説明

造血幹細胞およびその子孫の検出およびその使用

【課題】複数の細胞型、特に造血幹細胞(HSC)およびHSC由来細胞の特異的集団の同定方法、および幹細胞およびその子孫の分離および使用の方法を提供する。
【解決手段】HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンの二糖繰り返し配列の少なくとも1個を有する炭水化物配列またはその同等物の少なくとも1個の存在を検出する工程;およびその配列またはその同等物を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫の同定方法、HSCまたはその子孫を単離するためのHSCまたはその子孫の細胞集団を濃縮方法、前記方法を用いて得られた細胞調製物、およびそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の細胞型、特に造血幹細胞(HSC)およびHSC由来細胞の特異的集団の同定に関する。本発明は、幹細胞およびその子孫の分離および使用の方法も提供する。幹細胞およびそれらの子孫の発育を調節する方法も得られる。
【0002】
緒言
その細胞の濃縮集団を得る努力の中で、特異的細胞型を同定することに大きな関心が寄せられている。濃縮集団を保持することよって、特異的細胞型がより明確に理解され、移植、遺伝子療法、白血病のような癌、乳癌を含む新生物性癌をはじめとする疾患の処置、または組織および皮膚の修復を含む様々な状況での使用が得られる。
【0003】
幹細胞は、最終的に植物または動物の様々な部分に寄与する細胞を生成する。幹細胞の一種が、造血幹細胞である。
【0004】
造血幹細胞は、非常に様々な範囲の活性を担うことができる。それらは、リンパ球、骨髄球および赤血球をはじめとする数種の系列に分裂される。B細胞およびT細胞を含むリンパ球系列は、抗体を産生し、細胞免疫を調節して、血中の疾患誘導性生物のような異物を検出する。単球、顆粒球および巨核球をはじめとする骨髄球系列は、血液の異物を監視し、新生物細胞から防御し、異物を取り除いて、血小板を産生する。赤血球系列は、酸素を運搬する赤血球細胞を包含する。
【0005】
造血幹細胞は、自己再生能、多系列の増殖および分化能、ならびに造血およびリンパ球系を長期間支持する能力を有している。それらは、主として可能性がより限定された細胞を含む造血前駆細胞コンパートメント(haematopoietic progenitor compartment)(HPC)内で亜集団を形成する。HPC細胞は、主として骨髄ストローマ内に存在し、そこではストローマ細胞と、細胞外マトリックス成分と、サイトカインとの複雑な相互作用によって、細胞増殖および分化が調節されている。HPC細胞は、様々な生理学的、病理学的および医原的環境下の血中にも存在する。HPCは、骨髄または末梢血から採取されることができ、消耗的(即ち破壊的)線量の化学療法および/または放射線療法を受けた患者に静注することによって、骨髄を再度生着させて造血および免疫を再生させる。こうしてHSC細胞移植は、血液および固形の悪性疾患、骨髄不全、ならびに造血、免疫または代謝の先天性異常の患者の管理において、相当な臨床的用途を持つ。
【0006】
こうして、自家HPC細胞を供給することが必要とされているが、その自家HCP細胞は、HPC細胞集団が化学療法および/または放射線療法によって枯渇された患者に再導入される前に、インビトロで培養されてもよい。そのようなHPC細胞の集団は、自然に正常レベルを回復するのに数週または数ヶ月かかる場合がある。患者自身からの自家細胞を使用すれば、移植細胞の拒絶が避けられる。
【0007】
インビボでは、HPC細胞は一般に、骨髄ストローマ内に存在する。インビトロでのHPC細胞は、より分化した前駆細胞を増殖および放出する前に、骨髄ストローマに接着することができる。幹細胞は、多系統に著しく増殖および分化して、最終的に赤血球、血小板、様々な白血球、ならびにTおよびBリンパ球のような免疫細胞のような、完全に分化した細胞または子孫を生成する。こうして、HPC細胞または幹細胞を、それが枯渇した患者に再導入すれば、これらの造血細胞型の十分な集団を得る。
【0008】
造血幹細胞が相対的に不足することで、一般に幹細胞および造血系の分化についての広範囲な研究が妨げられてきた。造血幹細胞を濃縮した細胞集団が容易に入手できれば、幹細胞の挙動に影響を及ぼす生物学的改変物質の同定が可能になる。例えば、(1)特定の系列への幹細胞の献身(dedication)という初期の工程;(2)そのような献身の阻害;および(3)幹細胞増殖を制御する能力、に関連する未だ発見されていない増殖因子があるかもしれない。
【0009】
濃縮集団中の十分な数の幹細胞を利用できることは、例えば癌の化学療法のような幹細胞を破壊する処置を受けた患者の造血を再生させるのにも極めて有用となる。
【0010】
造血を成体哺乳類の骨髄(BM)に局在化させるには、原始造血幹細胞(HSC)と、ストローマ細胞が介する骨髄の造血微小環境(HM)間の発達上での調節された相互作用を伴う、という提案が、かなりの証拠によって裏づけられている。
【0011】
BM内の成熟した造血細胞の解剖学的位置は、より原始的な細胞の空間的分布よりもより良く理解されている。マウスにおける過去の研究で、系列の限定されたクローン化造血前駆細胞(HPC)も、縦方向の中心静脈近くで大腿骨の軸を交差する明確に定義された空間的分布に最大数あって同じであることが確証された。これに対して、分類体系的により原始的な前駆体である脾臓コロニー形成単位(CFU−S)は、骨髄の中心領域に少なく、骨に隣接した領域である骨内膜に最大濃縮があるという逆の分布を示す。
【0012】
静注された細胞によって造血を回復するには、BM HM内のHPCのホーミング、移動および定着(lodgement)をはじめとする複数の調和したイベントが必要となる。初期のイベントであるホーミングは、HSCをBMへ循環させる特異的な募集であり、骨髄の微小血管上皮によるHSCの選択的認識、および上皮細胞を通した血管外造血部位への移動を伴う。これに対して、定着は、管外遊出後のイベントを包含し、血管外コンパートメント内の適切なHM隙間(niches)に細胞を選択的に移動させること、と定義されている。現在のデータは、ホーミングが、成熟した白血球の、組織への管外遊出に関わるものと同様の細胞接着分子(CAM)のカスケードを伴うことを示唆している。原始造血細胞は、インテグリン、シアロムチン、IgスーパーファミリーおよびCD44ファミリーの様々なメンバーをはじめとする幅広いCAMのレパートリーを示す。現在のデータは、BMへのHSCホーミングにおける、P−セレクチンのシアロムチンレセプターであるPSG−1、β1インテグリン VLA−4、およびSDF−1のレセプターであるCXCR4の重要な役割を示唆している。これに対して、BMへのホーミングの後、HSC定着の部位に影響を及ぼす分子については、ほとんど知られていない。
【0013】
しかし、細胞表面マーカーによるこれらの特異的細胞型の同定が、一般に同定の最良の手段であることが証明されている。別の細胞表面抗原の同定が、造血幹細胞の同定、分離および更なる特徴づけにおいて、非常に価値があることは明らかである。
【0014】
最年まで、BM内の造血幹細胞(HSC)の空間分布を定義することは、不可能であった。これは、HSCが手に入りにくく、疑いのない現場(in-situ)同定を可能にする、単一の独特な抗原マーカーが無かったためである。
【0015】
したがって、本発明の目的は、先行技術の問題の幾つかを克服する、または少なくとも軽減することにある。
【0016】
発明の概要
出願人は、ヒアルロン酸(HA)およびヒアルロン酸シンターゼ(HAS)が、造血幹細胞(HSC)内で発現されることを見出した。HAは、一般に多数の細胞の細胞外マトリックス内に見出される高分子量直鎖状炭化水素である。
【0017】
本発明の1つの態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法を提供する。
【0018】
HAまたはHASもしくはその同等物もしくはその断片を同定するいずれの手段が用いられてもよい。しかし、本発明の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHAまたはHASもしくはその断片に対する抗体と混合する工程;
HAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上の抗体の存在を検出することによって、HAまたはHASもしくはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法を提供する。
【0019】
好ましくは抗体は、HAまたはHASもしくはその断片に特異的ないずれかの抗体である。本発明で用いられる抗体は、HAを示し、HAまたはHASもしくはその断片に特異的に結合するのに十分な特異性を保持する天然または組換え体のどちらか、合成または天然由来のどちらか、モノクローナルまたはポリクローナルのどちらかの、いずれの抗体またはその断片も包含する。
【0020】
本発明の更に別の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHAまたはHASもしくはその断片の結合蛋白質と混合する工程;
その結合蛋白質の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上のその結合蛋白質の存在を検出することによって、HAまたはHASもしくはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法を提供する。
【0021】
結合蛋白質、特にHA結合蛋白質(HABP)は、HAを検出するのに有用である。HABPは、生化学工業株式会社から得てもよい。しかし、その結合蛋白質の性質に基づくいずれの同等物も、HAを同定するために用いられてよい。その結合蛋白質の結合部分が同定されて、指示薬またはHAとして合成的に調製されると考えられる。したがって、HABPを基剤とする合成指示薬は、本発明の範囲内のものである。
【0022】
本発明は、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮された細胞集団を得る方法も包含する。
【0023】
好ましくは検出方法は、HAまたはHASへの抗体の使用を伴うか、あるいはHAへの結合蛋白質(HABP)が用いられて、HAまたはその同等物を検出することもできる。
【0024】
同じく、別の好ましい実施形態において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在によって同定されたそれらの細胞を選び出す工程、を含む集団からHSCまたはその子孫を除去する方法を提供する。
【0025】
更に、選択の前のHAまたはHASを検出するために、抗体またはHABPが使用されてもよい。
【0026】
本発明に記載された方法は、HSCもしくはその子孫を細胞集団から分離するため、またはそのような集団中のHSC含量を測定するために利用されてもよい。HSCが分離または同定されれば、それらがHSC関係状態または関連状態を処置または診断する方法に用いられてもよく、あるいは更なる分離技術が、HSC集団内の亜集団を分離するために用いられてもよい。リンパ球、骨髄球または赤血球細胞のような特異的細胞系列用の特異的マーカーが、様々な細胞系列を同定および分離するために用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】マウスHSC(Lin-Sca+Kit+細胞)上のHAの発現を示す。
【図1B】Lin-RhdullHSC上のHAの発現、およびHY処置による除去を示す。
【図2】マウス細胞内でのHAS遺伝子の発現を示す
【図3】成熟したCD34+細胞上のHA発現を示す。
【図4】ヒトHSC内でのHAS遺伝子発現を示す。
【図5a(i)】マウスHSCの増殖阻害を示す。
【図5a(ii)】ヒトHSCの増殖阻害を示す。
【図5b(i)】培養したCD34+CD38-CB細胞の分化を示す。
【図5b(ii)】培養したCD34+CD38-CB細胞の表現型分析を示す。
【図6】様々な濃度のHABPの存在下で培養された細胞のCD34+発現の維持を示す。
【0028】
発明の記載
本発明に1つの態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンの二糖繰り返し配列の少なくとも1個を有する炭水化物配列またはその同等物の少なくとも1個の存在を検出する工程;および
その配列またはその同等物を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法を提供する。
【0029】
本明細書に記載された炭水化物配列は、HSCまたはその子孫上に特異的に発現されることが見出されている。その配列は、グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンを含む二糖繰り返し単位またはその同等物の少なくとも1個を包含する。複数の繰り返し二糖単位が、二糖繰り返し配列の連続分子として結合されて直鎖状分子を提供してもよく、あるいはその炭水化物繰り返し配列に、グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンの二糖ではない分子またはその同等物が散在されていてもよい。しかし、少なくとも2個の二糖単位が順序正しくグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンまたはそれらの同等物、その後にグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンまたはそれらの同等物を含む少なくとも4個の糖であることを提供する、少なくとも1個の繰り返し二糖によってHSCまたはその子孫を同定できる。
【0030】
本明細書で用いられる用語「その同等物」は、同様の方法で作用する配列または分子を意味するが、その配列または分子の活性または作用を実質的に変化させない欠失、付加または置換を有していてもよい。
【0031】
本発明の別の態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片を有するHSCを同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法を提供する。
【0032】
出願人は、HSCおよびその子孫が、HAを合成および発現することを示した。HA合成および発現は、多数の哺乳類系に見出されており、主に原始造血細胞内に発現される。HAは、骨髄内の移植HSCの定着に不可欠であり、それらの空間分布を著しく変化させるヒアルロニダーゼを用いて特異的に除去されることが見出されている。加えて、インビトロでHSCの表面上のHAを代わりのリガンドに結合させると、HSCの増殖および分化が十分に抑制される。
【0033】
その産生に関連する分子は、これまでHSCやそれらの同定に関連づけられていなかった。特に、その分子は、HSCまたはその子孫からの発現に関連づけられていなかった。
【0034】
HAは、繰り返し二糖単位(グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミン)のある単鎖高分子量多糖類であり、3種のHAS遺伝子(Has1、Has2、Has3)のうちの1種によってコード化された3種のヒアルロン酸シンターゼ(HAS)のうちの1種によって合成される。最後のものは、血漿膜に存在する、絶対不可欠な膜グリコシルトランスフェラーゼであり、HAを細胞表面の蛋白質に共有結合しない遊離直鎖状ポリマーとして細胞周囲の空間に転移させる。つまりHAは、多くの異なる器官に存在しており、BM微小環境内のECMの成分である。細胞表面HAは、正常および新生物の両方の様々な細胞型の接着、運動および増殖に有意に影響を及ぼす。多価性である(隣接細胞の多数のレセプターを架橋させる)ことによって、内在性の細胞表面HAとその主たるレセプターCD44との相互作用は、複数の細胞型の凝集を媒介する。細胞のHAへの暴露、またはHAもしくはHASの異所性発現のどちらかによって、細胞の運動または浸潤が増加する。その上、HA分解またはHAレセプターの遮断のどちらかの結果として、細胞運動の阻害も起こる。HAは、細胞増殖、分化および組織修復にも影響を及ぼし、HAが、腫瘍の病原および転移部に関わる場合もある。
【0035】
HAまたはHASもしくはHASの断片が、HSC上で検出されてもよい。好ましくはHAまたはHAS分子が検出される。しかし、HAS分子の断片によって、HAが指示されてもよい。そのような断片が、HAS分子の一部に対応するペプチド配列またはその同等物を含んでいてもよい。
【0036】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、言語「含む」、および「含んでいる」並びに「包含する」のようなその言葉の変形は、その他の添加剤、成分、整数または工程を除外するものではない。
【0037】
HSCまたはその子孫の試料は、胚または成体の供給源をはじめとするいずれの供給源から発していてもよい。好ましくはそのHSC供給源は、腸骨稜、脛骨、大腿骨、脊髄、骨膜、骨内膜または他の骨腔をはじめとする骨髄からのものである。HSCは、血液、胚の卵黄嚢、胎児肝臓、脾臓、末梢血、皮膚、真皮に由来してもよく、またはES細胞もしくはES細胞培養物に由来してもよい。
【0038】
その試料は、いずれかの供給源に由来し、HAまたはHASもしくはその断片用のマーカーの相互作用によってHSCまたはその子孫を同定した組織試料もしくは細胞懸濁物またはインビトロで増殖させた細胞であってもよい。試料は、HAまたはHASもしくはその断片の検出前に、CD34+細胞を濃縮されてもよい。
【0039】
骨髄の単離のために、限定するものではないが低濃度、一般に約5〜25mMの許容され得る緩衝液と共に、ウシ胎児血清(FCS)または他の天然由来因子を簡便に補充した塩溶液をはじめとする適切な溶液が、骨を洗い流すために用いられることができる。簡便な緩衝液としては、限定するものではないが、HEPES、リン酸緩衝液および乳酸緩衝液が挙げられる。さもなければ、従来の技術によって、骨髄が骨から吸引されることができる。
【0040】
本明細書で用いられる用語「子孫」は、HSCに由来する全ての細胞を包含し、いずれか特定の細胞型に分化又は特異化されていない原始細胞を包含する。
【0041】
HAまたはHASもしくはその断片を検出する方法は、HSCまたはその子孫を含む試料の種類に依存する。一般に試料は、細胞とのマーカー相互作用を促進する手法で、HAまたはHASもしくはその断片用のマーカーに暴露するか、またはマーカーと混合する。例えば、試料が血液試料中のように細胞懸濁液なら、マーカーは単に、細胞懸濁液に添加すればよい。これは、マーカーがHAまたはHASもしくはその断片を物理的に同定することを意図する場合に適用し得る。
【0042】
HAまたはHASもしくはその断片用のマーカーは、HAまたはHASもしくはその断片を同定するいずれの手段を包含してもよく、好ましくはそれは、細胞表面のHAまたはHASもしくはその断片を同定するマーカーであり、限定するものではないが、HAまたはHASもしくはその断片への抗体、HAまたはHASもしくはその断片へのアゴニストおよびアンタゴニスト、ヒアルロン酸結合蛋白質(HABP)のようなHAへの結合蛋白質、またはHASもしくはその断片への結合蛋白質、DNA、RNA、mRNAまたはHAあるいはHAS蛋白質のいずれかの存在によってHAまたはHASの発現を検出し得る核酸検出システム、ならびにHAまたはHASもしくはその断片用の酵素、蛍光または比色アッセイが挙げられる。HAまたはHASもしくはその断片に結合し、固定されていてもよい結合蛋白質またはリガンドが、HA陽性細胞の単離および同定の手段として働いてもよい。パンニングなどの技術を、HA陽性細胞の単離及び同定にこのようなアプローチに役立ててもよい。検出の方法は、選択されたマーカーの種類によって当業者には明白であろう。
【0043】
マーカーは、マーカーの同定を強化させるための標識の添加を包含してもよい。例えば、当業者によく知られた蛍光、放射線または酵素マーカーが、検出を強化させるためにマーカーに結合されていてもよい。
【0044】
HASに適用される用語「その断片」は、HASを同定し得るHASの一部を包含するもので、HAS分子全体ではない。これの例としては、HASに同一性を与えるHASのエピトープまたはHASの活性部分が挙げられる。
【0045】
本発明の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHAまたはHASもしくはその断片に対する結合蛋白質と混合する工程;
その結合蛋白質の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上のその結合蛋白質の存在を検出することによって、HAまたはHASもしくはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法を提供する。
【0046】
結合蛋白質、特にHA結合蛋白質(HABP)は、HAを検出するのに有用である。HABPは、生化学工業株式会社から得てもよい。しかし、その結合蛋白質の性質に基づくいずれかの同等物が、HAを同定するために用いられてもよい。その結合蛋白質の結合部分が同定されて、指示薬またはHAとして合成的に製造されると考えられる。したがって、HABPに基づく合成指示薬は、本発明の範囲内のものである。
【0047】
HABPの使用は、製造業者の指導に従ってもよい。しかし、結合蛋白質は、HSCまたはそれらの子孫に結合したHABPの同定を促進するために更に標識されていてもよい。
【0048】
本発明の別の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHAまたはHASもしくはその断片に対する抗体と混合する工程;
その抗体の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上の抗体の存在を検出することによって、HAまたはHASもしくはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法うを提供する。
【0049】
好ましくは抗体は、HAまたはHASもしくはその断片に特異的ないずれかの抗体である。本発明で用いられる抗体は、HAまたはHASもしくはその断片に特異的に結合するのに十分な特異性を保持し、HAまたはHASを示す天然または組換え体のどちらか、合成または天然由来のどちらか、モノクローナルまたはポリクローナルのどちらかの、いずれの抗体またはその断片も包含する。本明細書で用いられる用語「抗体」は、抗体全体、および機能的部分を含む抗体断片を包含する。用語「抗体」は、抗体全体が結合特異性を有するエピトープに結合をもたらす軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域の十分な部分を含むいずれかの単一特異性および/または二重特異性化合物を包含する。断片は、少なくとも1個の重鎖または軽鎖免疫グロブリンポリペプチドの可変領域を含むことができ、限定するものではないが、Fab断片、F(ab’)2断片およびFv断片が挙げられる。
【0050】
組換え抗体は、当該技術分野で知られるいずれの組換え手段によっても生成されることができる。そのような組換え抗体としては、限定するものではないが、細菌内で産生された断片、および定常領域の大部分がヒト抗体の定常領域に置換された非ヒト抗体が挙げられる。加えて、そのような「ヒト化」抗体は、遺伝子技術によって組換え抗体を発現する宿主脊椎動物から得られることができる。
【0051】
加えて、単一特異性ドメインを、当該技術分野で知られるいずれの方法によって、別の適切な分子化合物に結合できる。その結合は、例えば化学的なものか、または遺伝子工学によることができる。
【0052】
その抗体を、限定するものではないが、酵素、磁気ビーズ、コロイド状磁気ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物、クロマトグラフィー樹脂、固体支持体または薬物をはじめとする他の適切な分子および化合物とコンジュゲート(conjugate)することができる。抗体にコンジュゲートすることができる酵素としては、限定するものではないが、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼおよびβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。抗体にコンジュゲートすることができる蛍光色素としては、限定するものではないが、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、フィコエリトリン、アロフィコシアニンおよびテキサスレッド(Texas Red)が挙げられる。抗体にコンジュゲートすることができる別の蛍光色素については、Haugland, R. P. Molecular Probes: Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (1992-1994)を参照されたい。抗体にコンジュゲートすることができる金属化合物としては、限定するものではないが、フェリチン、コロイド金、そして特にコロイド状超常磁性ビーズが挙げられる。抗体にコンジュゲートすることができるハプテンとしては、限定するものではないが、ビオチン、ジゴキシゲニン、オキサザロン(oxazalone)およびニトロフェノールが挙げられる。抗体にコンジュゲートする、または組み込むことができる放射性化合物は、当該技術分野で知られており、限定するものではないが、テクネチウム99m、125I、ならびに限定するものではないが14C、3Hおよび35Sをはじめとするいずれかの放射性核種を含むアミノ酸が挙げられる。
【0053】
HAまたはHASもしくはその断片への抗体は、抗体またはその機能的部分を生成するための当該技術分野で知られた方法によって得られてもよい。そのような方法としては、限定するものではないが、所望の特異性の細胞表面抗体を有するB細胞を分離すること、軽鎖および重鎖の可変領域を発現するDNAをクローニングすること、ならびに適切な宿主細胞内で組換え遺伝子を発現させることが挙げられる。標準的モノクローナル抗体生成技術は、抗体が不死化された抗体産生ハイブリドーマ細胞から得られる場合に用いられることができる。これらのハイブリドーマは、HSCまたはその子孫によって動物を免疫化し、好ましくは免疫化宿主脾臓から単離された免疫化動物からのBリンパ球を、適合性のある不死化細胞、好ましくはB細胞ミエローマと融合させることによって産生されることができる。
【0054】
HAまたはHASもしくはその断片への抗体は、いずれの供給源から得られてもよい。それらは、市販のものであってもよい。実際上は、細胞上のHAまたはHASまたはHAもしくはHASの断片の存在を検出するいずれの手段も、本発明の範囲内のものである。そのような抗体の例が、Biogenesisの全種(pan-species)のαHAポリクローナルヒツジ抗体である。
【0055】
本発明に概説された方法は、細胞の集団からHSCまたはその子孫を同定するのに特に有用である。しかし別のマーカーが、全般的HSC集団内の亜集団を更に識別するために用いられてもよい。好ましくは、CD34+細胞の前濃縮(pre-enrichment)工程が、当該技術分野で用いられる方法によって行われる。この工程の後に、HAまたはHASの測定が行われてもよい。
【0056】
別のマーカーを用いる工程が、HAまたはHASもしくはその断片用のマーカーと別個に、または組合わせて適用されてもよい。
【0057】
様々な亜集団が、HAまたはHASの発現のレベルによって識別されてもよい。これは、細胞表面で発現されたHAとして明示されてもよく、そのHAは、本明細書に概説された方法によって検出されてもよい。しかし、本発明は、限定するものではないが、CD34+、CD38-、CD90+(thy1)およびLin-細胞をはじめとするHSC集団の様々な表現型間を識別するために用いられてもよい。好ましくは同定される細胞は、限定するものではないが、CD34+、CD38-、CD90+(thy1)またはLin-細胞を含む群から選択される。
【0058】
本発明の別の態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法が提供される。
【0059】
したがって本発明は、HSCまたはその子孫の集団を濃縮する方法を包含する。その方法は、HAまたはHASもしくはその断片を認識して結合する抗体またはマーカーをHAまたはHASもしくはその断片に結合させる条件下で、その抗体もしくはマーカーまたは結合蛋白質とHSCまたはその子孫の混合物とを混合して、抗体またはマーカーによって認識された細胞を分離してHSCまたはその子孫を実質的に濃縮した集団を得ることを伴う。その方法を、試料中のHSCまたはその子孫の数についての診断アッセイとして用いることができる。細胞および抗体またはマーカーが、抗体またはマーカーをHAまたはHASおよびHSCまたはその子孫に特異的に結合させるのに十分な条件下で混合され、その後定量される。HSCまたはその子孫は、単離されるか、または更に精製されることができる。
【0060】
好ましくは、マーカーはHAに結合するHA結合蛋白質(HABP)である。HABPの適切な供給業者は、生化学工業株式会社である。
【0061】
先に論じたように、細胞集団は、先に論じたそれらの試料をはじめとするHSCまたはその子孫のいずれの供給源から得られてもよい。
【0062】
HAまたはHASもしくはその断片の存在の検出は、細胞上のHAまたはHASを同定するいずれの方法によって実行されてもよい。好ましくはその検出は、HAまたはHASに対するマーカーまたは結合蛋白質の使用による。HAまたはHAS用のマーカーは、先に論じたいずれのマーカーであってもよい。しかし、HAまたはHASへの抗体または結合蛋白質は、HAまたはHAS用のマーカーとして特に有用である。
【0063】
先に論じたように、HAまたはHASまたはHAもしくはHASの断片が、検出されてもよい。好ましくは、HAまたはHASの分子全体が検出される。しかし、分子を識別する分子の一部も、同じく有効であると考えられる。
【0064】
様々な技術が、特定の系列の細胞を最初に除去することによって、細胞を分離または濃縮するのに使用できる。モノクローナル抗体および結合蛋白質は、細胞系列および/または分化の段階を同定するのに特に有用である。抗体は、大まかな分離のために固体支持体に結合できる。利用される分離技術は、回収される分画の生存力を最大限に保持しなければならない。「比較的大まかな」分離を得るために、異なる有効性のある様々な技術を用いることができる。利用される個々の技術は、分離の効率、関連する細胞毒性、実行の容易さおよび速度、ならびに精巧な装置および/また技術の熟達の必要性に依存する。
【0065】
分離または濃縮のための手順としては、限定するものではないが、抗体コーティング磁気ビーズを用いた磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤、またはモノクローナル抗体と共に用いられる細胞毒性剤、例えば限定するものではないが補体およびサイトトキシン、および固形マトリックス、例えばプレートに結合させた抗体による「パンニング(panning)」、エルトリエーション、あるいはいずれか別の従来技術を包含することができる。
【0066】
分離または濃縮技術の使用としては、限定するものではないが物理的性質(密度勾配遠心法および向流式の(counter-flow)遠心エルトリエーション)、細胞表面特性(レクチンおよび抗体アフィニティー)、および生体染色特性(ミトコンドリア結合色素rho123およびDNA結合色素、Hoescht33342)の差異に基づくものが挙げられる。
【0067】
正確な分離をもたらす技術としては、限定するものではないが、様々な精巧度、例えば複数のカラーチャネル、低角度オブチューズ光散乱検出チャネル(low angle and obtuse light scattering detecting channels)、またはインピーダンスチャネルなどを変更し得るFACSが挙げられる。HAの発現レベルによってこれらの細胞を分離および識別し得るいずれの方法を用いてもよい。
【0068】
最初の分離では、通常は約1x1010細胞、好ましくは約5x108〜9細胞で開始して、HAまたはHASもしくはその断片への抗体または結合蛋白質が、少なくとも1つの蛍光色素で標識できる一方、様々な特定系列に対する抗体または結合蛋白質を、少なくとも1つの異なる蛍光色素にコンジュゲートすることができる。各系列は分離工程で分離できるが、所望ならHAまたはHASおよび/または他のHSCマーカーに対して正の選択をするのと同時にその系列が分離される。死亡細胞に結合する色素(限定するものではないがヨウ化プロピジウム(PI)など)を用いることによって、細胞を死亡細胞に対して選択できる。
【0069】
分離の特定の順序は、本発明にとって重要ではないと思われるが、示された順序が好ましい。好ましくは細胞は、HAまたはHASもしくはその断片への抗体を用いた正の選択により、最初大まかな分離によって分離され、その後精密な分離によって分離される。HAまたはHASの同定の前に、CD34+細胞を濃縮する前濃縮工程が適用されることが好ましい。
【0070】
本発明の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
その細胞集団をHAまたはHASもしくはその断片に対する結合蛋白質と混合する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片を示す結合蛋白質の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法を提供する。
【0071】
結合蛋白質は、上記のとおりである。
【0072】
本発明の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
その細胞集団をHAまたはHASもしくはその断片に対する抗体と混合する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片を示す抗体の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法を提供する。
【0073】
細胞を単離するための抗体を用いるいずれの分離方法が用いられてもよく、それらは当業者にはよく知られている。HSCまたはその子孫の同定のための上記説明は、ここでも適用できる。
【0074】
いずれかの細胞集団を更に濃縮するために、それらの細胞集団用の特異的マーカーが用いられてもよい。例えば、リンパ球、骨髄球または赤血球系列のような特異的細胞系列用の特異的マーカーが、これらの細胞を濃縮するため、またはこれらの細胞の反対を濃縮するために用いられてもよい。これらのマーカーは、間葉幹細胞またはケラチノサイト幹細胞を除去または選び出すことによって、HSCまたはその子孫を濃縮するために用いられてもよい。
【0075】
上記方法は、他の幹細胞特異性マーカーの正の選択によって細胞を更に濃縮する工程を含むことができる。適切な陽性幹細胞マーカーとしては、限定するものではないが、CD34+、Thy−1+およびc−kit+が挙げられる。
【0076】
特定の因子による適切な選択と、HSCまたはその子孫を自己再生させ、HSCまたはその子孫をそれらのマーカーに関してスクリーニングさせるバイオアッセイの開発とによって、生存するHSCまたはその子孫の濃縮された組成物を、様々な目的で生成できる。
【0077】
本発明の更に別の態様において、本明細書に記載された方法によって調製されたHSCまたはその子孫の濃縮集団を提供する。
【0078】
同様に、別の好ましい実施形態において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在によって同定されたそれらの細胞を選び出す工程、を含む集団からHSCまたはその子孫を除去する方法を提供する。
【0079】
その濃縮と同様の手法において、HAまたはHASが、HSCまたはその子孫を実質的に含まない集団を提供するために、逆の形で用いられてもよい。HAまたはHASを発現するそれらの細胞を選択するための、上記で利用された方法は、前記細胞を選び出してHSCまたはその子孫を除去した集団を残すために用いることができる。
【0080】
好ましくはHAまたはHASは、HAまたはHASもしくはその断片への抗体または結合蛋白質を用いることによって検出される。より好ましくはHAは、結合蛋白質HABPによって検出される。マーカー、結合蛋白質または抗体がHSCまたはその子孫に結合すれば、分離のためのいずれの上記方法を、HSCまたはその子孫を識別および選び出すために用いてもよい。
【0081】
本発明の更に別の態様において、HSCまたはその子孫の負の選択を受けなかった対照細胞集団に比べて少ないHSC集団を有する細胞集団を提供する。
【0082】
本発明の更に別の態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在を検出すること;
細胞上のHAまたはHASもしくはその断片の存在によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
HAまたはHASもしくはその断片の存在によって同定されたそれらの細胞を単離すること、を含むHSCまたはその子孫を単離する方法を提供する。
【0083】
HSCまたはその子孫は、上記のとおり濃縮のために用いられるいずれかの方法に、HSCを分離する別の工程を加えて単離されてもよい。有用な技術としては、抗体コート化磁気ビーズを用いた磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤、またはモノクローナル抗体と共に用いられる細胞毒性剤、例えば限定するものではないが補体およびサイトトキシン、そして固体マトリックス、例えばプレートに結合させた抗体による「パンニング」、エルトリエーション、またはいずれか別の従来技術が挙げられる。当業者は、これらの技術に通じており、HAまたはHASが選択されるものならば、いずれの公知の技術も用いることができる。
【0084】
別の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHAまたはHASもしくはその断片に対する結合蛋白質と混合すること;
HAまたはHASもしくはその断片に対する結合蛋白質によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
その抗体によって同定されたそれらの細胞を単離すること、を含むHSCまたはその子孫を単離する方法を提供する。
【0085】
その結合蛋白質は、上記のとおりである。
【0086】
別の好ましい態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHAまたはHASもしくはその断片に対する抗体と混合すること;
HAまたはHASもしくはその断片に対する抗体によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
その抗体によって同定されたそれらの細胞を単離すること、を含むHSCまたはその子孫を単離する方法を提供する。
【0087】
HAまたはHASに特異的で、目下入手できるいずれの抗体を用いてもよい。適切な抗体は、Biogenesisの全種(pan-species)のαHAポリクローナルヒツジ抗体である。
【0088】
HSCまたはその子孫の集団が単離されれば、更に別の単離技術が、HSCまたはその子孫内の亜集団を単離するために用いられてもよい。細胞系列のためのFACSのような細胞選択システムを含む特異的マーカーが、様々な細胞系列を同定および単離するために用いられてもよい。
【0089】
別の態様において、本明細書に記載された方法によって単離されたHSCまたはその子孫を提供する。好ましくはその細胞は、CD34+、HA+である。より好ましくはその細胞は、CD34+、thy1、HA+である。最も好ましくはその細胞は、CD34+、D38-、thy1+、HA+である。
【0090】
本発明は、別の態様において、CD34+、D38-、thy1+およびHA+細胞を含む細胞の濃縮集団を含む、濃縮したHSCおよびその子孫の組成物も提供する。
【0091】
組成物が、HSCまたはその子孫を濃縮されている場合、これらは自家生着(autologous engraftment)に用いられてもよい。更に、HSCまたはその子孫を使用することによって、対宿主性移植片病が避けられる。加えて、一般に個体またはHSCのいずれかに関して、遺伝子欠損を修復するため、またはHSCもしくはその子孫もしくはその子孫の生来欠いている遺伝子能力を提供するために、細胞は、適切な遺伝子導入によって改変されることができる。加えて、HSC組成物は、再生および分化に関連する因子を単離および定義するために用いることができる。
【0092】
本発明の更に別の態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHAまたはHASもしくはその断片に対する結合蛋白質と混合すること;
HAまたはHASもしくはその断片に対する結合蛋白質によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
その結合蛋白質による選択の前の細胞集団中の細胞の量に対する選択細胞の量を定量すること、を含むHSCまたはその子孫の含量を測定する方法を提供する。
【0093】
その結合蛋白質は、上記のとおりである。
【0094】
本発明の更に別の態様において、
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHAまたはHASもしくはその断片に対する抗体と混合すること;
HAまたはHASもしくはその断片に対する抗体によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
HAまたはHAS抗体による選択の前の細胞集団中の細胞の量に対する選択細胞の量を定量すること、を含むHSCまたはその子孫の含量を測定する方法を提供する。
【0095】
選択したHSCまたはその子孫の量を定量することによって、限定するものではないが、正常な状態および悪性腫瘍の状態、あるいはより具体的には、特に造血幹細胞集団、より具体的にはそれらの集団のリンパ球系列において、白血病、上皮性悪性腫瘍または非上皮性悪性腫瘍またはHSCもしくはそれらの子孫の活性増加を引き起こし得る一般的感染のような、HSC関連状態の診断方法を提供する。特にその定量は、抗体の産生、細胞免疫系の調節、血中の異物の検出、宿主にとって異物である細胞の検出などをもたらすリンパ球系列から分化するB細胞およびT細胞を示すことの提供であってもよい。単球、顆粒球、巨核球およびその他の細胞をはじめとする骨髄球系列は、血流中の異物の存在を監視し、新生物細胞から防御し、血流中の外来物質を取り除いて、血小板を産生する等を行う。赤血球系列は、酸素の運搬体として働く赤血球細胞をもたらす。
【0096】
その方法は、細胞集団から同定されたHSCまたはその子孫を有する抗体処置試料を無処置試料と比較して、HSCを含む成分を同定することによって実施されてもよい。対照では、全細胞数がカウントされることができる。診断目的には多数の試料が測定されてもよく、細胞数の変動が比較されて、HSCまたはそれらの子孫のレベルの増加または減少を監視してもよいと思われる。
【0097】
本発明の更に別の態様において、集団中のHSCまたはその子孫を検出するための、HAまたはHASもしくはその断片の指示薬、および担体を含む組成物を提供する。
【0098】
HAまたはHASもしくはその断片の指示薬は、HSCまたはその子孫上のHAまたはHASもしくはその断片を同定し得るいずれの検出手段を含んでいてもよい。好ましくはその指示薬は、HAまたはHASもしくはその断片への抗体または結合蛋白質である。
【0099】
抗体は、HAまたはHASの分子全体を検出してもよく、あるいはHAS内に含まれHASを示す特異的ペプチド配列を検出してもよい。
【0100】
組成物は、別のマーカーを含んで、特異的細胞系列を識別してもよい。
【0101】
本発明は、細胞集団内のHSCまたはその子孫の存在を同定することによって、HSCまたはその子孫に関連する状態を診断する方法も提供する。例えば、造血幹細胞の増加または減少レベルが、血中の異常を示してもよい。これは、白血病のような疾患では重要になる場合があり、同じく増加は、感染を示すT細胞およびB細胞を含めたリンパ球系列へ分化するHSCまたはその子孫の増加と解釈してよい。
【0102】
本発明の更に別の態様において、
HSCまたはその子孫内のHAまたはHASもしくはその断片の発現および/または活性を調整すること、を含むHSCまたはその子孫の増殖および/または分化を制御する方法を提供する。
【0103】
出願人は、HAまたはHASがHSCまたはその子孫内で発現されることを見出した。増殖の前のHAまたはHASの発現レベルは、続く細胞の増殖または分化に合わせて変動する。細胞内のHAまたはHASの発現および/または活性を調整することによって、細胞の増殖または分化を制御してもよい。
【0104】
本明細書で用いられる用語「ヒアルロン酸の発現および/または活性を調整する」は、非改変レベルに比較して、HAまたはHASの発現および/または活性を改変または変動させることを意味する。
【0105】
フレーズ「細胞の増殖および/または分化を制御する」は、インビトロまたはインビボのいずれかで、非調整細胞に比べて細胞の増殖および/または再生の程度、あるいは細胞の分化の程度を高める工程を包含する。細胞培養における細胞増殖の増加又は減少は、該当する分子への暴露の前後に細胞数をカウントすることによって、検出できる。増殖の程度は、細胞の密集の程度を顕微鏡検査することによって定量できる。細胞増殖は、チミジン取り込みアッセイを用いて定量できる。
【0106】
細胞分化の増加または減少は、様々な体細胞型または前駆細胞型に特異化された分化細胞型を同定することによって検出されてもよい。同定は、細胞型を同定するための、当業者に知られる細胞マーカーを用いて実施されてもよい。
【0107】
本明細書で用いられる「活性」は、HSC細胞内のHAまたはHASの機能に関するもので、HAを合成するHASの能力、あるいはシャペロンまたは上流もしくは下流のエフェクター分子に結合し、それによって増殖または分化に影響を及ぼす上流または下流の経路を活性化または抑制するHAの能力を包含する。
【0108】
本明細書で用いられる用語「発現および/または活性を調整する」は、HAまたはHASの未改変レベルに比較して、HAまたはHASの発現および/または活性を改変または変化させることを包含する。発現および/または活性は、増殖または分化を増加または減少させるために、未改変レベルに比較して増加または減少されてもよい。
【0109】
HSC内でのHAまたはHASの発現および/または活性の調整は、HAまたはHASのアンタゴニスト、阻害剤、擬似物質または誘導体を用いて実行してもよい。本明細書で用いられる用語「アンタゴニスト」または「阻害剤」は、HAまたはHASのいずれかに結合すると、HAまたはHASの活性を遮断または調整する分子を指す。アンタゴニストおよび阻害剤は、蛋白質、核酸、炭水化物、抗体、またはHAもしくはHASに結合するリガンドをはじめとするいずれか別の分子を包含してもよい。適切なリガンドは、HAに結合していてもよいHABPである。蛋白質が、HAを分解することができ、それによってHSC上で暴露されたHAのレベルに影響を及ぼし得るヒアルロニダーゼなどの酵素を包含してもよい。HAまたはHASの活性および/または発現の他の調整物質としては、ある範囲の合理的に設計された合成阻害剤が挙げられる。
【0110】
HABPの適切な濃度は、5〜20μg/mlの範囲内である。ヒアルロニダーゼの場合、これは室温または同等の条件で約15分間、0.1単位/mlで用いてもよい。
【0111】
調整は、HAS遺伝子もしくはHAS活性の発現および/もしくは活性の増加もしくは減少、結合特性の変化、または生物学的、機能的もしくは免疫学的性質のいずれか他の変化であってもよい。
【0112】
調整物質としては、限定するものではないが、酵素の発現および活性のための、HASの上流および下流での調節物質が挙げられる。
【0113】
本明細書で用いられる用語「擬似物質」は、HAまたはHASまたはその一部の構造の知識から開発され、そのためHAまたはHAS様分子の作用の一部または全てを実行することができる構造の分子を指す。
【0114】
HAまたはHASの発現および/または活性の調整は、直説法または間接法によって実行してもよい。HAまたはHASの発現および/または活性の調整は、当業者に知られる直説法を用いて実行されてもよく、限定するものではないが、ノックアウト法、アンチセンス法、三重らせん法、標的変異(targeted mutation)、遺伝子療法、転写に作用する薬剤による調節が挙げられる。HAまたはHASの発現および/または活性を調整する間接法は、サイトカインのような上流または下流の調整物質を標的とすることを包含してもよい。
【0115】
HAまたはHASの発現および/または活性の阻害は、HAまたはHASの発現および/または活性を直接的または間接的に標的とする様々な阻害剤を用いて実行してもよい。阻害は、HAまたはHASの機能に関与する上流または下流の標的を阻害することによって実行してもよい。
【0116】
本発明の別の態様において、本明細書に記載された方法によって調製されたHSCまたはその子孫の濃縮集団を含む組成物の効果的量を投与することを含む、HSC関連状態を処置する方法を提供する。
【0117】
本明細書で用いられる「HSC関連状態」は、HSCもしくはその子孫との相互作用から生じるいずれかの状態、またはHSCもしくはその子孫に依存するいずれかの状態を意味する。HSC関連状態の例は、貧血(大球性貧血および再生不良性貧血を含む);血小板減少症;形成不全;汎発性血管内凝固症候群(DIC);脊髄形成異常;免疫性(自己免疫性)血小板減少性紫斑症(ITP);およびHIV誘導性ITPおよび白血病をはじめとする悪性状態が包含されてもよい。
【0118】
「処置」は、治療的処置および予防的または防御的測定の両方を指す。処置を必要とするものとしては、既に疾患または障害のあるものに加え、疾患または障害が防御されるべきものが挙げられる。
【0119】
記載された方法によって分離されたHSCまたはこの子孫を含む本発明の組成物は、多数の方法での使用を見出すことができる。
【0120】
これらの細胞は、放射線照射された宿主および/もしくは化学療法を受けた宿主のような、免疫無防備状態の宿主を完全に再生するために用いられるか、または限定するものではないが、エリトロポエチン、コロニー刺激因子、例えばGM−CSF、G−CSFもしくはM−CSF、インターロイキン、例えばIL−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8などをはじめとする様々な因子、または特定の系列になるHSCもしくはその子孫に関連するか、またはそれらの増殖、成熟および分化に関連するストローマ細胞を用いることによる1種以上の選択された系列への成熟、増殖および分化を提供することによって、特異的系列の細胞供給源として用いることができる。
【0121】
HAまたはHASは、移植後の細胞の空間分布に関与することが見出された。ヒアルロニダーゼによる細胞の処置は、細胞の空間分布に影響を及ぼす。このため、患者の造血系の移植または再生のために用いられる細胞は、正常な細胞型および細胞分布を達成するためにHAの除去を阻害する化合物、またはHAもしくはHASの発現レベルを保持する化合物で前処理してもよい。
【0122】
HSCまたはその子孫は、造血細胞の分化および成熟に関連する因子の分離および評価に用いることもできる。つまり本発明は、ならし培地のような培地の活性を測定するアッセイ、または細胞増殖活性、特定系列への特定化との関与などについて液体を評価するアッセイにおいて造血幹細胞を使用することを包含する。
【0123】
HSCは、遺伝子疾患の処置に用いられることができる。つまり本発明は、遺伝子欠損を修復するための自家幹細胞または同種異型幹細胞の遺伝子改変によって、HSCに関連する遺伝子疾患を処置することを包含する。例えば、限定するものではないが、β−サラセミア、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠損症、レコンビナーゼ欠損症またはレコンビナーゼ調節遺伝子欠損症などを含む疾患は、相同的組換えまたはランダムな組換えのいずれかによって野生型遺伝子を造血幹細胞に導入して修復されてもよい。
【0124】
遺伝子療法の用途において、遺伝子は、例えば欠損遺伝子の置換として、治療的に有効な遺伝子産物をインビボ合成するために、細胞内に導入される。「遺伝子療法」は、単独処置によって持続効果が達成される従来の遺伝子療法と、治療的に有効なDNAまたはmRNAの単回または反復投与を伴う遺伝子療法剤の投与との両方を包含する。アンチセンスRNAおよびDNAが、インビボで特定の遺伝子の発現を遮断するための治療剤として用いられることができる。
【0125】
遺伝子療法の他の適応としては、正常幹細胞が化学療法時に利点を有して選択圧力を受けれるために薬物耐性遺伝子を導入することが挙げられる。適切な薬物耐性遺伝子としては、限定するものではないが、多剤耐性(MDR)蛋白質をコード化する遺伝子が挙げられる。
【0126】
造血細胞に関連する疾患以外で、限定するものではないがホルモン、酵素、インターフェロン、増殖因子などの特定の分泌産物の不足に関係する疾患が、遺伝子改変によって処置できる。適切な調節開始領域を用いることによって、欠損蛋白質を誘導的に産生することができ、それによってそのような蛋白質を正常に生成する細胞型とは異なる細胞型においても、その蛋白質の生成が自然な生成と並行して行われることになる。リボザイム、アンチセンスまたは他のメッセージを挿入して、特定の遺伝子産物、または疾患、特に血液リンパ性疾患(hematolymphotropic diseases)の感受性を阻害することもできる。
【0127】
本発明の更に別の態様において、HSCまたはその子孫の非制御的増殖から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、
HSCまたはその子孫内のHAまたはHASもしくはその断片の発現を制御することを含む方法を提供する。
【0128】
本発明の好ましい態様において、HSCまたはその子孫の非制御的増殖から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、
HSCまたはその子孫内のHAまたはHASもしくはその断片の発現および/または活性を低下させることを含む方法を提供する。
【0129】
非制御的増殖が起こる典型的な状態は、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)をはじめとする白血病のような悪性状態である。
【0130】
出願人は、ヒト白血病細胞がHAレベルの上昇を呈していることを示した。具体的には、ヒト白血病細胞系(HL−60、Mo7eおよびK562)は、1種以上のHAS遺伝子を発現し、高レベルのHAを合成するが、そのHAは、ヒアルロニダーゼによって効率的に除去される。加えて、患者のAML、CML、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、PLL、慢性骨髄単球性白血病(chronic monmoylocytic leukaemia)(CMML)、混合型白血病、およびヘアリーセル白血病の試料からの白血病芽球によるHA合成が増加している(表1に示した)。
【0131】
【表1】

【0132】
正常な臍帯血CD34+細胞に比較して、白血病細胞の大部分が、HAを発現する芽細胞数の上向きの調節を呈した。CML CD34+細胞の明白な集団が、細胞表面HAも有意に高レベルに発現した(図6)。患者の試料は全て、HAS1を発現したが、少数の試料が、HAS2および/またはHAS3を発現した。
【0133】
したがってこれらの白血病においては、HAおよびHASが高レベルで発現される。HA発現のレベルを制御することによって、これらの細胞の増殖に影響を及ぼすことができる。HAの発現レベルを低下させれば、増殖レベルを低下させることができる。これは、HAまたはHASの発現および/または活性を調整するための上記方法のいずれによって実行されてもよい。
【0134】
患者を処置するために、適切な調整物質が投与されてもよい。調整物質は、限定するものではないが経鼻、経口、経皮、筋肉内、腹腔内、皮下または静脈内をはじめとする様々な経路で投与されてもよい。
【0135】
これは、HASに結合することによってHA合成を防御する機能阻害抗体、または薬剤を用いて促進されてもよい。あるいは、細胞は、レトロウイルスによってHASアンチセンスを形質導入された細胞であってもよい。
【0136】
本発明の更に別の態様において、HSCまたはその子孫の分化から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、
HSCまたはその子孫内のHAまたはHASもしくはその断片の発現および/または活性を制御することを含む方法を提供する。
【0137】
増加と同様に、分化は、HSCまたはその子孫内でのHAまたはHASの発現によって影響を受ける。
【0138】
本発明の好ましい態様において、HSCまたはその子孫の分化から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、
HSCまたはその子孫内のHAまたはHASもしくはその断片の発現および/または活性を低下させることを含む方法を提供する。
【0139】
HAまたはHASの発現および/または活性の適切な調整物質を利用して分化を減少させることによって、特に非制御的分化からくる癌において分化を制御できる。調整は、上記のとおり実行されてもよい。
【0140】
本発明で用いられる手順の実施例を、より完全にここに記載する。しかし、以下の記載が例示に過ぎず、上記発明の概要の制限としてとらえるべきでないことは理解されるはずである。
【0141】
実施例
【0142】
実験
(a)臍帯血 Mercy Hospital for Women (East Melbourne, Australia)での正常な帝王切開分娩の後にインフォームドコンセントに従って、臍帯血(CB)試料を得た。
【0143】
(b)マウス 6〜8週齢のBALB/c H−2Dマウス、ならびに共通遺伝子系のC57BI/6J(Ly5.2)マウスおよびPTRPA(Ly5.1)マウスを、Animal Resource Center (Perth, WA, Australia)から購入し、実験での使用の前に少なくとも1週間、従来どおり清潔に飼育した。CD44-/-マウス(2)には、Dr. Tak Mak(Amgen Institute, Ontario Cancer Institute, University of Toronto)から贈与された。マウスは全てマウス用飼料(Barastok, St. Arnaud, Victoria, Australia)および酸性水を自由に摂取させた。
【0144】
(c)放射線照射 造血を回復する細胞の能力を、2台の向き合った137Cs線源(Gammmacell 40; Atomic Energy of Canada, Ottawa, Canada)から1.4Gy/分の線量を4時間間隔で2等量に分けることにより致死量に近い放射線量(9.5Gy)を受けたマウスで分析した。
【0145】
(d)造血細胞の単離 マウスを頚部脱臼によって屠殺した。BMを、大腿骨、脛骨および腸骨稜からごく普通に採取した。これらの骨を、2%加熱非働化(HI)ウシ胎児血清(FCS;Hyclone, Logan, UT)を補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で完全に摩砕した。骨断片を複数回洗浄して、上清の細胞懸濁液および洗浄画分を40μmフィルター(Becton Dickinson, Franklin Lakes, New Jersey)で濾過して、大きな骨粒子を除去した。骨髄を遠心分離(400g、5分間)して、新たな緩衝液で再懸濁させた。細胞上清を40μmフィルターで再度濾過して、2%HI FCS補充PBS(緩衝液)で107細胞/mlに希釈した。
【0146】
(e)造血細胞濃縮方法
(i)マウス 低密度(<1.0777g/cm3)の骨髄単核細胞を、動物用のNycoprep(Accurate Chemical and Scientific corporation, Westbury, NY)を用いて不連続密度遠心分離法によって単離した。更に処理する前に、単離した細胞を緩衝液で洗浄した。Lin-細胞を、先に記載されたもの(1)と同様の手法で単離した。簡単に説明すると、低密度細胞を、ビオチン化または非コンジュゲート化されたラット抗マウス一次抗体:抗B220(CD45R;B細胞);抗Mac−1(CD11b;マクロファージ);抗Gr−1(Ly−6G;好中球);抗Lyt−2(CD8)、抗L3T4(CD4)、抗CD3および抗CD5(T細胞);ならびに抗Ter119(赤血球細胞)のカクテルで標識した。チャネルの蛍光の平均および/または検出した陽性細胞のパーセント値が最大に変動する濃度で、フローサイトメトリー分析によって抗体の各バッチを評価した。2倍強度の抗体カクテル50μLを等量の緩衝液中の5x106個の細胞に添加して、細胞と抗体の懸濁液を氷上で20分間インキュベートした。過去に記載されたとおり(1)、Lin-細胞を、MACSシステム(Miltenyi Biotec, Bergisch, Gladbach, Germany)を用いて、免疫磁気選択法によって除去した。簡単に説明すると、ヤギ抗ラットIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)13μlを、洗浄した抗体標識細胞の懸濁液87μl(緩衝液に107細胞)に添加して、細胞をビーズと4℃で15分間インキュベートした。細胞を緩衝液で洗浄して、PBS 1.5ml、5mM EDTAおよび1%ウシ血清アルブミン(BSA)/108細胞で再懸濁させた。その後、細胞を最大2mlまでカラム(Dカラム、最大容量1x109細胞、一般には最大表示容量の半分より多量には通さない)に添加し、メッシュに通して、5分間放置して磁化させた。20ゲージ針によってPBS、5mM EDTA、1%BSA 50mlで細胞を溶離させることによって、Lin-細胞(非磁気分画)を採取した。
(ii)ローダミン123(Rh)標識 Lin-細胞を緩衝液で洗浄して、1x106細胞/mlに再懸濁させて、Rh(Molecular Probes, Eugene, OR)の最終濃度0.1μg/ml(緩衝液で希釈)で37℃の暗所で20分間インキュベートした。細胞を遠心分離して106細胞/mlに再懸濁させて、37℃の暗所で15分間流出させ、遠心分離してPBS0.5%HI FCSで108細胞/mlに再懸濁させた。細胞を最終濃度1:80(6.8μg/ml)のヤギ抗ラットフィクロエリトリン(PE)コンジュゲート二次抗体(Biosource International; Camarillo, CA)と暗所の氷上で更に20分間インキュベートした。最後に、細胞を緩衝液で洗浄して、5x106細胞/mlに再懸濁させ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)の前に氷上で保存した。
(iii)幹細胞抗原1(Sca−1)およびc−kit標識
Lin-細胞を洗浄、遠心分離して、Sca−1 FITC(Pharmingen; 1μg/5x106細胞)およびc−kit PE(Pharmingen; 1μg/5x106細胞)およびストレパビジン−Red670(Gibco;1/160最終濃度)のカクテル中で、暗所の氷上で20分間再懸濁させた。最後に、細胞を緩衝液で洗浄して、5x106細胞/mlに再懸濁させて、蛍光活性化セルソーティング(FACS)の前に氷上で保存した。
(iv)ヒト フィコール−ハイパック密度勾配(d=1.077g/ml、Pharmacia Biotech, Sweeden)を用いた不連続密度遠心分離によって、低密度の単核細胞をCBから分離し、400gの遠心分離によって3回洗浄した。分離した細胞は、更に処置する前にPBSで洗浄した。Lin-細胞を、先に記載のとおり分離した。簡単に説明すると、抗CD19、CD20およびCD24(B細胞および赤血球);抗CD3、CD2およびCD56(T細胞およびNK細胞);抗CD16、CD66bおよびCD11b(顆粒球および単球);抗CD14、CD36(単球、血小板および赤血球)をはじめとする系列抗体のカクテルで細胞を標識した。ヤギ抗マウスIgGマイクロビーズおよび上記のようなMACSシステムを用いた免疫磁気的選択によって、Lin-細胞を除去した。
(v)CD34、CD38およびCD15標識 Lin-細胞を洗浄、遠心分離して、CD34 FITCおよびCD38PEまたはCD15 FITC(Becton Dickinson, San Jose, CA;メーカーが推奨する濃度)のカクテルで、暗所の氷上で20分間再懸濁させた。最後に、細胞の緩衝液で洗浄して、5x106細胞/mlに再懸濁させ、蛍光活性化セルソーティング(FACS)の前に氷上で保存した。
【0147】
(f)ヒアルロン酸標識 細胞表面のヒアルロン酸(HA)の存在を、最終濃度20μg/mlのビオチン化ヒアルロン酸結合蛋白質(HABP;生化学工業、東京(日本))を用いて氷上で20分間検出した。細胞を洗浄して、上記のとおりストレプアビジン−PEまたはRed−670(Gibco BRL, Grand Island, NY)で標識した。
【0148】
(g)ヒアルロニダーゼ処置 HABP標識が特異的であることを保証し、生着した細胞の空間分布における細胞表面HAの重要性を評価するために、骨髄の亜集団を0.1単位ヒアルロニダーゼ(HY)(Sigma Aldrich)で21℃で15分間処置して、HAを除去した。細胞をPBS 0.5%HI FCSで洗浄した。
【0149】
(h)フローサイトメトリー 200mWで488nm光を発光する5ワットアルゴンイオンレーザー(Coherent Innova 90, Palo Alto, CA)と、50mWで350/360nm光を発光するSpectra-Physics紫外線(UV)レーザー(Mountain View, CA)とを搭載したFACStarplusセルソーターで、標識した細胞をソーティングした。前方光散乱パスの488nmバンドパス10フィルターと1ディケード対数減光フィルター(1-decade logarithmic neutral density filter)とで、光散乱シグナルを回収した。Rh発光緑色蛍光パルスは、FITC530nmバンドパス15フィルターで回収した。フィコエリトリン(PE)の励起によって発光した赤橙色蛍光パルスを、440ダイクロイックショートパスミラーで反射させ、575nmバンドパスダイクロイック26フィルターで回収した。Red670の励起によって発光したパルスを、ロングパスRG655フィルターで回収した。
【0150】
(i)細胞培養 複数のサイトカインおよび様々な濃度のHABPを含有する無血清培地(serum deprived media)100μlを含有する96穴プレートに、培養する細胞を直接ソーティングした。1%BSA、10μg/mlヒトインシュリン、200μg/mlヒトトランスフェリン、0.05mM 2−メルカプトエタノール、および21μg/ml LDLを含有するイスコブ改変ダルベッコ培地(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)(Gibco BRL)で、マウス細胞を培養した。ヒト細胞は、0.5% ブミネート(buminate)(Baxter, Glendale, CA)を含有するX Vivo 10培地(Bio Whittaker, Verviers, Belgium)で培養した。
【0151】
(j)5−(および6)−カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識 空間分布分析用に移植される細胞を、先に記載されたとおり(1)に蛍光色素CFSE(Molecular Probes, Eugene, OR)で標識した。簡単に説明すると、PBS 0.5%HI FCSで細胞を洗浄して、PBS 0.5%HI FCSで106細胞/mlの密度に再懸濁させて、37℃で2分間プレインキュベートした。DMSOで5mMに希釈し、その後PBSで5μMに希釈したCFSEを添加して、0.5μMの最終濃度を得、色素溶液細胞混合物を、37℃で更に10分間インキュベートした。20%FCSを含有する氷冷PBSを色素溶液細胞液の容量の10倍量添加して染色を止めた。最後に、細胞をPBSで洗浄して、注入のためにレシピエント毎に0.3mlまでのPBSに再懸濁させた。
【0152】
(k)移植片 細胞を、外側尾静脈に注入することによって移植した。注入した細胞の実際の数は、Lin-Sca+HA+細胞500個、Lin-Sca+HA-細胞500個、Lin-HA+細胞5000〜6000個、Lin-HA-細胞5〜6x105個、Lin-Rhdull細胞1.1x105個、およびLin-Rhbright細胞5.5x105個の無処置およびヒアルロン酸処置細胞であった。
【0153】
(l)移植細胞の空間分布の分析 移植後15時間目に、CFSE陽性細胞の空間分布を、先に記載されたとおり(1)分析した。簡単に説明すると、2%パラホルムアルデヒド、0.05%グルタルデヒドを、下降大動脈に生理学的圧力で灌流することによって、BMを固定した。大腿骨を取り出して、10%EDTAで脱灰した。その後、骨を脱水させてパラフィンに包埋した。各大腿骨の縦方向切片3.5μmを切断し、色あせ防止用封入剤(Vectashield, Vector Laboratories)に封入した。切片は全て、FITCおよびテキサスレッドの2重フィルターセット(578nmでの緑色励起および610nmでの赤色励起)を用いた蛍光顕微鏡(Zeiss Camperdown, NSW, Australia)で分析した。このフィルターセットは、発光帯域幅が短く、CFSE陽性BM細胞を宿主の骨髄細胞と容易に識別できるために特別に選択した。
【0154】
移植のレシピエント毎に少なくとも6個の縦方向切片からCFSE標識細胞(陽性細胞)の位置を分析することによって、移植細胞の空間分布を決定した。各切片が大腿骨全体をより多く含むようにしながら、中心の縦方向切片を横方向切片に対比させて分析した。各細胞の一度だけの分析が確実に行われるよう、それぞれ別の3.5μm切片も分析した。陽性細胞の位置は、骨内膜(骨内膜の12細胞以内と先に恣意的に定義された(3))または中心(いずれかの骨内膜から12細胞より多く)のいずれかと設定した(1)。
【0155】
(m)RNA抽出 RNAを、RNAzol B(Bresatec, SA, Australia)抽出法を用いて抽出した。簡単に説明すると、細胞を遠心分離して、0.2ml/106細胞のRNAzol Bで細胞を溶解してRNAを調製した。そのホモジネートをクロロホルムで抽出し、イソプロパノールで沈殿させた。RNAを洗浄して乾燥し、滅菌水で再懸濁させた。
【0156】
(n)逆転写PCR(RT−PCR) ランダムへキサマー(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweeden)およびSuperscript II逆転写酵素(Gibco-BRL, Gaithersburg, MD)を用いて、テンプレートcDNAを調製した。PCRを、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施した:Genewarks(Adelaide, SA, Australia)によって合成された、マウスHas−1センス(5’CGTGGACTACGTGCAGGTCTGTG3’)(配列番号1)およびアンチセンス(5’GAGCGCGAGGTATACTTGGTAGC3’)(配列番号2)、マウスHas−2センス(5’GACCACACAGACAGGCGGA3’)(配列番号3)およびアンチセンス(5’TCCCAGGGTAGGTCAGCCTT3’)(配列番号4)、マウスHas−3センス3’5’(5’GAGCGTGTGCGAGCTGTGGTGTG3’)(配列番号5)およびアンチセンス(5’GAAGCATCTCAATGGTGCAGGCT3’)(配列番号6)、ヒトHAS−1センス(5’GCTACCAAGTACACCTCCAGGTC3’)(配列番号7)およびアンチセンス(5’CGCGTAGAACAGACGCAGCACAG3’)(配列番号8)、ヒトHAS−2センス(5’GCTCGCAACACGTAACGCAA3’)(配列番号9)およびアンチセンス(5’GGCACTTAGATCGAGCTGTG3’)(配列番号10)、およびヒトHAS−3センス(5’AGCCTGCAGGAGGGCATGGA3’)(配列番号11)およびアンチセンス(5’GGAGCGCGCGGTATACTTAGTTCGG3’)(配列番号12)。PCRは全て、遺伝子機器(Innovonics, Melbourne, Australia)内でパラフィン油30μlの下、25μlの容量で実施した。各PCRは、1xTaqゴールド緩衝液、200μM dNTPS(Boehringer Mannheim, Branchburg, NJ)、4μg/ml各プライマー、1.5mM MgCl2、10%DMSOおよび0.5単位 Taq Gold(Boehringer Mannheim)で構成されていた。PCRは、94℃で10分の最初のサイクルでTaqゴールドの活性化、30秒の変性を次のサイクル、60℃で30秒のアニーリングを10サイクル、続いて55℃で30秒のアニーリングを更に25サイクル、および72℃で30秒の伸長を35サイクル、その後に72℃で5分間の最後の伸長という条件で実施した。
【0157】
(o)統計解析 平均間の差を、適宜、一元配置分散分析(ANOVA)またはスチューデントt検定によって評価した。
【0158】
実施例1:マウス造血細胞におけるHA発現
HAの絶対特異性を実証するヒアルロン酸結合蛋白質(HABP)のビオチン化形態の結合によるフローサイトメトリー分析によって、HAの発現を実証した(4)。このアプローチを用いて、HABP結合を2種のマウスHSC濃縮細胞亜集団、つまりLin-Sca+Kit+(図1a)およびLin-Rhdullで検出し、酵素ヒアルロニダーゼ(HY)による細胞の前処置によって完全に除去した(図1b)。加えて、CD44-/-マウス(2)から分離した同様の割合のLin-Rh123dull細胞は、HABPの結合を呈し(26.5%に比較して25.0%)、細胞表面で検出されたHAが大部分のレセプターCD44(19)への外来性HAの結合によるものではなく、原始造血細胞自身でのデノボ合成によるものであることが実証された。重要なこととして、RT−PCR分析は、HABP-細胞ではなくLin-Sca+Kit+、Lin-HABP+細胞がHas−1、Has−2およびHas−3を発現していることを実証した(図2aおよび2b)。
【0159】
原始BM細胞によるHAの発現は、マウスの独特な特徴ではなく、ヒト造血細胞前駆体の特徴である。CD34、CD38およびHABPを用いたヒト臍帯血(CB)のFACS分析(図3)では、推定されるヒトHSCがHAを合成することが示された。興味深いこととして、成熟した細胞表現型に相関してHA発現のレベルが有意に低下し、CD34-CD38+細胞ではHA発現は検出されないことが示された。マウスでのデータによれば、分離されたヒトCD34+およびLin-HA+細胞もHAS1、HAS2およびHAS3を発現し、Lin-HA-はそれらを発現しなかった(図4)。これらのデータをまとめると、HAがHSCを濃縮したマウスおよびヒト造血細胞集団で合成および発現されることが実証される。
【0160】
しかし、HSCを再集団化させると、小さい割合でLin-Rh123dull細胞のみを現した(5)。HSCがHABP+亜集団内に含まれるかどうかを検討するために、FACSを用いて、Lin-HABP+とLin-HABP-、及びLin-Sca+HABP+とLin-Sca+HABP-の亜集団およびその細胞を単離して、共通遺伝子系Ly5.1/Ly5.2マウスモデルを用いてインビボでアッセイした(6)。Lin-HABP+細胞5000〜6000個によって、移植後8週目には、致死量放射線照射されたレシピエントの末梢血(PB)の造血細胞系列の全てが再生した(表2)が、同数のLin-HABP+細胞ではそのようにならず、レシピエントは移植後14〜16日目に死亡した。加えて、500個のLin-Sca+HABP+細胞の移植によって、致死量放射線照射を受けたレシピエントの多数の造血細胞系列が、移植後4週目に再生した(表2)。こうしてHAは、長期間の再集団化能のあるHSCで発現されたが、生着のレベルは、注入した非分別Lin-Sca+細胞から予測されるものよりも有意に低かった(7)。しかし、6匹のレシピエントのうち1匹だけに、致死量放射線照射されたレシピエントを救命することができたHABP-細胞があり(Lin-Sca+HABP-細胞500個の移植後)、この集団内にはHSCの大部分が含まれないことが示唆される。1匹の生存したレシピエントでは、HA+細胞の移植の後に見られたのと同じ割合でドナー細胞があった(〜9%)。予測された生着レベルよりもこのように低かった理由は依然として不明であるが、HAが単に受動的に構造的役割を担っているのではなく、特異的シグナル誘導分子であることも示唆される。
【0161】
【表2】

【0162】
マウスにLin-HABP+細胞5000〜6000個(4匹)またはLin-Sca+HABP+細胞500個(2匹)のどちらかを注入して、移植後4〜8週目に分析した。末梢血を採取して、塩化アンモニウムを用いて赤血球細胞を溶解した。ドナー細胞の割合(%)を、Ly5.1抗体標識を利用して測定したところ、Lin-HABP+細胞5000〜6000個またはLin-Sca+HABP+細胞500個の移植の後、それぞれ9±1.7%および9.4±0.02%であった。
【0163】
白血球では、マクロファージおよび顆粒球(MAC−1/GR−1)、B細胞(B220)およびT細胞(CD4/CD8)を標識し、ドナーの割合をLy5.1抗体を用いて分析した*。
UNは「不明」
【0164】
実施例3:HSC増殖の負の調節物質としてのHAの潜在的役割
インビトロでのストローマ不含のサイトカイン依存的培養によって、代理の可溶性リガンドHABPによるHAの連結反応が、マウスおよびヒト両方のHSC増殖を著しく抑制するが、初期に作用する造血細胞増殖因子の強力な組合わせによって刺激されることが実証された。マウスHSCおよび推定のヒトHSC(それぞれLin-Sca+Kit+細胞およびLin-CD34+CD38-細胞)の両方を、マウスHSCおよびヒトHSCそれぞれでSCF(75ng/ml)、IL−11、FLT3リガンドおよびIL−6(全て100ng/ml)、またはG−CSF、SCF、FLT3リガンド、MGDF(全て100ng/ml)、IL−6およびIL−3(両方とも10ng/ml)のいずれかで構成された複数のサイトカインと様々な濃度のHABPとの存在下、無血清条件で培養した。図5に示すように、これによって、HABPの濃度増加の存在に対応して細胞増殖が有意に阻害された。この予期しないデータから、造血に対するHAの著しい増殖阻害効果が示される。増殖阻害に加え、図5aに示すように、HABP量を増加させてHSCをインキュベートすると、投入した集団の細胞表現型が維持され、細胞分化が阻害された。これに対して、HABPの非存在下で培養された細胞が有意な割合で分化して、CD15陽性になった(図5b)。この観察された増殖調節的役割は、インビトロでのHAの添加によって造血が不安定になることを示した近年の報告と一致するものである(8)。この試験では、外来性HAをLTBMCに添加すると、前駆体と成熟したBM細胞の両方の産生が増加したが、HYを添加すると細胞産生が阻害された。これらの培養で、HAが骨髄球とリンパ球前駆体に共通する祖先の前駆体によって造血を調節していると考えられた。加えて、この観察されたHAの増殖調節的役割は、シアロムチンPSGL−1:P−セレクチンの相互作用について近年記載されたものと非常に類似している(9)。その明確に検証された接着分子としての役割に加えて、PSGL−1は、ヒト造血細胞前駆体の強力な負の調節物質であることがここに示された。
【0165】
実施例4:移植されたマウスHSCの空間分布におけるHAの役割
我々の研究室での更に近年のデータから、このHSCにおけるCAMの発現が機能的に重要で、それらの移植後の定着を調節することに関与することが示された。Lin-Rhdull細胞を移植前にHYで処置すると、移植後15時間目の骨内膜にある細胞数が、無処置細胞に比較して〜40%減少した(それぞれ39±3および65±8)。これに対して、Lin-Rhbright細胞のHY処置では、Has遺伝子はいずれも合成されず(データは示さない)、同じ時点でそれらの空間分布が変化しないことが示された(それぞれ41±3および37±4)。これは、HPCではなくHSCの空間配置を決定する際の特異的役割を示唆している。
【0166】
総括すると、我々のデータは、インビトロおよびインビボでHAのHSC合成および発現を初めて実証するものであり、少なくとも2種の哺乳類種の原始造血細胞の、非常に特異的であるがまだ認識されていない特徴を表している。HSC上でのHAの存在は、幹細胞生物学において、具体的には移植後のHSCの定着の調節において機能的に重要である。加えて、そのデータは、HSC表面のHAが代わりのリガンドに結合することで、これらの細胞の増殖および分化を調節する際に重要な役割を演じていることも示唆している。
【0167】
【表3】


【0168】
最後に、本明細書に概説した本発明の精神を逸脱することなく、様々な他の改良および/または変更が実施されてもよいことは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞(HSC)またはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
グルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンの二糖繰り返し配列の少なくとも1個を有する炭水化物配列またはその同等物の少なくとも1個の存在を検出する工程;および
その配列またはその同等物を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含むHSCまたはその子孫を同定する方法。
【請求項2】
ヒアルロン酸(HA)、ヒアルロン酸シンターゼ(HAS)またはその断片用のマーカーと細胞との相互作用を促進する手法で、試料をそのマーカーに暴露するか、またはそのマーカーと混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
マーカーが、細胞表面上のHA、HASまたはその断片を同定する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
マーカーが、HA、HASまたはその断片への抗体;HA、HASまたはその断片へのアゴニストおよびアンタゴニスト;HA、HASまたはその断片への結合蛋白質;DNA、RNA、mRNA、またはHAあるいはHAS蛋白質の存在によってHAまたはHASの発現を検出し得る核酸検出システム;ならびにHA、HASまたはその断片用の酵素、蛍光または比色アッセイからなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
結合蛋白質が、ヒアルロン酸結合蛋白質(HABP)である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
マーカーが、そのマーカーの同定を強化させるための標識を包含する、請求項2記載の方法。
【請求項7】
蛍光、放射線または酵素標識が、検出を強化させるためのマーカーに結合している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
細胞上のヒアルロン酸(HA)またはヒアルロン酸シンターゼ(HAS)もしくはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHA、HASまたはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
HAまたはHASを検出する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
HASの一部に対応するペプチド配列またはその同等物を検出する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
試料が、胚または成体の供給源に由来する、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
細胞試料が、腸骨稜、脛骨、大腿骨、脊髄、骨膜、骨内膜または他の骨腔をはじめとする骨髄に由来する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
細胞試料が、血液、胚の卵黄嚢、胎児肝臓、脾臓、末梢血、皮膚、真皮、ES細胞またはES細胞培養物に由来する、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
試料が、組織試料、細胞懸濁物またはインビトロで増殖させた細胞である、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
試料を、HA、HASまたはその断片の検出前に、CD34+細胞に対して濃縮する、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHA、HASまたはその断片に対する抗体と混合する工程;
HA、HASまたはその断片の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上の抗体の存在を検出することによって、HA、HASまたはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含む請求項8記載の方法。
【請求項17】
抗体が、HA、HASまたはその断片に特異的である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHA、HASまたはその断片に対する結合蛋白質と混合する工程;
その結合蛋白質の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上のその結合蛋白質の存在を検出することによって、HA、HASまたはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含む請求項8記載の方法。
【請求項19】
結合蛋白質が、HABP、またはHABPに基づく合成指示薬である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法。
【請求項21】
検出方法が、HAもしくはHASへの抗体;またはHAへの結合蛋白質(HABP)の使用を伴う、請求項20記載の方法。
【請求項22】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在を検出する工程;および
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在によって同定された細胞を選び出す工程、を含む集団からHSCまたはその子孫を除去する方法。
【請求項23】
選択前にHAまたはHASを検出するために抗体またはHABPを用いる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
HSC関係状態または関連状態を処置または診断する方法における、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法によって単離または同定されたHSCの使用。
【請求項25】
HSC関係状態または関連状態を処置または診断する薬剤の調製における、請求項1〜23のいずれか1項記載の方法によって単離または同定されたHSCの使用。
【請求項26】
請求項1〜16のいずれか1項記載の方法および特異的細胞系列用の特異的マーカーを用いて細胞系列を同定および単離することを含む、HSC集団内の亜集団を単離するための方法。
【請求項27】
細胞系列が、リンパ球、骨髄球または赤血球細胞系列である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
HSCまたはその子孫を含む細胞試料を得る工程;
その試料をHA、HASまたはその断片に対する抗体と混合する工程;
その抗体の存在を検出する工程;および
HSCまたはその子孫上の抗体の存在を検出することによって、HA、HASまたはその断片を有するHSCまたはその子孫を同定する工程、を含む請求項1記載の方法。
【請求項29】
抗体が、HA、HASまたはその断片に特異的である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
抗体が、酵素、磁気ビーズ、コロイド状磁気ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物、クロマトグラフィー樹脂、固体支持体および薬物からなる群から選択される分子または化合物とコンジュゲートしている、請求項28または29記載の方法。
【請求項31】
酵素が、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼおよびβ−ガラクトシダーゼからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
蛍光色素が、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、フィコエリトリン、アロフィコシアニンおよびテキサスレッドからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
金属化合物が、フェリチン、コロイド金およびコロイド状超常磁性ビーズからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項34】
ハプテンが、ビオチン、ジゴキシゲニン、オキサザロンおよびニトロフェノールからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項35】
放射性化合物が、テクネチウム99m、125I、および放射性核種を含むアミノ酸からなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
放射性核種が、14C、3Hおよび35Sからなる群から選択される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
CD34+を前濃縮し、請求項8記載のHA、HASまたはその断片の検出によってHSCまたはその子孫を同定し、別のマーカーをHA、HASまたはその断片用のマーカーと別個か、または組合わせて用いてその亜集団を識別することを含む、HSC集団内の亜集団を識別する方法。
【請求項38】
亜集団を、HAまたはHASの発現のレベルによって識別する、請求項37記載の方法。
【請求項39】
識別された亜集団が、CD34+、CD38-、CD90+(thy1)およびLin-細胞からなる群から選択されるHSC集団の表現型である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
細胞および抗体またはマーカーを、抗体またはマーカーがHAまたはHASおよびHSCまたはその子孫に特異的に結合するのに十分な条件下で混合し、その後定量する、試料中のHSCまたはその子孫の数を測定するための診断アッセイ。
【請求項41】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在を検出すること;
HA、HASまたはその断片の存在によって同定された細胞を選択することを含む、HSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法。
【請求項42】
HA、HASまたはその断片を認識してそれらに結合する抗体、マーカーまたは結合蛋白質をHA、HASまたはその断片に結合させる条件下で、その抗体、マーカーまたは結合蛋白質とHSCまたはその子孫の混合物とを混合し、その抗体、マーカーまたは結合蛋白質によって認識された細胞を分離して、HSCまたはその子孫を実質的に濃縮した集団を得ることを含む、HSCまたはその子孫の集団を濃縮する方法。
【請求項43】
請求項41記載の方法と、物理的性質、細胞表面特性および生体染色特性の相違に基づく分離または単離技術からなる群から選択される分離または濃縮技術との使用を含むHSCまたはその子孫を分離または濃縮する方法。
【請求項44】
技術が、FACS、または複数のカラーチャネル、低角度オブチューズ光散乱検出チャネル、もしくはインピーダンスチャネルによって改変されたFACSである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
細胞を、HA、HASまたはその断片への抗体を用いた正の選択によって、最初大まかな分離によって分離し、その後精密な分離によって分離する、請求項42または43記載の方法。
【請求項46】
HAまたはHASの同定の前に、前濃縮工程でCD34+細胞を濃縮する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
その細胞集団をHA、HASまたはその断片に対する結合蛋白質と混合する工程;および
細胞上のHA、HASまたはその断片を示す結合蛋白質の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法。
【請求項48】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得る工程;
その細胞集団をHA、HASまたはその断片に対する抗体と混合する工程;および
細胞上のHA、HASまたはその断片を示すその抗体の存在によって同定された細胞を選択する工程、を含むHSCまたはその子孫を濃縮した細胞集団を得る方法。
【請求項49】
細胞集団用の特異的マーカーを、細胞集団を更に濃縮するために用いる、請求項48記載の方法。
【請求項50】
特異的マーカーが、特異的細胞系列用のものであり、これらの細胞を濃縮するため、またはこれらの細胞の反対を濃縮するために用いられる、請求項49記載の方法。
【請求項51】
細胞系列が、リンパ球、骨髄球または赤血球系列である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
マーカーが、間葉幹細胞またはケラチノサイト幹細胞を除去または選び出すことによって、HSCまたはその子孫を濃縮するために用いられる、請求項48記載の方法。
【請求項53】
別の幹細胞特異性マーカーの正の選択により更に濃縮することを含む、請求項48記載の方法。
【請求項54】
幹細胞マーカーを、CD34+、Thy−1+およびc−kit+からなる群から選択する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
請求項19、20および41〜54のいずれか1項記載の方法によって調製されるHSCまたはその子孫の濃縮集団。
【請求項56】
HSCまたはその子孫を除去した集団を残すために、HAまたはHASを発現する細胞を選び出すことによって、HSCまたはその子孫を実質的に含まない集団を提供するためのHAまたはHASの使用。
【請求項57】
HA、HASまたはその断片への抗体または結合蛋白質を用いて、HAまたはHASを検出する、請求項56記載の使用。
【請求項58】
HAを、HABPによって検出する、請求項56記載の使用。
【請求項59】
HSCまたはその子孫に対する負の選択を受けていない対照細胞集団に比べて減少したHSC集団を有する細胞集団。
【請求項60】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在を検出すること;
細胞上のHA、HASまたはその断片の存在によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
HA、HASまたはその断片の存在によって同定されたそれらの細胞を単離すること、を含むHSCまたはその子孫を単離する方法。
【請求項61】
HSCの単離が、抗体コート化磁気ビーズ、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体と結合した細胞毒性剤、またはモノクローナル抗体と共に用いる細胞毒性剤、および固体マトリックスに結合した抗体の使用からなる群から選択される方法による、請求項60記載の方法。
【請求項62】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHA、HASまたはその断片に対する結合蛋白質と混合すること;
HA、HASまたはその断片の結合蛋白質によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
その結合蛋白質によって同定された細胞を単離すること、を含むHSCまたはその子孫を単離する方法。
【請求項63】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHA、HASまたはその断片に対する抗体と混合すること;
HA、HASまたはその断片に対する抗体によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
その抗体によって同定された細胞を単離すること、を含むHSCまたはその子孫を単離する方法。
【請求項64】
抗体が、HAまたはHASに特異的である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
抗体が、全種のαHAポリクローナルヒツジ抗体である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
請求項60〜65のいずれか1項記載の方法によって単離されたHSCまたはその子孫。
【請求項67】
細胞が、CD34+、HA+である、請求項66記載のHSC。
【請求項68】
細胞が、CD34+、thy1、HA+である、請求項66記載のHSC。
【請求項69】
細胞が、CD34+、CD38-、thy1+、HA+である、請求項66記載のHSC。
【請求項70】
CD34+、CD38-、thy1+およびHA+細胞を含む細胞の濃縮集団を含む、濃縮したHSCおよびその子孫の組成物。
【請求項71】
自家生着における請求項70記載の組成物の使用。
【請求項72】
遺伝子欠損を修復するため、またはHSCもしくはその子孫あるいはその子孫の生来欠けている遺伝子能力を提供するための、遺伝子導入によって改変された請求項70記載の組成物の使用。
【請求項73】
HSCまたはその子孫の再生および分化に関連する因子を単離および定義するための、請求項70記載の組成物の使用。
【請求項74】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHA、HASまたはその断片に対する結合蛋白質と混合すること;
HA、HASまたはその断片に対する結合蛋白質によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
その結合蛋白質による選択の前の細胞集団中の細胞の量に対する選択細胞の量を定量すること、を含むHSCまたはそれらの子孫の含量を測定する方法。
【請求項75】
HSCまたはその子孫を含む細胞集団を得ること;
その細胞集団をHA、HASまたはその断片に対する抗体と混合すること;
HA、HASまたはその断片に対する抗体によって同定されたそれらの細胞を選択すること;
そのHAまたはHAS抗体による選択の前の細胞集団中の細胞の量に対する選択細胞の量を定量すること、を含むHSCまたはその子孫の含量を測定する方法。
【請求項76】
HSC関連状態の診断のための、請求項74または75記載の方法の使用。
【請求項77】
その状態が、白血病、上皮性悪性腫瘍、非上皮性悪性腫瘍、およびHSCまたはそれらの子孫の活性増加を引き起こす一般的感染からなる群から選択される、請求項76記載の使用。
【請求項78】
HSCまたはそれらの子孫の活性増加が、造血幹細胞集団内で起こる、請求項77記載の使用。
【請求項79】
HSCまたはそれらの子孫の活性増加が、リンパ球系列内で起こる、請求項77記載の使用。
【請求項80】
定量が、リンパ球系列から分化して、抗体産生、細胞免疫系の調節、血液中の異物の検出、または宿主にとって異物である細胞の検出をもたらす、B細胞およびT細胞を示すことの提供である、請求項74または75記載の方法。
【請求項81】
細胞集団から同定されたHSCまたはそれらの子孫を有する抗体処置試料を無処置試料と比較して、HSCを含む成分を同定することを含む、請求項75記載の方法。
【請求項82】
HAまたはHASもしくはその断片の指示薬および担体を含む、集団内のHSCまたはその子孫を検出するための組成物。
【請求項83】
HA、HASまたはその断片の指示薬が、HSCまたはその子孫上のHAまたはHASもしくはその断片を同定し得る検出手段を包含する、請求項82記載の組成物。
【請求項84】
指示薬が、HA、HASまたはその断片への抗体または結合蛋白質である、請求項83記載の組成物。
【請求項85】
結合蛋白質が、HABPである、請求項84記載の組成物。
【請求項86】
特異的細胞系列を識別するための別のマーカーを含む、請求項83記載の組成物。
【請求項87】
細胞集団中のHSCまたはその子孫の存在を同定することによって、HSCまたはその子孫に関連する状態を診断する方法。
【請求項88】
HSCまたはその子孫中のHA、HASまたはその断片の発現および/または活性を調整することを含む、HSCまたはその子孫の増殖および/または分化を制御する方法。
【請求項89】
HSC内のHAまたはHASの発現および/または活性の調整を、HAまたはHASのアンタゴニスト、阻害剤、擬似物質または誘導体を用いて実行する、請求項88記載の方法。
【請求項90】
請求項19、20および41〜54のいずれか1項記載の方法によって調製されたHSCまたはその子孫の濃縮集団を含む組成物の有効量を投与することを含む、HSC関連状態を処置する方法。
【請求項91】
HSC関連状態が、大球性貧血および再生不良性貧血;血小板減少症;形成不全;汎発性血管内凝固症候群(DIC);脊髄形成異常;自己免疫性血小板減少性紫斑症(ITP);HIV誘導性ITPおよび白血病からなる群から選択される、請求項90記載の方法。
【請求項92】
エリトロポエチン、コロニー刺激因子、インターロイキンから選択される因子、およびHSCまたはその子孫に関連するストローマ細胞を用いて、1種以上の選択系列への成熟、増殖および分化をもたらすことによる、免疫無防備状態の宿主を再生させるための細胞の使用、または特異的系列のための細胞源としての細胞の使用。
【請求項93】
造血細胞の分化および成熟に関連する因子の単離および評価におけるHSCおよびその子孫の使用。
【請求項94】
遺伝子疾患の処置のためのHSCの使用。
【請求項95】
遺伝子欠損を修復するための自家幹細胞または同種異型幹細胞の遺伝子改変による、HSCに関連する遺伝子疾患の処置のための請求項94記載の使用。
【請求項96】
疾患が、β−サラセミア、鎌状赤血球貧血、またはアデノシンデアミナーゼ、レコンビナーゼもしくはレコンビナーゼ調節遺伝子内の欠損である、請求項95記載の使用。
【請求項97】
HSCまたはその子孫の非制御的増殖から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、HSCまたはその子孫内でのHA、HASまたはその断片の発現を制御することを含む方法。
【請求項98】
HSCまたはその子孫の非制御的増殖から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、HSCまたはその子孫内でのHA、HASまたはその断片の発現および/または活性を低下させることを含む方法。
【請求項99】
状態が、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される、請求項98記載の方法。
【請求項100】
HSCまたはその子孫の分化から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、HSCまたはその子孫内でのHA、HASまたはその断片の発現および/または活性を制御することを含む方法。
【請求項101】
HSCまたはその子孫の分化から生じるHSC関連状態を処置する方法であって、HSCまたはその子孫内でのHA、HASまたはその断片の発現および/または活性を低下させることを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a(i)】
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【図5a(ii)】
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【図5b(i)】
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【図5b(ii)】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−232853(P2009−232853A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−136863(P2009−136863)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2003−540336(P2003−540336)の分割
【原出願日】平成14年10月24日(2002.10.24)
【出願人】(504058570)ピーター・マッカラム・キャンサー・インスティテュート (2)
【氏名又は名称原語表記】PETER MACCALLUM CANCER INSTITUTE
【Fターム(参考)】