説明

通路制御システム

【課題】識別情報と位置情報とを取得することができるタグシステムと、人検知器との組み合わせにより、タグシステムの性能である位置検出精度や応答速度が高くない場合においても、通路単位で高精度に通行制御を行うことができる通路制御システムを提供する。
【解決手段】通路105に配置される通路基準無線タグ104および通行人無線タグ107の位置情報と識別情報をタグ検出固定局103a〜103dで受信し、通行人無線タグ104の位置を特定する。また通行人検知器150で通行人104の位置を特定する。この2つの位置情報をマッチングして、通行人無線タグ104の識別情報に基づいて、通行人106の通行の許可を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路制御システムに関し、特に無線タグと人検知器とを組み合わせて、通路の通行人を特定して通行を制御することができる通路制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駅における自動改札機、ホールや催事場等の入出場のためのゲート等を用いて通路が設けられる。自動改札機であれば通行人が所持する乗車券や定期券、ホールや催事場等のゲートであればチケット等を識別して、入退場者の通過または制限を行う。近年利用が急増しつつあるICカードを乗車券やチケット等に用いて、乗車券類やチケット等を財布等から取り出さずに出改札を行うものがあるが、ICカードのみならずICタグを利用して通行人がポケットや鞄等から乗車券類やチケット等を取り出さずに通行させる方法、すなわち通路制御システム(アクセスコントロールシステム)が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1によれば、改札口のような通行監視エリア内を通行する通行人が所持する通信が可能な通行媒体を検知すると共に、通行監視エリア全体をカメラで撮影し、検知された通行媒体の情報と撮影された画像の情報とに基づいて、通行人を監視する通行監視方法およびその設備が提案されている。
【0004】
また特許文献1に開示される発明の他にも、特許文献2に開示されるような改札通路の入口側と出口側に無線エリアを設けて、通行人が所持する乗車券等の識別情報を受信機が取得し続けて、2つの無線エリアにおける識別情報の受信回数に基づいて、通行人を通行させる自動改札装置が提案されている。この自動改札装置には通行を検知する複数のセンサも設けられており、識別情報の受信回数とセンサが検知する位置情報とを関連付けて、通行を制御している。
【0005】
また特許文献3によれば、光センサが改札通路に入場した通行人を検知すると、複数の送受信機を用いて通行人が所持する無線カードと信号を送受信し続け、その無線カードの位置を検出して改札を行う無線自動改札装置が提案されている。
【特許文献1】特開平7−302390号公報
【特許文献2】特開2007−4341号公報
【特許文献3】特開平9−330440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される通行監視方法およびその設備においては、通行監視エリア全体をカメラで撮影して、画像から通行人の位置を分析処理しているため、無線媒体を受信して通行人の通行権限を判断することはできたとしても、その通行人の位置と画像で分析された通行人の位置とを正確に関連付けることができないおそれがある。特に通路に複数の通行人が通過できるような通路であるために、画像処理に多くの時間を要し、正確に通行人の制御を行うことができないおそれがある。
【0007】
また特許文献2に開示される自動改札装置においては、無線エリアがこれに隣接する通路にまで及ぶため、通行人の存在を正確に判断することができないおそれがある。また識別情報の受信回数のみでは通行人の存在を精度良く判断することができないため、通行人の通行を正しく制御することができないおそれがある。
【0008】
また特許文献3に開示される通行制御装置においては、通行人の位置を検知するために複数の送受信機を用いて通行人が所持する無線カードの位置を連続して検出しているため、通行人の位置検出処理に高い分解能と高速な応答性が要求される。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、識別情報と位置情報とを取得することができるタグシステムと、通行人の位置を検知することができる人検知センサとの組み合わせにより、タグシステムの性能である位置検出精度や応答速度が高くない場合においても、通路単位で高精度に通行制御を行うことができる通路制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る通路制御システムは、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0011】
第1の通路制御システム(請求項1に対応)は、所定領域内に一人通行用幅を有する少なくとも1つの通路が設けられ、通路を通る通行人が所持する通行人無線タグの権限に応じて通行人の通行許可を判定する通路制御システムであって、通行人無線タグと同じ特性を有する無線タグであり、所定領域内に設置される通路基準無線タグと、所定領域内に存する通行人無線タグおよび通路基準無線タグの各々の位置および識別情報を検出する無線タグ情報検出手段と、無線タグ情報検出手段により検出された通行人無線タグの位置情報と基準無線タグの位置情報とに基づいて、通行人の位置を特定する通行人位置特定手段と、通路を通る通行人の位置を検知する通行人位置検知手段と、通行人位置特定手段により特定された通行人の位置と、通行人位置検知手段により検知された通行人の位置とを関連付けるマッチング処理手段と、マッチング処理手段により関連付けられた通行人無線タグの識別情報に基づいて通行人の通行許可を判定する通行許可判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の通路制御システムでは、無線タグ情報検出手段が通行人無線タグおよび通路基準無線タグの各々の位置および識別情報を検出し、通行人位置特定手段が通行人の位置を特定する。また通行人位置検知手段が通路を通る通行人の位置を検知する。マッチング処理手段が通行人位置特定手段により特定した通行人の位置と、通行人位置検知手段により特定した通行人の位置とをマッチングし、通行人無線タグの識別情報に基づいて通行人の通行許可を判定することが可能となる。
【0013】
第2の通路制御システム(請求項2に対応)は、上記の構成において、通路基準無線タグは、通路または複数の通路からなる通路群に少なくとも1つ配置されることを特徴とする。
【0014】
第3の通路制御システム(請求項3に対応)は、上記の構成において、通路基準無線タグは、通行人無線タグの位置情報を補正する無線タグとして用いられることを特徴とする。
【0015】
第4の通路制御システム(請求項4に対応)は、上記の構成において、マッチング処理手段は、通行人位置特定手段により特定された通行人の位置と、通行人位置検知手段により検知された通行人の位置との離間距離を算出する離間距離算出手段と、離間距離算出手段により算出された離間距離が近いものから順に2つの通行人の位置を関連付ける確度を決定する確度決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
第5の通路制御システム(請求項5に対応)は、上記の構成において、通行人位置特定手段は、基準無線タグの位置情報と通行人無線タグの位置情報との相対距離に基づいて、通行人の位置を特定することを特徴とする。
【0017】
第6の通路制御システム(請求項6に対応)は、上記の構成において、通行人位置検知手段は光学式領域検知装置であることを特徴とする。
【0018】
第7の通路制御システム(請求項7に対応)は、上記の構成において、通行人位置検知手段は、発光器と、受光器と、ガルバノミラーと、ガルバノミラー制御手段とから構成される人間検知装置であることを特徴とする。
【0019】
第8の通路制御システム(請求項8に対応)は、上記の構成において、通路は、改札機により形成される改札通路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、比較的広いエリアで識別情報と位置情報とを取得することができるタグシステムと、比較的狭いエリアで通行人の位置を高精度で検知することができる人検知器とを組み合わせることにより、タグシステムの性能である位置検出精度や応答速度が高くない場合においても、通路単位で高精度に通行制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1を参照して本発明の実施形態に係る自動改札機システムを説明する。図1は本発明の実施形態に係る自動改札システムの構成を示す模式図である。
【0023】
図1に示す自動改札システム100は、所定領域101に自動改札機本体102a〜102f、タグ検出固定局103a〜103d、通路基準無線タグ104a〜104hが配置される。自動改札機本体102a〜102fは、通行人106a,106bが所持する例えば小型形状のプラスチックケース等に内蔵される通行人無線タグ107a,107bの識別情報(識別ID)等に基づいて、改札を自動で行うものである。例えば自動改札機本体102a,102bの1対で1台の自動改札機として機能する。
【0024】
2つの自動改札機本体の間に通路105a〜105cが形成される。この通路105a〜105cは、通行人106a,106bが通行するためのものであって、通行人106が一人ずつ通行することができる幅である。また自動改札機本体の通路側、例えば自動改札機本体102a,102bの通路側に扉を設けることにより、通行人106aの通行を許可させない場合にはこの扉を閉じて通行を抑止することができる。なお、図中の所定領域101には、自動改札機が3台設置されているが、駅の利用客数等に合わせて、任意の台数を設置することができる。
【0025】
タグ検出固定局103a〜103dは所定領域101の全体を無線エリアとするように配置され、所定領域101に配置された通路基準無線タグ104a〜104hと通行人106が所持する通行人無線タグ107を検出するものである。なお、通路105bには、通路基準無線タグを図示していないが、通路105a,105cと同様に通路基準無線タグが配置される。所定領域101には複数台の自動改札機が並べて設置されるため、通路基準無線タグ104a〜104hおよび通行人無線タグ107は、タグ検出固定局103と例えば数m〜数十m程度の距離の無線通信を行うことができ、位置情報を与えることができるものが用いられる。
【0026】
また通路基準無線タグ104a〜104hは、自動改札機本体102a〜102fの機器上に2つずつ配置される。通路基準無線タグ104a〜104hは、通行人106が所持する通行人無線タグ107と同じ特性を持つ無線タグであって、通行人無線タグ107の位置情報を補正して、無線タグの位置変動を抑えるために配置されるものである。通行人無線タグ107と同じ特性を持つ無線タグを使用することで、通行人無線タグ107の位置変動を精度良く抑えることができる。
【0027】
なお、通路基準無線タグ104は上述した配置方法に限るものではなく、例えば通路105の各領域の中央に通路基準無線タグ104を1つずつ配置したり、通路105の各領域の対角線上に通路基準無線タグ104を2つずつ配置したりすることができる。さらに、通路105a〜105cを合わせて1つの通路群領域とすれば、この通路群領域の4隅に1つずつ通路基準無線タグ104を配置したり、通路群領域の中央に通路基準無線タグ104を1つ配置したり、通路群領域の対角線上に2つの通路基準無線タグを配置したりすることもできる。
【0028】
また通路基準無線タグ104は、通路を形成するための自動改札機本体の機器上に配置する以外にも、例えば自動改札機に相当する壁部等に配置したり、通路105の床面上や通路105の床下に埋め込んで配置したりすることができる。いずれの配置方法であっても、上述した位置変動を抑えることが可能である。
【0029】
さらに通路105aの付近には通行人検知器150が設けられる。通行人検知器150は、通行人106の位置を検知するためのものである。通路105b,105cには図示しないが、通路105aと同様に通行人検知器150が設けられる。また所定領域101の付近には管理装置200が設けられる。管理装置200は、タグ検出固定局103a〜103dから検出された通路基準無線タグ104、通行人無線タグ107の信号や通行人検知器150から出力される検知信号に基づいて、通行人106の通行許可を判定するためのものである。管理装置200は、タグ検出固定局103a〜103d、通行人検知器150および自動改札機本体102a〜102fとケーブルや無線で接続される。
【0030】
続いて、図2および図3を参照して、通路における通行人の検知領域を説明する。図2は通路における通行人の検知領域を示す模式図であり、図3は複数の通行人検知器を用いた通路における通行人の検知領域を示す模式図である。
【0031】
図2に示す通路105の付近に通行人検知器150が設けられ、通路105の領域内を検知領域A〜Cに分割して、通行人の位置を検知する。検知領域Aは通行人106が存在する通路105の入口側に存在する通行人を検知する領域であり、検知領域Bは通路内に移動した通行人を検知する領域であり、検知領域Cは通路105の出口側に存在する通行人を検知する領域である。
【0032】
なお、自動改札機本体102a,102bには、通行人106の通行を許可・抑止するために扉を設けることができるように、検知領域Bと検知領域Cとの間には非検知領域が設けられている。また、この非検知領域の手前にある検知領域Bにおいて、実際に通行人無線タグ107の識別情報に基づいて通行人106の通行許可が判定される。通路105における検知領域A〜Cは入口側と出口側とで非対称に設定される。
【0033】
通行人106の位置を検知する通行人検知器150は、例えば、本出願人が先に出願した特開2006−350765号公報に開示されるようなガルバノミラー装置を利用して通行人106の位置を検知する装置が用いられる。自動改札機本体102a,102bや通路105の付近の壁部等に設けられる発光器から出力される光線は、ガルバノミラーと通路105の天井付近に設けられる反射鏡とを介して反射する。この光線は通路全体を走査するように、ガルバノミラーを2軸方向にガルバノミラー駆動制御手段が駆動させる。通路105または通行人106から反射する光を、再び反射鏡とガルバノミラーとを介して、受光器が受光する。発光器から発光された光が受光器で受光されるまでの時間差に基づいて、通路105に存在する通行人106の位置を検知する。
【0034】
また通路付近に配置される発光器から出力される光線を、反射鏡を用いずガルバノミラーを介して反射させて、通行人105の位置を検知するものであっても良い。さらに、このガルバノミラー装置を利用した人検知器以外にも、カメラ等の撮像装置や光学式センサ等による人間検知器を用いても良い。撮像装置により通路105を通行する通行人を撮像して、その画像を解析することにより通行人106の位置を特定することができる。また、自動改札機本体102a,102bの通路側の側面に反射型人間検知器を一列に並べて配置して、通行人106の通行状態を検知することもできる。なお、通路105に設けられる通行人検知器は1つに限らない。図3に示すように、通路105の付近に複数の通行人検知器150a,150bを設けて、通行人検知器150a,150bにより検知領域A〜Cに存在する通行人106の位置を検知しても良い。
【0035】
続いて、図4を参照して、通行人106が所持する無線タグの存在可能範囲を説明する。図4は、通行人が所持する無線タグの存在可能範囲を示す模式図である。
【0036】
通路105の上述した検知領域A〜Cで通行人106が検知された場合、この通行人106が所持する通行人無線タグ107の実際の存在位置は、無線タグの精度や通行人106が通行人無線タグ107を保持する仕方等により僅かな誤差が生じる。このため、通行人無線タグ107の位置情報を特定する際には、この誤差を考慮する必要がある。
【0037】
図示するような通行人106の中心位置O(評価ポイント)から通行人106が所持する通行人無線タグ107の存在位置までの距離Rdに、通行人無線タグ107の存在位置から所定の距離Rtを加算した距離Reを半径とする無線タグの存在可能範囲108とする。そして、この存在可能範囲108の内部に存在する全ての無線タグの識別情報を通行人106が所持する通行人無線タグ107の候補とする。
【0038】
上述したように、検知領域A〜Cに存在する通行人を検知し、検知された通行人106の位置を基準として、通行人無線タグ107の存在可能範囲108に存在する通行人無線タグ107を候補にして、通行人106の位置と通行人無線タグ107の位置とをマッチングさせる検出対象物IDマッチング処理を行う。
【0039】
続いて、図5および図6を参照して、通路105における通行人無線タグ107の検知領域を説明する。図5は通路における通行人無線タグの入口・出口検知領域を示す模式図であり、図6は通路における通行人無線タグの通路内検知領域を示す模式図である。
【0040】
図5に示す通路105は図1に示した通路105a〜105cと同じである。この通路105の入口となる側に入口検知領域110を設ける。例えば、通路105に存在する通行人無線タグ107cの位置情報は、上述した無線タグの位置情報の誤差により、範囲109a内の位置情報を取り得る。同様に、通行人無線タグ107d〜107fの位置情報は、範囲109b〜109d内の位置情報を取り得る。このように通行人無線タグ107の位置情報の誤差を考慮して、範囲109b〜109dの全部の領域を含むように入口検知領域110が設けられる。
【0041】
また通路105の入口検知領域110と反対側、つまり出口となる側に出口検知領域111が設けられる。通路105の出口付近に存在する通行人無線タグ107g〜107jの位置情報は、範囲109e〜109h内の位置情報を取り得る。入口検知領域110と同様に、通行人無線タグ107の位置情報の誤差を考慮して、範囲109e〜109hの全部の領域を含むように出口検知領域111が設けられる。
【0042】
図6に示す通路105は図1に示した通路105a〜105cと同様のものである。図示しないが、この通路105には上述した入口検知領域110と出口検知領域111が設けられる。通路105の入口付近と出口付近との間に存在する通行人無線タグ107k〜107nの位置情報は、範囲109i〜109l内の位置情報を取り得る。入口検知領域110、出口検知領域111と同様に、通行人無線タグ107の位置情報の誤差を考慮して、範囲109i〜109lの全部の領域を含むように通路内検知領域112が設けられる。
【0043】
上述したように通路105に、入口検知領域110、出口検知領域111、通路内検知領域112の3つの検知領域が設けられる。通路105に設けられた入口検知領域110、出口検知領域111、通路内検知領域112の各検知領域において、通路105で検知された通行人無線タグ107の情報に、更新時刻、入口検知領域110に通行人無線タグ107が存在していたことを示す入口検知領域フラグの状態等の情報を付け加えてIDリストとして管理する通路IDマッチング処理を行う。この通路IDマッチング処理は、上述した検出対象物IDマッチング処理の精度をより高めるために行われる。
【0044】
続いて、図7を参照して、管理装置200の機能・構成について説明する。図7は、管理装置の機能・構成を示すブロック図である。
【0045】
図7に示す管理装置200は、無線タグ信号処理部201、無線タグ位置情報取得部202、通行人位置特定部203、無線タグ識別情報取得部204、識別情報リスト記憶部205、通行人位置信号処理部206、マッチング処理部207、マッチングリスト記憶部208、無線タグ識別番号記憶部209、通行許可判定部210から構成される。
【0046】
無線タグ信号処理部201は、タグ検出固定局103a〜103dで受信した通路基準無線タグ104および通行人無線タグ107の信号を解析処理するものである。
【0047】
無線タグ位置情報取得部202は、無線タグ信号処理部201で解析された通路基準無線タグ104および通行人無線タグ107の信号から無線タグの位置情報を取得するものである。通行人位置特定部203は、無線タグ位置情報取得部202で取得された通行人無線タグ107の位置情報と通路基準無線タグ104の位置情報とに基づいて、通行人106の位置を特定するものである。例えば、通行人無線タグ107の位置情報と通路基準無線タグ104の位置情報の相対距離に基づいて通行人106の位置を特定したり、各通路基準無線タグ104の位置情報のずれを平均して通路基準無線タグ104が配置される領域を線形に補正することにより通行人106の位置を精度良く特定することができる。
【0048】
無線タグ識別情報取得部204は、無線タグ信号処理部201で解析された通行人無線タグ107および通路基準無線タグ104の信号から無線タグの識別情報を取得するものである。識別情報リスト記憶部205は、通行人位置特定部203から出力された通行人無線タグ107の位置情報および通路基準無線タグ104の位置情報と、無線タグ識別情報取得部204から出力された通行人無線タグ107の識別情報および通路基準無線タグ104の識別情報とをIDリストとして記憶するものである。
【0049】
通行人無線タグ107が検知されると、その通行人無線タグ107の識別情報をキーにして、無線タグの位置情報(存在位置)、更新時刻、入口検知領域110に通行人無線タグ107が存在していたことを示す入口検知領域フラグの状態等からなるレコードをIDリストに記憶する。なお、このIDリストは通路毎に設けられる。
【0050】
通行人位置信号処理部206は、上述した通行人検知器150から出力される信号を解析処理し、通行人106の位置情報を出力するものである。
【0051】
マッチング処理部207は、識別情報リスト記憶部205に記憶される通行人無線タグ107の位置情報と、通行人位置信号処理部206から出力される通行人106の位置情報との関連付け(検出対象物IDマッチング処理)を行うものである。離間距離算出部207aは、識別情報リスト記憶部205に記憶される通行人無線タグ107の位置情報と、通行人位置信号処理部206から出力される通行人106の位置との離間距離を算出するものである。確度決定部207bは、離間距離算出部207aにより算出された離間距離に基づいて、上述した関連付けを行う優先順位を決定するものである。この優先順位は、例えば離間距離が近いものほど高く、離間距離が離れるほど低く設定される。
【0052】
マッチングリスト記憶部208は、通行人検知器150により検知された通行人106の位置(評価ポイント)、その評価ポイントから存在可能範囲108にある通行人無線タグ107の識別情報、離間距離算出部207aで算出された離間距離、確度決定部207bで算出された確度等をマッチングリストとして記憶するものである。
【0053】
なお、マッチングリストは、上述したIDリストと同様に通路毎に設けられる。無線タグ識別番号記憶部209は、無線タグの識別番号とそれに対応する通行権限等のデータを記憶するものである。また通行権限等のデータは、例えば大人・子供の区別、乗車区間、定期券の有効期間等の情報である。
【0054】
通行許可判定部210は、マッチング処理部207から出力されるマッチングされた通行人の位置情報および識別情報と、無線タグ識別番号記憶部209に記憶される識別情報に対応する通行権限等のデータとに基づいて、通行人106の通行許可の判定結果を出力するものである。
【0055】
続いて、図8を参照して、マッチング処理部207が通行人106の位置と通行人無線タグ107の位置とをマッチングする検出対象物IDマッチング処理の流れを説明する。図8はマッチング処理部の検出対象物IDマッチング処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
通行人検知器150が通行人106の位置を検知し(ステップS251)、検知領域Aに存在する通行人106を検知した場合には(ステップS252のYES)、マッチング処理部207は、識別情報リスト記憶部205に記憶されるIDリストから、図4に示した評価ポイントを基準として、通行人無線タグ107の存在可能範囲108に存在する全ての通行人無線タグ107のレコード(識別情報、位置情報等)を取得する(ステップS253)。
【0057】
離間距離算出部207aは、通行人106の位置情報と通行人無線タグ107の位置情報とから、2つの位置の離間距離を算出する。また確度決定部207bは、離間距離が近いものから順番にマッチングの確度を決定し、マッチングリスト記憶部208に記憶されるマッチングリストを更新する(ステップS254)。
【0058】
IDリストから取得した通行人無線タグ107の情報のレコードに未処理のものがあるならば(ステップS255のNO)、ステップS254に戻り、全てを通行人無線タグ107の情報のレコードに対して同様の処理を行う。全ての通行人無線タグ107の情報のレコードに対して処理が終了すると(ステップS255のYES)、ステップS251に戻り処理を繰り返す。
【0059】
また検知領域Bに存在する通行人106を検知した場合には(ステップS256のYES)、マッチング処理部207は、マッチングリストを参照して、通行人106の位置を基準にして、最も確度の高い通行人無線タグ107の位置と通行人106の位置情報とをマッチングする(ステップS257)。そして、通行許可判定部210は、そのマッチングされた通行人無線タグ107の識別情報に対応する権限に応じた処理を実行する(ステップS258)。この処理は通行の可否であり、例えば自動改札機の扉を開閉する処理である。この処理が完了すると、ステップS251に戻り処理を繰り返す。
【0060】
また検知領域Cに存在する通行人106を検知した場合には(ステップS259のYES)、マッチング処理部207は、マッチングリストからその通行人106の通行人無線タグ107の情報のレコードを削除し(ステップS260)、ステップS251に戻り、処理を繰り返す。
【0061】
上述したように、検知領域A〜Cに存在する通行人106の位置を任意の時間間隔で連続して検知し、検知された通行人106の位置を基準として、通行人無線タグ107の存在可能範囲108に存在する全ての通行人無線タグ107の情報を取得して、最も確度の高い通行人106の位置と通行人無線タグ107の位置とをマッチングさせる。
【0062】
上述した検出対象物IDマッチング処理における通行人106と通行人無線タグ107とのマッチング精度をより高めるため、この検出対象物IDマッチング処理に加えて、通路105に設けられた入口検知領域110、出口検知領域111、通路内検知領域112の各検知領域において、通路105で検知された通行人無線タグ107の識別情報と位置情報に入口検知領域フラグ等の情報を付け加える通路IDマッチング処理を行う。
【0063】
図9〜図13を参照して、通路IDマッチング処理の流れを説明する。図9は通行人無線タグを検知した際の処理の流れを示すフローチャートであり、図10は入口検知領域タグ処理の流れを示すフローチャートであり、図11は通路内検知領域タグ処理の流れを示すフローチャートであり、図12は出口検知領域タグ処理の流れを示すフローチャートであり、図13は通路外領域タグ処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
通行人無線タグ107を検知し(ステップS301)、無線タグ位置情報取得部202が通行人無線タグ107の存在位置を取得する(ステップS302)。通行人無線タグ107を入口検知領域110で検知した場合には(ステップS303のYES)、識別情報リスト記憶部205は、図10に示す入口検知領域タグ処理を行う(ステップS304)。
【0065】
図10に示す入口検知領域タグ処理において、識別情報リスト記憶部205は、まず入口検知領域110に通行人無線タグ107が存在することを示す入口検知領域フラグをセットする(ステップS401)。続いて、通行人無線タグ107の位置情報に基づいて通路を特定し、通路毎に設けられるIDリストを選択する(ステップS402)。そして、選択されたIDリストに対して、通行人無線タグ107の識別情報をキーにして、タグの存在位置、更新時刻、入口検知領域フラグの状態のレコードを新規に追加する。また、検知されたIDリストに無線タグの識別情報が既に登録されていれば、タグの存在位置、更新時刻のみ更新すれば良い(ステップS403)。
【0066】
また通行人無線タグ107を通路内検知領域112で検知した場合には(ステップS305のYES)、図11に示す通路内検知領域タグ処理を実行する(ステップS306)。
【0067】
図11に示す通路内検知領域タグ処理において、識別情報リスト記憶部205は、検知された通行人無線タグ107の位置情報に基づいて、通路毎のIDリストを選択する(ステップS421)。IDリストを参照して、その通行人無線タグ107に対応するレコードの入口検知領域フラグがセットされていなければ(ステップS422のNO)、通行人無線タグ107を所持する通行人106が入口検知領域110を通過していない可能性があるため、そのまま処理を終了する。また入口検知領域フラグがセットされていれば(ステップS422のYES)、IDリストに記憶されている通行人無線タグ107の存在位置、更新時刻を更新する(ステップS423)。
【0068】
また通行人無線タグ107を出口検知領域111で検知した場合には(ステップS307のYES)、図12に示す出口検知領域タグ処理を実行する(ステップS308)。
【0069】
図12に示す出口検知領域タグ処理において、識別情報リスト記憶部205は、検知された通行人無線タグ107の位置情報に基づいて、通路毎のIDリストを選択する(ステップS441)。IDリストを参照して、その通行人無線タグ107に対応するレコードの入口検知領域フラグがセットされていなければ(ステップS442のNO)、通行人無線タグ107を所持する通行人106が入口検知領域110を通過していない可能性があるため、そのまま処理を終了する。また通行人無線タグ107に入口検知領域フラグがセットされていれば(ステップS442のYES)、IDリストから通行人無線タグ107に対応するレコードを削除する。レコードを削除したことにより、通行人無線タグ107の識別情報の入口検知領域フラグ、位置情報、更新時刻の情報が削除される(ステップS443)。
【0070】
また通行人無線タグ107を入口検知領域110、出口検知領域111または通路内検知領域112のいずれでもない領域で検知した場合には(ステップS309のYES)、図13に示す通路外領域タグ処理を実行する(ステップS310)。
【0071】
図13に示す通路外領域タグ処理において、識別情報リスト記憶部205は、通路毎のIDリストを全部選択する(ステップS461)。IDリストを参照して、その通行人無線タグ107に対応するレコードの更新時刻が所定の時間を経過していれば(ステップS462のYES)、通行人106が既に通路を通過し終えている可能性が高いため、この通行人無線タグ107のレコードを削除する(ステップS463)。
【0072】
また更新時刻から所定の時間が経過していなく(ステップS462のNO)、入口検知領域フラグがセットされていない場合には(ステップS464のNO)、入口検知領域110に入る前の通行人無線タグ107であり、入口検知領域110に入る可能性があるため、そのまま処理を終了する。また入口検知領域フラグがセットされており(ステップS464のYES)、マッチングリストに通行人無線タグ107の識別情報が存在しない場合には(ステップS465のNO)、通路105の検知領域Aで検知される直前の可能性があるため、そのまま処理を終了する。
【0073】
また入口検知領域フラグがセットされており(ステップS464のYES)、マッチングリストに通行人無線タグ107の識別情報が存在する場合には(ステップS465のYES)、通行人106が検知領域Aに入った後、通路105から退出した可能性がある。このため、その通行人無線タグ107に対応するレコードの入口検知領域フラグをクリア状態にして(ステップS466)、タグの存在位置、更新時刻を更新する(ステップS467)。
【0074】
上述したように、所定領域内101に存在する通行人無線タグ107の位置を任意の時間間隔で連続して検知し、その通行人無線タグ107の位置情報に基づいて、通路毎のIDリストにその通行人無線タグ107に対応するレコードを更新し続ける。そして、通行人106が通路を通過し終えた時、つまり無線タグが出口領域で検知された時には、通行人無線タグ107のレコードが削除される。また通路105の検知領域外で通行人無線タグ107が検知された場合にも、所定時間が経過すれば通行人無線タグ107のレコードが削除される。
【0075】
また上述した処理以外にも、例えば、IDリストに所定時間を超えても検知されない通行人無線タグ107のレコードが存在している場合には、このレコードを削除する処理を行うこともできる。また各IDリストに処理されない複数の通行人無線タグ107のレコードが所定の数を超えた場合には、これらを削除する処理を行っても良い。このような処理を追加することにより、IDリストの精度をより高めることができる。
【0076】
また本実施形態では自動改札機の通路105を一方通行で説明したが、通行人検知器150で通行人106が通路105に入場した方向を特定して、上述した通路105の検知領域A〜Cを設定すれば、通行人106を双方向から交互に通行させることも可能である。
【0077】
以上の実施形態で説明された自動改札システムの構成、無線タグの形状、種類、大きさおよび配置関係等については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものである。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、自動改札機等の通路の通路制御システムとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る自動改札システムの構成を示す模式図である。
【図2】通路における通行人の検知領域を示す模式図である。
【図3】複数の通行人検知器を用いた通路における通行人の検知領域を示す模式図である。
【図4】通行人が所持する無線タグの存在可能範囲を示す模式図である。
【図5】通路における通行人無線タグの入口・出口検知領域を示す模式図である。
【図6】通路における通行人無線タグの通路内検知領域を示す模式図である。
【図7】管理装置の機能・構成を示すブロック図である。
【図8】マッチング処理部の検出対象物IDマッチング処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】通行人無線タグを検知した際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】入口検知領域タグ処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】通路内検知領域タグ処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】出口検知領域タグ処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】通路外領域タグ処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
100 自動改札システム
101 所定領域
102 自動改札機本体
103 タグ検出固定局
104 通路基準無線タグ
105 通路
106 通行人
107 通行人無線タグ
108 無線タグの存在可能範囲
109 範囲
110 入口検知領域
111 出口検知領域
112 通路内検知領域
150 通行人検知器
200 管理装置
201 無線タグ信号処理部
202 無線タグ位置情報取得部
203 通行人位置特定部
204 無線タグ識別情報取得部
205 識別情報リスト記憶部
206 通行人位置信号処理部
207 マッチング処理部
208 マッチングリスト記憶部
209 無線タグ識別番号記憶部
210 通行許可判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内に一人通行用幅を有する少なくとも1つの通路が設けられ、前記通路を通る通行人が所持する通行人無線タグの権限に応じて前記通行人の通行許可を判定する通路制御システムであって、
前記通行人無線タグと同じ特性を有する無線タグであり、前記所定領域内に設置される通路基準無線タグと、
前記所定領域内に存する前記通行人無線タグおよび前記通路基準無線タグの各々の位置および識別情報を検出する無線タグ情報検出手段と、
前記無線タグ情報検出手段により検出された前記通行人無線タグの位置情報と前記基準無線タグの位置情報とに基づいて、前記通行人の位置を特定する通行人位置特定手段と、
前記通路を通る前記通行人の位置を検知する通行人位置検知手段と、
前記通行人位置特定手段により特定された前記通行人の位置と、前記通行人位置検知手段により検知された前記通行人の位置とを関連付けるマッチング処理手段と、
前記マッチング処理手段により関連付けられた前記通行人無線タグの前記識別情報に基づいて前記通行人の通行許可を判定する通行許可判定手段と、
を備えることを特徴とする通路制御システム。
【請求項2】
前記通路基準無線タグは、前記通路または複数の前記通路からなる通路群に少なくとも1つ配置されることを特徴とする請求項1記載の通路制御システム。
【請求項3】
前記通路基準無線タグは、前記通行人無線タグの前記位置情報を補正する無線タグとして用いられることを特徴とする請求項2記載の通路制御システム。
【請求項4】
前記マッチング処理手段は、
前記通行人位置特定手段により特定された前記通行人の位置と、前記通行人位置検知手段により検知された前記通行人の位置との離間距離を算出する離間距離算出手段と、
前記離間距離算出手段により算出された前記離間距離が近いものから順に2つの前記通行人の位置を関連付ける確度を決定する確度決定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通路制御システム。
【請求項5】
前記通行人位置特定手段は、前記基準無線タグの位置情報と前記通行人無線タグの位置情報との相対距離に基づいて、前記通行人の位置を特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通路制御システム。
【請求項6】
前記通行人位置検知手段は光学式領域検知装置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の通路制御システム。
【請求項7】
前記通行人位置検知手段は、発光器と、受光器と、ガルバノミラーと、ガルバノミラー制御手段とから構成される人間検知装置であることを特徴とする請求項6記載の通路制御システム。
【請求項8】
前記通路は、改札機により形成される改札通路であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の通路制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−59079(P2009−59079A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224478(P2007−224478)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】