説明

通電情報表示装置

【課題】従来の表示ユニットの回動機構では、構造が複雑であり又多数の部品で構成されているので材料費がかかり、更に製造の際、組立に時間がかかっていた。
【解決手段】計測手段を収納した本体部、計測手段で計測した電気量を表示する表示ユニット、及び表示ユニットと本体部間に装備され表示ユニットを回動自在にして表示ユニットの向きを調節する調節機構を備え、調節機構は、表示ユニットを回動可能に保持するホルダと、このホルダの嵌合孔に回動自在に嵌挿され軸端部が表示ユニットに固着された円筒状嵌合軸と、嵌合孔に設けた複数の位置決用凹部と円筒状嵌合軸に設けられた位置決用凸部との適宜係合によって表示ユニットを予め定められた角度に保持する表示ユニット位置決め機構と、円筒状嵌合軸に軸方向に設けられ円筒状嵌合軸を回動自在とする複数のスリットとにより構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電路に流れる電流、電路に印加される電圧、電路の流れる漏洩電流等の通電情報を計測し表示させる通電情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の通電情報表示装置は、表示を見やすくするために表示部を回動自在にする場合、表示部を一旦本体から引き出してから回動させる構造のものが提案(特許文献1参照)されており、また、盤奥行き方向に対して部品実装できないデッドスペースを無くし、規制された寸法を満足するために表示部を一旦本体から引き出す構造を改良したもの(特許文献1の改良案)として、表示部を表示部装着面上の第一の位置から表示部装着面上の第二の位置まで移動自在とする表示部移動手段と、第二の位置で表示部を回動自在とする表示部回動手段とを有する通電情報表示装置が提案されている(特許文献2参照)。また、この特許文献2では、配電盤内に設置され、計測対象とする電路の電圧、電路に流れる電流を計測手段で計測後、この計測手段と電圧及び電流の実効値、電力、電力量、力率等の通電情報を表示する表示ユニットとを複数のリード線から形成されたハーネス部品で接続するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−269917号公報
【特許文献2】特開2003−315363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の通電情報表示装置は、以上のように構成されており、特許文献1及び特許文献2に記載された表示ユニットの回動機構では、構造が複雑であり、また多数の部品で構成されているので、材料費がかかるという問題があり、さらに製造の際、組立てに時間がかかるという問題があった。
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、従来の通電情報表示装置の回動機構と同等の機能を備えたものを、より少ない構成部品で実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる通電情報表示装置は、電路の通電情報を計測する計測手段を収納した本体部、この本体部に取り付けられ上記計測手段で計測した電気量を表示する表示ユニット、及びこの表示ユニットと上記本体部間に装備され、上記表示ユニットを回動自在にして表示ユニットの向きを調節する調節機構を備え、
上記調節機構は、上記本体部に設けられ上記表示ユニットを回動可能に保持するホルダと、
このホルダに設けた嵌合孔に回動自在に嵌挿され、一方の軸端部が上記表示ユニットに固着された円筒状嵌合軸と、上記嵌合孔の内周面所定位置に設けた複数の位置決用凹部と上記円筒状嵌合軸の外周面に設けられ上記位置決用凹部と適宜係合する位置決用凸部とを有し、これら位置決用凹凸部の係合によって上記表示部を予め定められた角度に保持する表示ユニット位置決め機構と、上記円筒状嵌合軸の他方の軸端部に、軸方向に設けられ、上記円筒状嵌合軸の上記嵌合孔への嵌挿後、上記ホルダに対し上記円筒状嵌合軸を回動自在とする複数のスリットと、により構成されたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の通電情報表示装置によれば、表示ユニットの向きを調節する調節機構が、表示ユニットを回動可能に保持するホルダと、このホルダに設けた嵌合孔に回動自在に嵌挿され、表示ユニットに固着された円筒状嵌合軸と、嵌合孔に設けた複数の位置決用凹部と円筒状嵌合軸に設けられ位置決用凸部との係合によって表示部を予め定められた角度に保持する表示ユニット位置決め機構と、円筒状嵌合軸に設けられ、円筒状嵌合軸の嵌合孔への嵌挿後、ホルダに対し円筒状嵌合軸を回動自在とする複数のスリットなどにより構成されているので、従来の通電情報表示装置の回動機構と同等の機能を発揮できるにも拘わらず、従来装置に比べ回動機構の構造が簡素化され、これに伴って部品数が少なくなって材料費が節約でき、製造の際の組立時間が短縮されるなどの効果が期待できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0008】
実施の形態1.
図1から図10は、この発明の実施の形態1である通信情報表示装置を示し、図1は装置全体を示す斜視図、図2から図9は、主要部分である表示ユニット向き調節機構30の各部を示す分解斜視図、図10は図1の表示ユニットを回動した時の状態を示す装置全体の斜視図である。
【0009】
図1〜図3に示すように、実施の形態1における通電情報表示装置1は、通電情報を計測する図示しない計測手段を収納した本体ベース部10Aとこの本体ベース部10Aに装着された本体カバー部10Bとを備えた本体部10、本体ベース部10Aで計測した通電情報を図示しないハーネスを介し取り込み表示する表示ユニット20、及び表示ユニット20と本体カバー部10B間に装備され表示ユニット20を回動自在にして表示部20aの向きを調節する表示ユニット向き調節機構30などにより構成されている。
【0010】
表示ユニット向き調節機構30は、図4〜図8に示すように、表示ユニット20の背面部に一方の軸端部が固着された円筒状嵌合軸31、及び本体カバー部10Bに設けられ円筒状嵌合軸31を後述のように嵌挿することにより表示ユニット20を回動自在に保持するホルダ32などにより構成されている。
円筒状嵌合軸31は、ホルダ32に設けた嵌合孔32cに嵌挿すると共に、本体カバー部10Bに設けた長孔形状のホルダ嵌挿用長手透孔10B3に嵌挿(矢印C方向)され、表示ユニット20の回動軸として動作する。
また、表示ユニット20には、本体ベース部10Aで計測した通電情報の計測値を例えばセグメントLEDなど用いて表示する表示部20aと、本体ベース部10Aで計測した通電情報の計測要素(電圧、電流、電力、電力量など)の表示切替などをする操作部20bを有している。
【0011】
次に、図4、図5に基づいて円筒状嵌合軸31を説明し、図6、図7、図8に基づいてホルダ32を説明する。なお、図8は、表示ユニット向き調節機構30の組立て前の本体カバー部10Bを背面から見た斜視図である。
【0012】
図4、図5において、円筒状嵌合軸31は、次のように構成されている。
すなわち、円筒状嵌合軸31は、先端部(他方の軸端部)に設けられ、円筒状嵌合軸31を抜け止めして、円筒状嵌合軸31とホルダ32を係止する係合子(係止用凸部)31cと、外周面に軸方向に凸設され、後述する位置決用凹部32aと適宜係合する位置決用凸部31aと、同じく外周面に凸設され、表示ユニット3の回動時に後述する回動制限用ガイド部(半円弧状溝)32bを摺動する回動制限摺動子(回動制限用凸部)31bと、円筒状嵌合軸31の先端部を軸方向に切り欠くことにより形成され、円筒状嵌合軸31に径方向の弾性を持たせ、円筒状嵌合軸31を後記嵌合孔32c(ホルダ32の)へ嵌挿する時に、係合子31cを嵌合孔32cに挿通させると共に円筒状嵌合軸31を後記嵌合孔32cへ嵌挿した後、ホルダ32に対し円筒状嵌合軸31を回動自在とする複数のスリット31dなどにより構成されたものである。
なお、位置決用凸部31aと後述する位置決用凹部32aとは、これら位置決用凹凸部の係合によって表示ユニット3を所望の回動位置に固定させ表示ユニット20を予め定められた角度に保持する表示ユニット位置決め機構を構成している。
また、スリット31dの軸方向の長さは、スリット幅の伸縮(スリットの開閉)による弾性作用を良くするため位置決用凸部31aの長さより長く設定され、これによって円筒状嵌合軸31の後記嵌合孔32cへの嵌挿、位置決用凸部31aの回動がスムーズに行われる。
【0013】
図6、図7、図8において、ホルダ32は、次のように構成されている。
すわわち、ホルダ32は、嵌合孔32cと、嵌合孔32の内周面に90°ピッチで配設され、上述した位置決用凸部31aを係合することにより表示ユニット20を90°間隔で位置決めする複数の位置決用凹部32aと、嵌合孔32cの内周面に、回動中心と同心の半円弧状に設けられ上述した回動制限摺動子(回動制限用凸部)31bを摺動させると共に、両端部に回動制限摺動子(回動制限用凸部)31bが当接することで表示ユニット20の回動を所定の回動角度以下に制限する回動停止壁32b1、32b2を有する回動制限用ガイド部(半円弧状溝)32bと、係合子31cを嵌合孔32cに挿通させる時の係合子案内溝32dと、ホルダ32自体をRまたはL方向(図2参照)に往復摺動させるためホルダ嵌挿用長手透孔10B3の長手透孔縁部に設けた摺動ガイド10B1と係合する摺動端面32eと、本体カバー部10B側に設けた固定用凸部10B2と係合してホルダ32を固定する固定用凹部32gと、ホルダ32の往復動作時にその案内をする案内凸部32fなどにより構成されたものである。
【0014】
次に、通電情報表示装置1の表示ユニット20を所望の回動位置に回動させる回動動作について説明する。
まず、表示ユニット20をスライド移動させる理由について説明する。
表示ユニット向き調節機構30は、表示ユニット20の摺動により、上述したように固定用凸部10B2に固定用凹部32gを係合させてホルダ32を固定し、表示ユニット向き調節機構30の組立て完了状態で表示ユニット20の摺動を固定している。(この位置を第1位置とする)。
そして、設定部20cのような障害物がなければ、その状態ですぐに表示ユニット20を回動することができるが、この実施の形態1の場合、表示ユニット20の横に操作部20cが並設されている。このため、表示ユニット20または設定部20cのどちらかを移動させないと表示ユニット20を回動することができず、この実施の形態1の場合は、表示ユニット20をスライド移動させる構成を採用している。
なお、このスライド機構は、上述の各部、すなわち摺動ガイド10B1と、固定用凸部10B2と、ホルダ嵌挿用透孔10B3と、摺動端面32eと、固定用凹部32gと、案内凸部32fなどにより構成されている。
【0015】
つづいて、表示ユニット20の回動操作を説明する。
表示ユニット20を回動させるには、上述のように表示ユニット20が回動できる軌道を確保する必要があるが、そのために表示ユニット20を上記第1位置の状態から、R方向(図2)に摺動させる。その際、ホルダ32は、固定用凸部10B2と固定用凹部32gとの係合が外れ移動可能となり、ホルダ32の摺動端面32eが、案内凸部32fに案内されながら摺動ガイド10B1に沿うように移動し、表示ユニット20の引き出しが完了する。(この位置を第2位置とする)。
表示ユニット20の回動操作は、この第2位置で行われる。
すなわち、表示ユニット20を、矢印A(図2)のいづれかの方向に回動させ,所望の位置まで回動させると円筒状嵌合軸31の位置決用凸部31aが、ホルダ32内周面の位置決用凹部32aに係合される。この回動の時、円筒状嵌合軸31のスリット31dによる円筒状嵌合軸31の径方向の弾性作用により、位置決用凸部31aの高さが許容され、位置決用凹部32aとの係合が確実に行われ、表示ユニット20を所望の角度に固定する。表示ユニット20の角度調節後、表示ユニット20をL方向(図2)に戻し調節操作を完了する。このとき、表示ユニット20は、元の状態すなわち組立完了時の状態となる。この角度調節後の状態、すなわち図1の位置から時計方向に回動させた角度調節後の状態を図11に示している。
【0016】
また、この回動操作の時、円筒状嵌合軸31の回動制限用凸部31bも回動し、ホルダ32の回動制限用ガイド部32bをスライドする。そして、円筒状嵌合軸31を回動させ過ぎ、回動制限用凸部31bが、回動制限用ガイド部32bの回動停止壁32b1、32b2に当接すると、表示ユニット20は回動できなくなり、円筒状嵌合軸31の空転を防止する。
【0017】
なお、円筒状嵌合軸31のスリット31dは、組立時において、表示ユニット20の円筒状嵌合軸31をホルダ32に嵌挿させる際に、円筒状嵌合軸31の位置決用凸部31a、係合子(係止用凸部)31cの高さを、円筒状嵌合軸31の径方向の弾性作用により許容する。
【0018】
図9において、本体ベース部6は、通電情報を外部より取り込む端子である通電情報入力部40aを有しており、内部に通電情報を計測する図示しない計測手段を収納している。
【0019】
以上のように構成された実施の形態1における通電情報装置は、発明の効果の記載欄で述べた効果のほかに次のような効果が期待できる。
円筒状嵌合軸31にスリット31dを配設することにより、円筒状嵌合軸31の径方向に弾性が可能となり、円筒状嵌合軸31の位置決用凸部31aが、ホルダ32の位置決用凹部32aに確実に出入りできる。また、組立時に円筒状嵌合軸31をホルダ32の嵌合孔32cに嵌挿させる際に、係合子(係止用凸部)31cの高さを許容することにより、円筒状嵌合軸31をホルダ32の嵌合孔32cに容易に嵌挿させることができるものである。
また、円筒状嵌合軸31の回動制限用凸部31bがホルダ32の回動制限用ガイド部32bの回動停止壁32b1、32b2に当たることにより表示ユニット20の回動が制限される。これにより、表示ユニット20と本体ベース部10Aの電気的接続をする図示しないハーネスの断線を防止することができる。
また、本体カバー部10Bの固定用凸部10B2が、ホルダ32の固定用凹部32gに係合することにより、表示ユニット20の図2に示すRまたはL方向の摺動を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態1における通電情報表示装置の外観全体を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施形態1における通電情報表示装置の構成を分解し、正面から見た斜視図である。
【図3】この発明の実施形態1における通電情報表示装置の構成を分解し、背面から見た斜視図である。
【図4】この発明の実施形態1における表示ユニット20の背面を所定の角度から見た斜視図である。
【図5】この発明の実施形態1における表示ユニット20の背面を図4とは異なる角度から見た斜視図である。
【図6】この発明の実施形態1におけるホルダ32の背面を所定の角度から見た斜視図である。
【図7】この発明の実施形態1におけるホルダ32を図6矢印C方向から見た背面図である。
【図8】この発明の実施形態1における組立て前の本体カバー部10Bを背面から見た斜視図である。
【図9】この発明の実施形態1における本体ベース部10Aを正面から見た斜視図である。
【図10】この発明の実施形態1における表示ユニット20を回動させた時の通電情報表示装置1の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 通電情報表示装置
10 本体部
10A 本体ベース部
10B 本体カバー部
10B1 摺動ガイド
10B2 固定用凸部
10B3 ホルダ嵌挿用長手透孔
20 表示ユニット
20a 表示部
20b 操作部
20c 設定部
30 表示ユニット向き調節機構
31 円筒状嵌合軸
31a 位置決用凸部
31b 回動制限摺動子(回動制限用凸部)
31c 係合子(係止用凸部)
31d 複数のスリット
32 ホルダ
32a 複数の位置決用凹部
32b 表示ユニットの回動制限用ガイド部(半円弧溝)
32b1、32b1 回動停止壁
32c ホルダの嵌合孔
32d 係合子案内溝
32e 摺動端面
32f 案内凸部
32g 固定用凹部
40a 通電情報入力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路の通電情報を計測する計測手段を収納した本体部、この本体部に取り付けられ上記計測手段で計測した電気量を表示する表示ユニット、及びこの表示ユニットと上記本体部間に装備され、上記表示ユニットを回動自在にして表示ユニットの向きを調節する調節機構を備え、上記調節機構は、上記本体部に設けられ上記表示ユニットを回動可能に保持するホルダと、このホルダに設けた嵌合孔に回動自在に嵌挿され、一方の軸端部が上記表示ユニットに固着された円筒状嵌合軸と、上記嵌合孔の内周面所定位置に設けた複数の位置決用凹部と上記円筒状嵌合軸の外周面に設けられ上記位置決用凹部と適宜係合する位置決用凸部とを有し、これら位置決用凹凸部の係合によって上記表示ユニットを予め定められた角度に保持する表示ユニット位置決め機構と、上記円筒状嵌合軸の他方の軸端部に、軸方向に設けられ、上記円筒状嵌合軸の上記嵌合孔への嵌挿後、上記ホルダに対し上記円筒状嵌合軸を回動自在とする複数のスリットと、により構成されたものであることを特徴とする通電情報表示装置。
【請求項2】
上記嵌合孔に、上記表示ユニットの回動制限用ガイド部を設けると共に上記円筒状嵌合軸の外周面に、上記回動制限用ガイド部を摺動する回動制限摺動子を設け、この回動制限摺動子と上記回動制限用ガイド部とにより、上記表示ユニットの回動範囲を予め定めた角度以内とすることを特徴とする請求項1記載の通電情報表示装置。
【請求項3】
上記本体部に、長孔形状としたホルダの嵌挿用長手透孔を設けると共に、この嵌挿用長手透孔の両長手孔縁部に、上記ホルダを移動させる摺動ガイドを設け、上記ホルダの移動位置で上記表示ユニットの回動を許容することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の通電情報表示装置。
【請求項4】
上記スリットの軸方向の長さは、上記位置決用凸部の長さより長くしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の通電情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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