための構成部材も含めて省電力モードに移行するものが知られている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
詳述すると、図4に示すように、この種のECU100は、CANプロトコルに準拠して、他のECU100との間の通信処理を制御するCANコントローラ110を含むマイコン120と、CANコントローラ110とネットワークバスNBとの間に介在して送受するデータの電気信号変換等を行うCANトランシーバ130とを備えている。
またCANコントローラ110は、CANトランシーバ130からの受信信号が入力される受信端子Rxと、CANトランシーバ130へ送信データを出力する送信端子Txと、CANトランシーバ130へ省電力モードへの移行或いは復帰を指示するスタンバイ端子STBとを備えている。また、CANトランシーバ130は、CANコントローラの受信端子Rx、送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBに対応して、受信信号出力端子Rxa、送信信号入力端子Txa、及びスタンバイ入力端子STBaを備えている。
【0004】
そして、マイコン120が省電力モードに移行するときには、CANコントローラ110がスタンバイ端子STBに出力する信号レベルを切り替えることで、CANトランシーバ130に対して省電力モードへの移行を指示し、当該CANトランシーバ130を省電力モードに移行させる。
また、マイコン120が省電力モードから復帰して送信データを送信する場合には、CANコントローラ110がスタンバイ端子STBに出力する信号レベルを切り替えてCANトランシーバ130の省電力モードを解除する。そしてCANトランシーバ130は、省電力モードが解除されると、CANコントローラ110の送信端子Txに出力された送信データを送信信号に変換しネットワークバスNBに送出する。
【0005】
ただし、CANトランシーバ130の省電力モードを解除したときには、送信端子Txの信号レベルが送信信号として直ちにネットワークバスNBに送出されるため、CANコントローラ110側では、CANトランシーバ130の省電力モードを解除する前に、送信端子Txに送信データを出力するための送信設定を完了していないと、意図せぬ論理レベルの信号がネットワークバスNBに送出される。このような信号は、他のECU100ではエラーフレームとして取り扱われ、このようなエラーフレームが増大すると通信品質の低下を招く。
このため、CANコントローラ110がCANトランシーバ130の省電力モードを解除する際には、その前に送信設定の処理を必ず実行するように、当該CANコントローラ110の制御プログラムがコーディングされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−109161号公報
【特許文献2】特開2008−60680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ECU100の省電力モードへの移行/復帰は、車両のバッテリ電源やACC電源のオン/オフ、制御対象となる電装品の状態変化、他のECU100からの信号受信といった多岐に亘るイベント発生を条件にして行われる。したがって、プログラム設計者は、ECU100が省電力モードから復帰するイベントを予め全て把握し、それぞれのイベントの発生ごとに、CANトランシーバ130の省電力モードを解除する前に送信設定を行うように制御プログラムをコーディングすることとなるが、このような作業は制御プログラムの設計者にとって大きな負担となっていた。
【0008】
また、送信設定の後にCANトランシーバ130の省電力モードを解除するように制御プログラムをコーディングしても、コーディングの内容やCANコントローラ110、及びCANトランシーバ130のハードウェア構成等の要因によっては、送信端子の送信設定が完了する前にCANトランシーバ130の省電力モードが解除されてしまう事がある。このため、送信端子の送信設定後にCANトランシーバ130が省電力モードから復帰するようにタイミングの調整をする処理を含めながら制御プログラムをコーディングする必要があり、コーディング作業が非常に困難であった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、CANトランシーバの省電力モードを解除する際に、送信データの送信設定のタイミング調整を図る必要がない通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、送信端子、及び動作モードの切り替えを指示する指示信号を出力するスタンバイ端子を備えたコントローラと、前記コントローラの送信端子と接続される送信信号入力端子と、前記送信信号入力端子の信号レベルに基づく論理レベルの信号を生成しネットワークバスに送出する送信回路とを有し、前記指示信号に応じて動作モードを省電力モードに移行し、或いは省電力モードを解除するトランシーバと、を備え、前記省電力モードの間は、前記トランシーバの送信信号入力端子に所定論理レベルに対応する信号レベルを入力して前記送信回路に所定論理レベルの信号を前記ネットワークバスに送出させる通信装置において、前記省電力モードの解除を指示する指示信号が前記コントローラから出力されたときから所定時間の間、前記トランシーバの送信信号入力端子に、前記コントローラの送信端子の信号に代えて前記所定論理レベルに対応する信号を入力し前記送信回路に前記所定論理レベルの信号を前記ネットワークバスに送出させる入力回路を備えたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記通信装置において、前記入力回路は、前記省電力モードの移行が指示されてから当該省電力モードが解除された後に前記所定時間が経過する間に亘り、前記トランシーバの送信信号入力端子に、前記コントローラの送信端子の信号に代えて前記所定論理レベルに対応する信号を入力し前記送信回路に前記所定論理レベルの信号を前記ネットワークバスに送出させることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記通信装置において、前記所定論理レベルに対応する信号レベルはHレベルであり、前記コントローラは、前記省電力モードの間、前記送信端子の信号レベルをLレベルにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、省電力モードの解除を指示する指示信号がコントローラから出力されたときから所定時間の間、トランシーバの送信信号入力端子に、コントローラの送信端子の信号に代えて所定論理レベルに対応する信号を入力し送信回路に所定論理レベルの信号を送出させるため、省電力モード解除時に、コントローラの送信端子に送信データの送信設定がされていなくとも、意図せぬ信号がネットワークバスに送出される事がない。すなわち、送信データの送信設定は、少なくとも所定時間が経過する前に完了すれば良いため、送信設定のタイミングに自由度を持たせることができ、送信設定のタイミングを正確に調整する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るECUの構成を示すブロック図である。
【図2】遅延回路の一例を示す回路図である。
【図3】省電力モードの解除時における遅延回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】従来のECUの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、本発明に係る通信装置として、CANプロトコルに準拠して通信する装置であって、車両の電装部品としてのECUを例示する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るECU1の構成を示すブロック図である。
ECU1は、車両のエンジンやインストルメントパネル、ドアロック機構といった電装品を制御対象とし、これらの制御対象ごとに設けられて電子制御を行うものであって、車内LANにノードとして接続されて、他のECU1等とデータを送受することで協調制御を行う。この車内LANの通信プロトコルには、CANプロトコルが用いられ、各ECU1はCANプロトコルに準拠して通信する。
【0017】
すなわちCANプロトコルでは、ネットワークバスNBとして、CAN−HラインとCAN−Lラインとからなる2線式通信ラインが使用され、ネットワークバスNBの両端には、信号の反射を抑える終端抵抗(不図示)が接続され、このネットワークバスNBに各ECU1がライン型に接続されている。
またCANプロトコルでは、信号の伝送方法として、CAN−HラインとCAN−Lライの間の電位差の有無で信号を伝送する2線式差動電圧方式が採用されており、電位差がある場合を論理「1」、電位差がない場合を論理「0」として2進数の信号が伝送される。
【0018】
CANプロトコルでは、論理「0」はドミナント(優性)と規定されており、ドミナントを出力するノード(本実施形態ではECU1)がネットワークバスNBを占有する。一方、論理「1」はレセッシブ(劣性)と規定されており、複数のECU1からネットワークバスNBにドミナントとレセッシブとが同時に送出された場合には、ネットワークバスNBはドミナントに固定され、このドミナントを送出したECU1がネットワークバスNBを占有して送信信号を送出することとなる。
【0019】
ECU1の構成について説明すると、ECU1は、マイコン10と、CANトランシーバ12と、遅延回路14とを備えている。
マイコン10は、制御対象となる電装品を制御プログラム16に従って制御するとともに、他のECU1との間でCAN通信によりメッセージを送受することで協調制御をするものであって、上述のCANプロトコルに準拠して通信処理を制御するCANコントローラ18を備えている。このCANコントローラ18の動作も上記制御プログラム16、或いは、CANコントローラ18に専用に別途にコーディングされた制御プログラムによって規定される。
【0020】
具体的には、CANコントローラ18は、ECU1の送信メッセージを格納する送信レジスタ(不図示)の格納値に基づいて送信メッセージをフレーム化し、ネットワークバスNBにCANトランシーバ12を介して送信する送信制御、CANトランシーバ12を介してフレームを受信しメッセージを抽出する受信制御、並びに、フレームの送受信に関連して生じるエラーの検出処理といった、CANプロトコルに準拠した通信制御を実行する。
【0021】
また、マイコン10は、通常の動作モードの他、消費電力を低減可能な省電力モード(いわゆる、スリープモードやスタンバイモードなど)を備え、電装品の制御が不要な期間や他のECU1へのデータの送信が不要な期間の間、制御プログラム16の処理によって省電力モードに移行する。省電力モードへの移行時には、CANコントローラ18がCANトランシーバ12に対して省電力モードへの移行を指示する指示信号Saを出力することで、当該CANトランシーバ12を省電力モードに移行させる。
なお、本実施形態では、マイコン10がCANコントローラ18を備える構成としているが、CANコントローラ18をマイコン10と別体に設けてもよい。
【0022】
上記CANトランシーバ12は、CANコントローラ18とネットワークバスNBとの間に介在し、マイコン10が送受するデータの電気信号変換といった、CANプロトコルの物理層の規格に準拠した処理を行うものである。
これらCANコントローラ18は、CANトランシーバ12との間の入出力端子(入出力ポート)として、受信端子Rx、送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBを備え、また、CANトランシーバ12は、これら受信端子Rx、送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBに対応して受信信号出力端子Rxa、送信信号入力端子Txa、及びスタンバイ入力端子STBaを備えている。
受信端子Rxは、CANトランシーバ12が生成し受信信号出力端子Rxaに出力された受信データRxDをCANコントローラ18に入力する端子であり、送信端子Txは、CANコントローラ18の送信データTxDをCANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに入力する端子である。またスタンバイ端子STBは、CANコントローラ18からCANトランシーバ12のスタンバイ入力端子STBaに省電力モードへの移行、或いは解除を指示する指示信号Saを入力する端子である。
【0023】
CANコントローラ18にあっては、送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBには、それぞれNチャネル型のオープンドレイン19の出力が引き出されている。省電力モードでは、送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBに流れる電流による電力消費を抑えるべく、オープンドレイン19をオンしてスタンバイ端子STBの指示信号Saの信号レベルをLレベルにすることで、省電力モードへの移行を指示する。
【0024】
また、省電力モード動作時は、送信端子Txのオープンドレイン19もオンして送信端子Txの信号レベルがLレベルに維持されて電力消費が抑えられている。そしてCANコントローラ18は、省電力モードから復帰して送信データTxDを送信する際には、ドミナントの送信を防止するために送信端子Txの信号レベルを一旦Hレベルに遷移させた後、Lレベルを送信端子Txに出力することでドミナントをネットワークバスNBに送出して占有し、その後、送信データTxDを送信端子Txに出力して送信信号を送出する。
【0025】
CANトランシーバ12は、受信回路20と、送信回路22と、動作モード切替部24とを備え構成されている。
受信回路20は、ネットワークバスNBのCAN−Hライン及びCAN−Lラインに接続され、当該ネットワークバスNBに流れる信号を受信して受信フレームに変化しCANコントローラ18に出力する。
【0026】
送信回路22は、ネットワークバスNBのCAN−Hライン及びCAN−Lラインに接続され、送信信号入力端子Txaの信号レベルを取り込み、当該信号レベルに対応する論理レベルを差動電圧で示した送信信号に変換しネットワークバスNBに送出する。
また、上述の通り、ネットワークバスNBは、ドミナントを送出したECU1によって占有されることから、送信信号を送信する必要が無い間(無送信期間)については、ネットワークバスNBの占有を避けるべく、送信信号入力端子Txaにレセッシブ(論理「1」)に対応する信号レベル(本実施形態はHレベル)の信号が入力され、これより、送信回路22がレセッシブを生成してネットワークバスNBに送出する。
一方、送信信号の送信が行われる際には、送信信号入力端子Txaにドミナント(論理「0」)に対応する信号レベル(本実施形態はLレベル)の信号が入力され、これにより、送信回路22がドミナントを生成しネットワークバスNBに送出することで、ネットワークバスNBを占有する。
【0027】
動作モード切替部24は、CANコントローラ18からスタンバイ入力端子STBaを通じて、省電力モードへの移行、或いは解除を指示する指示信号Saを受け取り、この指示信号Saに従って、CANトランシーバ12の動作モードを通常モードと省電力モードとの間で切り替えるものである。通常モードは、他のECU1との間でネットワークバスNBを介して信号の送受信を行う通常のモードであり、省電力モードは信号の送信動作を停止して消費電力を低減するモードである。かかる省電力モードでは、CANトランシーバ12が備えるクロック発生器などの電子回路が停止されたり、動作クロックが抑えられて低速動作したりすることで消費電力が低減される。また、CANコントローラ18では、省電力モードにおいては、上記の通り、送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBのそれぞれの信号レベルをLレベルにすることで、これら送信端子Tx、及びスタンバイ端子STBに流れる電流を抑えている。
【0028】
このように、省電力モードでは、CANコントローラ18の送信端子TxがLレベルになっているため、CANトランシーバ12の省電力モードを解除する前に、CANコントローラ18が送信端子TxをHレベルに遷移させないと、送信信号入力端子TxaにLレベルが入力されて送信回路22がドミナントをネットワークバスNBに送出してしまう。
この対策としては、CANコントローラ18がCANトランシーバ12の省電力モードを解除する前に、すなわちスタンバイ端子STBの信号レベルを切り替える前に、CANコントローラ18の送信端子TxをHレベルに遷移し送信データTxDの送信準備をする送信設定を行うように制御プログラム16をコーディングすれば良い。
しかしながら、ECU1の省電力モードから通常モードへの復帰は、車両のバッテリ電源やACC電源のオン/オフ、制御対象となる電装品の状態変化、他のECU1との通信の発生といった多岐に亘るイベント発生を条件にして行われる。このため、プログラム設計者は、数多くあるイベントのうち、通常モードに復帰するイベントを全て把握した上で、各イベントの発生ごとに、スタンバイ端子STBの信号レベルを切り替える前に、上記送信設定を行うように制御プログラム16をコーディングする必要があり、コーディング作業が非常に負担となる。
【0029】
そこで、本実施形態では、CANコントローラ18及びCANトランシーバ12の送信端子Txの間に遅延回路14を設け、CANトランシーバ12の省電力モードの解除時に、遅延回路14がHレベルの出力信号Sbを所定時間Tの間出力してCANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに入力することで、省電力モードの解除のタイミングで、CANコントローラ18の送信端子TxがLレベルであっても、レセッシブの信号がCANトランシーバ12からネットワークバスNBに継続して送出されるようにしている。
【0030】
図2は、遅延回路14の一例を示す回路図である。
遅延回路14は、上述の通り、省電力モードから通常モードへの切り替え時に、所定時間Tに亘り、Hレベルの出力信号Sbを出力し、また、この所定時間Tの経過の後には、CANコントローラ18の送信端子Txの送信データTxDを出力信号SbとしCANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに入力する入力回路である。
より具体的には、遅延回路14は、図2に示すように、スタンバイ連動回路30と、OR回路31とを備えている。
【0031】
スタンバイ連動回路30は、省電力モード動作の間の、すなわち指示信号SaがLレベルの間、レセッシブに相当するHレベルの出力信号S1をOR回路31に出力し、また、省電力モードの解除時には、出力信号S1を所定時間Tの間、Hレベルに維持し、その後にLレベルにする回路である。
すなわち、スタンバイ連動回路30は、指示信号Saの信号レベルに応じてオン/オフしコレクタが出力として引きされるオープンコレクタ32と、このオープンコレクタ32の出力に接続されたプルアップ抵抗33と、オープンコレクタ32のオンからオフへの遷移を所定時間T遅延させるオンディレイ回路34とを備えている。
オープンコレクタ32は、指示信号SaがHレベル(すなわち通常動作モード)の間オンして、エミッタ側のアース電位を出力に出力することでLレベルの出力信号S1を出力し、また指示信号SaがLレベル(すなわち省電力モード)の間はオフし、プルアップ抵抗33を通じて基準電源Vccの電位を出力することでHレベルの出力信号S1を出力する。
【0032】
オンディレイ回路34は、オープンコレクタ32のベースに接続され、指示信号Saの信号レベルに応じて蓄放電するキャパシタ35を備えている。当該キャパシタ35は、指示信号SaがLレベル(すなわち、省電力モード)の間、放電状態に維持され、また指示信号SaがLレベルからHレベルに切り替わるとき(すなわち、省電力モードから通常モードへ復帰した時)に基準電源Vccの電力で充電が開始され、この充電動作によりオープンコレクタ32のベースへ印加される電圧がオン電圧に達するまでの時間を遅延させる。なお、この遅延時間は、キャパシタ35の容量や当該キャパシタ35と基準電源Vccの間の抵抗を可変することで適宜に調整可能である。
これにより、指示信号SaがLレベルからHレベルに切り替わったときから所定時間T経過後にオープンコレクタ32がオンするため(いわゆる、オンディレイ)、出力信号S1の信号レベルも、指示信号SaがLレベルからHレベルに切り替わったタイミングから遅れて所定時間T経過後にHレベルからLレベルに切り替わることとなる。
【0033】
OR回路31は、スタンバイ連動回路30の出力信号S1の信号レベルと、CANコントローラ18の送信端子Txの信号レベルの論理和を出力信号Sbとして出力し、CANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに入力する回路であり、例えばダイオードOR回路で構成されている。
すなわち、省電力モード動作の間(指示信号SaがLレベルの間)、スタンバイ連動回路30の出力信号S1はHレベルとなるから、CANコントローラ18の送信端子Txの信号レベルにかかわらず、OR回路31の出力信号SbはHレベルに固定される。この出力信号SbがCANトランシーバ12の送信端子Txに入力されることで、送信回路22からは、省電力モード動作の間、レセッシブが継続して出力される。
【0034】
また、通常モード動作の間(指示信号SaがHレベルの間)、スタンバイ連動回路30の出力信号S1はLレベルとなるから、OR回路31の出力信号Sbは、CANコントローラ18の送信端子Txの信号レベルと同じとなる。これにより、CANコントローラ18が送信端子Txに送信データTxDを出力することで、当該送信データTxDが遅延回路14を通じてCANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに入力されることとなる。
【0035】
図3は、省電力モードから通常モードへの復帰時における遅延回路14の動作を示すタイミングチャートである。
省電力モード動作時には、CANコントローラ18からLレベルの指示信号Saが出力され、また、CANコントローラ18の送信端子TxもLレベルに維持される。
一方、遅延回路14では、指示信号Saによりスタンバイ連動回路30の出力信号S1がHレベルとなることで、遅延回路14の出力信号SbがHレベルに固定される。かかる出力信号SbがCANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに入力されることで、省電力モード動作の間に送信回路22が出力する信号がレセッシブ(論理「1」)に固定される。
【0036】
次いで、CANコントローラ18が指示信号SaをLレベルからHレベルに切り替え、省電力モードの解除を指示すると、指示信号Saの切り替わりのタイミングt1でCANトランシーバ12が通常モードに復帰する。
このとき遅延回路14では、タイミングt1から所定時間Tの間は、CANコントローラ18の送信端子Txの信号レベルにかかわらず継続してHレベルの出力信号Sbが出力されるため、この間、送信回路22からはレセッシブの信号が継続して出力されることとなる。
したがって、この所定時間Tの間は、例えばCANコントローラ18の送信端子TxがLレベルに維持されていたとしても、送信回路22がドミナントを出力することがない。
【0037】
そして、CANコントローラ18では、この所定時間Tが経過するタイミングt2までに、送信端子TxのHレベルへの遷移、及び送信データTxDの送信準備を含む送信設定を完了させ、所定時間Tの経過を待つ。所定時間Tが経過すると、遅延回路14のスタンバイ連動回路30の出力信号S1がLレベルになることで、この遅延回路14の出力信号SbがCANコントローラ18の送信端子Txの信号に切り替わり、この切り替わりの後のタイミングt3で、CANコントローラ18が送信端子Txに送信データTxDを出力することで、送信データTxDの送信信号が送信回路22からネットワークバスNBに送出されることとなる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、省電力モードの解除を指示する指示信号SaがCANコントローラ18から出力されたときから所定時間Tの間、CANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに、CANコントローラ18の送信端子Txの信号に代えてHレベルの信号を入力し送信回路22にレセッシブを送出させる遅延回路14を設ける構成とした。
この構成により、省電力モード解除時に、CANコントローラ18の送信端子Txに送信データTxDの送信設定がされていなくとも、意図せぬ信号がネットワークバスNBに送出される事がない。すなわち、送信データTxDの送信設定は、省電力モードの解除から少なくとも所定時間Tが経過する前に完了されていれば良いため、送信設定のタイミングに自由度を持たせることができ、送信設定のタイミングを正確に調整する必要がない。
【0039】
特に、CANコントローラ18が省電力モードの解除を指示してから所定時間Tが経過するまでCANトランシーバ12が省電力モードから復帰することはないから、送信端子TxのLレベルからHレベルへの遷移、及び送信データTxDの送信準備を含む送信設定の処理を省電力モードの解除の発生を条件として開始するように制御プログラム16をコーディングすることもできる。これにより、省電力モードが解除され得るすべのイベントを把握しておく必要がないことから、制御プログラム16のコーディング作業が容易となる。特に、ECU1の制御対象ごとに、省電力モードが解除されるイベントが異なる場合であっても、省電力モードの解除を(指示信号Saの切り替え)をトリガにして上記送信設定の処理を行うようにすることで、制御プログラム16のコードを各ECU1に共通にできる。
【0040】
また本実施形態によれば、遅延回路14が、省電力モードの移行が指示されてから当該省電力モードが解除された後に所定時間Tが経過する間に亘り、CANトランシーバ12の送信信号入力端子Txaに、CANコントローラ18の送信端子Txの信号に代えてHレベルの信号を入力し送信回路22にレセッシブを送出させる構成とした。
この構成によれば、省電力モード移行時に、CANコントローラ18は、送信回路22からレセッシブを送出させるための処理を行う必要がなく、処理が簡単になる。
【0041】
また本実施形態によれば、CANコントローラ18は、省電力モードの間、送信端子Txの信号レベルをLレベルにする構成としたため、CANコントローラ18の消費電力が抑えられる。
【0042】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0043】
例えば上述した実施形態では、通信装置として車両のECU1を例示したが、これに限らず、CANプロトコルに準拠して通信する通信装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1、100 ECU(通信装置)
10、120 マイコン
12、130 CANトランシーバ
14 遅延回路(入力回路)
16 制御プログラム
18、110 CANコントローラ
20 受信回路
22 送信回路
24 動作モード切替部
30 スタンバイ連動回路
35 キャパシタ
NB ネットワークバス
Rx 受信端子
STB スタンバイ端子
STBa スタンバイ入力端子
Sa 指示信号
Sb 出力信号
T 所定時間
Tx 送信端子
Txa 送信信号入力端子
TxD 送信データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信端子、及び動作モードの切り替えを指示する指示信号を出力するスタンバイ端子を備えたコントローラと、
前記コントローラの送信端子と接続される送信信号入力端子と、前記送信信号入力端子の信号レベルに基づく論理レベルの信号を生成しネットワークバスに送出する送信回路とを有し、前記指示信号に応じて動作モードを省電力モードに移行し、或いは省電力モードを解除するトランシーバと、を備え、
前記省電力モードの間は、前記トランシーバの送信信号入力端子に所定論理レベルに対応する信号レベルを入力して前記送信回路に所定論理レベルの信号を前記ネットワークバスに送出させる通信装置において、
前記省電力モードの解除を指示する指示信号が前記コントローラから出力されたときから所定時間の間、前記トランシーバの送信信号入力端子に、前記コントローラの送信端子の信号に代えて前記所定論理レベルに対応する信号を入力し前記送信回路に前記所定論理レベルの信号を前記ネットワークバスに送出させる入力回路
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記入力回路は、前記省電力モードの移行が指示されてから当該省電力モードが解除された後に前記所定時間が経過する間に亘り、前記トランシーバの送信信号入力端子に、前記コントローラの送信端子の信号に代えて前記所定論理レベルに対応する信号を入力し前記送信回路に前記所定論理レベルの信号を前記ネットワークバスに送出させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記所定論理レベルに対応する信号レベルはHレベルであり、
前記コントローラは、前記省電力モードの間、前記送信端子の信号レベルをLレベルにすることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222562(P2012−222562A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85543(P2011−85543)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】