説明

通電すると発熱し収縮作用を発現する形状記憶合金アクチュエータを利用した血圧計用カフの構造。

【課題】血圧の測定において、測定部位を圧迫するためにカフを用いているが、伸縮性のない帯の内側に設けられた流体袋を膨張させないで、測定部位を圧迫する手法を用いることで、流体袋を膨張させるための装置を不要とする血圧計用カフを提供すること。
【解決手段】通電すると発熱し収縮する繊維状の形状記憶合金アクチュエータを織り込んだ帯を血圧を測定する部位に巻きつけ、その帯を収縮させることで圧迫部位に血圧の測定に必要な圧力をかけることを可能とする。圧迫部位と収縮する帯の間に流体袋を挟み、血圧を測定する部位にかかる圧力を均一にすることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計用カフによる圧迫方法に関し、カフの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の血圧測定用のカフは、生体の測定部位に巻きつけて筒状に固定した収縮性のない帯の内側に設けられた流体袋を膨張させることによって、測定部位を圧迫している。
【0003】
カフを構成する流体袋を膨張させるために、流体袋に流体を送るためのポンプ又はボンベ又はコンプレッサーなどの装置と、流体袋と装置をつなぎ流体を送り込むチューブを使用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体袋の膨張によって実現しているカフの部品には、流体を送り込む装置とチューブから構成されている。
【0005】
本発明は、空気袋を膨張させないで、収縮する帯を用いて測定部位を圧迫する手法を用いることで、流体を送り込む装置とチューブが不要な血圧計用カフを実現することを目的とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による血圧計用カフは、測定部位を圧迫する手法として流体袋を膨張させないため、流体袋の膨張に必要なポンプ又はボンベ又はコンプレッサーなどの装置と、カフと装置をつなぐチューブが不要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は目的を達成する為に、通電すると発熱し一定温度異常で収縮作用を発現する繊維状の形状記憶合金アクチュエータを織り込んだ帯を測定部位に巻きつけ、形状記憶合金を収縮させることで測定部位の動脈を圧迫する方法である。
【0008】
図1は、コイル状の形状記憶合金アクチュエータの通常状態であり、これの両端に力を加えて伸張させている状態が図2である。伸張させている状態で、コイル状の形状記憶合金アクチュエータの両端に電極をつないで通電することで、形状記憶合金アクチュエータはジュール熱により発熱し、図1の通常状態へ変形収縮する力が働く。
【0009】
図3は、コイル状の形状記憶合金アクチュエータを、カフの帯31に織り込んだ状態の簡易図である。形状記憶合金アクチュエータの末端には、電極32につながっている導線に接続している。
【0010】
図3の状態において、電極に電流を流してコイル状の形状記憶合金アクチュエータに電流を流すと、形状記憶合金アクチュエータにジュール熱が発生し、形状復帰作用が働き、帯全体が収縮する力が働き、図4の状態に変形する。
【0011】
図4の状態において、電極42にかけている電流を断つことで、形状記憶合金アクチュエータ43の記憶した状態への復元作用はなくなり、帯41全体の収縮する力が働かなくなり、外圧を加えて帯を伸張させることで、図3の状態に戻る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図5は、コイル状の形状記憶合金アクチュエータが織り込まれた帯51と流体袋52とメンファスナー53a,53bから構成されるカフの上面図及び側面図及び下面図である。
【0013】
図6は、コイル状の形状記憶合金アクチュエータが伸張した状態の図5のカフを上腕の圧迫部位64に巻きつけ、面ファスナー53a,53bを用いて固定した状態の断面図を示す。
【0014】
上腕64は、上腕骨65及び上腕二等筋67及び上腕三等筋68及び動脈66などからなり、この圧迫部位を流体袋62が覆い、その外側からコイル状の収縮記憶合金が織り込まれた帯61が覆う状態となる。
【0015】
コイル状の形状記憶合金アクチュエータを通電すると、帯61に収縮する力が働き、固定した帯が縮み、流体袋62を通して圧迫部位64を締め付け、動脈66に圧力が加わる。
【0016】
通電を止めると、収縮作用はなくなり、上腕部の弾性により収縮しているカフは伸張され、動脈66にかかる圧力は減少する
【0017】
この収縮と伸張で動脈66にかかる圧力を調整し、動脈の挙動を測定することで血圧を測定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
流体袋の膨張に必要な装置が不要になることで、血圧計を構成する部品の小型化と軽量化が実現する。
【0019】
従来の血圧計では、ポンプ又はボンベ又はコンプレッサーなどで流体袋に流体を送り、流体袋を膨張させているため、流体を送る動作の際に流体音、モーター音などの音が発生していた。またボンベの場合は、利用回数が限られており、ボンベへ流体の補充やボンベの交換なども必要となっていた。本発明においては、動作に必要な動力が電力だけのため、余分な装置を必要とせず、駆動部品と空気の送出がないため、圧迫時に音及び振動が発生しないという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コイル状の形状記憶合金アクチュエータの収縮している状態の図である
【図2】コイル状の形状記憶合金アクチュエータの伸張している状態の図である
【図3】収縮するコイル状の形状記憶合金アクチュエータが織りこまれた帯状のカフの収縮している状態の上面図及び側面図である
【図4】収縮するコイル状の形状記憶合金アクチュエータが織りこまれた帯状のカフの伸張している状態の上面図及び側面図である
【図5】流体袋及び面ファスナーと一体になった血圧計カフの上面図及び側面図及び下面図である
【図6】血圧計用カフを装着した上腕部の断面図である
【符号の説明】
【0021】
31 : 帯
32 : 形状記憶合金アクチュエータに電気を送る導線
33 : 伸張した状態のコイル状の形状記憶合金アクチュエータ

41 : 帯
42 : 形状記憶合金アクチュエータに電気を送る導線
43 : 収縮した状態のコイル状の形状記憶合金アクチュエータ

51 : コイル状の形状記憶合金アクチュエータが織り込まれた帯
52 : 流体袋
53a,53b : 面ファスナー

61 : コイル状の形状記憶合金アクチュエータを織り込んだ帯
62 : 流体袋
64 : 上腕
65 : 上腕骨
66 : 動脈
67 : 上腕二等筋
68 : 上腕三等筋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の測定部位の動脈を圧迫する血圧計用カフにおいて、生体の測定部位に巻きつけた圧迫部位にかかる圧力を均一にする流体袋を内蔵する、導体に通電すると発熱し記憶された状態に戻ろうとする復元力を張力として発現する形状記憶合金アクチュエータを内蔵した一方向に収縮することが可能な帯状のものであって、形状記憶合金アクチュエータの収縮する張力の作用で測定部位に圧力をかけ動脈を圧迫し、血圧の測定を可能とする血圧計用カフ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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