通気性耐火物及び連続鋳造用ノズル
【課題】
連続鋳造の操業における時間経過と共にガスの気泡径の拡大による浸漬ノズルのブレークアウトのような操業上の危険性の増大を防止する通気性耐火物の提供。
【解決手段】
フリーの炭素(「フリーの炭素」とは化合物以外の炭素をいう。)を15質量%以上30質量%以下、1μm以下の粒子のSiO2を2質量%以上12質量%未満、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物が53質量%以上83質量%以下(製造上不可避の不純物を含む)であって、前記の1μm以下の粒子状のSiO2は,当該耐火物のマトリクスの炭素組織の中に分散して存在しており、マトリクスの炭素に対する前記1μm以下の粒子のSiO2の質量比、SiO2/炭素が0.5以上2.0以下の範囲にあり、金属及び酸化物を除く化合物の何れか1以上の合計で1質量%以上5質量%以下を含む。
連続鋳造の操業における時間経過と共にガスの気泡径の拡大による浸漬ノズルのブレークアウトのような操業上の危険性の増大を防止する通気性耐火物の提供。
【解決手段】
フリーの炭素(「フリーの炭素」とは化合物以外の炭素をいう。)を15質量%以上30質量%以下、1μm以下の粒子のSiO2を2質量%以上12質量%未満、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物が53質量%以上83質量%以下(製造上不可避の不純物を含む)であって、前記の1μm以下の粒子状のSiO2は,当該耐火物のマトリクスの炭素組織の中に分散して存在しており、マトリクスの炭素に対する前記1μm以下の粒子のSiO2の質量比、SiO2/炭素が0.5以上2.0以下の範囲にあり、金属及び酸化物を除く化合物の何れか1以上の合計で1質量%以上5質量%以下を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造において溶鋼を容器から排出するためのノズルに使用する通気性耐火物およびその通気性耐火物を使用した連続鋳造用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼を連続鋳造する際、溶鋼清浄化やノズル内孔面へのアルミナ等の非金属介在物の付着抑制などのために、ノズルから溶鋼中に不活性ガスを吹込む方法が多く行われている。
【0003】
このような溶鋼中に不活性ガスを吹込む機能を備えたノズルは、その内孔部の溶鋼と接する面の一部又は全部に通気性耐火物を配置し、その外周側にガスの流通の経路及びガス圧力の均一化等を目的とする中空室(本発明ではガスプールともいう。)を設けた構造とし、その中空室にガスを供給し、通気性耐火物を介して溶鋼中に不活性ガスを吹込む方法が多く採用されている。
【0004】
しかし、連続鋳造の操業においては、通鋼開始時から時間経過と共にガスの気泡径が拡大する現象が見られる。このようなガスの気泡径の拡大は、アルミナ等の非金属介在物の付着抑制効果が小さくなることによるノズル内孔閉塞や気泡系欠陥、非金属介在物の混入等の鋼の品質低下を来たし、また、モールドに注湯するための浸漬ノズルの場合には、モールドにおける溶鋼面の不規則な変動や乱れが大きくなって、ブレークアウト等の操業上の危険性を増大することもある。
【0005】
このような現象は、通気性耐火物の成分、とくにシリカに起因することが多い。
【0006】
通気性耐火物は、一般的に、アルミナやその化合物を主とする耐火性の骨材粒、炭素および非晶質シリカ(溶融シリカ)骨材粒等から構成されている。この非晶質シリカ骨材粒はその熱膨張性が極めて小さいことから採用されており、通気性耐火物にとって不可欠の耐熱衝撃性を確保する機能を担っている。
【0007】
しかし、この非晶質シリカ骨材粒は、操業中に揮発消失して通気性耐火物組織中に空隙を生じさせる。また、この非晶質シリカ骨材粒は耐火物の耐熱衝撃性の効果を高めるために相対的に大きい粒子サイズで使用されることが多く、この消失後に生じる通気性耐火物中の空隙も大きくなる。このように大きな空隙が通気性耐火物組織中に多く分布すると、通気性耐火物を通過してその内孔面から吹き出す気泡径も大きくなる。また、このような現象にともなってガスの背圧低下も多く観られる。
【0008】
この対策として、シリカが少ないか含まない通気性耐火物に関する多くの特許文献がある。
【0009】
例えば特許文献1には、「鋼の連続鋳造用アルミナグラファイト浸漬ノズルにおいて、ガス吹き込み部にあたる内孔体のSiO2含有率を5wt%以下にし、且つ少なくとも吐出孔を含む内孔体より下部の内壁面を、Na2O 含有率が1〜10wt%、SiO2含有率が5wt%以下の耐火物で構成した連続鋳造用浸漬ノズル」が提案されており、そのノズルの使用により、気泡系欠陥発生率が低減したとされている。
【0010】
しかし、SiO2含有率を5wt%以下に低減した通気性耐火物からなる内孔体では、この特許文献1の発明者自らがその後の特許文献2に記載しているように、「浸漬ノズルに不可欠な耐スポーリング性が得られない」ことに加え、溶鋼に対する耐摩耗性が著しく弱くなる欠点があることを本願の発明者らは確認した。
【0011】
このような欠点により、結果として、熱衝撃によって破壊した通気性耐火物の貫通亀裂からガスが集中的に漏れ出したり、操業中に通気性耐火物の局部ないしは広範囲な損傷を来たし、通気性耐火物の肉薄化やガスプールと内孔の貫通等をも惹き起こして、操業中の通気性の安定的な確保が却って損なわれることがある。その際、漏れ出すガス量や気泡径の管理は不可能である。
【0012】
また特許文献2には、「ガス吹き込み型アルミナ黒鉛質連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、シリカを5〜12wt%含有し、且つシリカの粒径が50μm以下である組成によりガス吹き込み部である内孔体を形成したことを特徴とする連続鋳造用ノズル」が提案されており、このノズルを使用することで、微細な気泡を安定して吹き込むことができるとされている。なお、この50μm以下の詳細な粒度構成等は述べられていないが、具体例として、0.02mm、0.04mm、0.05mmが示されている。
【0013】
しかし、本願発明者の知見によれば、50μm以下、具体的には、0.02mm、0.04mm、0.05mmのシリカを5〜12wt%含有させても、気泡径の拡大は十分には抑制できないことがわかった。さらには、溶鋼に対する耐摩耗性が依然十分には改善できないこともわかった。
【0014】
一方,非晶質の(溶融)シリカを通気性耐火物から除去する,又は大幅に減ずると,耐火物の耐熱衝撃性が低下するのみではなく,さらに耐摩耗性が著しく損なわれる傾向が現れることを本発明者らは見出した。
【0015】
このように,通気性耐火物に関して,通気性耐火物の耐熱衝撃性,耐摩耗性の低下を抑制すると共に,吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を防止する手段は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−179056号公報
【特許文献2】特開平4−270040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、耐熱衝撃性及び溶鋼に対する耐摩耗性を低下させることなく、通気性耐火物から吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の通気性耐火物は、フリーの炭素(「フリーの炭素」とは化合物以外の炭素をいう。)を15質量%以上30質量%以下、1μm以下の粒子のSiO2を2質量%以上12質量%未満、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物が53質量%以上83質量%以下(製造上不可避の不純物を含む)であって、前記の1μm以下の粒子状のSiO2は,当該耐火物のマトリクスの炭素組織の中に分散して存在していることを基本的な特徴とする。
【0019】
本発明における連続鋳造用ノズルとは、連続鋳造の操業における取鍋、タンディッシュ等の溶鋼容器から溶鋼を排出するために使用されるノズル全般をいう。
【0020】
また、本発明において「通気性耐火物」とは、当該耐火物の組織中にガスを通過させて当該耐火物の内面からガスを吹き出させるための耐火物を意味し、さらに、この「通気性耐火物」を単に「耐火物」と称することもある。
【0021】
さらに、この「通気性」の程度は、目的とする操業での必要に応じた設計事項であり、絶対値として定義することには馴染まない。しかし,通気性を評価する基本的な特性の一つとして,また相対的な指標として,用いることができる。
【0022】
本発明においては、円筒状の試料の内側に圧縮空気を流通させた際の通気率が概ね0.5Nl・cm/(min・MPa・cm2)以上である耐火物をいう。また概ね0.5Nl・cm/(min・MPa・cm2)以上という値は、一般的な鋳造用ノズルにおける通気性耐火物として使用可能な水準である。
【0023】
この通気率は,次に例示する方法で測定することができる。 すなわち、耐火物を円筒状試料(φ80−φ60×L50)とし、図1に示す
【0024】
イメージの実験装置において、試料上下をゴムパッキンを用いて挟み込み、試料の内側へ圧縮空気を流す。
【0025】
そして,この通気率は次の式により求めることができる。
【0026】
【0027】
ここで,それぞれの記号は以下のことを意味する。
K : 通気率 (Nl・cm/(min・MPa・cm2))
V : 内孔通気量 (Nl/min)
ri : 試料の内半径 (cm)
ro : 試料の外半径 (cm)
H : 試料の高さ (cm)
ΔP : 背圧 (MPa)
【0028】
本発明の通気性耐火物は、とくに、連続鋳造用ノズルの内孔の少なくとも一部に配設したことによって効果を発揮する。
【0029】
なお,この配設の位置,範囲も個別の操業条件や目的(例えば,溶鋼内へのガスの分散のみではなく付着防止も兼ねるか否か等)に応じて最適化すべき事項である。
【0030】
本発明で「フリーの炭素」とは、例えば珪素や硼素等との炭化物のように、他の元素との化合物を形成した炭素を除いた炭素をいう。この「フリーの炭素」には、結晶質である黒鉛粒、非晶質であって、耐火物組織のマトリクスを構成する骨材粒子間を結合する連続的な組織(本発明ではマトリクス炭素という)及びカーボンブラックを含む。
【0031】
前述の通り,非晶質のシリカを通気性耐火物から除去することは,又は大幅に減ずると,耐火物の耐熱衝撃性が低下するのみではなく,さらに耐摩耗性が著しく損なわれることから,本発明の耐火物は,非晶質のシリカを含ませる。
【0032】
しかし前述の背景技術に示されているように非晶質のシリカを最小でも20μm程度(20μmないし1μmを越える大きさ)の大きさにしても,吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大は進行する。
【0033】
このような,操業中の長時間に亘って気泡径が拡大し続けることは,鋳片の品質に悪影響を及ぼす要素を不安定化する(例えば湯面変動による介在物の巻き込み増大,ガスの不均一な溶鋼中への分散による介在物の捕捉の不良増大等)。そのため,鋳造初期の短時間にガス流出の状態が変動するような耐火物の物性変化が生じても,その後の鋳造時間ではガス流出の状態を安定させることが求められる。
【0034】
また,このような粒子サイズの非晶質のシリカを用いた場合は,耐摩耗性の低下を十分に抑制することができない。この原因は,通気性耐火物の結合組織と関係があることを本発明者らは見出した。
【0035】
通気性耐火物の結合構造に寄与しているマトリクス部の骨材粒子周囲の炭素質組織は,厚みの大小があるものの,最小厚みは約2μmであって,かつ多くの粒子の周辺はほぼこの程度の厚みの結合組織に覆われている。(図10参照)
【0036】
このような皮膜状に構成された結合組織が3次元的に配置されて耐火物の強度,耐摩耗性等を発現している。したがって,この皮膜状結合組織を破壊することは,耐火物の強度,耐摩耗性を損なうことになる。
【0037】
一方,この皮膜状に構成された結合組織を強化することで,通気性耐火物の耐摩耗性を向上させることができる。
【0038】
従来技術のように,最小でも20μm程度の大きさの非晶質シリカを耐火物のマトリクスに含ませると,その消失に伴ってこのような炭素質の結合組織を分断し,またその粒子サイズに近い空隙が多く存在した,脆弱な結合組織になってしまう。
【0039】
これに対し,本発明の耐火物は,操業前、すなわち、溶鋼通過に供する前の状態の耐火物の組織中において、非晶質のシリカを1μm以下のSiO2粒子として、マトリクス部を構成する炭素組織内に分散させた状態とする。(図12参照)
【0040】
1μm以下の粒子としてのSiO2であれば、多くの粒子の周辺に存在する最小厚み約2μmの炭素結合組織を分断させることがない。すなわち概ね皮膜状炭素組織の厚みの約1/2程度のSiO2粒子径であれば,被膜の破壊や著しい脆弱化を抑制することができる。
【0041】
また耐火物組織の広い範囲に分散させることが可能となり,耐火物の均質性を増すことにも寄与する。
【0042】
マトリクス部の炭素の中に分散した状態の1μm以下の粒子としてのSiO2は,予熱または溶鋼の通鋼等により(約1200℃を越える高温度で)、次の式1、2に示す反応を生じて、SiCを生成する。
【0043】
なお,これらの反応は不活性ガスを通過させることによって加速される。
【0044】
C+SiO2=CO(g)+SiO(g) ……… 式2
SiO(g)+2C=CO(g)+SiC ……… 式3
3C+SiO2=2CO(g)+SiC ……… 式4
【0045】
その結果、SiO2の存在した部分は空隙となり、その周囲にSiCを生成する。生成したシリカの空隙は、従来の0.2mm程度の大きさの骨材として添加した溶融シリカが揮発して生じた空隙に比較して極めて微細(1μmより小さい)であり、しかもマトリクス炭素の組織中に存在するので粗大化することがない。
【0046】
また通気性耐火物の気孔径は1μmより大きいので,これら反応による耐火物の気孔径の拡大は生じない。
【0047】
このため,溶鋼中に放出されるガスの大きさ、すなわち、気泡径を、極めて小さくすることができる、その気泡の大きさを操業の間維持することが可能となる。
【0048】
しかも,1μm以下の粒子としてのSiO2は、その径が小さいことで反応性が極めて高くなり(半径に対し累乗比例)、かつ周囲を炭素で囲まれた状態なので炭素との接触面積が極めて大きく,炭素との反応性がいっそう高くなる。
【0049】
このため,操業初期(受鋼後短時間)において,1μmよりも小さい微細な空間を中央に有する,SiC質のシェルを形成する。(組織変化が鋳造開始後の初期に完結する。図13参照)
【0050】
このSiCは耐摩耗性に優れるので,粒子の周辺に存在する炭素結合組織自体の耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0051】
このような理由から、本発明の耐火物に存在させるSiO2のサイズを皮膜状炭素組織の厚み約2μmの1/2である1μm以下とする。
【0052】
それによる上述の作用により,本発明の通気性耐火物は,耐熱衝撃性,耐摩耗性の低下を抑制すると共に,吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を防止することができ,しかも操業の間これらの性状を劣化させることなくほぼ維持することができる。
【0053】
なお,上述の通り1μm以下の粒子としてのSiO2をマトリクスの炭素の中に分散させた状態とする本発明の通気性耐火物は,SiO2のSiC化等の反応速度が大きいので,これに伴う組織変化及び通気特性の変化(通気量,背圧)が鋳造開始後の初期段階で完結する。
【0054】
したがって,鋳造開始から他の要素も含めた操業安定化までの短時間内に,ガスの流通、気泡径の安定した状態を得ることができる。これらの効果は、本発明における非晶質シリカよりも大きいサイズの非晶質シリカを使用した従来技術の耐火物,SiCを予め原料粒子として存在させた耐火物等では得られない。
【0055】
また、製造段階すなわち操業に供する製品の状態でSiO2をSiC化させておくと、耐火物組織は高弾性率化し,またSiCは非晶質のSiO2よりも熱膨張が大きいので耐火物の高熱膨張化を招く。その結果,そのような耐火物は鋳造開始時の熱衝撃によって破壊しやすくなる。
【0056】
したがって,本発明の通気性耐火物は、このような耐熱衝撃性が低下することを避けるため、操業(鋳造)に供する前の製品段階ではこのような反応によるSiCが形成した構造にはせず,鋳造開始後の初期に段階で上記反応及び組織変化が生じる構造とする。
【0057】
また,後述するように,非晶質のSiO2よりも熱膨張が大きいSiCを,耐火物の酸化防止の目的等で予め原料粒子として耐火物中に添加する場合には,5質量%以下程度に止めることが好ましい。
【0058】
さらに、本発明では、前記フリーの炭素のうち0.05mm以上の粒子状のものを除く残部(すなわち、骨材としての黒鉛粒を除くマトリクス部の炭素をいう。)の炭素成分に対するSiO2の質量比(以下,単に「SiO2/炭素比」ともいう。)が0.5以上2.0以下の範囲にあることが好ましい。
【0059】
前述の通り、1μm以下の粒子としてのSiO2は、前記マトリクス部の炭素との間で反応する。したがって、これら1μm以下の粒子としてのSiO2とマトリクス部の炭素との割合が、SiC化の程度に影響を及ぼす。
【0060】
このSiO2/炭素比が0.5未満の場合、本発明の課題を解決するだけのSiO2による耐熱衝撃性及び通気特性は得られるものの,マトリクス組織内に存在するSiCが少なくなる。そのため、十分な耐摩耗性が得られにくい。このSiO2/炭素比が2.0を越える場合、SiO2のSiC化等の反応が鋳造開始初期段階だけでは完了しきれずに,その後の安定すべき鋳造段階においても組織変化及び通気特性の変化(気泡径の拡大,背圧低下等)が継続して,鋳造安定化の効果を得にくい。またこの場合はSiO2の量によっては通気性が過大になったり耐火物組織の脆弱化等をも生じやすい。
【0061】
なお、1μm以下の粒子としてのSiO2は、より高い耐摩耗性,耐熱衝撃性を得るため、より速い反応を得る等のためには,できるだけ微細であることが好ましい。
【0062】
0.05mm以上の粒子状のものを除く残部、すなわち骨材としての黒鉛粒とマトリクス部の炭素とを識別するには、350℃以上450℃程度以下の酸化雰囲気中で、供試耐火物を熱処理し、その熱処理後の耐火物を0.05mmの隙間を有する篩で分級し、0.05mm越の残部を本発明でいう「0.05mm以上の粒子状」の炭素とみなすことができる。
【0063】
本発明の1μm以下の粒子としてのSiO2をマトリクスの炭素の中に分散させた状態を確認するには、高温下に熱処理する前の通気性耐火物の破断面の組織を観察すればよい。
【0064】
残部の酸化物骨材粒子は、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物をいう。この残部の酸化物骨材粒子は、本発明の通気性耐火物の骨格を成す主要な構成物である。
【0065】
Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物(製造上不可避の不純物を含む)は、本発明の通気性耐火物の骨格を成す主要な構成物である。
【0066】
このような骨格を成す主要な構成物としては、前述のSiO2、炭素の構成割合を前提にすると、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物が好適である。
【0067】
Al2O3成分からなる鉱物とは、コランダム質(αアルミナ)、Al2O3とSiO2成分からなる鉱物とは、シリマナイト属をいい、膨脹性を含む熱的な安定性の点でムライトが好適である。この理由は、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物は、連続鋳造に必要とされる程度の優れた耐摩耗性及び耐食性及び耐熱衝撃性を備えているからである。ここでAl2O3またはAl2O3とSiO2成分からなる鉱物とするのは、溶鋼温度(約1500℃〜1550℃付近)までの熱膨張特性がコランダムに近く、かつその熱膨張率がコランダムより小さいことを意味する。但し,カイヤナイトは熱膨張性が大きいこと、カオリナイト等の粘土鉱物はクリストバライトを生成して,通気特性等に悪影響を及ぼすことから,これらは除外する。
【0068】
前述のAl2O3またはAl2O3とSiO2成分からなる鉱物である酸化物骨材粒子が、53質量%未満の場合は、他に添加するカーボン、SiO2、炭化物又は金属を相対的に多量に含有することになる。そうすると、耐摩耗性や熱間通気特性の低下を招来する。
【0069】
前記の酸化物骨材粒子が、83質量%を越える場合は、熱膨張が大きくなって耐熱衝撃性を保持することが困難となる。
【0070】
なお、本発明の耐火物には,上記成分以外に製造上不可避の不純物を含むことがある。
【0071】
また本発明の耐火物には,上記以外の他の構成物として、金属及び,酸化物を除く化合物の何れか1以上を合計で1質量%以上5質量%以下を含むことができる。
【0072】
この金属及び酸化物を除く化合物は、シリコン、アルミニウムなどの金属、炭化珪素、炭化硼素、窒化珪素、窒化硼素、硼化ジルコニウム、窒化アルミニウムなどの何れか1種又は複数であるが、これは使用前の浸漬ノズル予熱時及び使用中の通気性耐火物の酸化防止機能を高めることに寄与する。
【0073】
しかし、これら金属及び酸化物を除く化合物は本発明において必須ではない。これらの何れかが5質量%を越えると、耐火物組織の初期強度を確保することが困難になりやすくなったり、耐火物組織の初期強度が高くなり過ぎて、いずれの場合にも耐熱衝撃性の低下等を招来しやすい。
【発明の効果】
【0074】
本発明により、
1.通気性耐火物から吹き出す操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を抑制することができる。
2.耐熱衝撃性が確保でき,鋳造開始時の耐火物及び本発明の耐火物を使用したノズルの破壊や鋳造トラブルを避けることができる。
3.溶鋼に対する耐摩耗性が向上〜確保できる。これにより,通気性耐火物の摩耗による薄肉化〜ガスの局部からの集中的な噴き出し及び気泡径拡大を抑制することができ,さらには本発明の耐火物を使用したノズルの破壊や鋳造トラブルを避けることができる。
【0075】
これら効果により,ひいては、鋳造操業の安定化することができ,鋳片の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明で用いた通気性耐火物の通気率を測定するための実験装置のイメージを示す図である。
【図2】本発明で用いた平均気孔径と気泡径の関係を調査するための実験装置のイメージを示す図である。
【図3】平均気孔径と気泡径の関係を示す図である。
【図4】通気試験(背圧変化調査等)の実験装置のイメージを示す図である。
【図5】通気試験中の背圧の変化のイメージを示す図である。
【図6】耐熱衝撃性の実験装置のイメージを示す図である。
【図7】耐摩耗性の試験の、リング状に加工した耐火物試料(厚み10mm、縦方向長さ100mm)を、実操業で使用する浸漬ノズル内孔上部に設置したイメージを示す。
【図8】通気性の耐火物を内孔に設置した浸漬ノズルのイメージ図である。
【図9】通気を伴う操業中の背圧の変化のイメージを示す図である。
【図10】通気性耐火物のマトリクス部の炭素組織の形態の例を示す拡大写真である。
【図11】通気性耐火物の鋳造にて使用後の,シリカ消失後に生じた空隙の形態の例を示す拡大写真である。
【図12】熱処理前の粒子周囲のマトリクス部炭素層に各種粒度のシリカ粒子が存在した場合のイメージを示す図である。
【図13】熱処理前の粒子周囲のマトリクス部炭素層とSiCの混在層に各種粒度のシリカの空隙が分散した形態のイメージを示す図である。円形はSiCシェルに囲まれた空間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明の通気性耐火物は、以下の工程により製造できる。
(1)通気性耐火物坏土、母材であるAG坏土、パウダーライン部を構成するZG坏土を混練する工程
(2)通気性耐火物坏土の成形体の外周に、800℃以下の温度で消失する有機物層を配置する工程
(3)前記有機物層の外周及びその他の部位に、AG坏土、ZG坏土を充填し、静圧成形する工程
(4)得られた成形体を800℃以上1200℃以下の温度で還元焼成することにより、前記有機物層の部分に中空室を形成する工程
【0078】
工程(1)の混練は、1μm以下のSiO2粒子がマトリクス中に分散する混練機であれば、混練機種の制約は不要である。製品の結合機能を果たす炭素質の添加材(以下「バインダー」ともいう。)としては、フェノール樹脂、タール、ピッチ、フラン樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができるが、残炭率が高い点から考えると、フェノール樹脂、ピッチが望ましい。 また、混練に使用するバインダーに1μm以下のSiO2粒子を事前分散処理をすることが好ましい。
【0079】
工程(2)で配置する有機物層は、パラフィン等のワックス、紙、プラスチック等により形成できる。
【0080】
工程(3)の成形方法は,鋳造用ノズルの成形に一般的に使用されているCIP(cold isostatic press)を使用することができる。
【0081】
工程(4)を800℃以上1200℃以下の還元焼成温度とする目的は、混練に使用するバインダーを完全に炭化させるとともに、1μm以下のSiO2粒子とカーボンの反応を起こさせないようにするためである。
【0082】
通気量の大小等の通気機能に関する基本的な特性は,個別の操業条件に応じて設定すべき事項である。この調整ははい土の原料粒度構成,成形圧力等を最適化する等により行うことができる。
【実施例】
【0083】
上記工程によって得た本願発明の通気性耐火物の特性を以下の実施例によって確認した。
【0084】
[実施例A]
本発明の第1の目的である気泡の大きさ(径)の拡大抑制ないし防止に関して、まず、耐火物の平均気孔径と気泡径の関係を水モデルにより調査し、実操業の知見と対照して,平均気孔径の目標値を設定した。
【0085】
この平均気孔径と気泡径の関係を調査する実験装置のイメージを図2に示す。同図は、φ30−φ10×L100の底付き円筒状試料1に対し、エアタンク2から通気量・背圧測定装置3を経て、1.0l/minの圧縮空気4を流す装置である。
【0086】
この装置を使用して、底付き円筒状試料1に対し、1.0l/minの圧縮空気4を流した際の水中の気泡径を測定した。その後、気泡径の測定が終了した試料を切断、加工し、平均気孔径を測定した。
【0087】
なお,本実施例Aでの底付き円筒状試料は,1500℃加熱後,後記熱間通気特性試験後のものである。平均気孔径は,JIS R 1655 水銀圧入法による成形体気孔径分布の測定方法により求めることができる。
【0088】
この結果を図3に示す。この図3は,加熱後(熱間通気特性評価後)の通気性耐火物の気孔径と水中バブル径の関係をグラフ化したものである。
【0089】
この実験における気泡径が約1.2mm以上になると、鋼(鋳片)の気泡系欠陥が発生しやすいことを本発明者らは経験的に知見している。そこで、本発明では、気泡径が約1.2mm未満になる耐火物の気孔径、すなわち、約1.8μm以下を目標とした。
【0090】
[実施例B]
実施例Bでは耐火物内のSiO2(溶融シリカ)粒子の大きさが受熱(1500℃還元雰囲気下)後の平均気孔径の大きさ,耐火物の受熱前後の気孔径の変化,通気特性(背圧)の変化等に及ぼす影響を調査した。
【0091】
供したシリカ(SiO2粒子)の粒度と成分を表1に示す。この表1に示すかく各シリカ原料は非晶質である。A〜Cが従来技術の耐火物に適用されるシリカ,D,Eが本発明の耐火物に適用するシリカである。
【0092】
これらのシリカを配合した各供試料の内容と測定等の結果を表2に示す。
【0093】
平均気孔径について,従来技術のシリカを使用した比較例1から比較例3はいずれも1.8μmを越えている。これに対して実施例1〜実施例3はいずれも1.8μmを下まわっており,前述の目標を達成できている。
【0094】
試料の加熱(1500℃還元雰囲気下)前後の変化の程度の調査の結果,比較例1から比較例3はいずれも大きなプラスの値を示しており,このことは気孔径の拡大と大きな気孔の割合が増大したことを示している。
【0095】
これに対し実施例ではいずれもマイナスの値を示した。このようにマイナス値になることは、耐火物の平均気孔径が小さくなったこと、すなわち気泡径は拡大しないことを示す。これはシリカが存在していた部分のSiCシェルの中心に生じた空間が気孔になるものの,この新たに生じた気孔の大きさが,当初から存在していた耐火物の気孔径よりも小さく,またその数も多いことから生じる数値の変化であって,少なくともこのことは、操業上の気泡径の拡大又は操業上のガスの流通に支障を及ぼすものではない。背圧等とは直結しないことは実操業での実験でも確認している。
【0096】
本実施例では通気特性の変化の調査として,すなわち操業(鋳造)中の供給ガスの背圧の低下の程度のシミュレーションとして、溶鋼中での通気における背圧の低下の程度を調べた。
【0097】
使用した実験装置のイメージを図4に示す。同図において、試料1は、誘導炉5内に配置されている。
【0098】
ここでは溶鋼への浸漬及びガスの供給開始時点を基点として、30分後及び90分後の基点に対する変化を観察した。
【0099】
この時系列の背圧の変化のイメージを図5に示す。言い換えると,この図は耐火物組織及び通気特性の変化を,操業(鋳造)の時系列での各段階において示している。
【0100】
すなわち,ガスの供給開始時点から30分後までを鋳造初期段階,30分後から90分後までをその後の鋳造段階(変化がない又は極めて少ない安定性が求められる段階),90分以後は変化がほぼなくなった段階とみなすことができる。
【0101】
この段階中,前記起点の背圧に対し,30分後の背圧変化率(図中A),90分後の背圧変化率(図中B)を評価の基準点とし,前記B/前記A(以下単に,「B/A比」ともいう。)が100を越えないこと,すなわち初期段階で耐火物組織及び通気特性の変化が完了して,それ以後は変化がないことが、本発明の効果が得られる基準とした。
【0102】
これは、耐火物組織及び通気特性の変化があっても、初期段階で止まる場合は操業における悪影響(ガスの噴出状態が不安定、気泡径の変化も大きい等)が少なく、気泡の大きさ(径)の拡大抑制ないし防止効果が得られると考えられることによる。
【0103】
このB/A比は、比較例1から比較例3はいずれも100を大きく越える値を示しており,このことは鋳造初期段階だけでは耐火物の組織変化及び通気特性変化が完了できないことを示している。
【0104】
これに対して実施例1〜実施例3はいずれも100となっており,鋳造初期段階だけで耐火物の組織変化及び通気特性変化が完了していることを示している。
【0105】
本実施例においては、耐熱衝撃性,耐摩耗性についても実験によって評価した。
【0106】
耐熱衝撃性については、耐火物試料を直接加熱及び急冷する耐熱衝撃性実験によって評価した。
【0107】
具体的には、φ100−φ40×L80の底付き円筒状試料を図6に示す誘導炉内の1550℃の溶鋼に浸漬し、その後30min加熱後、試料外表面温度が1200℃になるまで冷却した段階で、外周から水冷した。この供試料の割れ(亀裂に止まるものを含む)の発生状態を観察し、割れ有無により評価を行った。
【0108】
この評価方法は、操業(鋳造)における通気性耐火物の予熱後受鋼時の耐熱衝撃性評価と,通気性耐火物が操業中に品質特性が変化した段階の耐熱衝撃性評価の両方を含む。
【0109】
この耐熱衝撃性の試験に併せて、供試料の熱処理後の曲げ強さS(MPa)、弾性率E(GPa)、熱膨張(at1000℃)α(%)を測定し、耐熱衝撃性の指標としてS/( E ・α)を調べ,参考として表示した。
【0110】
耐摩耗性については、図7に示すように、厚み10mm、縦方向長さ100mmのリング状に加工した耐火物試料1を、実操業で使用する浸漬ノズル10の内孔11上部に設置し、約200分の鋳造に供した後の試料の摩耗量を調べた。なお、12は、溶鋼の吐出孔であり、13は、モールドパウダーとの接触部分に配置された高耐食性耐火物を示す。
【0111】
これらの結果も表2に示す。
実施例1〜実施例3は耐熱衝撃性,耐摩耗性いずれも良好な結果を示している。
なお,比較例1〜比較例3はこれら試験は実施していない(平均気孔径が目標値に達していないから。以下の平均気孔径が目標値に達していない例についても同様。)。
【0112】
[実施例C]
実施例Cは,1μm以下のシリカの含有量の影響を調査した実験例である。
本実施例の試験設備・方法は実施例Bと同様である。
【0113】
表3にこの結果を示す。
1μm以下のシリカの含有量が1質量%である比較例4は耐熱衝撃性試験で割れが発生した。また1μm以下のシリカの含有量が13質量%である比較例5についても耐熱衝撃性試験で割れが発生した。前者は1μm以下のシリカの含有量が少ないことから急熱時の熱膨張等により破壊しやすかったこと,後者は長時間加熱後の空隙の増大及び粒子周囲の薄肉のマトリクス炭素組織の分断・脆弱化等が生じたことが原因と考えられる。
【0114】
これに対し,1μm以下のシリカの含有量が2質量%〜12質量%の実施例4〜実施例7はいずれの試験結果も良好であった。
【0115】
[実施例D]
実施例Dは、前記SiO2/炭素比の影響を調査した実験結果である。
本実施例の試験設備・方法は実施例Bと同様である。
【0116】
表4にこの結果を示す。
SiO2/炭素比が0.5以上2.0以下の範囲にある実施例9〜11では、気孔径変化、背圧変化、耐熱衝撃性、耐摩耗性いずれも良好な結果となっている。
【0117】
SiO2/炭素比が0.4である比較例6は,気孔径変化、背圧変化、耐熱衝撃性はいずれも良好な結果となっているが,耐摩耗性が実施例9〜11に比較してやや劣る結果となった。
【0118】
1μm以下のシリカの含有量が13質量%でSiO2/炭素比が2.2である比較例7は,平均気孔径が目標値に至らず,また背圧変化の程度も大きいうえ,耐熱衝撃性試験で割れた。これは,SiO2が未反応のままSiCシェルを形成することなく気化するものが多く存在し,相対的に大きい気孔が増大し,また組織が脆弱したことが原因と考えられる。またSiO2/炭素比が2.0を越えると、初期以降の背圧が大きく低下する傾向となっている。これは過剰なSiO2が骨材としての黒鉛粒と反応し、黒鉛が消失する等による耐火物組織の脆弱化等によると考えられる。
【0119】
[実施例E]
実施例Eは,耐火物の中に当初から金属(Si),SiC、B4C、及びSi3N4が存在する場合、すなわち耐火物の原料としてこれらを含有させた場合の影響を調査した実験結果である。
【0120】
この実施例においても各実験設備及び方法は,実施例Bと同様である。
【0121】
各供試料の内容と測定等の結果を表5に示す。
これらの量はそれぞれの単独又は合計で5質量%以下であれば気孔径変化、背圧変化、耐熱衝撃性、耐摩耗性いずれも良好な結果となっている。しかし、いずれも5質量%を越えると、耐摩耗性や耐熱衝撃性の低下が見られる。
【0122】
これらは、SiCの場合は組織の脆弱化、金属(Si)、B4C、Si3N4の場合は過度に高弾性率化等を招来して、通気性耐火物としての物性のバランスを壊したことが原因と考えられる。
【0123】
[実施例F]
実施例Fは,耐火物の主たる骨格部分である酸化物の例として,Al2O3成分としてコランダム,Al2O3とSiO2成分としてムライトを使用した場合,及び,前記酸化物を使用した系においてフリーの炭素の量の影響を調査した実験結果である。
各供試料の内容と測定等の結果を表6に示す。
【0124】
Al2O3成分としてコランダム,Al2O3とSiO2成分としてムライトを使用した場合のいずれも,フリーの炭素の量が15質量%以上30質量%の実施例19〜実施例23ではいずれの結果も良好である。
【0125】
これに対し、フリーの炭素の量が15%を下回り、酸化物粒子が83質量%を越えた比較例12,14やフリーの炭素の量のみが15%を下回った比較例13では、耐熱衝撃性の低下が顕著になっている。フリーの炭素の量が30質量%を超え、酸化物粒子が53質量%を下回る比較例15では、耐摩耗性が低下する傾向となっている。以上、フリーの炭素及び主たる酸化物骨材粒子の量によっては、通気性耐火物としての物性のバランスを壊したことによると考えられる。
【0126】
[実施例G]
実施例Gは,従来技術,及び本発明の耐火物を適用した浸漬ノズルを実操業に供した結果を示す。
耐火物試料は,SiO2としてシリカAを使用した従来技術の耐火物を適用した比較例16、SiO2を含まない従来技術の耐火物を適用した比較例17,及び本発明の実施例24とした。
【0127】
供試浸漬ノズルのイメージを図8に示す。なお、11は内孔を、12は溶鋼の吐出孔を、13は、モールドパウダーとの接触部分に配置された高耐食性耐火物を示す。さらに、14はアルゴンガス導入口を、15はガスプールを示す。そして、供試用の通気性耐火物16は、内孔内面のほぼ全長にわたって配置されている。
【0128】
また、図9は鋳造時間の経過にともなう吹き込みアルゴンガスの背圧の変化を示す。なお、背圧低下率については鋳造開始50分後(C)、200分後(D)の値を調査した。
【0129】
各供試料の耐火物の内容と測定等の結果を表7に示す。
【0130】
この結果、実施例25では、D/Cが100すなわち変化せず、この点の改善効果が大きく、また耐摩耗性も良好であることがわかる。
【0131】
これに対し、比較例14はD/Cが極めて大きく、すなわち気泡径の変化とそれによる操業時の安定性に大きな問題があることがわかる。
【0132】
比較例15はD/Cが100すなわち変化せず、この点の改善効果が大きいことがわかる。しかし、摩耗による内孔の損傷が著しい。この実験では鋳造末期での背圧の変化は小さかったが、薄肉化の影響が出ると考えられるような、さらなる長時間の使用には安定的な背圧を保つことができないと考えられる。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
【符号の説明】
【0140】
1 底付き円筒状試料 2 エアタンク 3 通気量・背圧測定装置
4 圧縮空気 10 浸漬ノズル 11 内孔 12 溶鋼の吐出孔 13 高耐食性耐火物 14 不活性ガス導入口 15 ガスプール
16 通気性耐火物
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造において溶鋼を容器から排出するためのノズルに使用する通気性耐火物およびその通気性耐火物を使用した連続鋳造用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼を連続鋳造する際、溶鋼清浄化やノズル内孔面へのアルミナ等の非金属介在物の付着抑制などのために、ノズルから溶鋼中に不活性ガスを吹込む方法が多く行われている。
【0003】
このような溶鋼中に不活性ガスを吹込む機能を備えたノズルは、その内孔部の溶鋼と接する面の一部又は全部に通気性耐火物を配置し、その外周側にガスの流通の経路及びガス圧力の均一化等を目的とする中空室(本発明ではガスプールともいう。)を設けた構造とし、その中空室にガスを供給し、通気性耐火物を介して溶鋼中に不活性ガスを吹込む方法が多く採用されている。
【0004】
しかし、連続鋳造の操業においては、通鋼開始時から時間経過と共にガスの気泡径が拡大する現象が見られる。このようなガスの気泡径の拡大は、アルミナ等の非金属介在物の付着抑制効果が小さくなることによるノズル内孔閉塞や気泡系欠陥、非金属介在物の混入等の鋼の品質低下を来たし、また、モールドに注湯するための浸漬ノズルの場合には、モールドにおける溶鋼面の不規則な変動や乱れが大きくなって、ブレークアウト等の操業上の危険性を増大することもある。
【0005】
このような現象は、通気性耐火物の成分、とくにシリカに起因することが多い。
【0006】
通気性耐火物は、一般的に、アルミナやその化合物を主とする耐火性の骨材粒、炭素および非晶質シリカ(溶融シリカ)骨材粒等から構成されている。この非晶質シリカ骨材粒はその熱膨張性が極めて小さいことから採用されており、通気性耐火物にとって不可欠の耐熱衝撃性を確保する機能を担っている。
【0007】
しかし、この非晶質シリカ骨材粒は、操業中に揮発消失して通気性耐火物組織中に空隙を生じさせる。また、この非晶質シリカ骨材粒は耐火物の耐熱衝撃性の効果を高めるために相対的に大きい粒子サイズで使用されることが多く、この消失後に生じる通気性耐火物中の空隙も大きくなる。このように大きな空隙が通気性耐火物組織中に多く分布すると、通気性耐火物を通過してその内孔面から吹き出す気泡径も大きくなる。また、このような現象にともなってガスの背圧低下も多く観られる。
【0008】
この対策として、シリカが少ないか含まない通気性耐火物に関する多くの特許文献がある。
【0009】
例えば特許文献1には、「鋼の連続鋳造用アルミナグラファイト浸漬ノズルにおいて、ガス吹き込み部にあたる内孔体のSiO2含有率を5wt%以下にし、且つ少なくとも吐出孔を含む内孔体より下部の内壁面を、Na2O 含有率が1〜10wt%、SiO2含有率が5wt%以下の耐火物で構成した連続鋳造用浸漬ノズル」が提案されており、そのノズルの使用により、気泡系欠陥発生率が低減したとされている。
【0010】
しかし、SiO2含有率を5wt%以下に低減した通気性耐火物からなる内孔体では、この特許文献1の発明者自らがその後の特許文献2に記載しているように、「浸漬ノズルに不可欠な耐スポーリング性が得られない」ことに加え、溶鋼に対する耐摩耗性が著しく弱くなる欠点があることを本願の発明者らは確認した。
【0011】
このような欠点により、結果として、熱衝撃によって破壊した通気性耐火物の貫通亀裂からガスが集中的に漏れ出したり、操業中に通気性耐火物の局部ないしは広範囲な損傷を来たし、通気性耐火物の肉薄化やガスプールと内孔の貫通等をも惹き起こして、操業中の通気性の安定的な確保が却って損なわれることがある。その際、漏れ出すガス量や気泡径の管理は不可能である。
【0012】
また特許文献2には、「ガス吹き込み型アルミナ黒鉛質連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、シリカを5〜12wt%含有し、且つシリカの粒径が50μm以下である組成によりガス吹き込み部である内孔体を形成したことを特徴とする連続鋳造用ノズル」が提案されており、このノズルを使用することで、微細な気泡を安定して吹き込むことができるとされている。なお、この50μm以下の詳細な粒度構成等は述べられていないが、具体例として、0.02mm、0.04mm、0.05mmが示されている。
【0013】
しかし、本願発明者の知見によれば、50μm以下、具体的には、0.02mm、0.04mm、0.05mmのシリカを5〜12wt%含有させても、気泡径の拡大は十分には抑制できないことがわかった。さらには、溶鋼に対する耐摩耗性が依然十分には改善できないこともわかった。
【0014】
一方,非晶質の(溶融)シリカを通気性耐火物から除去する,又は大幅に減ずると,耐火物の耐熱衝撃性が低下するのみではなく,さらに耐摩耗性が著しく損なわれる傾向が現れることを本発明者らは見出した。
【0015】
このように,通気性耐火物に関して,通気性耐火物の耐熱衝撃性,耐摩耗性の低下を抑制すると共に,吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を防止する手段は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−179056号公報
【特許文献2】特開平4−270040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、耐熱衝撃性及び溶鋼に対する耐摩耗性を低下させることなく、通気性耐火物から吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の通気性耐火物は、フリーの炭素(「フリーの炭素」とは化合物以外の炭素をいう。)を15質量%以上30質量%以下、1μm以下の粒子のSiO2を2質量%以上12質量%未満、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物が53質量%以上83質量%以下(製造上不可避の不純物を含む)であって、前記の1μm以下の粒子状のSiO2は,当該耐火物のマトリクスの炭素組織の中に分散して存在していることを基本的な特徴とする。
【0019】
本発明における連続鋳造用ノズルとは、連続鋳造の操業における取鍋、タンディッシュ等の溶鋼容器から溶鋼を排出するために使用されるノズル全般をいう。
【0020】
また、本発明において「通気性耐火物」とは、当該耐火物の組織中にガスを通過させて当該耐火物の内面からガスを吹き出させるための耐火物を意味し、さらに、この「通気性耐火物」を単に「耐火物」と称することもある。
【0021】
さらに、この「通気性」の程度は、目的とする操業での必要に応じた設計事項であり、絶対値として定義することには馴染まない。しかし,通気性を評価する基本的な特性の一つとして,また相対的な指標として,用いることができる。
【0022】
本発明においては、円筒状の試料の内側に圧縮空気を流通させた際の通気率が概ね0.5Nl・cm/(min・MPa・cm2)以上である耐火物をいう。また概ね0.5Nl・cm/(min・MPa・cm2)以上という値は、一般的な鋳造用ノズルにおける通気性耐火物として使用可能な水準である。
【0023】
この通気率は,次に例示する方法で測定することができる。 すなわち、耐火物を円筒状試料(φ80−φ60×L50)とし、図1に示す
【0024】
イメージの実験装置において、試料上下をゴムパッキンを用いて挟み込み、試料の内側へ圧縮空気を流す。
【0025】
そして,この通気率は次の式により求めることができる。
【0026】
【0027】
ここで,それぞれの記号は以下のことを意味する。
K : 通気率 (Nl・cm/(min・MPa・cm2))
V : 内孔通気量 (Nl/min)
ri : 試料の内半径 (cm)
ro : 試料の外半径 (cm)
H : 試料の高さ (cm)
ΔP : 背圧 (MPa)
【0028】
本発明の通気性耐火物は、とくに、連続鋳造用ノズルの内孔の少なくとも一部に配設したことによって効果を発揮する。
【0029】
なお,この配設の位置,範囲も個別の操業条件や目的(例えば,溶鋼内へのガスの分散のみではなく付着防止も兼ねるか否か等)に応じて最適化すべき事項である。
【0030】
本発明で「フリーの炭素」とは、例えば珪素や硼素等との炭化物のように、他の元素との化合物を形成した炭素を除いた炭素をいう。この「フリーの炭素」には、結晶質である黒鉛粒、非晶質であって、耐火物組織のマトリクスを構成する骨材粒子間を結合する連続的な組織(本発明ではマトリクス炭素という)及びカーボンブラックを含む。
【0031】
前述の通り,非晶質のシリカを通気性耐火物から除去することは,又は大幅に減ずると,耐火物の耐熱衝撃性が低下するのみではなく,さらに耐摩耗性が著しく損なわれることから,本発明の耐火物は,非晶質のシリカを含ませる。
【0032】
しかし前述の背景技術に示されているように非晶質のシリカを最小でも20μm程度(20μmないし1μmを越える大きさ)の大きさにしても,吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大は進行する。
【0033】
このような,操業中の長時間に亘って気泡径が拡大し続けることは,鋳片の品質に悪影響を及ぼす要素を不安定化する(例えば湯面変動による介在物の巻き込み増大,ガスの不均一な溶鋼中への分散による介在物の捕捉の不良増大等)。そのため,鋳造初期の短時間にガス流出の状態が変動するような耐火物の物性変化が生じても,その後の鋳造時間ではガス流出の状態を安定させることが求められる。
【0034】
また,このような粒子サイズの非晶質のシリカを用いた場合は,耐摩耗性の低下を十分に抑制することができない。この原因は,通気性耐火物の結合組織と関係があることを本発明者らは見出した。
【0035】
通気性耐火物の結合構造に寄与しているマトリクス部の骨材粒子周囲の炭素質組織は,厚みの大小があるものの,最小厚みは約2μmであって,かつ多くの粒子の周辺はほぼこの程度の厚みの結合組織に覆われている。(図10参照)
【0036】
このような皮膜状に構成された結合組織が3次元的に配置されて耐火物の強度,耐摩耗性等を発現している。したがって,この皮膜状結合組織を破壊することは,耐火物の強度,耐摩耗性を損なうことになる。
【0037】
一方,この皮膜状に構成された結合組織を強化することで,通気性耐火物の耐摩耗性を向上させることができる。
【0038】
従来技術のように,最小でも20μm程度の大きさの非晶質シリカを耐火物のマトリクスに含ませると,その消失に伴ってこのような炭素質の結合組織を分断し,またその粒子サイズに近い空隙が多く存在した,脆弱な結合組織になってしまう。
【0039】
これに対し,本発明の耐火物は,操業前、すなわち、溶鋼通過に供する前の状態の耐火物の組織中において、非晶質のシリカを1μm以下のSiO2粒子として、マトリクス部を構成する炭素組織内に分散させた状態とする。(図12参照)
【0040】
1μm以下の粒子としてのSiO2であれば、多くの粒子の周辺に存在する最小厚み約2μmの炭素結合組織を分断させることがない。すなわち概ね皮膜状炭素組織の厚みの約1/2程度のSiO2粒子径であれば,被膜の破壊や著しい脆弱化を抑制することができる。
【0041】
また耐火物組織の広い範囲に分散させることが可能となり,耐火物の均質性を増すことにも寄与する。
【0042】
マトリクス部の炭素の中に分散した状態の1μm以下の粒子としてのSiO2は,予熱または溶鋼の通鋼等により(約1200℃を越える高温度で)、次の式1、2に示す反応を生じて、SiCを生成する。
【0043】
なお,これらの反応は不活性ガスを通過させることによって加速される。
【0044】
C+SiO2=CO(g)+SiO(g) ……… 式2
SiO(g)+2C=CO(g)+SiC ……… 式3
3C+SiO2=2CO(g)+SiC ……… 式4
【0045】
その結果、SiO2の存在した部分は空隙となり、その周囲にSiCを生成する。生成したシリカの空隙は、従来の0.2mm程度の大きさの骨材として添加した溶融シリカが揮発して生じた空隙に比較して極めて微細(1μmより小さい)であり、しかもマトリクス炭素の組織中に存在するので粗大化することがない。
【0046】
また通気性耐火物の気孔径は1μmより大きいので,これら反応による耐火物の気孔径の拡大は生じない。
【0047】
このため,溶鋼中に放出されるガスの大きさ、すなわち、気泡径を、極めて小さくすることができる、その気泡の大きさを操業の間維持することが可能となる。
【0048】
しかも,1μm以下の粒子としてのSiO2は、その径が小さいことで反応性が極めて高くなり(半径に対し累乗比例)、かつ周囲を炭素で囲まれた状態なので炭素との接触面積が極めて大きく,炭素との反応性がいっそう高くなる。
【0049】
このため,操業初期(受鋼後短時間)において,1μmよりも小さい微細な空間を中央に有する,SiC質のシェルを形成する。(組織変化が鋳造開始後の初期に完結する。図13参照)
【0050】
このSiCは耐摩耗性に優れるので,粒子の周辺に存在する炭素結合組織自体の耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0051】
このような理由から、本発明の耐火物に存在させるSiO2のサイズを皮膜状炭素組織の厚み約2μmの1/2である1μm以下とする。
【0052】
それによる上述の作用により,本発明の通気性耐火物は,耐熱衝撃性,耐摩耗性の低下を抑制すると共に,吹き出すガスの操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を防止することができ,しかも操業の間これらの性状を劣化させることなくほぼ維持することができる。
【0053】
なお,上述の通り1μm以下の粒子としてのSiO2をマトリクスの炭素の中に分散させた状態とする本発明の通気性耐火物は,SiO2のSiC化等の反応速度が大きいので,これに伴う組織変化及び通気特性の変化(通気量,背圧)が鋳造開始後の初期段階で完結する。
【0054】
したがって,鋳造開始から他の要素も含めた操業安定化までの短時間内に,ガスの流通、気泡径の安定した状態を得ることができる。これらの効果は、本発明における非晶質シリカよりも大きいサイズの非晶質シリカを使用した従来技術の耐火物,SiCを予め原料粒子として存在させた耐火物等では得られない。
【0055】
また、製造段階すなわち操業に供する製品の状態でSiO2をSiC化させておくと、耐火物組織は高弾性率化し,またSiCは非晶質のSiO2よりも熱膨張が大きいので耐火物の高熱膨張化を招く。その結果,そのような耐火物は鋳造開始時の熱衝撃によって破壊しやすくなる。
【0056】
したがって,本発明の通気性耐火物は、このような耐熱衝撃性が低下することを避けるため、操業(鋳造)に供する前の製品段階ではこのような反応によるSiCが形成した構造にはせず,鋳造開始後の初期に段階で上記反応及び組織変化が生じる構造とする。
【0057】
また,後述するように,非晶質のSiO2よりも熱膨張が大きいSiCを,耐火物の酸化防止の目的等で予め原料粒子として耐火物中に添加する場合には,5質量%以下程度に止めることが好ましい。
【0058】
さらに、本発明では、前記フリーの炭素のうち0.05mm以上の粒子状のものを除く残部(すなわち、骨材としての黒鉛粒を除くマトリクス部の炭素をいう。)の炭素成分に対するSiO2の質量比(以下,単に「SiO2/炭素比」ともいう。)が0.5以上2.0以下の範囲にあることが好ましい。
【0059】
前述の通り、1μm以下の粒子としてのSiO2は、前記マトリクス部の炭素との間で反応する。したがって、これら1μm以下の粒子としてのSiO2とマトリクス部の炭素との割合が、SiC化の程度に影響を及ぼす。
【0060】
このSiO2/炭素比が0.5未満の場合、本発明の課題を解決するだけのSiO2による耐熱衝撃性及び通気特性は得られるものの,マトリクス組織内に存在するSiCが少なくなる。そのため、十分な耐摩耗性が得られにくい。このSiO2/炭素比が2.0を越える場合、SiO2のSiC化等の反応が鋳造開始初期段階だけでは完了しきれずに,その後の安定すべき鋳造段階においても組織変化及び通気特性の変化(気泡径の拡大,背圧低下等)が継続して,鋳造安定化の効果を得にくい。またこの場合はSiO2の量によっては通気性が過大になったり耐火物組織の脆弱化等をも生じやすい。
【0061】
なお、1μm以下の粒子としてのSiO2は、より高い耐摩耗性,耐熱衝撃性を得るため、より速い反応を得る等のためには,できるだけ微細であることが好ましい。
【0062】
0.05mm以上の粒子状のものを除く残部、すなわち骨材としての黒鉛粒とマトリクス部の炭素とを識別するには、350℃以上450℃程度以下の酸化雰囲気中で、供試耐火物を熱処理し、その熱処理後の耐火物を0.05mmの隙間を有する篩で分級し、0.05mm越の残部を本発明でいう「0.05mm以上の粒子状」の炭素とみなすことができる。
【0063】
本発明の1μm以下の粒子としてのSiO2をマトリクスの炭素の中に分散させた状態を確認するには、高温下に熱処理する前の通気性耐火物の破断面の組織を観察すればよい。
【0064】
残部の酸化物骨材粒子は、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物をいう。この残部の酸化物骨材粒子は、本発明の通気性耐火物の骨格を成す主要な構成物である。
【0065】
Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物(製造上不可避の不純物を含む)は、本発明の通気性耐火物の骨格を成す主要な構成物である。
【0066】
このような骨格を成す主要な構成物としては、前述のSiO2、炭素の構成割合を前提にすると、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物が好適である。
【0067】
Al2O3成分からなる鉱物とは、コランダム質(αアルミナ)、Al2O3とSiO2成分からなる鉱物とは、シリマナイト属をいい、膨脹性を含む熱的な安定性の点でムライトが好適である。この理由は、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物は、連続鋳造に必要とされる程度の優れた耐摩耗性及び耐食性及び耐熱衝撃性を備えているからである。ここでAl2O3またはAl2O3とSiO2成分からなる鉱物とするのは、溶鋼温度(約1500℃〜1550℃付近)までの熱膨張特性がコランダムに近く、かつその熱膨張率がコランダムより小さいことを意味する。但し,カイヤナイトは熱膨張性が大きいこと、カオリナイト等の粘土鉱物はクリストバライトを生成して,通気特性等に悪影響を及ぼすことから,これらは除外する。
【0068】
前述のAl2O3またはAl2O3とSiO2成分からなる鉱物である酸化物骨材粒子が、53質量%未満の場合は、他に添加するカーボン、SiO2、炭化物又は金属を相対的に多量に含有することになる。そうすると、耐摩耗性や熱間通気特性の低下を招来する。
【0069】
前記の酸化物骨材粒子が、83質量%を越える場合は、熱膨張が大きくなって耐熱衝撃性を保持することが困難となる。
【0070】
なお、本発明の耐火物には,上記成分以外に製造上不可避の不純物を含むことがある。
【0071】
また本発明の耐火物には,上記以外の他の構成物として、金属及び,酸化物を除く化合物の何れか1以上を合計で1質量%以上5質量%以下を含むことができる。
【0072】
この金属及び酸化物を除く化合物は、シリコン、アルミニウムなどの金属、炭化珪素、炭化硼素、窒化珪素、窒化硼素、硼化ジルコニウム、窒化アルミニウムなどの何れか1種又は複数であるが、これは使用前の浸漬ノズル予熱時及び使用中の通気性耐火物の酸化防止機能を高めることに寄与する。
【0073】
しかし、これら金属及び酸化物を除く化合物は本発明において必須ではない。これらの何れかが5質量%を越えると、耐火物組織の初期強度を確保することが困難になりやすくなったり、耐火物組織の初期強度が高くなり過ぎて、いずれの場合にも耐熱衝撃性の低下等を招来しやすい。
【発明の効果】
【0074】
本発明により、
1.通気性耐火物から吹き出す操業中の時間経過に伴う気泡径の拡大を抑制することができる。
2.耐熱衝撃性が確保でき,鋳造開始時の耐火物及び本発明の耐火物を使用したノズルの破壊や鋳造トラブルを避けることができる。
3.溶鋼に対する耐摩耗性が向上〜確保できる。これにより,通気性耐火物の摩耗による薄肉化〜ガスの局部からの集中的な噴き出し及び気泡径拡大を抑制することができ,さらには本発明の耐火物を使用したノズルの破壊や鋳造トラブルを避けることができる。
【0075】
これら効果により,ひいては、鋳造操業の安定化することができ,鋳片の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明で用いた通気性耐火物の通気率を測定するための実験装置のイメージを示す図である。
【図2】本発明で用いた平均気孔径と気泡径の関係を調査するための実験装置のイメージを示す図である。
【図3】平均気孔径と気泡径の関係を示す図である。
【図4】通気試験(背圧変化調査等)の実験装置のイメージを示す図である。
【図5】通気試験中の背圧の変化のイメージを示す図である。
【図6】耐熱衝撃性の実験装置のイメージを示す図である。
【図7】耐摩耗性の試験の、リング状に加工した耐火物試料(厚み10mm、縦方向長さ100mm)を、実操業で使用する浸漬ノズル内孔上部に設置したイメージを示す。
【図8】通気性の耐火物を内孔に設置した浸漬ノズルのイメージ図である。
【図9】通気を伴う操業中の背圧の変化のイメージを示す図である。
【図10】通気性耐火物のマトリクス部の炭素組織の形態の例を示す拡大写真である。
【図11】通気性耐火物の鋳造にて使用後の,シリカ消失後に生じた空隙の形態の例を示す拡大写真である。
【図12】熱処理前の粒子周囲のマトリクス部炭素層に各種粒度のシリカ粒子が存在した場合のイメージを示す図である。
【図13】熱処理前の粒子周囲のマトリクス部炭素層とSiCの混在層に各種粒度のシリカの空隙が分散した形態のイメージを示す図である。円形はSiCシェルに囲まれた空間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明の通気性耐火物は、以下の工程により製造できる。
(1)通気性耐火物坏土、母材であるAG坏土、パウダーライン部を構成するZG坏土を混練する工程
(2)通気性耐火物坏土の成形体の外周に、800℃以下の温度で消失する有機物層を配置する工程
(3)前記有機物層の外周及びその他の部位に、AG坏土、ZG坏土を充填し、静圧成形する工程
(4)得られた成形体を800℃以上1200℃以下の温度で還元焼成することにより、前記有機物層の部分に中空室を形成する工程
【0078】
工程(1)の混練は、1μm以下のSiO2粒子がマトリクス中に分散する混練機であれば、混練機種の制約は不要である。製品の結合機能を果たす炭素質の添加材(以下「バインダー」ともいう。)としては、フェノール樹脂、タール、ピッチ、フラン樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができるが、残炭率が高い点から考えると、フェノール樹脂、ピッチが望ましい。 また、混練に使用するバインダーに1μm以下のSiO2粒子を事前分散処理をすることが好ましい。
【0079】
工程(2)で配置する有機物層は、パラフィン等のワックス、紙、プラスチック等により形成できる。
【0080】
工程(3)の成形方法は,鋳造用ノズルの成形に一般的に使用されているCIP(cold isostatic press)を使用することができる。
【0081】
工程(4)を800℃以上1200℃以下の還元焼成温度とする目的は、混練に使用するバインダーを完全に炭化させるとともに、1μm以下のSiO2粒子とカーボンの反応を起こさせないようにするためである。
【0082】
通気量の大小等の通気機能に関する基本的な特性は,個別の操業条件に応じて設定すべき事項である。この調整ははい土の原料粒度構成,成形圧力等を最適化する等により行うことができる。
【実施例】
【0083】
上記工程によって得た本願発明の通気性耐火物の特性を以下の実施例によって確認した。
【0084】
[実施例A]
本発明の第1の目的である気泡の大きさ(径)の拡大抑制ないし防止に関して、まず、耐火物の平均気孔径と気泡径の関係を水モデルにより調査し、実操業の知見と対照して,平均気孔径の目標値を設定した。
【0085】
この平均気孔径と気泡径の関係を調査する実験装置のイメージを図2に示す。同図は、φ30−φ10×L100の底付き円筒状試料1に対し、エアタンク2から通気量・背圧測定装置3を経て、1.0l/minの圧縮空気4を流す装置である。
【0086】
この装置を使用して、底付き円筒状試料1に対し、1.0l/minの圧縮空気4を流した際の水中の気泡径を測定した。その後、気泡径の測定が終了した試料を切断、加工し、平均気孔径を測定した。
【0087】
なお,本実施例Aでの底付き円筒状試料は,1500℃加熱後,後記熱間通気特性試験後のものである。平均気孔径は,JIS R 1655 水銀圧入法による成形体気孔径分布の測定方法により求めることができる。
【0088】
この結果を図3に示す。この図3は,加熱後(熱間通気特性評価後)の通気性耐火物の気孔径と水中バブル径の関係をグラフ化したものである。
【0089】
この実験における気泡径が約1.2mm以上になると、鋼(鋳片)の気泡系欠陥が発生しやすいことを本発明者らは経験的に知見している。そこで、本発明では、気泡径が約1.2mm未満になる耐火物の気孔径、すなわち、約1.8μm以下を目標とした。
【0090】
[実施例B]
実施例Bでは耐火物内のSiO2(溶融シリカ)粒子の大きさが受熱(1500℃還元雰囲気下)後の平均気孔径の大きさ,耐火物の受熱前後の気孔径の変化,通気特性(背圧)の変化等に及ぼす影響を調査した。
【0091】
供したシリカ(SiO2粒子)の粒度と成分を表1に示す。この表1に示すかく各シリカ原料は非晶質である。A〜Cが従来技術の耐火物に適用されるシリカ,D,Eが本発明の耐火物に適用するシリカである。
【0092】
これらのシリカを配合した各供試料の内容と測定等の結果を表2に示す。
【0093】
平均気孔径について,従来技術のシリカを使用した比較例1から比較例3はいずれも1.8μmを越えている。これに対して実施例1〜実施例3はいずれも1.8μmを下まわっており,前述の目標を達成できている。
【0094】
試料の加熱(1500℃還元雰囲気下)前後の変化の程度の調査の結果,比較例1から比較例3はいずれも大きなプラスの値を示しており,このことは気孔径の拡大と大きな気孔の割合が増大したことを示している。
【0095】
これに対し実施例ではいずれもマイナスの値を示した。このようにマイナス値になることは、耐火物の平均気孔径が小さくなったこと、すなわち気泡径は拡大しないことを示す。これはシリカが存在していた部分のSiCシェルの中心に生じた空間が気孔になるものの,この新たに生じた気孔の大きさが,当初から存在していた耐火物の気孔径よりも小さく,またその数も多いことから生じる数値の変化であって,少なくともこのことは、操業上の気泡径の拡大又は操業上のガスの流通に支障を及ぼすものではない。背圧等とは直結しないことは実操業での実験でも確認している。
【0096】
本実施例では通気特性の変化の調査として,すなわち操業(鋳造)中の供給ガスの背圧の低下の程度のシミュレーションとして、溶鋼中での通気における背圧の低下の程度を調べた。
【0097】
使用した実験装置のイメージを図4に示す。同図において、試料1は、誘導炉5内に配置されている。
【0098】
ここでは溶鋼への浸漬及びガスの供給開始時点を基点として、30分後及び90分後の基点に対する変化を観察した。
【0099】
この時系列の背圧の変化のイメージを図5に示す。言い換えると,この図は耐火物組織及び通気特性の変化を,操業(鋳造)の時系列での各段階において示している。
【0100】
すなわち,ガスの供給開始時点から30分後までを鋳造初期段階,30分後から90分後までをその後の鋳造段階(変化がない又は極めて少ない安定性が求められる段階),90分以後は変化がほぼなくなった段階とみなすことができる。
【0101】
この段階中,前記起点の背圧に対し,30分後の背圧変化率(図中A),90分後の背圧変化率(図中B)を評価の基準点とし,前記B/前記A(以下単に,「B/A比」ともいう。)が100を越えないこと,すなわち初期段階で耐火物組織及び通気特性の変化が完了して,それ以後は変化がないことが、本発明の効果が得られる基準とした。
【0102】
これは、耐火物組織及び通気特性の変化があっても、初期段階で止まる場合は操業における悪影響(ガスの噴出状態が不安定、気泡径の変化も大きい等)が少なく、気泡の大きさ(径)の拡大抑制ないし防止効果が得られると考えられることによる。
【0103】
このB/A比は、比較例1から比較例3はいずれも100を大きく越える値を示しており,このことは鋳造初期段階だけでは耐火物の組織変化及び通気特性変化が完了できないことを示している。
【0104】
これに対して実施例1〜実施例3はいずれも100となっており,鋳造初期段階だけで耐火物の組織変化及び通気特性変化が完了していることを示している。
【0105】
本実施例においては、耐熱衝撃性,耐摩耗性についても実験によって評価した。
【0106】
耐熱衝撃性については、耐火物試料を直接加熱及び急冷する耐熱衝撃性実験によって評価した。
【0107】
具体的には、φ100−φ40×L80の底付き円筒状試料を図6に示す誘導炉内の1550℃の溶鋼に浸漬し、その後30min加熱後、試料外表面温度が1200℃になるまで冷却した段階で、外周から水冷した。この供試料の割れ(亀裂に止まるものを含む)の発生状態を観察し、割れ有無により評価を行った。
【0108】
この評価方法は、操業(鋳造)における通気性耐火物の予熱後受鋼時の耐熱衝撃性評価と,通気性耐火物が操業中に品質特性が変化した段階の耐熱衝撃性評価の両方を含む。
【0109】
この耐熱衝撃性の試験に併せて、供試料の熱処理後の曲げ強さS(MPa)、弾性率E(GPa)、熱膨張(at1000℃)α(%)を測定し、耐熱衝撃性の指標としてS/( E ・α)を調べ,参考として表示した。
【0110】
耐摩耗性については、図7に示すように、厚み10mm、縦方向長さ100mmのリング状に加工した耐火物試料1を、実操業で使用する浸漬ノズル10の内孔11上部に設置し、約200分の鋳造に供した後の試料の摩耗量を調べた。なお、12は、溶鋼の吐出孔であり、13は、モールドパウダーとの接触部分に配置された高耐食性耐火物を示す。
【0111】
これらの結果も表2に示す。
実施例1〜実施例3は耐熱衝撃性,耐摩耗性いずれも良好な結果を示している。
なお,比較例1〜比較例3はこれら試験は実施していない(平均気孔径が目標値に達していないから。以下の平均気孔径が目標値に達していない例についても同様。)。
【0112】
[実施例C]
実施例Cは,1μm以下のシリカの含有量の影響を調査した実験例である。
本実施例の試験設備・方法は実施例Bと同様である。
【0113】
表3にこの結果を示す。
1μm以下のシリカの含有量が1質量%である比較例4は耐熱衝撃性試験で割れが発生した。また1μm以下のシリカの含有量が13質量%である比較例5についても耐熱衝撃性試験で割れが発生した。前者は1μm以下のシリカの含有量が少ないことから急熱時の熱膨張等により破壊しやすかったこと,後者は長時間加熱後の空隙の増大及び粒子周囲の薄肉のマトリクス炭素組織の分断・脆弱化等が生じたことが原因と考えられる。
【0114】
これに対し,1μm以下のシリカの含有量が2質量%〜12質量%の実施例4〜実施例7はいずれの試験結果も良好であった。
【0115】
[実施例D]
実施例Dは、前記SiO2/炭素比の影響を調査した実験結果である。
本実施例の試験設備・方法は実施例Bと同様である。
【0116】
表4にこの結果を示す。
SiO2/炭素比が0.5以上2.0以下の範囲にある実施例9〜11では、気孔径変化、背圧変化、耐熱衝撃性、耐摩耗性いずれも良好な結果となっている。
【0117】
SiO2/炭素比が0.4である比較例6は,気孔径変化、背圧変化、耐熱衝撃性はいずれも良好な結果となっているが,耐摩耗性が実施例9〜11に比較してやや劣る結果となった。
【0118】
1μm以下のシリカの含有量が13質量%でSiO2/炭素比が2.2である比較例7は,平均気孔径が目標値に至らず,また背圧変化の程度も大きいうえ,耐熱衝撃性試験で割れた。これは,SiO2が未反応のままSiCシェルを形成することなく気化するものが多く存在し,相対的に大きい気孔が増大し,また組織が脆弱したことが原因と考えられる。またSiO2/炭素比が2.0を越えると、初期以降の背圧が大きく低下する傾向となっている。これは過剰なSiO2が骨材としての黒鉛粒と反応し、黒鉛が消失する等による耐火物組織の脆弱化等によると考えられる。
【0119】
[実施例E]
実施例Eは,耐火物の中に当初から金属(Si),SiC、B4C、及びSi3N4が存在する場合、すなわち耐火物の原料としてこれらを含有させた場合の影響を調査した実験結果である。
【0120】
この実施例においても各実験設備及び方法は,実施例Bと同様である。
【0121】
各供試料の内容と測定等の結果を表5に示す。
これらの量はそれぞれの単独又は合計で5質量%以下であれば気孔径変化、背圧変化、耐熱衝撃性、耐摩耗性いずれも良好な結果となっている。しかし、いずれも5質量%を越えると、耐摩耗性や耐熱衝撃性の低下が見られる。
【0122】
これらは、SiCの場合は組織の脆弱化、金属(Si)、B4C、Si3N4の場合は過度に高弾性率化等を招来して、通気性耐火物としての物性のバランスを壊したことが原因と考えられる。
【0123】
[実施例F]
実施例Fは,耐火物の主たる骨格部分である酸化物の例として,Al2O3成分としてコランダム,Al2O3とSiO2成分としてムライトを使用した場合,及び,前記酸化物を使用した系においてフリーの炭素の量の影響を調査した実験結果である。
各供試料の内容と測定等の結果を表6に示す。
【0124】
Al2O3成分としてコランダム,Al2O3とSiO2成分としてムライトを使用した場合のいずれも,フリーの炭素の量が15質量%以上30質量%の実施例19〜実施例23ではいずれの結果も良好である。
【0125】
これに対し、フリーの炭素の量が15%を下回り、酸化物粒子が83質量%を越えた比較例12,14やフリーの炭素の量のみが15%を下回った比較例13では、耐熱衝撃性の低下が顕著になっている。フリーの炭素の量が30質量%を超え、酸化物粒子が53質量%を下回る比較例15では、耐摩耗性が低下する傾向となっている。以上、フリーの炭素及び主たる酸化物骨材粒子の量によっては、通気性耐火物としての物性のバランスを壊したことによると考えられる。
【0126】
[実施例G]
実施例Gは,従来技術,及び本発明の耐火物を適用した浸漬ノズルを実操業に供した結果を示す。
耐火物試料は,SiO2としてシリカAを使用した従来技術の耐火物を適用した比較例16、SiO2を含まない従来技術の耐火物を適用した比較例17,及び本発明の実施例24とした。
【0127】
供試浸漬ノズルのイメージを図8に示す。なお、11は内孔を、12は溶鋼の吐出孔を、13は、モールドパウダーとの接触部分に配置された高耐食性耐火物を示す。さらに、14はアルゴンガス導入口を、15はガスプールを示す。そして、供試用の通気性耐火物16は、内孔内面のほぼ全長にわたって配置されている。
【0128】
また、図9は鋳造時間の経過にともなう吹き込みアルゴンガスの背圧の変化を示す。なお、背圧低下率については鋳造開始50分後(C)、200分後(D)の値を調査した。
【0129】
各供試料の耐火物の内容と測定等の結果を表7に示す。
【0130】
この結果、実施例25では、D/Cが100すなわち変化せず、この点の改善効果が大きく、また耐摩耗性も良好であることがわかる。
【0131】
これに対し、比較例14はD/Cが極めて大きく、すなわち気泡径の変化とそれによる操業時の安定性に大きな問題があることがわかる。
【0132】
比較例15はD/Cが100すなわち変化せず、この点の改善効果が大きいことがわかる。しかし、摩耗による内孔の損傷が著しい。この実験では鋳造末期での背圧の変化は小さかったが、薄肉化の影響が出ると考えられるような、さらなる長時間の使用には安定的な背圧を保つことができないと考えられる。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
【符号の説明】
【0140】
1 底付き円筒状試料 2 エアタンク 3 通気量・背圧測定装置
4 圧縮空気 10 浸漬ノズル 11 内孔 12 溶鋼の吐出孔 13 高耐食性耐火物 14 不活性ガス導入口 15 ガスプール
16 通気性耐火物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリーの炭素(「フリーの炭素」とは化合物以外の炭素をいう。)が15質量%以上30質量%以下、1μm以下の粒子のSiO2が2質量%以上12質量%未満、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物が53質量%以上83質量%以下(製造上不可避の不純物を含む)からなり、前記の1μm以下の粒子状のSiO2は,当該耐火物のマトリクスの炭素組織の中に分散して存在していることを特徴とする通気性耐火物。
【請求項2】
前記マトリクスの炭素に対する前記1μm以下の粒子のSiO2の質量比(SiO2/炭素比)が0.5以上2.0以下の範囲にある請求項1に記載の通気性耐火物。
【請求項3】
金属及び,酸化物を除く化合物の何れか1以上を,合計で1質量%以上5質量%以下を含む請求項1又は請求項2に記載の通気性耐火物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の通気性耐火物を連続鋳造用ノズルの内孔の少なくとも一部に配設した連続鋳造用ノズル。
【請求項1】
フリーの炭素(「フリーの炭素」とは化合物以外の炭素をいう。)が15質量%以上30質量%以下、1μm以下の粒子のSiO2が2質量%以上12質量%未満、Al2O3又はAl2O3とSiO2成分からなる鉱物質である酸化物が53質量%以上83質量%以下(製造上不可避の不純物を含む)からなり、前記の1μm以下の粒子状のSiO2は,当該耐火物のマトリクスの炭素組織の中に分散して存在していることを特徴とする通気性耐火物。
【請求項2】
前記マトリクスの炭素に対する前記1μm以下の粒子のSiO2の質量比(SiO2/炭素比)が0.5以上2.0以下の範囲にある請求項1に記載の通気性耐火物。
【請求項3】
金属及び,酸化物を除く化合物の何れか1以上を,合計で1質量%以上5質量%以下を含む請求項1又は請求項2に記載の通気性耐火物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の通気性耐火物を連続鋳造用ノズルの内孔の少なくとも一部に配設した連続鋳造用ノズル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−212720(P2011−212720A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83888(P2010−83888)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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