速度計測装置および方法
【課題】速度の計測範囲を広げる。
【解決手段】速度計測装置は、測定対象のウェブ11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間とが交互に存在するようにレーザ1を動作させるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力に含まれる干渉波形の数を求める信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいてウェブ11の速度を算出する演算部8を備える。レーザドライバ4は、第1の発振期間と第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるようにレーザ1を動作させる。
【解決手段】速度計測装置は、測定対象のウェブ11にレーザ光を放射する半導体レーザ1と、レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間とが交互に存在するようにレーザ1を動作させるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力に含まれる干渉波形の数を求める信号抽出部7と、信号抽出部7の計数結果に基づいてウェブ11の速度を算出する演算部8を備える。レーザドライバ4は、第1の発振期間と第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるようにレーザ1を動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の干渉を利用して物体の速度を計測する速度計測装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の速度計測装置が提案されている(特許文献1参照)。この速度計測装置の構成を図17に示す。図17の速度計測装置は、物体210にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部205と、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧から信号を抽出する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれる、自己結合効果による干渉縞であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図18は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図18において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧から半導体レーザ201の発振波形(搬送波)を除去する。計数装置207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ201の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、物体210の速度等の物理量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
三角波状の搬送波を用いる従来の速度計測装置では、一般的な鋸波状の搬送波を用いる干渉計と比較して、干渉信号を距離と速度とに分離して算出することができるものの、速度の計測範囲が狭いという問題点があった。以下、この問題点について説明する。
計数装置で計測されるMHPの数は、次式に示すように物体との距離Lに比例する項N0と物体の速度Vに比例する項A・V(Aは係数)との線形和になる。
N=|N0±A・V| ・・・(1)
【0007】
ここで、速度Vは半導体レーザに接近する方向を正とする。半導体レーザの発振波長が増加する第1の発振期間では、N=|N0+A・V|となり、発振波長が減少する第2の発振期間では、N=|N0−A・V|となる。また、式(1)の関係をMHPの周波数fsigで表現すると、次式のようになる。
fsig=|f0±a・V| ・・・(2)
【0008】
f0は物体との距離Lに比例する項、aは係数である。図19にMHPの周波数fsigと物体の速度Vとの関係を示す。図19において、fuは半導体レーザの発振波長が増加する第1の発振期間における周波数figの変化を示し、fdは発振波長が減少する第2の発振期間における周波数figの変化を示している。fmaxは信号抽出回路206で抽出可能なMHPの最高周波数、fminは信号抽出回路206で抽出可能なMHPの最低周波数である。fmaxとfminとの差が回路帯域幅となる。
【0009】
以上のように、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置では、第1の発振期間と第2の発振期間で物体の速度Vに係る係数の符号が異なる。このため、図20に示すように半導体レーザを鋸波状に発振させる場合に比べて、MHPの計数に使用可能な回路帯域が半分になり、結果として速度計測に使用可能な回路帯域が半分になる。なお、以上の問題は、自己結合型の速度計測装置に限らず、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置であれば、同様に発生する。
【0010】
一方、図20に示した鋸波状の搬送波を用いる速度計測装置では、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置に比べて速度の計測範囲を約2倍にすることができる。しかし、計数装置で計数されたMHPのうち、対象物との距離によるMHPと対象物の速度によるMHPとの分離ができない。その結果、演算装置で算出する速度に誤差が生じるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置の利点を維持しつつ、速度の計測範囲を広げることができる速度計測装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の速度計測装置は、測定対象に電磁波または弾性波を放射する放射器と、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように前記放射器を動作させる発振波長変調手段と、前記放射器から放射された電磁波または弾性波と前記測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出手段と、前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算手段とを備え、前記発振波長変調手段は、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の速度計測装置の1構成例は、さらに、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について前記干渉波形の平均周波数を測定する周波数測定手段と、前記第1の発振期間における干渉波形の平均周波数と前記第2の発振期間における干渉波形の平均周波数との平均値と、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数と計測可能な干渉波形の最低周波数との平均値が等しくなるように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測装置の1構成例は、さらに、前記測定対象の速度が0のときの第1の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最低周波数を下回らない範囲で前記最低周波数に近づき、前記測定対象の速度が0のときの第2の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数を上回らない範囲で最高周波数に近づくように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測装置の1構成例において、前記放射器は、半導体レーザであり、前記検出手段は、前記半導体レーザから放射された電磁波であるレーザ光と前記測定対象から戻る反射波である戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の速度計測方法は、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように放射器を動作させる発振ステップと、前記放射器から放射された電磁波または弾性波と測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出ステップと、この検出ステップで得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出ステップと、前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算ステップとを備え、前記発振波長変調ステップは、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、計測可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の発振期間と第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように放射器を動作させることにより、第1の発振期間と第2の発振期間の各々において速度計測装置の回路帯域のほぼ全てを使用して干渉波形の計数を行うことができるので、従来よりも有効に回路帯域を使用することができ、速度の計測範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置のフィルタ部の構成の1例を示す図である。
【図6】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図7】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の演算部の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化および信号抽出部によって導出されたモードホップパルスの数の時間変化を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における信号周波数と物体の速度との関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部によって導出されたモードホップパルスの数と物体の速度との関係を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る速度計測装置の調整部の構成の1例を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る速度計測装置の調整部の構成の1例を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図17】従来の速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図18】図17の速度計測装置における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図19】信号周波数と物体の速度との関係を示す図である。
【図20】半導体レーザを鋸波状に発振させる場合の発振波長の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。図1の速度計測装置は、紙、フィルム、セロファン、金属箔、ゴムなどのロール状に巻き取った物体(以下、ウェブと呼ぶ)11にレーザ光を放射する放射器となる半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、ウェブ11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの数を求める信号抽出部7と、信号抽出部7によって導出されたMHPの数に基づいてウェブ11の速度を算出する演算部8と、演算部8の計測結果を表示する表示部9とを有する。
【0018】
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とは、センサモジュール10を構成している。また、フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。
【0019】
図2は本実施の形態の速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。ウェブ搬送装置は、送出側ガイド軸100と、受取側ガイド軸101と、送出側ガイド軸100に装着される送出側ロール102と、受取側ガイド軸101に装着される受取側ロール103と、送出側ガイド軸100を駆動し、送出側ロール102を回転させる送出側モータ駆動部(不図示)と、受取側ガイド軸101を駆動し、受取側ロール103を回転させる受取側モータ駆動部(不図示)と、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する制御部104とを有する。
【0020】
送出側モータ駆動部が送出側ロール102を回転させると、送出側ロール102に巻かれたウェブ11が繰り出される。受取側では、受取側モータ駆動部が受取側ロール103を回転させることにより、受取側ロール103がウェブ11を巻き取る。
制御部104は、ウェブ11の速度が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。
【0021】
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とからなるセンサモジュール10は、図2に示すように送出側ガイド軸100と受取側ガイド軸101間のウェブ11上に配置され、ウェブ11に対してレーザ光を斜方照射する。レーザ光を斜方照射するのは、ウェブ11の速度を計測するためである。
図1のレーザドライバ4と電流−電圧変換増幅部5とフィルタ部6と信号抽出部7と演算部8と表示部9とは、制御部104の内部に設けられる。
【0022】
次に、本実施の形態の速度計測装置の動作を詳細に説明する。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0023】
レーザドライバ4は、半導体レーザの発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なる三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、第1の発振期間と第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図3は、半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図3において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値である。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0024】
図2に示すようにウェブ11が水平方向に沿って半導体レーザ1に近づく方向に移動している場合、信号抽出部7で抽出可能なMHPの最高周波数をfmax、計測可能なMHPの最低周波数をfmin、第1の発振期間P1の時間長をT1、第2の発振期間P2の時間長をT2とすると、次式が成立する。
(fmin/fmax)≧(T2/T1) ・・・(3)
【0025】
第1の発振期間P1の発振波長の傾きをS1、第2の発振期間P2の発振波長の傾きをS2とし、式(3)を発振波長の傾きで表現すると、次式となる。
(fmin/fmax)≦(S1/S2) ・・・(4)
【0026】
また、図2の場合と反対に、ウェブ11が水平方向に沿って半導体レーザ1から遠ざかる方向に移動している場合、次式が成立する。
(fmin/fmax)≧(T1/T2) ・・・(5)
式(5)を発振波長の傾きで表現すると、次式となる。
(fmin/fmax)≦(S2/S1) ・・・(6)
【0027】
こうして、レーザドライバ4は、式(3)〜式(6)のいずれかで定義される三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、ウェブ11に入射する。ウェブ11で反射された光の一部は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0028】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図4(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図4(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図4(A)の波形(変調波)から、図3の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図4(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0029】
ここで、フィルタ部6の構成について説明する。フィルタ部6は、図5に示すように、搬送波除去用のハイパスフィルタ60と、ノイズ除去用のローパスフィルタ61とから構成される。信号抽出部7で抽出可能なMHPの最高周波数fmaxはローパスフィルタ61のカットオフ周波数で決まり、信号抽出部7で抽出可能なMHPの最低周波数fminはハイパスフィルタ60のカットオフ周波数で決まる。
【0030】
次に、信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について求める。信号抽出部7としては、論理ゲートからなるカウンタを利用すればよい。また、FFT(Fast Fourier Transform)などの周波数解析手法を用いてMHPの周波数(すなわち単位時間あたりのMHPの数)を求め、信号抽出時間中のMHPの数を算出するようにしてもよい。
【0031】
ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図6に示すように、ミラー層13からウェブ11までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、ウェブ11からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(7)
式(7)において、qは整数である。この現象は、ウェブ11からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図6において、14はミラーとなる誘電体多層膜である。
【0032】
図7は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(7)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図7に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。さらに、ウェブ11が速度を持つ場合、ドップラー効果成分によって速度に比例したMHPの数だけ増減する。
【0033】
次に、演算部8は、信号抽出部7が数えたMHPの数に基づいてウェブ11の速度を算出する。図8は演算部8の構成の1例を示すブロック図である。演算部8は、信号抽出部7によって導出されたMHPの数等を記憶する記憶部80と、半導体レーザ1とウェブ11との平均距離に比例したMHPの数(以下、距離比例個数とする)NLを求める距離比例個数算出部81と、距離比例個数NLからウェブ11の速度を算出する速度算出部82とから構成される。
【0034】
図9は演算部8の動作を示すフローチャートである。信号抽出部7によって導出されたMHPの数は、演算部8の記憶部80に格納される。
図10(A)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、図10(B)は信号抽出部7によって導出されたMHPの数の時間変化を示す図である。図10(B)において、Nuは第1の発振期間P1におけるMHPの数、Ndは第2の発振期間P2におけるMHPの数、NLは距離比例個数である。図3から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、MHPの数NuとNdも交互に現れる。
【0035】
演算部8の距離比例個数算出部81は、記憶部80に格納されたMHPの数から距離比例個数NLを求める(図9ステップS100)。
【0036】
図10(A)から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、MHPの数NuとNdも交互に現れる。MHPの数Nu,Ndは、距離比例個数NLと各測定期間T1もしくはT2間のウェブ11の変位に比例したMHPの数との和もしくは差である。
【0037】
距離比例個数算出部81は、次式に示すように距離比例個数NLを算出する。
NL=(T1×Nd+T2×Nu)/(T1+T2) ・・・(8)
式(8)において、T1は第1の発振期間P1の時間長、T2は第2の発振期間P2の時間長である。距離比例個数算出部81が算出した距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。なお、距離比例個数NLの算出処理は、発振期間毎に加えて、式(8)のNd,Nuの代わりに、ある期間のNdおよびNuの値のそれぞれの平均値を用いても良い。
【0038】
次に、演算部8の速度算出部82は、距離比例個数NLからウェブ11の速度Vを算出する(図9ステップS101)。信号抽出部7によって導出されたMHPの数N(すなわち、NuまたはNd)と距離比例個数NLとの差が測定期間における変位に比例するため、第1の発振期間P1の時間長T1または第2の発振期間P2の時間長T2あたりのウェブ11の進行方向の変位Dは次式で算出できる。
D=λ/2×|N−NL|×cosθ ・・・(9)
【0039】
式(9)において、λは半導体レーザ1の発振平均波長、θは図2に示すように半導体レーザ1からのレーザ光の光軸がウェブ11に対してなす角度である。式(9)より第1の発振期間P1におけるウェブ11の速度Vは次式で算出できる。
V=D/T1 ・・・(10)
また、第2の発振期間P2におけるウェブ11の速度Vは次式で算出できる。
V=D/T2 ・・・(11)
【0040】
速度算出部82は、式(10)、式(11)による速度Vの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。なお、式(10)の変位Dは式(9)のMHPの数NとしてNuを用いて求めた値であり、式(11)の変位Dは式(9)のMHPの数NとしてNdを用いて求めた値である。また、速度Vと変位Dはともに半導体レーザに接近する方向が正である。表示部9は、速度算出部82が算出したウェブ11の速度Vを表示する。
【0041】
ウェブ搬送装置の制御部104は、速度算出部82の算出結果に基づいて、ウェブ11の速度Vが所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。なお、ウェブ11の張力を求める手段は本発明の構成要件でないため記載していないが、周知の技術によりウェブ11の張力を計測し、ウェブ11の張力が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御してもよいことは言うまでもない。
【0042】
図11は本実施の形態におけるMHPの周波数fsigとウェブ11の速度Vとの関係を示す図、図12は信号抽出部7によって導出されたMHPの数Nとウェブ11の速度Vとの関係を示す図である。図11において、fuは半導体レーザ1の発振波長が増加する第1の発振期間における周波数figの変化を示し、fdは発振波長が減少する第2の発振期間における周波数figの変化を示している。
【0043】
図19に示したように、従来の速度計測装置では、第1の発振期間と第2の発振期間の各々においてMHPの計数に使用可能な帯域は速度計測装置の回路帯域の1/2である。これに対して、本実施の形態では、第1の発振期間と第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なる搬送波を用いる。これにより、本実施の形態では、図11に示すように、第1の発振期間と第2の発振期間の各々において速度計測装置の回路帯域のほぼ全てを使用してMHPの計数を行うことができるので、従来よりも有効に回路帯域を使用することができ、速度の計測範囲を広げることができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図13は本発明の第2の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の速度計測装置は、半導体レーザ1と、フォトダイオード2と、レンズ3と、レーザドライバ4と、電流−電圧変換増幅部5と、フィルタ部6と、信号抽出部7と、演算部8と、表示部9と、搬送波を調整する調整部12とを有する。
【0045】
図14は調整部12の構成の1例を示すブロック図である。調整部12は、周波数測定部120と、搬送波調整部121とから構成される。
周波数測定部120は、半導体レーザ1の発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間の各々についてMHPの平均周波数favを測定する。周波数測定部120は、信号抽出部7によって導出されたMHPの数Nと信号抽出部7がMHPの数を数える信号抽出時間TとからMHPの平均周波数favを次式のように算出する。なお、FFTなどの周波数解析手段を用いてMHPの平均周波数favを求めるようにしてもよい。
fav=N/T ・・・(12)
【0046】
搬送波調整部121は、第1の発振期間におけるMHPの平均周波数fuと第2の発振期間におけるMHPの平均周波数fdとの平均値と、信号抽出部7で抽出可能なMHPの最高周波数fmaxと計測可能なMHPの最低周波数fminとの平均値が等しくなるように、レーザドライバ4を通じて搬送波を調整する。すなわち、搬送波調整部121は、以下の式が成立するように搬送波を調整する。
(fu+fd)/2=(fmax+fmin)/2 ・・・(13)
【0047】
搬送波調整部121は、具体的には、搬送波の周波数、時間に対する発振波長の変化率、最大発振波長λbと最小発振波長λaとの差Δλのうち、少なくとも1つを変化させることにより、搬送波を調整する。これらの調整は、いずれもレーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する三角波駆動電流の調整によって実現できる。
以上のような搬送波の調整は、ウェブ11が動いていない初期設定時に行ってもよいし、ウェブ11の速度の計測中に常時行うようにしてもよい。速度計測装置のその他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0048】
第1の実施の形態において、速度計測装置の回路帯域を最も有効に使用するには、式(13)が成立することが望ましい。本実施の形態では、搬送波を調整することにより、速度計測装置の回路帯域を有効に使用することができ、速度の計測範囲を広げることができる。
【0049】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態の調整部12の別の構成例を示すものである。図15は本実施の形態の調整部12の構成の1例を示すブロック図である。本実施の形態の調整部12は、搬送波調整部121aから構成される。
【0050】
図11の周波数fuの傾きをa、周波数fdの傾きを−a、周波数fuの切片をf0u、周波数fdの切片をf0d、図12の個数Nuの傾きをAu、個数Ndの傾きをAdとすると、次式が成立する。
fu=f0u+a×V ・・・(14)
fd=f0d−a×V ・・・(15)
Nu=NL+Au×V ・・・(16)
Nd=NL+Ad×V ・・・(17)
【0051】
搬送波調整部121aは、切片f0u、すなわちウェブ11の速度Vが0のときの第1の発振期間におけるMHPの周波数が最低周波数fminを下回らない範囲でfminに近づき、切片f0d、すなわちウェブ11の速度Vが0のときの第2の発振期間におけるMHPの周波数が最高周波数fmaxを上回らない範囲でfmaxに近づくように、レーザドライバ4を通じて搬送波を調整する。これにより、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図16は本発明の第4の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の速度計測装置は、第1〜第3の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部13を用いるものである。
【0053】
電圧検出部13は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光とウェブ11からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0054】
フィルタ部6は、電圧検出部13の出力電圧から搬送波を除去する。速度計測装置のその他の構成は、第1〜第3の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第3の実施の形態と比較して速度計測装置の部品を削減することができ、速度計測装置のコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0055】
本実施の形態では、レーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する駆動電流をレーザ発振のしきい値電流付近に制御することが好ましい。これにより、半導体レーザ1の端子間電圧からMHPを抽出することが容易になる。
【0056】
なお、第1〜第4の実施の形態において、少なくとも信号抽出部7と演算部8と調整部12と制御部104とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0057】
また、第1〜第4の実施の形態では、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブ11を測定対象としているが、これに限るものではない。ただし、測定対象は、図2に示したウェブ11の例のように半導体レーザ1と測定対象との距離Lが略一定であることが好ましい。
【0058】
第1〜第4の実施の形態では、自己結合型の速度計測装置に本発明を適用する場合について説明したが、自己結合型以外の速度計測装置、例えばレーザドップラーや弾性波(音波、超音波など)などを用いる速度計測装置にも本発明を適用することができる。第1〜第4の実施の形態を自己結合型以外の速度計測装置に適用する場合には、例えば半導体レーザから放射されるレーザ光と戻り光とを例えばビームスプリッタ等により分離して、戻り光をフォトダイオードで検出することにより、戻り光のうち速度に依存して変化するパラメータを得るようにしたり、超音波発信器および受信器を用いて、同様に受信波形に基づく処理を行うようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電磁波の干渉を利用して物体の速度を計測する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…信号抽出部、8…演算部、9…表示部、10…センサモジュール、11…ウェブ、12…調整部、13…電圧検出部、80…記憶部、81…距離比例個数算出部、82…速度算出部、120…周波数測定部、121,121a…搬送波調整部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の干渉を利用して物体の速度を計測する速度計測装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型の速度計測装置が提案されている(特許文献1参照)。この速度計測装置の構成を図17に示す。図17の速度計測装置は、物体210にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部205と、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧から信号を抽出する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれる、自己結合効果による干渉縞であるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図18は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図18において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Tcarは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧から半導体レーザ201の発振波形(搬送波)を除去する。計数装置207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ201の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、物体210の速度等の物理量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
三角波状の搬送波を用いる従来の速度計測装置では、一般的な鋸波状の搬送波を用いる干渉計と比較して、干渉信号を距離と速度とに分離して算出することができるものの、速度の計測範囲が狭いという問題点があった。以下、この問題点について説明する。
計数装置で計測されるMHPの数は、次式に示すように物体との距離Lに比例する項N0と物体の速度Vに比例する項A・V(Aは係数)との線形和になる。
N=|N0±A・V| ・・・(1)
【0007】
ここで、速度Vは半導体レーザに接近する方向を正とする。半導体レーザの発振波長が増加する第1の発振期間では、N=|N0+A・V|となり、発振波長が減少する第2の発振期間では、N=|N0−A・V|となる。また、式(1)の関係をMHPの周波数fsigで表現すると、次式のようになる。
fsig=|f0±a・V| ・・・(2)
【0008】
f0は物体との距離Lに比例する項、aは係数である。図19にMHPの周波数fsigと物体の速度Vとの関係を示す。図19において、fuは半導体レーザの発振波長が増加する第1の発振期間における周波数figの変化を示し、fdは発振波長が減少する第2の発振期間における周波数figの変化を示している。fmaxは信号抽出回路206で抽出可能なMHPの最高周波数、fminは信号抽出回路206で抽出可能なMHPの最低周波数である。fmaxとfminとの差が回路帯域幅となる。
【0009】
以上のように、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置では、第1の発振期間と第2の発振期間で物体の速度Vに係る係数の符号が異なる。このため、図20に示すように半導体レーザを鋸波状に発振させる場合に比べて、MHPの計数に使用可能な回路帯域が半分になり、結果として速度計測に使用可能な回路帯域が半分になる。なお、以上の問題は、自己結合型の速度計測装置に限らず、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置であれば、同様に発生する。
【0010】
一方、図20に示した鋸波状の搬送波を用いる速度計測装置では、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置に比べて速度の計測範囲を約2倍にすることができる。しかし、計数装置で計数されたMHPのうち、対象物との距離によるMHPと対象物の速度によるMHPとの分離ができない。その結果、演算装置で算出する速度に誤差が生じるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、三角波状の搬送波を用いる速度計測装置の利点を維持しつつ、速度の計測範囲を広げることができる速度計測装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の速度計測装置は、測定対象に電磁波または弾性波を放射する放射器と、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように前記放射器を動作させる発振波長変調手段と、前記放射器から放射された電磁波または弾性波と前記測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出手段と、前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算手段とを備え、前記発振波長変調手段は、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の速度計測装置の1構成例は、さらに、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について前記干渉波形の平均周波数を測定する周波数測定手段と、前記第1の発振期間における干渉波形の平均周波数と前記第2の発振期間における干渉波形の平均周波数との平均値と、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数と計測可能な干渉波形の最低周波数との平均値が等しくなるように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測装置の1構成例は、さらに、前記測定対象の速度が0のときの第1の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最低周波数を下回らない範囲で前記最低周波数に近づき、前記測定対象の速度が0のときの第2の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数を上回らない範囲で最高周波数に近づくように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の速度計測装置の1構成例において、前記放射器は、半導体レーザであり、前記検出手段は、前記半導体レーザから放射された電磁波であるレーザ光と前記測定対象から戻る反射波である戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の速度計測方法は、発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように放射器を動作させる発振ステップと、前記放射器から放射された電磁波または弾性波と測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出ステップと、この検出ステップで得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出ステップと、前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算ステップとを備え、前記発振波長変調ステップは、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、計測可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の発振期間と第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように放射器を動作させることにより、第1の発振期間と第2の発振期間の各々において速度計測装置の回路帯域のほぼ全てを使用して干渉波形の計数を行うことができるので、従来よりも有効に回路帯域を使用することができ、速度の計測範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電流−電圧変換増幅部の出力電圧波形およびフィルタ部の出力電圧波形を模式的に示す波形図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置のフィルタ部の構成の1例を示す図である。
【図6】モードホップパルスについて説明するための図である。
【図7】半導体レーザの発振波長とフォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の演算部の構成の1例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の演算部の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態における半導体レーザの発振波長の時間変化および信号抽出部によって導出されたモードホップパルスの数の時間変化を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における信号周波数と物体の速度との関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における信号抽出部によって導出されたモードホップパルスの数と物体の速度との関係を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る速度計測装置の調整部の構成の1例を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る速度計測装置の調整部の構成の1例を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図17】従来の速度計測装置の構成を示すブロック図である。
【図18】図17の速度計測装置における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図19】信号周波数と物体の速度との関係を示す図である。
【図20】半導体レーザを鋸波状に発振させる場合の発振波長の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図である。図1の速度計測装置は、紙、フィルム、セロファン、金属箔、ゴムなどのロール状に巻き取った物体(以下、ウェブと呼ぶ)11にレーザ光を放射する放射器となる半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、ウェブ11からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動する発振波長変調手段となるレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部5と、電流−電圧変換増幅部5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ部6と、フィルタ部6の出力電圧に含まれる自己結合信号であるMHPの数を求める信号抽出部7と、信号抽出部7によって導出されたMHPの数に基づいてウェブ11の速度を算出する演算部8と、演算部8の計測結果を表示する表示部9とを有する。
【0018】
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とは、センサモジュール10を構成している。また、フォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とは、検出手段を構成している。
【0019】
図2は本実施の形態の速度計測装置を適用するウェブ搬送装置の構成を示すブロック図である。ウェブ搬送装置は、送出側ガイド軸100と、受取側ガイド軸101と、送出側ガイド軸100に装着される送出側ロール102と、受取側ガイド軸101に装着される受取側ロール103と、送出側ガイド軸100を駆動し、送出側ロール102を回転させる送出側モータ駆動部(不図示)と、受取側ガイド軸101を駆動し、受取側ロール103を回転させる受取側モータ駆動部(不図示)と、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する制御部104とを有する。
【0020】
送出側モータ駆動部が送出側ロール102を回転させると、送出側ロール102に巻かれたウェブ11が繰り出される。受取側では、受取側モータ駆動部が受取側ロール103を回転させることにより、受取側ロール103がウェブ11を巻き取る。
制御部104は、ウェブ11の速度が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。
【0021】
半導体レーザ1とフォトダイオード2とレンズ3とからなるセンサモジュール10は、図2に示すように送出側ガイド軸100と受取側ガイド軸101間のウェブ11上に配置され、ウェブ11に対してレーザ光を斜方照射する。レーザ光を斜方照射するのは、ウェブ11の速度を計測するためである。
図1のレーザドライバ4と電流−電圧変換増幅部5とフィルタ部6と信号抽出部7と演算部8と表示部9とは、制御部104の内部に設けられる。
【0022】
次に、本実施の形態の速度計測装置の動作を詳細に説明する。以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0023】
レーザドライバ4は、半導体レーザの発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なる三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、第1の発振期間と第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図3は、半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図である。図3において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値である。本実施の形態では、発振波長の最大値λbおよび発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0024】
図2に示すようにウェブ11が水平方向に沿って半導体レーザ1に近づく方向に移動している場合、信号抽出部7で抽出可能なMHPの最高周波数をfmax、計測可能なMHPの最低周波数をfmin、第1の発振期間P1の時間長をT1、第2の発振期間P2の時間長をT2とすると、次式が成立する。
(fmin/fmax)≧(T2/T1) ・・・(3)
【0025】
第1の発振期間P1の発振波長の傾きをS1、第2の発振期間P2の発振波長の傾きをS2とし、式(3)を発振波長の傾きで表現すると、次式となる。
(fmin/fmax)≦(S1/S2) ・・・(4)
【0026】
また、図2の場合と反対に、ウェブ11が水平方向に沿って半導体レーザ1から遠ざかる方向に移動している場合、次式が成立する。
(fmin/fmax)≧(T1/T2) ・・・(5)
式(5)を発振波長の傾きで表現すると、次式となる。
(fmin/fmax)≦(S2/S1) ・・・(6)
【0027】
こうして、レーザドライバ4は、式(3)〜式(6)のいずれかで定義される三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、ウェブ11に入射する。ウェブ11で反射された光の一部は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0028】
フィルタ部6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図4(A)は電流−電圧変換増幅部5の出力電圧波形を模式的に示す図、図4(B)はフィルタ部6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図4(A)の波形(変調波)から、図3の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図4(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0029】
ここで、フィルタ部6の構成について説明する。フィルタ部6は、図5に示すように、搬送波除去用のハイパスフィルタ60と、ノイズ除去用のローパスフィルタ61とから構成される。信号抽出部7で抽出可能なMHPの最高周波数fmaxはローパスフィルタ61のカットオフ周波数で決まり、信号抽出部7で抽出可能なMHPの最低周波数fminはハイパスフィルタ60のカットオフ周波数で決まる。
【0030】
次に、信号抽出部7は、フィルタ部6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について求める。信号抽出部7としては、論理ゲートからなるカウンタを利用すればよい。また、FFT(Fast Fourier Transform)などの周波数解析手法を用いてMHPの周波数(すなわち単位時間あたりのMHPの数)を求め、信号抽出時間中のMHPの数を算出するようにしてもよい。
【0031】
ここで、自己結合信号であるMHPについて説明する。図6に示すように、ミラー層13からウェブ11までの距離をL、レーザの発振波長をλとすると、以下の共振条件を満足するとき、ウェブ11からの戻り光と半導体レーザ1の光共振器内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(7)
式(7)において、qは整数である。この現象は、ウェブ11からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザ1の共振器内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。なお、図6において、14はミラーとなる誘電体多層膜である。
【0032】
図7は、半導体レーザ1の発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード2の出力波形との関係を示す図である。式(7)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と光共振器内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と光共振器内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザ1の発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力をフォトダイオード2で検出すると、図7に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つがMHPである。前記のとおり、ある一定時間において半導体レーザ1の発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変化する。さらに、ウェブ11が速度を持つ場合、ドップラー効果成分によって速度に比例したMHPの数だけ増減する。
【0033】
次に、演算部8は、信号抽出部7が数えたMHPの数に基づいてウェブ11の速度を算出する。図8は演算部8の構成の1例を示すブロック図である。演算部8は、信号抽出部7によって導出されたMHPの数等を記憶する記憶部80と、半導体レーザ1とウェブ11との平均距離に比例したMHPの数(以下、距離比例個数とする)NLを求める距離比例個数算出部81と、距離比例個数NLからウェブ11の速度を算出する速度算出部82とから構成される。
【0034】
図9は演算部8の動作を示すフローチャートである。信号抽出部7によって導出されたMHPの数は、演算部8の記憶部80に格納される。
図10(A)は半導体レーザ1の発振波長の時間変化を示す図、図10(B)は信号抽出部7によって導出されたMHPの数の時間変化を示す図である。図10(B)において、Nuは第1の発振期間P1におけるMHPの数、Ndは第2の発振期間P2におけるMHPの数、NLは距離比例個数である。図3から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、MHPの数NuとNdも交互に現れる。
【0035】
演算部8の距離比例個数算出部81は、記憶部80に格納されたMHPの数から距離比例個数NLを求める(図9ステップS100)。
【0036】
図10(A)から明らかなように、第1の発振期間P1と第2の発振期間P2は交互に訪れるので、MHPの数NuとNdも交互に現れる。MHPの数Nu,Ndは、距離比例個数NLと各測定期間T1もしくはT2間のウェブ11の変位に比例したMHPの数との和もしくは差である。
【0037】
距離比例個数算出部81は、次式に示すように距離比例個数NLを算出する。
NL=(T1×Nd+T2×Nu)/(T1+T2) ・・・(8)
式(8)において、T1は第1の発振期間P1の時間長、T2は第2の発振期間P2の時間長である。距離比例個数算出部81が算出した距離比例個数NLは、記憶部80に格納される。距離比例個数算出部81は、以上のような距離比例個数NLの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。なお、距離比例個数NLの算出処理は、発振期間毎に加えて、式(8)のNd,Nuの代わりに、ある期間のNdおよびNuの値のそれぞれの平均値を用いても良い。
【0038】
次に、演算部8の速度算出部82は、距離比例個数NLからウェブ11の速度Vを算出する(図9ステップS101)。信号抽出部7によって導出されたMHPの数N(すなわち、NuまたはNd)と距離比例個数NLとの差が測定期間における変位に比例するため、第1の発振期間P1の時間長T1または第2の発振期間P2の時間長T2あたりのウェブ11の進行方向の変位Dは次式で算出できる。
D=λ/2×|N−NL|×cosθ ・・・(9)
【0039】
式(9)において、λは半導体レーザ1の発振平均波長、θは図2に示すように半導体レーザ1からのレーザ光の光軸がウェブ11に対してなす角度である。式(9)より第1の発振期間P1におけるウェブ11の速度Vは次式で算出できる。
V=D/T1 ・・・(10)
また、第2の発振期間P2におけるウェブ11の速度Vは次式で算出できる。
V=D/T2 ・・・(11)
【0040】
速度算出部82は、式(10)、式(11)による速度Vの算出処理を、信号抽出部7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。なお、式(10)の変位Dは式(9)のMHPの数NとしてNuを用いて求めた値であり、式(11)の変位Dは式(9)のMHPの数NとしてNdを用いて求めた値である。また、速度Vと変位Dはともに半導体レーザに接近する方向が正である。表示部9は、速度算出部82が算出したウェブ11の速度Vを表示する。
【0041】
ウェブ搬送装置の制御部104は、速度算出部82の算出結果に基づいて、ウェブ11の速度Vが所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御する。なお、ウェブ11の張力を求める手段は本発明の構成要件でないため記載していないが、周知の技術によりウェブ11の張力を計測し、ウェブ11の張力が所望の値になるように、送出側モータ駆動部と受取側モータ駆動部とを制御してもよいことは言うまでもない。
【0042】
図11は本実施の形態におけるMHPの周波数fsigとウェブ11の速度Vとの関係を示す図、図12は信号抽出部7によって導出されたMHPの数Nとウェブ11の速度Vとの関係を示す図である。図11において、fuは半導体レーザ1の発振波長が増加する第1の発振期間における周波数figの変化を示し、fdは発振波長が減少する第2の発振期間における周波数figの変化を示している。
【0043】
図19に示したように、従来の速度計測装置では、第1の発振期間と第2の発振期間の各々においてMHPの計数に使用可能な帯域は速度計測装置の回路帯域の1/2である。これに対して、本実施の形態では、第1の発振期間と第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なる搬送波を用いる。これにより、本実施の形態では、図11に示すように、第1の発振期間と第2の発振期間の各々において速度計測装置の回路帯域のほぼ全てを使用してMHPの計数を行うことができるので、従来よりも有効に回路帯域を使用することができ、速度の計測範囲を広げることができる。
【0044】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図13は本発明の第2の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の速度計測装置は、半導体レーザ1と、フォトダイオード2と、レンズ3と、レーザドライバ4と、電流−電圧変換増幅部5と、フィルタ部6と、信号抽出部7と、演算部8と、表示部9と、搬送波を調整する調整部12とを有する。
【0045】
図14は調整部12の構成の1例を示すブロック図である。調整部12は、周波数測定部120と、搬送波調整部121とから構成される。
周波数測定部120は、半導体レーザ1の発振波長が増加する第1の発振期間と発振波長が減少する第2の発振期間の各々についてMHPの平均周波数favを測定する。周波数測定部120は、信号抽出部7によって導出されたMHPの数Nと信号抽出部7がMHPの数を数える信号抽出時間TとからMHPの平均周波数favを次式のように算出する。なお、FFTなどの周波数解析手段を用いてMHPの平均周波数favを求めるようにしてもよい。
fav=N/T ・・・(12)
【0046】
搬送波調整部121は、第1の発振期間におけるMHPの平均周波数fuと第2の発振期間におけるMHPの平均周波数fdとの平均値と、信号抽出部7で抽出可能なMHPの最高周波数fmaxと計測可能なMHPの最低周波数fminとの平均値が等しくなるように、レーザドライバ4を通じて搬送波を調整する。すなわち、搬送波調整部121は、以下の式が成立するように搬送波を調整する。
(fu+fd)/2=(fmax+fmin)/2 ・・・(13)
【0047】
搬送波調整部121は、具体的には、搬送波の周波数、時間に対する発振波長の変化率、最大発振波長λbと最小発振波長λaとの差Δλのうち、少なくとも1つを変化させることにより、搬送波を調整する。これらの調整は、いずれもレーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する三角波駆動電流の調整によって実現できる。
以上のような搬送波の調整は、ウェブ11が動いていない初期設定時に行ってもよいし、ウェブ11の速度の計測中に常時行うようにしてもよい。速度計測装置のその他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0048】
第1の実施の形態において、速度計測装置の回路帯域を最も有効に使用するには、式(13)が成立することが望ましい。本実施の形態では、搬送波を調整することにより、速度計測装置の回路帯域を有効に使用することができ、速度の計測範囲を広げることができる。
【0049】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態の調整部12の別の構成例を示すものである。図15は本実施の形態の調整部12の構成の1例を示すブロック図である。本実施の形態の調整部12は、搬送波調整部121aから構成される。
【0050】
図11の周波数fuの傾きをa、周波数fdの傾きを−a、周波数fuの切片をf0u、周波数fdの切片をf0d、図12の個数Nuの傾きをAu、個数Ndの傾きをAdとすると、次式が成立する。
fu=f0u+a×V ・・・(14)
fd=f0d−a×V ・・・(15)
Nu=NL+Au×V ・・・(16)
Nd=NL+Ad×V ・・・(17)
【0051】
搬送波調整部121aは、切片f0u、すなわちウェブ11の速度Vが0のときの第1の発振期間におけるMHPの周波数が最低周波数fminを下回らない範囲でfminに近づき、切片f0d、すなわちウェブ11の速度Vが0のときの第2の発振期間におけるMHPの周波数が最高周波数fmaxを上回らない範囲でfmaxに近づくように、レーザドライバ4を通じて搬送波を調整する。これにより、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。第1〜第3の実施の形態では、MHP波形を含む電気信号を検出する検出手段としてフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5とを用いたが、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することも可能である。図16は本発明の第4の実施の形態に係る速度計測装置の構成を示すブロック図であり、図1と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の速度計測装置は、第1〜第3の実施の形態のフォトダイオード2と電流−電圧変換増幅部5の代わりに、検出手段として電圧検出部13を用いるものである。
【0053】
電圧検出部13は、半導体レーザ1の端子間電圧、すなわちアノード−カソード間電圧を検出して増幅する。半導体レーザ1から放射されたレーザ光とウェブ11からの戻り光とによって干渉が生じるとき、半導体レーザ1の端子間電圧には、MHP波形が現れる。したがって、半導体レーザ1の端子間電圧からMHP波形を抽出することが可能である。
【0054】
フィルタ部6は、電圧検出部13の出力電圧から搬送波を除去する。速度計測装置のその他の構成は、第1〜第3の実施の形態と同じである。
こうして、本実施の形態では、フォトダイオードを使用することなくMHP波形を抽出することができ、第1〜第3の実施の形態と比較して速度計測装置の部品を削減することができ、速度計測装置のコストを低減することができる。また、本実施の形態では、フォトダイオードを使用しないので、外乱光による影響を除去することができる。
【0055】
本実施の形態では、レーザドライバ4から半導体レーザ1に供給する駆動電流をレーザ発振のしきい値電流付近に制御することが好ましい。これにより、半導体レーザ1の端子間電圧からMHPを抽出することが容易になる。
【0056】
なお、第1〜第4の実施の形態において、少なくとも信号抽出部7と演算部8と調整部12と制御部104とは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0057】
また、第1〜第4の実施の形態では、搬送装置によって送出側から受取側まで搬送中の物体であるウェブ11を測定対象としているが、これに限るものではない。ただし、測定対象は、図2に示したウェブ11の例のように半導体レーザ1と測定対象との距離Lが略一定であることが好ましい。
【0058】
第1〜第4の実施の形態では、自己結合型の速度計測装置に本発明を適用する場合について説明したが、自己結合型以外の速度計測装置、例えばレーザドップラーや弾性波(音波、超音波など)などを用いる速度計測装置にも本発明を適用することができる。第1〜第4の実施の形態を自己結合型以外の速度計測装置に適用する場合には、例えば半導体レーザから放射されるレーザ光と戻り光とを例えばビームスプリッタ等により分離して、戻り光をフォトダイオードで検出することにより、戻り光のうち速度に依存して変化するパラメータを得るようにしたり、超音波発信器および受信器を用いて、同様に受信波形に基づく処理を行うようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電磁波の干渉を利用して物体の速度を計測する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅部、6…フィルタ部、7…信号抽出部、8…演算部、9…表示部、10…センサモジュール、11…ウェブ、12…調整部、13…電圧検出部、80…記憶部、81…距離比例個数算出部、82…速度算出部、120…周波数測定部、121,121a…搬送波調整部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に電磁波または弾性波を放射する放射器と、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように前記放射器を動作させる発振波長変調手段と、
前記放射器から放射された電磁波または弾性波と前記測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出手段と、
前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算手段とを備え、
前記発振波長変調手段は、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とする速度計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の速度計測装置において、
さらに、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について前記干渉波形の平均周波数を測定する周波数測定手段と、
前記第1の発振期間における干渉波形の平均周波数と前記第2の発振期間における干渉波形の平均周波数との平均値と、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数と計測可能な干渉波形の最低周波数との平均値が等しくなるように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段とを備えることを特徴とする速度計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の速度計測装置において、
さらに、前記測定対象の速度が0のときの第1の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最低周波数を下回らない範囲で前記最低周波数に近づき、前記測定対象の速度が0のときの第2の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数を上回らない範囲で最高周波数に近づくように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段を備えることを特徴とする速度計測装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の速度計測装置において、
前記放射器は、半導体レーザであり、
前記検出手段は、前記半導体レーザから放射された電磁波であるレーザ光と前記測定対象から戻る反射波である戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出することを特徴とする速度計測装置。
【請求項5】
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように放射器を動作させる発振ステップと、
前記放射器から放射された電磁波または弾性波と測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出ステップと、
この検出ステップで得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出ステップと、
前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算ステップとを備え、
前記発振波長変調ステップは、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、計測可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とする速度計測方法。
【請求項6】
請求項5記載の速度計測方法において、
さらに、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について前記干渉波形の平均周波数を測定する周波数測定ステップと、
前記第1の発振期間における干渉波形の平均周波数と前記第2の発振期間における干渉波形の平均周波数との平均値と、計測可能な干渉波形の最高周波数と計測可能な干渉波形の最低周波数との平均値が等しくなるように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整ステップとを備えることを特徴とする速度計測方法。
【請求項7】
請求項5記載の速度計測方法において、
さらに、前記測定対象の速度が0のときの第1の発振期間における干渉波形の周波数が計測可能な干渉波形の最低周波数を下回らない範囲で前記最低周波数に近づき、前記測定対象の速度が0のときの第2の発振期間における干渉波形の周波数が計測可能な干渉波形の最高周波数を上回らない範囲で最高周波数に近づくように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整ステップを備えることを特徴とする速度計測方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の速度計測方法において、
前記放射器は、半導体レーザであり、
前記検出ステップは、前記半導体レーザから放射された電磁波であるレーザ光と前記測定対象から戻る反射波である戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出することを特徴とする速度計測方法。
【請求項1】
測定対象に電磁波または弾性波を放射する放射器と、
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように前記放射器を動作させる発振波長変調手段と、
前記放射器から放射された電磁波または弾性波と前記測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出手段と、
この検出手段の出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出手段と、
前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算手段とを備え、
前記発振波長変調手段は、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とする速度計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の速度計測装置において、
さらに、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について前記干渉波形の平均周波数を測定する周波数測定手段と、
前記第1の発振期間における干渉波形の平均周波数と前記第2の発振期間における干渉波形の平均周波数との平均値と、信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数と計測可能な干渉波形の最低周波数との平均値が等しくなるように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段とを備えることを特徴とする速度計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の速度計測装置において、
さらに、前記測定対象の速度が0のときの第1の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最低周波数を下回らない範囲で前記最低周波数に近づき、前記測定対象の速度が0のときの第2の発振期間における干渉波形の周波数が前記信号抽出手段で抽出可能な干渉波形の最高周波数を上回らない範囲で最高周波数に近づくように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整手段を備えることを特徴とする速度計測装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の速度計測装置において、
前記放射器は、半導体レーザであり、
前記検出手段は、前記半導体レーザから放射された電磁波であるレーザ光と前記測定対象から戻る反射波である戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出することを特徴とする速度計測装置。
【請求項5】
発振波長が連続的に単調増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する第2の発振期間とが交互に存在するように放射器を動作させる発振ステップと、
前記放射器から放射された電磁波または弾性波と測定対象から戻る反射波とによって生じる干渉波形を含む電気信号を検出する検出ステップと、
この検出ステップで得られた出力信号に含まれる前記干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について求める信号抽出ステップと、
前記干渉波形の数に基づいて前記測定対象の速度を算出する演算ステップとを備え、
前記発振波長変調ステップは、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間で時間に対する発振波長変化速度の絶対値が異なるように前記放射器を動作させ、計測可能な干渉波形の最高周波数をfmax、計測可能な干渉波形の最低周波数をfmin、前記第1の発振期間の時間長をT1、前記第2の発振期間P2の時間長をT2としたとき、前記測定対象が前記放射器に近づく方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T2/T1)とし、前記測定対象が前記放射器から遠ざかる方向に移動する場合には、(fmin/fmax)≧(T1/T2)とすることを特徴とする速度計測方法。
【請求項6】
請求項5記載の速度計測方法において、
さらに、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について前記干渉波形の平均周波数を測定する周波数測定ステップと、
前記第1の発振期間における干渉波形の平均周波数と前記第2の発振期間における干渉波形の平均周波数との平均値と、計測可能な干渉波形の最高周波数と計測可能な干渉波形の最低周波数との平均値が等しくなるように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整ステップとを備えることを特徴とする速度計測方法。
【請求項7】
請求項5記載の速度計測方法において、
さらに、前記測定対象の速度が0のときの第1の発振期間における干渉波形の周波数が計測可能な干渉波形の最低周波数を下回らない範囲で前記最低周波数に近づき、前記測定対象の速度が0のときの第2の発振期間における干渉波形の周波数が計測可能な干渉波形の最高周波数を上回らない範囲で最高周波数に近づくように、前記放射器の発振波長変調の搬送波を調整する搬送波調整ステップを備えることを特徴とする速度計測方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の速度計測方法において、
前記放射器は、半導体レーザであり、
前記検出ステップは、前記半導体レーザから放射された電磁波であるレーザ光と前記測定対象から戻る反射波である戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形を含む電気信号を検出することを特徴とする速度計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−173193(P2012−173193A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36844(P2011−36844)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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