説明

連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段

【課題】メンテナンス作業の回数を低減できながら、品質の良好な金属めっき線材が得られる連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段を提供する。
【解決手段】金属線材支持手段12は、めっき槽11内に固定される本体2と、この本体2に着脱可能に取り付けられるセラミック製の支持部3と、支持部3の表面に円弧に沿って形成され、金属線材15を摺動可能に支持する複数の支持溝31とを備える。本体2は、めっき槽11に固定される固定部21と断面円弧状の曲面からなる支持面22とを有する。支持部3は、本体2の支持面22に取付部材6を介して着脱可能に取り付けられ、複数の金属線材15を所定間隔をおいて配置可能な幅を有する断面円弧状の板状部材からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線材に連続溶融金属めっきを行う装置に用いられ、溶融金属中で金属線材を摺動可能に支持する連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段に関する。
【背景技術】
【0002】
金属線材に金属めっきを施す金属めっき装置としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の金属めっき装置は、特許文献1の図9および図10に示すように、複数本の金属線材を等間隔で平行に並べた状態で、めっき槽内を通過させ、この平行状態を保持したままめっき槽から引き上げてめっきを行うようになっている。さらに、この金属めっき装置は、めっき槽内部にシンカーローラを回転可能に配置して、このシンカーローラで、金属線材を支持しながら、金属めっきを行うようになっている。
【0003】
複数の金属線材を同時に金属めっきする場合、シンカーローラは、線材同士が接触してめっきが剥離することを防止するために、通常は、ローラの外周面に周方向に沿った複数の溝が形成されている。これら溝に1本ずつ線材を嵌め合わせることにより、線材間を所定の間隔に保持することができる。さらに、シンカーローラは溶融金属中に浸漬されるので、通常、溶融金属(例えば亜鉛)と反応し難い純鉄などの鉄系材料で形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004-124251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記したシンカーローラで金属線材を支持しながら溶融めっきを行うと、シンカーローラは溶融金属中で回転するため、シンカーローラの回転振動がめっき中の線材に伝わり、金属線材のめっき部分の表面に欠陥が生じ易いという問題がある。即ち、溶融金属が固化しようとするときに金属線材およびめっき部分に振動が与えられると、めっき表面に凸凹ができてしまう。
【0006】
また、シンカーローラは、溶融金属中に浸漬されるので、常に、溶融金属と接触した状態となっており、しかも、溶融金属が表面に付着した金属線材にも接触する。そのため、シンカーローラの表面には、溶融金属とシンカーローラを構成する金属との合金層が形成されていく。この合金層がシンカーローラの溝に形成されると、金属線材の表面に押し込み疵などの表面欠陥が発生する虞がある。その結果、シンカーローラを頻繁に交換しなくてはならず、メンテナンス作業が煩雑となるばかりか、交換用のシンカーローラを多数用意しなければならないので、コストも高くなる。
【0007】
さらに、前記シンカーローラは回転可能にめっき槽内に支持される構成となっているため、シンカーローラを支持する軸受が必要となる。この軸受は、めっき槽内で高温に曝されるため、通常、耐熱性に優れるカーボンで形成されている。しかしながら、カーボンでは、耐摩耗性に乏しく、頻繁に軸受けを交換する必要があり、この点においても、メンテナンス作業回数が多くなり、交換用の軸受を多数用意しなければならない問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、メンテナンス作業の回数を低減できながら、品質の良好な金属めっき線材が得られる連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、金属線材に連続溶融金属めっきを行う装置に用いられ、溶融金属中で金属線材を支持する連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段として、回転しない支持手段を用いて、欠陥が生じること無く金属線材にめっきを施せないか、種々の検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明者は、まず、従来のシンカーローラの代わりとして、溶融金属に侵食されず、高い耐摩耗性を有するセラミックからなり、一部に円弧状の曲面を有する柱状体を形成し、この柱状体の曲面に周方向に沿って複数の溝を形成した支持部材を作製してみた。そして、この柱状支持部材をめっき槽内に固定した後、柱状支持部材の溝に金属線材を嵌め合わせた状態で、金属線材を走行させながら、めっきを施してみた。
【0011】
その結果、支持部材には振動が生じないので、表面精度に優れた金属めっき線材が得られた。しかし、柱状支持部材は形状が大きく、このように大きい物をセラミックで成型すると、温度変化による収縮が大きくなるため、割れや変形などが生じやすくなる問題があった。さらに、セラミックは脆いため、大型の支持部材をめっき槽内に取り付ける際に、他の部品等に接触して破損したり、溝に金属線材を嵌め込むときに、金属線材が溝の縁に当たって破損したりする可能性が高い。このように、支持部材が破損、変形した場合には、たとえ部分的に不具合が生じた場合でも、支持部材全体を取り換えなければならない。また、支持部材を形成するセラミックは材料費が高く、頻繁に支持部材を交換するようになった場合には、コスト高になってしまう。
【0012】
そこで、本発明者は、溶融金属中で金属線材を支持する連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段を、一つの部材から構成するのではなく、金属線材と接触させる部材と、この金属線材と接触する部材を支持する部材とに分けて構成した。さらに、金属線材と接触する部分を耐摩耗性に優れ、溶融金属により侵食されないセラミックで形成した。このように金属線材支持手段を構成することにより、金属線材支持手段の変形が少なくなりメンテナンスの回数を軽減できながら、品質の優れた金属めっき線材を提供できるに至った。しかも、金属線材支持手段の交換を行う場合には、部分的に部品交換ができることから、メンテナンスコストの低廉化が図れた。
【0013】
具体的には、本発明の金属線材支持手段は、めっき槽内に固定される本体と、この本体に着脱可能に取り付けられる支持部と、支持部の表面に円弧に沿って形成され、金属線材を摺動可能に支持する複数の支持溝とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記本体は、めっき槽内に固定される固定部と断面円弧状の曲面からなる支持面とを有する。本体を形成する材料は、溶融金属と反応し難い純鉄などの鉄系材料でもよいし、耐摩耗性に優れるセラミック材料でもよい。低コストで破損を少なくするためには、鉄系材料で形成することが好ましい。
【0015】
支持部は、前記本体の支持面に沿って取付部材を介して着脱可能に取り付けられ、複数の金属線材を所定間隔をおいて配置可能な幅を有する断面円弧状の板状部材からなる。さらに、支持部はセラミックで形成されている。使用するセラミック材料としては、例えば酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどが挙げられる。
【0016】
また、本体と支持部とを異なる材質で形成する場合、熱膨張率が異なる場合がある。例えば、本体を鉄系の材料で形成し、支持部をセラミックで形成する場合、鉄系材料の方が、熱膨張率が大きい。このような場合、本体の支持面に隙間無く支持部を取り付けると、高温の溶融金属により本体と支持部とが加熱されて本体と支持部とが膨張したときに、本体の方が熱膨張率が高いので、本体と支持部に歪みが生じてしまう。
【0017】
そこで、本発明では、本体と支持部との接触部分において、熱膨張率による寸法の変動量を見越した隙間を介して、支持部を、本体から外れないように取り付けることが好ましい。
【0018】
さらに、本体を鉄系材料で形成する場合には、本体が溶融金属と反応して、その表面に合金層が形成される虞がある。このような合金層が形成されてしまうと、本体の体積が増加したり、変形することになる。このように合金層の形成で本体が変形してしまうと、本体に支持される支持部に応力がかかってしまう。
【0019】
そこで、本体における支持部と接触する部分に、セラミックまたはサーメットの薄膜を形成することが好ましい。このように、本体の表面にセラミック層などが形成されると、本体に合金層が形成されなくなるので、本体の変形が防止され、支持部に変形による応力がかかることも無くなる。
【0020】
ところで、金属めっき装置では、支持部の表面に形成される支持溝に金属線材を沿わした状態で、金属線材を摺動させるので、支持溝の円弧方向両端部において、金属線材が接触しないようにする必要がある。そこで、本発明は、支持部は、その表面の円弧の長さが、中心角で120°以上となるように形成することが好ましい。支持部の表面の円弧の長さを、中心角で120°以上とすることにより、支持部に金属線材を沿わした際の金属線材が形成する角度をなるべく小さくできながら、金属線材を支持溝の長手方向(円弧方向)端部に接触させることなく、支持溝内を摺動させることが可能となる。その結果、めっき槽の開口面積をできるだけ小さくすることができる。
【0021】
さらに、支持部は、複数の分割片で構成することが好ましい。このように、分割片で支持部を構成することにより、破損した分割片のみを取り換えることができるので、メンテナンスに必要なコストをさらに低廉できる。
【0022】
支持部の分割片は、円弧方向に並べて配置するようにしてもよいし、幅方向に並べて配置するようにしてもよい。さらには、円弧方向と幅方向とに並べるようにしてもよい。特に、幅方向に並べて配置する場合には、一つの分割片に1本の支持溝を形成するようにすれば、同時にめっき処理を行う金属線材の本数にあわせて、支持部の分割片の数を設定できるので、金属線材支持手段の大きさを所望の大きさにできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段は、めっき槽内に固定される本体と、この本体の支持面に着脱可能に取り付けられるセラミック製の支持部と、支持部の表面に円弧に沿って形成され、金属線材を摺動可能に支持する複数の支持溝とを備える構成した。
【0024】
この構成により、金属線材支持手段を回転しない構造にできるので、金属線材支持手段が振動せず、高い表面精度のめっき線材が得られる。さらに、支持部が耐摩耗性が良好で溶融金属に侵食されないセラミックで形成されているので、金属線材が支持溝を摺動しても磨耗を少なくできるし、支持部表面に合金層が形成されて変形することもない。その結果、メンテナンス作業の回数を低減できるとともに、部品の交換回数を低減できるのでコストの低廉化が図れる。
【0025】
しかも、本発明の金属線材支持手段は、金属線材が接触する支持部と、この支持部とは別に形成される本体とを備えるように構成しているので、成型精度が高められる。しかも、金属線材支持手段の一部が破損したとしても、破損した部分の部材を交換するだけで、正常な状態にすることができる。従って、メンテナンス時に必要となる部品点数が少なくなるので、コストのさらなる低廉化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0027】
本発明の金属線材支持手段は、図11に示す金属めっき装置に組み込まれている。図11に示す金属めっき装置1は、めっき槽11と、このめっき槽11に貯留される溶融金属中に配置される金属線材支持手段12と、溶融金属浴面近くに配置される絞り部13と、絞り部13の上部に配置される冷却装置14と、金属線材15を案内する複数のローラ16とを備える。そして、金属線材15を、これらローラ16と金属線材支持手段12に沿わせ、絞り部13と冷却装置14に通過させた状態で、金属線材15を走行させる。金属線材15は、めっき槽11で表面に溶融金属が付着され、めっき処理がなされる。
【0028】
本発明は、このめっき槽11内に配置される金属線材支持手段12である。本発明の第1実施形態から第5実施形態の金属線材支持手段12について説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1から図3に示す金属線材支持手段12は、めっき槽内に固定される本体2と、この本体2に着脱可能に取り付けられる支持部3と、支持部3の表面に円弧に沿って形成され、金属線材15を摺動可能に支持する複数の支持溝31とを備える。
【0030】
本体2は、めっき槽内に固定される固定部21と断面円弧状の曲面からなる支持面22とを有する。本体2の構成部材は、全て純鉄で形成されている。
【0031】
支持面22は、断面円弧状の板部材から形成され、円弧の長さは、中心角170°となる長さになっている。支持面22には、後記する取付部材6の突起部61が嵌め込まれる長尺な挿入穴23が、円弧方向の両端部に形成されている。
【0032】
固定部21は、3つの固定板24と、これら固定板24の上端に連結される連結板25とを有する。固定板24は、下部の扇状部分と、この扇状部分の上部に延設される直線部分とを有する板部材で形成されており、扇状部分の側面が前記支持面22の円弧内面側に連結されている。
【0033】
連結板25は、図2における長手方向端部に、上方に向けて立ち上がる立ち上がり片25aが形成されている。この立ち上がり片25aをめっき槽内の壁面に固定する。
【0034】
支持部3は、図3に示すように、前記本体2の支持面22に取付部材6を介して着脱可能に取り付けられる。支持部3は、図3および図4に示すように、セラミック材料からなる断面円弧状の板状部材から形成されている。セラミック材料としては、SiO2、Al2O3、ZrO2などが好ましい。
【0035】
さらに、支持部3の円弧内面側外周縁には、全周に亘って段状に形成される鍔部41が形成されており、この鍔部41を取付部材6に係止させるようになっている。
【0036】
さらに、支持部3は、固定部21の支持面22と同様に、円弧の長さは、中心角170°となる長さになっている。さらに、支持部3の幅は、5本の金属線材を所定間隔で配置可能な幅を有している。支持部3における円弧曲面の外面には、円弧方向に延び、金属線材15を案内する5本の支持溝31が形成されている。
【0037】
取付部材6は、支持部3の円弧外面側が挿入可能な枠状をしており、支持部3の円弧形状に沿って湾曲した一対の湾曲フレーム部分62と直線状に延びる一対の直線フレーム部分63とを有する。これらフレーム部分62,63における固定部21の支持面22との対向側開口部には、段部64が形成されており、この段部64に支持部3の鍔部41が係合するようになっている。支持部3の鍔部41が、取付部材6の段部64に係合することにより、取付部材6の開口部から、支持部3が抜け落ちるのが阻止される。
【0038】
さらに、取付部材6における段部64が形成された側の開口部は、直線フレーム部分63の端面が、湾曲フレーム部分62の端面よりも突出するように形成しており、直線フレーム部分63の突出させた部分が、支持面22の挿入穴23に挿入される突起部61となる。
【0039】
そして、取付部材6の内部に支持部3を配置させた状態で、取付部材6の突起部61を、本体2の支持面22に形成した挿入穴23に圧入して、取付部材6を支持面22に固定する。取付部材6の支持面22への固定により、支持部3が取付部材6を介して支持面22に取り付けられた状態になる。
【0040】
また、本体2と支持部3は、異なる材質で形成されているため、熱膨張率が異なる。本実施形態では、本体2の熱膨張による体積増加を考慮して、本体2の支持面22に取付部材6を介して支持部3を取り付けたとき、支持面22と支持部3の円弧内面との間に、所定の隙間が形成されるように、本体2と支持部3とを所定の大きさに形成している。このように隙間を設けることにより、本体2が体積増加しても支持部3に過大な応力がかからないようにできる。
【0041】
さらに、本体2は、純鉄で形成されているので、本体2の支持面22が、溶融金属に接触すると、溶融金属と反応して、支持面22の表面に合金層が形成されてしまう虞がある。本実施形態では、このような合金層が形成されないように、本体2の支持面22にセラミックまたはサーメットの薄膜を形成している。セラミック材料としては、SiO2、Al2O3、ZrO2などを用いることができる。セラミック材料の場合は、支持部3と同じ材質としてもよい。異なる材質としては、WC、TiCなどが挙げられる。薄膜の形成は、溶射により行う。
【0042】
そして、支持部3が取り付けられた本体2をめっき槽に固定した後、この支持部3の支持溝31に金属線材15を嵌め合わして、めっき処理を行う。
【0043】
本実施形態によれば、金属線材支持手段12は回転しないので、金属線材支持手段12は振動せず、高い表面精度のめっき線材が得られる。さらに、支持部3は耐摩耗性が良好で溶融金属に侵食されないセラミックで形成されているので、金属線材15が支持溝31を摺動しても磨耗を少なくできるし、支持部表面に合金層が形成されて変形することもない。その結果、メンテナンス作業の回数を低減でき、部品の交換回数を低減できるのでコストの低廉化が図れる。
【0044】
さらに、金属線材支持手段12を、支持部3と、この支持部3とは別に形成される本体2とを備える構成にしているので、成型精度が高められ、金属線材支持手段12の一部が破損したとしても、破損した部分の部材、例えば支持部3のみを交換するだけで、正常な状態にすることができる。従って、メンテナンス時に必要となる部品点数が少なくなるので、コストのさらなる低廉化が図れる。
【0045】
(第2実施形態)
また、図5から図7に示す第2実施形態では、支持部を、複数の分割片で構成している。第2実施形態では、支持部を除いた構成は、第1実施形態と同じであり、本体2と、取付部材6は、第1実施形態と同じ構成のものを使用しているので、説明は省略する。
【0046】
第2実施形態に係る支持部30は、第1実施形態の支持溝31を有する支持部3を、そのまま円弧方向に等間隔で5つに分割した構成をしている。そして、これら分割された部分が分割片51となる。各分割片51は、支持溝形成側の面の円弧方向長さが第1実施形態の円弧方向長さの1/5となる。各分割片51も本体2の支持面22に、取付部材6を介して着脱可能に取り付けられる。
【0047】
さらに、支持部30は、第1実施形態と同様に、全ての分割片51がセラミック材料で形成されている。各分割片51のうち、幅方向両端の分割片51には、三方に鍔部42が形成され、これら幅方向端部の分割片51に挟まれる分割片51には、円弧方向両端部に直線状の鍔部42が形成される。これら、分割片51を組み合わすと、前記した第1実施形態と同じ形状の支持部30が形成される。
【0048】
第2実施形態では、支持部30を円弧の周方向に複数分割した構成としているので、分割片51の一つに破損が生じた場合には、その破損した分割片51のみを交換するだけでよい。
【0049】
(第3実施形態)
また、支持部を複数の分割片で構成する場合、例えば、第1実施形態の支持溝31を有する支持部3を、そのまま幅方向に複数分割した構成とすることもできる。この場合には、図8に示すように、1つの分割片52に、1本の支持溝31を形成する。そして、5本の金属線材を同時にめっき処理する場合には、5つの分割片52を併設させて、取付部材を介して本体に取り付けるようにする。
【0050】
分割片52は、図8に示すように、円弧方向両端部に鍔部43を形成し、この鍔部43を、取付部材に係止させる。そして、取付部材を本体に取り付けることにより、分割片52が取付部材を介して本体に取り付けられる。
【0051】
第3実施形態では、分割片52を幅方向に複数個並べて配置することにより支持部が形成される。本実施形態の場合、分割片52の一つに破損が生じた場合には、その破損した分割片52のみを交換するだけですみ、しかも、同時にめっき処理を行う金属線材の本数にあわせて、分割片52を本体に取り付けることができる。
【0052】
なお、第3実施形態の分割片52は、第1実施形態と同じ構成の本体2と取付部材6を用いることができる。
【0053】
(第4実施形態)
さらに、支持部を、前記第3実施形態と同様に、幅方向に分割した分割片で構成する場合、図9に示すように、分割片53を、1本の支持溝31が形成された円弧状の板状部材で形成し、分割片53の幅方向両端部に鍔部44を形成するようにしてもよい。
【0054】
この場合には、分割片53を所定の間隔を空けて併設し、分割片53の間に、図示していないが、隣り合う分割片53の鍔部44に当接する取付部材を配置させ、幅方向端部に配置される分割片53の鍔部44に当接する取付部材を配置させる。これら取付部材は、分割片53と同じ円弧形状を有し、幅方向の断面がT字形状のものと、L字形状のものを用いる。これら取付部材を本体に固定することにより、分割片53を取付部材を介して本体に取り付けることができる。
【0055】
第4実施形態でも、分割片53の一つに破損が生じた場合には、その破損した分割片53のみを交換するだけでなく、同時にめっき処理を行う金属線材の本数にあわせて、分割片53を本体に取り付けることができる。
【0056】
(第5実施形態)
さらに、支持部を複数の分割片で構成する場合、図8に示す分割片52と同じ形状で、円弧方向長さが第3実施形態のものよりも短い分割片54を用いるようにしてもよい。この場合には、図10に示す第5実施形態のように、分割片54を円弧方向に並べて配置するとともに、幅方向にも配置する。各分割片54には、1本の支持溝31が形成され、円弧方向両端には、鍔部45が形成されている。
【0057】
これら分割片54が取り付けられる本体7は、円弧板状の支持面71と、支持面71の円弧中心位置に設けられる支持筒72と、支持筒72と支持面71を連結する3つのリンク部73とを有する。支持面71には、取付部材6が挿入される挿入穴74が形成されている。この挿入穴74は、支持面71の幅方向に延びる長穴で、本実施形態では、リンク部73に対応して3箇所形成している。
【0058】
取付部材8は2種類あり、一つは、二つの分割片54を円弧方向に配置させたとき、その間に配置される中間取付部材81であり、他の一つは、二つの分割片54の円弧方向外側に配置される外側取付部材82である。
【0059】
中間取付部材81は、断面T字形状をした長尺部材で形成されている。中間取付部材81の両側の段部83で、隣り合う分割片54の鍔部45を係止するようになっている。中間取付部材81は、突起部分を本体7の挿入穴74に圧入することにより、本体7に固定される。
【0060】
外側取付部材82は、断面L字形状をした長尺部材で形成されている。外側取付部材82の段部83で、分割片54の鍔部45を係止するようになっている。外側取付部材82も、突起部分を本体7の挿入穴74に圧入することにより、本体7に固定される。
【0061】
また、本実施形態も、第1実施形態と同様に、各取付部材8を本体7に固定したとき、分割片54と本体7の支持面71との間に所定の隙間が形成されるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段は、多数の金属線材を同時にめっき処理する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態に係る本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段の側面図である。
【図2】図1に示す連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段の正面図である。
【図3】図1に示す連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段の断面図である。
【図4】図1に示す連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段に用いる支持部の斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段の側面図である。
【図6】図5に示す連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段の正面図である。
【図7】図5に示す連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段に用いる支持部の斜視図である。
【図8】第3実施形態に係る本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段に用いる支持部における分割片の斜視図である。
【図9】第4実施形態に係る本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段に用いる支持部における分割片の斜視図である。
【図10】第5実施形態に係る本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段の断面図である。
【図11】本発明の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段が用いられるめっき装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 金属めっき装置
11 めっき槽 12 金属線材支持手段 13 絞り部 14 冷却装置
15 金属線材 16 ローラ
2 本体
21 固定部 22 支持面 23 挿入穴 24 固定板
25 連結板 25a 立ち上がり片
3 支持部 30 支持部
31 支持溝
41,42,43,44,45 鍔部
51,52,53,54 分割片
6 取付部材
61 突起部 62 湾曲フレーム部分 63 直線フレーム部分 64 段部
7 本体
71 支持面 72 支持筒 73 リンク部 74 挿入穴
8 取付部材
81 中間取付部材 82 外側取付部材 83 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材に連続溶融金属めっきを行う装置に用いられ、溶融金属中で金属線材を支持する連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段であって、
めっき槽に固定される固定部と断面円弧状の曲面からなる支持面とを有する本体、
この本体に、前記支持面に沿って取付部材を介して着脱可能に取り付けられ、複数の金属線材を所定間隔をおいて配置可能な幅を有する断面円弧状の板状部材からなる支持部、
支持部の表面に円弧に沿って形成され、金属線材を摺動可能に支持する複数の支持溝を備え、
支持部がセラミックで形成されていることを特徴とする連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段。
【請求項2】
本体が鉄系材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段。
【請求項3】
支持部表面の円弧の長さが、中心角で120°以上となるように形成していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段。
【請求項4】
支持部が複数の分割片で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段。
【請求項5】
支持部の分割片は、円弧の周方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段。
【請求項6】
支持部の分割片は、幅方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の連続溶融金属めっき用の金属線材支持手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−162120(P2007−162120A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363910(P2005−363910)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(502353169)株式会社メタックス (3)
【Fターム(参考)】