説明

速崩壊性固形製剤

【課題】適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮し、しかも煩雑な製造工程を経ることなく簡便に得ることができる口腔内速崩壊性の製剤の提供。
【解決手段】a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分、d)崩壊剤、およびe)滑沢剤を含み、a:bの質量比率が100:(5〜1500)である速崩壊性固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水なしでも服用できる速崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内でも速崩壊性を有する口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)に関するものである。また、該速崩壊性固形製剤用の組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会が急速に進む中、高齢者や小児などの嚥下力の弱い患者でも服用しやすい剤形の開発として、唾液や少量の水で速やかに崩壊する速崩壊性の口腔内崩壊錠が開発され、医療現場での利便性や患者への服用性など、コンプライアンスの向上に寄与している。しかしながら、口腔内崩壊錠の歴史は浅く、口腔内での崩壊時間や服用感、製造や流通時に割れや摩損しない錠剤の硬度確保といった技術的な問題もある。よって、適度な硬度及び速やかな崩壊性を有する口腔内速崩壊錠剤の製造技術の開発が望まれており、より完成度の高い口腔内崩壊錠技術が期待されている。
【0003】
特許文献1は、糖質、結晶セルロース及び崩壊剤の3成分を組合わせて、混合・造粒をして口腔内崩壊錠を製造しているが、打錠時の流動性や崩壊性に起因する造粒顆粒の粒子径や打錠障害、口腔内での服用感、活性成分の味覚については何ら言及していない。
【0004】
特許文献2には、糖質を2種類以上組み合わせた口腔内崩壊錠の製造方法が明記されている。特定比率のマンニトールと他の糖質とからなる複合顆粒に崩壊剤、無機賦形剤を加えており、これも、打錠時の流動性や崩壊性に起因する造粒顆粒の粒子径や打錠障害、口腔内での服用感、活性成分の味覚については何ら言及がない。
【0005】
特許文献3には糖質の平均粒子径を2つの幅で規定して、それによってできる混合・造粒時の平均粒子径も規定している。しかし、打錠時の打錠障害、口腔内での服用感、活性成分の味覚については何ら言及がない。
【0006】
特許文献4には、活性成分を含まず、糖質であるトレハロースと賦形剤のセルロースとを組合わせ、特定比率にした原料粉体を造粒することにより速崩壊性がある賦形剤が得られると明記されている。さらに、トレハロースの平均粒子径も明記されているが、活性成分を含んだ造粒顆粒の平均粒子径や崩壊剤、口腔内での服用感、活性成分の味覚については何ら言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−139086号公報
【特許文献2】WO2005/037254号公報
【特許文献3】特開2006−70046号公報
【特許文献4】特開2001−131091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、速崩壊性固形製剤の提供、すなわち適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮し、しかも煩雑な製造工程を経ることなく簡便に得ることができる口腔内速崩壊性の製剤を提供することを目的とする。また、該速崩壊性固形製剤の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、速崩壊性固形製剤を製造するうえで使用される成分組成は、糖質、結晶セルロース、活性成分、崩壊剤、および滑沢剤であることを見出した。そして、糖質、結晶セルロース、活性成分、および崩壊剤を予め、一緒に混合・造粒し、平均粒子径20〜400μmの造粒顆粒に整粒し、この造粒顆粒に崩壊剤、および滑沢剤を混合し、この混合物を打錠する。打錠することにより口腔内での速やかな崩壊を示す口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)が得られるのである。
【0010】
また、糖質と結晶セルロースとの配合比率を範囲限定することで、低打圧・高硬度で速崩壊性の錠剤が得られる。
【0011】
さらに、これらの成分を混合し、混合物を特殊な製造機器を用いず、一般的な造粒機、打錠機にて打錠し、錠剤に成型するといった簡便な方法で、所望する適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮する口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)が得られる。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分、d)崩壊剤、およびe)滑沢剤を含み、a:bの質量比率が100:(5〜1500)である速崩壊性固形製剤。
(2)a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分からなる造粒顆粒を含む(1)記載の製剤。
(3)a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分、およびd)崩壊剤からなる造粒顆粒を含む(1)記載の製剤。
(4)前記造粒顆粒の平均粒子径が20〜400μmである(2)または(3)記載の製剤。
(5)a)糖質が乳糖、c)活性成分がグルコサミンである(1)〜(4)のいずれか1つに記載の製剤。
(6)グルコサミンがグルコサミン塩酸塩、N−アセチルグルコサミンから選ばれる少なくとも1種である(5)記載の製剤。
(7)a)糖質、b)結晶セルロースのa:bの質量比率が100:(100.1〜250)である(5)または(6)記載の製剤。
(8)口腔内速崩壊性の固形製剤である(1)〜(7)のいずれか1つに記載の製剤。
(9)固形製剤の質量に対して、c)活性成分を0.1〜90質量%含む(1)〜(7)のいずれか1つに記載の製剤。
(10)固形製剤の質量に対して、d)崩壊剤を0.1〜20質量%含む(1)〜(7)のいずれか1つに記載の製剤。
(11)固形製剤の質量に対して、e)滑沢剤を0.1〜10質量%含む(1)〜(7)のいずれか1つに記載の製剤。
(12)a)糖質、b)結晶セルロース、d)崩壊剤、およびe)滑沢剤を含み、a:bの質量比率が100:(5〜1500)である速崩壊性固形製剤用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮する速崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)であって、混合粉体をそのまま打錠する直接打錠(直打)もしくは、水や有機溶媒などで混合粉体を湿式造粒した顆粒を打錠(湿打)したもので、高齢者、小児及び嚥下困難な患者にとって服用しやすくした速崩壊性の錠剤である。速崩壊性の錠剤の組成としては、糖質と結晶セルロースを組み合わせる場合が多々あるが、結晶セルロースの配合比率が糖質の配合比率を上回ると、口腔内で、もさつきを感じ、服用感が悪化する。そこで、従来は、結晶セルロースの配合比率は糖質の配合比率より少ないほうが良い。しかし、活性成分にグルコサミン、糖質に乳糖を使用した場合は、結晶セルロースの配合比率は乳糖の配合比率より多いほうが、口腔内での服用感が良いことを見出した。これは、糖質と結晶セルロースとの配合比率を範囲限定し圧縮成形することで、錠剤構造が密になり、結晶セルロースが可塑変形して活性成分であるグルコサミンのエグミなどを包み込み、活性成分特有の味や臭いが抑制され口腔内でマスキング効果を発揮する。さらに、結晶セルロースの中でも、成形性の高いグレードは多孔質な素材であることから、口腔内において顆粒のざらつき、もさつき感を抑制でき、口腔内での服用感も改善することができる。しかも該錠剤は、低打圧・高硬度で速崩壊性の錠剤が得られ、煩雑な製造工程を経ることなく簡便に得ることができる口腔内速崩壊錠であり、本発明は、該速崩壊性固形製剤用の組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0015】
本発明の速崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)は、水なしでも服用できる医薬品および健康食品製剤で、口腔内でも速崩壊性を有するものであり、口腔内で60秒以内、好ましくは30秒以内に崩壊する錠剤で、成分組成は、a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分、d)崩壊剤、およびe)滑沢剤を含む。
【0016】
本発明でいう速崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)は、糖質、結晶セルロース、活性成分、崩壊剤、滑沢剤以外のその他の成分を含んでも良い。
その他の成分としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、マルトース、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、コメ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デンプン糊、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、香料のオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、チョコレート、カプシカム、ケイヒ、シュガー、スペアミント、パイン、ハッカ、ビター、レモン、ローズ等のエキス、ウイキョウ末、ウイキョウ油、エチルバニリン、オイゲノール、オレンジ油、d−カンフル、dl−カンフル、ケイヒ末、ケイヒ油、ゲラニオール、ジンコウ末、スペアミント油、チモール、テレビン油、トウガラシ末、ハッカ、バニリン、マルトール、メントール、ユーカリ油、レモン油、ローズ油、ローズ水、アスパルテーム、アマチャ、アミノ酢酸、液糖、果糖、水アメ、カンゾウ、キシリトール、グリセリン、精製白糖、精製ハチミツ、ブドウ糖、マルチトース、単シロップ、ソルビトール、サンフラクト、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、アミノ酢酸、ウイチョウ、液糖、オイゲノール、オウバク末、オウレン、カカオ末、カラメル、カルバコール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、タンニン酸、チモール、トウガラシ、トウヒチンキ、ニガキ末、ビターチョコレート、フマル酸、ユーカリ末、緑茶末、ローヤルゼリー、ピアレックス、食用赤色2号、3号、102号、食用黄色4号、5号、食用青色1号等の食用色素、リボフラビン、ウコン抽出液、塩化メチルロザニリン、インジゴカルミン等が挙げられる。
【0017】
本発明で使用されるa)糖質とは、トレハロース、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、マルトースなどの糖類、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール類であるがこれ以外でも構わない。好ましくは、トレハロース、乳糖である。
特に活性成分のグルコサミンと糖質を組み合わせる場合は、乳糖がより好ましい。乳糖はグルコサミンの粒子径や流動性、および成形性などの粉体物性が似ている為、分離偏析しにくく錠剤化しやすい。
【0018】
本発明で使用されるb)結晶セルロースとは、白色の結晶性粉末であり、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースを鉱酸で部分的に解重合し、精製したものである。また、結晶セルロースには様々なグレードがあるが、本発明においては、高成形性の結晶セルロースの粉体物性値である嵩密度が0.2〜0.3g/ml、平均粒子径が40〜90μm、安息角が34〜50°、平均粒子径の長径短径比(L/D)が1.5〜4.0を示す結晶セルロースである。好ましくは嵩密度が0.20〜0.23g/ml、平均粒子径が40〜60μm、安息角が40〜50°、平均粒子径の長径短径比(L/D)が1.5〜3.0である。市販品としてはセオラスUF−711、セオラスKG−802(商品名)(旭化成ケミカルズ)などが使用できる。特に活性成分のグルコサミンと糖質の乳糖と結晶セルロースを組み合わせる場合は、セオラスUF−711が好ましい。セオラスUF−711の粉体物性は、嵩密度が0.22g/ml、平均粒子径が50μm、安息角が42°であり、グルコサミンと乳糖の粉体物性に似ている為、3成分が分離偏析しにくく、成形性が向上し、錠剤の摩損度も低減する。また、UF−711が錠剤内に均一に分散するため、UF−711が導水管の役割を果たし、錠剤内に水が速やかに浸透し崩壊性を促進する。
【0019】
本発明で使用されるc)活性成分とは、人及び動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものであって、器具・機械ではなく、素材特有の味を持つ活性成分が好ましい。素材特有の味とは、エグミ、苦味、酸味、甘味などであり、エグミとは、苦味と渋味をあわせたような味覚であり、苦味とは、食用に用いられる甘味、塩味などとはかけ離れて違和感のある味覚である。酸味とは、すっぱい味覚、甘味とは、甘い味覚である。
【0020】
素材特有の味を持つ活性成分とは、グルコサミン、グルコサミン塩酸塩、N−アセチルグルコサミン、コエンザイムQ10、ギムネマ、アガリクス、コラーゲン、サイリウムハスク末、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸塩、ウコン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸亜鉛、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、防風痛聖散等や抗癲癇剤(フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、等)、解熱鎮痛消炎剤(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド、等)、鎮暈剤、例えば、ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール、等)、麻薬(塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール、等)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン、等)、骨格筋弛緩剤(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン、等)、自律神経用剤(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、等)、鎮痙剤(硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン、等)、抗パーキンソン剤(塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ、等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン、等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン、等)、不整脈用剤(塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド、等)、利尿剤(塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド、等)、血圧降下剤(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ、等)、血管収縮剤(メシル酸ジヒドロエルゴタミン、等)、血管拡張剤(塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン、等)、動脈硬化用剤(リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート、等)、循環器官用剤(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン、等)、呼吸促進剤(塩酸ジメフリン、等)、鎮咳去痰剤(リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス、等)、利胆剤(オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン、等)、整腸剤(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、等)、消化器官用剤(メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン、等)、ビタミン剤(酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン、等)、抗生物質(ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、セフロキシムアキセチル、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム、等)、化学療法剤(スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、等)が挙げられる。
【0021】
c)活性成分のグルコサミンは軟骨修復や抗炎症に効果があり、近年高齢者向けに広く利用されてきているが、水なしで服用する場合、グルコサミン独特のエグミや苦味が口腔内での味を悪くし、そのままでは服用しにくい。そこで、糖質の乳糖と結晶セルロースの配合比率を範囲限定し、結晶セルロースが可塑変形して活性成分であるグルコサミンのエグミなどを包み込み、マスキングすることで口腔内崩壊錠として服用できる。さらに、グルコサミンをN−アセチル化したN−アセチルグルコサミンは味覚が改善され甘味が付加されているので、グルコサミンを活性成分として使用する場合は、N−アセチルグルコサミンが好ましい。
【0022】
本発明で使用されるd)崩壊剤とは、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン、崩壊用精製寒天、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。好ましくはアルファー化デンプンである。市販品としてはSWELSTAR PD−1、SWELSTAR FD−1(商品名)(旭化成ケミカルズ)などが使用できる。
【0023】
本発明で使用されるe)滑沢剤とは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、酒石酸カリウムナトリウム、軽質無水ケイ酸、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、硬化油、硬化ナタネ油等が挙げられる。滑沢剤は錠剤を作製するときの臼や杵に付着する粉を防止させる目的で配合されるが、滑沢効果が強すぎると、成形性が弱くなり、実用的な錠剤硬度50〜70Nを得るのに必要以上な圧力をかけなければならない。高い圧力で作製された錠剤は、錠剤の崩壊速度が遅延する傾向にあることから、口腔内崩壊錠には適さないため、できるだけ低い圧力で作製する必要がある。その点から、滑沢剤の種類はたくさんあるが、滑沢効果の低いステアリン酸カルシウム、タルク、硬化ナタネ油が好ましい。滑沢剤の配合量は錠剤重量に対して0.1〜10質量%含むことが好ましく、滑沢効果を抑制する意味では0.1〜5質量%含むことがより好ましい。
【0024】
活性成分(c)を含まない組成物、すなわちa)糖質、b)結晶セルロース、d)崩壊剤およびe)滑沢剤を含み、a:bの質量比率が100:(5〜1500)である組成物は、本発明の速崩壊性固形製剤用の賦形剤として用いることができる。
【0025】
糖質と結晶セルロースの質量比率は、錠剤の硬度、崩壊性や口腔内での甘味及び服用感から、糖質:結晶セルロース=100.0:(5〜750)が好ましく、100.0:(25〜250)がより好ましい。また、活性成分がグルコサミン、グルコサミン塩酸塩、N−アセチルグルコサミンの場合は、糖質:結晶セルロース=100.0:(100.1〜250)が好ましい。糖質100質量%に対して結晶セルロースが100質量%以下になると口腔内でグルコサミン特有のエグミを感じ、服用感が損なわれる。さらに、結晶セルロースの質量比率が、糖質に対して250.1質量%以上になると、口腔内でのもさつき感や甘味不足となり服用感に違和感が生じる。また、逆に5質量%以下になると、成形性が悪く、錠剤作製時に高い圧力が必要になり、結果、錠剤の崩壊性に悪影響をきたす。
【0026】
c)活性成分にグルコサミンを使用する場合、a)糖質:b)結晶セルロース=100:(60〜250)が好ましく、a)糖質:b)結晶セルロース=100:(100〜240)がより好ましい。グルコサミンは成形性が劣るので糖質よりも結晶セルロースの比率を多くした方が錠剤の成形性を出しやすい。また、逆に結晶セルロースよりも糖質の比率を多くすると、成形性が劣り打錠時に高い圧縮圧力が必要になり打錠障害が発生しやすい。
【0027】
a)糖質とb)結晶セルロースの質量比率を糖質:結晶セルロース=100:(5〜1500)にした混合粉体に、活性成分おとび崩壊剤を配合して、混合・造粒し造粒顆粒を得る。この混合・造粒の製造方法を説明する。混合方法は、通常、医薬品の製造に使用される装置を用いるが、例えば、V型混合機、ダブルコーン型混合機、タンブラー型混合機(ダルトン)などが挙げられる。造粒方法は、造粒機内で流動している混合粉末に水を添加もしくは噴霧させて、造粒顆粒を製造するが、造粒装置は、流動層造粒機(フロイント)、高速攪拌造粒機(パウレック)などを挙げることができる。混合粉体の活性成分の配合比率は90質量%以下であり、70質量%以下が好ましく、さらに50質量%以下がより好ましい。混合粉体の活性成分の配合比率が90質量%以下であれば、活性成分を配合しても、錠剤の成形性や崩壊性に影響を与えることはなく、口腔内崩壊錠としての速崩壊性の機能を損なうこともない。
【0028】
造粒顆粒の乾燥方法は、送風乾燥、熱風乾燥などがあり、乾燥装置として、流動層乾燥機(フローコーター(商品名);フロイント、マルチプレックス(商品名;パウレック)や箱型熱風循環式乾燥機、棚型乾燥機などを挙げることができる。
【0029】
乾燥した造粒顆粒は、顆粒の大きさを整えるため、整粒装置で平均粒子径20〜400μmになるように調製するが、50〜300μmなるように調製するのが好ましい。整粒装置としては、オシレーター、コーミルなどを挙げることができる。
【0030】
崩壊剤は、錠剤の崩壊性を良くするために配合するが、配合方法は、造粒顆粒に配合する方が好ましい。崩壊剤も造粒顆粒に配合する方が崩壊性が損なわれないので好ましい。崩壊剤の配合量は、錠剤重量に対して、0.1〜20質量%配合するが、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。少ない配合量で崩壊性が確保できれば錠剤の成形性に影響を及ぼさないので、口腔内崩壊錠に適する。
【0031】
錠剤を製造する打錠方法は、混合粉体を充填して圧縮成形して錠剤を作製するが、打錠装置としては、一般的にロータリー打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所)を挙げることができる。粉末を臼に供給するフィーダー部は、粉末の流動性や顆粒の大きさから攪拌フィーダーやオープンフィーダーなどフィーダーの種類を選択することができる。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0033】
本願で用いられる物性の測定方法及び条件は以下のとおりである。
【0034】
<造粒顆粒の平均粒子径[μm]>
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製、シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩を用いて試料20gを15分間篩分することにより粒度分布を測定した。そして、篩下積算分布における積算50質量%粒子径を平均粒子径とした。
【0035】
<錠剤の硬度試験>
錠剤硬度計(DR.SCHLEUNIGER製、Tablet Tester 8M)により、1錠をセットし、錠剤の硬度を測定した。20錠の測定値を平均し、錠剤硬度とした。
【0036】
<錠剤の崩壊試験>
第15改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液は水を用いた。
【0037】
<錠剤の口腔内崩壊試験>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内の唾液で錠剤が完全に崩壊する時間を測定した。各人2回測定し、3人の平均値を用いた。
【0038】
<錠剤の口腔内官能試験>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内に錠剤を含み、錠剤が唾液で崩壊して過程でのもさつき感、味覚などを官能的に試験した。各人2回測定し、3人の平均的な感じ方を表現した。
【0039】
<錠剤の摩損度試験>
第15改正日本薬局方、製剤総則に従って実施した。一定速度の25rpmで回転する円筒中に錠剤を20錠入れ、中板により錠剤の落下を繰り返した。4分間回転させ、円筒内の錠剤を取り出した。破損分離した粉及び小粒子を篩別除去して質量を測定し、質量減をもとの質量に対する百分率で表示した。
【0040】
[実施例1]
トレハロースP(旭化成ケミカルズ)、0.56kgと結晶セルロースのセオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)、0.24kgとN−アセチルグルコサミン(焼津水産)、0.80kgをタンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み、20分間混合させた後、取り出し、高速攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーターVG−10;パウレック)に投入し、造粒した。造粒条件は下記の通りであった。
【0041】
(1)ブロード回転数 :500rpm
(2)チョッパー回転数:1500rpm
(3)造粒時間 :3分間
(4)水添加量 :0.24kg
造粒顆粒を取り出し、流動層乾燥機に仕込み、顆粒を乾燥させた。乾燥条件は下記の通りであった。
【0042】
(A)使用装置 :マルチプレックス(商品名)、MP−01型、(株)パウレック、
(B)風量 :7m/min
(C)給気温度 :70〜75℃
(D)停止排気温度:45℃
【0043】
乾燥した顆粒を取り出し、篩目710μmで整粒後、顆粒の粒度分布を測定した結果、平均粒子径は305.5μmであった。
【0044】
この顆粒、1200gにSWELSTAR FD−1(商品名)(旭化成ケミカルズ)、36g、アスコルビン酸(武田薬品工業)、14gを加え、タンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み20分間混合させた後、ステアリン酸カルシウム(太平化学工業)を12g加えて、さらに3分間混合し、取り出した。
【0045】
混合粉体を打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所)に仕込み、錠剤を作製した。打錠条件は下記の通りであった。打錠障害もなく打錠でき、得られた錠剤の硬度は64N、崩壊試験による崩壊時間は20秒、口腔内での崩壊時間は26秒、摩損度は0.15%であり、口腔内での服用感はN−アセチルグルコサミンのエグミやUF−711の粉体由来のもさつき感も無く、口腔内崩壊錠として十分な結果を得ることができた。
【0046】
(イ)錠剤重量 :280mg
(ロ)錠剤径 :8mmφ、12R
(ハ)ローター回転数 :45rpm
(ニ)フィーダー種類 :オープンフィーダー
(ホ)打錠圧 :5kN
(ヘ)打錠時間 :10分間
(ト)臼杵本数 :12本
【0047】
[実施例2]
乳糖(DMV)、0.24kgと結晶セルロースのセオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)、0.56kgとN−アセチルグルコサミン(焼津水産)、0.80kgをタンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み、実施例1と同様に操作して、平均粒子径323.0μmの造粒顆粒を得て、錠剤を作製した。打錠障害もなく打錠でき、得られた錠剤の硬度は70N、崩壊試験による崩壊時間は16秒、口腔内での崩壊時間は21秒、摩損度は0.11%であり、口腔内での服用感はN−アセチルグルコサミンのエグミやUF−711の粉体由来のもさつき感も無く、口腔内崩壊錠として十分な結果を得ることができた。
【0048】
[実施例3]
乳糖(DMV)、192gと結晶セルロースのセオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)、448gとグルコサミン(甲陽ケミカル)、960gをタンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み、実施例1と同様に操作して、平均粒子径310.5μmの造粒顆粒を得て、錠剤を作製した。打錠障害もなく打錠でき、得られた錠剤の硬度は67N、崩壊試験による崩壊時間は18秒、口腔内での崩壊時間は24秒、摩損度は0.12%であり、口腔内での服用感は実施例2よりも甘味が減少したが、グルコサミンのエグミやUF−711の粉体由来のもさつき感も無く、口腔内崩壊錠として十分な結果を得ることができた。
【0049】
[実施例4]
乳糖(DMV)、336gと結晶セルロースのセオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)、784gとアルギン酸ナトリウム(キミカ)、480gをタンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み、実施例1と同様に操作して、平均粒子径287.0μmの造粒顆粒を得て、錠剤を作製した。打錠障害もなく打錠でき、得られた錠剤の硬度は86N、崩壊試験による崩壊時間は15秒、口腔内での崩壊時間は20秒、摩損度は0.08%であり、口腔内での服用感はアルギン酸ナトリウムのエグミやUF−711の粉体由来のもさつき感も無く、口腔内崩壊錠として十分な結果を得ることができた。
【0050】
[比較例1]
トレハロースP(旭化成ケミカルズ)、47gと結晶セルロースのセオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)、753gとN−アセチルグルコサミン(焼津水産)、0.80kgをタンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み、20分間混合させた後、取り出し、高速攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーターVG−10;パウレック)に投入し、実施例1と同様に操作して、平均粒子径289.0μmの造粒顆粒を得て、錠剤を作製した。打錠障害もなく打錠でき、得られた錠剤の硬度は92N、崩壊試験による崩壊時間は53秒、口腔内での崩壊時間は48秒、摩損度は0.08%であり、口腔内での服用感はN−アセチルグルコサミンのエグミは抑制されたが、もさつき感が強く、錠剤の崩壊時間も遅延したため、口腔内崩壊錠としては不適であった。
【0051】
[比較例2]
乳糖(DMV)、770gと結晶セルロースのセオラスUF−711(商品名)(旭化成ケミカルズ)、30gとN−アセチルグルコサミン(焼津水産)、0.80kgをタンブラー混合機(TM−50S型;ダルトン)に仕込み、20分間混合させた後、取り出し、高速攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーターVG−10;パウレック)に投入し、実施例1と同様に操作して、平均粒子径368.0μmの造粒顆粒を得て、打錠圧15kNで錠剤を作製した。打錠障害もなく打錠でき、得られた錠剤の硬度は52N、崩壊試験による崩壊時間は80秒、口腔内での崩壊時間は92秒、摩損度は0.27%であり、口腔内での服用感はN−アセチルグルコサミンのエグミを強く感じ、錠剤の崩壊時間も遅延したため、口腔内崩壊錠としては不適であった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、医薬品製剤および健康食品製剤の分野で好適に利用できる。特に優れた崩壊性を有しているため、水なしで服用できる崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分、d)崩壊剤、およびe)滑沢剤を含み、a:bの質量比率が100:(5〜1500)である速崩壊性固形製剤。
【請求項2】
a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分からなる造粒顆粒を含む請求項1記載の製剤。
【請求項3】
a)糖質、b)結晶セルロース、c)活性成分、およびd)崩壊剤からなる造粒顆粒を含む請求項1記載の製剤。
【請求項4】
前記造粒顆粒の平均粒子径が20〜400μmである請求項2または3記載の製剤。
【請求項5】
a)糖質が乳糖、c)活性成分がグルコサミンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
グルコサミンがグルコサミン塩酸塩、N−アセチルグルコサミンから選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の製剤。
【請求項7】
a)糖質、b)結晶セルロースのa:bの質量比率が100:(100.1〜250)である請求項5または6記載の製剤。
【請求項8】
口腔内速崩壊性の固形製剤である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
固形製剤の質量に対して、c)活性成分を0.1〜90質量%含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
固形製剤の質量に対して、d)崩壊剤を0.1〜20質量%含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
固形製剤の質量に対して、e)滑沢剤を0.1〜10質量%含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
a)糖質、b)結晶セルロース、d)崩壊剤、およびe)滑沢剤を含み、a:bの質量比率が100:(5〜1500)である速崩壊性固形製剤用組成物。

【公開番号】特開2011−251937(P2011−251937A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126672(P2010−126672)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】