速度及びトルクの比が無段連続可変の自動伝導装置
特に自転車用で、入力側の機械的エネルギーをクランク(80)から被駆動車輪に伝達するための自動的で、円滑な連続伝導装置で、ラチェットは揺動して交互運動をする運動部材(96)及び被駆動車輪に接続した連続回転運動部材(102)を有していて、一方向の運動方向でラチェットの交互運動部材を駆動するためにそのラチェットの交互運動部材とクランクの間を伝導可能に結合する伝導スプリング(82)を有している。戻りスプリング(100)がラチェットの交互運動部材に接続されていて、戻り力をラチェットの交互運動部材に加え、交互運動部材を反対方向に戻す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として機械的エネルギー(energy)を加えられる入力側伝導部材と出力側被伝導部材の間で速度とトルク(torque)の比を変化するための伝導装置に関する。より特定すれば、本発明は全体的に、入力側と出力側のトルクと速度の関数として無段階に伝達比を自動的かつ連続的に変化する機械式の伝導装置構である。伝導装置は特に自転車用に適しているけれども、他の車両及び他の機械にも有利な特性も有している。
【背景技術】
【0002】
プライム・ムーバー(prime mover)がトルクと速度の使用範囲に亘って操作でき、その一方で、種々の予想される運転モード(mode)の間に必要な種々の又通常かなり広いトルクと速度の範囲に亘って出力を変えることができるように、車両その他の機械の伝導装置内に組込むために従来技術には多くの伝導装置がある。最初、伝導装置を手動で操作して、数段階の変速比のひとつを選択していた。自転車は典型的に変速システム(system)又は歯車変速装置を用いていて、種々のスプロケット(sprocket)又は歯車を利用可能な比から択一的に選んで、かみ合わせる。
【0003】
従来技術でも、遭遇した状態に適当な変速比を決定する責任、及び、伝導装置を手動でシフト(shift)する責任から車両運転者が免れれば、容易性と便宜性が高まることを認識していた。結果として種々の自動伝導装置があった。これらのあるものは速度とトルクの検出装置を用いて手動伝導装置を自動化することに基づいている。あるものは離散的な歯車のかみ合わせの選択肢の間をシフトする。その一方で、他のものはプーリー(pulley)の有効直径を変えるベルト(belt)とプーリーのシステムを用いている。さらに、他のものは油圧のポンプ、モーター、弁の配置を用いる油圧システムである。
【0004】
そのような従来技術の変速システムは、必要な変速比の変更を行なえるけれども、複雑で、それゆえ、高価であり、結果的にいくつかの故障モードを生じやすい装置になる。そのようなシステムの一部は円滑で連続的な方法ではなく、離散的変速比を突然に又は段階的にシフトする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明の目的と特徴は、構造が単純で、さらに、必要部品が少なく、完全に機械的なので、特に自転車に適している自動伝導装置を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的と特徴は、必要負荷動力と入力側動力の変化に応じて円滑かつ連続的にその駆動比を革新的に変化させる伝導装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的と特徴は、自転車に特に適当で、乗り手が快適なペダルの速度とトルクでペダルをこぎ、その一方で、傾斜面によって生じるような必要な負荷動力に応答して伝導装置が駆動比を自動的に変更し、乗り手が感じ又は求められる入力側のトルクと速度の実質的変更を行なわない伝導装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的と特徴は、1以上の上記特徴と組合わせて、従来の自転車が示したのと同様なペダル回転の努力に対する反応を乗り手が感じるように、実質的なペダルのトルク変動を経験しないで、加速又は減速するために乗り手がペダル回転を早くも遅くもできる伝導装置を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的と特徴は、複数の車輪を駆動するのに適していて、かつ、その車輪を異なる速度で回転できるので、その伝導装置が差動機能を提供し、非回転車輪を含めて全ての車輪に駆動トルクを加えることができる伝導装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、例えば自転車の場合、車輪の片側へのリンケージ(linkage)が低速高トルクで駆動するのに好ましく、同じ駆動用クランク・シャフトから駆動される別のリンケージが同じ車輪を高速低トルクで駆動する方が適していて、ある時点には両側がその車輪を同一速度で駆動する。この機能を延長すると、単一の駆動軸がいくつかの異なる被駆動軸を同時に異なる速度及び(又は)トルクで駆動でき、又は、いくつかの異なるトルク・速度特性を有するリンケージを付けた単一の被駆動軸を駆動できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最も広い側面で、本発明は、入力側伝導部材からの入力側機械的エネルギーを伝達するための機械的変速を形成するため、ラチェット機構の交互運動部材への入力側伝導リンケージ内にスプリングを介在させている。それにより、入力側機械的エネルギー源による交互運動で出力側被伝導部材を駆動できる。より特定すれば、本発明は、本発明に基づく伝導装置に動力を伝達する入力側伝導部材を有していることである。ラチェットには交互運動部材及び連続運動をする出力側被伝導部材が含まれ、ラチェットの交互運動部材と入力側伝導部材の間を伝導可能に連結した伝導スプリングを有し、入力側伝導部材に加えられた力をスプリングを通じてラチェットの交互運動部材に伝達する。スプリングは出力側被伝導部材の運動とは無関係に入力側伝導部材の全運動が行なえるように、エネルギーを蓄積し、又、放出でき、屈曲もできる。伝導スプリングによりラチェットの交互運動部材に加えた力が交互運動部材を一方の運動方向に動かす。伝導スプリングは入力側伝導部材とラチェットの交互運動部材の間のどこかにあって良く、任意の物的構成と任意の力対運動の関係としうる。戻りスプリングをラチェットの交互部材に伝導可能に連結し、伝導スプリングにより加えられた力と反対方向の戻り力をラチェットの交互運動部材に加え、交互運動部材を反対方向に動かす。入力側伝導部材が伝導スプリングに連結したクランク・ピンを有するクランクである場合、操作は特に改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面内に示されている本発明の好ましい実施例の説明の中で、明確にするために特定の専門用語を使用している。しかしながら、本発明を選択された特定用語に限定することを意図しない。又、各特定用語には、同様の目的を達成するために同様に機能する全ての技術的同等語を含むと理解すべきである。例えば、「連結された(linked)」「伝導可能に連結された(drivingly linked)」「接続された(connected)」の用語、又は、それに類似した用語は、ひとつの物体から他に力又は運動を伝達することを意味するように用いられる。それらは直接の接続に限定されず、そのような接続が同業の技術者から同等であると認められる接続のような他の要素を通じた接続を含んでいる。例えば、伝導トレイン(train)はひとつのものから次へ機械的エネルギーを伝達する一連の直列接続をした機構を有することができる。又、基本動作を変えることなく、追加の機構を伝導トレインに挿入できることは良く知られている。
【0013】
本発明は機械的運動及び機構の基本原理を含み、それゆえ、この説明は使用されている技術用語の一部の定義で始めている。これらの定義は、示された実施例の動作原理を理解するために、及び、これらの基本原理を適用できる多くの可能な代替的実施例の範囲を評価するためにも重要である。定義の後で、本発明に適用できる基本概念の説明がある。それゆえ、好ましい実施例の構造は他の実施例と共に示されている。その後で、動作の説明がある。最後に、本発明の実施例を改善する強化策、代替実施例及び若干の変形の説明がある。
【0014】
1.用語の定義:
本説明に用いられている基本的専門用語の多くは米国特許商標局の分類マニュアルに基づいている。従来技術では交互運動から連続運動までをカバーするために多くの機構が知られているけれども、本発明の実施例には、追加的にスプリング要素が含まれていて、円滑で、連続的で、平均的な伝達比を提供していて、それは無段階又は段階無しで(比率を表現する方向により)ゼロ又は無限大から最小又は最大の比まで自動的に変化し、構造部品の制約及び入力側の有効エネルギーを提供する能力によってのみ制限される。
【0015】
「交互運動(alternating motion)」は最初は一方向に、次ぎに反対方向に向う経路に沿った間欠運動である。交互運動の経路は通常円弧に沿った交互の回転運動であるか、又は、往復の形で直線に沿った直線的変位のような交互直線運動である。交互運動は他の経路に沿っても生じうる。「連続運動(continuous motion)」は同じ方向に連続する運動であり、通常、直線に沿った直線的変位として、又は、連続的回転運動として生じる。連続運動は時として間欠的になりうる。即ち、無運動又は異なる速度の運動の期間を有することがある。用語「連続運動」の中の「連続」の用語は、運動方向が同一であり続けることを意味し、運動がある時間続くことを意味しない。
【0016】
交互運動を連続運動に変える良く知られた装置はラチェット(rachet)である。この説明で用いる用語「ラチェット」は一般的に交互運動を連続運動に変換する装置を意味している。そのような装置は通常間欠的保持形で、交互運動の一方向の間、駆動のための係合が有効であり、その係合中に駆動力が運動方向に加えられる。反対方向の運動では、間欠的保持装置の係合が解除され、反対方向には駆動力が加わらなくなり、その動作サイクル(cycle)の開始点に戻る。それゆえ、ラチェットは典型的に交互運動部材と連続運動部材を有し、対応する運動で作用する。効率化のため、さらに、ラチェットは、一方向に駆動力を好ましく加え、反対方向には駆動力を加えず、その間、交互運動部材がその運動経路に沿って戻る。さらに、一方向に強い摩擦による係合、そして、反対方向には低摩擦の係合及び滑りのように、他方向よりも一方の方向で強い力を簡単に加えることができる。それゆえ、ラチェットは、典型的に歯止めのような間欠的保持装置により、又は、ラチェット・バー(ratchet bar)又はラック(rack)の形で摩擦的に係合する部材及び歯により間欠的にステップ(step)状の駆動力を加える。他のラチェット装置には、ボール・クラッチ(ball cratches)又はローラー・クラッチ(roller clutches)が含まれる。設計者には、機械式、油圧式、磁気式、電気式、空圧式の装置を含めて、種々の従来技術のラチェット装置がある。さらに同業の技術者に知られているように、クラッチもラチェットとして使用するように適合化しうる。そのような装置は交互運動部材の要素の運動を用いて、クラッチの係合と係合解除を同期化している。例えば、これらは変位、速度又は加速度の検出器を使用できる。代わりに交互運動部材の運動限界でクラッチを係合する。
【0017】
「回転運動(rotary motion)」とは物体が内部の軸の周りを回転するので、その物体上の点が円弧の経路を通って移動することである。揺動運動は円弧の経路に沿って行なわれる360度未満の交互運動である。往復運動は直線の経路に沿った交互運動である。
【0018】
「スプリング(spring)」は本発明の実施例の重要要素である。「スプリング」はひずみ、変位、屈曲又は回転(集合的に変位又は屈曲という)の増加関数として機械・位置エネルギーを蓄積する装置である。スプリングは変位したときエネルギーを蓄積し、変位しない位置に戻ったとき同じエネルギーを放出する。このエネルギーの蓄積と放出は適切に設計したとき低エネルギー損失で行なえる。スプリングが加える力は変位の増加関数である。スプリングの力とスプリングの変位の関係は「スプリング力係数(spring force coefficient)」であり、その関係が直線であるときはスプリング定数(spring constant)として知られている。スプリング変位とスプリング力の間の増加関数の関係、及び、蓄積エネルギーと変位の間の増加関数の関係は通常のスプリングの実用範囲では線形であるけれども、これらの関係は代替的に非線形としうる。本発明のある実施例では、非線形関数の関係が好ましく、単位変位当たりの力と蓄積エネルギーが変位の増加と共に増加する。
【0019】
あるタイプ(type)のスプリングは機械的スプリングで、機械的変形により弾性的に変位する。これらには、コイル・スプリング(coil spring)、ねじり棒形スプリング、板ばね及び弾性的コード(cord)又はリボン(ribon)のような他の弾性体が含まれる。他のタイプのスプリングは気体スプリングであり、ピストン付きの密封シリンダーのような可変体積の容器に流体、典型的に気体が封入されている。片持ち梁形スプリングは一端を他の物体に固定されていて、弾性的に曲がることができる物体、典型的に梁である。梁は直線、曲がった形状にでき、又は、曲がり材を含めることもある。さらに、そのスプリングが長さ方向に沿って幅と厚みが変化しても良く、そのスプリング力係数に希望の非線形を導入できる。それゆえ、スプリングはたわみ、曲がり、伸ばし、圧縮する、又は、弾性的に変形する他の物体により形成しうる。スプリングは直線に沿った方向の力を又はトルクとして加えることができる。スプリングは磁気スプリングとすることもでき、磁気的吸引又は反発を力に結びつけ、空間的変化が変位又はひずみを生じる。そのようなスプリングは永久磁石又は電磁石を使用しうる。
【0020】
「クランク(crank)」は良く知られた装置で、「クランク・シャフト(crankshaft)」を有し、クランクシャフトを通る中心軸の周りを回転する。さらに、クランクは「クランク・アーム(crank arm)」を有し、それはクランク・シャフトからクランク「ピン(pin)」に伸びている。クランク・ピンは、クランク・シャフトの中心軸からクランク半径として知られている特定半径で、クランク・アームに取付けられているので、クランク・ピンが中心軸の周りの円形経路に沿って動く。しかしながら、これは基本構造であり、基本的クランクを形成しうる多様な代替構造がある。さらに、要素となる部分はこの構造についての専門用語で典型的に指定された構造に限定されない。例えば、「クランク・アーム」はアーム形に限定されず、それからクランク・ピンを伸ばしている車輪としうる。結果として、クランクを表現するために用いられる用語は一般的にクランクの基本要素として機能する構造を表現するのに用いられる。クランクシャフトの用語はクランクを回転可能に取付ける構造を表現し、クランク・ピンの用語はコネクティング・ロッド(connecting rod)のような物体が回転可能に取付けられて、クランクが連続的回転運動で動くと共に交互運動で動くことができるる構造を表現している。
【0021】
「フレキブル・ドライブ・リンケージ(flexible drive linkage)の用語はコード、ケーブル(cable)、テープ(tape)、鎖、又は、力を伝達できるように引張り方向には剛体で、かつ、追加的に、弾性限界に達しないのに、横方向のたわみ又は曲がりが可能な類似品を表現するのに用いられる。
【0022】
2.基本概念
本発明の最も基本的な概念は図1−4に略図で示されている。
【0023】
図1の簡略化した機械的伝導装置は、ラチェット・バー12、ラチェット・ホイール18の歯16に係合している歯14により形成されているラチェット10を有している。この簡略化した伝導装置で、入力側伝導機構20が直線的に往復運動をするプライム・ムーバーのような入力側の機械的エネルギー源に接続されている。ラチェット・ホイール18に固定された回転可能な軸22が連続運動をする出力側被伝導部材を形成している。ラチェット・バー12は交互運動部材を形成し、伝導スプリング24を介して、入力側伝導部材20に接続されている。戻りスプリング26はラチェット・バー12に取付けられている。入力側伝導部材20が往復する、又は、往復の要素を有する交互運動で動くと共に、スプリング24及び26は引張り状態で機能する。プライム・ムーバーにより入力側伝導部材が図1の左の方に動かすと共に、スプリング24及び26が伸ばされて、エネルギーを蓄積し、ラチェット・バー12を左方に動かして、ラチェット・ホイール18を反時計方向に回転する。プライム・ムーバーにより入力側伝導部材が図1の右の方に移動されると共に、ラチェット・バー12の歯14がラチェット・ホイール18の歯16との係合を解除されて、ラチェット・バー12の歯がラチェット・ホイール18の歯の上に乗り上げる。ラチェット・バー12は戻りスプリング26により戻り位置に引張られる。この往復サイクルは連続的に繰返されるので、出力側被伝導部材22には連続した回転運動が加えられる。
【0024】
図1の実施例の動作についての重要な観察結果は、入力側伝導部材20の往復の振幅(各移動方向の間の変位)が常に一定の同一変位である場合、ラチェット・バー12の変位、出力側被伝導部材22の回転角及び出力側被伝導部材22に加えられるトルクは全て出力側被伝導部材に加えられる負荷トルク、入力側伝導部材及び出力側被伝導部材の速度の関数である。出力側被伝導部材に加えられる瞬間的トルクも又時間の関数即ち入力側伝導部材20の周期運動の位相角の関数である。トルクは通常周期の一部でしか出力側被伝導部材に加えられず、ラチェット・バー12がスプリング26により戻るときにはトルクは加えられない。もちろん、これらのトルク・パルス(torque pulse)は周期全体に亘って平均化される。出力側被伝導部材への負荷トルクが、伝導スプリングにより加えられるトルクを超えている場合、出力側被伝導部材に加えられるトルク・パルスが周期の360度全域に亘って拡がり、ラチェットの交互運動部材は動かない。それゆえ、戻らない。重要なことは、入力側伝導部材20の往復振幅が常に同じであるけれども、ラチェット・バー12の変位、それゆえ、出力側被伝導部材22のトルクと速度は固定されず、むしろ、負荷トルクの関数として可変である。これらのパラメーターの可変性により、本発明の実施例は、入力側伝導部材20と出力側被伝導部材22の間の駆動関係の変動比率が自動的で連続的で円滑になる。
【0025】
図2は、通常方式で歯止め保持機構32に揺動可能に取付けられた歯止め34を有する歯止め保持機構32の形で、回転形交互運動部材30を用いた結果としての違いがあるが、類似した実施例に同一原理を適用して示している。歯止め34は軸38に固定されたラチェット・ホイール36に係合して、連続運動をする出力側被伝導部材を形成する。さらに、図2の実施例では、戻りスプリング40、及び、歯止め保持機構32と入力側伝導機構44の間に接続されている伝導スプリング42がある。スプリング40及び42はフレキシブル・テープ(flexible tape)46に接続されていて、フレキシブル・テープ46はポイント(point)48で歯止め保持機構32に固定されて、フレキブル・ドライブ・リンケージ(flexible drive linkage)を形成する。図1の実施例と同様に、伝導スプリング24がエネルギーを蓄積し、入力側伝導部材20が、図4で右に移動し始めた後でも、ラチェット・バー12に力を加える。
【0026】
図3は別の簡略化した実施例を示していて、出力側被伝導部材50がエンドレス(endless)で、エンドレス・ループ(endless loop)の駆動トレインの上に形成されたように連続したラチェット・バー52に取付けられる。ラチェット・バー52の歯54が歯止めバー58に従来方式で揺動可能に取付けられた歯止め56により係合されている。他の実施例と同様に、図3の実施例には戻りスプリング60、及び、入力側伝導部材64に伝導可能に連結した伝導スプリング62がある。
【0027】
図4は別の実施例を示していて、図3の実施例に類似しているが、伝導部材がクランク72で、クランク・ピン70を有し、又、クランク・シャフト74内に中心揺動軸を有している。実質的に往復運動を得るためにクランクを用いることは、本発明の動作を実質的に改善し、全ての実施例に適用可能である。クランクは連続的回転運動を交互運動に変換するために良く知られた装置である。クランクは交互運動を得るためにクランク・ピンに回転可能に接続されたコネクティング・ロッドのような追加構造を必要とする。コネクティング・ロッドを本発明の実施例で使用できるけれども、クランク・ピンと伝導スプリングの間の連結部がその機能を果たせて、クランク・ピンの運動の往復成分をスプリングに加えられるので、従来の剛体のコネクティング・ロッドは不必要である。より特定すれば、クランク・ピンにより伝導スプリングに加えられる力は常に同方向なので、フレキブル・テープ、鎖又は一方向に力を加えられる同等のフレキシブル・ドライブ・リンケージを使用でき、クランク・ピンに回転可能に接続していれば、コネクティング・ロッドの機能を果たせる。
【0028】
上記から、本発明で用いられるスプリングが引張り状態で動作するスプリングに限定されないことは明らかである。伝導スプリング又は戻りスプリング又はその両方は、それぞれの力をラチェットの交互運動部材に加えるために圧縮スプリングでも同等に動作しうる。
【0029】
3.好ましい態様
図5は、本発明の実施例に好ましい2要素の特徴を示している。その好ましい特徴はクランク80と片持ち梁形スプリング82である。クランク80はクランク・シャフト84とクランク・ピン86を有し、共にクランク・アーム88により接続されている。クランク80は円形の回転経路90に沿って連続した回転運動で角度θまで回転する。フレキシブル・テープ92がフレキシブル・ドライブ・リンケージを形成し、その一端でクランク・ピン86に回転可能に接続され、他端で片持ち梁形スプリング82の固定ポイント94に接続される。
【0030】
片持ち梁形スプリング:
片持ち梁形スプリング82は固定ポイント98でラチェットの交互運動部材96に固定される。片持ち梁形スプリング82は弾性的で柔軟な片持ち梁になっていて、その最も弛緩した位置で、ラチェットの交互運動部材96の周りを少なくとも部分的に円周方向に伸びている。図5に示すように、戻りスプリング100がその最も弛緩した位置であり、クランク・ピン86が片持ち梁形スプリング82に最も近づいた時に、片持ち梁形スプリング82の最も弛緩した位置を生じる。図2に示すように、戻りスプリング100はフレキブル・ドライブ・リンケージを特に好ましく利用し、ラチェットの交互運動部材96に接続する。ラチェットの連続運動部材101を出力軸102である連続運動の回転形の出力側被伝導部材に接続ないし固定されている。
【0031】
図5の実施例のいくつかの基本的動作原理が図6−10に示されている。この動作の予備論議では、必要な回転負荷を上回るために、十分なトルクが、連続運動で、回転形の出力側被伝導部材102に加えられていることを想定している。
【0032】
クランク80の角度θが図5に示す位置から図6に示す位置まで90度回転すると共に、片持ち梁形スプリング82が図示されたように移動する(即ち変形する)。そして、トルクが出力側被伝導部材102に加えられる。片持ち梁形スプリング82を用いるこの配置のひとつの特性は、フレキシブル・ドライブ・リンケージ92により加えられた力によりスプリングが外側に変形すると共に、固定ポイント94が出力側被伝導部材102の回転軸から半径方向外側に移動する。その結果はスプリングの変位が大きくなると共に、モーメント・アーム(moment arm)も大きくなることである。クランク80がさらに90度回転して図7に示す位置になるとモーメント・アームがさらに大きくなる。図7で180度の位置になると、スプリングの変位、それゆえ、ラチェットを通じて出力側被伝導部材102に加えられたトルクが最大になる。しかしながら、クランク80に加えられるトルクはゼロになる。なぜなら、フレキシブル・ドライブ・リンケージ92によりクランク・ピン86に加えられる力が、クランクがその周囲を回転しているクランク・シャフト84の中心軸の方を向くからである。図8に示す位置までさらに90度回転すると、通常、ラチェットの交互運動部材96が、戻りスプリング100による力を受けて90度の円弧内でいくぶん戻り始める。さらに90度動くと、図5に示すようにサイクルの初めに装置は戻る。そして、図10に示すように繰返される。
【0033】
バックアップ・ウォール:
図11は本発明の一実施例を示し、その動作を改善するために別の機能を含めてある。図11の実施例では連続的被駆動回転部材110がラチェットを形成するために交互運動部材116に揺動可能に取付けられた歯止め114と係合した歯112を有している。片持ち梁形スプリング118が交互運動部材116に固定ポイント120で固定されている。片持ち梁形スプリング118の他端は固定ポイント124でフレキシブル・テープの形になっているフレキシブル・ドライブ・リンケージ122に固定される。
【0034】
さらに、交互運動部材116にはバックアップ・ウォール126が固定され、交互運動部材116への取付部128の場所近くから曲がった経路に沿って外側に伸びている。バックアップ・ウォール126は片持ち梁形スプリング118の外側に位置していて、片持ち梁形スプリング118が十分に変位した場合に、その片持ち梁形スプリング118と係合するように配置されている。好ましくはバックアップ・ウォールの輪郭は、スプリングの変位が大きくなると共に、片持ち梁形スプリングの外側が徐々にバックアップ・ウォールに係合していくようになっている。例えば、バックアップ・ウォールが円弧に沿って伸びて良いが、この実施例の場合、インボリュート(involute)の方が良好な輪郭になると信じられている。
【0035】
図12はテープ状のフレキブル・ドライブ・リンケージ122による力の伝達方法を示していて、入力側伝導部材は伝導スプリング118に対してバックアップ・ウォール126を介して反対側に位置している。これはテープ122内にヨーク(yoke)状部分130を形成することにより実現でき、バックアップ・ウォール126はヨーク状部分を通って延長できる。もちろん、代替案として、分離したヨーク構造も使用しうる。別の代替案として、バックアップ・ウォール130の中央で長手方向に貫通するスロット(slot)を形成し、フレキブル・ドライブ・リンケージ、好ましくは細幅のコード又はケーブルがそのスロットを通って伸びているようにする。
【0036】
図13は、バックアップ・ウォール126の利点が非線形のスプリング力係数を与えることであることを示している。スプリング単独のスプリング力係数が直線である場合、バックアップ・ウォール126がそのスプリング関数を非線形にする。スプリングが変位又は変形すると共に、バックアップ・ウォール126の内面132に、その外側が固定ポイント120から徐々に外側がスプリング変位の増加関数として接触する。その結果、スプリングにより出力側伝導部材110に加えられるトルクはスプリングの変位の関数として線形よりも急速に増大する非線形で大きくなる。例えば、そのトルクは変位の関数として指数関数的に高まる。
【0037】
別の設計上の利点がバックアップ・ウォールをスプリングとしても機能するように形成することにより得られる。例えば、示されているバックアップ・ウォールを十分薄くし、弾性材料から作って、片持ち梁形スプリングとしても動作するようにできる。結果として、上記のような剛体のバックアップとしてのみ機能する代わりに、バックアップ・ウォールに伝導スプリングが接触したときに、弾性のバックアップ・ウォールがスプリング力を生じ、エネルギーを蓄積する。この方法で、伝導スプリングにより加えられるスプリング力が、伝導スプリングがバックアップ・ウォールに係合すると共に種々の指数関数的に変化して得られるスプリング力係数の曲線に沿って増大する。これにより、設計者は設計の選択肢を追加できる。これは、例えば、強力な乗り手が丘登りで用いる伝導装置に有用である。この場合、車輪速度を低くして非常に高い最大トルクを出せることが望ましい。
【0038】
図14、15、16が3種類の代表的な運転状態での図11及び12の実施例及び他の実施例の動作を示している。これらの図面では、簡略化のために、入力側伝導部材を時として“D”として示し、出力側被伝導部材を時として“d”として示している。さらに、対応する参照番号が図面に示されている。
【0039】
図14に示した最初の状態で、出力側被伝導部材が加えるトルクが必要負荷トルクを上回るのには不十分なので、出力側伝導部材140は固定(非回転)の停止状態で固定される。自転車の場合、この状態は自転車が停止して、急坂に向った場合に生じうる。しかしながら、入力側伝導部材Dはクランク142であり、固定速度で駆動される。図14Aに0°として示されているクランク142の基準回転角で、片持ち梁形スプリング144のたわみはゼロである。この状態で、図14F及び14Gで示すように、入力側クランク142のトルクはゼロであり、出力側被伝導部材に加わるトルクもゼロである。
【0040】
クランク142が90°回転して、図14Bに示す位置になると、伝導スプリング144がたわみ、入力側クランク142及び出力側被伝導部材140の両方へのトルクが図14F及び14Gに示すように増大する。さらに90°回転して、図14Cに示した180°の位置になると、伝導スプリング144がその最大変位までたわんで、図14Gに示すように、出力側被伝導部材140に最大トルクが加わる。その一方で、図14Fに示すようにクランク142に加わるトルクがゼロになる。
【0041】
クランク142がさらに90°追加する回転を続けて、図14Dに示す位置になると、伝導スプリング144のたわみが減少し、図14Gに示すように出力側被伝導部材140に加わるトルクが低下する。クランク142が図14Cの180°の位置を超えて回転した後で、負のトルク(即ち、クランクの回転継続を支援)がクランク142に加えられるので、クランク142を回転しているプライム・ムーバーにエネルギーが戻されることに留意されたい。図14F及び14Gに示すように、これは、その要素が360°の図14Eに示す位置に戻り、図14Aと同じになるまで続けられる。
【0042】
結果として、出力側被伝導部材140が固定され、動力を受けることができない場合、そうなるべきであるように、静止したままの出力側被伝導部材140の場合に360°の周期全体に亘って、クランク142から出力側被伝導部材140への周期全体に亘る正味のエネルギーの流れはゼロである。当該分野の技術者であれば理解できるように、動力はトルクと回転速度ないし角速度の積に比例している。それゆえ、図14に示す実施例の動作では、出力側被伝導部材140に加えられるトルクが上昇と下降を繰返す波になっている。この静止状態では、出力側被伝導部材140への高いトルクを維持するため、及び、比較的小さな摩擦その他の損失を除いて、クランクの継続的回転を維持するためのクランク142での正味動力の入力は必要ない。重要な点は、出力側の仕事が無いときにこれらの静止状態で、入力側の正味仕事が無いが最大トルクは依然として出力側被伝導部材dに加えられていることである。入力側の軸Dはほとんど努力しないで任意の速度で回転しうる。なぜなら、エネルギーはスプリングに流入し、又、流出するだけだからであり、機構の外には伝達されない。
【0043】
瞬間的トルクは図14F及び14Gに示すようにクランクの角位置の関数として変化するけれども、以下に示すように、これらのトルク・パルス(torque pulse)の上昇と下降を繰返す波は本発明に改良を加えることにより、平滑化し、平均化できる。これらの改善には、本発明の複数の実施例を並列的に使用して、等角度の間隔を設けた位相関係での動作、フライホイールの使用、及び、特に自転車に望ましいこととして、自転車のペダルより大きな角速度で本発明のクランク142を駆動すること、が含まれる。
【0044】
本発明の実施例である自転車の伝導装置の場合、例えば、図14に示したピーク(peak)の静止トルクは約150ニュートンメートルとする。それは従来の自転車用伝導装置にほぼ典型的な最大値である。駆動部の形状及び最大たわみ時のスプリング力とモーメント・アームにより、伝導装置に特別なトルクが設計される。
【0045】
被駆動用出力軸dが動く場合、状況が異なり、図15及び16に示されている。負荷によって生じるトルクに耐えて出力軸dを駆動するのに動力が必要になる。そして、この動力は入力軸Dにより伝導装置に送らなければならない。出力軸dが動いているときに、典型的周期に亘る運転は図15及び16に示されている。
【0046】
図15及び16では、図14と同様に、入力軸Dの角運動に対する事象を図示しているが、出力軸dの運動の結果として、その結果は図14の場合とは全く異なる。図14の場合は軸dが静止しているからである。例示として、出力側被伝導部材dの角速度は図15の場合入力側伝導部材の軸Dの角速度の1/4であると想定されているので、入力軸Dが一回転を完了したときに、出力軸dは90°しか回転しない。図15A−15Gを参照すると、入力軸Dがゼロ位置(図15Aで0°の回転角で最も左)から回転するので、最初に、出力軸dを駆動するためにラチェットに係合できる速度に加速しなければならない。これが図15F及び15GのポイントAで、ここでラチェットが係合し、出力軸dの駆動を始める。入力軸Dの相対速度はテープの接点F(図15F及び15G)での速度より大きいので、ポイントPで、Dへのテープ取付ポイントの相対速度がdへの取付ポイントの速度未満に再び低下し、スプリングのたわみが低減し始めるまで、スプリングのたわみが大きくなる。ポイントEで、スプリングはもう一度たわみゼロの配置に戻り、ラチェットの係合が解除される。Aでのラチェット係合からポイントEでの係合解除までの時間に亘って、テープはスプリングをたわませる。そして、この時間の一部でテープの速度が逆転し、スプリングが収縮、即ち、たわみを低減するように動くという事実にもかかわらず、dへのトルクが存在する。全周期に亘って、出力軸dに送られ、かつ、入力軸Dから流出する平均動力は、入力軸Dの一回転の期間に亘って加算した全トルク・インパルス(torque impulse)(トルクと時間の積)に比例している。即ち:
P〜n∫Tdφ
この関係は、フレキシブル・ドライブ・リンケージのテープの相対的変化によるだけでなく、スプリングの力とモーメント・アームの関係により決定される。なぜなら、力とモーメント・アームの両方が図に示すようにテープの変化と共に変化する。一般に、伝達された動力はスプリングのたわみ、モーメント・アーム、係合している時間的比率及び単位時間当たり周期の数に比例する。これら4項目全部が、出力軸dに対する入力軸Dの回転速度の増大と共に増大する。それゆえ、出力軸dの固定回転速度で出力軸dに伝えられる動力は軸Dの入力速度の4乗にほぼ比例する。この事実により、伝導装置入力軸Dの入力速度が出力軸dの出力速度及びDへの入力動力に、広範囲に亘ってほぼ一定である。
【0047】
速度比が高くなると、出力軸dの回転速度が入力軸Dの回転速度に近づく。そして、ラチェットの係合時間、スプリングのたわみ、モーメント・アームの全てが速度比が低くなる状態で低減する。図16A−16Gは出力軸dの角速度が入力軸Dの角速度の3/4であるときの一般的な動作関係を示している。図16A−16Gは、ラチェット外側の交互運動部材が出力軸dを最初に加速して係合し、トルクを加え、次ぎに、ある期間、スプリングが伸びて出力軸dを駆動し、さらに、その駆動がスプリングの収縮により続き、ラチェットの係合解除と再巻き込みにより終了することを示している。これらの速度比が高い場合、クランク回転のかなりの部分がラチェットの係合解除状態で行なわれる。そして、ラチェットとスプリングが加速して、係合するか又は再巻き込みをして開始状態になる。速度比が低いときと比較して、この動作は比較的低効率になるので、設計者は低い最大速度比d/Dを選択することによりそれを避けることを選択して良い。例えば、設計者はDでのクランク半径と比較して有効ラチェット径dを小さくすることができる。
【0048】
上記から入力側伝導部材の各360°の周期に対して、出力側伝導部材は360°の整数倍にならない位相角まで、又は他の固定比で移動するが、代わりに出力側の速度とトルクの関数として変化する位相角まで移動することを一般的に観察できる。
【0049】
スプリングの合成と形状、及び、バックアップ・ウォールの形状による設計の寛容度があるので、出力軸dの広範囲の速度に亘って、入力軸Dの入力速度が一定で、動力も実質的に一定であるようにトルク/たわみの関係を形成することができる。例えば、設計者は多くの自転車乗りにとって最大の動力と速度として、90rpmのペダル速度で250ワットの一定動力を選択することができる。そのような設計で、乗り手が低いペダル速度を選択した場合、必要動力が急激に低下すると感じるだろう。なぜなら、伝達される動力はペダル速度の4乗で変化するからである。一定の道路速度で(出力軸dの速度が一定)、ペダル速度が90rpmから60rpmに低下すると、約5分の1に出力が低下して、250ワットから50ワットになる。又は、訓練された運動家を除いて維持できない非常に高い動力から典型的乗り手に快適な動力に低下する。
【0050】
動作特性は図17−19に示されている。動力が一定に保たれると、可変速の伝導装置は双曲線のトルク対速度の関係P=2πTnを持たなければならない。ここで、P=動力、T=トルク、n=角速度(度/秒)である。これは図17に一群の点線の双曲線P1−P3として示している。それぞれが異なる一定動力に対するものである。しかしながら、実際の伝導装置では、最大トルク及び最大回転速度の両方に制限があるので、図17の実線で示すように動力曲線が制限されている。
【0051】
図18は、実際的で現実的な運転範囲に亘って一定の入力動力に対する実質的に一定の出力動力の場合のこれらの特性を示し、端部の限界が、低出力端ではスプリングが加えることができるトルクにより、高出力端では自動車乗りのような入力側のプライム・ムーバーによる動力限界により決定される。
【0052】
上記から、図19に示すように、本発明の実施例が伝導装置として動作し、入力側と出力側の間で速度とトルクの比を自動的かつ円滑に変化する。
【0053】
出力側被伝導部材dの必要負荷トルクが非常に小さく、ゼロに近い場合、スプリングのたわみが小さい。伝導装置の運転特性は、リンケージの形状特に回転要素の直径比により決定される最大トルク比と最小速度比で、固定速度比に近い。トルク・パルスの振幅は小さく、実質的に短い間隔の回転のみで生じる。
【0054】
パルスの平滑化
上記のように、トルクは、ラチェットの連続運動部材に一連のパルスとして加えられ、運転パラメーターの関数として変化する。
【0055】
同様に、一連のトルク・パルスが運転中に入力側伝導部材に加えられる。それも変化する運転パラメーターの関数である。結果として、本発明を自転車に適用した場合に、乗り手はこれらの瞬間的トルクのパルス状変化を感じる。乗り手が平滑になったと感じるために、又は、これらのパルスを他の形で平滑にするために、本発明の実施例に加えられるいくつかの改良がある。これらの改良は個別に又は他のそのような改良と組合わせて用いられる。
【0056】
図20はそのような改良のひとつを示していて、自転車で用いるのに特に適当である。通常の二重クランク式自転車のペダル機構160はクランク・シャフト162を有し、その周りに回転し、それに固定された一対のペダル形クランク・アーム164及び166も有している。通常のスプロケット168もペダル機構に固定され、駆動チェーン(chain)170により、クランク形入力側伝導部材174に固定されたスプロケット172に連結されている。良く知られているように、相対的スプロケット直径がこの固定比の伝導装置の駆動比を決定する。このクランク形入力側伝導部材を駆動する固定比の伝導装置の駆動比は、自転車のペダル機構の角速度よりも、クランク形入力側伝導部材174の角速度の方が高くなるように選択される。好ましい駆動比は約6:1で、自転車のペダル機構160が1回転するごとにクランク形入力側伝導部材174が6回転する。結果として、多数で、短く、より接近した間隔のトルク・パルスが各回転中にペダル機構に加えられるので、乗り手はパルス状変動をあまり感じない。
【0057】
図21及び22は、入力側伝導部材に加えられるトルク・パルスを平滑化する他の改良の略図である。この改良は本発明の実施例の同型品を多数、位相を違えて並列的に用いている。好ましくは、多数の伝導装置を等角度で位相を違えて配置している。これはクランクの回転軸の周りに角度的に間隔を置いて複数のクランク・ピンを設けたクランクにより実現する。例えば、入力側伝導部材は、クランク・シャフト188の周りに120°の角度間隔を設けて配置された3個のクランク・ピン182、184、186を有する三方向クランク180により形成される。複数のラチェット190、192、194が共通の出力側駆動軸196に取付けられ、各ラチェットには上記の交互運動部材と、お互いに固定された連続運動の回転形出力部材、上記のような共通出力軸の被伝導部材196が含まれる。
【0058】
複数の伝導スプリング198、200、202は、それぞれ、クランク・ピンのひとつに回転可能に連結され、かつ、上記のように、ラチェットの交互運動部材のひとつに伝導可能に連結される。各ラチェットは戻りスプリングに接続され、上記のように動作する。本発明の実施例によるこの多位相配列の並列伝導装置の動作により、図14−16に示すパルスを生じ、それぞれ360°の周期の動作中に重なり合う。得られた瞬間的トルクが多クランクの入力側伝導部材に加えられて、個々の伝導装置からの瞬間的トルクの和になる。多数の同型品からの瞬間的トルクの和は、個々の伝導装置の瞬間的トルクの変化である限り、振幅の変化はないだろう。より興味深いこととして、それぞれの個別伝導装置に対してクランク回転の角度に間隔があるので、クランク形入力部材に加えられたトルクが負のとき即ち、回転中のクランクの駆動を実際に支援し、図21−22に示した多位相クランク配列により、この負のトルクは、1個の伝導装置のスプリングから回収されて、その配列の他の伝導装置を駆動するために伝達された仕事になる。この伝導装置の位相配列の平滑化の効果の可視化には、1枚のグラフ(graph)に関する図14−16のグラフF及びGを複製し、120°の間隔を置いた位相として配置し、360°の区間に亘ってその和のプロッティング(plotting)を行なう。
【0059】
もちろん、追加のパルス平滑化が当該分野で良く知られている方法で、回転クランクにフライホイールを取付けることにより得られる。しかしながら、これはフライホイールの慣性により加速と減速を遅らせるだろう。
【実施例1】
【0060】
図23及び24は自転車の伝導装置に好ましい実施例を示している。スプリング・ホルダー(spring holder)210はラチェットの交互運動部材(図示せず)に固定され、交互運動で回転する。そして、示されている状態にホルダー210を戻すために、自転車のフレーム(frame)に伸びている戻りスプリングにより偏らせる。ガラス繊維入り材料の片持ち梁形伝導スプリング212は一端213を有し、その一端213はスプリング・ホルダー210とバックアップ・ウォール216の間に形成されたポケット214内に保持されている。スプリング・ホルダー210とバックアップ・ウォール216はガラス繊維入り材料で一体成形されているので、スプリング状に弾性変形を行なえる。この実施例で、バックアップ・ウォール216の好ましい輪郭はインボリュートである。引張りケーブル218から作られているフレキシブル・ドライブ・リンケージがバックアップ・ウォール216を貫通して長手方向に伸びているスロット220を通って伸びていて、入力側伝導部材(図示せず)に接続している。引張りケーブル218が伝導スプリング212を引張ると、伝導スプリング212がバックアップ・ウォール216の方にたわむ。アセンブリー(assembly)(スプリング、バックアップ・ウォール及びスプリング・ホルダー)が弾性体なので、それらがたわんで、車輪が回転しない限界内でクランクがその引張り部材が取付けられている方向に完全に変位することができる。この設計では、クランクは65mmの半径を有しているのでアセンブリーは車輪が固定されたときに引張りケーブル218の全変位の少なくとも2倍でなければならない。
【0061】
この設計では、伝導装置のクランクは図20に示すようなチェイン駆動によるペダルの軸回転の約6倍で駆動されるので、通常運転では、乗り手のペダルこぎは約60rpmで、クランクは約360rpmで回転する。スプリングは毎秒約6回の周期になる。ガラス繊維入り材料のスプリングは単位質量当たりエネルギー蓄積量が高いことと、疲労ないし永久ひずみを生じないで大きな変形を生じることに利点がある。
【0062】
車輪のトルクが低いと、要素の変形が小さくなり、そして、引張りケーブルはクランク半回転当たり車輪を約120°回転する。被駆動車輪の両側に1個ずつ2個の同一スプリング・アセンブリーがあるので、低トルクでは、クランク・シャフト1回転について、車輪は約240°回転する。車輪の負荷トルクが増大すると共に、スプリングとアセンブリーのたわみが大きくなり、車輪の回転が少なくなり、車輪が固定された状態で、たわみが最大になるまで、スプリングが全量伸びて、最大トルクが車輪に加わる。この最大トルクはシステムの形状と剛性により決定される。そして、この好ましい自転車の伝導装置では約100ニュートン・メートルになるが、強力な乗り手に対しては150ニュートン・メートルに高められる。強い競技者用自転車の場合は300場合によっては400ニュートン・メートルに高められる。
【0063】
図25は、図26に示す変数と寸法を有する図23の好ましい実施例の伝導スプリングに対する力とたわみの関係を示す。力は入力側駆動クランクのクランク角の正弦と逆関係になるので、入力側駆動クランクの回転時のトルクはほぼ一定である。もちろん、実際には、Dへのトルクは被駆動引張り部材に対して0°と180°の回転角で常にゼロになる。なぜなら、その角度で引張り部材への力はDの中心を通るからである。力に対するモーメント・アームが無くなるので、力がどんなに大きくてもトルクを生じない。より特定すれば、図23の実施例の幾何学的配置により、入力側駆動クランクが0°と360°の回転領域になるとき(即ち、クランク・ピンがラチェットに最も近づき、又、スプリングがスプリング・ホルダー210に対して最も弛緩している)、引張りケーブル218からの力がスプリングに沿って長手方向に加えられるので、スプリングに加えられる力の大きな成分がスプリングを長手方向に圧縮するように作用する。しかしながら、伝導スプリング212がたわみ、スプリング・ホルダー210から外に離れるように曲がると、長手方向に圧縮しようとする力は大きく低減し、その力は主としてそのスプリングを曲げるように加わる。それゆえ、スプリング力係数が非線形で、スプリング力がスプリングのたわみの関数として指数関数的に増加するかのように、スプリング力が非常に急激に低下する。これは、スプリング力がスプリングのたわみの関数であるだけでなく、瞬間的幾何学的配置の関数でもあるので可能になる。そこで、同じ理由で、回転角が360°に近づくと共に、スプリング力は非常に急激に増大する。
【0064】
この結果は出力側被伝導部材に加えられたトルクが図27に示すように瞬間的なトルク・パルス、及び、図28に示すような出力側駆動クランクのトルクになる。
【0065】
スプリングの設計
従来技術は希望の力とたわみの特性を持つスプリングを設計するために多くの良く知られている方法を有している。スプリングの設計はALGORのようないくつかの市販されている有限要素応力解析プログラムにより支援されている。図29−32は描画的手順をを示している。示された手順は描画的手法である。この方法は理解しやすいからである。しかし、透明性は少ないが当該分野で良く知られている解析的又はコンピューターによるシミュレーション方法によると複製でき、希望の精度で得られる。
【0066】
図29を参照して、単純な例を考えると、入力側駆動クランクD及び出力側被駆動ラチェット軸dの両方が同じ半径Rとして、Dの回転速度はdの2倍である。図25に示すように、得られた係合の角度φは30°のクランク回転になる。そのポイントで、接続しているテープの速度がラチェットの交互運動部材の速度に等しくなり、ラチェットが係合される。このポイントの後で、d上のテープがdの周縁速度で移動する。そして、クランク上のテープを別の速度で移動する。ポイントA及びBの軌跡は、最初ラチェットの係合時点で、共にテープ上にあるが、ここで、d及びD上のクランクの速度が異なる結果として分離するが、図29に示すように単純な作図的方法により追跡できる。ポイントAはdから巻き戻されるテープの結果として外に動き、Bはクランクから一定距離を保って左に動く。その結果、AとBが分離され、テープの線に沿ってスプリングが伸ばされる。これは図29に示すように希望のクランク角度で測定できる。
【0067】
図29で、スプリングのたわみは、ラチェット係合の角度φ、この場合約30°でゼロとして開始し、クランクの回転が約150°で最大になるように増大する。そのポイントの後で、たわみが急速に低減して、A及びBの軌跡の交点、クランクの約230°の回転でゼロになる。このポイントで、もはやスプリングに引張り力が加わらず、dでラチェットの係合が解除され、テープは再巻取りをされて、ほぼ0°の位置で最小の長さになる。そして、周期が繰返され、ラチェットの交互運動部材とテープの加速で始まり、30°での再係合ポイントまで進む。
【0068】
この方法により、スプリングの伸びを、Dでのクランクの任意の回転角に対して、及び、軸速度の任意の比に対して発見できる。
【0069】
望ましい力とたわみの関係を用いてスプリングを設計する良く知られた方法がある。この例で、図30に示すように、カム(cam)の上でのスプリングの曲がりが用いられる。一定の曲がりを生じるのに必要な力は片持ち梁形スプリングの厚み、幅、材料、及び、カムの形状による。自転車の伝導装置の場合、希望する伝達動力はDの毎秒6回転で約100ワットであると想定される。それゆえ、そのスプリングに対して希望する力とたわみの関係でその動力伝達を行なえるようにすべきである。必要な数学的関係が図32に示されている。それからスプリングとカムを設計しうる。スプリングの形状とカムの形状の多くの組合わせがその希望する結果を与える。自転車用で望まれるように、広範囲の相対的軸速度に亘って、一定の入力側動力を与えることを意図する設計の場合、スプリングとカムの設計は、最高速度比で始まる。その場合、スプリングのたわみは最小である。そして、速度Dを一定に保って速度dを段々に低くしていく。それで、カムとスプリングの形状設計を最高の速度比での最小たわみからdの速度ゼロでスプリングのたわみが最大になるポイントまで段階的に決定する。各段階で、スプリング力の増分を一定動力が維持されるように選定する。最初の設計目的に合わせて、動力損失が無く、かつ、動力源からDに伝えられる動力がDからdに伝えられる動力と同一であることが仮定されている。
【0070】
図29−32から、一定動力の場合、dへの平均トルクがdの角速度と逆関係にしなければならないことは明らかである。この平均トルクは周期の時間に亘ってトルクを積分(加算)して、時間で平均したものである。dの角速度が低下すると共に、回転時間に占めるラチェット係合時間の比率の合計が増加し、たわみが増加し、最高の力がたわみと共に非線形に増加する。それにより、軸dの速度が低下すると共に平均トルクの積分が急激に増加する。又、スプリングとカムの形状を適切にすることにより角速度に対する希望の逆関係とすることができる。
【0071】
軸dで入手できるトルクには限界があり、2本の軸の間で伝達できる力の合計により決定されている。考えられる場合に、システムが発生しうる最大の平均トルクが150ニュートン・メートルであり、それは自転車の伝導装置に対して妥当な最大トルクであると言える。そこで、100ワットを依然として伝達できるdの最低軸速度はN=100/2π・150即ち毎秒0.1回転又は6rpmである。この速度未満で、加えられるトルクがほぼ一定のままなので、伝えられた動力は速度と共に急激に低下し、速度がゼロになると動力もゼロになる。
【0072】
dが固定速度で、Dの回転速度の影響に留意することもおもしろい。速度Dが増加すると、dへの平均トルクが非常に急速に増加する。なぜなら、このトルクは周期に占めるラチェットの係合時間の比率により、スプリングの最大たわみにより、毎秒の周期の数により影響を受け、その全てが軸Dの速度にある程度比例して増加するからである。それゆえ、dへの平均トルクはDの速度の数乗で、約4乗で増加する。なぜなら、最大トルクは速度比と共に非線形で増加するからである。このことは実際に自転車乗りが60rpmから90rpmにペダル速度をほぼ1.5倍高めるために、必要動力が4乗ないし5倍に非常に急激に高まることを感じていることを意味する。これは、人間が出せる最大動力がペダル速度のこの範囲内のどこかにあるので、自転車伝導装置にとって望ましい特性である。逆に、自転車乗りが動力の入力を低減したい場合、ペダルをこぐ速度を僅か低減するだけで伝達動力は任意の希望値に急激に低下し、Dの速度ゼロにまで低下する。そこでは周期の間ラチェットが係合せず、dへの正味トルクは生じない。
【0073】
図23及び24は自転車伝導装置のための上記の好ましい実施例を示している。伝導装置の中で、伝導スプリングには軸dの周りにラチェットを組込んでいて、伝達する力が増大すると共に、d上の力のモーメント・アームも高まるので、力とモーメント・アームの両方に比例して、トルクの上昇とスプリングのたわみの積になる。この構造の設計手順は上記と同じであるが、解法内の各増分計算の段階で、力だけでなく、モーメント・アーム内の変化によるトルクへの影響を追加する。
【0074】
dに伝達される合計動力はD上の平均トルクとクランク・ピンの数に比例しているので、例えば、3個のクランク・ピンがあり、希望の伝達動力が100ワットである場合、各クランク・ラチェットのペア(pair)は33ワットを伝達するだけでよい。
【0075】
図23及び24に示したスプリングは幅が約30mm、厚みが約5mmである。それらの図面のバックアップ・ウォールは曲率半径140mmの円弧として選ばれた。固定した最大スプリング応力に対するバック・ウォールの曲率半径は希望のガラス繊維入り材料の最大応力と逆比例し、バックアップ・ウォールと接触する点でのスプリングの厚みに直接比例している。それゆえ、一定の厚みで希望の引張り応力のスプリングに対して、バックアップ・ウォールの曲率は長手方向に沿って一定である。即ち、バックアップ・ウォール上でのスプリングの端部への最初の接点での円弧になる。
【0076】
定性的観察
本発明の実施例は、純粋に機械的で無損失で、無限に可変の速度・トルクの伝達装置で、図19のトルク比対速度比の曲線に示すようなゼロ近くまで下げた出力軸の速度で、全ての入力動力を出力軸に伝える理想の伝達特性を有するものとして機能する。伝導装置の要素には本質的動力損失が無いので、その極限で、出力伝達の効率は100%に近づけることができる。クランクの複数のアームが、それぞれ上記のように、D及びdへほぼ一定のトルク対時間を与えることができる。自動車乗り又は他のプライム・ムーバーがクランクのような入力側伝導部材に入力エネルギーを加える。そのエネルギーは1以上のスプリング内の蓄積と車両駆動のための出力の間で分配される。複数のスプリング・システムを用いて、入力エネルギーの一部はスプリングに蓄えられ、そのそれぞれのたわみの増減により、スプリング・サイクル(springs cycle)としてスプリングの間を移動する。
【0077】
運転中に、例えば、急坂を上るときに通常必要となる最大トルクのために自転車乗りがペダルの上に立つ必要性を感じなくなり、代わりに、乗り手が最大動力となる速度で、通常60rpmと90rpmの間で、足踏みペダルのクランク機構の上でペダルこぎを常に行なうことができる。これはゼロまでの速度低下から最大速度の状態(即ち、スプリングのたわみが小さく、トルクが小さく、駆動軸の速度に近い被駆動軸速度で動作)まで任意の後輪速度で最大動力とするのにほぼ最適の速度比とするのにシステムが自動的に機能するからである。
【0078】
自転車に用いられた本発明の実施例で、自転車の速度が変化した場合でも、各運転周期に亘って平均化した平均入力トルクが、一定のペダル速度に対して、ほぼ一定になる。ペダル速度が増大した場合、乗り手が供給する動力が大きくなる。動力はトルクに速度を乗じたものに比例する。
【0079】
低速では、乗り手は最大で、最長の瞬間的トルク・パルスを感じる。速度が増大し、ペダル速度が一定のままなので、トルク・パルスの高さと期間の両方が低下する。もし、乗り手がペダル速度を高めた場合、瞬間的トルク・パルスの高さと期間が高まり、それゆえ、出力トルクが高まるので、加速度が高まる。
【0080】
乗り手が希望の巡航速度に近づくと、乗り手はペダルこぎを遅くでき、トルク・パルスの高さと期間が低下する。平均トルクが低下し、加速が停止して一定速度になる。それで、乗り手が通常の自動車乗りと同じ感じを受ける。ペダルこぎの速度が高まれば、入力動力が増大し、速度が増大する。しかしながら、乗り手のペダルこぎの速度には上限があるので、最大速度があり、その時に瞬間的トルク・パルスが短くなる。
【0081】
丘に遭遇したとき、乗り手ができるのは、(1)同速度でペダルをこぎ、その場合、トルク・パルスは高くなり、長くなる。自転車は遅くなり、乗り手が感じるトルクは僅かに高くなるか、又は、同じ状態を維持する、又は、(2)ペダルを早く動かす、その場合、トルク・パルスが高くなり、乗り手が十分早くペダルをこぐと、速度を維持できる。
【0082】
この伝導装置は自動車のような他の車両にも同等に適している。その場合、入力側クランク・シャフトDの複数のアームにより円滑な運転を行なえる。そして、希望する場合、同じ一次側軸Dにより異なる速度で駆動される2本の軸dにより差動効果を生じる。2本超の軸を1本の駆動軸によって駆動できて、駆動軸Dが固定速度であるが、被駆動軸dの全てが、異なる速度で操作される。
【0083】
もちろん、運転速度の範囲を拡げるために、この可変速度比の伝導装置を従来のシフト(shift)形伝導装置と組合わせることは可能である。
【0084】
滑り無しの全車輪駆動
上記のように、本発明に基づく伝導装置は、(1)出力側被伝導部材の速度とトルクに自動調節する、(2)被伝導部材が回転していないときでも出力側被伝導部材にトルクを加える、という2項目の特徴を有する。本発明の実施例は車両に滑り無しの差動で複数車輪を駆動する機能を提供できる。各車輪はそれ自身の伝導装置で駆動される。結果として、車両が動くとき、半径方向内側の車輪が半径方向外側の車輪より遅くなる。そして、トルクは回転していない車輪を含めて全ての車輪に加えられる。
【0085】
図33はこれを実現するためのひとつの方法の略図を示している。入力側伝導部材のクランク250は一対のクランク・ピン252及び254を有し、フレキシブル・ドライブ・リンケージ256及び258を介して、それぞれ本発明に基づく2個の異なるラチェット260及び262の伝導スプリングに接続している。各ラチェットの連続回転をする被伝導部材が各車輪264及び266のひとつに伝導可能に連結されている。これらの原理は2個を超える車輪に適用でき、1個のクランク入力用伝導部材の使用に限定されない。伝導装置は異なる速度で数本の軸を同時に駆動できる。それゆえ、通常差動機構により行なわれる機能を本発明の伝導装置により、1本の軸上のラチェットにクランク・アームの一部を取付け、かつ、他のアームを第二の軸上のラチェットに取付けることにより行なうことができる。車両が動いていて、1本の車輪が他の車輪より遅く回転するとき、遅い方の車輪は早いほうの車輪よりトルクが高くなるが、それでも両方とも駆動される。この効果は、極端な場合、一方の車輪が全く動かず、他方の車輪が動いているとき、又は、一方の車輪が滑っているが、他方は路面のグリップ(grip)を維持しているときに生じうる。滑っている車輪が伝導装置からほとんど動力を吸収しない。標準の差動機構と同様に、駆動軸から最も動いている車輪に動力が送られる共に、動かない車輪のスプリングの収縮が動いている車輪を駆動する。本発明のこれらの特性が見慣れている四輪駆動のような多輪駆動に適用しうる。
【0086】
この差動形効果はペダル駆動の三輪車に有利に使用しうる。この場合、2個の後輪のそれぞれが本発明に基づく伝導装置により駆動でき、1本のピンから1個の車輪の伝導装置に接続している1本のテープ伝導機構と他のピンから他の車輪の伝導装置に接続している他のテープを用いて2本のクランク・ピンにより駆動される。差動機構の必要性が無くなることで、重量、複雑性、費用が軽減される一方で、2輪駆動の利点を維持する。
【0087】
図34は同じ動作をするが、パルスの位相分散及び平滑化の目的のため、及び(又は)、ここで述べたようにトルクと速度の比率の利用できる範囲を拡張するために、各車輪に本発明に基づく複数の同型品を適用しうる。
【0088】
駆動比の範囲を拡張するための並行伝導装置
同じ一般特性の伝導装置を他の方法で使用できる。即ち、2種類の異なる速度比で被駆動軸の両側を駆動軸が駆動できる。それにより、例えば、自転車でそれぞれの車輪のスプロケットの直径により決定されたように、後輪の片側を低い速度比で駆動し、他の側を高い速度比で駆動する。これはシフト操作無しでトルク比の範囲を拡張する利点がある。両側が全ての速度で同時に後輪を駆動しているのだが、片側が低速で高いトルクを与え、他の側が高速でのトルクを高める。
【0089】
例えば、図36に示すように、自転車の車輪280の左側にあるスプリングとラチェット282は右側のスプリングとラチェット284の直径の3/4であり、両方のスプリングが(図23に示す好ましい実施例のように)同じ伝導部材のクランク・シャフト286により駆動され、両方のクランク半径288及び290は同じである。自転車の場合、伝導部材のクランク・シャフト286は、通常の駆動チェーン294により伝導部材のクランク・シャフト286に伝導可能に接続された通常の自転車用ペダル・クランク機構292により駆動される。
【0090】
低速では、右側のスプリングを用いて、左側より高いトルクとする。高い車輪速度では、右側は、速度が低いこと及びラチェット係合時間が少ないことにより車輪のトルクにあまり寄与しない。そして、左側はクランク半径に対して直径が小さいことにより車輪へのトルク・パルスの期間を長くするのに寄与している。
【0091】
調節可能なクランク半径
上記の特徴に加えて、このタイプの伝導装置にはD上のクランク半径を可変にできる。例えば、遠心力により作動し、軸Dの速度増大と共にクランクDの有効直径を大きくする。これは、dの回転速度が高くなるように、伝導装置の速度比を拡張する効果を有し、その一方で、同時にDの回転速度に対する動力の急速上昇を促進して、入力動力とは無関係にその伝導装置をほぼ一定速度にする。
【0092】
調節可能な動力レベル
乗り手の技術と動力に合わせて伝導装置を調節できるように、バックアップ・ウォールを調節可能にして、スプリング・バックアップの組合わせによる力・変位の関係を弛め又は剛体化できる。バックアップ・ウォールがスプリングから離れる動きにより剛性・たわみの関係を低減し、伝導装置のトルクと動力の最高値を低くする。図35は伝導スプリング274により係合できるバックアップ・ウォール272を有するラチェットの交互運動部材270を示している。伝導スプリング274は上記のようにフレキシブル・ドライブ・リンケージ276により変位する。しかしながら、バックアップ・ウォール272は揺動ピン278により揺動可能に取付けられ、その角度変位は制御ケーブル280により制御される。その制御ケーブルにより、バックアップ・ウォール272が伝導スプリング274に近づけ又は離すように調節可能に揺動する。
【0093】
この調節可能なバックアップ・ウォールの特徴は前記の特徴と組合わせることができる。前記の特徴とは、バックアップ・ウォール自体が弾性的なので、スプリングとして機能することである。
【0094】
乗り手の技術と動力に合わせて伝導装置を調節できるための、又は、起動時のペダル・トルクを低くするための好ましい構造が図37に示されている。スプリングとバックアップ・ウォールの組合わせの力・変位の関係を弛め又は剛性化するために、バックアップ・ウォール372のスプリングに対する幾何学的関係を調節できる。入力側クランク385の角回転周期の後期にスプリング374とバックアップ・ウォール372の係合が、スプリング374のたわみと共に、剛性・たわみの関係を低減し、伝導装置のトルクと動力の最大値を低くする。言い換えると、バックアップ・ウォール372に張り付いたスプリング374の部分の長さを調節して、それが入力側クランク385の角回転のある角度で短くなるようにすると、伝導装置のトルクと動力の最大値を低くする。逆に、その長さを増大すると、伝導装置のトルクと動力の最大値が増大する。図37は、図23の場合と同様に、伝導スプリング374と係合可能なバックアップ・ウォール372を有するラチェットの交互運動部材370を示している。伝導スプリング374は前記のようにフレキシブル・ドライブ・リンケージ376により置換える。しかしながら、バックアップ・ウォール372とスプリング374は、戻りスプリング(図37には図示せず)によって駆動された場合、その戻り位置で、ローラー378により回転するように変えられる。ローラー378は軸に回転可能に取付けられ、フレキシブル・ドライブ・リンケージ376に係合し、かつ、制御ケーブル380により所定位置に制御される。制御ケーブル380はフレキブル・ドライブ・リンケージ376に対して横からローラー378を(図37では上下方向に)調節して、フレキシブル・ドライブ・リンケージ376の経路を変える。ローラー378を上昇させると、スプリング・ホルダー310をそれに取付けられたバックアップ・ウォールと共に角度αまで回転する。これにより、スプリング374とバックアップ・ウォール372の戻り位置を変えられる。なぜなら、ローラがクランク・ピン386とラチェット部材270の間の直線からフレキシブル・ドライブ・リンケージを引張ると、スプリングとバックアップ・ウォールがフレキシブル・ドライブ・リンケージと並ぶ位置(α=0°−水平)ではなく、図37に示す低い位置に戻る。この低い戻り位置で、スプリングの有効な力とたわみの関係が低減する。なぜなら、スプリングとクランク・ピンの間の直線的接続までローラーが十分に戻った場合と比較して、クランク・ピン386の角変化が大きくなった位置でバックアップ・ウォールと遭遇するからである。戻り位置が低減することは、スプリング374を回転するのに必要な初期の力も低減する。なぜなら、その力はスプリングに対してほぼ直角に加わるからである。当該分野で良く知られているように、乗り手が、又は、コンピューターが制御ケーブル380を調節しうる。
【0095】
本発明の特定の好ましい実施例を詳細に開示したけれども、本発明の精神又は添付した請求項の範囲を逸脱せずに種々の変更を適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1−4】本発明の基本原理を示す略図である。
【図5−10】本発明の好ましい実施例の基本構造と動作を示す一連の略図である。
【図11】バックアップ・ウォールを示す本発明の実施例の側面図である。
【図12】フレキシブル・ドライブ・リンケージの接続を示す図11の実施例の部分図である。
【図13】非線形のスプリング力係数を示すグラフである。
【図14(A−G)−16(A−G)】3種類の代表的動作状態の下で、本発明の好ましい実施例の動作を図示している。
【図17−19】本発明の実施例の動作に関する略図である。
【図20】本発明の別の実施例を示す略図である。
【図21】本発明の別の実施例を示す略図である。
【図22】本発明の別の実施例を示す略図である。
【図23】本発明の好ましい実施例の側面図である。
【図24】図23の実施例の端面図である。
【図25】図23の好ましい実施例のためのクランクの入力側伝導部材の角変位の関数としての伝導スプリングの力の略図である。
【図26】図25、27、28に示された変数の線図である。
【図27】図23の好ましい実施例のクランクの入力側伝導部材Dの角変位の関数としての図23の好ましい実施例の出力側伝導部材dのトルクを示す略図である。
【図28】図23の好ましい実施例のクランクの入力側伝導部材Dの角変位の関数としての図23の好ましい実施例のクランクの入力側伝導部材に加えられるトルクの略図である。
【図29】本発明の伝導スプリング要素の設計を示す略図である。
【図30−32】本発明のスプリング及び伝達の特性を示すグラフである。
【図33】ノン・スリップの差動機能を与えるために多数の実施例で用いている本発明の別の実施例を示す略図である。
【図34】本発明の別の実施例の略図である。
【図35】本発明の別の実施例の略図である。
【図36】伝導装置のトルク比の範囲を拡張するための本発明の別の実施例の略図である。
【図37】自転車乗りの技術と能力に合わせて伝導装置を調節するための別の実施例の略図である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として機械的エネルギー(energy)を加えられる入力側伝導部材と出力側被伝導部材の間で速度とトルク(torque)の比を変化するための伝導装置に関する。より特定すれば、本発明は全体的に、入力側と出力側のトルクと速度の関数として無段階に伝達比を自動的かつ連続的に変化する機械式の伝導装置構である。伝導装置は特に自転車用に適しているけれども、他の車両及び他の機械にも有利な特性も有している。
【背景技術】
【0002】
プライム・ムーバー(prime mover)がトルクと速度の使用範囲に亘って操作でき、その一方で、種々の予想される運転モード(mode)の間に必要な種々の又通常かなり広いトルクと速度の範囲に亘って出力を変えることができるように、車両その他の機械の伝導装置内に組込むために従来技術には多くの伝導装置がある。最初、伝導装置を手動で操作して、数段階の変速比のひとつを選択していた。自転車は典型的に変速システム(system)又は歯車変速装置を用いていて、種々のスプロケット(sprocket)又は歯車を利用可能な比から択一的に選んで、かみ合わせる。
【0003】
従来技術でも、遭遇した状態に適当な変速比を決定する責任、及び、伝導装置を手動でシフト(shift)する責任から車両運転者が免れれば、容易性と便宜性が高まることを認識していた。結果として種々の自動伝導装置があった。これらのあるものは速度とトルクの検出装置を用いて手動伝導装置を自動化することに基づいている。あるものは離散的な歯車のかみ合わせの選択肢の間をシフトする。その一方で、他のものはプーリー(pulley)の有効直径を変えるベルト(belt)とプーリーのシステムを用いている。さらに、他のものは油圧のポンプ、モーター、弁の配置を用いる油圧システムである。
【0004】
そのような従来技術の変速システムは、必要な変速比の変更を行なえるけれども、複雑で、それゆえ、高価であり、結果的にいくつかの故障モードを生じやすい装置になる。そのようなシステムの一部は円滑で連続的な方法ではなく、離散的変速比を突然に又は段階的にシフトする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明の目的と特徴は、構造が単純で、さらに、必要部品が少なく、完全に機械的なので、特に自転車に適している自動伝導装置を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的と特徴は、必要負荷動力と入力側動力の変化に応じて円滑かつ連続的にその駆動比を革新的に変化させる伝導装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的と特徴は、自転車に特に適当で、乗り手が快適なペダルの速度とトルクでペダルをこぎ、その一方で、傾斜面によって生じるような必要な負荷動力に応答して伝導装置が駆動比を自動的に変更し、乗り手が感じ又は求められる入力側のトルクと速度の実質的変更を行なわない伝導装置を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的と特徴は、1以上の上記特徴と組合わせて、従来の自転車が示したのと同様なペダル回転の努力に対する反応を乗り手が感じるように、実質的なペダルのトルク変動を経験しないで、加速又は減速するために乗り手がペダル回転を早くも遅くもできる伝導装置を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的と特徴は、複数の車輪を駆動するのに適していて、かつ、その車輪を異なる速度で回転できるので、その伝導装置が差動機能を提供し、非回転車輪を含めて全ての車輪に駆動トルクを加えることができる伝導装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、例えば自転車の場合、車輪の片側へのリンケージ(linkage)が低速高トルクで駆動するのに好ましく、同じ駆動用クランク・シャフトから駆動される別のリンケージが同じ車輪を高速低トルクで駆動する方が適していて、ある時点には両側がその車輪を同一速度で駆動する。この機能を延長すると、単一の駆動軸がいくつかの異なる被駆動軸を同時に異なる速度及び(又は)トルクで駆動でき、又は、いくつかの異なるトルク・速度特性を有するリンケージを付けた単一の被駆動軸を駆動できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最も広い側面で、本発明は、入力側伝導部材からの入力側機械的エネルギーを伝達するための機械的変速を形成するため、ラチェット機構の交互運動部材への入力側伝導リンケージ内にスプリングを介在させている。それにより、入力側機械的エネルギー源による交互運動で出力側被伝導部材を駆動できる。より特定すれば、本発明は、本発明に基づく伝導装置に動力を伝達する入力側伝導部材を有していることである。ラチェットには交互運動部材及び連続運動をする出力側被伝導部材が含まれ、ラチェットの交互運動部材と入力側伝導部材の間を伝導可能に連結した伝導スプリングを有し、入力側伝導部材に加えられた力をスプリングを通じてラチェットの交互運動部材に伝達する。スプリングは出力側被伝導部材の運動とは無関係に入力側伝導部材の全運動が行なえるように、エネルギーを蓄積し、又、放出でき、屈曲もできる。伝導スプリングによりラチェットの交互運動部材に加えた力が交互運動部材を一方の運動方向に動かす。伝導スプリングは入力側伝導部材とラチェットの交互運動部材の間のどこかにあって良く、任意の物的構成と任意の力対運動の関係としうる。戻りスプリングをラチェットの交互部材に伝導可能に連結し、伝導スプリングにより加えられた力と反対方向の戻り力をラチェットの交互運動部材に加え、交互運動部材を反対方向に動かす。入力側伝導部材が伝導スプリングに連結したクランク・ピンを有するクランクである場合、操作は特に改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面内に示されている本発明の好ましい実施例の説明の中で、明確にするために特定の専門用語を使用している。しかしながら、本発明を選択された特定用語に限定することを意図しない。又、各特定用語には、同様の目的を達成するために同様に機能する全ての技術的同等語を含むと理解すべきである。例えば、「連結された(linked)」「伝導可能に連結された(drivingly linked)」「接続された(connected)」の用語、又は、それに類似した用語は、ひとつの物体から他に力又は運動を伝達することを意味するように用いられる。それらは直接の接続に限定されず、そのような接続が同業の技術者から同等であると認められる接続のような他の要素を通じた接続を含んでいる。例えば、伝導トレイン(train)はひとつのものから次へ機械的エネルギーを伝達する一連の直列接続をした機構を有することができる。又、基本動作を変えることなく、追加の機構を伝導トレインに挿入できることは良く知られている。
【0013】
本発明は機械的運動及び機構の基本原理を含み、それゆえ、この説明は使用されている技術用語の一部の定義で始めている。これらの定義は、示された実施例の動作原理を理解するために、及び、これらの基本原理を適用できる多くの可能な代替的実施例の範囲を評価するためにも重要である。定義の後で、本発明に適用できる基本概念の説明がある。それゆえ、好ましい実施例の構造は他の実施例と共に示されている。その後で、動作の説明がある。最後に、本発明の実施例を改善する強化策、代替実施例及び若干の変形の説明がある。
【0014】
1.用語の定義:
本説明に用いられている基本的専門用語の多くは米国特許商標局の分類マニュアルに基づいている。従来技術では交互運動から連続運動までをカバーするために多くの機構が知られているけれども、本発明の実施例には、追加的にスプリング要素が含まれていて、円滑で、連続的で、平均的な伝達比を提供していて、それは無段階又は段階無しで(比率を表現する方向により)ゼロ又は無限大から最小又は最大の比まで自動的に変化し、構造部品の制約及び入力側の有効エネルギーを提供する能力によってのみ制限される。
【0015】
「交互運動(alternating motion)」は最初は一方向に、次ぎに反対方向に向う経路に沿った間欠運動である。交互運動の経路は通常円弧に沿った交互の回転運動であるか、又は、往復の形で直線に沿った直線的変位のような交互直線運動である。交互運動は他の経路に沿っても生じうる。「連続運動(continuous motion)」は同じ方向に連続する運動であり、通常、直線に沿った直線的変位として、又は、連続的回転運動として生じる。連続運動は時として間欠的になりうる。即ち、無運動又は異なる速度の運動の期間を有することがある。用語「連続運動」の中の「連続」の用語は、運動方向が同一であり続けることを意味し、運動がある時間続くことを意味しない。
【0016】
交互運動を連続運動に変える良く知られた装置はラチェット(rachet)である。この説明で用いる用語「ラチェット」は一般的に交互運動を連続運動に変換する装置を意味している。そのような装置は通常間欠的保持形で、交互運動の一方向の間、駆動のための係合が有効であり、その係合中に駆動力が運動方向に加えられる。反対方向の運動では、間欠的保持装置の係合が解除され、反対方向には駆動力が加わらなくなり、その動作サイクル(cycle)の開始点に戻る。それゆえ、ラチェットは典型的に交互運動部材と連続運動部材を有し、対応する運動で作用する。効率化のため、さらに、ラチェットは、一方向に駆動力を好ましく加え、反対方向には駆動力を加えず、その間、交互運動部材がその運動経路に沿って戻る。さらに、一方向に強い摩擦による係合、そして、反対方向には低摩擦の係合及び滑りのように、他方向よりも一方の方向で強い力を簡単に加えることができる。それゆえ、ラチェットは、典型的に歯止めのような間欠的保持装置により、又は、ラチェット・バー(ratchet bar)又はラック(rack)の形で摩擦的に係合する部材及び歯により間欠的にステップ(step)状の駆動力を加える。他のラチェット装置には、ボール・クラッチ(ball cratches)又はローラー・クラッチ(roller clutches)が含まれる。設計者には、機械式、油圧式、磁気式、電気式、空圧式の装置を含めて、種々の従来技術のラチェット装置がある。さらに同業の技術者に知られているように、クラッチもラチェットとして使用するように適合化しうる。そのような装置は交互運動部材の要素の運動を用いて、クラッチの係合と係合解除を同期化している。例えば、これらは変位、速度又は加速度の検出器を使用できる。代わりに交互運動部材の運動限界でクラッチを係合する。
【0017】
「回転運動(rotary motion)」とは物体が内部の軸の周りを回転するので、その物体上の点が円弧の経路を通って移動することである。揺動運動は円弧の経路に沿って行なわれる360度未満の交互運動である。往復運動は直線の経路に沿った交互運動である。
【0018】
「スプリング(spring)」は本発明の実施例の重要要素である。「スプリング」はひずみ、変位、屈曲又は回転(集合的に変位又は屈曲という)の増加関数として機械・位置エネルギーを蓄積する装置である。スプリングは変位したときエネルギーを蓄積し、変位しない位置に戻ったとき同じエネルギーを放出する。このエネルギーの蓄積と放出は適切に設計したとき低エネルギー損失で行なえる。スプリングが加える力は変位の増加関数である。スプリングの力とスプリングの変位の関係は「スプリング力係数(spring force coefficient)」であり、その関係が直線であるときはスプリング定数(spring constant)として知られている。スプリング変位とスプリング力の間の増加関数の関係、及び、蓄積エネルギーと変位の間の増加関数の関係は通常のスプリングの実用範囲では線形であるけれども、これらの関係は代替的に非線形としうる。本発明のある実施例では、非線形関数の関係が好ましく、単位変位当たりの力と蓄積エネルギーが変位の増加と共に増加する。
【0019】
あるタイプ(type)のスプリングは機械的スプリングで、機械的変形により弾性的に変位する。これらには、コイル・スプリング(coil spring)、ねじり棒形スプリング、板ばね及び弾性的コード(cord)又はリボン(ribon)のような他の弾性体が含まれる。他のタイプのスプリングは気体スプリングであり、ピストン付きの密封シリンダーのような可変体積の容器に流体、典型的に気体が封入されている。片持ち梁形スプリングは一端を他の物体に固定されていて、弾性的に曲がることができる物体、典型的に梁である。梁は直線、曲がった形状にでき、又は、曲がり材を含めることもある。さらに、そのスプリングが長さ方向に沿って幅と厚みが変化しても良く、そのスプリング力係数に希望の非線形を導入できる。それゆえ、スプリングはたわみ、曲がり、伸ばし、圧縮する、又は、弾性的に変形する他の物体により形成しうる。スプリングは直線に沿った方向の力を又はトルクとして加えることができる。スプリングは磁気スプリングとすることもでき、磁気的吸引又は反発を力に結びつけ、空間的変化が変位又はひずみを生じる。そのようなスプリングは永久磁石又は電磁石を使用しうる。
【0020】
「クランク(crank)」は良く知られた装置で、「クランク・シャフト(crankshaft)」を有し、クランクシャフトを通る中心軸の周りを回転する。さらに、クランクは「クランク・アーム(crank arm)」を有し、それはクランク・シャフトからクランク「ピン(pin)」に伸びている。クランク・ピンは、クランク・シャフトの中心軸からクランク半径として知られている特定半径で、クランク・アームに取付けられているので、クランク・ピンが中心軸の周りの円形経路に沿って動く。しかしながら、これは基本構造であり、基本的クランクを形成しうる多様な代替構造がある。さらに、要素となる部分はこの構造についての専門用語で典型的に指定された構造に限定されない。例えば、「クランク・アーム」はアーム形に限定されず、それからクランク・ピンを伸ばしている車輪としうる。結果として、クランクを表現するために用いられる用語は一般的にクランクの基本要素として機能する構造を表現するのに用いられる。クランクシャフトの用語はクランクを回転可能に取付ける構造を表現し、クランク・ピンの用語はコネクティング・ロッド(connecting rod)のような物体が回転可能に取付けられて、クランクが連続的回転運動で動くと共に交互運動で動くことができるる構造を表現している。
【0021】
「フレキブル・ドライブ・リンケージ(flexible drive linkage)の用語はコード、ケーブル(cable)、テープ(tape)、鎖、又は、力を伝達できるように引張り方向には剛体で、かつ、追加的に、弾性限界に達しないのに、横方向のたわみ又は曲がりが可能な類似品を表現するのに用いられる。
【0022】
2.基本概念
本発明の最も基本的な概念は図1−4に略図で示されている。
【0023】
図1の簡略化した機械的伝導装置は、ラチェット・バー12、ラチェット・ホイール18の歯16に係合している歯14により形成されているラチェット10を有している。この簡略化した伝導装置で、入力側伝導機構20が直線的に往復運動をするプライム・ムーバーのような入力側の機械的エネルギー源に接続されている。ラチェット・ホイール18に固定された回転可能な軸22が連続運動をする出力側被伝導部材を形成している。ラチェット・バー12は交互運動部材を形成し、伝導スプリング24を介して、入力側伝導部材20に接続されている。戻りスプリング26はラチェット・バー12に取付けられている。入力側伝導部材20が往復する、又は、往復の要素を有する交互運動で動くと共に、スプリング24及び26は引張り状態で機能する。プライム・ムーバーにより入力側伝導部材が図1の左の方に動かすと共に、スプリング24及び26が伸ばされて、エネルギーを蓄積し、ラチェット・バー12を左方に動かして、ラチェット・ホイール18を反時計方向に回転する。プライム・ムーバーにより入力側伝導部材が図1の右の方に移動されると共に、ラチェット・バー12の歯14がラチェット・ホイール18の歯16との係合を解除されて、ラチェット・バー12の歯がラチェット・ホイール18の歯の上に乗り上げる。ラチェット・バー12は戻りスプリング26により戻り位置に引張られる。この往復サイクルは連続的に繰返されるので、出力側被伝導部材22には連続した回転運動が加えられる。
【0024】
図1の実施例の動作についての重要な観察結果は、入力側伝導部材20の往復の振幅(各移動方向の間の変位)が常に一定の同一変位である場合、ラチェット・バー12の変位、出力側被伝導部材22の回転角及び出力側被伝導部材22に加えられるトルクは全て出力側被伝導部材に加えられる負荷トルク、入力側伝導部材及び出力側被伝導部材の速度の関数である。出力側被伝導部材に加えられる瞬間的トルクも又時間の関数即ち入力側伝導部材20の周期運動の位相角の関数である。トルクは通常周期の一部でしか出力側被伝導部材に加えられず、ラチェット・バー12がスプリング26により戻るときにはトルクは加えられない。もちろん、これらのトルク・パルス(torque pulse)は周期全体に亘って平均化される。出力側被伝導部材への負荷トルクが、伝導スプリングにより加えられるトルクを超えている場合、出力側被伝導部材に加えられるトルク・パルスが周期の360度全域に亘って拡がり、ラチェットの交互運動部材は動かない。それゆえ、戻らない。重要なことは、入力側伝導部材20の往復振幅が常に同じであるけれども、ラチェット・バー12の変位、それゆえ、出力側被伝導部材22のトルクと速度は固定されず、むしろ、負荷トルクの関数として可変である。これらのパラメーターの可変性により、本発明の実施例は、入力側伝導部材20と出力側被伝導部材22の間の駆動関係の変動比率が自動的で連続的で円滑になる。
【0025】
図2は、通常方式で歯止め保持機構32に揺動可能に取付けられた歯止め34を有する歯止め保持機構32の形で、回転形交互運動部材30を用いた結果としての違いがあるが、類似した実施例に同一原理を適用して示している。歯止め34は軸38に固定されたラチェット・ホイール36に係合して、連続運動をする出力側被伝導部材を形成する。さらに、図2の実施例では、戻りスプリング40、及び、歯止め保持機構32と入力側伝導機構44の間に接続されている伝導スプリング42がある。スプリング40及び42はフレキシブル・テープ(flexible tape)46に接続されていて、フレキシブル・テープ46はポイント(point)48で歯止め保持機構32に固定されて、フレキブル・ドライブ・リンケージ(flexible drive linkage)を形成する。図1の実施例と同様に、伝導スプリング24がエネルギーを蓄積し、入力側伝導部材20が、図4で右に移動し始めた後でも、ラチェット・バー12に力を加える。
【0026】
図3は別の簡略化した実施例を示していて、出力側被伝導部材50がエンドレス(endless)で、エンドレス・ループ(endless loop)の駆動トレインの上に形成されたように連続したラチェット・バー52に取付けられる。ラチェット・バー52の歯54が歯止めバー58に従来方式で揺動可能に取付けられた歯止め56により係合されている。他の実施例と同様に、図3の実施例には戻りスプリング60、及び、入力側伝導部材64に伝導可能に連結した伝導スプリング62がある。
【0027】
図4は別の実施例を示していて、図3の実施例に類似しているが、伝導部材がクランク72で、クランク・ピン70を有し、又、クランク・シャフト74内に中心揺動軸を有している。実質的に往復運動を得るためにクランクを用いることは、本発明の動作を実質的に改善し、全ての実施例に適用可能である。クランクは連続的回転運動を交互運動に変換するために良く知られた装置である。クランクは交互運動を得るためにクランク・ピンに回転可能に接続されたコネクティング・ロッドのような追加構造を必要とする。コネクティング・ロッドを本発明の実施例で使用できるけれども、クランク・ピンと伝導スプリングの間の連結部がその機能を果たせて、クランク・ピンの運動の往復成分をスプリングに加えられるので、従来の剛体のコネクティング・ロッドは不必要である。より特定すれば、クランク・ピンにより伝導スプリングに加えられる力は常に同方向なので、フレキブル・テープ、鎖又は一方向に力を加えられる同等のフレキシブル・ドライブ・リンケージを使用でき、クランク・ピンに回転可能に接続していれば、コネクティング・ロッドの機能を果たせる。
【0028】
上記から、本発明で用いられるスプリングが引張り状態で動作するスプリングに限定されないことは明らかである。伝導スプリング又は戻りスプリング又はその両方は、それぞれの力をラチェットの交互運動部材に加えるために圧縮スプリングでも同等に動作しうる。
【0029】
3.好ましい態様
図5は、本発明の実施例に好ましい2要素の特徴を示している。その好ましい特徴はクランク80と片持ち梁形スプリング82である。クランク80はクランク・シャフト84とクランク・ピン86を有し、共にクランク・アーム88により接続されている。クランク80は円形の回転経路90に沿って連続した回転運動で角度θまで回転する。フレキシブル・テープ92がフレキシブル・ドライブ・リンケージを形成し、その一端でクランク・ピン86に回転可能に接続され、他端で片持ち梁形スプリング82の固定ポイント94に接続される。
【0030】
片持ち梁形スプリング:
片持ち梁形スプリング82は固定ポイント98でラチェットの交互運動部材96に固定される。片持ち梁形スプリング82は弾性的で柔軟な片持ち梁になっていて、その最も弛緩した位置で、ラチェットの交互運動部材96の周りを少なくとも部分的に円周方向に伸びている。図5に示すように、戻りスプリング100がその最も弛緩した位置であり、クランク・ピン86が片持ち梁形スプリング82に最も近づいた時に、片持ち梁形スプリング82の最も弛緩した位置を生じる。図2に示すように、戻りスプリング100はフレキブル・ドライブ・リンケージを特に好ましく利用し、ラチェットの交互運動部材96に接続する。ラチェットの連続運動部材101を出力軸102である連続運動の回転形の出力側被伝導部材に接続ないし固定されている。
【0031】
図5の実施例のいくつかの基本的動作原理が図6−10に示されている。この動作の予備論議では、必要な回転負荷を上回るために、十分なトルクが、連続運動で、回転形の出力側被伝導部材102に加えられていることを想定している。
【0032】
クランク80の角度θが図5に示す位置から図6に示す位置まで90度回転すると共に、片持ち梁形スプリング82が図示されたように移動する(即ち変形する)。そして、トルクが出力側被伝導部材102に加えられる。片持ち梁形スプリング82を用いるこの配置のひとつの特性は、フレキシブル・ドライブ・リンケージ92により加えられた力によりスプリングが外側に変形すると共に、固定ポイント94が出力側被伝導部材102の回転軸から半径方向外側に移動する。その結果はスプリングの変位が大きくなると共に、モーメント・アーム(moment arm)も大きくなることである。クランク80がさらに90度回転して図7に示す位置になるとモーメント・アームがさらに大きくなる。図7で180度の位置になると、スプリングの変位、それゆえ、ラチェットを通じて出力側被伝導部材102に加えられたトルクが最大になる。しかしながら、クランク80に加えられるトルクはゼロになる。なぜなら、フレキシブル・ドライブ・リンケージ92によりクランク・ピン86に加えられる力が、クランクがその周囲を回転しているクランク・シャフト84の中心軸の方を向くからである。図8に示す位置までさらに90度回転すると、通常、ラチェットの交互運動部材96が、戻りスプリング100による力を受けて90度の円弧内でいくぶん戻り始める。さらに90度動くと、図5に示すようにサイクルの初めに装置は戻る。そして、図10に示すように繰返される。
【0033】
バックアップ・ウォール:
図11は本発明の一実施例を示し、その動作を改善するために別の機能を含めてある。図11の実施例では連続的被駆動回転部材110がラチェットを形成するために交互運動部材116に揺動可能に取付けられた歯止め114と係合した歯112を有している。片持ち梁形スプリング118が交互運動部材116に固定ポイント120で固定されている。片持ち梁形スプリング118の他端は固定ポイント124でフレキシブル・テープの形になっているフレキシブル・ドライブ・リンケージ122に固定される。
【0034】
さらに、交互運動部材116にはバックアップ・ウォール126が固定され、交互運動部材116への取付部128の場所近くから曲がった経路に沿って外側に伸びている。バックアップ・ウォール126は片持ち梁形スプリング118の外側に位置していて、片持ち梁形スプリング118が十分に変位した場合に、その片持ち梁形スプリング118と係合するように配置されている。好ましくはバックアップ・ウォールの輪郭は、スプリングの変位が大きくなると共に、片持ち梁形スプリングの外側が徐々にバックアップ・ウォールに係合していくようになっている。例えば、バックアップ・ウォールが円弧に沿って伸びて良いが、この実施例の場合、インボリュート(involute)の方が良好な輪郭になると信じられている。
【0035】
図12はテープ状のフレキブル・ドライブ・リンケージ122による力の伝達方法を示していて、入力側伝導部材は伝導スプリング118に対してバックアップ・ウォール126を介して反対側に位置している。これはテープ122内にヨーク(yoke)状部分130を形成することにより実現でき、バックアップ・ウォール126はヨーク状部分を通って延長できる。もちろん、代替案として、分離したヨーク構造も使用しうる。別の代替案として、バックアップ・ウォール130の中央で長手方向に貫通するスロット(slot)を形成し、フレキブル・ドライブ・リンケージ、好ましくは細幅のコード又はケーブルがそのスロットを通って伸びているようにする。
【0036】
図13は、バックアップ・ウォール126の利点が非線形のスプリング力係数を与えることであることを示している。スプリング単独のスプリング力係数が直線である場合、バックアップ・ウォール126がそのスプリング関数を非線形にする。スプリングが変位又は変形すると共に、バックアップ・ウォール126の内面132に、その外側が固定ポイント120から徐々に外側がスプリング変位の増加関数として接触する。その結果、スプリングにより出力側伝導部材110に加えられるトルクはスプリングの変位の関数として線形よりも急速に増大する非線形で大きくなる。例えば、そのトルクは変位の関数として指数関数的に高まる。
【0037】
別の設計上の利点がバックアップ・ウォールをスプリングとしても機能するように形成することにより得られる。例えば、示されているバックアップ・ウォールを十分薄くし、弾性材料から作って、片持ち梁形スプリングとしても動作するようにできる。結果として、上記のような剛体のバックアップとしてのみ機能する代わりに、バックアップ・ウォールに伝導スプリングが接触したときに、弾性のバックアップ・ウォールがスプリング力を生じ、エネルギーを蓄積する。この方法で、伝導スプリングにより加えられるスプリング力が、伝導スプリングがバックアップ・ウォールに係合すると共に種々の指数関数的に変化して得られるスプリング力係数の曲線に沿って増大する。これにより、設計者は設計の選択肢を追加できる。これは、例えば、強力な乗り手が丘登りで用いる伝導装置に有用である。この場合、車輪速度を低くして非常に高い最大トルクを出せることが望ましい。
【0038】
図14、15、16が3種類の代表的な運転状態での図11及び12の実施例及び他の実施例の動作を示している。これらの図面では、簡略化のために、入力側伝導部材を時として“D”として示し、出力側被伝導部材を時として“d”として示している。さらに、対応する参照番号が図面に示されている。
【0039】
図14に示した最初の状態で、出力側被伝導部材が加えるトルクが必要負荷トルクを上回るのには不十分なので、出力側伝導部材140は固定(非回転)の停止状態で固定される。自転車の場合、この状態は自転車が停止して、急坂に向った場合に生じうる。しかしながら、入力側伝導部材Dはクランク142であり、固定速度で駆動される。図14Aに0°として示されているクランク142の基準回転角で、片持ち梁形スプリング144のたわみはゼロである。この状態で、図14F及び14Gで示すように、入力側クランク142のトルクはゼロであり、出力側被伝導部材に加わるトルクもゼロである。
【0040】
クランク142が90°回転して、図14Bに示す位置になると、伝導スプリング144がたわみ、入力側クランク142及び出力側被伝導部材140の両方へのトルクが図14F及び14Gに示すように増大する。さらに90°回転して、図14Cに示した180°の位置になると、伝導スプリング144がその最大変位までたわんで、図14Gに示すように、出力側被伝導部材140に最大トルクが加わる。その一方で、図14Fに示すようにクランク142に加わるトルクがゼロになる。
【0041】
クランク142がさらに90°追加する回転を続けて、図14Dに示す位置になると、伝導スプリング144のたわみが減少し、図14Gに示すように出力側被伝導部材140に加わるトルクが低下する。クランク142が図14Cの180°の位置を超えて回転した後で、負のトルク(即ち、クランクの回転継続を支援)がクランク142に加えられるので、クランク142を回転しているプライム・ムーバーにエネルギーが戻されることに留意されたい。図14F及び14Gに示すように、これは、その要素が360°の図14Eに示す位置に戻り、図14Aと同じになるまで続けられる。
【0042】
結果として、出力側被伝導部材140が固定され、動力を受けることができない場合、そうなるべきであるように、静止したままの出力側被伝導部材140の場合に360°の周期全体に亘って、クランク142から出力側被伝導部材140への周期全体に亘る正味のエネルギーの流れはゼロである。当該分野の技術者であれば理解できるように、動力はトルクと回転速度ないし角速度の積に比例している。それゆえ、図14に示す実施例の動作では、出力側被伝導部材140に加えられるトルクが上昇と下降を繰返す波になっている。この静止状態では、出力側被伝導部材140への高いトルクを維持するため、及び、比較的小さな摩擦その他の損失を除いて、クランクの継続的回転を維持するためのクランク142での正味動力の入力は必要ない。重要な点は、出力側の仕事が無いときにこれらの静止状態で、入力側の正味仕事が無いが最大トルクは依然として出力側被伝導部材dに加えられていることである。入力側の軸Dはほとんど努力しないで任意の速度で回転しうる。なぜなら、エネルギーはスプリングに流入し、又、流出するだけだからであり、機構の外には伝達されない。
【0043】
瞬間的トルクは図14F及び14Gに示すようにクランクの角位置の関数として変化するけれども、以下に示すように、これらのトルク・パルス(torque pulse)の上昇と下降を繰返す波は本発明に改良を加えることにより、平滑化し、平均化できる。これらの改善には、本発明の複数の実施例を並列的に使用して、等角度の間隔を設けた位相関係での動作、フライホイールの使用、及び、特に自転車に望ましいこととして、自転車のペダルより大きな角速度で本発明のクランク142を駆動すること、が含まれる。
【0044】
本発明の実施例である自転車の伝導装置の場合、例えば、図14に示したピーク(peak)の静止トルクは約150ニュートンメートルとする。それは従来の自転車用伝導装置にほぼ典型的な最大値である。駆動部の形状及び最大たわみ時のスプリング力とモーメント・アームにより、伝導装置に特別なトルクが設計される。
【0045】
被駆動用出力軸dが動く場合、状況が異なり、図15及び16に示されている。負荷によって生じるトルクに耐えて出力軸dを駆動するのに動力が必要になる。そして、この動力は入力軸Dにより伝導装置に送らなければならない。出力軸dが動いているときに、典型的周期に亘る運転は図15及び16に示されている。
【0046】
図15及び16では、図14と同様に、入力軸Dの角運動に対する事象を図示しているが、出力軸dの運動の結果として、その結果は図14の場合とは全く異なる。図14の場合は軸dが静止しているからである。例示として、出力側被伝導部材dの角速度は図15の場合入力側伝導部材の軸Dの角速度の1/4であると想定されているので、入力軸Dが一回転を完了したときに、出力軸dは90°しか回転しない。図15A−15Gを参照すると、入力軸Dがゼロ位置(図15Aで0°の回転角で最も左)から回転するので、最初に、出力軸dを駆動するためにラチェットに係合できる速度に加速しなければならない。これが図15F及び15GのポイントAで、ここでラチェットが係合し、出力軸dの駆動を始める。入力軸Dの相対速度はテープの接点F(図15F及び15G)での速度より大きいので、ポイントPで、Dへのテープ取付ポイントの相対速度がdへの取付ポイントの速度未満に再び低下し、スプリングのたわみが低減し始めるまで、スプリングのたわみが大きくなる。ポイントEで、スプリングはもう一度たわみゼロの配置に戻り、ラチェットの係合が解除される。Aでのラチェット係合からポイントEでの係合解除までの時間に亘って、テープはスプリングをたわませる。そして、この時間の一部でテープの速度が逆転し、スプリングが収縮、即ち、たわみを低減するように動くという事実にもかかわらず、dへのトルクが存在する。全周期に亘って、出力軸dに送られ、かつ、入力軸Dから流出する平均動力は、入力軸Dの一回転の期間に亘って加算した全トルク・インパルス(torque impulse)(トルクと時間の積)に比例している。即ち:
P〜n∫Tdφ
この関係は、フレキシブル・ドライブ・リンケージのテープの相対的変化によるだけでなく、スプリングの力とモーメント・アームの関係により決定される。なぜなら、力とモーメント・アームの両方が図に示すようにテープの変化と共に変化する。一般に、伝達された動力はスプリングのたわみ、モーメント・アーム、係合している時間的比率及び単位時間当たり周期の数に比例する。これら4項目全部が、出力軸dに対する入力軸Dの回転速度の増大と共に増大する。それゆえ、出力軸dの固定回転速度で出力軸dに伝えられる動力は軸Dの入力速度の4乗にほぼ比例する。この事実により、伝導装置入力軸Dの入力速度が出力軸dの出力速度及びDへの入力動力に、広範囲に亘ってほぼ一定である。
【0047】
速度比が高くなると、出力軸dの回転速度が入力軸Dの回転速度に近づく。そして、ラチェットの係合時間、スプリングのたわみ、モーメント・アームの全てが速度比が低くなる状態で低減する。図16A−16Gは出力軸dの角速度が入力軸Dの角速度の3/4であるときの一般的な動作関係を示している。図16A−16Gは、ラチェット外側の交互運動部材が出力軸dを最初に加速して係合し、トルクを加え、次ぎに、ある期間、スプリングが伸びて出力軸dを駆動し、さらに、その駆動がスプリングの収縮により続き、ラチェットの係合解除と再巻き込みにより終了することを示している。これらの速度比が高い場合、クランク回転のかなりの部分がラチェットの係合解除状態で行なわれる。そして、ラチェットとスプリングが加速して、係合するか又は再巻き込みをして開始状態になる。速度比が低いときと比較して、この動作は比較的低効率になるので、設計者は低い最大速度比d/Dを選択することによりそれを避けることを選択して良い。例えば、設計者はDでのクランク半径と比較して有効ラチェット径dを小さくすることができる。
【0048】
上記から入力側伝導部材の各360°の周期に対して、出力側伝導部材は360°の整数倍にならない位相角まで、又は他の固定比で移動するが、代わりに出力側の速度とトルクの関数として変化する位相角まで移動することを一般的に観察できる。
【0049】
スプリングの合成と形状、及び、バックアップ・ウォールの形状による設計の寛容度があるので、出力軸dの広範囲の速度に亘って、入力軸Dの入力速度が一定で、動力も実質的に一定であるようにトルク/たわみの関係を形成することができる。例えば、設計者は多くの自転車乗りにとって最大の動力と速度として、90rpmのペダル速度で250ワットの一定動力を選択することができる。そのような設計で、乗り手が低いペダル速度を選択した場合、必要動力が急激に低下すると感じるだろう。なぜなら、伝達される動力はペダル速度の4乗で変化するからである。一定の道路速度で(出力軸dの速度が一定)、ペダル速度が90rpmから60rpmに低下すると、約5分の1に出力が低下して、250ワットから50ワットになる。又は、訓練された運動家を除いて維持できない非常に高い動力から典型的乗り手に快適な動力に低下する。
【0050】
動作特性は図17−19に示されている。動力が一定に保たれると、可変速の伝導装置は双曲線のトルク対速度の関係P=2πTnを持たなければならない。ここで、P=動力、T=トルク、n=角速度(度/秒)である。これは図17に一群の点線の双曲線P1−P3として示している。それぞれが異なる一定動力に対するものである。しかしながら、実際の伝導装置では、最大トルク及び最大回転速度の両方に制限があるので、図17の実線で示すように動力曲線が制限されている。
【0051】
図18は、実際的で現実的な運転範囲に亘って一定の入力動力に対する実質的に一定の出力動力の場合のこれらの特性を示し、端部の限界が、低出力端ではスプリングが加えることができるトルクにより、高出力端では自動車乗りのような入力側のプライム・ムーバーによる動力限界により決定される。
【0052】
上記から、図19に示すように、本発明の実施例が伝導装置として動作し、入力側と出力側の間で速度とトルクの比を自動的かつ円滑に変化する。
【0053】
出力側被伝導部材dの必要負荷トルクが非常に小さく、ゼロに近い場合、スプリングのたわみが小さい。伝導装置の運転特性は、リンケージの形状特に回転要素の直径比により決定される最大トルク比と最小速度比で、固定速度比に近い。トルク・パルスの振幅は小さく、実質的に短い間隔の回転のみで生じる。
【0054】
パルスの平滑化
上記のように、トルクは、ラチェットの連続運動部材に一連のパルスとして加えられ、運転パラメーターの関数として変化する。
【0055】
同様に、一連のトルク・パルスが運転中に入力側伝導部材に加えられる。それも変化する運転パラメーターの関数である。結果として、本発明を自転車に適用した場合に、乗り手はこれらの瞬間的トルクのパルス状変化を感じる。乗り手が平滑になったと感じるために、又は、これらのパルスを他の形で平滑にするために、本発明の実施例に加えられるいくつかの改良がある。これらの改良は個別に又は他のそのような改良と組合わせて用いられる。
【0056】
図20はそのような改良のひとつを示していて、自転車で用いるのに特に適当である。通常の二重クランク式自転車のペダル機構160はクランク・シャフト162を有し、その周りに回転し、それに固定された一対のペダル形クランク・アーム164及び166も有している。通常のスプロケット168もペダル機構に固定され、駆動チェーン(chain)170により、クランク形入力側伝導部材174に固定されたスプロケット172に連結されている。良く知られているように、相対的スプロケット直径がこの固定比の伝導装置の駆動比を決定する。このクランク形入力側伝導部材を駆動する固定比の伝導装置の駆動比は、自転車のペダル機構の角速度よりも、クランク形入力側伝導部材174の角速度の方が高くなるように選択される。好ましい駆動比は約6:1で、自転車のペダル機構160が1回転するごとにクランク形入力側伝導部材174が6回転する。結果として、多数で、短く、より接近した間隔のトルク・パルスが各回転中にペダル機構に加えられるので、乗り手はパルス状変動をあまり感じない。
【0057】
図21及び22は、入力側伝導部材に加えられるトルク・パルスを平滑化する他の改良の略図である。この改良は本発明の実施例の同型品を多数、位相を違えて並列的に用いている。好ましくは、多数の伝導装置を等角度で位相を違えて配置している。これはクランクの回転軸の周りに角度的に間隔を置いて複数のクランク・ピンを設けたクランクにより実現する。例えば、入力側伝導部材は、クランク・シャフト188の周りに120°の角度間隔を設けて配置された3個のクランク・ピン182、184、186を有する三方向クランク180により形成される。複数のラチェット190、192、194が共通の出力側駆動軸196に取付けられ、各ラチェットには上記の交互運動部材と、お互いに固定された連続運動の回転形出力部材、上記のような共通出力軸の被伝導部材196が含まれる。
【0058】
複数の伝導スプリング198、200、202は、それぞれ、クランク・ピンのひとつに回転可能に連結され、かつ、上記のように、ラチェットの交互運動部材のひとつに伝導可能に連結される。各ラチェットは戻りスプリングに接続され、上記のように動作する。本発明の実施例によるこの多位相配列の並列伝導装置の動作により、図14−16に示すパルスを生じ、それぞれ360°の周期の動作中に重なり合う。得られた瞬間的トルクが多クランクの入力側伝導部材に加えられて、個々の伝導装置からの瞬間的トルクの和になる。多数の同型品からの瞬間的トルクの和は、個々の伝導装置の瞬間的トルクの変化である限り、振幅の変化はないだろう。より興味深いこととして、それぞれの個別伝導装置に対してクランク回転の角度に間隔があるので、クランク形入力部材に加えられたトルクが負のとき即ち、回転中のクランクの駆動を実際に支援し、図21−22に示した多位相クランク配列により、この負のトルクは、1個の伝導装置のスプリングから回収されて、その配列の他の伝導装置を駆動するために伝達された仕事になる。この伝導装置の位相配列の平滑化の効果の可視化には、1枚のグラフ(graph)に関する図14−16のグラフF及びGを複製し、120°の間隔を置いた位相として配置し、360°の区間に亘ってその和のプロッティング(plotting)を行なう。
【0059】
もちろん、追加のパルス平滑化が当該分野で良く知られている方法で、回転クランクにフライホイールを取付けることにより得られる。しかしながら、これはフライホイールの慣性により加速と減速を遅らせるだろう。
【実施例1】
【0060】
図23及び24は自転車の伝導装置に好ましい実施例を示している。スプリング・ホルダー(spring holder)210はラチェットの交互運動部材(図示せず)に固定され、交互運動で回転する。そして、示されている状態にホルダー210を戻すために、自転車のフレーム(frame)に伸びている戻りスプリングにより偏らせる。ガラス繊維入り材料の片持ち梁形伝導スプリング212は一端213を有し、その一端213はスプリング・ホルダー210とバックアップ・ウォール216の間に形成されたポケット214内に保持されている。スプリング・ホルダー210とバックアップ・ウォール216はガラス繊維入り材料で一体成形されているので、スプリング状に弾性変形を行なえる。この実施例で、バックアップ・ウォール216の好ましい輪郭はインボリュートである。引張りケーブル218から作られているフレキシブル・ドライブ・リンケージがバックアップ・ウォール216を貫通して長手方向に伸びているスロット220を通って伸びていて、入力側伝導部材(図示せず)に接続している。引張りケーブル218が伝導スプリング212を引張ると、伝導スプリング212がバックアップ・ウォール216の方にたわむ。アセンブリー(assembly)(スプリング、バックアップ・ウォール及びスプリング・ホルダー)が弾性体なので、それらがたわんで、車輪が回転しない限界内でクランクがその引張り部材が取付けられている方向に完全に変位することができる。この設計では、クランクは65mmの半径を有しているのでアセンブリーは車輪が固定されたときに引張りケーブル218の全変位の少なくとも2倍でなければならない。
【0061】
この設計では、伝導装置のクランクは図20に示すようなチェイン駆動によるペダルの軸回転の約6倍で駆動されるので、通常運転では、乗り手のペダルこぎは約60rpmで、クランクは約360rpmで回転する。スプリングは毎秒約6回の周期になる。ガラス繊維入り材料のスプリングは単位質量当たりエネルギー蓄積量が高いことと、疲労ないし永久ひずみを生じないで大きな変形を生じることに利点がある。
【0062】
車輪のトルクが低いと、要素の変形が小さくなり、そして、引張りケーブルはクランク半回転当たり車輪を約120°回転する。被駆動車輪の両側に1個ずつ2個の同一スプリング・アセンブリーがあるので、低トルクでは、クランク・シャフト1回転について、車輪は約240°回転する。車輪の負荷トルクが増大すると共に、スプリングとアセンブリーのたわみが大きくなり、車輪の回転が少なくなり、車輪が固定された状態で、たわみが最大になるまで、スプリングが全量伸びて、最大トルクが車輪に加わる。この最大トルクはシステムの形状と剛性により決定される。そして、この好ましい自転車の伝導装置では約100ニュートン・メートルになるが、強力な乗り手に対しては150ニュートン・メートルに高められる。強い競技者用自転車の場合は300場合によっては400ニュートン・メートルに高められる。
【0063】
図25は、図26に示す変数と寸法を有する図23の好ましい実施例の伝導スプリングに対する力とたわみの関係を示す。力は入力側駆動クランクのクランク角の正弦と逆関係になるので、入力側駆動クランクの回転時のトルクはほぼ一定である。もちろん、実際には、Dへのトルクは被駆動引張り部材に対して0°と180°の回転角で常にゼロになる。なぜなら、その角度で引張り部材への力はDの中心を通るからである。力に対するモーメント・アームが無くなるので、力がどんなに大きくてもトルクを生じない。より特定すれば、図23の実施例の幾何学的配置により、入力側駆動クランクが0°と360°の回転領域になるとき(即ち、クランク・ピンがラチェットに最も近づき、又、スプリングがスプリング・ホルダー210に対して最も弛緩している)、引張りケーブル218からの力がスプリングに沿って長手方向に加えられるので、スプリングに加えられる力の大きな成分がスプリングを長手方向に圧縮するように作用する。しかしながら、伝導スプリング212がたわみ、スプリング・ホルダー210から外に離れるように曲がると、長手方向に圧縮しようとする力は大きく低減し、その力は主としてそのスプリングを曲げるように加わる。それゆえ、スプリング力係数が非線形で、スプリング力がスプリングのたわみの関数として指数関数的に増加するかのように、スプリング力が非常に急激に低下する。これは、スプリング力がスプリングのたわみの関数であるだけでなく、瞬間的幾何学的配置の関数でもあるので可能になる。そこで、同じ理由で、回転角が360°に近づくと共に、スプリング力は非常に急激に増大する。
【0064】
この結果は出力側被伝導部材に加えられたトルクが図27に示すように瞬間的なトルク・パルス、及び、図28に示すような出力側駆動クランクのトルクになる。
【0065】
スプリングの設計
従来技術は希望の力とたわみの特性を持つスプリングを設計するために多くの良く知られている方法を有している。スプリングの設計はALGORのようないくつかの市販されている有限要素応力解析プログラムにより支援されている。図29−32は描画的手順をを示している。示された手順は描画的手法である。この方法は理解しやすいからである。しかし、透明性は少ないが当該分野で良く知られている解析的又はコンピューターによるシミュレーション方法によると複製でき、希望の精度で得られる。
【0066】
図29を参照して、単純な例を考えると、入力側駆動クランクD及び出力側被駆動ラチェット軸dの両方が同じ半径Rとして、Dの回転速度はdの2倍である。図25に示すように、得られた係合の角度φは30°のクランク回転になる。そのポイントで、接続しているテープの速度がラチェットの交互運動部材の速度に等しくなり、ラチェットが係合される。このポイントの後で、d上のテープがdの周縁速度で移動する。そして、クランク上のテープを別の速度で移動する。ポイントA及びBの軌跡は、最初ラチェットの係合時点で、共にテープ上にあるが、ここで、d及びD上のクランクの速度が異なる結果として分離するが、図29に示すように単純な作図的方法により追跡できる。ポイントAはdから巻き戻されるテープの結果として外に動き、Bはクランクから一定距離を保って左に動く。その結果、AとBが分離され、テープの線に沿ってスプリングが伸ばされる。これは図29に示すように希望のクランク角度で測定できる。
【0067】
図29で、スプリングのたわみは、ラチェット係合の角度φ、この場合約30°でゼロとして開始し、クランクの回転が約150°で最大になるように増大する。そのポイントの後で、たわみが急速に低減して、A及びBの軌跡の交点、クランクの約230°の回転でゼロになる。このポイントで、もはやスプリングに引張り力が加わらず、dでラチェットの係合が解除され、テープは再巻取りをされて、ほぼ0°の位置で最小の長さになる。そして、周期が繰返され、ラチェットの交互運動部材とテープの加速で始まり、30°での再係合ポイントまで進む。
【0068】
この方法により、スプリングの伸びを、Dでのクランクの任意の回転角に対して、及び、軸速度の任意の比に対して発見できる。
【0069】
望ましい力とたわみの関係を用いてスプリングを設計する良く知られた方法がある。この例で、図30に示すように、カム(cam)の上でのスプリングの曲がりが用いられる。一定の曲がりを生じるのに必要な力は片持ち梁形スプリングの厚み、幅、材料、及び、カムの形状による。自転車の伝導装置の場合、希望する伝達動力はDの毎秒6回転で約100ワットであると想定される。それゆえ、そのスプリングに対して希望する力とたわみの関係でその動力伝達を行なえるようにすべきである。必要な数学的関係が図32に示されている。それからスプリングとカムを設計しうる。スプリングの形状とカムの形状の多くの組合わせがその希望する結果を与える。自転車用で望まれるように、広範囲の相対的軸速度に亘って、一定の入力側動力を与えることを意図する設計の場合、スプリングとカムの設計は、最高速度比で始まる。その場合、スプリングのたわみは最小である。そして、速度Dを一定に保って速度dを段々に低くしていく。それで、カムとスプリングの形状設計を最高の速度比での最小たわみからdの速度ゼロでスプリングのたわみが最大になるポイントまで段階的に決定する。各段階で、スプリング力の増分を一定動力が維持されるように選定する。最初の設計目的に合わせて、動力損失が無く、かつ、動力源からDに伝えられる動力がDからdに伝えられる動力と同一であることが仮定されている。
【0070】
図29−32から、一定動力の場合、dへの平均トルクがdの角速度と逆関係にしなければならないことは明らかである。この平均トルクは周期の時間に亘ってトルクを積分(加算)して、時間で平均したものである。dの角速度が低下すると共に、回転時間に占めるラチェット係合時間の比率の合計が増加し、たわみが増加し、最高の力がたわみと共に非線形に増加する。それにより、軸dの速度が低下すると共に平均トルクの積分が急激に増加する。又、スプリングとカムの形状を適切にすることにより角速度に対する希望の逆関係とすることができる。
【0071】
軸dで入手できるトルクには限界があり、2本の軸の間で伝達できる力の合計により決定されている。考えられる場合に、システムが発生しうる最大の平均トルクが150ニュートン・メートルであり、それは自転車の伝導装置に対して妥当な最大トルクであると言える。そこで、100ワットを依然として伝達できるdの最低軸速度はN=100/2π・150即ち毎秒0.1回転又は6rpmである。この速度未満で、加えられるトルクがほぼ一定のままなので、伝えられた動力は速度と共に急激に低下し、速度がゼロになると動力もゼロになる。
【0072】
dが固定速度で、Dの回転速度の影響に留意することもおもしろい。速度Dが増加すると、dへの平均トルクが非常に急速に増加する。なぜなら、このトルクは周期に占めるラチェットの係合時間の比率により、スプリングの最大たわみにより、毎秒の周期の数により影響を受け、その全てが軸Dの速度にある程度比例して増加するからである。それゆえ、dへの平均トルクはDの速度の数乗で、約4乗で増加する。なぜなら、最大トルクは速度比と共に非線形で増加するからである。このことは実際に自転車乗りが60rpmから90rpmにペダル速度をほぼ1.5倍高めるために、必要動力が4乗ないし5倍に非常に急激に高まることを感じていることを意味する。これは、人間が出せる最大動力がペダル速度のこの範囲内のどこかにあるので、自転車伝導装置にとって望ましい特性である。逆に、自転車乗りが動力の入力を低減したい場合、ペダルをこぐ速度を僅か低減するだけで伝達動力は任意の希望値に急激に低下し、Dの速度ゼロにまで低下する。そこでは周期の間ラチェットが係合せず、dへの正味トルクは生じない。
【0073】
図23及び24は自転車伝導装置のための上記の好ましい実施例を示している。伝導装置の中で、伝導スプリングには軸dの周りにラチェットを組込んでいて、伝達する力が増大すると共に、d上の力のモーメント・アームも高まるので、力とモーメント・アームの両方に比例して、トルクの上昇とスプリングのたわみの積になる。この構造の設計手順は上記と同じであるが、解法内の各増分計算の段階で、力だけでなく、モーメント・アーム内の変化によるトルクへの影響を追加する。
【0074】
dに伝達される合計動力はD上の平均トルクとクランク・ピンの数に比例しているので、例えば、3個のクランク・ピンがあり、希望の伝達動力が100ワットである場合、各クランク・ラチェットのペア(pair)は33ワットを伝達するだけでよい。
【0075】
図23及び24に示したスプリングは幅が約30mm、厚みが約5mmである。それらの図面のバックアップ・ウォールは曲率半径140mmの円弧として選ばれた。固定した最大スプリング応力に対するバック・ウォールの曲率半径は希望のガラス繊維入り材料の最大応力と逆比例し、バックアップ・ウォールと接触する点でのスプリングの厚みに直接比例している。それゆえ、一定の厚みで希望の引張り応力のスプリングに対して、バックアップ・ウォールの曲率は長手方向に沿って一定である。即ち、バックアップ・ウォール上でのスプリングの端部への最初の接点での円弧になる。
【0076】
定性的観察
本発明の実施例は、純粋に機械的で無損失で、無限に可変の速度・トルクの伝達装置で、図19のトルク比対速度比の曲線に示すようなゼロ近くまで下げた出力軸の速度で、全ての入力動力を出力軸に伝える理想の伝達特性を有するものとして機能する。伝導装置の要素には本質的動力損失が無いので、その極限で、出力伝達の効率は100%に近づけることができる。クランクの複数のアームが、それぞれ上記のように、D及びdへほぼ一定のトルク対時間を与えることができる。自動車乗り又は他のプライム・ムーバーがクランクのような入力側伝導部材に入力エネルギーを加える。そのエネルギーは1以上のスプリング内の蓄積と車両駆動のための出力の間で分配される。複数のスプリング・システムを用いて、入力エネルギーの一部はスプリングに蓄えられ、そのそれぞれのたわみの増減により、スプリング・サイクル(springs cycle)としてスプリングの間を移動する。
【0077】
運転中に、例えば、急坂を上るときに通常必要となる最大トルクのために自転車乗りがペダルの上に立つ必要性を感じなくなり、代わりに、乗り手が最大動力となる速度で、通常60rpmと90rpmの間で、足踏みペダルのクランク機構の上でペダルこぎを常に行なうことができる。これはゼロまでの速度低下から最大速度の状態(即ち、スプリングのたわみが小さく、トルクが小さく、駆動軸の速度に近い被駆動軸速度で動作)まで任意の後輪速度で最大動力とするのにほぼ最適の速度比とするのにシステムが自動的に機能するからである。
【0078】
自転車に用いられた本発明の実施例で、自転車の速度が変化した場合でも、各運転周期に亘って平均化した平均入力トルクが、一定のペダル速度に対して、ほぼ一定になる。ペダル速度が増大した場合、乗り手が供給する動力が大きくなる。動力はトルクに速度を乗じたものに比例する。
【0079】
低速では、乗り手は最大で、最長の瞬間的トルク・パルスを感じる。速度が増大し、ペダル速度が一定のままなので、トルク・パルスの高さと期間の両方が低下する。もし、乗り手がペダル速度を高めた場合、瞬間的トルク・パルスの高さと期間が高まり、それゆえ、出力トルクが高まるので、加速度が高まる。
【0080】
乗り手が希望の巡航速度に近づくと、乗り手はペダルこぎを遅くでき、トルク・パルスの高さと期間が低下する。平均トルクが低下し、加速が停止して一定速度になる。それで、乗り手が通常の自動車乗りと同じ感じを受ける。ペダルこぎの速度が高まれば、入力動力が増大し、速度が増大する。しかしながら、乗り手のペダルこぎの速度には上限があるので、最大速度があり、その時に瞬間的トルク・パルスが短くなる。
【0081】
丘に遭遇したとき、乗り手ができるのは、(1)同速度でペダルをこぎ、その場合、トルク・パルスは高くなり、長くなる。自転車は遅くなり、乗り手が感じるトルクは僅かに高くなるか、又は、同じ状態を維持する、又は、(2)ペダルを早く動かす、その場合、トルク・パルスが高くなり、乗り手が十分早くペダルをこぐと、速度を維持できる。
【0082】
この伝導装置は自動車のような他の車両にも同等に適している。その場合、入力側クランク・シャフトDの複数のアームにより円滑な運転を行なえる。そして、希望する場合、同じ一次側軸Dにより異なる速度で駆動される2本の軸dにより差動効果を生じる。2本超の軸を1本の駆動軸によって駆動できて、駆動軸Dが固定速度であるが、被駆動軸dの全てが、異なる速度で操作される。
【0083】
もちろん、運転速度の範囲を拡げるために、この可変速度比の伝導装置を従来のシフト(shift)形伝導装置と組合わせることは可能である。
【0084】
滑り無しの全車輪駆動
上記のように、本発明に基づく伝導装置は、(1)出力側被伝導部材の速度とトルクに自動調節する、(2)被伝導部材が回転していないときでも出力側被伝導部材にトルクを加える、という2項目の特徴を有する。本発明の実施例は車両に滑り無しの差動で複数車輪を駆動する機能を提供できる。各車輪はそれ自身の伝導装置で駆動される。結果として、車両が動くとき、半径方向内側の車輪が半径方向外側の車輪より遅くなる。そして、トルクは回転していない車輪を含めて全ての車輪に加えられる。
【0085】
図33はこれを実現するためのひとつの方法の略図を示している。入力側伝導部材のクランク250は一対のクランク・ピン252及び254を有し、フレキシブル・ドライブ・リンケージ256及び258を介して、それぞれ本発明に基づく2個の異なるラチェット260及び262の伝導スプリングに接続している。各ラチェットの連続回転をする被伝導部材が各車輪264及び266のひとつに伝導可能に連結されている。これらの原理は2個を超える車輪に適用でき、1個のクランク入力用伝導部材の使用に限定されない。伝導装置は異なる速度で数本の軸を同時に駆動できる。それゆえ、通常差動機構により行なわれる機能を本発明の伝導装置により、1本の軸上のラチェットにクランク・アームの一部を取付け、かつ、他のアームを第二の軸上のラチェットに取付けることにより行なうことができる。車両が動いていて、1本の車輪が他の車輪より遅く回転するとき、遅い方の車輪は早いほうの車輪よりトルクが高くなるが、それでも両方とも駆動される。この効果は、極端な場合、一方の車輪が全く動かず、他方の車輪が動いているとき、又は、一方の車輪が滑っているが、他方は路面のグリップ(grip)を維持しているときに生じうる。滑っている車輪が伝導装置からほとんど動力を吸収しない。標準の差動機構と同様に、駆動軸から最も動いている車輪に動力が送られる共に、動かない車輪のスプリングの収縮が動いている車輪を駆動する。本発明のこれらの特性が見慣れている四輪駆動のような多輪駆動に適用しうる。
【0086】
この差動形効果はペダル駆動の三輪車に有利に使用しうる。この場合、2個の後輪のそれぞれが本発明に基づく伝導装置により駆動でき、1本のピンから1個の車輪の伝導装置に接続している1本のテープ伝導機構と他のピンから他の車輪の伝導装置に接続している他のテープを用いて2本のクランク・ピンにより駆動される。差動機構の必要性が無くなることで、重量、複雑性、費用が軽減される一方で、2輪駆動の利点を維持する。
【0087】
図34は同じ動作をするが、パルスの位相分散及び平滑化の目的のため、及び(又は)、ここで述べたようにトルクと速度の比率の利用できる範囲を拡張するために、各車輪に本発明に基づく複数の同型品を適用しうる。
【0088】
駆動比の範囲を拡張するための並行伝導装置
同じ一般特性の伝導装置を他の方法で使用できる。即ち、2種類の異なる速度比で被駆動軸の両側を駆動軸が駆動できる。それにより、例えば、自転車でそれぞれの車輪のスプロケットの直径により決定されたように、後輪の片側を低い速度比で駆動し、他の側を高い速度比で駆動する。これはシフト操作無しでトルク比の範囲を拡張する利点がある。両側が全ての速度で同時に後輪を駆動しているのだが、片側が低速で高いトルクを与え、他の側が高速でのトルクを高める。
【0089】
例えば、図36に示すように、自転車の車輪280の左側にあるスプリングとラチェット282は右側のスプリングとラチェット284の直径の3/4であり、両方のスプリングが(図23に示す好ましい実施例のように)同じ伝導部材のクランク・シャフト286により駆動され、両方のクランク半径288及び290は同じである。自転車の場合、伝導部材のクランク・シャフト286は、通常の駆動チェーン294により伝導部材のクランク・シャフト286に伝導可能に接続された通常の自転車用ペダル・クランク機構292により駆動される。
【0090】
低速では、右側のスプリングを用いて、左側より高いトルクとする。高い車輪速度では、右側は、速度が低いこと及びラチェット係合時間が少ないことにより車輪のトルクにあまり寄与しない。そして、左側はクランク半径に対して直径が小さいことにより車輪へのトルク・パルスの期間を長くするのに寄与している。
【0091】
調節可能なクランク半径
上記の特徴に加えて、このタイプの伝導装置にはD上のクランク半径を可変にできる。例えば、遠心力により作動し、軸Dの速度増大と共にクランクDの有効直径を大きくする。これは、dの回転速度が高くなるように、伝導装置の速度比を拡張する効果を有し、その一方で、同時にDの回転速度に対する動力の急速上昇を促進して、入力動力とは無関係にその伝導装置をほぼ一定速度にする。
【0092】
調節可能な動力レベル
乗り手の技術と動力に合わせて伝導装置を調節できるように、バックアップ・ウォールを調節可能にして、スプリング・バックアップの組合わせによる力・変位の関係を弛め又は剛体化できる。バックアップ・ウォールがスプリングから離れる動きにより剛性・たわみの関係を低減し、伝導装置のトルクと動力の最高値を低くする。図35は伝導スプリング274により係合できるバックアップ・ウォール272を有するラチェットの交互運動部材270を示している。伝導スプリング274は上記のようにフレキシブル・ドライブ・リンケージ276により変位する。しかしながら、バックアップ・ウォール272は揺動ピン278により揺動可能に取付けられ、その角度変位は制御ケーブル280により制御される。その制御ケーブルにより、バックアップ・ウォール272が伝導スプリング274に近づけ又は離すように調節可能に揺動する。
【0093】
この調節可能なバックアップ・ウォールの特徴は前記の特徴と組合わせることができる。前記の特徴とは、バックアップ・ウォール自体が弾性的なので、スプリングとして機能することである。
【0094】
乗り手の技術と動力に合わせて伝導装置を調節できるための、又は、起動時のペダル・トルクを低くするための好ましい構造が図37に示されている。スプリングとバックアップ・ウォールの組合わせの力・変位の関係を弛め又は剛性化するために、バックアップ・ウォール372のスプリングに対する幾何学的関係を調節できる。入力側クランク385の角回転周期の後期にスプリング374とバックアップ・ウォール372の係合が、スプリング374のたわみと共に、剛性・たわみの関係を低減し、伝導装置のトルクと動力の最大値を低くする。言い換えると、バックアップ・ウォール372に張り付いたスプリング374の部分の長さを調節して、それが入力側クランク385の角回転のある角度で短くなるようにすると、伝導装置のトルクと動力の最大値を低くする。逆に、その長さを増大すると、伝導装置のトルクと動力の最大値が増大する。図37は、図23の場合と同様に、伝導スプリング374と係合可能なバックアップ・ウォール372を有するラチェットの交互運動部材370を示している。伝導スプリング374は前記のようにフレキシブル・ドライブ・リンケージ376により置換える。しかしながら、バックアップ・ウォール372とスプリング374は、戻りスプリング(図37には図示せず)によって駆動された場合、その戻り位置で、ローラー378により回転するように変えられる。ローラー378は軸に回転可能に取付けられ、フレキシブル・ドライブ・リンケージ376に係合し、かつ、制御ケーブル380により所定位置に制御される。制御ケーブル380はフレキブル・ドライブ・リンケージ376に対して横からローラー378を(図37では上下方向に)調節して、フレキシブル・ドライブ・リンケージ376の経路を変える。ローラー378を上昇させると、スプリング・ホルダー310をそれに取付けられたバックアップ・ウォールと共に角度αまで回転する。これにより、スプリング374とバックアップ・ウォール372の戻り位置を変えられる。なぜなら、ローラがクランク・ピン386とラチェット部材270の間の直線からフレキシブル・ドライブ・リンケージを引張ると、スプリングとバックアップ・ウォールがフレキシブル・ドライブ・リンケージと並ぶ位置(α=0°−水平)ではなく、図37に示す低い位置に戻る。この低い戻り位置で、スプリングの有効な力とたわみの関係が低減する。なぜなら、スプリングとクランク・ピンの間の直線的接続までローラーが十分に戻った場合と比較して、クランク・ピン386の角変化が大きくなった位置でバックアップ・ウォールと遭遇するからである。戻り位置が低減することは、スプリング374を回転するのに必要な初期の力も低減する。なぜなら、その力はスプリングに対してほぼ直角に加わるからである。当該分野で良く知られているように、乗り手が、又は、コンピューターが制御ケーブル380を調節しうる。
【0095】
本発明の特定の好ましい実施例を詳細に開示したけれども、本発明の精神又は添付した請求項の範囲を逸脱せずに種々の変更を適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1−4】本発明の基本原理を示す略図である。
【図5−10】本発明の好ましい実施例の基本構造と動作を示す一連の略図である。
【図11】バックアップ・ウォールを示す本発明の実施例の側面図である。
【図12】フレキシブル・ドライブ・リンケージの接続を示す図11の実施例の部分図である。
【図13】非線形のスプリング力係数を示すグラフである。
【図14(A−G)−16(A−G)】3種類の代表的動作状態の下で、本発明の好ましい実施例の動作を図示している。
【図17−19】本発明の実施例の動作に関する略図である。
【図20】本発明の別の実施例を示す略図である。
【図21】本発明の別の実施例を示す略図である。
【図22】本発明の別の実施例を示す略図である。
【図23】本発明の好ましい実施例の側面図である。
【図24】図23の実施例の端面図である。
【図25】図23の好ましい実施例のためのクランクの入力側伝導部材の角変位の関数としての伝導スプリングの力の略図である。
【図26】図25、27、28に示された変数の線図である。
【図27】図23の好ましい実施例のクランクの入力側伝導部材Dの角変位の関数としての図23の好ましい実施例の出力側伝導部材dのトルクを示す略図である。
【図28】図23の好ましい実施例のクランクの入力側伝導部材Dの角変位の関数としての図23の好ましい実施例のクランクの入力側伝導部材に加えられるトルクの略図である。
【図29】本発明の伝導スプリング要素の設計を示す略図である。
【図30−32】本発明のスプリング及び伝達の特性を示すグラフである。
【図33】ノン・スリップの差動機能を与えるために多数の実施例で用いている本発明の別の実施例を示す略図である。
【図34】本発明の別の実施例の略図である。
【図35】本発明の別の実施例の略図である。
【図36】伝導装置のトルク比の範囲を拡張するための本発明の別の実施例の略図である。
【図37】自転車乗りの技術と能力に合わせて伝導装置を調節するための別の実施例の略図である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側機械エネルギー源により交互運動で伝導できる入力側伝導部材から出力側被伝導部材に入力側機械エネルギーを伝達するための機械的伝導装置で、その伝導装置が自動的で、連続的可変の伝導比を有し、
(a)交互運動部材及び前記出力側被伝導部材を形成する連続運動の出力部材を含むラチェット、
(b)入力側伝導部材に加えられる力をラチェットの交互運動部材に一方向の伝導をするため、ラチェットの交互運動部材と入力側伝導部材の間を伝導可能に結合する伝導スプリング、
(c)伝導スプリングにより加えられる力とは反対方向でラチェットの交互運動部材に戻りの力を加えるためにラチェットの交互運動部材に伝導可能に結合された戻りスプリング、
から成る伝導装置。
【請求項2】
入力側機械エネルギー源により交互運動で伝導できる入力側伝導部材から出力側被伝導部材に入力側機械エネルギーを伝達するための機械的伝導装置で、その伝導装置が自動的で、連続的可変の伝導比を有し、かつ、交互運動を回転運動に変換し、
(d)交互運動部材及び前記出力側被伝導部材を形成する連続運動で回転形の出力部材を含むラチェット、
(e)入力側伝導部材に加えられる力をラチェットの交互運動部材に一方向の伝導をするため、ラチェットの交互運動部材と入力側伝導部材の間を伝導可能に結合する伝導スプリング、
(f)伝導スプリングにより加えられる力とは反対方向でラチェットの交互運動部材に戻りの力を加えるためにラチェットの交互運動部材に伝導可能に結合された戻りスプリング、
から成る伝導装置。
【請求項3】
入力側伝導部材がその伝導スプリングに回転可能で、かつ、伝導可能に結合されたクランク・ピンを有するクランクであることを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項4】
入力側伝導部材がフレキシブル・ドライブ・リンケージにより伝導スプリングに伝導可能に結合されていることを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項5】
伝導スプリングが、変位の単位当たりの力と蓄積エネルギーが変位と共に増加するような伝導スプリングの変位の増加関数である非線形の力の係数を有することを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項6】
伝導スプリングが片持ち梁形スプリングであり、そのスプリングが、戻りスプリングの最も弛んだ位置で、ラチェットの交互運動部材の周縁に少なくとも部分的に伸びていて、それに結合することを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項7】
入力側伝導部材がフレキシブル・ドライブ・リンケージにより伝導スプリングに伝導可能に結合されていること特徴とする請求項6に基づく伝導装置。
【請求項8】
伝導スプリングが、変位の単位当たりの力とエネルギーがスプリングの変位と共に増加するようなスプリングの変位の増加関数である非線形の力の係数を有することを特徴とする請求項6に基づく伝導装置。
【請求項9】
請求項6に基づく伝導装置で、さらに、ラチェットの交互運動部材に一端を固定していて、かつ、ラチェットの交互運動部材に伝導スプリングを取付ける場所付近から曲がった経路に沿って外側に伸びている伝導スプリングのバックアップ・ウォールを含んでいて、そのバックアップ・ウォールが伝導スプリングの外側に位置していて、移動した伝導スプリングが係合するように位置合わせされていることを特徴とする伝導装置。
【請求項10】
伝導スプリングのバックアップ・ウォールが弾性的で、伝導スプリングがバックアップ・ウォールに接触したときに伝導スプリングにより加えられる有効スプリング力を弾性的に高められるように伝導スプリングにスプリング力を加えることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項11】
入力側伝導部材が伝導スプリングに回転可能に又伝導可能に結合されたクランク・ピンを有するクランクであることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項12】
入力側伝導部材がフレキシブル・ドライブ・リンケージにより伝導スプリングに伝導可能に結合されていることを特徴とする請求項11に基づく伝導装置。
【請求項13】
バックアップ・ウォールが伝導スプリングの経路内で選択された位置に調節可能に移動でき、伝導スプリングがバックアップ・ウォールに係合する位置に伝導スプリングの変位を変えることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項14】
請求項2に基づく伝導装置で、さらに、
(a)クランクの回転軸の周りに角度的に間隔を置いた複数のクランク・ピンを有するクランク。
(b)複数の前記ラチェット、各ラチェットが交互運動部材及び連続運動をする回転形出力部材を含み、その出力部材が共に固定されて前記出力側被伝導部材を形成していること、
(c)複数の伝導スプリング、各伝導スプリングがクランク・ピンのひとつに回転可能に結合され、かつ、ラチェットの交互運動部材のひとつに伝導可能に結合され、各伝導スプリングが、入力側伝導部材に加えられた力をラチェットの交互運動部材に一方向で伝達すること、
(d)複数の戻りスプリング、各戻りスプリングがラチェットの交互運動部材のひとつに伝導可能に結合されて、伝導スプリングにより加えられる力とは反対方向に戻り力を加えること、
から成る伝導装置。
【請求項15】
請求項3又は請求項6に基づく伝導装置で、さらに、
固定比の伝導装置を介して、クランクの入力側伝導部材に伝導可能に結合された二重クランクの自転車用ペダル機構を含み、その固定比の伝導装置の比率がクランクの入力側伝導部材を自転車用ペダル機構よりも高い角速度で駆動する伝導装置。
【請求項16】
請求項2に基づく複数の伝導装置で、前記伝導装置のそれぞれが1台の車両の別々の車輪に伝導可能に結合されていて、1個の伝送装置が結合している車輪にトルクを加える一方で車輪(複数)を別々の角速度で回転できるようにした伝導装置。
【請求項17】
請求項2に基づく少なくとも2個の伝導装置から成る伝導装置で、前記伝導装置(複数)のそれぞれが1台の車両の同じ車輪に伝導可能に結合され、かつ、入力側伝導部材に伝導可能に結合され、その入力用伝導部材により別々の角速度で駆動される出力側被伝導部材を有している伝導装置。
【請求項18】
伝導装置のラチェットの交互運動部材(複数)が別々の直径を有することを特徴とする請求項17に基づく伝導装置。
【請求項19】
入力側伝導部材がクランクであり、フレキシブル・ドライブ・リンケージにより、伝導スプリングに伝導可能に結合され、かつ、その伝導装置がさらに、ひとつの軸に回転可能に取付けられ、かつ、フレキブル・ドライブ・リンケージに係合しているローラーを含み、その軸がフレキシブル・ドライブ・リンケージの経路を変化させるために、フレキブル・ドライブ・リンケージの横方向に調節可能に移動できることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項20】
その軸がローラーの横方向の位置を移動可能に調節するために、移動可能な制御ケーブルに接続していることを特徴とする請求項18に基づく伝導装置。
【請求項1】
入力側機械エネルギー源により交互運動で伝導できる入力側伝導部材から出力側被伝導部材に入力側機械エネルギーを伝達するための機械的伝導装置で、その伝導装置が自動的で、連続的可変の伝導比を有し、
(a)交互運動部材及び前記出力側被伝導部材を形成する連続運動の出力部材を含むラチェット、
(b)入力側伝導部材に加えられる力をラチェットの交互運動部材に一方向の伝導をするため、ラチェットの交互運動部材と入力側伝導部材の間を伝導可能に結合する伝導スプリング、
(c)伝導スプリングにより加えられる力とは反対方向でラチェットの交互運動部材に戻りの力を加えるためにラチェットの交互運動部材に伝導可能に結合された戻りスプリング、
から成る伝導装置。
【請求項2】
入力側機械エネルギー源により交互運動で伝導できる入力側伝導部材から出力側被伝導部材に入力側機械エネルギーを伝達するための機械的伝導装置で、その伝導装置が自動的で、連続的可変の伝導比を有し、かつ、交互運動を回転運動に変換し、
(d)交互運動部材及び前記出力側被伝導部材を形成する連続運動で回転形の出力部材を含むラチェット、
(e)入力側伝導部材に加えられる力をラチェットの交互運動部材に一方向の伝導をするため、ラチェットの交互運動部材と入力側伝導部材の間を伝導可能に結合する伝導スプリング、
(f)伝導スプリングにより加えられる力とは反対方向でラチェットの交互運動部材に戻りの力を加えるためにラチェットの交互運動部材に伝導可能に結合された戻りスプリング、
から成る伝導装置。
【請求項3】
入力側伝導部材がその伝導スプリングに回転可能で、かつ、伝導可能に結合されたクランク・ピンを有するクランクであることを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項4】
入力側伝導部材がフレキシブル・ドライブ・リンケージにより伝導スプリングに伝導可能に結合されていることを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項5】
伝導スプリングが、変位の単位当たりの力と蓄積エネルギーが変位と共に増加するような伝導スプリングの変位の増加関数である非線形の力の係数を有することを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項6】
伝導スプリングが片持ち梁形スプリングであり、そのスプリングが、戻りスプリングの最も弛んだ位置で、ラチェットの交互運動部材の周縁に少なくとも部分的に伸びていて、それに結合することを特徴とする請求項2に基づく伝導装置。
【請求項7】
入力側伝導部材がフレキシブル・ドライブ・リンケージにより伝導スプリングに伝導可能に結合されていること特徴とする請求項6に基づく伝導装置。
【請求項8】
伝導スプリングが、変位の単位当たりの力とエネルギーがスプリングの変位と共に増加するようなスプリングの変位の増加関数である非線形の力の係数を有することを特徴とする請求項6に基づく伝導装置。
【請求項9】
請求項6に基づく伝導装置で、さらに、ラチェットの交互運動部材に一端を固定していて、かつ、ラチェットの交互運動部材に伝導スプリングを取付ける場所付近から曲がった経路に沿って外側に伸びている伝導スプリングのバックアップ・ウォールを含んでいて、そのバックアップ・ウォールが伝導スプリングの外側に位置していて、移動した伝導スプリングが係合するように位置合わせされていることを特徴とする伝導装置。
【請求項10】
伝導スプリングのバックアップ・ウォールが弾性的で、伝導スプリングがバックアップ・ウォールに接触したときに伝導スプリングにより加えられる有効スプリング力を弾性的に高められるように伝導スプリングにスプリング力を加えることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項11】
入力側伝導部材が伝導スプリングに回転可能に又伝導可能に結合されたクランク・ピンを有するクランクであることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項12】
入力側伝導部材がフレキシブル・ドライブ・リンケージにより伝導スプリングに伝導可能に結合されていることを特徴とする請求項11に基づく伝導装置。
【請求項13】
バックアップ・ウォールが伝導スプリングの経路内で選択された位置に調節可能に移動でき、伝導スプリングがバックアップ・ウォールに係合する位置に伝導スプリングの変位を変えることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項14】
請求項2に基づく伝導装置で、さらに、
(a)クランクの回転軸の周りに角度的に間隔を置いた複数のクランク・ピンを有するクランク。
(b)複数の前記ラチェット、各ラチェットが交互運動部材及び連続運動をする回転形出力部材を含み、その出力部材が共に固定されて前記出力側被伝導部材を形成していること、
(c)複数の伝導スプリング、各伝導スプリングがクランク・ピンのひとつに回転可能に結合され、かつ、ラチェットの交互運動部材のひとつに伝導可能に結合され、各伝導スプリングが、入力側伝導部材に加えられた力をラチェットの交互運動部材に一方向で伝達すること、
(d)複数の戻りスプリング、各戻りスプリングがラチェットの交互運動部材のひとつに伝導可能に結合されて、伝導スプリングにより加えられる力とは反対方向に戻り力を加えること、
から成る伝導装置。
【請求項15】
請求項3又は請求項6に基づく伝導装置で、さらに、
固定比の伝導装置を介して、クランクの入力側伝導部材に伝導可能に結合された二重クランクの自転車用ペダル機構を含み、その固定比の伝導装置の比率がクランクの入力側伝導部材を自転車用ペダル機構よりも高い角速度で駆動する伝導装置。
【請求項16】
請求項2に基づく複数の伝導装置で、前記伝導装置のそれぞれが1台の車両の別々の車輪に伝導可能に結合されていて、1個の伝送装置が結合している車輪にトルクを加える一方で車輪(複数)を別々の角速度で回転できるようにした伝導装置。
【請求項17】
請求項2に基づく少なくとも2個の伝導装置から成る伝導装置で、前記伝導装置(複数)のそれぞれが1台の車両の同じ車輪に伝導可能に結合され、かつ、入力側伝導部材に伝導可能に結合され、その入力用伝導部材により別々の角速度で駆動される出力側被伝導部材を有している伝導装置。
【請求項18】
伝導装置のラチェットの交互運動部材(複数)が別々の直径を有することを特徴とする請求項17に基づく伝導装置。
【請求項19】
入力側伝導部材がクランクであり、フレキシブル・ドライブ・リンケージにより、伝導スプリングに伝導可能に結合され、かつ、その伝導装置がさらに、ひとつの軸に回転可能に取付けられ、かつ、フレキブル・ドライブ・リンケージに係合しているローラーを含み、その軸がフレキシブル・ドライブ・リンケージの経路を変化させるために、フレキブル・ドライブ・リンケージの横方向に調節可能に移動できることを特徴とする請求項9に基づく伝導装置。
【請求項20】
その軸がローラーの横方向の位置を移動可能に調節するために、移動可能な制御ケーブルに接続していることを特徴とする請求項18に基づく伝導装置。
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公表番号】特表2006−525915(P2006−525915A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508813(P2006−508813)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005463
【国際公開番号】WO2004/106151
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505436081)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005463
【国際公開番号】WO2004/106151
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505436081)
【Fターム(参考)】
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