説明

造粒装置

【課題】搬送手段を用いなくても造粒および粒状物の搬送が可能で、形状の安定した造粒物を得ることができ、所望の造粒物を容易に生成することができるようにする。
【解決手段】 外周面に突起部材10、11が立設された複数の回転軸8、9を一端に被造粒物を投入する投入口41と、他端に生成された粒状物を排出する排出口42を設けた造粒部筐体22に収容し、造粒部筐体22を排出口42の側が高くなるように傾斜して配置する支持部材(23〜29)を有し、投入口41から投入された被造粒物が突起部材10、11により混練され、生成された粒状物が成長しつつ造粒部筐体22内を排出口42方向に搬送され、サイズが一定以上に成長した粒状物を優先的に排出口42から排出される。また、支持ロッド長調節装置26で造粒部筐体22の傾斜角度を調節することにより、排出される粒状物のサイズを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練湿灰等の被造粒物を造粒し、粒状物を生成して排出する造粒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、混練湿灰等の被造粒物を造粒する技術が灰固化装置などで利用されている。この種の灰固化装置は、ゴミ焼却場でゴミを焼却する際に発生する粒度の細かい飛灰にセメントと水(加湿水)あるいはバインダー(粒子間を結合して造粒を促進する薬剤)とを加えることにより飛灰を造粒、固形化するもので、これにより飛灰が飛散することなくゴミ処分場まで運搬し、さらに埋め立てに供することができるので、このようにして飛灰の飛散や飛灰に含まれる有害重金属の溶出等による二次公害を防ぐことができる。
【0003】
従来の灰固化装置などにおける造粒機構は、たとえば下記の特許文献1に開示されたもので、造粒材を混練して不完全固化粒体を排出口から排出する飛灰固化混練機と、飛灰固化混練機の排出口の下方に配設され固化粒体を搬送し乍ら養生するための養生コンベアと、飛灰固化混練機の排出口と養生コンベアとの間に配設されたカバーと、飛灰固化混練機の排出口下方に造粒材担持体を配設し、造粒材担持体はその上面が低所より高所へ移動可能な無端の造粒ベルトが少くとも斜めに間隔をおいて配した上下のプーリに巻掛けられ、何れかのプーリ、又は両プーリが駆動装置に連結されている固化粒体造粒器であって、飛灰固化混練機の排出口との間の高さ方向の距離を調節できる支持手段に支持され前記カバー内に配設された固化粒体造粒器と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−277488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のような従来の造粒装置では、適切な形状、サイズの造粒物を得るために、造粒ベルトの長さや傾斜を変更する必要があり、その調整作業が容易ではない、という問題があった。
【0006】
しかも、上記のように造粒材が十分に造粒ベルトに滞留するように調整しても、造粒物毎に滞留していた時間が異なってしまうため、生成される造粒物の形状やサイズが不揃いであり、形状の安定した造粒物を得ることが困難であった。
【0007】
また、上記従来の造粒装置は、飛灰固化混練機で造粒した造粒物を次の処理位置まで別途、搬送する搬送手段が必要であった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、特に造粒した造粒物を搬送する搬送手段を用いなくても次の処理位置まで造粒物を搬送することができ、また、形状の安定した造粒物を得ることが可能で、簡単な調整作業によって、あるいは自動制御によって所望の形状、サイズの造粒物を容易に生成することができる造粒装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明においては、粉体を主体とする被造粒物を造粒し、粒状物を生成して排出する造粒装置であって、それぞれ外周面に複数の突起部材が立設された複数の回転軸と、前記回転軸を収容し、一端に前記被造粒物を投入する投入口と、他端に生成された粒状物を排出する排出口を設けた造粒部筐体と、前記造粒部筐体を前記排出口の側が前記投入口より高くなるように傾斜させて配置する傾斜支持部材とを有し、前記投入口から投入された前記被造粒物が前記複数の回転軸の回転駆動で回転する前記複数の突起部材により混練され、それにより生成された粒状物が成長しつつ前記造粒部筐体内を前記排出口の方向に上昇するよう搬送され、サイズが一定以上に成長した粒状物を優先的に前記排出口から排出する構成を採用した。
【0010】
あるいはさらに、前記傾斜支持部材が、前記造粒部筐体の傾斜角度を調節する調節手段を含み、該調節手段によって前記造粒部筐体の傾斜角度を調節することにより、前記排出口から優先的に排出される粒状物のサイズを選択する構成を採用した。
【0011】
あるいはさらに、排出される粒状物のサイズを検出する検出手段を有し、検出した粒状物のサイズに応じて、前記傾斜支持部材により決定される前記造粒部筐体の傾斜角度を調節する、または、前記複数の回転軸の回転数を調節することにより、前記排出口から優先的に排出される粒状物のサイズを自動制御する構成を採用した。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を採用することにより、本発明によれば、前記造粒部筐体と、その中で回転駆動される突起部材が立設された前記回転軸から成る造粒部は造粒手段と搬送装置を兼ね、特に造粒した造粒物を搬送する搬送手段を用いなくても次の処理位置まで生成された造粒物を搬送することができ、また、簡単安価な構成により形状の安定した造粒物を生成、排出することができる、という優れた効果がある。
【0013】
また、前記調整手段によって、前記造粒部筐体の傾斜角度を調節することにより、排出口から優先的に排出される粒状物のサイズを選択することができ、簡単な調整作業によって所望の形状、サイズの造粒物を容易に生成することができる、という優れた効果がある。
【0014】
さらに、排出される粒状物のサイズを検出し、検出した粒状物のサイズに応じて傾斜支持部材により決定される前記造粒部筐体の傾斜角度を調節する、または、前記複数の回転軸の回転数を調節することにより、排出される粒状物のサイズを自動調節することができ、造粒装置を極めて容易に運用できる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を採用した造粒装置の構成を側面および上面から示した説明図である。
【図2】図1中の矢印Aによる矢視図である。
【図3】図1および図2の構成において、粒状物のサイズを自動調節するための制御回路の一例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
<基本構成および動作>
図1および図2は、実施例の造粒装置の構成を説明するものである。図1は、本発明を採用した造粒装置の構成を側面(図下部)および上面(図上部)から示した説明図で、特に図1の下部は図1の上部に示される後述の回転軸8、9の中心線から回転軸8の方向を見た状態を示している。また、図2は図1中の矢印Aによる矢視図である。
【0018】
図1において、1aはフレームで、このフレーム1a上に、造粒装置のフレーム以外の構成部材が組み付けられて支持される。
【0019】
フレーム1a上には、造粒装置の造粒部筐体(以下、単に筐体ともいう)22が配置される。筐体22は、内部に後述のロッド10、11を有する回転軸8、9を収容し、内部で造粒物の混練を行なう容器として機能する。
【0020】
造粒部筐体22の一端の上部(図1右側)には、造粒すべき粉体(たとえば飛灰など)や薬剤を投入する投入口41と、粒子間を結合して混練、造粒を促進するための薬液(加湿水、バインダー薬液など)を不図示の供給装置(ポンプや下記のような定量供給を行なうための落下式タンクなど)から供給するための注入口41’が開口している。また、造粒部筐体22の他端下部(図1左側)には、造粒物を排出するための排出口42が開口している。
【0021】
これら投入口41、注入口41’を介して行なう造粒すべき粉体や薬剤、薬液や加湿水の投入は、たとえば次のようにして制御することができる。本実施例においては、造粒すべき粉体や薬剤、薬液や加湿水は定量供給を基本とする。
【0022】
(1)粉体の定量供給
造粒すべき粉体の定量供給には、低コストで実施する場合は、市販のロータリーフィーダやテーブルフィーダなどを使用することができる。この場合、粉体は、空気との混合比でかさ密度(容積)が変化するため、造粒性を高めるためには、これらの容積ベースでの定量供給ではなく、質量ベースの定量供給する必要がある。質量ベースの定量供給には、市販のロータリーフィーダやテーブルフィーダなどと、市販の質量計測するロードセル検出器と定量供給するための演算器の組合せを用いて制御することができる(いわゆる減量平衡型(ロスインウェイト式)粉粒体の定重量供給装置)。
【0023】
(2)添加液の定量供給および添加水量の調整
添加液(水やバインダー)は、市販の定量ポンプを使用すると、ほぼ定量供給が可能であるが、さらに定量性を高める場合は、同一ラインに、市販の流量計を設置し、その測定流量値と設定流量値の偏差でフィードバック制御すればよく、水もバインダーも非圧縮体のため、容積ベースの定量供給で質量ベースの定量供給が可能である。出願人が実施した粉体数種類を用いた実験では、含水率(=水分/(固形分+水分)×100)は10%強前後の値が適性水分量であったが、この数値は対象粉体により変化し、微調整する必要がある。このため、たとえば、造粒物の水分を市販の水分計でモニターしながら、添加水量をフィードバックする制御を行なってもよい。
【0024】
なお、飛灰処理の場合は、廃棄物処理のため処理コストが優先され、極力バインダーは添加せずに造粒することも多く、添加するとしても低コストのセメントが主に用いられる。これに対して、製鉄、非鉄、肥料業界での造粒用途(各種粉体処理)ではコストより造粒強度や粒径などが重要視されるため、廃糖蜜、タール、リグニンなどの各種バインダーが用いられる。
【0025】
なお、詳しく図示していないが、造粒部筐体22は、その両端にそれぞれの中央部に形成された孔に回転軸8、9の両端部を挿通させた上、フレーム1a上に固定される。
【0026】
投入口41の上部、また、排出口42の下部には、不図示の外部のベルトコンベアなどの搬送手段を配置する。これらの搬送手段は、造粒すべき粉体と薬剤の投入、および排出された造粒物の搬出のために用いられる。
【0027】
本実施例では、排出口42の上部には、ビデオカメラ100を配置してある。このビデオカメラ100は、排出口42直前の造粒部筐体22の底面上を移動する被造粒物を撮影できるような向きで不図示のマウント部材を介して造粒部筐体22などに固定される。また、造粒部筐体22の上面には、ビデオカメラ100が排出口42直前の造粒部筐体22の底面の所定部位を撮影できるよう、ビデオカメラ100の画角に応じたサイズの開口を必要に応じて設けておく。
【0028】
ビデオカメラ100はCCDカメラなどから成り、その撮影画像は造粒動作の様子を監視できるよう、不図示のモニタなどに表示することができる。
【0029】
また、ビデオカメラ100の撮影画像は、後述の自動制御機構に入力し、造粒動作の自動制御に用いることができる。
【0030】
造粒部筐体22の断面は図2に示すように、その下部においてはそれぞれ回転軸8、9のロッド10、11の回転範囲を囲むように形成された2つの円筒を組み合わせた形状、上部は楕円形状となっている。造粒部筐体22の上部および下部は、金属などの材料を曲げないし絞り加工などによって形成し、ボルト締めなどにより相互に固着し、これにより造粒部筐体22を図示のような断面形状の容器に構成する。
【0031】
フレーム1a上には軸受スタンド2及び3が固定されており、軸受スタンド2には軸受4、5が固定され、軸受スタンド3には軸受6、7が固定されている。軸受4、6により回転軸8の両端部が回転可能に支持され、また、軸受5、7により回転軸9の両端部が回転可能に支持されている。回転軸8、9は、フレーム1aから互いに同じ高さの所で相手の軸方向に沿って平行に並んで水平に支持されている。なお、回転軸8、9は、フレーム1aから厳密に同じ高さではなく、ほぼ同じ高さに配置するのでもよく、また、フレーム1aに対して水平でなくてほぼ水平でもよい。
【0032】
軸受スタンド3近傍(内側)の位置において、回転軸8、9にはギヤ12、13が固定されており、これらギヤ12、13は互いに噛み合っている。
【0033】
また、モータ17と減速機16のユニットがフレーム1a上に配置されている。減速機16の出力軸16aは軸継手14を介して回転軸8の右端部に連結されている。モータ17の回転駆動力が減速機16、軸継手14を介して回転軸8に伝達される。これにより回転軸8が駆動軸として回転駆動され、さらにその回転駆動力がギア12、13を介して回転軸9に伝達される。これにより回転軸9が従動軸として回転軸8に従動して回転軸8と逆方向に回転するようになっている。なお、モータ17の出力や回転数の条件によっては、減速機16は省略してもよい。
【0034】
一方、回転軸8、9の中間部は両端部より径が大きな大径部として形成されている。各回転軸8、9の大径部はそれぞれ同じ径となっている。回転軸8の大径部の外周面には突起部材として複数のロッド10が立設され、また、回転軸9の大径部の外周面にも突起部材として複数のロッド11が立設されている。ロッド10、11は、同様の丸棒状であり、造粒部筐体22に投入された粉体と薬剤の混合物を混練するためのものである。なお、ロッド10、11の代わりにたとえば長方形の板状など他の形状(たとえばパドル状)の突起部材を設けてもよい。
【0035】
本実施例においては、造粒動作時にロッド10、11の混練動作に伴ない、回転軸8、9の回転に伴ってセルフクリーニングが行われるようになっている。すなわち、複数のロッド10、11どうしが互いに相手の回転軸9、8の大径部の外周面およびロッド11、10に付着した固形物を掻き落とすように構成する。このため、本実施例ではロッド10、11の配置などが以下のように構成される。
【0036】
ロッド10は、1条の螺旋形の線に沿って並ぶように配置されている。たとえば、各ロッド10は、それぞれ回転軸8の軸方向に所定の等距離(L)隔てて、また周方向に全周の360°を8等分する45°の角度ピッチで螺旋状に並ぶように配置されている(図2参照)。ロッド11も、基本的にはロッド10と同様に、回転軸9の軸方向に等距離(ただしロッド10のピッチの1.25倍の1.25L)隔てて1条の螺旋形の線に沿って並ぶように配置されている。ただし、周方向には360°を10等分する36°の角度ピッチで螺旋状に並ぶように配置されている。また、ロッド11が並ぶ螺旋はロッド10の並びが形成する螺旋とは逆螺旋となっている。なお、ロッド10、11は、互いに回転軸8、9の軸方向に垂直な方向に対向する位置に配置される。
【0037】
また、回転軸8、9は、回転軸8、9が回転するにつれてロッド10、11の先端が対向する回転軸の外周面に近接するような位置に配置される。
【0038】
また、ギア12、13のギア比の設定によって、回転軸8、9は互いに不等速で回転される。ここで、回転軸8、9の単位時間あたりの回転数比(ギア12、13のギア比の逆数の比)は、上記角度ピッチの比と同比、ここでは45°:36°つまり5:4とする。このような構成により、ロッド10、11どうしが衝突することがなくなる。また、ロッド10の並びが形成する螺旋ピッチとロッド11の並びが形成する螺旋ピッチの比は、回転軸8、9の回転数比(5:4)と逆比、つまり1:1.25となり、回転軸8、9の軸方向の搬送速度は同じになる。
【0039】
なお、造粒条件(たとえば生成すべき造粒物のサイズなど)に応じて、ロッド10、11の配置などの構成は上記のものに限らないことは勿論である。ロッド10、11をそれに沿って並べる螺旋形の線は複数条でもよい。また、上記の角度ピッチの比と回転数比は5:4に限らず、一般的に言うと、Nを2以上の整数としてN:N−1とすればよい。
【0040】
フレーム1aは、図1に示すように基台21上に傾斜支持部材(23〜29)を介して傾斜して支持される。後述するように、本実施例の造粒装置は、フレーム1a上の造粒部筐体22を図示のように傾斜した状態で作動させる。
【0041】
また、この傾斜支持部材(23〜29)は、たとえば次のような構造により、造粒部筐体22の傾斜角度を造粒条件に応じて調節できるよう構成されている。
【0042】
まず、フレーム1aは、好ましくはほぼその重心に近い下面の位置において基台21上の支柱23に対して支軸24を介して回動自在に支持されている。
【0043】
また、図1左方の基台21の上部には他の支柱25が配置されており、支柱25とフレーム1a下部に設けられた溝30の間を可変長の支持ロッド27が結合している。
【0044】
支持ロッド27の上端は、支軸29を介してフレーム1a下部に設けられた溝30と矢印方向に摺動自在に係合し、一方、下端は支軸28を介して支柱25と回動自在に結合している。
【0045】
支持ロッド27の中間部(図1の例では下部)には、支持ロッド長調節装置26が設けられている。支持ロッド27は、たとえばラジオのロッドアンテナと同様に、下部のアウター軸内に上部のインナー軸を収容するような構造とし、インナー軸の突出量を変更することによりその全長を調節できるようにしたものである。
【0046】
支持ロッド長調節装置26は、たとえば支持ロッド27のインナー軸を特定の突出位置で固定するような締付機構から構成する。したがって、支持ロッド長調節装置26の締付機構を緩め、フレーム1aより上の部材の傾斜角度を適宜選択し、支持ロッド長調節装置26の締付機構を締め付けることによって、フレーム1aより上の部材、特に造粒部筐体22の水平面(設置面)に対する傾斜角度が所定の造粒条件にみあった角度となるよう調節することができる。
【0047】
次に本実施例の造粒装置による造粒動作について説明する。造粒動作時には、混練、造粒すべき粉体と薬剤を混合して(あるいは別々に)投入口41から筐体22内に順次投入し、モータ17を駆動する。このような造粒用途では、回転軸8、9が比較的高速で回転するようにモータ17の回転速度を選択する。
【0048】
それにより、回転軸8、9が互いに逆方向に回転してロッド10、11どうしが互いに逆方向に回転する。このロッド10、11の配置形状の場合、回転軸8、9の回転方向は、図1矢印で示した通り装置の上面から見た場合、ロッド10、11が互いに内側に送り込まれる方向とする。
【0049】
投入された粉体は、回転する複数のロッド10、11により連続的に繰り返し打撃されたり加圧されたりして力を加えられ、薬剤と混練される。これにより、筐体22に投入された粉体と薬剤(被造粒物)は除々に、粒状に成長する。
【0050】
ここで、螺旋形の線上に並ぶように配置された複数のロッド10、11がスクリューと同様に作用する。これにより、粒状に成長した粉体と薬剤の混合物は、攪拌されながら回転軸8、9に沿って筐体22中を図1の左方向、すなわち排出口42の方向へ搬送される。
【0051】
このとき、筐体22中での成長した粒状物や、粉体の図1左方への搬送の様相は、粒状物のサイズ(たとえば直径)に応じて異なったものとなる。
【0052】
特に、被造粒物である粉体と薬剤の混合物は混練によって除々に、粒状に成長するが、生成された粒状物のうち、サイズの小さなものはロッド10、11と接触する確率が低く、サイズの大きなものはロッド10、11と接触する確率が高くなり、したがって、生成された粒状物のうちサイズの大きなものがより効率よく図1の左方に搬送される。
【0053】
すなわち、筐体22中に投入された被造粒物の搬送効率は、粒状物のうちサイズの大きな粒状物のほうが、粒状物のうちサイズの小さい粒状物、ないし粉体よりも大きくなる。
【0054】
また、本実施例の造粒装置は、図示のように造粒部筐体22が傾斜、特に、排出口42の側が投入口41より高くなるよう、つまり、粒状物の搬送方向に向かって昇り傾斜で配置されているために、粒状の被造粒物は粒状物に成長しつつ排出口42の方向へ効率よく搬送されるが、粉状の被造粒物は搬送効率が低いため、重力に負けてあまり移動せずに同じ位置に滞留するか、あるいは粒状の被造粒物よりも低速で搬送されつつ混練され、粒状物に成長する。当然ながら、粒状物への成長が進み、粒状物のサイズが大きくなると、これに応じてその搬送効率(搬送速度)が除々に上昇していく。
【0055】
このようにして、造粒部筐体22内を左方に搬送された粒状物は、排出口42まで到達すると、排出口42から落下して排出され、下方に配置された不図示の外部のベルトコンベアで搬出される。
【0056】
したがって、あらかじめ支持ロッド長調節装置26で支持ロッド27の長さを選択することにより、造粒部筐体22の傾斜角度を調節することによって、特定の大きさになった粒状物から優先的に排出口42から落下、排出するように調節することができる。つまり、造粒条件、特に生成、排出すべき粒状物の目的のサイズ(直径)に応じて造粒部筐体22の傾斜角度を選択することにより、特定の大きさの粒状物を排出口42から落下、排出させることができる。
【0057】
一般に、造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を大きく取る(大きく傾斜させる)ことにより、投入された被造粒物の滞留時間が長くなり、排出される粒状物のサイズが大きくなるよう、また、造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を小さく取る(あまり傾斜させない)ことにより、投入された被造粒物の滞留時間が短かくなり、排出される粒状物のサイズが小さくなるよう調節することができる。
【0058】
また、回転軸8、9の回転速度(すなわちモータ17の回転数や減速機16のギア比)を調節することによっても、生成、排出すべき粒状物の目的のサイズ(直径)を選択することができる。
【0059】
以上のようにして、造粒条件、特に生成、排出すべき粒状物の目的のサイズ(直径)に応じて造粒部筐体22の傾斜角度を選択することにより、特定の大きさの粒状物を生成して排出口42から落下、排出させることができる。
【0060】
本実施例の造粒装置では、造粒部筐体22と、その中で回転駆動されるロッド9、10を立設した回転軸8、9から成る造粒部は造粒手段と搬送装置を兼ねており、造粒部筐体22の長さに渡って粒状物を搬送する機能があるため、この造粒部筐体22の長さ分については特別に他の搬送手段を設ける必要がない。
【0061】
また、本実施例の造粒装置では、規則的に配置された回転軸8、9上のロッド10、11によって被造粒物が均等に混練されて粒状物に成長し、搬送、排出されるため、たとえば従来のベルト式などの造粒装置において、粒状物の転動の様相が不確定なものとなって排出される粒状物のサイズが不揃いになるという問題がなく、また、造粒部筐体22の傾斜角度を選択することによって、また、回転軸8、9の回転速度(すなわちモータ17の回転数)を調節することによって、排出される粒状物のサイズを所望の大きさにとった上、そのサイズによく揃った粒状物を排出口42から優先的に排出させることができる。
【0062】
ところで、上記造粒動作中に、回転軸8、9は、5:4の回転数比で互いに不等速で回転している。このため、回転軸8、9の軸方向に同じ位置で対向するロッド10、11どうしは、回転に伴って互いに接近、離間する動作を繰り返す。これにより、互いに固形物(被造粒物)が付着している場合は、互いに相手に付着した固形物(被造粒物)を掻き落すことができる。上記回転数比とロッド10、11の先述した角度ピッチ比が同じであることにより、ロッド10、11どうしが衝突することはない。また、回転軸8、9の回転に伴ってロッド10、11の先端部が互いに相手の回転軸9、8の大径部の外周面の近傍を通過する。このため、回転軸8、9の大径部の外周面に固形物(被造粒物)が付着していたらロッド11、10により掻き落とすことができる。このようにしてセルフクリーニングを行うことができる。したがって、固形物(被造粒物)が水分を含むなどして付着性が強い場合でも造粒動作を支障なく、効率良く行うことができる。
【0063】
以上のようにして、本実施例の造粒装置によれば、サイズ(径)が一定以上に成長した粒状物を優先的に取り出して排出する動作を効率よく行うことができる。しかも本実施例の造粒装置の構成は簡単で安価に実現することができる。
【0064】
なお、以上に説明した実施例では、2本の回転軸8、9を設けるものとしたが、3本以上の複数本設けてもよい。
【0065】
また、以上では、アンテナ状の支持ロッド27の全長を調節、締め付け固定する支持ロッド長調節装置26を用いてフレーム1a上の造粒物筐体22の傾斜角度を調節するものとしたが、フレーム1a上の造粒物筐体22の傾斜角度の調節手段としては複数関節を有するアーム式の支持手段を設け、その関節の角度を調節することにより造粒物筐体22の傾斜角度を調節する、など任意の調節手段を用いてもよいのはいうまでもない。
【0066】
<造粒動作自動制御>
以上では、造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度、および、モータ17(すなわち回転軸8、9)の回転数を調節することにより、排出される粒状物のサイズを調節できることを示した。これらの制御は、手動操作により支持ロッド長調節装置26を介して造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節し、また、モータ17の回転数を選択することにより行なうことができるが、排出される粒状物のサイズを検出し、検出した粒状物のサイズに応じて造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節し、また、モータ17の回転数を選択することにより排出される粒状物のサイズを自動調節することもできる。
【0067】
図3に、このような自動制御を行なうための制御系の構造を示す。
【0068】
図3の構成は、図1に示したビデオカメラ100の出力画像を画像解析手段104で解析し、その結果に応じてCPU101がドライバ105を介して角度アクチュエータ26aを介して造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節し、また、モータ17の回転数を制御するものである。
【0069】
CPU101にはROM102、RAM103が接続されており、CPU101はROM102に格納されたプログラムに応じて、RAM103をワークエリアとして制御動作を実行する。
【0070】
また、CPU101には、不図示のディスプレイおよびキーボードなどからなるユーザーインターフェース手段を接続しておき、このユーザーインターフェース手段から、少なくとも排出すべき粒状物のサイズの目標値を入力設定できるようにしておく。また、このディスプレイには、ビデオカメラ100の撮影画像をリアルタイムでモニタ表示するようにしてもよい。
【0071】
ここで角度アクチュエータ26aは、造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節するためのアクチュエータで、不図示のモータなどから構成する。たとえば、以上の説明では、造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節するには支持ロッド長調節装置26、および支持ロッド27を用いた手動調節機構を例示したが、たとえば支持ロッド27をラックに、支持ロッド長調節装置26をこのラックと噛合して上下動させるピニオンギアに置換し、このピニオンギアを角度アクチュエータ26aとしてのモータ(不図示)により駆動し、また、任意の位置で停止させるようにすれば、角度アクチュエータ26aを介して造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節することができる。
【0072】
なお、角度アクチュエータ26aは、モータのみならず、駆動機構次第ではソレノイドなど他のアクチュエータに変更できることはいうまでもない。
【0073】
画像解析手段104は、ビデオカメラ100の出力する画像信号を入力し、撮影されている画像から排出される粒状物のサイズを検出できるものとする。画像解析手段104はハードウェア的に構成するか、またはCPU101のプログラムとしてソフトウェア的に構成することができる。すなわち、画像解析手段104(あるいはさらにCPU101)は、排出される粒状物のサイズの検出手段を構成する。
【0074】
CPU101は、画像解析手段104の検出出力である粒状物のサイズを時々刻々取り込み、検出した粒状物のサイズに応じて、所定の態様で角度アクチュエータ26aを介して造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節し、あるいはモータ17の回転数を制御する。このとき、たとえば、造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度のみを調節してもよいし、また、モータ17の回転数を制御してもよい。また、造粒部筐体22の特定の傾斜角度と、モータ17の特定の回転数の組合せをROM102などにテーブル化しておき、検出した粒状物のサイズに応じて、造粒部筐体22の特定の傾斜角度とモータ17の特定の回転数の組合せを選択するようにしてもよい。
【0075】
このとき、ユーザーインターフェース手段から設定された排出すべき粒状物のサイズの目標値が参照され、検出された粒状物のサイズが目標値よりも大きければ排出すべき粒状物のサイズが小さくなるように、また、検出された粒状物のサイズが目標値よりも小さければ排出すべき粒状物のサイズが大きくなるように造粒部筐体22の傾斜角度および(または)モータ17の回転数をCPU101により選択する負帰還制御を行なう。
【0076】
以上のような構成により、排出される粒状物のサイズを検出し、検出した粒状物のサイズに応じて造粒部筐体22の水平面からの傾斜角度を調節し、また、モータ17の回転数を選択することにより排出される粒状物のサイズを自動調節することができ、造粒装置を極めて容易に運用できるようになる。以上のような自動制御機構は、造粒装置の製造コストがある程度かかっても製造効率や運用の容易性が重視される、たとえば、各種の粒状材を製造するような工場プラントにおいて有効に用いることができる可能性がある。
【符号の説明】
【0077】
1a フレーム
2、3 軸受スタンド
4〜7 軸受
8、9 回転軸
10、11 ロッド
12、13 ギヤ
16 減速機
17 モータ
21 基台
22 筐体
23、25 支柱
24、28、29 支軸
26 支持ロッド長調節装置
27 支持ロッド
30 溝
41 投入口
41’注入口
42 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を主体とする被造粒物を造粒し、粒状物を生成して排出する造粒装置であって、
それぞれ外周面に複数の突起部材が立設された複数の回転軸と、
前記回転軸を収容し、一端に前記被造粒物を投入する投入口と、他端に生成された粒状物を排出する排出口を設けた造粒部筐体と、
前記造粒部筐体を前記排出口の側が前記投入口より高くなるように傾斜させて配置する傾斜支持部材とを有し、
前記投入口から投入された前記被造粒物が前記複数の回転軸の回転駆動で回転する前記複数の突起部材により混練され、それにより生成された粒状物が成長しつつ前記造粒部筐体内を前記排出口の方向に上昇するよう搬送され、サイズが一定以上に成長した粒状物を優先的に前記排出口から排出することを特徴とする造粒装置。
【請求項2】
前記傾斜支持部材が、前記造粒部筐体の傾斜角度を調節する調節手段を含み、該調節手段によって前記造粒部筐体の傾斜角度を調節することにより、前記排出口から優先的に排出される粒状物のサイズを選択することを特徴とする請求項1に記載の造粒装置。
【請求項3】
前記複数の回転軸は互いには逆方向に回転される第1と第2の回転軸からなり、第1の回転軸に立設された突起部材は第1の角度ピッチずらして螺旋状に配置され、第2の回転軸に立設された突起部材は第2の角度ピッチずらして第1の回転軸の突起部材が形成する螺旋状とは逆螺旋状に配置され、前記第1と第2の角度ピッチの比は第1と第2の回転軸の回転数比と同比で、第1の回転軸の突起部材が形成する螺旋ピッチと第2の回転軸の突起部材が形成する螺旋ピッチの比は第1と第2の回転軸の回転数比と逆比になっていることを特徴とする請求項1に記載の造粒装置。
【請求項4】
前記第1と第2の回転軸は、各回転軸が回転するにつれて各回転軸に立設された突起部材の先端が、対向する回転軸の外周面に近接する位置に配置されることを特徴とする請求項3に記載の造粒装置。
【請求項5】
排出される粒状物のサイズを検出する検出手段を有し、検出した粒状物のサイズに応じて、前記傾斜支持部材により決定される前記造粒部筐体の傾斜角度を調節することにより、前記排出口から優先的に排出される粒状物のサイズを自動制御することを特徴とする請求項1に記載の造粒装置。
【請求項6】
排出される粒状物のサイズを検出する検出手段を有し、検出した粒状物のサイズに応じて、前記複数の回転軸の回転数を調節することにより、前記排出口から優先的に排出される粒状物のサイズを自動制御することを特徴とする請求項1に記載の造粒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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