説明

造影剤

本発明は、ある部類の化合物及びかかる化合物を含む診断用組成物に関する。この場合の化合物は式R−Y−X−Z−Rのヨウ素含有化合物である。式中、各Rはさらに親水性部分で置換された三ヨウ素化フェニル残基を表し、Y及びZは尿素基及びウレタン基であり、Xはさらに置換されていてもよいアルキレン基である。本発明はまた、診断イメージング、特にX線イメージングにおける造影剤としてのかかる診断用組成物の使用、及びかかる化合物を含むコントラスト媒体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はある部類の化合物及びかかる化合物を含む診断用組成物に関し、この場合の化合物はヨウ素含有化合物である。さらに詳しくは、かかるヨウ素含有化合物は、2つの結合されたヨウ素化フェニル基を含む化合物である。
【0002】
本発明はまた、診断イメージング、特にX線イメージングにおける造影剤としてのかかる診断用組成物の使用、及びかかる化合物を含むコントラスト媒体にも関する。
【背景技術】
【0003】
すべての診断イメージングは、身体内部の異なる構造から異なる信号レベルを得ることに基づいている。したがって、例えばX線イメージングにおいて所定の身体構造が画像中で見えるためには、その構造によるX線減衰度が周囲の組織の減衰度と違っていなければならない。身体構造とその周囲との間における信号の差はしばしばコントラストと呼ばれ、診断イメージングでのコントラストを高めるための手段に多大の努力がささげられてきた。これは、身体構造とその周囲との間のコントラストが大きいほど画像の品質が高くなり、診断を行う医師にとってのその価値が高くなるからである。その上、コントラストが大きいほど、イメージング操作で可視化できる身体構造は小さくなる。即ち、コントラストの向上は空間解像度の向上をもたらすことができる。
【0004】
画像の診断品質はイメージング操作における固有ノイズレベルに大きく依存し、したがってコントラストレベルとノイズレベルとの比は診断画像に関する有効診断品質因子となることがわかる。
【0005】
かかる診断品質因子の向上を達成することはずっと以前から重要な目標であって、今なお変わっていない。X線、磁気共鳴イメージング(MRI)及び超音波のような技法では、診断品質因子を向上させるための1つのアプローチは、コントラスト媒体として処方されたコントラスト増強物質を撮影すべき身体領域中に導入することであった。
【0006】
したがって、X線の場合、造影剤の初期の例は、それが分布した身体領域のX線減衰度を高める不溶性の無機バリウム塩であった。最近の50年間、X線造影剤の分野では可溶性のヨウ素含有化合物が支配的であった。ヨウ素化造影剤を含む商業的に入手可能なコントラスト媒体は、通常、(例えばGastrografen(商標)の商品名で市販されている)ジアトリゾエートのようなイオン性単量体、(例えばHexabrix(商標)の商品名で市販されている)イオキサグレートのようなイオン性二量体、(例えばOmnipaque(商標)の商品名で市販されている)イオヘキソールや(例えばIsovue(商標)の商品名で市販されている)イオパミドールや(例えばIomeron(商標)の商品名で市販されている)イオメロールのような非イオン性単量体、及び(例えばVisipaque(商標)の商品名で市販されている)非イオン性二量体イオジキサノールに分類される。
【0007】
上述したもののような、最も広く使用されている市販の非イオン性X線造影剤は安全と考えられている。ヨウ素化造影剤を含むコントラスト媒体は、米国では年間2000万回を超えるX線検査で使用されており、副作用の数は許容し得るものと考えられている。しかし、コントラスト増強X線検査では総投与量として最大約200mlのコントラスト媒体の投与が要求されるので、改良されたコントラスト媒体を得ようという活動は絶えず存在している。
【0008】
コントラスト媒体の有用性は、主としてその毒性、その診断効果、コントラスト媒体を投与された被験者が受けることがある副作用、及び貯蔵や投与の容易性によって決定される。かかる媒体は通常は直接の治療効果を得るためよりもむしろ診断目的のために使用されるので、細胞又は身体の様々な生物学的機構に対してできるだけ少ない効果を及ぼす媒体を提供することが一般に望ましい。このようなものは、毒性及び有害な臨床効果が少なくて済むからである。コントラスト媒体の毒性及び有害な生物学的効果は、配合媒質の成分(例えば、溶媒又はキャリヤー)並びに造影剤自体及びその成分(例えば、イオン性造影剤用のイオン)によって生み出され、またその代謝産物によって生み出される。
【0009】
コントラスト媒体の毒性に寄与する主な要因は、造影剤の化学毒性、コントラスト媒体の重量オスモル濃度、及びコントラスト媒体のイオン組成又はその欠如にあると確認されている。
【0010】
ヨウ素化造影剤の望ましい特性は、化合物自体の低い毒性(化学毒性)、化合物を溶解したコントラスト媒体の低い粘度、コントラスト媒体の低い重量オスモル濃度、及び(大抵は投与のために処方されたコントラスト媒体1ml当たりのヨウ素のg数で測定される)高いヨウ素含有量である。ヨウ素化造影剤はまた、配合媒質(通常は水性媒質)中に完全に可溶であり、貯蔵中にも溶解状態に保たれなければならない。
【0011】
市販製品、特に非イオン性化合物の重量オスモル濃度は、まだ改良の余地はあるものの、二量体及び非イオン性単量体を含む大部分の媒体について許容できる。例えば冠状動脈血管造影法では、循環系へのボーラス量のコントラスト媒体の注入は重篤な副作用を引き起こしてきた。この操作では、血液ではなくコントラスト媒体が短時間にわたって系中を流れる。コントラスト媒体とそれが置き換える血液との間における化学的性質及び生理化学的性質の差は、不整脈、QT延長及び心臓収縮力の低下のような望ましくない副作用を引き起こすことがある。かかる副作用は、特に、浸透圧毒性効果が注入されるコントラスト媒体の高張性に関連するイオン性造影剤について見られる。体液に対して等張性又は僅かに低張性のコントラスト媒体が特に望ましい。重量オスモル濃度の低いコントラスト媒体は、特に望ましい低い腎毒性を有している。重量オスモル濃度は、処方されたコントラスト媒体の単位体積当たりの粒子数の関数である。
【0012】
急性腎不全の患者では、コントラスト媒体によって誘起されるネフロパシーが、今なおヨウ素化コントラスト媒体の使用に伴う臨床的に最も重要な合併症の1つとなっている。Aspelin,P et al,The New England Journal of Medicine,Vol.348:491−499(2003)では、重量オスモル濃度の低い非イオン性コントラスト媒体ではなくイオジキサノールを使用した場合、コントラスト媒体によって誘起されるネフロパシーがハイリスク患者で発生しにくいことがあると結論づけている。
【0013】
患者集団のうち、ハイリスク患者と見なされる部分は増加しつつある。患者集団全体のためのインビボX線診断剤を絶えず改良する必要性に応えるため、造影剤誘起腎毒性(CIN)の点からも向上した性質を有するX線造影剤を発見しようという活動は絶えず存在している。
【0014】
コントラスト媒体の注入量をできるだけ少なく保つためには、高いヨウ素/ml濃度を有するコントラスト媒体を処方し、しかも媒体の重量オスモル濃度を低いレベル(好ましくは等張性未満又はその付近)に維持することが極めて望ましい。非イオン性単量体造影剤及び特にイオジキサノール(欧州特許出願公開第108638号)のような非イオン性ビス(トリヨードフェニル)二量体の開発は、低張性溶液で造影有効ヨウ素濃度を達成し得る低浸透圧毒性のコントラスト媒体をもたらし、さらにはコントラスト媒体Visipaque(商標)を所望の重量オスモル濃度に維持しながら血漿イオンの混入によるイオン不均衡の補正を可能にした(国際公開第90/01194号及び同第91/13636号)。
【0015】
商業的な高ヨウ素濃度のX線コントラスト媒体は、周囲温度で約15〜約60mPasの範囲内の比較的高い粘度を有する。一般に、コントラスト増強剤が二量体であるコントラスト媒体は、コントラスト増強剤が該二量体に対応する単量体である対応コントラスト媒体より高い粘度を有する。かかる高い粘度はコントラスト媒体の投与者にとって問題を引き起こすことがある。即ち、比較的大口径の注射針又は高い加圧力が必要とされ、これは小児科X線撮影並びに(例えば、血管造影に際して)急速なボーラス投与を要求するX線撮影技法において特に顕著である。
【0016】
連結基によって結合された2つの三ヨウ素化フェニル基を有する化合物を活性医薬品成分として含むX線コントラスト媒体は、通常、二量体造影剤又は二量体といわれる。数年の間に、多種多様のヨウ素化二量体が提唱された。関連する特許文献には、欧州特許第1186305号、同第686046号、欧州特許出願公開第108638号、同第0049745号、同第0023992号、国際公開第2003/080554号、同第2000/026179号、同第1997/000240号、同第92/08691号、米国特許第3,804,892号、同第4,239,747号、同第3,763,226号、同第3,763,227号、同第3,660,464号及び同第3,678,152号がある。現在、活性医薬品成分としてヨウ素化非イオン性二量体を含む1種のコントラスト媒体が市場に出ており、それは化合物イオジキサノールを含む製品Visipaque(商標)である。また、イオン性二量体化合物イオキサグリック酸を含む配合物Hexabrix(商標)も市場に出ている。
【0017】
したがって、上述した問題の1以上を解決する造影剤を開発したいという要望は今なお存在している。かかる造影剤は、理想的には、以下の性質、即ち腎毒性、重量オスモル濃度、粘度、溶解度、注入量/ヨウ素濃度及び減衰度/放射線量並びにこのようなヨウ素化化合物について知られ又は発見された追加の副作用の1以上に関し、市場にある可溶性のヨウ素含有化合物に比べて向上した性質を有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
米国特許出願公開第2004/198834号明細書
【発明の概要】
【0019】
本発明は、上述した基準、詳しくは腎毒性、重量オスモル濃度、粘度及び溶解度の1以上に関して公知の媒体より向上した性質を有するコントラスト媒体として有用な化合物を提供する。かかるコントラスト媒体はヨウ素含有コントラスト増強化合物を含んでなり、この場合のヨウ素含有化合物は2つの結合されたヨウ素化フェニル基を含む化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の新規化合物、X線造影剤としてのその使用、その処方及び製造は、以後、添付特許請求の範囲及び本明細書中に詳述される。
【0021】
コントラスト増強化合物は、次の式(I)の合成化合物及びその塩又は光学活性異性体である。
【0022】
R−Y−X−Z−R 式(I)
式中、
Xは、1〜2の酸素原子又は硫黄原子によって任意に分断されたC2〜C6直鎖又は枝分れアルキレン部分を表し、このアルキレン部分は4以下の−OR1基で任意に置換されており、
Y及びZは独立に、C1〜C4直鎖又は枝分れアルキル基で任意にN置換された尿素基又はウレタン基を表し、
1は水素原子或いはC1〜C4直鎖又は枝分れアルキル基を表し、
各Rは独立に同一又は異なるものであって、三ヨウ素化フェニル基、好ましくはさらに2つのR2基で置換された2,4,6−三ヨウ素化フェニル基を表し、ここで各R2は同一又は異なるものであって、式(I)の化合物中の少なくとも1つのR2基が親水性部分であることを条件にして水素原子又は非イオン性の親水性部分を表す。
【0023】
上記式(I)中、Xは好ましくは1〜3の−OR1基で任意に置換された直鎖C2〜C6アルキレン鎖を表す。
【0024】
さらに好ましいXは、尿素官能基の窒素原子に隣接しない位置に1以上の−OR1基(好ましくは1以上のヒドロキシル基)を有する直鎖C2〜C5アルキレン鎖を表す。さらに好ましくは、アルキレン鎖は1又は2つのヒドロキシル基で置換されている。特に好ましいX基は、エチレン、プロピレン、2−ヒドロキシプロピレン、2−(ヒドロキシメチル)プロピレン及び2−メチル−2−ヒドロキシプロピレンからなる。X基が(例えば、2−ヒドロキシプロピレン部分のように)不斉炭素原子を含む場合、鏡像異性体が存在でき、これらを分離することができる。
【0025】
1は好ましくは水素原子又はメチル基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
【0026】
Y及びZは、式−N(R3)−CO−N(R3)−の尿素基及び式−N(R3)−CO−O−のウレタン基で表される。好ましくは、ウレタン基中の窒素原子はR部分に結合している。Z及びYは同一であってよく、各々が尿素基を表すか、又は各々がウレタン基を表し、或いはZ及びYが異なっていてもよく、Z基及びY基の一方が尿素基を表し、Z基及びY基の他方がウレタン基を表す。
【0027】
3置換基は、水素原子或いはC1〜C4直鎖又は枝分れアルキル基を表す。好ましくは、R3は水素原子又はメチル基を表す。R3がアルキル基を表す場合、アルキル基は好ましくはX部分に結合された窒素原子に結合されている。
【0028】
したがって、特に好ましいY基及びZ基は非置換の尿素基及びウレタン基並びに式−NH−CO−N(CH3)−の基である。
【0029】
ヨウ素化R基の各々は同一又は異なるものであってよく、好ましくはフェニル部分中の残りの3位及び5位においてさらに2つのR2基で置換された2,4,6−三ヨウ素化フェニル基を表す。
【0030】
非イオン性の親水性部分R2は、水溶性を高めるために通常使用される任意の非電離基であり得る。したがって、R2置換基は同一又は異なるものであってよく、好ましくはすべてが、エステル、アミド及びアミン部分を含み、任意にはさらに直鎖又は枝分れC1-10アルキル基(好ましくはC1-5アルキル基)で置換され、また1以上のCH2又はCH部分が酸素又は窒素原子で置き換えられていてもよい非イオン性の親水性部分を表すものとする。R2置換基はさらに、オキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体並びにオキソ置換硫黄及びリン原子から選択される1以上の基を含むこともできる。直鎖又は枝分れアルキル基の各々は、好ましくは1〜6のヒドロキシ基、さらに好ましくは1〜3のヒドロキシ基を含む。したがって、さらに好ましい態様では、R2置換基は同一又は異なるものであって、ポリヒドロキシC1-5アルキル、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルコキシアルキル及び炭素原子数1〜5のヒドロキシポリアルコキシアルキルであり、アミド結合又はカルバモイル結合(好ましくはアミド結合)を介してヨウ素化フェニル基に結合している。
【0031】
以下に示した式のR2基が特に好ましい。
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2、−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CON−(CH2−CHOH−CH2−OH)2
−CONH2
−CONHCH3
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)3
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)、
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)、及び
−モルホリン−4−カルボニル。
【0032】
さらに一段と好ましくは、R2基は同一又は異なるものであって、アミド基化合物、好ましくは式−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、−CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、−CONH−CH−(CH2−OH)2、−CON−(CH2−CH2−OH)2及び−CON−(CH2−CHOH−CH2−OH)2を有する1以上の部分を表す。なお一層好ましくは、両方のR基が同一であり、各R中のR2基が同一又は異なるものであって、−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH及び−CON−(CH2−CH2OH−CH2OH)2を表す。最も好ましくは、すべてのR2置換基が同一である。
【0033】
かくして、本発明に係る好ましい構造は次の式(II)の化合物を含んでいる。
【0034】
R─NH─CO─N(R3)─X─N(R3)─CO─NH─R (IIa)
R─NH─CO─O─X─O─CO─NH─R (IIb)
R─NH─CO─O─X─N(R3)─CO─NH─R (IIc)
式(II)
式(II)中、各R基は上記の意味を有する。さらに好ましくは、各ヨードフェニル基Rは同一であり、すべてのR2基は非イオン性の親水性部分を表し、好ましくはR2基はアミド結合によってヨウ素化フェニル部分に結合している。R3及びXは上記の意味を有し、Xは好ましくは、炭素原子数2〜5の直鎖アルキレン基或いはヒドロキシル置換基が窒素官能基に隣接しない位置にある直鎖又は枝分れモノヒドロキシル化アルキレン基を表す。
【0035】
本発明に係る構造の好ましい例には、以下の式(IIIa)〜(IIIn)の化合物がある。
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

市販のヨウ素化コントラスト媒体に関する通常の濃度である320mg/mlのヨウ素濃度では、式(I)の化合物の濃度は約0.42M(モル濃度)である。コントラスト媒体はこのヨウ素濃度では低い重量オスモル濃度を有し、これはコントラスト媒体の腎毒性に関して有利な特性である。国際公開第90/01194号及び同第91/13636号に説明されているような心血管効果を低下させるため、コントラスト媒体に電解質を添加することも可能である。
【0041】
式(I)の化合物はまた、光学活性異性体も含んでおり、キラル炭素原子に原因する複数の異性形態で存在し得る。鏡像異性体として純粋な生成物及び光学異性体の混合物の両方が含まれる。
【0042】
本発明の化合物は造影剤として使用でき、通常のキャリヤー及び賦形剤と配合することで診断用コントラスト媒体を製造できる。
【0043】
したがって、さらに別の側面から見れば、本発明は、上述した式(I)の化合物を1種以上の生理学的に許容されるキャリヤー又は賦形剤と共に(例えば、任意には血漿イオン又は溶存酸素を添加した注射用の水溶液として)含んでなる診断用組成物を提供する。
【0044】
本発明の造影剤組成物は、そのまま使用できる濃度を有していてもよいし、或いは投与に先立って希釈する濃縮物の形態であってもよい。一般に、そのまま使用できる形態の組成物は100mgI/ml以上、好ましくは150mgI/ml以上のヨウ素濃度を有し、300mgI/ml以上(例えば、320mgI/ml)の濃度が好ましい。ヨウ素濃度が高くなるほど、コントラスト媒体のX線減衰度としての診断価値は高くなる。しかし、ヨウ素濃度が高くなるほど、組成物の粘度及び重量オスモル濃度は高くなる。通常、所定のコントラスト媒体に関する最大ヨウ素濃度は、コントラスト増強剤(例えば、ヨウ素化化合物)の溶解度並びに粘度及び重量オスモル濃度に関する許容限界によって決定される。
【0045】
注射又は輸液によって投与されるコントラスト媒体に関しては、周囲温度(20℃)での溶液の粘度に関する所望上限は約30mPasである。しかし、50〜60mPasまで、さらには60mPasを越える粘度も許容できる。例えば血管造影操作に際してボーラス注射で投与されるコントラスト媒体に関しては、浸透圧毒性効果を考慮しなければならず、好ましくは重量オスモル濃度を1Osm/kg H2O未満、好ましくは850mOsm/kg H2O未満、さらに好ましくは約300mOsm/kg H2Oにすべきである。
【0046】
本発明の化合物を用いれば、かかる粘度、重量オスモル濃度及びヨウ素濃度目標値を満足させることができる。実際、低張溶液を用いて有効ヨウ素濃度を達成できる。したがって、ボーラス注射後の不均衡効果に由来する毒性の寄与を低減させるため、血漿陽イオンの添加によって溶液の張度を補うことが望ましい場合がある。かかる陽イオンは、国際公開第90/01194号及び同第91/13636号に提唱された範囲内で含めることが望ましい。
【0047】
特に、すべてのヨウ素濃度に関して血液と等張なコントラスト媒体を得るためにナトリウム及びカルシウムイオンを添加することが望ましくかつ達成可能である。血漿陽イオンは生理学的に許容される対イオン(例えば、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオンなど)との塩として供給できるが、好ましくは血漿陰イオンが使用される。
【0048】
式(I)の化合物を含むコントラスト媒体は、注射又は輸液によって(例えば、血管内投与によって)投与できる。別法として、式(I)の化合物を含むコントラスト媒体を経口投与することもできる。経口投与のためには、コントラスト媒体はカプセル、錠剤又は液剤の形態を有し得る。
【0049】
さらに別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物を含んでなる診断剤及び式(I)の化合物を薬学的に許容されるキャリヤー又は賦形剤と共に含んでなる診断用組成物を提供する。かかる診断剤及び組成物は、好ましくはX線診断で使用するためのものである。
【0050】
したがって、本発明はさらに、式(I)の化合物を含んでなる診断剤及び診断用組成物の、X線造影検査における使用、並びにX線造影剤として使用するための診断用組成物の製造における式(I)の化合物の使用を包含する。
【0051】
また、式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与する段階、診断装置で身体を検査する段階、及び検査からのデータをコンパイルする段階を含んでなる診断方法も提供される。かかる診断方法では、式(I)の化合物を身体に予め投与することもできる。
【0052】
さらに、イメージング方法、特にX線イメージング方法であって、式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与する段階、診断装置で身体を検査する段階、検査からのデータをコンパイルする段階、及び任意にはデータを解析する段階を含んでなるイメージング方法が提供される。かかるイメージング方法では、式(I)の化合物を身体に予め投与することもできる。
【0053】
製造
一般式(I)の化合物は、当業技術で公知である出発原料、或いは商業的に入手できるか又は商業的に入手できる材料から容易に製造できる出発原料から多段階方法によって合成できる。
【0054】
式(I)の化合物を製造するための一般手順は、実施例1ないし実施例14に例示されている。
【0055】
一般に、以下の式(IIa)、(IIb)及び(IIc)(まとめて式(II)と表す)の化合物
R─NH─CO─N(R3)─X─N(R3)─CO─NH─R (IIa)
R─NH─CO─O─X─O─CO─NH─R (IIb)
R─NH─CO─O─X─N(R3)─CO─NH─R (IIc)
を製造するには、以下の式(IV)の化合物
R’−A (IV)
を以下の式(V)の化合物と反応させればよい。
【0056】
B−X’−B (V)
式中、
R’はR或いはその前駆体又は保護誘導体を表し、
X′はX或いはその前駆体又は保護誘導体を表し、
Aはイソシアネート残基を表し、
各Bは同一又は異なるものであって、第一アミン、第二アミン又はアルコールを表す。
【0057】
式(IV)の化合物の溶液を0.5当量の式(V)の化合物のジクロロメタン溶液に添加する。混合物を25℃で18時間撹拌すると、分析によって反応の完了が示される。真空下で溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーによって生成物を単離する。
【0058】
式(II)の最終化合物は、ジヒドロキシル化又は適宜に保護基の除去を行うことでこれらの生成物から製造される。
【0059】
中間体の製造
すべてのアルキレンジアミン及びアルキレンジオールは商業的供給業者から入手できる。
【0060】
酢酸1−アセトキシメチル−2−[3−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゾイルアミノ]エチルエステルの製造
【0061】
【化6】

酢酸1−アセトキシメチル−2−[3−アミノ−5−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードベンゾイルアミノ]エチルエステル(15g、17mmol)を1,4−ジオキサン(40mL)に溶解した溶液に、20%ホスゲンのトルエン溶液(100mL、11eq)を周囲温度で添加した。次いで、混合物を60℃に15分間加熱した。反応混合物を周囲温度に冷却し、次いで減圧下で濃縮してオフホワイトの固体を得た。ジオキサン(50mL×2)を添加し、減圧下でゆっくりと除去してオフホワイトの固体を得、これを真空ライン上に配置して残留溶媒を除去した。この物質をそれ以上精製せずに使用した。
【0062】
1H NMR(CDl3):7.02(s,br,2H)、5.29−5.21(m,2H)、4.50−4.38(m,2H)、4.30−4.19(m,2H)、3.82−3.48(m,4H)、2.05(s,12H)。
【0063】
13C NMR(CDCl3):170.7、170.3、169.7、149.8、123.7、92.2、70.0、63.3、39.9、21.3、20.7。
【0064】
同じ手順を用いて、下記のイソシアネートを製造した。
【0065】
N,N,N’,N’−テトラアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトイソフタルアミド
【0066】
【化7】

1H NMR(CDCl3):5.91−5.84(m,4H)、5.38−4.91(m,8H)、4.28−4.02(m,4H)、3.68(d,4H,J=6Hz)。
【0067】
N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナト−N,N’−ジメチルイソフタルアミド
【0068】
【化8】

1H NMR(CDCl3):5.8−6.0(m,2H)、5.2−5.4(m,4H)、4.16及び2.76(d,4H)、3.68及び3.05(s,6H)。
【0069】
13C NMR(CDCl3):169.50、169.20、168.77、131.96、131.55、131.42、120.19、119.31、119.23、91.70、90.92、67.03、53.63、49.53、34.79、34.53及び31.20。
【0070】
N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトイソフタルアミド
【0071】
【化9】

1H NMR(d6DMSO):8.61(t,NH)、5.81−5.96(m,2H)、3.30−4.05(錯体8H)。
【0072】
13C NMR(d6DMSO):170.20、149.52、147.99、135.23、116.60、107.15、80.60、53.04、45.64、42.07、36.24、8.93及び7.86。
【0073】
1,3−ビス(4−モルホリノカルボニル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゼン
【0074】
【化10】

1H NMR(CDCl3):3.67−3.80(m,6H)及び3.16−3.23(m,2H)。
【0075】
13C NMR(CDCl3):168.78、168.05、149.09、147.64、141.09、123.64、91.67、84.41、66.92、66.18、65.90、46.26及び41.58。
【実施例】
【0076】
実験の部
実施例1
1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン
【0077】
【化11】

酢酸1−アセトキシメチル−2−[3−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゾイルアミノ]エチルエステルのジクロロメタン溶液に1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、酢酸2−アセトキシ−3−[3−[3−(3−{3−[3,5−ビス(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]ウレイド}−2−ヒドロキシプロピル)ウレイド]−5−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードベンゾイルアミノ]プロピルエステルを得た。これをメタノールに溶解し、アンモニア水で処理した。この物質を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを白色粉末として得た。
【0078】
MS(ES+,m/z):1552.89(100%)。
【0079】
実施例2
1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−(メチルウレイド)イソフタルアミド]エチレン
【0080】
【化12】

酢酸1−アセトキシメチル−2−[3−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゾイルアミノ]エチルエステルのジクロロメタン溶液にN,N’−ジメチルエチレンジアミン(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、酢酸2−アセトキシ−3−[3−[3−(2−{3−[3,5−ビス(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]−1−メチルウレイド}エチル)3−メチルウレイド]−5−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードベンゾイルアミノ]プロピルエステルを得た。これをメタノールに溶解し、アンモニア水で処理した。この物質を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−(メチルウレイド)イソフタルアミド]エチレンを白色粉末として得た。
【0081】
MS(ES+,m/z):ES(+)804.01;1552.51。
【0082】
実施例3
1,3−ビス[N,N’−ビス(4−モルホリノ)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン
【0083】
【化13】

1,3−ビス(4−モルホリノカルボニル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゼンのジクロロメタン溶液に1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、1,3−ビス[N,N’−ビス(4−モルホリノ)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを得た。これを分取HPLCで処理し、凍結乾燥することで白色粉末を得た。
【0084】
MS(ES-,m/z):1535.46(100%)。
【0085】
実施例4
1,3−ビス[ビス−N,N’−メチル−N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン
【0086】
【化14】

N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナト−N,N’−ジメチルイソフタルアミドのジクロロメタン溶液に1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、1,3−ビス[ビス−N,N’−メチル−N,N’−ビス(アリル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを得た。OsO4及びNMMOを用いたシス−ジヒドロキシル化を行い、粗混合物を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に1,3−ビス[ビス−N,N’−メチル−N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを白色粉末として得た。
【0087】
MS(ES+,m/z):1608.77(100%)。
【0088】
実施例5
1,3−ビス(N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル))−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン
【0089】
【化15】

N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトイソフタルアミドのジクロロメタン溶液に1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、1,3−ビス[ビス−N,N’−ビス(ジアリル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを得た。OsO4及びNMMOを用いたシス−ジヒドロキシル化を行い、粗混合物を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に1,3−ビス(N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル))−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを白色粉末として得た。
【0090】
MS(ES+,m/z):1848.63(100%)。
【0091】
実施例6
1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−カルバミドイソフタルアミド]−2−メチル−2−ヒドロキシメチルプロパン
【0092】
【化16】

酢酸1−アセトキシメチル−2−[3−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゾイルアミノ]エチルエステルのジクロロメタン溶液に1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン(0.3当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、酢酸2−アセトキシ−3−[3−{2−[3,5−ビス(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシメチル]−3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシカルボニルアミノ}−5−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードベンゾイルアミノ]プロピルエステルを得た。これをメタノールに溶解し、アンモニア水で処理した。この物質を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−カルバミドイソフタルアミド]−2−メチル−2−ヒドロキシメチルプロパンを白色粉末として得た。
【0093】
MS(ES+,m/z):1582.79(100%)。
【0094】
実施例7
{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸2−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}エチルエステル
【0095】
【化17】

N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトイソフタルアミドのジクロロメタン溶液にエチレングリコール(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、(3,5−ビス−ジアリルカルバモイル−2,4,6−トリヨードフェニル)カルバミン酸2−(3,5−ビス−ジアリルカルバモイル−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ)エチルエステルを得た。OsO4及びNMMOを用いたシス−ジヒドロキシル化を行い、粗混合物を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に1,3−ビス(N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル))−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパンを白色粉末として得た。
【0096】
MS(ES+,m/z):1821.39(100%)。
【0097】
実施例8
{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3,5−ビス{3−[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}プロピルエステル、
【0098】
【化18】

この化合物は実施例7の手順に従って製造される。
【0099】
MS(ES+,m/z):1835.46(100%)。
【0100】
実施例9
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸2−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]エチルエステル
【0101】
【化19】

酢酸1−アセトキシメチル−2−[3−(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトベンゾイルアミノ]エチルエステルのジクロロメタン溶液にエチレングリコール(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、酢酸2−アセトキシ−3−(3,5−ビス{2−[3,5−ビス(2,3−ジアセトキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]エトキシカルボニルアミノ}−2,4,6−トリヨードベンゾイルアミノ)プロピルエステルを得た。これをメタノールに溶解し、アンモニア水で処理した。この物質を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸2−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]エチルエステルを白色粉末として得た。
【0102】
MS(ES+,m/z):1524.08(100%)。
【0103】
実施例10
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]プロピルエステル
【0104】
【化20】

この化合物は実施例9の手順に従って製造される。
【0105】
MS(ES+,m/z):1540.30(100%)。
【0106】
実施例11
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]−2−ヒドロキシプロピルエステル
【0107】
【化21】

この化合物は実施例9の手順に従って製造される。
【0108】
MS(ES+,m/z):1556.37(65%)、797.90(100%)。
【0109】
実施例12
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]−2−ヒドロキシメチルプロピルエステル
この化合物は実施例7の手順に従って製造される。
【0110】
【化22】

MS(ES+,m/z):1569.92(95%)、749.07(100%)。
【0111】
実施例13
{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}プロピルエステル
【0112】
【化23】

N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナト−N,N’−ジメチルイソフタルアミドのジクロロメタン溶液に1,3−プロパンジオール(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、[3,5−ビス(アリルメチルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(アリルメチルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバモイルオキシプロピルエステルを得た。OsO4及びNMMOを用いたシス−ジヒドロキシル化を行い、粗混合物を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}プロピルエステルを白色粉末として得た。
【0113】
MS(ES+,m/z):1594.47(100%)。
【0114】
実施例14
{3−[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3,5−ビス(3−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}ウレイド)−2−ヒドロキシプロピルエステル
【0115】
【化24】

N,N’−ジアリル−2,4,6−トリヨード−5−イソシアナトイソフタルアミドのジクロロメタン溶液に3−アミノ−1,2−プロパンジオール(0.5当量)を添加した。反応混合物を18時間撹拌し、次いでカラムクロマトグラフィーにより精製することで、(3−ジアリルカルバモイル−2,4,6−トリヨードフェニル)カルバミン酸3−{3−[3−(ジアリルプロピルカルバモイル)−5−ジアリルカルバモイル−2,4,6−トリヨードフェニル]ウレイド}−2−ヒドロキシプロピルエステルを得た。OsO4及びNMMOを用いたシス−ジヒドロキシル化を行い、粗混合物を分取HPLCで精製することで、凍結乾燥後に{3−[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3,5−ビス(3−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}ウレイド)−2−ヒドロキシプロピルエステルを白色粉末として得た。
【0116】
MS(ES+,m/z):1849.494(100%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)の化合物及びその塩又は光学活性異性体。
R−Y−X−Z−R 式(I)
(式中、
Xは、1〜2の酸素原子又は硫黄原子によって任意に分断されたC2〜C6直鎖又は枝分れアルキレン部分を表し、このアルキレン部分は4以下の−OR1基で任意に置換されており、
Y及びZは独立に、C1〜C4直鎖又は枝分れアルキル基で任意にN置換された尿素基又はウレタン基を表し、
1は水素原子或いはC1〜C4直鎖又は枝分れアルキル基を表し、
各Rは独立に同一又は異なるものであって、三ヨウ素化フェニル基、好ましくはさらに2つのR2基で置換された2,4,6−三ヨウ素化フェニル基を表し、ここで各R2は同一又は異なるものであって、式(I)の化合物中の少なくとも1つのR2基が親水性部分であることを条件にして水素原子又は非イオン性の親水性部分を表す。)
【請求項2】
Xが1〜3の−OR1基で任意に置換された直鎖C2〜C6アルキレン鎖を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが直鎖C2〜C5アルキレン鎖を表す、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
2〜C5アルキレン鎖が1又は2つのヒドロキシル基で置換されている、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xがエチレン基、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基及び2−メチル−2−ヒドロキシプロピレン基の1つを表す、請求項3又は請求項4記載の化合物。
【請求項6】
1が水素原子又はメチル基を表す、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
Y及びZが式−N(R3)−CO−N(R3)−の尿素基及び式−N(R3)−CO−O−のウレタン基で表される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
ウレタン基中の窒素原子がR部分に結合している、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
Y及びZが同一であって、各々が尿素基を表すか、又は各々がウレタン基を表し、或いはY及びZが異なっていて、尿素基及びウレタン基を表す、請求項7又は請求項8記載の化合物。
【請求項10】
Y及びZが非置換の尿素基及びウレタン基並びに式−NH−CO−N(CH3)−の基である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
3が水素原子或いはC1〜C4直鎖又は枝分れアルキル基を表す、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
各R2が同一又は異なるものであって、エステル、アミド及びアミン部分を含み、任意にはさらに直鎖又は枝分れC1-10アルキル基で置換され、任意には1以上のCH2又はCH部分が酸素又は窒素原子で置き換えられ、任意にはオキソ、ヒドロキシル、アミノ又はカルボキシル誘導体並びにオキソ置換硫黄及びリン原子から選択される1以上の基で置換された非イオン性の親水性部分を表す、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
2が同一又は異なるものであって、エステル、アミド及びアミン部分を含み、さらに1〜3のヒドロキシ基で置換された直鎖又は枝分れC1-5アルキル基で置換された非イオン性の親水性部分を表す、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
各R2が同一又は異なるものであって、アミド結合を介してヨウ素化フェニル基に結合されたポリヒドロキシC1-5アルキル、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルコキシアルキル又は炭素原子数1〜5のヒドロキシポリアルコキシアルキルである、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
各R2が同一又は異なるものであって、以下の式の基から選択される、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の化合物。
−CONH−CH2−CH2−OH、
−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH、
CON(CH3)CH2−CHOH−CH2OH、
−CONH−CH−(CH2−OH)2
−CON−(CH2−CH2−OH)2
−CON−(CH2−CHOH−CH2−OH)2
−CONH2
−CONHCH3
−CON(CH2−CHOH−CH2−OH)(CH2−CH2−OH)、
−CONH−C(CH2−OH)3
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)、
−CONH−CH(CH2−OH)(CHOH−CH2−OH)、及び
−モルホリン−4−カルボニル。
【請求項16】
各R2が同一又は異なるものであって、式−CONH−CH2−CHOH−CH2−OH及び−CON−(CH2−CHOH−CH2−OH)2の基から選択される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
すべてのR2基が等しい、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
以下の式(IIa)、(IIb)及び(IIc)を有する、請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載の化合物。
R─NH─CO─N(R3)─X─N(R3)─CO─NH─R (IIa)
R─NH─CO─O─X─O─CO─NH─R (IIb)
R─NH─CO─O─X─N(R3)─CO─NH─R (IIc)
(式中、R、R3及びXの各々は請求項1乃至請求項17のいずれか1項で定義した通りである。)
【請求項19】
各R基が同一であり、すべてのR2基がアミド結合によってヨウ素化フェニル部分に結合された非イオン性の親水性部分を表し、Xが炭素原子数2〜5の直鎖アルキレン基或いはヒドロキシル置換基が窒素官能基に隣接しない位置にある直鎖又は枝分れモノヒドロキシル化アルキレン基を表す、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
以下のいずれかの化合物である、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の化合物。
1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン、
1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−(メチルウレイド)イソフタルアミド]エチレン、
1,3−ビス[N,N’−ビス(4−モルホリノ)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン、
1,3−ビス[ビス−N,N’−メチル−N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン、
1,3−ビス[N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−ウレイドイソフタルアミド]−2−ヒドロキシプロパン、
1,3−ビス[N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−2,4,6−トリヨード−5−カルバミドイソフタルアミド]−2−メチル−2−ヒドロキシメチルプロパン、
{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸2−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}エチルエステル、
{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3,5−ビス{3−[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}プロピルエステル、
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸2−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]エチルエステル、
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]プロピルエステル、
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]−2−ヒドロキシプロピルエステル、
[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニル]カルバミン酸3−[3,5−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルカルバモイル)−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ]−2−ヒドロキシメチルプロピルエステル、
{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニルカルバモイルオキシ}プロピルエステル、及び
{3−[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}カルバミン酸3,5−ビス(3−{3,5−ビス[ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)カルバモイル]−2,4,6−トリヨードフェニル}ウレイド)−2−ヒドロキシプロピルエステル。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含んでなる診断剤。
【請求項22】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物を薬学的に許容されるキャリヤー又は賦形剤と共に含んでなる診断用組成物。
【請求項23】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物を薬学的に許容されるキャリヤー又は賦形剤と共に含んでなるX線診断用組成物。
【請求項24】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物を含む診断剤及び診断用組成物の、X線造影検査における使用。
【請求項25】
X線造影剤として使用するための診断用組成物の製造における、請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項26】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与する段階、診断装置で身体を検査する段階、及び検査からのデータをコンパイルする段階を含んでなる診断方法。
【請求項27】
請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物を予め投与した身体を診断装置で検査する段階、及び検査からのデータをコンパイルする段階を含んでなる診断方法。
【請求項28】
イメージング方法、特にX線イメージング方法であって、請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の式(I)の化合物をヒト又は動物の身体に投与する段階、診断装置で身体を検査する段階、検査からのデータをコンパイルする段階、及び任意にはデータを解析する段階を含んでなるイメージング方法。

【公表番号】特表2011−500770(P2011−500770A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530487(P2010−530487)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064632
【国際公開番号】WO2009/056555
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】