説明

造粒装置及びそれを用いる造粒方法

【課題】装置を大型化した場合でも、ブロワ等の消費エネルギーが大幅に増大することはない造粒装置を提供する。
【解決手段】多孔板52を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を当該造粒部の当該底床に供給する空気供給管と、当該多孔板からなる底床で開口するようにして設けられた高圧空気を補助気体として用いた溶融状、溶液状、又はスラリー状の造粒原料液噴射用ノズル51とを有してなる造粒装置であって、前記底床における当該ノズルの配置が三角配置として構成されており、供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから造粒原料液を噴射して造粒するようにし、前記供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから造粒原料液を噴射して造粒するにあたり、前記多孔板は、開口された孔を通過する流動用空気の流れ方向が、垂直軸に対し粒子の流れ方向に傾斜角度を有するように開口されている造粒装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素、硫黄等の溶融原料、および溶融尿素に固体状の硫酸アンモニウム等を含む尿素・硫酸アンモニウムのスラリー液等から造粒する、改良された省エネルギー型の造粒装置及びそれを用いた造粒方法に関する。特に詳しくは、流動床と噴流床を組み合わせた造粒装置及びそれを用いた造粒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素及び尿素・硫酸アンモニウム等における造粒器及び造粒方法としては、特に流動床と噴流床を組み合わせた方式(以下、「流動床/噴流床型造粒装置」ということがある。)に関し、多くの提案がなされてきており(例えば、特許文献1〜6を参照。)、現在好適に実施されている。
【0003】
図1は、このような流動床/噴流床型造粒装置の典型的な例を示すもので、その技術的内容を当該図面に基づいて説明する。
図において、造粒器1には、スタート・アップ時、例えば尿素の種晶が核としてライン供給口であるライン40からライン41を通り供給される。造粒器1では、90質量%以上、好ましくは95質量%以上の尿素を含む尿素水溶液がノズル6、7および8から30度〜80度から選択される所定のスプレー角度で液滴径150〜600μmで核に噴霧される。なお、尿素合成プラント等(図示しない)から供給された濃度90質量%以上、好ましくは濃度95質量%以上の尿素水溶液(又は溶融尿素)17は、125〜145℃に調整され、ライン31から混合槽21に供給されライン36、ポンプ22およびライン37を通り、ノズル6、7および8に供給される。
【0004】
上記ライン41から供給された尿素の種晶は、該造粒器1内で尿素水溶液の噴霧を受けると同時に粒子が成長し、下部供給口であるライン24を通り下部空気供給管2から分流された複数の空気供給管3、4および5の噴流用気流によって、空気供給管開口上に噴流床44が形成されるとともに、当該噴流床上の空間60に舞い上がり成長した尿素70として上部に舞い上がった状態10から下部の空間11に落下する。一方、上部供給口であるライン23からは、流動用空気が供給され、底部に対し垂直の方向に開口する孔を複数有する底床9上の成長した粒状の尿素70が空間11においてレベル12まで流動状態とされて流動床12を形成しており、ノズル6、7および8上の空間11全体を埋めるように成長中の粒状尿素が流動している。
【0005】
底床は通常長方形であって、当該底床の一端に供給された尿素(核)は、このような動きを繰り返しながら底床上の流動床内を底床の他端に移動する。このように、徐々に造粒されて粒径が成長しながら移動し、造粒を終えた粒状尿素は最後に排出口であるライン25から排出される。
【0006】
造粒器1のライン25から排出された粒状尿素中の呼称製品サイズのものが占める割合(以下、造粒器出口の呼称製品サイズの割合と称す)は、通常75〜80%であり、フルイ13でふるい分けられ、所望する製品中の呼称製品サイズの割合の規格品および規格品外に分別される。規格品は、ライン26を通り、製品14として貯蔵される。一方、連続的に安定して製品の生産を続けるうえで、造粒器1中の核の数を一定に保つため、規格より粒子径の大きなものおよび規格品の一部は、ライン27を通り粉砕器15で粉砕された後、また、規格より小さなものはライン28を通り、ライン29からのものと合流してライン30からライン41を通り、造粒器1の入口へ造粒のための核としてリサイクルされる。
【0007】
【特許文献1】特公平4−63729号公報(特許請求の範囲(請求項1)、図1〜図2)
【特許文献2】特開平10−216499号公報(特許請求の範囲(請求項1〜3)、図1〜図3)
【特許文献3】特開平11−137988号公報(特許請求の範囲(請求項1〜19)、図1〜図18)
【特許文献4】特開昭54−16427号公報(特許請求の範囲(請求項1〜11)図1)、
【特許文献5】特公昭60−13735号公報(特許請求の範囲(請求項1〜2)、図1)、
【特許文献6】特公昭60−97037号公報(特許請求の範囲(請求項1〜3)、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の流動床/噴流床型造粒装置は、一応技術的に完成されているとも考えられるが、本発明者らが検討したところによれば、さらに解決すべき問題点または技術的課題が存在することを見いだした。すなわち、
【0009】
(i)上記した原料液噴射用ノズル同士の干渉を防ぐ必要があるため、当該ノズル同士を配設する最小距離(最小ノズル間隔)が決まっている。そのため、底床(多孔板)総面積が広くなり、設備(設備容積)も大型となっていた。また、使用空気は粒子の流動化、噴射原料液の乾燥、冷却等の目的のために供給されるが、設備が大型になると、特に熱収支上必要な量以上の空気量を供給する必要があり、ブロワ、ダクト等も大型化せざるを得なかった。
【0010】
(ii)流動床は、底床である多孔板上に形成される。核は流動床の一端に供給され、他端から造粒粒子として排出されるが、当該底床(すなわち流動床)が長方形であるため、操作条件が流動床の入口の状態に依存しやすい。特に装置を大型化した場合、当該流動床の入口(核が供給される箇所)の流量、温度、粒度分布がそのまま出口まで保持されやすくこれらを幅方向(横方向)、すなわち、流れに対して直角方向で均一化することは困難であった。
【0011】
(iii)空気の流動線速が不足した場合、流動床、噴流床の安定性が損なわれて、粒子同士がくっついてしまい、不定形品の原因となることがある。また、流動線速が低いと流動層の粒子密度が大きくなり、かえって圧力損失が増加するという問題がある一方、単純に空気の流動線速を上げるだけでは、空気量が増加するため、ブロワ等の消費エネルギーが増大してしまう。
【0012】
かくして本発明の目的は、流動床/噴流床型造粒装置における上記問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に従えば、以下の造粒装置が提供される。
〔1〕 多孔板を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を当該造粒部の当該底床に供給する空気供給管と、当該多孔板からなる底床で開口するようにして設けられた高圧空気を補助気体として用いた溶融状、溶液状、又はスラリー状の造粒原料液噴射用ノズルとを有してなる造粒装置であって、
前記底床における当該ノズルの配置が三角配置として構成されており、供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから造粒原料液を噴射して造粒するようにし、
前記供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから造粒原料液を噴射して造粒するにあたり、前記多孔板は、開口された孔を通過する流動用空気の流れ方向が、垂直軸に対し粒子の流れ方向に傾斜角度を有するように開口されていることを特徴とする造粒装置。
【0014】
〔2〕 前記多孔版は断面において波状にされ、その前記粒子の流れ方向に向かって下り坂となる傾斜部分に前記孔が開口されていることを特徴とする〔1〕に記載の造粒装置。
【0015】
〔3〕 前記ノズルの三角配置が、
複数のノズルが前記粒子の流れの方向に直交して並列する複数条の列をなし、互いに隣接するノズル列におけるノズルが、前記粒子の流れの方向にみて重ならないように配置された千鳥配置であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の造粒装置。
【0016】
〔4〕 前記流動用空気の流動線速が2.0〜3.5m/sであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の造粒装置。
【0017】
〔5〕 前記三角配置された前記噴射用ノズルのピッチが0.2〜0.5mであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の造粒装置。
〔6〕 尿素又は尿素・硫酸アンモニウムを造粒することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の造流装置。
【0018】
また、本発明に従えば、以下の造粒方法が提供される。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の造粒装置を用い、供給された造粒部中の核に対して前記三角配置された噴射用ノズルから造粒原料液を噴射し、かつ前記傾斜角度を有する開口から空気を供給して造粒することを特徴とする造粒方法。
【発明の効果】
【0019】
以下詳述するように、本発明においては、造粒原料液噴射用ノズルの配置を三角配置(千鳥配置)とすることにより、次の効果を奏する。
【0020】
(a)底床(多孔板)総面積を有効に活用できる。すなわち、従来の四角配置ノズルの場合と比較して同じ本数のノズルを設置する場合は、底床面積が少なくてすむため、造粒装置が小型化できる。したがって、ブロワ、ダクト等もより小型のものが使用可能である。
【0021】
(b)特に装置を大型化した場合でも、流動床の流れに対して直角方向における温度分布や粒度分布を均一化することが可能となった。
【0022】
(c)三角配置ノズルにより、上記したように、装置がより小型化できるため、空気の流動線速を十分に上げて、流動床、噴流床の安定性を確保しても、空気量が過大に増大しないので、ブロワ等の消費エネルギーを大幅に増大することなく、流動線速を十分に確保できる。結果、流動層内の粒子密度が下がるので、圧力損失も低減し、かつ粒子同士が接触する機会も減少するので、二つ以上の粒子が付着してできる、いわゆる金平糖状、またはポップコーン状の不定形粒子の生成が抑制される。
【0023】
(d)なお、従来、四角配置ノズルが常用されていたのは、一つは、粒子の大塊が流動床入口に供給された場合でも、当該粒子をそれ以上成長させないように、ノズル間を速く通り抜けさせるためであった。これに対して、本発明における三角配置ノズルとした場合は、大塊がノズルに衝突する機会が増え、ノズル間を通過しにくくなる傾向にあるが、底床の多孔板として、後記する方向性多孔板を採用し、流動空気の流れを傾斜させることにより、当該各開口部出口の流動線速(より正確には底床に平行な流動線速成分)を上げて、大塊を速く移動させ、ノズル間を速やかに通り抜けさせることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながらも本発明の好ましい実施形態を説明する。
図2〜6は、本発明を適用した、造粒装置の一実施形態を、従来の実施形態と比較しながら模式的に示したもので、図2は正面図、図3は側面図、及び図4〜6は平面図である。図1の噴流管方式の造粒器に対して、図2〜6の造粒器は、高圧空気スプレー方式と称されるものであり、噴射用ノズルとして、「多孔板からなる底床で開口するようにして設けられた高圧空気を補助気体として用いた噴射用ノズル」を使用するものである。ただし、スプレー方式が異なる他は、当該造粒器も流動床/噴流床型造粒装置である点で、共通するものであり、基本的な操作は図1の造粒器と同様である。ここで、図4及び5は従来の四角配置ノズルとした底床を示し、図6は本発明の三角配置ノズルとした底床を示す。なお、符号は図1のものと共通する箇所は、同一のものを使用している。
【0025】
図2及び3に示されているように、当該造粒装置(造粒器ともいう。)は、高圧空気スプレー方式と称されるものであって、基本的に多孔板を底部とする造粒部の底床9と、ライン23から供給される流動用空気を造粒部の底床9に供給する空気供給管と、原料液の液滴が噴射される噴射用ノズル600、700および800とからなる。また、ライン240からノズル600、700および800まわりに供給されるのは補助気体として用いられる微細化用高圧空気であり、当該高圧空気により、ノズル上には、噴流管方式と同様に、噴流床が形成される。なお、基本的には、必須ではないが、図に示された実施態様では、当該造粒器においては、ライン41から供給された核が造粒器入口から出口へ流れるのをほぼ直角に遮るように、レベル(流動床)12の上部に、粒子がショートパスし、十分に成長せずに排出されることを防止するため、邪魔板200および邪魔板201が設置されている。粒子は、邪魔板200、201と底床9との隙間をくぐって成長する。
【0026】
図4〜6は造粒器1の底床(多孔板)を示すものであるが、従来のノズル(又は流動用空気供給管)の配置(配列)は、図4に示したように四角配置(碁盤目配置又は直列配置ともいう。)であった。図4において、ノズルの配置は、従来公知の四角配置であって、1系列6本のものが、15系列設置(総ノズル数:90本)されている。かくしてライン41から供給された尿素の種晶は、該造粒器1内で尿素水溶液の噴霧を受けると同時に粒子が成長し、造粒を終えた粒状尿素は最後に排出口であるライン25から排出される。
【0027】
図5は、より大量の造粒を行うべく、図4より、ノズル51の1系列のノズル51の数をスケールアップした場合の底床(多孔板)52の例を示すもので、1系列7本のノズル51が14系列(総ノズル数:98本)設けられているものである。また、ノズル3〜4段ごとに、粒子が造粒器入口から出口へ流れるのをほぼ直角に遮るように、邪魔板53が設けられている。ここで、邪魔板の枚数は、粒子の成長について考慮した上で適宜決定されるが、通常3〜4段ごとに設けられている。
このような四角配置ノズルの場合、上記したような(i)〜(iii)の問題、すなわち設備が大型となり、温度、粒度分布を流れに対して直角方向で均一化することが困難となり、線速をあげると空気量が増加するため、ブロワ等の消費エネルギーが増大してしまう等の問題が顕在化する。
【0028】
図6に示したように、本発明の造粒装置における多孔板52は、図5に示したノズル(又は空気供給管)51の四角配置を、三角配置(千鳥配置、又は、錯列配置ともいう。)としている。
例えばノズル51間の間隔を450mmとした場合、図5に示した従来例においては、7列×14段(総ノズル数:98本)、幅(M1)3300mm、長さ(L1)7100mmである。ここで、ノズル間の間隔とは、一つのノズルの中心から隣接する他のノズルの中心までの距離をいう。このノズル間隔450mmとは、従来の造粒器において、最小ノズル間隔として、一般的な間隔である。これよりも間隔を狭くするとノズル同士が干渉してしまう。
一方、三角配置(2辺のなす角が60°)の図6においては、幅(M2)3300mm、長さ(L2)6680mmの中に、1系列7本の配列を8段と1系列6本の配列を7段(総ノズル数:98本)とを交互に配置することが可能である。本発明では、三角配置とすることで、最小ノズル間隔450mmを維持したまま、段の間隔を390mmとすることができる。すなわち、このような三角配置のノズル配列とすることにより、より小さい面積で同数のノズルを配置でき、かつ、段数も15段に増やすことができる。この段数の増加は、いわゆる槽列モデルにおいて槽の数が増えたことと等価であり、造粒においては、粒度分布の向上、乾燥効率の向上につながる。このように、上記(i)〜(iii)のすべての問題が効果的に解決されると同時に、造粒された製品の品質も向上する。また、図6では、ノズル5段ごとに邪魔板53が設けられている。例示したサイズの装置においては、従来は図5に示したように、粒子成長の観点からノズル3〜4段ごとに邪魔板を設置する必要があったが、これに対し、本発明では、三角配置とすることで、段の間隔や流動線速などの影響により、邪魔板の枚数を減らしても従来と同様の作用を奏することができる。また、邪魔板の枚数を減らすことで更に装置の小型化が可能になる。ここで、邪魔板の枚数は、粒子の成長を考慮した上で適宜決定され、好ましくは4〜5段ごとに設けることができる。
【0029】
三角配置された前記噴射用ノズルのピッチは、総ノズル数、1系列のノズル数、系列の数等によっても変わりうるが、最近接のノズル同士のピッチは好ましくは0.2〜0.5mである。
【0030】
上記造粒器の底床9の多孔板からは、流動用空気が空気供給管から流出して当該底床の上に流動床が形成されるが、当該多孔板における開口(開孔)は、また、核および成長中の尿素等が、造粒器入り口から連続的に造粒器出口方向に流れるような態様で開孔され設置される。このように設置された造粒器出口方向に流れるように開口された孔を通過する空気の流れ方向は、当該多孔板に開口された孔を通過する空気の流れ方向が、垂直軸に対し粒子の流れ方向に傾斜角度を有するように開口されていることが好ましい。このようにして傾斜角度を有するように開口されている多孔板の態様を「方向性多孔板」と称する。図10は、方向性多孔板の1例の部分拡大平面図を示す。また、そのA−A線断面図を図11に示す。図10〜11に示すように、多孔板61の開口部(開孔部)62から流出する空気が傾斜角をもって、すなわち流入する空気が底床に対して斜め方向の線速度を有する場合、その垂直軸方向の速度成分が粒子を上方に流動せしめて流動床を形成するのに作用し、底床に対して平行な速度成分が、粒子を底床に沿って、出口方向に輸送・移動させるように作用することになる。なお、製造の容易性から、穿孔する場合、開口は、垂直軸に対し60度以下が選択される。
【0031】
上記図6に示したような三角配置ノズルとした場合は、一般的に、大塊がノズルからの噴流によってノズル間を通過しにくくなる問題が生ずるが、このように、方向性多孔板を底床の多孔板として採用することにより、各開口部出口における噴流空気の流れを傾斜させ、当該多孔板出口(流動床出口)までの流動線速を上げて大塊を速く通り抜けさせることが可能である。
【0032】
本発明の造粒方法は、本発明の造粒器を用いて、図1に示す製造工程に従って実施することができる。本発明の製造方法において造粒器1の運転条件自体は、本発明で規定する点以外は、噴流管方式の場合と同様に、例えば特許文献4〜6に記載されている従来公知の方法を参照して実施できる。すなわち高圧スプレーノズル方式の造粒器の運転条件は、例えば、特許文献5に記載されるように、高圧空気を補助気体として用いた原料液噴射ノズル600、700および800は20度より小さい角度のものが用いられ、ライン240からノズル600、700および800まわりにそれぞれ供給される補助流体は130Nm/h、補助流体の流速は60〜300m/sec、レベル12(流動床)は0.3〜1.5m、空間60の高さは底床から2m〜10mとすることができる。
【0033】
また、噴流床44一個あたりの原料液フィード量は0.2〜1.2t/h、噴流床44一個あたりの空気量は300〜700Nm/h、噴流流速は15〜150m/sである。
一方、流動床12に関し、流動線速は好ましくは2.0〜3.5m/s、また、レベル12(流動床)の高さは、通常、静止状態において0.1〜1.0m、流動状態において0.3〜1.0mが選択される。
【0034】
図12は、本発明の好ましい態様の流動層(流動床)高600mmと400mmにおける流動層(流動床)損失圧力(ΔP)[mmHO]と流動空気線速[m/s]の関係を実測した結果を示すグラフである。
一般的な装置、配管の場合、流速が上がるほど圧力損失も増すのであるが、図12に示すように、流動床では、流動用空気の線速を上げると圧力損失が下がる傾向にあることが分かる。一方、流動床の高さが高いほど圧力損失は大きくなるが、本発明では、図示されるように、流動床高が高くとも、線速を上げることで圧力損失をむしろ下げることができることに着目し、前述の三角配置による流動床面積の最小化と、この流動床における空気線速と圧力損失の特殊な関係を組み合わせることで、空気量を増やすことなく、線速を上げ、より深い流動床においても、少ないエネルギー量で流動床が安定でき、良好な粒子形成が可能となる。流動床をより深くすることのメリットとして、ノズルから上向きに噴霧される液滴が流動床を素通りすることを防げることが挙げられる。流動床が浅い場合、ノズルから噴霧された液滴の一部が流動する粒子に付着することなく、上方に抜け、そのまま固化してダストになり、造粒効率が低下することになる。
【0035】
なお、造粒器内における流動条件について、簡単に述べる。図2、図4に示したように、造粒器の底部の流れ方向の長さをL、当該粒子の流れの巾をM(L>M)、高さをHとすると、内容積Vは、これらの積となり、通常L/Mは、2〜4が経験的に選択されている。(なお、前記仕切り壁100、101を設けることで従来の形状より細長い形状となる。VとHを一定とすると、L/Mは、10〜40が選択される。)
【0036】
また、装置の混合特性を表すものとして、装置の混合特性をN個の等容積の完全混合槽の直列結合で近似する完全混合槽列モデルがある。当該モデルによると、Nの数が多いほど、流れは逆混合の無い押出流れに近づき、各粒子の滞留時間は、狭い分布を持つことが知られている。また、各槽を区切らなくても、全体として特定の細長い形状にすれば、各槽に区切ったものと同様の効果があり、各粒子の滞留時間分布が狭くなることも知られている。なお、上記Nの数を増やすには、特定の細長い形状がより好ましいが、特に、多孔板に開孔(開口)された孔を通過する空気の流れ方向が、垂直軸に対し粒子の流れ方向に角度を有するように構成すれば(方向性多孔板)、粒子は流れ方向に、すなわち、造粒器の出口に向かって一様に進み、逆混合が少ない押出流れに近似するものとなる。したがって、この点からも方向性多孔板を採用することにより、滞留時間分布の狭い、本発明の目的をより良く達成できる造粒器を形成することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
参考例1
図1と同じフローに従った、日産2000トンの尿素造粒設備を用いて尿素粒子を形成した。造粒器1には種尿素粒子がライン30から供給される。空気が、ダクト24を介して供給され、噴流床44で毎秒20メートルの流速で、上向きに噴出する。この上向きの空気流れが種粒子を持ち上げ、噴流床を形成する。同時に、別の空気がライン23を介して低床9の下部に供給され、低床孔を通過後、毎秒1.9〜2.2メートルの速度で流動床内を上昇する。この空気流が種粒子を流動させ、流動床を形成する。濃縮装置21を出た95%尿素水溶液がポンプ22で1.2MPaGに昇圧され、ノズル一本あたり毎時1.3トン(6,7,8で示されるが、実際の数は多い)で造粒器1内の噴流床44に上向きに噴霧され、周囲を流動する種粒子の表面に付着し、水分の蒸発、尿素の固化が起こる。この尿素の固化熱は同時に起こる水分の蒸発により、効率よく除去される。種粒子は造粒器内を入口から出口(図1の左から右)に移動する間に、噴霧された尿素液の固化により、徐々に成長する。造粒器内で成長した尿素粒子はライン25を介して排出され、フルイ13にて製品サイズ、小粒サイズ、大粒サイズに分かれる。製品サイズの尿素粒子は製品として払い出される。小粒サイズの粒子は種粒子として造粒器に返される。大粒サイズの粒子は、粉砕器15にて粉砕され、種粒子として、小粒サイズと一緒に造粒器1に供給される。造粒器1の上部から排出される尿素の微粒子(ダスト)を含む空気(ライン38)は、ダスト捕集装置16で尿素水溶液と接触、洗浄されたのち、大気放出される。捕集された尿素ダストは尿素水溶液となって、ライン35を介して濃縮装置21に送られる。この方法で製造、造粒された製品14を分析し、不定型品尿素の割合を調べたところ、55質量%であった。結果を表1に示す。また、表1には、噴流空気流速、流動空気、流動層高を併せて示した。
【0039】
参考例2
参考例1と同じフローの、日産1700トンの尿素造粒装置で、流動床内の空気流速のみ秒速2.4〜2.5メートルに変更して尿素粒子を造粒した。製品14の不定形品尿素の割合を調べたところ、表1に示すとおり、36質量%であり、参考例1に比べ、著しい減少が見られた。
【0040】
【表1】

【0041】
比較例1
日産2000トンの造粒器の98本のノズルを、一列7本の噴流管ノズル14列で四角配置した。この場合、低床の寸法は3.3m×7.1mであった。このときの流動空気線速、流動空気温度、流動空気流量、流動層高、流動層圧力損失、造粒器低床面積、流動層体積を表2に示す。
【0042】
実施例1
噴流管ノズルを三角配置した結果、低床の寸法は3.3m×6.68mとなり、ノズル列数は15列であった。流動空気線速等を比較例1と同様に表2に示した。表2に示すように、実施例1では、小型化と列数増加を同時に実現できた。
【0043】
実施例2
日産3000トンの造粒器の噴流管ノズルを三角配置にし、かつ間隔を狭め、面積効率を上げた。流動空気線速等を比較例1と同様に表2に示した。表2に示すように、実施例2では、比較例1に比べ、日産1トンあたりの低床面積を約21%削減でき、かつ流動空気線速を秒速2.0メートルから2.5メートルに増加できた。
【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、造粒原料液噴射用ノズルの配置を三角配置とすることにより、
(a)従来の四角配置ノズルの場合と比較して同じ本数のノズルを設置する場合は、底床面積が少なくてすむため、造粒装置が小型化でき、ブロワ、ダクト等もより小型のものが使用可能であり、
【0046】
(b)また、特に装置を大型化した場合でも、流動床の流れに対して直角方向における温度分布や粒度分布を均一化することが可能となり、さらに、
【0047】
(c)空気の流動線速を十分に上げて、流動床、噴流床の安定性を確保しても、空気量が過大に増大しないので、ブロワ等の消費エネルギーが大幅に増大することはない、という効果を奏するものであり、その産業上の利用可能性はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来技術による尿素等の製造工程を示した、一実施形態を示す説明図である。
【図2】流動床型の造粒器(流動床/噴流床型造粒装置)で高圧空気スプレー方式のもの模式的に示した正面図である。
【図3】流動床型の造粒器(流動床/噴流床型造粒装置)で高圧空気スプレー方式のものを模式的に示した側面図である。
【図4】流動床型の造粒器(流動床/噴流床型造粒装置)で高圧空気スプレー方式のものを模式的に示した平面図で、四角配置ノズルのものを示す。
【図5】噴流床と流動床を組み合わせた造粒器(流動床/噴流床型造粒装置)を模式的に示した平面図で、四角配置ノズルのものを示す。
【図6】噴流床と流動床を組み合わせた造粒器(流動床/噴流床型造粒装置)を模式的に示した平面図で、三角配置ノズルのものを示す。
【図7】方向性多孔板の1例の部分拡大平面図である。
【図8】方向性多孔板の1例の断面図である。
【図9】本発明の好ましい態様の流動層(流動床)損失圧力と流動空気線速の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1 造粒器
2 下部空気供給管
3、4、5 空気供給管
6、7、8、600、700、800 ノズル
9 底床
10 舞い上がった伏態
11 空間
12 レベル(流動床)
13 フルイ
14 製品
15 粉砕器
16 ダスト捕集装置
17 尿素
21 濃縮装置
22 ポンプ
23〜43、240 ライン
44 噴流床
51 ノズル
52 底床(多孔板)
53 邪魔板
61 多孔板
62 開口部(開孔部)
60 空間
70 成長した製品
200、201 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔板を底部とする造粒部の底床と、流動用空気を当該造粒部の当該底床に供給する空気供給管と、当該多孔板からなる底床で開口するようにして設けられた高圧空気を補助気体として用いた溶融状、溶液状、又はスラリー状の造粒原料液噴射用ノズルとを有してなる造粒装置であって、
前記底床における当該ノズルの配置が三角配置として構成されており、供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから造粒原料液を噴射して造粒するようにし、
前記供給された造粒部中の核に対して前記噴射用ノズルから造粒原料液を噴射して造粒するにあたり、前記多孔板は、開口された孔を通過する流動用空気の流れ方向が、垂直軸に対し粒子の流れ方向に傾斜角度を有するように開口されていることを特徴とする造粒装置。
【請求項2】
前記多孔版は断面において波状にされ、その前記粒子の流れ方向に向かって下り坂となる傾斜部分に前記孔が開口されていることを特徴とする請求項1に記載の造粒装置。
【請求項3】
前記ノズルの三角配置が、
複数のノズルが前記粒子の流れの方向に直交して並列する複数条の列をなし、互いに隣接するノズル列におけるノズルが、前記粒子の流れの方向にみて重ならないように配置された千鳥配置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の造粒装置。
【請求項4】
前記流動用空気の流動線速が2.0〜3.5m/sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の造粒装置。
【請求項5】
前記三角配置された前記噴射用ノズルのピッチが0.2〜0.5mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の造粒装置。
【請求項6】
尿素又は尿素・硫酸アンモニウムを造粒することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の造流装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の造粒装置を用い、供給された造粒部中の核に対して前記三角配置された噴射用ノズルから造粒原料液を噴射し、かつ前記傾斜角度を有する開口から空気を供給して造粒することを特徴とする造粒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−167415(P2010−167415A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23577(P2010−23577)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願2007−282040(P2007−282040)の分割
【原出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000222174)東洋エンジニアリング株式会社 (69)
【Fターム(参考)】