説明

連続製鋼法および連続製鋼装置

例えば連続鋳造システムのダンディシュおよび付随する装置に連続的に鋼を供給するための溶解、酸化、還元および精錬用の複数の個別の反応容器を介した鋼の連続的な精錬方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共同契約番号DE FC36-03ID14279により米国エネルギー省の支援を受けなされたものである。米国政府は本発明に関し一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一貫し、連続した溶解、精錬および例えば連続鋳造機タンディッシュへの鋼の供給による連続製鋼法に関する。
【背景技術】
【0003】
1860年代以降多くの連続した製鋼法が提案されている。このような場合の「連続」は、定期的に鋼を取鍋(またはレードル)に注ぐ間に、半連続的に高温の金属またはスクラップを挿入する、およびスラグを除去する工程を意味するのに用いられている。溶解、精錬または輸送のどこかの操業の特定の状況で中断があるが、連続的に鋼を取鍋に注ぐ際に、この用語は連続して各種の容器を用いる工程を示すのに用いられている。また、溶解から精錬を経て連続鋳造機で鋳造するまで鋼の流れが中断することなく連続して鋼を輸送する完全に連続した工程を示すのにも用いられている。
【0004】
従来の製鋼法に太刀打ちできなかったことから、連続製鋼法は、概して工業的には受け入れられなかった。転炉(または酸素転炉)(BOF)、電気アーク炉(または電炉)(EAF)、取鍋精錬炉(LMF)および他の2次的な処理装置の頻繁な改良は生産および品質のフレキシビリティーを与え、いくらかの方法が例外的に試験されているものの新しくリスクのある連続製鋼法を商業化するよりも収益性が高いと認識されている。
【0005】
ある面では非平衡CSTRまたはPFRに類似した方法は、制御不能となり、従来のバッチ式の操業と比べ実質的に安い溶解コストを実現できていない。これらの方法のほとんどが、バッチ方式で実施しているように、取鍋に鋼を注ぐ間に装置を連続して用い、1つの主たる製錬工程(例えば脱硫)を実施するよう構成されている。ほとんどのバッチ式反応炉の稼働率は100%に近く、完全に連続でなく、連続鋳造機に挿入するための鋼を完全には準備しない方法のいかなる利点も実質的に排除する。
【0006】
平炉(OHP)法のピークの直後であり、転炉が発展、伸長していた時期である1960年代に多くの連続製鋼工程が導入された。LMFの導入を通じBOFおよびEAFによる製鋼法が最適化および改善されたことから、1960年代以降は、新しい連続製鋼法の数は減少した。今日、BOF、EAFおよびLMFは、最適条件に近い成熟した技術であり、これらの方法は、僅かな将来の改良の余地があるだけである。従って溶解工程のコストの大幅な減少は、新しく革新的な方法によってのみ可能である。
【0007】
米国特許第6,155,333号公報は、溶解、脱炭および脱硫工程の間、連続的にスクラップを挿入し、平衡状態に近い条件で連続的に操業するスクラップベースの方法を示す。しかしながら、定期的な炉からの出鋼(または排出)は、全体の定常状態の操業を妨げることから、全体の工程は半連続である。新しい技術に投資するリスクを補うように、新しい製鋼方法は、顕著に溶解工程のコストの削減と高い信頼性を実現できる可能性があることが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、高品質な鋼を十分な信頼性を有し、顕著により低いコストで製造することが可能で、商業化する利益があることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、簡潔に本発明は、鋼を連続的に精錬するための装置であって、鉄を含む材料を溶融金属に溶解するための溶解炉であって、熱源と、鉄を含む材料を連続的に受け入れるための溶解炉挿入口と、該挿入口と繋がる、鉄を含む材料を溶融金属に溶解し溶融金属を保持するための溶解容器と、溶解炉挿入口での鉄を含んだ材料の連続的な受け入れと同時に、溶解容器から溶融金属を連続的に排出するための溶解炉排出口とを含む溶解炉と溶融金属中の酸化可能な元素を酸化するための酸化装置であって、化学的な酸化環境を有し溶解炉排出口から排出される溶融金属を連続的に受け入れるための酸化装置挿入口と、酸化装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための酸化容器と、酸化装置挿入口での溶解炉排出口から排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、酸化装置から溶融金属を連続的に排出するための酸化装置排出口とを含む酸化装置と溶融金属を脱酸および脱硫するための還元装置であって、化学的な還元環境を有し、酸化装置排出口から排出される溶融金属を連続的に受け入れるための還元装置挿入口と、還元装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための還元容器(または還元装置容器)と、還元装置挿入口での酸化装置排出口から排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、還元装置から溶融金属を連続的に排出するための還元装置排出口とを含む還元装置とを含むことを特徴とする鋼を連続的に精錬するための装置である。
【0010】
他の態様において、本発明は、鋼の連続的な精錬方法であって、鉄を含む材料を溶解炉に連続的に供給し溶解炉内部で鉄を含む材料を溶融金属に溶解する工程であって、溶解炉が、熱源と、鉄を含む材料を連続的に受け入れるための溶解炉挿入口と、該溶解炉挿入口と繋がる、鉄を含む材料を溶融金属に溶解し、溶融金属を保持するための溶解容器と、溶解炉排出口とを含む、材料を溶融金属に溶解する工程と、溶解炉挿入口での鉄を含む材料の連続的な受け入れと同時に、溶解容器排出口を通じて溶融金属を連続的に排出する工程と、溶融金属中の酸化可能な元素を酸化するために、溶解容器排出口を通じて排出される溶融金属を酸化装置に連続的に受け入れる工程であって、酸化装置が、化学的な酸化環境を有し、溶解炉排出口を通じて排出される溶解金属を連続的に受け入れるための酸化装置挿入口と、酸化装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための酸化容器と、酸化装置排出口とを含む、溶融金属を酸化装置に連続的に受け入れる工程と、溶融金属中の酸化可能な元素を酸化容器で酸化する工程と、酸化装置挿入口での溶解炉排出口を通じて排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、酸化容器排出口を通じて連続的に溶融金属を排出する工程と、酸化容器排出口より排出される溶融金属を脱酸および脱硫のために還元装置に連続的に受け入れる工程であって、還元装置が、化学的な還元環境を有し、酸化装置排出口を通って排出される溶融金属を連続的に受け入れるための還元装置挿入口と、還元装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための還元容器と、還元装置排出口とを含む、還元装置に連続的に受け入れる工程と、還元装置挿入口での酸化装置排出口を通じて排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、還元容器排出口を通じて連続的に溶融金属を排出する工程とを含むことを特徴とする精錬方法である。
【0011】
本発明の他の目的および特徴は、一部は明らかであり、一部は以下の記載により理解されるであろう。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0012】
本発明は平衡状態に近いCSTRによる製鋼法への取り込みを基礎とする。スクラップまたは他の不純物の少ない鉄ベースの材料を用いた必要な化学変換の低減および一連の平衡近傍のCSTRの利用による可能な化学変換の改良は、経済的な連続操業の可能性を向上する。連続鋳造機に供給するタンディッシュの操業は、平衡に近いCSTRに類似の3つの容器からの連続し、安定し、信頼性が高い一定の鋼の供給により改善される。
【0013】
本発明にかかる装置および工程は、EAF、LMFおよび連続鋳造機により実施される製鋼工程を置き換えるように構成される。この方法は、製造能力が約30t/時間〜220t/時間のような多大なる変動を可能にする。この方法は、1週間以上、鋼の生産を中断することなく操業可能であり、予想される1週間毎のメンテナンスによる停止時間は、8〜12時間のオーダーである。
【0014】
図1を参照する。装置は、順に溶解炉20、酸化装置30、還元装置50、仕上げ装置70およびタンディッシュ90を含む、5つの相互に接続された容器を含む。スクラップは、溶解炉に連続的に挿入され、溶解される。溶解炉は、改良Consteel(商品名)交流電炉(EAF)である。1つの実施形態では、炉への挿入は、米国特許第6,450,804号公報に記載のように炉に供給し、この公報の開示全てが、参照することにより本明細書に明確に組み込まれる。溶解炉において、溶解は電気的エネルギーおよびCOを形成するCおよびOの結合、アルミナを形成するAlの酸化および他の酸化反応のような発熱反応による化学エネルギーにより実施する。予備的な脱炭および脱リンを、泡状のスラグを維持したまま、溶解炉20で実施する。更なる脱炭および脱リンを酸化装置30で実施する。平衡状態に近い状態は、目的のカーボン濃度に依存して必要に応じ、酸化装置内での部分的な脱炭のみを可能とする。還元装置50では、溶融金属を連続的に脱酸し、脱硫し、必要に応じ合金化する。仕上げ装置70では、溶融金属に調整、付加的な脱硫、介在物浮上、および均質化を行う。連続的に連続鋳造機に供給するタンディッシュに、仕上げ装置70から溶融金属が連続的に流れ込む。仕上げ装置からの排出は、必要に応じ、タンディッシュおよび連続鋳造機を伴わない、鋼の鋳造工程に適している。溶解炉と酸化装置では酸化状態が維持され、還元装置と仕上げ装置では還元状態が維持される。
【0015】
類似する平衡状態に近い状態を有する一連の酸化装置30と還元装置50とは、最適な精錬と、液体の流れ(分配時の滞留時間)および組成(化学的、介在物濃度)の変動の最小化を可能にする。このことは、本方法の信頼性および柔軟性に寄与する。本方法の連続精錬および平衡状態に近い安定した操業は、精錬量の増加を可能にする。EAF−LMF法と比較して合金元素の消費およびフラックスの消費の減少も、また可能となる。例えば従来、炉からの取り出しの際に発生している、容器内での酸化スラグの還元スラグへの持ち越しが発生しないことが期待される。
【0016】
好ましい実施形態では、溶解炉は、米国特許第6,155,333号公報の図10および11に記載の改良型のEAFであり、同公報の開示は参照することにより本明細書に明確に取り込まれる。図2および図2Aに示すように、溶解炉20は、図示するように炉の容器の最も低い部位28と同じ高さとなるように位置する溶解炉排出口25を含む、偏心炉底出鋼式(EBT)の炉底出鋼ユニット29を備える。全てのユニットは空の状態で示しているが、約2〜約3フィートの一定の高さが材料により満たされる。これらの特徴は、安定した操業時のスラグの持ち越しを低減または実質的に低減し、また炉の容器を傾けることなく溶解炉から酸化装置への完全な排出を可能にする。溶解炉からの溶融金属の流れは、図では側壁とサイドポート(または側口)を有して示されている溶解金属排出口25を通る。流れは、好ましくは流体圧ピストン23を有するサイドゲート24により規制する。また、電極27およびEBTメンテナンスドア26を有する。溶解容器(または、溶解炉容器)の内径は約10〜約15フィートである。1つの好ましい実施形態では、溶解容器は、約2.3フィートの材料により満たされた一定の高さと、約13.8フィートの内径とを有する。
【0017】
スクラップおよびフラックスは、コンベアシステム(図示せず)と繋がる溶解炉挿入口22を通り、連続的にEAFに挿入する。直接還元鉄(DRI)または他のスクラップ代替品を、スクラップに追加もしくはスクラップに代えて、またはいくつかのEAF炉で実施されているようにホットメタルに部分的に挿入して用いてもよい。全てではないがいくつかの用途では溶解炉への挿入材は0.5%未満、好ましくは約0.3%未満の炭素含有量である。スクラップとフラックスは好ましくは予備加熱(preheat)し、必要な電気エネルギーを最小化することにより容器の必要なサイズを低減する。溶融金属は、排出口25を介して連続的に排出(または出鋼、tap)する。連続的に挿入および排出することにより、溶解炉は100%電源投入状態(power-on condition)で、一定の満たされた状態で操業可能である。例えば、1つの好ましい実施形態では、55トンの一定の液体残留量(liquid heel)である。電源供給は、好ましくは底部電極を要しない交流である。
【0018】
図3および図3Aに示す、酸化装置30は、付加的な脱炭および脱リンを実施する。酸化装置30は、約4〜約6フィート(好ましい実施形態では4.9フィート)の内径と27トンの容量を有する。鋼は酸化装置挿入口32および付随の挿入口シュート(好ましい実施形態では1.3フィートの幅と4フィートの長さを有する)とを通り挿入される。シュート31と繋がる入口部45は酸化容器(または、酸化装置容器)の中心から逸れて(または、ずれて)位置し、鋼浴に渦を形成し、短絡、即ち材料が容器の内容物により精錬および均一化されるための十分な滞在時間なしに直接酸化装置の挿入システムから酸化装置排出口36に移動するリスク、を最小化する。浴の深さは約4〜約7フィート(好ましい実施形態では約5.4フィート)である。浴の上部に約3〜約5フィート(好ましい実施形態では3.7フィート)の自由空間がある。浴は容器底部のプラグ44(図では3つのうちの1つのみを示す)を介するアルゴン噴射(injection)により攪拌される。好ましい実施形態では3つのプラグを用い、例え1つのプラグが故障しても安定し、均一な攪拌を確保する。プラグはポーラスであり、小さな泡を形成し、脱ガス反応および介在物の浮上を促進し、またガス/鋼界面を増加させる。
【0019】
酸化装置30は、排出シュート(図示せず)を伴う酸化装置排出口36を有し、好ましい実施形態では排出シュートは1.3フィートの幅と5.5フィートの長さを有する。またスライドゲート42と流体圧ピストン43を有する。排出口36は、底部近辺から鋼を除去するように配置し、短絡およびスラグの持ち越しのリスクを低減する。酸化装置排出口36が容器の底部にある場合よりもより低い高さが必要となる。メンテナンスのために容器を空にするために、必要であれば、非常スライドゲート40を設ける。または、クレーンにより容器を取り出し、傾けることにより、鋼を酸化装置挿入口シュート31を介して注ぐことが可能である。フック41およびトラニオン35ならびにこの容器および他の容器の同様の特徴部をこの目的のために用いることができる。酸化装置は脚42により支持される。
【0020】
挿入口シュート31の内部の鋼の内向きの流れは、上面のスラグの外向きの流れを形成する。消費されたスラグは、例えばこの外向きの流れにより酸化装置挿入口シュート31を通り、また必要に応じ、レイク(rake)機構または掻き出し(auger)機構のような機械的な助力(図示せず)により、連続的に除去される。従って、スラグは連続的にオーバーフロー部に運ばれ、酸化装置挿入口シュート31より下のスラグポットに入る。スラグは、酸化装置排出口に付随するエプロン37と類似する、挿入口31に付随して示されるエプロンによりスラグポケットに導かれる。排ガスは、主容器の上の離脱自在なルーフのダクト33を通って排出する。ダクト33は、酸化装置の上部縁を取り囲み排ガスの雰囲気空気の吸い込みを最小にするリム34と繋がっている。観察およびメンテナンスのためのアクセスを行うドア38がルーフにある。必要に応じ、合金元素およびフラックスを、上面の中心の上方に位置する合金シュート39を介し供給する。
【0021】
鋼は、図4および図4Aに示す還元装置50で、脱酸し、脱硫し、合金化する。鋼は、酸化装置挿入口と同様に、中心から逸れて渦を生成し均一化を促進する付随の挿入口シュート52を有する還元装置挿入口51を通って還元容器に入る。スラグは、例えば還元装置挿入口シュート52により還元装置挿入口から出ていく。還元容器(または還元装置容器)55は、上部の内径が約5〜約8フィート、下部の内径が約0.5〜約3フィートであり、鋼の操業深さ(operating depth)が約5〜約9フィート、鋼液面上部のフリースペースが約3〜約5フィートである円錐形状を有する。好ましい実施形態では、上部の内径が約6.6フィート、下部の内径が約1.3フィート、操業深さが約7.2フィート、フリースペースが約3.7フィートであり、鋼浴の上面の面積が、酸化装置での鋼浴の上面の面積の約2倍の34平方フィートである。鋼は、容器の底のポーラスなプラグ67を介したアルゴンにより攪拌される。円錐形状は、激しく攪拌される鋼の割合を増加し、取鍋容器と比較して、容器中でのスラグ/金属界面に位置する鋼の割合を増加する。この構成は、鋼に投入するエネルギー、反応速度、硫黄除去量、温度均一性、化学的均一性および生産速度を最大化する。還元装置排出口54は、図示するようにサイドポートを備えた側板を有し、還元容器55の底部に位置する。検査およびメンテナンスのためのアクセスは、ドア57および57’を介して可能である。その操作のためにスライドゲート64と流体圧ピストン63を有する。還元装置は、脚66により支持される。酸化装置と同様に、還元装置挿入口シュート52および付随するエプロン53を介して、連続的にスラグ除去する。合金元素とフラックスの導入のためにシュート59があり、メンテナンスと観察のためにドア58がある。排ガスシステム61があり、このシステムは好ましくは、リム62により容器のルーフのジョイント部の側面の周囲を完全に取り囲み、排ガスを放出中に周囲の雰囲気からの空気の引き込みを最小限にする。
【0022】
酸化装置30、還元装置50,仕上げ装置70は、好ましい実施形態では、それぞれ厚さ16インチの容器壁を有し、鋼のシェルの構造的な支持に加え、樹脂により結合したマグネシア(resin-bounded magnesia)耐火物ライニングのような厚さ9インチの耐火物ライニング、厚さ2.5インチのバックアップライニングおよび厚さ2.5インチの断熱ブロックを配置できる。容器の残りの部分は、樹脂により結合したマグネシアによりライニングされている。酸化容器および還元容器は、それぞれ、容器のスラグレベルにマグネシア−グラファイト耐火物によりライニングしたスラグラインを有する。これらはポロシティーの低い材料であり、耐侵入性(resist penetration)を有する。それぞれの容器内では一定の温度および化学状態であることから、熱サイクル、浸食および腐食に伴う耐火物の喪失は、取鍋法に比べ低減される。頻繁な強力な排出の流れおよび酸素による取鍋の清掃の低減も、また浸食および腐食を低減する。
【0023】
最終の合金化(alloying)/調整(trimming)は、付加的な脱硫として、図5および5Aに示すように仕上げ装置70で実施する。仕上げ装置70は、酸化装置30と類似している。この仕上げ装置は、挿入口シュート72を伴う仕上げ装置挿入口71と、スライドゲート74を備え、流体圧ピストン75を伴う仕上げ装置排出口73を有する。スラグは、例えば仕上げ装置挿入口シュート72によって、仕上げ装置挿入口より出ていく。酸化装置および還元装置と同様に、シュート72と繋がる入口部86は、中心から逸れている。還元装置の排ガスシステムと同様に、仕上げ容器(または仕上げ装置容器)76は、排ガスシステム79を有し、この排ガスシステムは好ましくは、リム80により容器のルーフのジョイント部の側面の周囲が完全に取り囲まれ、排ガスの放出中に周囲の雰囲気からの空気の導入を最小限にする。鋼は、グレードを変更する際に仕上げ装置を完全に空にできる、底部の出鋼口(または排出穴、tap hole)を通り、排出口73に入る。輸送にトラニオン81が有用である。ドア77は、観察とメンテナンスのためのアクセスを可能にする。シュート78は、合金およびフラックスの添加用である。ポーラスプラグ85(例えば、3つのうちの1つ)は、攪拌用のアルゴンの導入を可能にする。
【0024】
通常操業の間、7scfmのような低い流量のアルゴンバブリングにより、仕上げ装置の鋼浴レベルは一定である。このことは、清浄度ならびに化学的特性および温度の均一性を最大限にする。他のシステムと比較して滞留時間がより短いため、連続製鋼法の通常の操業において、精錬中の鋼の補助加熱は要しない。例えば、材料のある部分のシステム全体(炉に入ってからタンディッシュを出るまで)での平均滞留時間は、150t/時間の生産(流れ)速度で約1時間である。予想外の遅延があり加熱が必要な場合、ルーフドアを介したアクセスにより非接触のツインプラズマトーチ等を用いることが可能である。
【0025】
3つの容器のそれぞれに付随するスラグポットおよび作業プラットフォーム96がある。それぞれのスラグポットは、1つの挿入口シュートからおよびその前の容器の排出シュートからスラグを集める。
【0026】
溶解炉の操業は、ドアからのスラグ除去を伴う一定の泡状スラグの維持するように、コンベアへのスクラップの連続した積み込みと、炭素および酸素の連続したインジェクションと、フラックスの連続した導入とを含む。連続的に鋼が酸化装置に排出される。鋼は溶解炉20を出た後、本明細書では三角状のタンディッシュとして示されるタンディッシュ90に入る前に、3つの精錬要素30、50、70を順に通る。タンディッシュ90は、挿入口91と、タンディッシュ容器92とモールド93とを含み、ダンディシュ90より半製品(semi finished)の鋼ビレット94が出てくる。それぞれの精錬容器での処理は全ての容器への定期的なフラックスの添加と、少なくとも仕上げ装置への、必要に応じ還元装置および酸化装置への、合金元素の定期的な添加とを含む。これら添加は、例えば2〜3分毎である。スラグのスラグポットへ連続的な除去が実施される。好ましい実施形態では、スラグポットは略6トンのスラグを保持し、大凡8時間毎に交換される。
【0027】
タンディッシュは、連続的に鋼を仕上げ装置から受け入れ、このため取鍋の交換はない。従って好都合に取鍋の交換がなく、温度の顕著な変動がなく、溶融金属のレベルの顕著な変動がない。これにより、乱流や再酸化を低減し、鋳造した鋼の清浄度が改善する。定期的または連続した温度および化学特性(または化学組成)の測定を実施し、これにより是正処置のための十分な時間が得られる。
【0028】
5つの容器それぞれは、平衡反応に近いため、熱力学的なバッファーとして機能し、一連の反応装置は、それぞれの容器の異なった精錬および合金化を介した変動を補正する機会を与える。
【0029】
立ち上げの間は、酸化装置、還元装置、仕上げ装置およびタンディッシュは、例えば天然ガスバーナーにより予熱される。スクラップがコンベアにより溶解炉に運ばれる前に適正な液面高さとなるようにスクラップのバケットを溶解炉に直接挿入する。溶解炉の液レベルがその運転可能な高さに達すると、スクラップの供給が一時的に停止され、鋼を過熱(superheat)し、これにより内部での鋼の凝固なしに以降の容器を満たすことが可能となる。溶解炉内の鋼が過熱された後、溶解炉の排出口スライドゲートを開き、鋼が酸化装置に流入する。酸化装置が満たされた後、必要であれば、所望の鋼およびスラグの化学的特性が得られるまで、鋼の流れを休止する。そして、酸化装置排出口を開け、還元装置を満たし、連続モードでの操業を開始する。一旦、還元装置が満たされると、必要に応じ、還元装置内でスラグおよび鋼の所望の化学的性質が得られるまで、鋼の流れを再び中断する。そして、還元装置の排出口を開き仕上げ装置を満たす。一旦、仕上げ装置が満たされると必要に応じ、仕上げ装置内でスラグおよび鋼の所望の化学的特性が得られるまで、鋼の流れを再び中断する。そして、仕上げ装置出口を開け、タンディッシュへの出口を開け、システム全体の連続操業を開始する。立ち上げ工程の間、還元装置、仕上げ装置および/またはタンディッシュの温度を、例えばツインプラズマトーチにより、必要に応じ調整することが可能である。
【0030】
立ち上げ後の通常の操業の間、図1に示すように、鉄を含有する材料が、連続的に溶解炉20に供給され、その溶解炉で溶融金属に溶解される。溶解炉挿入口24は、連続して鉄を含有する材料を受け入れる。溶解炉挿入口が連続して鉄を含有する材料を受け入れるのと同時に、溶融金属が溶解容器排出口23を通り連続的に排出される。溶融金属の更なる精錬のために溶融金属を、熔解容器排出口23を介し酸化装置30に排出する。酸化装置は、化学的な酸化環境を有し、また溶解炉排出口23を通り排出される溶融金属を受け入れるための酸化装置挿入口31を有する。溶解炉排出口23を通り排出される溶融金属の酸化装置挿入口での連続的な受け入れと同時に、酸化装置排出口32を介し、溶融金属を連続的に排出する。溶融金属は、酸化容器排出口から、化学的な還元環境を有する還元装置40に排出する。還元装置挿入口41は、酸化装置排出口32を介し、連続的に溶融金属を受け入れる。酸化装置排出口32を通り排出される溶融金属の還元装置挿入口での連続的な受け入れと同時に、還元装置排出口42を介し、溶融金属を連続的に排出する。還元装置排出口42を通り、仕上げ装置挿入口51を経て溶融金属を仕上げ装置50に排出する。還元装置排出口42を通り排出される溶融金属の仕上げ装置挿入口での連続的な受け入れと同時に、仕上げ装置排出口52を介し、溶融金属を連続的に排出する。
【0031】
システムの停止は、スクラップコンベアの停止から開始する。鋼の後工程の容器への流れが継続している間に、溶解炉の鋼のレベル(または、液面)が減少する。溶解炉が完全に空になった後、酸化装置の鋼のレベルは、その排出路が空になるまで減少する。側面のトラニオンで容器を掴む頭上のクレーンにより、酸化装置を持ち上げ、回転し、傾け、酸化装置の入口部の樋(entry launder)を介し、鋼を還元装置に完全に排出する。この同じ手順は還元装置で繰り返される。仕上げ装置は、タンディッシュに完全に排出するまで、底から排出し(または、炉底出鋼し)、タンディッシュは、モールドに完全に排出するまで炉底出鋼する。
【0032】
溶解炉は傾けることなしに完全に排出できることから、コンベアの修理、電極の追加、エプロンの清掃、吹き付け等のような溶解炉のメンテナンス要素は、工程内で実施することが可能である。スクラップを例えば最大30分間挿入することなしに、鋼を連続的に酸化装置に運び、精錬容器で処理し、鋳造することが可能である。この炉での遅延の間、メンテナンスを完了させるために、例えば最大1時間のようなより多くの緩衝時間(buffer time)を与えるように、下流の容器への鋼の流れは減少することが可能である。マルチストランドの鋳造機を用いる場合、必要に応じ、特定のスタンドを一時的に塞ぎ生産速度をさらに減少させることが可能である。
【0033】
酸化装置、還元装置または仕上げ装置のメンテナンスは、他の容器での流速を減少することで実施可能である。問題のある容器での鋼の流れは、メンテナンスを行う間、例えば最大15分間、中断することができる。例えば、鋼のレベルを低くしている間に、精錬容器の1つでスラグラインを吹き付けることが可能である。酸化装置、還元装置および仕上げ装置のそれぞれは、従来の操業の取鍋台車に類似した、台車に設置されている。そのユニットは、より長い遅延が予想される場合、側方に動かし、予熱した予備の容器と入れ替えることが可能である。問題の容器を交換する間、上流の容器を通る流れは一時的に停止される。この種の交換は、容器を1つずつメンテナンスすることで連続工程の継続時間を増加させるのに用いることが可能である。
【0034】
グレードを変えるために、グレードを変える間、還元装置では、減らす必要のある合金の合金化を停止し、一方それら合金の仕上げ装置での添加量を増やす。これにより還元装置での合金濃度が希薄になり、一方、仕上げ装置では先のグレードに必要な組成を確保している。溶解炉では、過熱度を増やし流れの中断に伴う熱のロスを補う。溶解炉、酸化装置、還元装置の温度が上昇し、還元装置で、所望の合金濃度が新しいグレードレベルまで減少した後、これら3つの容器を通る流れを一時的に停止し、グレード中断(break)を与える。還元装置に鋼の流入がないために、還元装置の合金は、取鍋での処理と同様のハッチ方式での合金化となり、新しいグレードを準備する。この間、仕上げ装置の鋼が排出され、先のグレードの最後となる。一旦、仕上げ装置の鋼が排出されると、溶解炉、酸化装置、還元装置は、新しいグレードが連続操業の間に必要とする割合のフラックスと合金添加剤とともに再度開かれ、この結果、仕上げ装置を新しいグレードの鋼が満たす。そして、仕上げ装置が、満たされ、従来の鋳造操業と同様にタンディッシュ内の鋼が少なくなり混ざり合う材料の量が最少になった後、仕上げ装置は再度開かれる。仕上げ装置とタンディッシュが新しいグレードの鋼により完全に補充された後、流れは、通常の定常状態に戻る。新しいグレードによる定常状態を再確立する前に鋼の温度が必要な過熱度より低下した場合、鋼は還元装置、仕上げ装置およびタンディッシュで例えば非接触ツインプラズマトーチにより加熱することが可能である。
【0035】
他の実施形態では、グレード間で徐々に変化させることも可能である。従来、単一のスラブでの先端から末端にかけてのグレードの変動が問題となりうる。これらの変動は、グレードの変化をいくつかのスラブに亘る範囲に広げ、合金添加剤を徐々に増加または減少させることで制御し得る。この新しい手順は歩留ロスを減少させる。さらに、グレードの変更は、格落ちの混ざり合った材料の量を最少にするように制御およびスケジュール化することが可能である。
【0036】
幅広いグレードのための鋳造機にとって、本発明にかかる連続製鋼法のグレードを変更する能力は、極めて好都合である。例えば、175トンのヒートに鋳造する鋳造機は、これまではそれぞれのグレードを175トンのバッチで鋳造するよう制限されている。例え100トンの特定のグレードが必要な場合でも、鋳造機はそのグレードを175トン製造しなければならない。また、特定のグレードが200トン必要な場合、鋳造機は、2バッチすなわち350トン製造しなければならない。連続製鋼法ではこのような制限を生じない。100トン、200トンまたは他の量でも製造することが可能であり、従来の方法よりも効率的で、柔軟性があり、コストを抑制できる。
【実施例1】
【0037】
プロセスモデルプログラム「Metsim」(metsim.comを参照されたい)を用いて、Si脱酸鋼を完全に連続生産している間の定常状態の操業条件のシムレーションを行った結果を表1に示した。MetsimのThe Free Energy Minimizzer(FEM)は、FactSage(factsage.comを参照された)を用いた熱力学計算に基づいて調整した。
【0038】
シミュレーションは、165t/時間の生産速度に基づいた。表1に示す、鋼とスラグの質量と組成は、入ってくる鋼の流れと、合金、フラックスおよび空気との反応の結果である。これら反応の範囲と鋼およびスラグの組成とは、容器内の物質の移動および熱力学的条件とに依存する。物質移動速度定数(k)は、アルゴンの流速、容器の形状、鋼の温度および圧力の関数である特定の鋼の輸送速度(transport rate)を用いて計算した。それぞれの容器の熱力学的条件は、不純物の高速反応および不純物の除去をサポートしている。例えば、より少ない酸化鉄が鋼浴に供給される場合は、脱硫速度は増加する。酸化された持ち越したスラグ、取鍋の酸化したスカル、前のヒートからのスラグおよび取鍋の洗浄による酸化鉄を含む酸化鉄のソースは、容器を空にする、洗浄するおよび再充填することがより少ないため、およびEAFより持ち越されるスラグが還元装置に入らないことから、最小限となる。
【0039】
シミュレーション中、添加剤、化学反応および周囲に対するヒートロスの影響を基に、鋼の温度を計算した。精錬容器の熱モデルに基づいている。このシミュレーションの結果は、定常状態の操業の間は、鋼は、EAFでのみ加熱する必要があることを示している。熱シミュレーションに基づき、EAFの中の鋼の温度は2908°Fに設定した。この温度の鋼は、酸化装置に入り、還元装置に入る前に、2865°Fに冷却され、還元装置で鋼の温度は更に29°F下がった。仕上げ装置からタンディッシュに流れた鋼は2822°Fの温度であった。短い処理時間と、平衡状態に近いことによる効率的なフラックスと合金の使用と、定常状態の温度より低い取鍋への出鋼工程の排除と、3つの取鍋と比較してより小さい、3つの精錬容器の耐火物の表面積と、新しい精錬容器の付加的な断熱とにより、概してEAFでの加熱は十分である。
【0040】
最新のConsteelでの操業を基に、EAFで時間あたり172トンのスクラップを溶解および加熱するのに320kWh/tの電力と3000scfmの量の酸素の吹き込みが必要であると見積もられた。EAFから酸化装置への流れは164t/時間と見積もられ、EAFでは95%の金属の歩留であると見込まれる。溶融EAFスラグ(または、溶融電炉スラグ)は、定常状態での炉の操業に起因し、14%のFeO濃度を有し、鋼のカーボン含有量(0.08%)に対し、平衡状態と近い。付加的な脱炭が酸化装置で可能なことから、EAFの鋼のカーボン含有量は、従来のEAF−LMF製鋼ルートと比べ増やすことが可能である。
【0041】
鋼1トンあたり4lbのヘマタイトの添加により、炭素およびリンの含有量は、酸化装置で0.08%Cから0.04%Cに、および0.010%Pから0.004%Pに減少する。フェロアロイが炭素とリンを含有することから、両方の元素の濃度は、還元装置で0.06%Cと0.008%Pに増加する。鋼が酸化装置から還元装置に流れる際に精錬条件が、酸化から還元に変化する。鋼の攪拌と、合金およびフラックスの添加とにより、0.050%Sから0.015%Sに鋼の脱硫が生じる。0.015%Sから0.008%Sへの付加的な脱硫が仕上げ装置で実施される。還元装置と仕上げ装置の精錬では、いくらかのアルミニウムの戻り(reversion)が予測された。
【0042】
【表1】

【実施例2】
【0043】
更なる5つのMetsimモデルの実施(run)に際し連続製鋼法の操業のシミュレーションの変更を行った。これらの実施後の最終の炭素、リンおよび硫黄の濃度を表2にまとめた。表2中のシミュレーション1の値は、上述した結果を示し、これを他のシミュレーションのベースラインとして用いる。
【0044】
【表2】

【0045】
シミュレーション2では、フラックスの添加量と物質移動速度定数の値を変えずに、生産速度(スクラップおよび合金の添加量)を110t/時間から220t/時間に変更した。シミュレーション2においては、シミュレーション1と比較し、炭素、リンおよび硫黄の濃度が増加した。しかしながら、これらはSi脱酸鋼の取鍋精錬後の一般的な値の範囲内であった。シミュレーション1と同様に、更なるシミュレーションでは、フラックス添加量の比例的な増加およびアルゴン攪拌の強化が、これら濃度を減少させるであろうことが期待される。シミュレーション2の結果は、連続製鋼工程の操業の間に連続的に生産速度を変更することが可能であることを示している。
【0046】
気が付かずに、スクラップの初期不純物濃度が増加する影響をシミュレーション3で計算した。酸化装置に挿入する鋼のリンおよび硫黄濃度を、シミュレーション1の他の操業条件を変えることなく、0.010%Pから0.030%Pに、および0.050%Sから0.100%Sに増加させた。最終の硫黄およびリンの濃度は増加した。しかしながら、これらは、またSi脱酸鋼の取鍋精錬後の一般的な値の範囲内であった。この結果は、気が付かずにスクラップ中のPおよびSが増加した後もまだ、最終の鋼の化学的性質は、一般的な鋼の規格の範囲内であることを示している。一旦、不純物の増加が検出されると、アルゴン流量の増加およびフラックス添加量の増加のような是正処置により最終のPおよびSの値をシミュレーション1と同様の値まで減少させることが可能である。
【0047】
シミュレーション4では、還元装置のポーラスプラグの故障について調べた。容器内で中心より逸れた挿入流れにより形成される渦が、まだ0.05min−1(アルゴン攪拌中の0.45−1から減少)の物質移動速度定数が得られると仮定した。シミュレーションは、シミュレーション1の他の操業条件の変更なく計算した。最終の硫黄濃度は0.018%に増加した。これは、Si脱酸鋼の取鍋精錬後の一般的な値である。この結果は、ポーラスプラグの故障が、最終の鋼の化学特性が不可避的にグレードの規格外になることに結びつかないことを示している。
【0048】
ポーラスプラグ故障に対する、還元装置での2つの是正処置をシミュレーション5および6で検討した。シミュレーション5では、酸化スラグの還元スラグへの置換と酸化装置へのSiMnおよびFeSi合金の添加とにより酸化装置の操業を変更した。他の全ての操業条件は、シミュレーション4と同じであった。いくらかの硫黄が3つ全ての容器で鋼から除去されたために、シミュレーション5の最終の硫黄濃度は、シミュレーション1の最終の硫黄濃度より低かった。最終の炭素およびリンの濃度は、増加した。これらの元素は、酸化装置では除去されないからである。特筆すべきは、シミュレーション5の酸化装置での鋼の化学的性質(0.10%C、0.019%P、0.018%S)はSi脱酸鋼の取鍋精錬後の最終の鋼組成と類似していることである。この結果は、3つの精錬容器のうちの1つのみでの鋼の処理で従来の取鍋での処理と同様の精錬を行うことができることを示している。
【0049】
シミュレーション6は、仕上げ装置のガス流量とフラックス添加量を増加し、この仕上げ容器内の物質移動速度定数を増加した以外は、シミュレーション4と同様である。この変更は、最終の硫黄濃度を0.018%S(シミュレーション4)から0.011%Sに減少させ、一方、最終の炭素およびリン濃度はシミュレーション1と同程度の低さであった。仕上げ装置でのアルゴン流量の増加は、乱流を増加し、スラグ取り込み(entrapment)を増加させることから、最終製品の介在物量を増加させる可能性がある。他の是正措置も、また可能であろう。例えば、溶解工程の作業員は、ポーラスプラグの故障後に早急に還元装置を交換することを選択可能である。
【0050】
本発明または本発明の好ましい実施形態で元素を導入する際に、冠詞「a」、「an」、「the(その)」および「said(該)」は、1以上の元素を意味することが意図されている。例えば、上述した明細書および以下のクレームで用いる「an 相互接続部」は、1以上のこのような「相互接続部」を意味する。用語「含む」、「含有する」および「有する」は、包含的(非排他的)であることを意図し、示された元素だけでなく更なる元素があってもよいことを意味する。
【0051】
本発明の技術的範囲から逸脱することなしに上述の記載の多くの変更が可能なことから、上述の記載に含まれる全ての事項および添付の図面に含まれる全ての事項は説明のためであり、制限を行うものではないと解釈する必要がある。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、上述の実施形態は本発明の技術的範囲から逸脱することなく変更し得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかる製鋼装置の斜視図である。
【図2】本発明にかかる製鋼装置の溶解炉要素の斜視図である。
【図2A】図2の2A−2A線に沿った断面を示す図である。
【図3】本発明にかかる製鋼装置の酸化装置要素の斜視図である。
【図3A】図3の3A−3A線に沿った断面を示す図である。
【図4】本発明にかかる製鋼装置の還元装置要素の斜視図である。
【図4A】図4の4A−4A線に沿った断面を示す図である。
【図5】本発明にかかる製鋼装置の仕上げ装置要素の斜視図である。
【図5A】図5の5A−5A線に沿った断面を示す図である
【図6】本発明にかかる製鋼装置のダンディシュ要素の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼を連続的に精錬するための装置であって、
鉄を含む材料を溶融金属に溶解するための溶解炉であって、
熱源と、
鉄を含む材料を連続的に受け入れるための溶解炉挿入口と、
該挿入口と繋がる、鉄を含む材料を溶融金属に溶解し溶融金属を保持するための溶解容器と、
溶解炉挿入口での鉄を含んだ材料の連続的な受け入れと同時に、溶解容器から溶融金属を連続的に排出するための溶解炉排出口とを含む溶解炉と、
溶融金属中の酸化可能な元素を酸化するための酸化装置であって、化学的な酸化環境を有し
溶解炉排出口から排出される溶融金属を連続的に受け入れるための酸化装置挿入口と、
酸化装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための酸化容器と、
酸化装置挿入口での溶解炉排出口から排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、酸化装置から溶融金属を連続的に排出するための酸化装置排出口とを含む酸化装置と、
溶融金属を脱酸および脱硫するための還元装置であって、化学的な還元環境を有し、
酸化装置排出口から排出される溶融金属を連続的に受け入れるための還元装置挿入口と、
還元装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための還元容器と、
還元装置挿入口での酸化装置排出口から排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、還元装置から溶融金属を連続的に排出するための還元装置排出口とを含む還元装置と、
を含むことを特徴とする鋼を連続的に精錬するための装置。
【請求項2】
溶解容器が電気アーク炉であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
元素と溶融金属の合金化および溶融金属の精錬のための仕上げ装置であって、還元装置排出口より排出される溶融金属を連続的に受け入れるための仕上げ装置挿入口と、仕上げ装置挿入口と繋がり、合金化の間、溶融金属を保持するための仕上げ容器と、仕上げ装置挿入口での還元装置排出口からの溶融金属の連続的な受け入れと同時に、仕上げ装置から溶融金属を連続的に排出するための仕上げ装置排出口とを含む仕上げ装置を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
溶解炉が電気アーク炉であることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
還元容器が、還元容器の上端のより大きな直径から還元容器の底縁のより小さい直径にテーパーの付いた円錐形状を有することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
酸化容器と仕上げ容器とが円筒形状を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
鋼の連続的な精錬方法であって、
鉄を含む材料を溶解炉に連続的に供給し溶解炉内部で鉄を含む材料を溶融金属に溶解する工程であって、溶解炉が、
熱源と、
鉄を含む材料を連続的に受け入れるための溶解炉挿入口と、
該溶解炉挿入口と繋がる、鉄を含む材料を溶融金属に溶解し、溶融金属を保持するための溶解容器と、
溶解炉排出口とを含む、材料を溶融金属に溶解する工程と、
溶解炉挿入口での鉄を含む材料の連続的な受け入れと同時に、溶解容器排出口を通じて溶融金属を連続的に排出する工程と、
溶融金属中の酸化可能な元素を酸化するために、溶解容器排出口を通じて排出される溶融金属を酸化装置に連続的に受け入れる工程であって、酸化装置が、
化学的な酸化環境を有し、
溶解炉排出口を通じて排出される溶解金属を連続的に受け入れるための酸化装置挿入口と、
酸化装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための酸化容器と、
酸化装置排出口とを含む、溶融金属を酸化装置に連続的に受け入れる工程と、
溶融金属中の酸化可能な元素を酸化容器で酸化する工程と、
酸化装置挿入口での溶解炉排出口を通じて排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、酸化容器排出口を通じて連続的に溶融金属を排出する工程と、
酸化容器排出口より排出される溶融金属を脱酸および脱硫のために還元装置に連続的に受け入れる工程であって、還元装置が、
化学的な還元環境を有し、
酸化装置排出口を通って排出される溶融金属を連続的に受け入れるための還元装置挿入口と、
還元装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための還元容器と、
還元装置排出口とを含む、還元装置に連続的に受け入れる工程と、
還元装置挿入口での酸化装置排出口を通じて排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、還元容器排出口を通じて連続的に溶融金属を排出する工程と、
を含むことを特徴とする精錬方法。
【請求項8】
溶融金属の合金化および精錬のために、還元容器排出口を通り排出される溶融金属を仕上げ装置に連続的に受け入れる工程であって、仕上げ装置が、還元容器排出口から連続的に排出される溶融金属を連続的に受け入れるための仕上げ装置挿入口と、仕上げ装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための仕上げ容器と、仕上げ装置排出口とを含む、溶融金属を仕上げ装置に連続的に受け入れる工程と、
仕上げ装置挿入口での還元装置排出口を通る溶融金属の連続的な受け入れと同時に、仕上げ装置排出口を通り溶融金属を連続的に排出する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の精錬方法。
【請求項9】
溶解炉が電気アーク炉であることを特徴とする請求項8に記載の精錬方法。
【請求項10】
還元容器が、還元容器の上端のより大きな直径から還元容器の底縁のより小さい直径にテーパーの付いた円錐形状を有することを特徴とする請求項8に記載の精錬方法。
【請求項11】
還元容器が、還元容器の上端のより大きな直径から還元容器の底縁のより小さい直径にテーパーの付いた円錐形状を有することを特徴とする請求項9に記載の精錬方法。
【請求項12】
酸化容器と仕上げ容器とが、それぞれ円筒形状を有することを特徴とする請求項11に記載の精錬方法。
【請求項13】
フラックスを溶解炉と酸化装置と還元装置とに供給する工程を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の精錬方法。
【請求項14】
仕上げ装置に合金元素を供給する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の精錬方法。
【請求項15】
還元装置と仕上げ装置とに合金元素を供給する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の精錬方法。
【請求項16】
酸化装置挿入口で酸化容器から連続的にスラグを除去する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の精錬方法。
【請求項17】
還元装置挿入口で還元容器から連続的にスラグを除去する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の精錬方法。
【請求項18】
仕上げ装置挿入口で仕上げ容器から連続的にスラグを除去する工程を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の精錬方法。
【請求項19】
酸化装置挿入口で酸化容器から連続的にスラグを除去する工程と、還元装置挿入口で還元容器から連続的にスラグを除去する工程と、仕上げ装置挿入口で仕上げ容器から連続的にスラグを除去する工程と、を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の精錬方法。
【請求項20】
鋼の連続的な精錬方法であって、
酸素含有量が約0.5%より低い、鉄を含む材料と、フラックスとを電気アーク溶解炉に連続的に供給し、電気アーク溶解炉内部で鉄を含む材料を溶融金属に溶解する工程であって、溶解炉が、
熱源と、
鉄を含む材料を連続的に受け入れるための溶解炉挿入口と、
該溶解炉挿入口と繋がる、鉄を含む材料を溶融金属に溶解し、溶融金属を保持するための溶解容器と、
溶解炉排出口とを含む、電気アーク溶解炉内部で鉄を含む材料を溶融金属に溶解する工程と、
溶解炉挿入口での連続的な鉄を含む材料の受け入れと同時に、溶解容器排出口を通じて溶融金属を連続的に排出する工程と、
溶融金属中の酸化可能な元素を酸化するために、溶解容器排出口を通じて排出される溶融金属を酸化装置に連続的に受け入れる工程であって、酸化装置が、
化学的な酸化環境を有し、
溶解炉排出口を通じて排出される溶解金属を連続的に受け入れるための酸化装置挿入口と、
酸化装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための酸化容器と、
酸化装置排出口とを含む、溶融金属を酸化装置に連続的に受け入れる工程と、
溶融金属中の酸化可能な元素を酸化容器で酸化する工程と、
酸化装置挿入口での溶解炉排出口を通じて排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、酸化容器排出口を通じて連続的に溶融金属を排出する工程と、
酸化容器排出口より排出される溶融金属を脱酸および脱硫のために還元装置に連続的に受け入れる工程であって、還元装置が、
化学的な還元環境を有し、
酸化装置排出口を通って排出される溶融金属を連続的に受け入れるための還元装置挿入口と、
還元装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための還元容器と、
還元装置排出口とを含む、還元装置に連続的に受け入れる工程と、
還元装置挿入口での酸化装置排出口を通じて排出される溶融金属の連続的な受け入れと同時に、還元容器排出口を通じて連続的に溶融金属を排出する工程と、
溶融金属の合金化のために、還元容器排出口を通り排出される溶融金属を仕上げ装置に連続的に受け入れる工程であって、仕上げ装置が、
還元容器排出口から連続的に排出される溶融金属を連続的に受け入れるための仕上げ装置挿入口と、
仕上げ装置挿入口と繋がる、溶融金属を保持するための仕上げ容器と、
仕上げ装置排出口とを含む、溶融金属を仕上げ装置に連続的に受け入れる工程と、
仕上げ装置挿入口での還元装置排出口を通る溶融金属の連続的な受け入れと同時に、仕上げ装置排出口を通り溶融金属を連続的に排出する工程と、
フラックスを電気アーク溶解炉と、酸化装置と、還元装置と、仕上げ装置とに供給し、合金元素を仕上げ装置に供給する工程と、
酸化装置挿入口で酸化容器から連続的にスラグを除去し、還元装置挿入口で還元容器から連続的にスラグを除去し、仕上げ装置挿入口で仕上げ容器から連続的にスラグを除去する工程と、
を含むことを特徴とする精錬方法。
【請求項21】
仕上げ装置排出口から溶融金属を連続的に排出する工程が、前記溶融金属を連続的に鋳造装置のタンディッシュに排出することを含むことを特徴とする請求項20に記載の精錬方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−540832(P2008−540832A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510263(P2008−510263)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017424
【国際公開番号】WO2007/032785
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(507366599)ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (1)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【住所又は居所原語表記】506 South Wright Street, Urbana, IL 61801
【Fターム(参考)】