説明

造形データ生成装置、造形装置および造形データ生成方法

【課題】サポートの造形量が多く、そのため多くのコスト、時間および手間を要していた。
【解決手段】立体物を表した3次元モデルデータを取得するモデルデータ取得部と、所定の造形用の空間に置かれた第一のサポートの位置を示すサポート情報を取得するサポート情報取得部と、上記3次元モデルデータおよびサポート情報に基づいて、上記空間内における上記立体物の造形位置を決定し当該造形位置に上記立体物を造形するために必要な上記第一のサポート以外の第二のサポートの形状を決定するサポート決定部と、上記3次元モデルデータおよび第二のサポートの形状に基づいて、上記立体物および第二のサポートを造形するための造形データを生成する造形データ生成部とを備える造形データ生成装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形データ生成装置、造形装置および造形データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の造形技術として各種の手法が知られている。具体的には、いわゆる光造形法(特許文献1参照)、選択的レーザー焼結法(特許文献2参照)、溶融堆積法(特許文献3参照)、粉末結合法(特許文献4参照)、シート積層法(特許文献5参照)、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法(特許文献6参照)等の積層型の造形法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐195069号公報
【特許文献2】特表2010‐510104号公報
【特許文献3】特表2009‐525207号公報
【特許文献4】特表2002‐507940号公報
【特許文献5】特開2001‐301060号公報
【特許文献6】特表2003‐535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した造形法の幾つかにおいては、立体物のオーバーハング形状となっている部分を造形するために当該オーバーハング形状の部分を下方から支持するサポートと呼ばれる部材が造形される場合がある。しかしながら、このようなサポートの造形には当然にサポート造形用の材料を必要とし、また、サポートを造形する分だけ、造形全体に要する時間も長くなる。また、多くのサポートを立体物とともに造形すればその分造形完了後にサポートを除去する手間も多くなる。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、造形するサポートの量を効果的に減らすことが可能な造形データ生成装置、造形装置および造形データ生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる造形データ生成装置の態様の一つは、立体物を表した3次元モデルデータを取得するモデルデータ取得部と、所定の造形用の空間に置かれた第一のサポートの位置を示すサポート情報を取得するサポート情報取得部と、上記3次元モデルデータおよびサポート情報に基づいて、上記空間内における上記立体物の造形位置を決定し当該造形位置に上記立体物を造形するために必要な上記第一のサポート以外の第二のサポートの形状を決定するサポート決定部と、上記3次元モデルデータおよび第二のサポートの形状に基づいて、上記立体物および第二のサポートを造形するための造形データを生成する造形データ生成部と、を備える構成としてある。
【0007】
本発明によれば、造形用の空間に置かれた第一のサポートが、立体物の造形のために必要なサポートの一部を担い、立体物の造形のために必要な第一のサポート以外の第二のサポートと立体物とを造形するための造形データが生成される。従って、造形データによって造形されるのは立体物および第二のサポートのみとなり、造形されるサポートの量を減らすことができる。第一のサポートについては、立体物の造形時に繰り返し利用することができる。かかる構成により、造形に要する材料(サポート用の材料)のコストや、造形に要する時間やユーザーの手間(サポート除去にかかる手間)を減らすことができる。
【0008】
本発明の態様の一つとして、造形データ生成装置は、上記3次元モデルデータに基づいて上記造形用の空間における第一のサポートの設置パターンを決定する設置パターン決定部と、上記決定された設置パターンに従って上記造形用の空間に第一のサポートを置くことを外部に対して指示する指示部と、を備える構成としてもよい。当該構成によれば、上記設置パターンを決定することにより、立体物の造形に必要なサポートの全体的形状のうち、第一のサポートで担う分が適切に決定される。また、上記指示を外部(ユーザー)に対して行うことで、ユーザーによって実際に造形用の空間に上記決定した設置パターンにて第一のサポートが置かれる。
【0009】
本発明の態様の一つとして、造形データ生成装置は、上記立体物の造形に必要なサポートの形状を決定する初期サポート決定部を備え、上記設置パターン決定部は、上記初期サポート決定部により決定されたサポートの一部を一つ以上の上記第一のサポートで置き換える処理を、第一のサポートの種類、数および位置の少なくとも一つを変更して複数回繰り返し、上記初期サポート決定部により決定されたサポートを上記第一のサポートで置き換えたときの置き換え量が最大である第一のサポートの設置パターンを、上記造形用の空間における第一のサポートの設置パターンとして決定するとしてもよい。当該構成によれば、造形される第二のサポートの量が最小となるような設置パターンを決定することができる。
【0010】
上記サポート情報取得部は、上記造形用の空間に置かれた第一のサポートを3次元測定した結果に基づいた上記サポート情報を取得し、取得したサポート情報が示す第一のサポートの位置が所定の許容範囲を満たすか否か判定し、上記サポート決定部は、上記サポート情報取得部により許容範囲を満たすと判定された場合に上記造形位置の決定および第二のサポートの形状の決定を実行し、上記サポート情報取得部により上記許容範囲を満たさないと判定された場合には、上記造形用の空間における第一のサポートの位置を修正することを外部に対して指示する指示部を更に備える、構成としてもよい。当該構成によれば、ユーザーによって造形用の空間に置かれた第一のサポートの位置が不適切な(上記許容範囲を満たさない)場合、その位置の修正をユーザーにさせることができる。
【0011】
本発明は、造形データ生成装置以外の構成によっても実現可能である。一例として、上述したいずれかの態様のデータ生成装置を含む造形装置であって、上記造形用の空間に置かれた第一のサポートを3次元測定する測定部と、上記造形データに基づいて上記造形用の空間に造形を行なう造形部とを備え、上記サポート情報取得部は、上記測定部による測定結果に基づいて上記サポート情報を取得する構成としてもよい。当該構成によれば、造形装置自身が、立体物を3次元測定可能な測定部を備え、造形用の空間に置かれた第一のサポートを測定部で測定した結果に基づいてサポート情報を取得するため、立体物および第二のサポートを造形するための正確な造形データを生成し、造形を行うことができる。
また、造形装置であって、造形用の空間に置かれた第一のサポートを3次元測定しサポート情報を生成する測定部と、サポート情報に基づいて、上記空間内における所定の立体物の造形位置及び当該造形位置に上記立体物を造形するために必要な上記第一のサポート以外の第二のサポートの形状を決定させ、上記立体物および第二のサポートを造形するための造形データを生成させる生成指示部と、生成された上記造形データに基づいて上記造形用の空間に造形を行なう造形部と、を備える構成としてもよい。
【0012】
上記造形部は、造形のために上記造形用の空間内にて所定方向に移動可能な造形ヘッドを備え、当該造形ヘッドは傾きを調整可能である構成としてもよい。当該構成によれば、通常であれば造形ヘッドが第一のサポートと干渉してしまうために造形が実施できないような第一のサポート近傍の領域に対しても造形ヘッドの傾きを調整することで造形が可能となる。
【0013】
本発明の技術的思想は、装置以外によっても実現可能である。例えば、上述した造形データ生成装置の各部に対応する各工程を備える造形データ生成方法や、当該各部に対応する機能をコンピューターに実行させるプログラムの発明も把握可能である。また、上述した造形装置の各部に対応する各工程を備える造形方法や、当該各部に対応する機能をコンピューターに実行させるプログラムの発明も把握可能である。むろん、造形データ生成装置は、造形装置とは別の装置によって実現されるとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】造形装置の外観例を示した斜視図である。
【図2】造形装置の構成を概略的に示した図である。
【図3】プラットフォームの構成例を示した図である。
【図4】プラットフォームの他の構成例を示した図である。
【図5】造形処理を示すフローチャートである。
【図6】造形物および初期サポートの形状を例示する断面図である。
【図7】初期サポートの形状の一部と初期サポート内に配置されたサポートブロックとを例示する斜視図である。
【図8】造形物および第二のサポートの形状を例示する断面図である。
【図9】第一変形例にかかる造形システムを示す図である。
【図10】造形ヘッドの傾き調整の様子を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.造形装置の構成
図1は、本実施形態にかかる造形装置10の外観例を斜視図により示している。造形装置10は、その機能の一部により造形データ生成装置を実現する装置でもある。造形装置10は、装置全体を覆う筺体11の前面側に扉12を有している。また、筺体11の内部には、処理用空間としてのチャンバー13が形成されている。ユーザーは、扉12を開けることで、チャンバー13内にアクセス可能であり、チャンバー13内に立体物を載置したり、チャンバー13内の立体物を取り出したりすることができる。造形装置10は、筺体11表面の所定位置に、ユーザーに対して情報を表示するための液晶パネル等の表示部11aや、ユーザーからの操作を受け付ける操作受付部11bとしてのスイッチやボタンやタッチパネル等や、可搬性の記憶媒体M(メモリーカード等)の接続を受けるためのメモリーインターフェイス(I/F)11c等を適宜備える。
【0016】
図2は、造形装置10の構成例を概略的に示している。造形装置10は、上述した構成以外に、チャンバー13内に載置された立体物(測定対象物)を3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な測定部20と、与えられた造形データに基づいてチャンバー13内に立体物(造形物)を造形可能な造形部30と、測定部20と造形部30とを制御する制御部40とを含む。また、造形装置10は、造形方法に応じた造形のための構造を備え、例えばチャンバー13の底面側に配設された略水平な台(プラットフォーム14)と、プラットフォーム14をチャンバー13内において造形装置10の上下方向(縦方向)に移動させることが可能なモーター等からなるプラットフォーム移動機構15を含む。
【0017】
測定部20は、測定対象物を3次元測定して3次元モデルデータを取得可能な機構であれば、公知の非接触型の3次元デジタイザを含めて種々の構成を採ることができる。本実施形態で言う3次元モデルデータは、所定のフォーマット、例えばSTLやOBJやIGES等のフォーマットで立体を表現したファイルである。測定部20は、例えば、照射光を発する光源21、光源21から照射された照射光の測定対象物からの反射光を読み取るイメージセンサー22、イメージセンサー22による読み取り結果(点群データ)に基づいて上記所定のフォーマットの3次元モデルデータを生成するファイル生成部23などを備える。
【0018】
一例として、STLフォーマットの3次元モデルデータは、3つの頂点(座標値)を有する三角形の集合により立体を表現する。ここでいう座標値とは、例えば、互いに直交するX,Y,Zの3軸により定義された空間における座標値(X成分値、Y成分値、Z成分値)である。また、各三角形は面法線ベクトルを有し、各面法線ベクトルが向く方向は立体物の表面が向く方向を示している。本実施形態では、上記上下方向(縦方向)はZ軸方向に対応し、これに垂直なXY平面は、水平面を形成するものする。
【0019】
造形部30は、造形データに基づいて造形物を造形可能な機構であればよく、特に本実施形態では上述したような積層型の造形法のうち、造形物の上層が下層よりも張り出しているオーバーハング形状となっている部分を造形するためにサポートを必要とする造形法(例えば、光造形法や、溶融堆積法や、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法)により造形を行なう。造形部30は、例えば造形のための可動部(造形ヘッド31)、造形ヘッド31をチャンバー13内においてX,Y軸方向それぞれに移動させることが可能なモーター等からなるヘッド移動機構32などを備える。
【0020】
制御部40は、CPU41やメモリー42などを備え、CPU41がメモリー42に記憶された所定のプログラムに従って測定部20や造形部30を制御する。本実施形態では、制御部40は、当該プログラムに従ってモデルデータ取得部40a、初期サポート決定部40b、設置パターン決定部40c、指示部40d、サポート情報取得部40e、第二サポート決定部(サポート決定部)40f、造形データ生成部40gといった各機能を実現する。ここで、造形データ生成部40gが生成する造形データのうち、積層する各層のデータはスライスデータとも呼ぶ。造形データ生成部40gは、基本的には、モデルデータ取得部40aにより取得された造形対象となる立体物(造形物)を表した3次元モデルデータに基づいて、例えば立体物(造形物)のZ軸方向に垂直な断面形状(XY平面における形状)を演算により取得する。造形データ生成部40gは、このような断面形状をZ軸方向においてスライス幅(造形部30が積層する層の厚さ。なお、スライス幅は一定とは限らない。)間隔で取得する。このようなスライス幅毎の断面形状を表したデータが上記スライスデータである。ただしスライスデータは、造形物を表した3次元モデルデータの断面形状とともに、必要に応じてサポートの断面形状についても表したデータである。
【0021】
造形部30では、造形ヘッド31が、チャンバー13内にてプラットフォーム14上をヘッド移動機構32によってX,Y軸方向に移動させられながら、一層のスライスデータが示す形状に応じて所定の材料や光を発することで一層の造形を行なう。各種積層型の造形法は公知であるため造形法自体の詳細な説明は省くが、造形ヘッド31は、光造形法であればレーザー光をプラットフォーム14上の樹脂に対して照射するし、溶融堆積法であれば溶融させた樹脂をプラットフォーム14上に吐出(押し出し)するし、インクジェットによる材料の直接吐出による造形法であれば立体物の形成に用いられる材料をプラットフォーム14上に吐出する。このようなスライスデータに応じた一層分の造形と、Z軸方向に沿ったプラットフォーム14の当該一層分の移動(下降)とを繰り返すことで、プラットフォーム14上に層単位での造形結果が積層され、造形物(あるいはサポートおよび造形物)が完成する。制御部40は、造形部30による造形時に、プラットフォーム移動機構15のモーターを数値制御することでプラットフォーム14のZ軸方向の移動距離や移動速度を制御し、ヘッド移動機構32のモーターを数値制御することで造形ヘッド31のX,Y軸方向の移動距離や移動速度を制御する。
【0022】
図3は、チャンバー13内におけるプラットフォーム14(14a)の構成例を示している。図3に示すプラットフォーム14aは円形状であり、且つ中心が軸16により下方から支持されている。軸16は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能であり且つ回転可能である。この軸16の回転についても制御部40により数値制御される。つまり図3の例では、プラットフォームはターンテーブルとなっている。測定部20による測定対象物の測定時には、このターンテーブルとしてのプラットフォーム14aに測定対象物が載置され、プラットフォーム14aが回転する状況で測定が行なわれる。回転するターンテーブルに測定対象物が載ることで、イメージセンサー22は、それ自体が固定されていても測定対象物を360度満遍無く読み取ることができる。つまり、造形用の空間としても使用されるチャンバー13内において効率よく測定対象物についての正確な3次元モデルデータを取得できる。一方、造形部30による造形物の造形時には、プラットフォーム14aは基本的には回転せず、Z軸方向に沿った移動を行なう。
【0023】
図4は、チャンバー13内におけるプラットフォーム14(14b)の他の構成例を示している。図4に示すプラットフォーム14bは矩形状であり、矩形内の一部が円形にくり抜かれ、このくり抜かれた領域に円形のターンテーブル14b1が収容されている。つまり図4の例では、プラットフォームの一部がターンテーブルとなっている。プラットフォーム14b(ターンテーブル14b1を除く部分)は軸17により下方から支持され、軸17は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能である。また、ターンテーブル14b1は、中心が軸18により下方から支持され、軸18は、上記プラットフォーム移動機構15によりZ軸方向に沿って移動可能であり且つ回転可能である。軸18の回転は制御部40により数値制御される。
【0024】
測定部20による測定対象物の測定時には、ターンテーブル14b1に測定対象物が載置され、ターンテーブル14b1が回転する状況で測定が行なわれる。一方、造形部30による造形物の造形時には、ターンテーブル14b1は基本的には回転せず、プラットフォーム14b全体(プラットフォーム14bおよびターンテーブル14b1)のZ軸方向の位置が同一位置に保たれながら、プラットフォーム14b全体がZ軸方向に沿って移動する。つまり、ターンテーブル14b1を含むプラットフォーム14b全体が一つの矩形の台となり、そこに造形物が造形される。このように、矩形のプラットフォームの一部を円形のターンテーブルとすることで、測定対象物を効率よく正確に測定できるという効果を確保しつつ、プラットフォーム自体をターンテーブルとする場合よりも造形のためのスペースを広く確保することができる。
【0025】
2.サポート造形の節約を伴う造形処理の説明
図5は、制御部40による制御下で実行される立体物の造形処理をフローチャートにより示している。なお、フローチャート中の各ステップのうち、ユーザーによる行為は鎖線で囲んで示している。
ステップS100では、モデルデータ取得部40aが、造形物Fを表す3次元モデルデータを取得する。具体的には、ユーザーが、例えば複数の3次元モデルデータを記録した記憶媒体MをメモリーI/F11cに装着させる。すると制御部40は、記憶媒体Mに記憶された3次元モデルデータを読み込むとともに、これら読み込んだ3次元モデルデータの中から任意のデータをユーザーに選択させるためのユーザーインターフェイス(UI)画面を表示部11aに表示させる。ユーザーは、UI画面の表示を参照しつつ操作受付部11bを操作することにより、3次元モデルデータを任意に選択する。モデルデータ取得部40aは、このような操作による3次元モデルデータの選択を受け付けることにより、3次元モデルデータを取得する。
【0026】
ただしステップS100では、3次元モデルデータは、記憶媒体Mに記憶されたデータ内から取得されるだけでなく、造形装置10内のメモリーに保存済みのデータの中から取得されてもよいし、記憶媒体M以外の手段により外部から造形装置10に提供されてもよい。あるいは、測定部20が測定対象物を測定して生成した3次元モデルデータを、モデルデータ取得部40aが取得するとしてもよい。つまりユーザーが、所望の立体物を3次元コピーすることを目的として、コピー元となる立体物をチャンバー13内に載置し、この立体物を測定部20が測定することで3次元モデルデータが生成され、この生成された3次元モデルデータをステップS100においてモデルデータ取得部40aが取得するとしてもよい。
【0027】
ステップS110では、初期サポート決定部40bが、上記ステップS100で取得された3次元モデルデータに基づいて、造形物Fの造形に必要なサポートの形状を決定する。ステップS110で決定するサポートを、便宜上、初期サポートSP0と呼ぶ。初期サポート決定部40bは、3次元モデルデータに記述された各面法線ベクトルを参照することで、3次元モデルデータが表す立体の表面にサポートを必要とするオーバーハング形状があるか否か判定し、サポートを必要とするオーバーハング形状に該当する表面箇所に対して初期サポートSP0を付加することを決定する。
【0028】
図6は、造形物Fおよび初期サポートSP0の形状を、Z軸方向の断面により例示している。図6では見易さを考慮して初期サポートSP0の形状を鎖線により示しており、図中ハッチングを適宜省略している。造形物Fは、面法線ベクトルVの方向がZ軸に対して垂直な方向よりも下側(Z軸の−側)を向いている表面(太線で示した表面)を有しており、かかる表面がオーバーハング形状に該当する。ただし、本実施形態で採用する積層型の造形法では、オーバーハング形状であれば常にサポートを必要とする訳ではなく、面法線ベクトルVとZ軸に垂直な方向とがなす角度θがある程度小さい場合にはサポートを形成すること無く立体物を造形可能である。そのため初期サポート決定部40bは、オーバーハング形状に該当する表面箇所の面法線ベクトルVについての上記角度θを所定のしきい値と比較し、角度θがしきい値より大きい場合に、その表面箇所について初期サポートSP0を付加すべきと決定する。図6では、造形物Fのオーバーハング形状に該当する表面の全体にわたって初期サポートSP0が付加される例を示している。なお、ステップS110において初期サポートSP0が一切不要と判定された場合は、後述するステップS120〜ステップS200は行われることなく、処理はステップS210へ進む。
【0029】
ステップS120では、設置パターン決定部40cが、上記決定された初期サポートSP0の一部を一つ以上のサポートブロックSBで置き換える計算処理を実行する。サポートブロックSBは、第一のサポートに該当する。サポートブロックSBとは、造形時のサポートの一部として利用するために予め用意された直方体状の部材であり、寸法(直方体の3辺の長さ)が異なる様々な種類のサポートブロックSBが存在する。このようなサポートブロックSBは、例えば、造形装置10の付属品とされており、ユーザーは造形装置10の購入時に入手することができる。設置パターン決定部40cは、種類毎のサポートブロックSBの寸法の情報を予め有しており、ある種類(1以上の種類)のサポートブロックSBに相当する立体を、初期サポートSP0の形状内に配置する計算(シミュレーション)を行う。なお、サポートブロックSBは1種類のみとしても良いし、形状も、正多面体や四角錐や円柱など様々な形状としても良い。
【0030】
図7は、図6で示した初期サポートSP0の形状の一部分と、初期サポートSP0内の空間に配置された複数(3個)のサポートブロックSBとを例示している。図7では、初期サポートSP0を実線で示し、サポートブロックSBを鎖線で示している。設置パターン決定部40cは、このようなサポートブロックSBによる初期サポートSP0内の空間の置き換えを計算上で行う。この場合、サポートブロックSB同士が侵食し合わずかつプラットフォーム14上で位置が安定するようにサポートブロックSBを配置する。また、可能な限りサポートブロックSBの一部が初期サポートSP0の外廓(造形物Fの表面)に接するようにサポートブロックSBを配置する。ステップS120による置き換えの結果得られる初期サポートSP0内でのサポートブロックSBの配置態様(サポートブロックSPの種類、相対的位置関係および数)をサポートブロックSBの設置パターンと呼ぶ。
【0031】
ステップS130では、設置パターン決定部40cは、初期サポートSP0の容積のうち直近のステップS120で置き換えたサポートブロックSB以外の容積(初期サポートSP0の全容積−直近のステップS120で置き換えたサポートブロックSBの全容積)を算出する。もし、サポートブロックSBやプラットフォーム14によって上方を覆われた空間が存在する場合には、その空間の体積も初期サポートSP0の容積から減算する。ステップS130で算出する容積を、以下ではサポート造形量と呼ぶ。
ステップS140では、設置パターン決定部40cは、上記ステップS120およびステップS130の処理を所定の複数回(N回)実行したか否か判定する。そして、N回実行済みでないと判定した場合は、ステップS120およびステップS130の処理を繰り返す。ただし2回目以降のステップS120では、置き換えに用いるサポートブロックSBの種類、数および位置の少なくとも一つを変更して処理を行う。一方、N回実行済みと判定した場合はステップS150に進む。この結果、ステップS150の時点で、N種類の設置パターンに対応するN個のサポート造形量が算出されたことになる。
【0032】
ステップS150では、設置パターン決定部40cは、上記N個のサポート造形量のうち最小のサポート造形量に対応する設置パターンを、チャンバー13内でのサポートブロックSBの設置パターンとして選択する。言い換えると、設置パターン決定部40cは、初期サポートSP0をサポートブロックSBで置き換えたときの置き換え量が最大である設置パターンを選択する。ただし、設置パターン決定部40cは、サポート造形量に対して予め決められている許容値以下のサポート造形量が算出された時点で、ステップS120およびステップS130を繰り返すことを止め、当該許容値以下のサポート造形量に対応する設置パターンを、チャンバー13内でのサポートブロックSBの設置パターンとして選択するとしてもよい。
【0033】
ステップS160では、指示部40dが、上記選択された設置パターンに従ってチャンバー13内にサポートブロックSBを置くことを外部に対して指示する処理を行う。例えば、制御部40は、チャンバー13内のターンテーブル上に積み置くべきサポートブロックSBの種類と数とサポートブロックSB間の相対的位置関係を知らせるためのメッセージや画像からなるガイド画面を表示部11aに表示させることで、当該指示を行う。すると、当該指示を認識したユーザーは、当該指示に従って実際にターンテーブル上にサポートブロックSBを置く(ステップS170)。つまり、上記選択された設置パターンの通りに、ユーザーによりターンテーブル上にサポートブロックSBが設置される。
【0034】
ステップS180では、ユーザーがサポートブロックSBを設置したことを検知した場合に、制御部40は、測定部20に対して測定実行を指示し、当該指示に応じて測定部20は測定対象物を3次元測定して3次元モデルデータを生成する。この検知は、ユーザーによる操作受付部11bの操作や、扉12が一度開けられて所定時間を経過した後に閉じられたことに応じて行われる。このとき、制御部40はターンテーブルを回転させる制御も行なう。ステップS180における測定対象物とはユーザーによりターンテーブル上に実際に置かれたサポートブロックSBである。ステップS180で生成される3次元モデルデータは、この実際に置かれたサポートブロックSBの位置(チャンバー13内の所定位置を基準とした座標値)および当該置かれたサポートブロックSBの全体の形状を記述したデータである。つまりステップS180で生成される3次元モデルデータは、本発明における「サポート情報」に該当する。なお、制御部40は、上記ステップS160の指示の後、サポートブロックSBの設置完了指示を受け付けたタイミングで当該ステップS180を開始する。設置完了指示とは、ターンテーブル上にサポートブロックSBを設置し終えたことをユーザーが操作受付部11bを操作して制御部40に通知する指示である。サポート情報取得部40eは、上記サポート情報としての3次元モデルデータを測定部20から取得する。
【0035】
ステップS190では、サポート情報取得部40eは、上記取得したサポート情報が示すサポートブロックSBの位置(空間内でサポートブロックSBが占める3次元の位置を意味する)が所定の許容範囲を満たすか否か判定する。例えば、サポート情報取得部40eは、サポート情報が示すサポートブロックSBのチャンバー13内での位置が、造形物Fを支持するための位置として不適切であるか否か判定し、不適切な位置である場合に上記許容範囲を満たさないと判定する。造形物Fを支持するための位置として不適切なサポートブロックSBの位置とは、例えば、サポートブロックSBの位置を基準にして造形物Fを造形しようとする場合に造形物F(造形物Fの一部)が造形ヘッド31の可動範囲外となってしまうような位置や、サポートブロックSBの存在しない空間に造形物Fを造形するだけの大きさを有しない位置を言う。また、サポート情報取得部40eは、サポート情報が示すサポートブロックSBの全体形状と、上記ステップS150で選択された設置パターンに従って置かれるサポートブロックSBがなすべき全体形状との類似度を算出し、この類似度が予め設定された類似度についてのしきい値より低い場合に、上記許容範囲を満たさないと判定する。
【0036】
サポート情報取得部40eは、ステップS190で許容範囲を満たすと判定した場合は、処理をステップS200へ進める。一方、ステップS190で許容範囲を満たさないと判定した場合は、ステップS160に戻り、指示部40dに、上記選択された設置パターンに従ってチャンバー13にサポートブロックSBを置くことを外部に対して指示する処理を行わせる。このような2回目以降のステップS160では、サポート情報取得部40eは、チャンバー13内におけるサポートブロックSBの位置が適切でないことや、サポートブロックSB全体の形状が理想とされる形状と相違していることなどを警告のメッセージとして表示部11aに表示させる等して、サポートブロックSBの位置を修正することを指示させる。
【0037】
ステップS200では、第二サポート決定部40fが、上記ステップS100で取得された3次元モデルデータおよび上記ステップS180で取得されたサポート情報に基づいて、チャンバー13内における造形物Fの位置(造形位置)を決定し、さらに造形位置に造形物Fを造形するために必要なサポートブロックSB以外のサポート(第二のサポートSP2)を造形する形状を決定する。ここで、造形物Fと初期サポートSP0との相対的位置関係は既に決まっており、初期サポートSP0と上記選択された設置パターンにかかるサポートブロックSBとの相対的位置関係も既に決まっており、さらに、サポートブロックSBのチャンバー13内における位置も上記サポート情報から判明しているため、第二サポート決定部40fは、これら決まっている(判明している)情報に基づいて造形位置を決定することができる。なお上記ステップS190で、サポートブロックSBのチャンバー13内での位置が不適切であるか否かを判定する場合も、このように造形位置を試算し、試算した造形位置が造形ヘッド31の可動範囲外となるか否かを判定すればよい。
【0038】
図8は、ステップS200において決定される造形位置の造形物Fおよび第二のサポートSP2の形状を、Z軸方向の断面により例示している。図8では、実線で示した一つの矩形が一つのサポートブロックSBを意味し、造形物Fの両側の鎖線で囲んだ空間のうちサポートブロックSB以外の空間が第二のサポートSP2の形状に該当する。図8でも図6と同様、見易さを考慮してハッチングを適宜省略している。図8に示すサポートブロックSBの全体形状および位置はサポート情報で規定されたものであり、造形物Fの形状は上記ステップS100で取得された3次元モデルデータで規定されたものであり、造形物Fの位置は上記造形位置により規定されたものである。第二サポート決定部40fは、このような造形位置の造形物Fとサポート情報が示すサポートブロックSBとの間に生じる隙間の立体形状を、第二のサポートSP2の形状として決定する。
【0039】
ステップS210では、造形データ生成部40gが、上記ステップS100で取得された3次元モデルデータに上記ステップS200で決定された第二のサポートSP2の形状を組み合わせた立体形状について、スライスデータを生成する。このように生成されたスライスデータは、造形物Fおよび第二のサポートSP2を積層することで造形するための各層の位置を含んでいる。なお、このスライスデータは造形物Fおよび第二のサポートSP2のそれぞれの断面形状に相当するデータを含んでおり、これら造形物Fおよび第二のサポートSP2を区別して造形するための造形データの一部である。
【0040】
ステップS220では、制御部40は、造形部30に対し、上記ステップS210で生成された各スライスデータに基づく造形実行を指示し、当該指示に応じて造形部30は造形ヘッド31を駆動させて造形を実行する。むろんこのとき、制御部40は、造形ヘッド31およびプラットフォーム14を移動させる制御も行なう。ここでは一例として、造形部30は溶融堆積法により積層して造形を行なうものとする。ステップS220の結果、プラットフォーム14上には、サポートブロックSBが置かれた状況で、スライスデータに応じて押し出されたサポート用の樹脂及び造形物F用の樹脂の各層が積み重なり、サポート用の樹脂からなる第二のサポートSP2および造形物F用の樹脂からなる造形物Fが完成する。つまりステップS220の完了後には、プラットフォーム14の上記造形位置に造形物Fが存在し、かつ造形物Fのオーバーハング形状を下方から支持するサポートが存在することになるが、サポートの一部はユーザーにより積み置かれたサポートブロックSBであり、造形部30によって実際に造形されるサポートは、第二のサポートSP2に該当する部分だけである。なお、サポート用の樹脂は、最終的に造形物F及びサポートブロックSBからできるだけ除去しやすい種類の樹脂を選ぶことが望ましい。
【0041】
ステップS220の完了後は、制御部40は、造形物Fの取り出しや、サポートブロックSBの取り出しや、第二のサポートSP2の除去などの各種動作の催促を外部に対して行なう。このような催促も音声やメッセージ表示等により行なう。なお、ステップS110において初期サポートSP0が一切不要と判定されてステップS210へ処理が進んだ場合は、ステップS210では上記ステップS100で取得された3次元モデルデータに基づいてスライスデータ(サポートの断面形状を含まないスライスデータ)が生成され、ステップS220では、プラットフォーム14上にサポートブロックSBが置かれていない状況で、スライスデータに応じて積層して造形物Fが造形される。そして、ステップS220の完了後は、制御部40は、造形物Fの取り出しなどの各種動作の催促を外部に対して行なう。
【0042】
このように本実施形態によれば、制御部40は、造形物Fを表す3次元モデルデータの造形に必要(造形物Fのオーバーハング形状を支持するために必要)な全体のサポート(初期サポートSP0)を決定し、初期サポートSP0の一部をサポートブロックSBで置き換える計算を複数パターン繰り返し実行し、当該繰り返し毎に得られるサポートブロックSBの設置パターンのうち、サポートブロックSBによる置き換え量が最大となる設置パターンを選択する。そして、選択した設置パターンに従ってサポートブロックSBをチャンバー13内のターンテーブルに置くようにユーザーに指示し、ユーザーによってターンテーブルに置かれたサポートブロックSBを測定部20に3次元測定させる。そして、当該3次元測定により得られたサポートブロックSBの3次元モデルデータ(サポート情報)と上記造形物Fを表す3次元モデルデータとに基づいて、造形物Fの造形位置を決定し、当該造形位置の造形物Fの造形に必要なサポートであって上記置かれたサポートブロックSBだけでは不足する分のサポート(第二のサポートSP2)の形状を決定し、造形物Fを表す3次元モデルデータおよび第二のサポートSP2の形状に応じてスライスデータを生成するとした。
【0043】
従って、このように生成されたスライスデータに基づく積層型の造形を造形部30に実行させれば、造形物Fの造形に必要なサポートについては、当該必要なサポートのうち第二のサポートSP2のみが造形されることになり、当該必要なサポートを全て造形部30で造形する場合と比較してサポートの造形量を確実に減らすことができる。このようにサポートの造形量を減らすことで、サポート造形用の材料費を節約でき、造形部30が造形のために駆動する時間も短縮できる。さらには、造形された造形物Fに付着するサポートを除去する作業も、サポートのある程度の部分がサポートブロックSBである分、非常に容易となり、ユーザーの手間が削減される。また、サポートブロックSB自体は、造形装置10による造形の度にユーザーが繰り返し利用できるために、非常に経済的である。
【0044】
本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。以下に、本発明の変形例を幾つか説明する。各変形例には上記実施形態の内容を適宜適用することができるし、各変形例の内容を適宜組み合わせることも可能である。
【0045】
3.第一変形例
図9は、第一変形例にかかる構成を例示している。図9には、造形装置10と造形データ生成装置50とを含む造形システム60を示している。造形データ生成装置50は、例えば、ネットワークN(例えばインターネット)上に存在するサーバーであり、造形装置10はネットワークNを介して造形データ生成装置50と通信可能に接続している。上記実施形態では、図5に示すフローチャートを造形装置10で完結する場合を説明したが、上記フローチャートの一部処理について造形データ生成装置50が実行するとしてもよい。つまり、制御部40が備える機能(モデルデータ取得部40a、初期サポート決定部40b、設置パターン決定部40c、指示部40d、サポート情報取得部40e、第二サポート決定部40f、造形データ生成部40g)の一部又は全部を、造形データ生成装置50が実現するとしてもよい。上記フローチャートは、造形データの生成など演算量の多い処理を含んでおり、そのような処理を一般的にリソースの少ない造形装置10で実行するよりも、リソースの豊富なサーバー等で代行した方がトータルの処理時間を短縮しやすい。
【0046】
例えば、造形データ生成装置50は、少なくともステップS200(造形位置の決定および第二のサポートSP2の形状決定)およびステップS210(スライスデータ生成)の処理を実行するとしてもよい。この場合、造形データ生成装置50は、ステップS200,S210の処理に必要な情報である造形物Fを表す3次元モデルデータやサポート情報等を造形装置10からネットワークNを介して取得し、生成したスライスデータを、ネットワークNを介して造形装置10に送信する。この結果、造形データ生成装置50からスライスデータを受信した造形装置10は、スライスデータに基づく造形(造形物Fおよび第二のサポートSP2の造形)を行なうことができる。また、造形データ生成装置50は、造形装置10と適宜必要な通信を実行しつつ、上記フローチャートのうち、ステップS100〜ステップS160の処理や、造形装置10の測定部20によるサポートブロックSBの3次元測定により生成されたサポート情報の取得からステップS210までの処理を実行するとしてもよい。
【0047】
4.第二変形例
造形部30は、造形ヘッド31の傾きを調整する傾き調整機構33をさらに備えるとしてもよい(図2参照)。
図10は、傾き調整機構33により造形ヘッド31のZ軸方向に対する傾きが調整される場面を例示している。造形ヘッド31は傾き0の状態(図10A)では、Z軸方向と平行な向きであり、所定の材料や光を発するための排出部31aがプラットフォーム14の面に正対している。一方、造形ヘッド31は、傾き調整機構33により傾きが調整されることで、Z軸方向に対して斜め方向を向くことができる(図10B)。このように造形ヘッド31の傾きを調整可能とすれば、傾き0の状態であれば造形ヘッド31が直方体状のサポートブロックSBと干渉してしまうために第二のサポートSP2等の造形が難しいサポートブロックSB近傍の領域Pに対しても、排出部31aが向くように造形ヘッド31の傾きを調整することで造形が可能となる。
【0048】
5.他の変形例
測定部20、造形部30、制御部40の区別は、図2に示した態様に限られず、測定部20の一部や造形部30の一部を制御部40の一部とみなしてもよい。あるいは逆に、制御部40の一部を、測定部20や造形部30の一部とみなしてもよい。
また上記では、造形ヘッド31についてはX,Y軸方向へ移動可能であり、プラットフォーム(ターンテーブル)についてはZ軸方向へ移動可能であるとしたが、造形ヘッド31、プラットフォーム(ターンテーブル)が移動可能な方向はこれらに限られない。例えば、造形ヘッド31はZ軸方向にも移動可能であってもよいし、プラットフォーム(ターンテーブル)はX,Y軸方向にも移動可能であってもよい。
【0049】
また上記では、ターンテーブルは測定対象物を載置し、測定対象物の測定のために回転する旨説明したが、造形時にもターンテーブルを活用するとしてもよい。例えば、制御部40は、造形部30による造形時に、造形ヘッド31の位置を固定しつつターンテーブルを回転させることで、ターンテーブル上に円弧状の輪郭を造形させることができる。また、ターンテーブルを回転させてターンテーブル上に造形する場合には、造形ヘッド31の移動可能な方向を1軸(例えばX軸方向)に限定してもターンテーブル上に任意の径の円弧を造形することができる。造形ヘッド31及びプラットフォーム(ターンテーブル)の一方は移動せず、他方がX、Y、Z軸のいずれの方向にも移動可能であってもよい。
また、上述の実施例や変形例を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…造形装置、11…筺体、11a…表示部、11b…操作受付部、11c…メモリーI/F、12…扉、13…チャンバー、14,14a,14b…プラットフォーム、14b1…ターンテーブル、15…プラットフォーム移動機構、20…測定部、21…光源、22…イメージセンサー、23…ファイル生成部、30…造形部、31…造形ヘッド、32…ヘッド移動機構、33…傾き調整機構、40…制御部、40a…モデルデータ取得部、40b…初期サポート決定部、40c…設置パターン決定部、40d…指示部、40e…サポート情報取得部、40f…第二サポート決定部、40g…造形データ生成部、41…CPU、42…メモリー、50…造形データ生成装置、60…造形システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物を表した3次元モデルデータを取得するモデルデータ取得部と、
所定の造形用の空間に置かれた第一のサポートの位置を示すサポート情報を取得するサポート情報取得部と、
上記3次元モデルデータおよびサポート情報に基づいて、上記空間内における上記立体物の造形位置を決定し当該造形位置に上記立体物を造形するために必要な上記第一のサポート以外の第二のサポートの形状を決定するサポート決定部と、
上記3次元モデルデータおよび第二のサポートの形状に基づいて、上記立体物および第二のサポートを造形するための造形データを生成する造形データ生成部と、
を備えることを特徴とする造形データ生成装置。
【請求項2】
上記3次元モデルデータに基づいて上記造形用の空間における第一のサポートの設置パターンを決定する設置パターン決定部と、
上記決定された設置パターンに従って上記造形用の空間に第一のサポートを置くことを外部に対して指示する指示部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の造形データ生成装置。
【請求項3】
上記立体物の造形に必要なサポートの形状を決定する初期サポート決定部を備え、
上記設置パターン決定部は、上記初期サポート決定部により決定されたサポートの一部を一つ以上の上記第一のサポートで置き換える処理を、第一のサポートの種類、数および位置の少なくとも一つを変更して複数回繰り返し、上記初期サポート決定部により決定されたサポートを上記第一のサポートで置き換えたときの置き換え量が最大である第一のサポートの設置パターンを、上記造形用の空間における第一のサポートの設置パターンとして決定することを特徴とする請求項2に記載の造形データ生成装置。
【請求項4】
上記サポート情報取得部は、上記造形用の空間に置かれた第一のサポートを3次元測定した結果に基づいた上記サポート情報を取得し、取得したサポート情報が示す第一のサポートの位置が所定の許容範囲を満たすか否か判定し、
上記サポート決定部は、上記サポート情報取得部により許容範囲を満たすと判定された場合に上記造形位置の決定および第二のサポートの形状の決定を実行し、
上記サポート情報取得部により上記許容範囲を満たさないと判定された場合には、上記造形用の空間における第一のサポートの位置を修正することを外部に対して指示する指示部を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の造形データ生成装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のデータ生成装置を含む造形装置であって、
上記造形用の空間に置かれた第一のサポートを3次元測定する測定部と、
上記造形データに基づいて上記造形用の空間に造形を行なう造形部とを備え、
上記サポート情報取得部は、上記測定部による測定結果に基づいて上記サポート情報を取得することを特徴とする造形装置。
【請求項6】
上記造形部は、造形のために上記造形用の空間内にて所定方向に移動可能な造形ヘッドを備え、当該造形ヘッドは傾きを調整可能であることを特徴とする請求項5に記載の造形装置。
【請求項7】
立体物を表した3次元モデルデータを取得するモデルデータ取得工程と、
所定の造形用の空間に置かれた第一のサポートの位置を示すサポート情報を取得するサポート情報取得工程と、
上記3次元モデルデータおよびサポート情報に基づいて、上記空間内における上記立体物の造形位置を決定し当該造形位置に上記立体物を造形するために必要な上記第一のサポート以外の第二のサポートの形状を決定するサポート決定工程と、
上記3次元モデルデータおよび第二のサポートの形状に基づいて、上記立体物および第二のサポートを造形するための造形データを生成する造形データ生成工程と、
を備えることを特徴とする造形データ生成方法。
【請求項8】
造形用の空間に置かれた第一のサポートを3次元測定しサポート情報を生成する測定部と、
サポート情報に基づいて、上記空間内における所定の立体物の造形位置及び当該造形位置に上記立体物を造形するために必要な上記第一のサポート以外の第二のサポートの形状を決定させ、上記立体物および第二のサポートを造形するための造形データを生成させる生成指示部と、
生成された上記造形データに基づいて上記造形用の空間に造形を行なう造形部と、
を備えることを特徴とする造形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−101445(P2012−101445A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251937(P2010−251937)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】