説明

通話ログ保存装置とレイヤー3ネットワーク転送装置

【課題】IPネットワーク上を流れる電話通信IPパケットの発話元の電話番号を簡単に確定でき、通話内容を記録する処理の効率アップを図る
【解決手段】IPネットワークに送信する電話通信IPパケットを生成する際に、該IPパケットにおけるIPヘッダの送信元アドレスエリアに発話元の電話番号データを埋め込む。IPネットワーク上の通話ログ保存装置は、このような電話通信IPパケットのIPヘッダの送信元アドレスから発話元の電話番号データを抽出して、抽出した電話番号データが示す電話番号毎に該電話通信IPパケット内の音声データを保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術、具体的には、IP(Internet Protocol)ネットワーク上を流れる電話通信IPパケットを発話電話毎に保存可能な通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IP(Internet Protocol)ネットワークを利用して音声通信を実現するVoIP(Voice over Internet Protocol)技術が普及しつつある。VoIPによる音声通話は、データ通信と同じIPネットワークを利用するため、PSTN(公衆交換電話網)などのアナログ通話ネットワークを利用した音声通話よりコストが低い。また、近年、ネットワーク通信機器の性能の向上およびネットワーク通信機器への電話番号の割当りにより、IPネットワークのクライアントとなる通信機器間のみならず、IPネットワーク上の通信機器とアナログ電話機間の発着信もできるようになっている。このような背景において、企業などでは、IPネットワークにより音声通信とデータ通信を一本化することが進んでいる。
【0003】
VoIPによる電話通信は、通常、SIP(Session Initiation Protocol)とRTP(Real−time Transport Protocol)の2つのプロトコルを用いる。SIPは、電話通信の開始/変更/終了を行うためのものであり、RTPは、音声データを伝送するためのものである。
【0004】
従来より、コールセンターなどでは、ユーザとの通話内容を保存することが行われている。また、企業では、従業員の電話応対内容の確認や、私用での電話使用の防止などのためにも、通話内容を記録することが行われている。これは、IPネットワークを利用した電話通信の場合にも同様に必要であり、様々な手法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、発呼側の電話機から音声パケットを着呼側の電話機に転送する際に、音声パケットを記録するシステムが開示されている。
また、特許文献2には、IPパケットを解析して、IPヘッダの後のSIPに記録されたメディア種別情報から該IPパケットが音声通信パケットであるか否かを判定すると共に、音声通信パケットである場合には音声データを抽出して記録するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−100999号公報
【特許文献2】特開2006−54651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通話内容を記録する際に、通話者を確定するために、電話番号と通話内容を対応付けて記録する手法が用いられている。ところで、IPネットワークを利用した電話通信の場合、電話番号の特定には下記の問題がある。
【0008】
VoIPによる電話通信では、通話の確立や終了などに用いられるSIPパケットには電話番号を示すデータ(以下電話番号データという)が格納されているが、実際の通話内容(音声データ)を伝送するRTPパケットには、電話番号データが格納されていない。そのため、IP電話機間の通話内容となる音声データを電話番号毎に記録するためには、IPアドレスと電話番号の対応関係を管理する装置例えばSIPサーバにその都度問い合わせる必要がある。これでは、記録処理の時間がかかる上に、ネットワークの負荷が増えるという問題が生じる。
【0009】
また、PSTNなどのアナログ通話ネットワークとIPネットワークが混在した通話システムでは、アナログ電話機とIP電話機間の通話を実現するために、アナログ通話ネットワークとIPネットワーク間の通話を中継する中継装置例えばVoIP GW(ゲートウェイ)が用いられる。このVoIP GWは、アナログ通話ネットワークとIPネットワークの境界に設けられ、アナログ通話ネットワークから受信したアナログ音声データをデジタルデータに変換し、さらにIPパケットに分割してからIPネットワークに送信する。また、IPネットワークから受信したIPパケットをアナログ音声データに復元してアナログ通話ネットワークに出力する。VoIP GWは、それ以外に、デジタル音声データの圧縮や伸張も行う。
【0010】
VoIP GWが、アナログ通話ネットワークからのアナログ音声データからIPパケットを生成する際に、デジタル音声データであるペイロードに、送信元のIPアドレスが格納されたIPヘッダなどを付加する。VoIP GWは、このIPアドレスとして、自機のIPアドレスを用いる。従って、アナログ通話ネットワークからIPネットワークに送信されたIPパケットの送信元のIPアドレスが、該IPパケットを生成したVoIP GWのIPアドレスになる。IPネットワーク側において、このIPパケットの音声データを記録する際に、発話元の電話番号を確定することができない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、IPネットワーク上を流れる電話通信IPパケットの発話元の電話番号を簡単に確定でき、通話内容を記録する処理の効率アップを図る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの態様は、通信装置である。この通信装置は、IP(Internet Protocol)ネットワークに送信する電話通信IPパケットを生成する際に、該IPパケットにおけるIPヘッダの送信元アドレスエリアに発話元の電話番号データを埋め込むIPパケット生成部を備える。
【0013】
本発明の別の態様は、通話ログ保存装置である。この通話ログ保存装置は、IPネットワーク上を流れる、IPヘッダの送信元アドレスエリアに発話元の電話番号データが埋め込まれた電話通信IPパケットのIPヘッダから、発話元の電話番号データを抽出し、抽出した電話番号データが示す電話番号毎に電話通信IPパケットに含まれる音声データを保存する。
【0014】
本発明のさらなる別の態様は、レイヤー3ネットワーク転送装置である。この転送装置は、IPネットワーク上を流れIPパケットのうちの、IPヘッダの送信元アドレスエリアに該IPパケットが電話通信IPパケットであることを示す識別子が埋め込まれたIPパケットを、IPネットワーク上の通話ログ保存装置に転送する。
なお、上記態様の各要素の組合せ、上記態様の装置をシステムや方法、プログラムとして置き換えて表現したものも、本発明の態様としては有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる技術によれば、IPネットワーク上を流れる電話通信IPパケットの発話元の電話番号を簡単に確定でき、通話内容を記録する処理の効率アップを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる技術の原理を説明するための通信装置を示す模式図である(その1)。
【図2】図1に示す通信装置が送信元アドレスを生成する処理を説明するための図である(その1)。
【図3】図1に示す通信装置が送信元アドレスを生成する処理を説明するための図である(その2)。
【図4】本発明にかかる技術の原理を説明するための通信装置を示す模式図である(その2)。
【図5】本発明の実施の形態にかかる通話システムを示す図である。
【図6】図5に示すVoIP GWを示す図である。
【図7】図6に示すVoIP GWがIPv6アドレスを生成する処理を説明するための図である。
【図8】図6に示すVoIP GWがIPv6アドレスを生成することに関連する処理を示すフローチャートである。
【図9】図6に示すVoIP GWがアナログ電話機からの音声データをIPパケットに変換して送信することに関連する処理を示すフローチャートである。
【図10】図5に示す通話システムにおける通話ログ保存サーバがIPヘッダから電話番号を抽出する処理を説明するための図である。
【図11】他のIPv6アドレスの態様を示す図である。
【図12】図11に示すIPv6アドレスから電話番号を抽出する処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の具体的な実施の形態を説明する前に、まず、本発明の原理を説明する。なお、以下の説明に用いられる図面に、様々な処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリに記録された、またはロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。また、分かりやすいように、これらの図面において、本発明の技術を説明するために必要なもののみを示す。
【0018】
図1は、本発明にかかる技術による通信装置10を示す。この通信装置10は、IPネットワーク15のクライアントとしてIPネットワーク15に接続し、IPパケット生成部11を備える。
【0019】
通信装置10は、例えばIP電話機であり、音声データをIPパケットに変換してIPネットワーク15に送出することにより音声通信を実現する。IPパケット生成部11は、音声データをIPパケットに変換するものであり、この変換に際して、IPパケットのIPヘッダの送信元アドレスエリアに、通信装置10の電話番号データを埋め込む。ここで、例として、IPv6に準拠したIPパケット生成部11が作成したIPパケットのヘッダにおける送信元アドレスのフォーマットを示す。
【0020】
IPv6では、ネットワークアドレスが128ビットで表される。前半の64ビットはネットワーク・プレフィックス(以下PrefixIDという)と呼ばれ、後半の64ビットはインタフェースID(以下IFIDという)と呼ばれる。図2に示すように、IPパケット生成部11は、IPヘッダにおける送信元アドレスエリア、より具体的にはIFIDエリアに通信装置10の電話番号データを埋め込む。この電話番号データは、国番号と電話番号を例えばE.164方式に変換して得たものである。
【0021】
このような送信元アドレスを有するIPヘッダの電話通信IPパケットは、通信装置10によりIPネットワーク15に送信されると、それを受信した通信装置は、そのIPヘッダから、発話元の電話番号を確定することができる。さらに、受信側は、このIPパケットがデータ通信のIPパケットなのか電話通信のIPパケットを判定する際には、IPヘッダの送信元アドレスエリア(図2に示す例ではIFIDエリア)のデータのフォーマットが、送信側が電話番号データを変換する際に決められたフォーマット(たとえば上述したE.164方式)であることを条件に、このIPパケットが電話通信IPパケットであると判定することができる。
【0022】
すなわち、ネットワーク層であるIPレイヤーにおいて、該IPパケットが電話通信IPパケットであるかの判定と、電話番号の確定ができる。
【0023】
さらに、IPパケット生成部11により電話番号データを埋め込む際に、該IPパケットが電話通信のデータパケットであることを示す識別子(たとえば通信種別番号:5)も埋め込むことが好ましい。図3は、この場合の送信元アドレスエリアのデータフォーマットの例を示す。図示の例では、IFIDエリアの先頭に8ビットの識別子があり、国番号の16ビットと、電話番号の40ビットからなる電話番号データがそれに続く。
【0024】
図3に示すような送信元アドレスを有するIPヘッダの電話通信IPパケットは、IPネットワーク15に出力されると、ルータなどのルーティング装置は、IPヘッダから該IPパケットが電話通信のIPパケットであると判別することができるため、送信先アドレスの通信装置にのみならず、IPネットワーク15上に設けられた、通話内容を保存する保存装置にも転送するようにルーティング装置を設定することができる。こうすることにより、保存装置は、すべてのパケットを受信するようにシステムを設計する必要が無く、ネットワークの負荷を軽減することができる。
【0025】
図4は、本発明の技術にかかる別の通信装置20を示す。この通信装置20は、IPネットワーク25とアナログ通話ネットワーク26に接続され、IPネットワーク25とアナログ通話ネットワーク26間の通話を中継する。例えば、VoIPの場合、この通信装置20は、VoIP GWである。
【0026】
通信装置20は、アナログ通話ネットワーク26からのアナログ音声データをデジタルに変換して、さらにIPパケットに分割してIPネットワーク25に送信する。IPパケットの生成は、IPパケット生成部21により行われる。IPパケット生成部21は、IPネットワーク25に送信するIPパケットを生成する際に、そのIPヘッダの発信元アドレスエリアに、発話元のアナログ電話機の電話番号のデータを埋め込む。IPパケット生成部21により生成された発信元アドレスエリアのデータのフォーマットは、図1に示す通信装置10におけるIPパケット生成部11が生成したものと同じとすることができ、ここで詳細な説明を省略する。また、発話元のアナログ電話機の電話番号データに加え、電話通信のIPパケットであることを示す識別子を埋め込むことについても、IPパケット生成部11と同様である。
【0027】
通信装置20によって、アナログ通話ネットワークとIPネットワークとが混在した通話システムにおいても、通信装置10と同様な効果を得ることができる。
【0028】
本発明にかかる技術は、IPネットワークを利用した電話通信の通話内容を保存するシステムにその効用を発揮することができる。以下の実施の形態を用いて説明する。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態にかかる通話システム100を示す。通話システム100は、アナログ通話ネットワークとなるPSTN220と、企業ネットワーク400とを有する。PSTN220には複数(図示の例では2つ)のアナログ電話機200が接続されており、企業ネットワーク400は、企業内ネットワーク420を有する。PSTN220と企業内ネットワーク420間にVoIP GW300が接続されており、VoIP GW300により通話が中継される。ルータ410は、レイヤー3の中継装置であり、企業内ネットワーク420上を流れるIPパケットの転送を行う。企業内ネットワーク420には、複数(図示の例では2つ)のIP電話機430と、通話内容を保存する通話ログ保存サーバ440が接続されている。なお、本実施の形態の通話システム100は、VoIP技術によりIPネットワークを利用して通話を実現するものであり、以下の説明および図示において、VoIPによる通話を実現するためのSIPサーバなど、通常のVoIP技術に用いられ、本発明の主旨と直接関連性の無い構成について省略する。
【0030】
アナログ電話機200間の通話は、PSTN220を介して行われる。IP電話機430間の通話は、企業内ネットワーク420を介して行われる。アナログ電話機200とIP電話機430間の通話は、VoIP GW300によりPSTN220と企業内ネットワーク420間で中継される。
【0031】
図6は、VoIP GW300を示す。VoIP GW300は、中継機能310とアドレス処理機能320を備える。中継機能310は、アナログ音声データ送受信IF311と、音声/パケット変換部312と、送信元アドレス選択部313と、IPパケット送受信IF314により担われる。アドレス処理機能320は、送信元アドレス生成部321と、送信元アドレス設定部322により担われる。
【0032】
アナログ音声データ送受信IF311は、アナログ電話機200からIP電話機430に発話する際に、PSTN220を介してアナログ電話機200から送信してきたアナログ音声データを受信して音声/パケット変換部312ち送信元アドレス生成部321に出力する。また、IP電話機430からアナログ電話機200に発話する際に、音声/パケット変換部312により得られたアナログ音声データをPSTN220に出力する。
【0033】
音声/パケット変換部312は、アナログ電話機200からIP電話機430に発話する際に、アナログ音声データ送受信IF311からのアナログ音声データをデジタルデータに変換してさらにパケットに分割して送信元アドレス選択部313に出力する。また、IP電話機430からアナログ電話機200に発話する際に、送信元アドレス選択部313からのパケットを音声データに復元してさらにアナログ音声データに変換してアナログ音声データ送受信IF311に出力する。
【0034】
送信元アドレス選択部313は、発話するアナログ電話機200毎に、その電話番号と、IPv6アドレスとを対応付けて記憶しており、アナログ電話機200からIP電話機430に発話する際に、発話するアナログ電話機200の電話番号に対応したIPv6アドレスを、送信元アドレス選択部313からのIPパケットの送信元アドレスとして選択する。なお、IPv6アドレスは、送信元アドレス生成部321により生成されたものであり、その詳細については後述する。なお、IP電話機430からアナログ電話機200に発話する際に、IPパケット送受信IF314からのIPパケットを音声/パケット変換部312に転送する。
【0035】
IPパケット送受信IF314は、アナログ電話機200からIP電話機430に発話する際に、送信元アドレス選択部313により選択された送信元アドレスを、音声/パケット変換部312からのパケットのIPヘッダにおける送信元アドレスエリアに埋め込んで企業内ネットワーク420に出力する。また、IP電話機430からアナログ電話機200に発話する際に、企業内ネットワーク420からのIPパケットを受信した送信元アドレス選択部313に出力する。
【0036】
送信元アドレス生成部321と送信元アドレス設定部322は、アナログ電話機200からIP電話機430に発話する際に、該アナログ電話機200の電話番号に対応するIPv6アドレスが送信元アドレス選択部313にまだ記憶されていない場合に動作する。具体的には、送信元アドレス生成部321は、アナログ音声データ送受信IF311から受信したアナログ音声データの電話番号に基づいて、送信元アドレスすなわち上述したIPv6アドレスを生成して送信元アドレス設定部322に出力する。送信元アドレス設定部322は、このIPv6アドレスを送信元アドレス選択部313に出力すると共に、IPパケット送受信IF314に対して、生成されたIPv6アドレスを送信元アドレスとして用いるように設定する。
【0037】
ここで、送信元アドレス生成部321によるアドレス生成の処理を説明しながら、IPv6アドレスの詳細を説明する。本実施の形態において、例として、IPパケットのアドレスとしてIPv6に準拠したpTLAアドレスを用いる。
【0038】
送信元アドレス生成部321は、まず、この電話番号をE.164番号方式に変換してE.164番号を得る。E.164番号は、ITU−T(国際電気通信連合・電気通信標準化セクタ)により国際的に一意な電話番号体系を定めるE.164勧告で規定された国際公衆電気通信番号であり、国番号を含む最大15桁の10進数列で表される。例えば、発話するアナログ電話機200の電話番号が03−444―5555である場合は、そのE.164番号は、「+81−3−5297−2311」になる。送信元アドレス生成部321は、E.164番号に変換した電話番号に加え、該IPパケットが電話通信であることをと示す通信種別識別子「5」をIPヘッダの送信元アドレスエリアにおけるIFIDエリアに格納してIPv6アドレスを生成する。送信元アドレスエリアは、128ビットがあり、前半の64ビットはPrefixIDが格納され、後半の64ビットはIFIDが格納される。本実施の形態では、送信元アドレス生成部321は、IFIDエリアの先頭8ビットに通信種別子(単に識別子ともいう)を格納し、識別子に続く16ビットに国番号を格納し、最後の40ビットに、国番号の後の電話番号を格納する。例えば、PrefixIDが3ffe:302:1である場合、03−4444−5555に基づいて送信元アドレスとして生成されたIPv6アドレスは、「3ffe:302:1::551:3:115c:15b3」となる。
【0039】
このように生成されたIPv6アドレスは、送信元アドレス選択部313に出力されると共に、IPパケット送受信IF314に対して設定される。送信元アドレス選択部313は、それを電話番号と対応付けて格納し、次に当該電話番号のアナログ電話機200からIP電話機430に発話があった際に、それを送信元アドレスとして選択してIPパケット送受信IF314に供する。
【0040】
図8は、VoIP GW300が送信元アドレスを設定することに関連する処理を示すフローチャートである。図示のように、アナログ電話機200からいずれかのIP電話機430に発話する際に(S10)、VoIP GW300におけるアナログ音声データ送受信IF311は、PSTN220を介して該アナログ電話機200からのアナログ音声データを受信すると、該アナログ音声データを出力したアナログ電話機200の電話番号を送信元アドレス生成部321に知らせて送信元アドレスの生成と設定を依頼する(S12)。送信元アドレス生成部321は、アナログ音声データ送受信IF311からの電話番号に基づいてIPv6アドレスを生成して送信元アドレス設定部322に出力し、設定を依頼する(S14)。送信元アドレス設定部322は、送信元アドレス生成部321からのIPv6アドレスをIPパケット送受信IF314に設定する(S16)、送信元アドレス選択部313に通知する(S20)。IPパケット送受信IF314は、送信元アドレス設定部322により設定されたIPv6アドレスを、送信元アドレスとしてIPパケットのヘッダに付加する(S18)。送信元アドレス選択部313は、送信元アドレス設定部322から通知されたIPv6アドレスを、当該アナログ電話機200の電話番号と対応付けてリストに追加する(S22)。
【0041】
図9は、VoIP GW300がアナログ電話機200からの音声データをIPパケットに変換して出力することに関連する処理を示すフローチャートである。図示のように、アナログ電話機200からいずれかのIP電話機430に発話する際に(S50)、VoIP GW300におけるアナログ音声データ送受信IF311は、PSTN220を介して該アナログ電話機200からのアナログ音声データを受信すると、それを音声/パケット変換部312に転送する(S52)。音声/パケット変換部312は、このアナログ音声データをデジタルデータに変換すると共にパケットデータに分割して送信元アドレス選択部313に出力し、送信を依頼する(S54)。送信元アドレス選択部313は、記憶されたリストから、当該アナログ電話機の電話番号に対応するIPv6アドレスを送信元アドレスとして選択してパケットデータと共にIPパケット送受信IF314に出力し、送信を依頼する(S56)。IPパケット送受信IF314は、IPヘッダの送信エリアに当該IPv6アドレスを付加して送信する(S58)。
【0042】
このように、VoIP GW300を介して企業内ネットワーク420に送信されたIPパケットは、それらのIPヘッダにおける送信元アドレスエリアに、発話元のアナログ電話機200の電話番号に対応したIPv6アドレスが埋め込まれている。
【0043】
IP電話機430は、通常のIP電話機と同一の機能以外に、発話するときには、IPパケットのIPヘッダにおける発信元アドレスエリアに、自機の電話番号データを埋め込む処理を行う。IP電話機430によるこの処理は、自機の電話番号を用いること以外、VoIP GW300によるIPv6アドレスの生成処理と同様であるので、ここで詳細な説明を省略する。なお、IP電話機430により生成した送信元アドレスも、IPv6アドレスという。
【0044】
すなわち、企業内ネットワーク420を流れる電話通信IPパケットは、その送信元アドレスエリアに発話元の電話番号データが埋め込まれている。IP電話機430から送信されたIPパケットには、そのIP電話機430自身の電話番号データ(IPv6アドレス)が埋め込まれており、VoIP GW300から企業内ネットワーク420に送信されたIPパケットには、発話元のアナログ電話機200の電話番号データ(IPv6アドレス)が埋め込まれている。さらに、同じ送信元アドレスエリアに、該パケットが電話通信IPパケットであることを示す識別子も埋め込まれている。
【0045】
企業内ネットワーク420上を流れるIPパケットは、レイヤー3の中継装置であるルータ410により宛先ノードに転送される。なお、ルータ410と、企業内ネットワーク420上の他のノードとの間にさらに他のレイヤー3の中継装置(例えばルータ)や、レイヤー2の中継装置(例えばスイッチングハブ)などが存在する場合もある。このような場合、ルータ410は、これらの中継装置を介して目的のノードにパケットを転送する。
【0046】
ルータ410は、企業内ネットワーク420上を流れるIPパケットについて、データ通信IPパケットであるか電話通信IPパケットであるかの識別を行う。ルータ410は、当該IPパケットの送信元アドレスエリアのIFIDの先頭の8ビットが「5」であるか否かを確認し、「5」であれば、そのIPパケットが電話通信IPパケットであると識別する。
【0047】
ルータ410は、データ通信IPパケットを、そのIPヘッダに含まれる送信先アドレスのノードに転送する。一方、電話通信IPパケットについては、ルータ410は、該IPパケットのIPヘッダに含まれる送信先アドレスのノードと、通話ログ保存サーバ440に転送する。すなわち、企業内ネットワーク420上を流れるIPパケットのうちの電話通信IPパケットは、送信先のノード(IP電話機430またはVoIP GW300)以外に、通話ログ保存サーバ440にも転送される。
【0048】
IP電話機430は、ルータ410から転送されてきた電話通信IPパケットを受信して通話処理を行う。この処理は、通常のIP電話機によるものと同様であるので、ここで詳細な説明を省略する。
【0049】
通話ログ保存サーバ440は、ルータ410から転送されてきた電話通信IPパケットのIPヘッダにおける送信元アドレスエリアから、発話元の電話番号を抽出して該IPパケットのペイロード部分(通話内容)と対応付けて保存する。
【0050】
図10は、通話ログ保存サーバ440が電話番号を抽出する処理を説明するための図である。図示のように、通話ログ保存サーバ440は、まず、ルータ410から転送されてきた電話通信IPパケットのIPヘッダにおける送信元アドレスエリア、精確にはIFIDエリアの9ビット目からのエリアから電話番号を抽出する。この電話番号は、国番号を含むE.164番号であり、例えば、図示の例の「+81−3−5297−2311」である。通話ログ保存サーバ440は、抽出したE.164番号をさらに変換して「03−4444−5555」の電話番号を得る。そして、通話ログ保存サーバ440は、この電話番号と、該IPパケットのペイロード部分とを対応付けて保存する。すなわち、通話ログ保存サーバ440は、発話元の電話番号毎に通話内容を保存する。
【0051】
このように、本実施の形態において、各IP電話機430、およびVoIP GW300は、企業内ネットワーク420に電話通信IPパケットを送出する際に、IPヘッダの送信元アドレスエリアに発話元の電話番号データを埋め込んで送信する。こうすることによって、通話ログ保存サーバ440は、IPヘッダの送信元アドレスエリアから発話元の電話番号を抽出することができ、電話番号毎に通話内容を保存することができる。IP電話機430から送出されるIPパケットについては、SIPサーバに問い合わせることをせずに電話番号を取得でき、アナログ電話機200からのアナログ音声データから変換して得られたIPパケットについても、発話元のアナログ電話機200の電話番号を取得することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態において、各IP電話機430およびVoIP GW300は、IPヘッダの送信元アドレスエリアに、該IPパケットが電話通信IPパケットであることを示す識別子を埋め込んでいる。こうすることにより、ルータ410は、IPヘッダに基づいて、該IPパケットが電話通信IPパケットであるか否かの識別ができ、電話通信IPパケットであれば、それを通話ログ保存サーバ440にも転送する。こうすることにより、通話ログ保存サーバ440は、企業内ネットワーク420のすべてのIPパケットを受信する必要がなく、ネットワークの負荷が軽減される。さらに、IPパケットが電話通信IPパケットであるかの識別は、IPヘッダの参照のみで可能であるため、通話内容の保存IPレイヤーで実現でき、特許文献2のようにIPパケットの解析をする必要が無い。
【0053】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、さまざまな変更、増減を加えてもよい。これらの変更、増減が加えられた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
例えば、通話システム100において、企業内ネットワーク420に送信するIPパケットの送信元アドレスエリアに埋め込むIPv6アドレスには、該IPパケットが電話通信IPパケットであることを示す通信種別識別子が埋め込まれているが、この識別子を埋め込まなくてもよい。この場合、通話ログ保存サーバ440が企業内ネットワーク420上を流れるすべてのIPパケットを受信するようにし、通話ログ保存サーバ440は、受信したIPパケットのIPヘッダにおける送信元アドレスエリアのIFIDのデータが所定の方式例えばE.164方式であるかに基づいてこのIPパケットが電話通信IPパケットであるかの識別を行えばよい。
【0055】
なお、この場合、送信元アドレスエリアにおけるデータの構成態様は、図11に示すように、PrefixIDの後のIFIDエリアの先頭の16ビットには国番号が格納され、それに続く48ビットには国番号の後の電話番号が格納される。また、図12に示すように、このような送信元アドレスのIPヘッダを有するIPパケットから電話番号を抽出する際には、IFIDエリアの先頭の16ビットを国番号として抽出し、それに続く48ビットを国番号の後の電話番号として抽出して変換すればよい。
【符号の説明】
【0056】
10 通信装置
11 IPパケット生成部
15 IPネットワーク
20 通信装置
21 IPパケット生成部
25 IPネットワーク
26 アナログ通話ネットワーク
100 通話システム
200 アナログ電話機
220 PSTN
300 VoIP GW
310 中継機能
311 アナログ音声データ送受信IF
312 音声/パケット変換部
313 送信元アドレス選択部
314 IPパケット送受信IF
320 アドレス処理機能
321 送信元アドレス生成部
322 送信元アドレス設定部
400 企業ネットワーク
410 ルータ
420 企業内ネットワーク
430 IP電話機
440 通話ログ保存サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP(Internet Protocol)ネットワーク上を流れる、IPヘッダの送信元アドレスエリアに発話元の電話番号データが埋め込まれた電話通信IPパケットの前記IPヘッダから、前記発話元の電話番号データを抽出し、
抽出した前記電話番号データが示す電話番号毎に前記電話通信IPパケットに含まれる音声データを保存する通話ログ保存装置。
【請求項2】
前記電話通信IPパケットにおけるIPヘッダの発信元アドレスに埋め込まれた電話番号データは、発話元の電話番号を所定の方式に変換して得たものであり、
前記IPネットワーク上を流れるIPパケットに対して、IPヘッダの送信元アドレスエリアにおける当該部位のデータが前記所定の方式であるかに基づいて該IPパケットが電話通信IPパケットであるかの識別を行うことを特徴とする請求項1に記載の通話ログ保存装置。
【請求項3】
前記電話通信IPパケットにおけるIPヘッダの発信元アドレスに、該IPパケットが電話通信IPパケットであることを示す通信種別識別子がさらに埋め込まれており、
前記IPネットワーク上を流れるIPパケットに対して、IPヘッダの送信元アドレスエリアに埋め込まれた前記通信種別識別子に基づいて該IPパケットが電話通信IPパケットであるかの識別を行うことを特徴とする請求項1に記載の通話ログ保存装置。
【請求項4】
IP(Internet Protocol)ネットワーク上を流れIPパケットのうちの、IPヘッダの送信元アドレスエリアに該IPパケットが電話通信IPパケットであることを示す通信種別識別子が埋め込まれたIPパケットを、前記IPネットワーク上の通話ログ保存装置に転送するレイヤー3ネットワーク転送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−34245(P2013−34245A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237678(P2012−237678)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2008−40039(P2008−40039)の分割
【原出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】