説明

連続鋳造方法

【課題】過大な荷重が軽圧下セグメントに印加された場合でも、軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定し、鋳片の中心偏析を低減する連続鋳造方法を提供すること。
【解決手段】鋳造された鋳片6を軽圧下するための圧下ロール7を保持するフレームを支持する支柱11の変位量を測定するステップと、軽圧下セグメント8を過度な荷重から保護するために支柱11に設けられた皿バネ12の変位量を測定するステップと、軽圧下セグメント8が鋳片6に掛ける荷重が所定以下である場合、支柱11の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判断する支柱判定ステップと、軽圧下セグメント8が鋳片に掛ける荷重が所定以上である場合、皿バネ12の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定する弾性機構判定ステップと、判定の結果に基づき連続鋳造の操業条件を変更するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造中の鋳片中心部に発生する成分偏析を抑制する連続鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造の凝固過程では体積収縮(凝固収縮ともいう)が起こり、この収縮に伴って、鋳片の引き抜き方向へ未凝固溶鋼が吸引されて流動する。この未凝固溶鋼にはC、P、Mn、Sなどの溶質元素が濃縮しているので(「濃化溶鋼」という)、濃化溶鋼が流動すると、溶質元素がスラブの中心部分に凝固してしまうという現象(いわゆる中心偏析)が発生する。凝固末期の濃化溶鋼が流動する要因としては、上記の凝固収縮の他に、溶鋼静圧によるロール間での鋳片バルジング(膨らみ)や、鋳片支持ロールのロールアライメントの不整合なども挙げられる。
【0003】
この中心偏析は、鋼製品、特に厚鋼板の品質を劣化させる。例えば、石油輸送用や天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により中心偏析を起点として水素誘起割れが発生し、また、海洋構造物、貯槽、石油タンクなどにおいても、同様の問題が発生する。しかも近年、鋼材の使用環境は、より低温下或いはより腐食環境下といった厳しい環境での使用を求められることが多く、鋳片の中心偏析を低減することの重要性は益々大きくなっている。
【0004】
したがって、連続鋳造工程から圧延工程に至るまで、鋳片の中心偏析を低減する或いは無害化する対策が多数提案されている。例えば、中心偏析を改善する上で、未凝固部を有する連鋳鋳片を圧下する凝固末期軽圧下が効果的であることが知られている。凝固末期軽圧下とは、鋳片の凝固完了位置付近に圧下ロールを配置し、この圧下ロールにより連続鋳造中の鋳片を凝固収縮量に相当する程度の圧下量で徐々に圧下し、鋳片中心部での空隙の形成や濃化溶鋼の流動を抑止することにより鋳片の中心偏析を抑制する。
【0005】
この凝固末期軽圧下では、圧下量が不足すると中心偏析や内質欠陥の生成防止が不十分となり、一方、圧下量が大き過ぎると内部割れが発生し却って鋳片の内質を悪化させる。したがって、凝固末期軽圧下では、圧下量を適正範囲に制御することが重要である。このため、従来より、操業中に軽圧下セグメントを絶えず監視して、圧下量が適正範囲にあるか否かを判定している。そして、この判定結果に基づき、連続鋳造工程における操業条件を変化させるという操業が行われていた(特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−132203号公報
【特許文献2】特開2005−193265号公報
【特許文献3】特開2008−119726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の軽圧下量の判定方法では、過大な荷重が軽圧下セグメントに印加された場合に、軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定をすることができなかった。例えば、凝固完了位置が変動した場合、軽圧下セグメント内で鋳片の凝固部の割合が増加し、セグメントの支柱に設定されている耐荷重を超える荷重が印加されることがある。その場合、支柱上部に設置されている弾性機構が機能してセグメントを保護するのだが、この
弾性機構が機能している状態であっても適切に実行可能な軽圧下量の判定方法が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、過大な荷重が軽圧下セグメントに印加された場合でも、軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定し、鋳片の中心偏析を低減する連続鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続鋳造方法は、鋳造された鋳片を軽圧下するための圧下ロール対を保持するフレームを支持する支柱の変位量を測定するステップと、軽圧下セグメントを過度な荷重から保護するために前記支柱に設けられた弾性機構における前記弾性機構の変位量を測定するステップと、前記軽圧下セグメントが鋳片に掛ける荷重が所定以下である場合、前記支柱の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判断する支柱判定ステップと、前記軽圧下セグメントが鋳片に掛ける荷重が所定以上である場合、前記弾性機構の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定する弾性機構判定ステップと、前記判定の結果に基づき連続鋳造の操業条件を変更するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る連続鋳造方法によれば、過大な荷重が軽圧下セグメントに印加された場合でも、軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定し、鋳片の中心偏析を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法を適用する連続鋳造機を示す概略図である。
【図2】図2は、連続鋳造機における軽圧下セグメントを拡大した概略図である。
【図3】図3は、搬送方向に垂直な平面における軽圧下セグメントの断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメントの剛性曲線を示すグラフ。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメントの軽圧下量の判定方法を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法により鋳造したスラブにおける中心偏析度を測定した測定データの表である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法により鋳造したスラブにおける中心偏析度を測定した測定データの表である。
【図8】図8は、軽圧下勾配と皿バネ変位の勾配との関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。
【図9】図9は、上流側皿バネ変位と下流側皿バネ変位との関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。
【図10】図10は、軽圧下勾配と支柱変位の勾配との関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。
【図11】図11は、上流側支柱変位と下流側支柱変位との関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法を適用する連続鋳造機1を示す概略図である。図1に示されるように、本発明の実施形態に係る連続鋳造機1は、溶鋼2が注入されるタンディッシュ3と、タンディッシュ3から浸漬ノズル4を介して注がれた溶鋼2を徐冷する銅製の鋳型5と、鋳型5から引き抜かれた半凝固状態の鋳片6を搬送する複数のロールとを備える。
【0014】
連続鋳造機1に設けられた複数のロールは、配置される場所によって様々な用途を有する。例えば、鋳型5の近傍に配置されるものは鋳型5から鋳片6を引き抜く用途の引き抜きロールと呼ばれ、鋳片6を支持する目的のものは鋳片支持ロールと呼ばれる。特に、鋳片6が中心部まで凝固する位置(いわゆるクレータエンド)の凝固末期近傍のロールは、鋳片6を軽圧下するための圧下ロール7と呼ばれる。この圧下ロール7は、複数のセグメントにユニット化され、各セグメントが鋳片6を軽圧下する機構を備える。以下、このセグメントを軽圧下セグメント8と称する。
【0015】
図2は、連続鋳造機1における軽圧下セグメント8を拡大した概略図であり、図3は、鋳片6の搬送方向に垂直な平面における軽圧下セグメント8の断面図である。図2および図3に示されるように、軽圧下セグメント8は、鋳片6に押圧力を上下方向から印加する複数の上側圧下ロール7aおよび下側圧下ロール7bと、複数の上側圧下ロール7aおよび下側圧下ロール7bを油圧シリンダ9を介して保持する上フレーム10aおよび下フレーム10bと、上フレーム10aおよび下フレーム10bを略平行に支持するための上流工程側に配置された2本の上流側支柱11aおよび下流工程側に配置された2本の下流側支柱11bとを備える。
【0016】
上述のように、複数の圧下ロール7は、それぞれが油圧シリンダ9を介して上フレーム10aまたは下フレーム10bに固定されているので、独立に油圧シリンダ9を伸縮させることにより、上側圧下ロール7aと下側圧下ロール7bとの間隔を独立に制御することができる。特に、上流工程側の圧下ロール7の間隔を下流工程側の圧下ロール7の間隔よりも広く設定する、いわゆる軽圧下勾配を設定することが可能である。
【0017】
上フレーム10aおよび下フレーム10bは、上側ロール7aと下側ロール7bとを介して鋳片6に上下から荷重を掛ける。上フレーム10aおよび下フレーム10bは、上流側支柱11aと下流側支柱11bとにより支持されているので、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bは、軽圧下セグメント8全体として鋳片6に印加する軽圧下量を規定する。
【0018】
上流側支柱11aおよび下流側支柱11bには、支柱に設定されている耐荷重を超える荷重が印加される場合のため、支柱上部に弾性機構としての皿バネ12が設置されている。すなわち、所定の荷重以下である場合、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bにのみが、鋳片6に印加する荷重を受け止め、所定の荷重以上である場合、皿バネ12が撓むことによって、鋳片6に印加する荷重を受け止める構成である。
【0019】
図4は、上述のように支柱11a、11bと皿バネ12とによって2段階の剛性を有する軽圧下セグメント8の剛性曲線を示すグラフである。なお、図4に示される剛性曲線は、支柱1本あたりの荷重(tonf)と変位量(mm)との関係を示している。
【0020】
図4に示されるように、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメント8は、上流側支柱11a(または下流側支柱11b)の変位量が1.5mmまでは、圧下ロールを介して鋳片6に印加する荷重を上流側支柱11aが受け止め、上流側支柱11a(下流側支柱11b)の変位量が1.5mm以上の場合、皿バネ12が撓むことによって、圧下ロールを介して鋳片6に印加する荷重を受け止める構成である。また、上流側支柱11a(下流側支柱11b)の変位量が1.5mmであるときの荷重は150tonfが対応し、この荷重を閾値として、上流側支柱11a(下流側支柱11b)の変位量または皿バネ12の変位量のいづれかが、鋳片6に印加される荷重を定める。
【0021】
以下、図5を参照して、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメント8の軽圧下量の判定方法を説明する。
【0022】
図5は、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメント8の軽圧下量の判定方法をしめす概略図である。図5に示されるように、制御部13は、支柱変位測定部13a、支柱変位判定部13b、バネ変位測定部13c、バネ変位判定部13d、および操業条件変更部13eを備える。これら支柱変位測定部13a、支柱変位判定部13b、バネ変位測定部13c、バネ変位判定部13d、および操業条件変更部13eは、ハードウェアとして構成することもでき、制御部13が実行するプログラムのステップとして構成することもできる。
【0023】
図5に示されるように、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメント8の軽圧下量の判定方法は、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの変位量(Δxp1、Δxp2、Δyp1、Δyp2)と、これら支柱の上部に設けられた皿バネ12の変位量(Δxs1、Δxs2、Δys1、Δys2)を監視することによって行う。ここで、2本の上流側支柱11aの長さ(便宜上フレーム間距離と考える)をxp1、xp2とし、このxp1、xp2の変位量をそれぞれΔxp1、Δxp2とする。また、2本の下流側支柱11bの長さyp1、yp2をとし、このyp1、yp2の変位量をそれぞれΔyp1、Δyp2とする。同様に、2本の上流側支柱11aに設けられた皿バネ12の長さをxs1、xs2とし、このxs1、xs2の変位量をそれぞれΔxs1、Δxs2とする。また、2本の下流側支柱11bに設けられた皿バネ12をの長さをys1、ys2とし、このys1、ys2の変位量をそれぞれΔys1、Δys2とする(図2および図3参照)。なお、皿バネ12の変位量は、渦流式変位計またはレーザー変位計など一般的な変位計を皿バネ12の取り付け部に設けて測定することができ、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの変位量は、軽圧下セグメント8の外部の基準点から上フレーム10aにおける上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの近傍をレーザー変位計などで測定することができる。
【0024】
支柱変位測定部13aは、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの変位に係る変位計の出力から、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの変位量(Δxp1、Δxp2、Δyp1、Δyp2)を算出する。すなわち、変位計の出力から所定のゼロ位置との差を算出して、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの変位量(Δxp1、Δxp2、Δyp1、Δyp2)を算出する。
【0025】
さらに、支柱変位測定部13aは、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bの変位量(Δxp1、Δxp2、Δyp1、Δyp2)から、軽圧下量の判定条件に用いる以下のパラメータをΔX、ΔY、ΔZを算出する。なお、下式から解るように、ΔXは、上流側支柱11aの変位量の平均値であり、ΔYは、下流側支柱11bの変位量の平均値である。
ΔX=1/2Δxp1+1/2Δxp2
ΔY=1/2Δyp1+1/2Δyp2
ΔZ=ΔX−ΔY
【0026】
支柱判定部13bは、支柱変位測定部13aにより算出されたΔX、ΔY、ΔZに基づいて、軽圧下量が適正範囲にあるか否か判定する。その判定に用いる判定条件は以下の(条件1)および(条件2)である。
(条件1
ΔZ<1/40Z
(条件2
ΔX<1/40Z または
ΔY<1/40Z
ここで、Zは、1セグメントあたりの圧下量(いわゆる軽圧下勾配)であり、軽圧下セグメント8の入り側の圧下ロール7の間隔dinおよび出側の圧下ロール7の間隔doutを用いて、Z=din−doutにて定義される。
【0027】
バネ変位測定部13cは、皿バネ12の変位に係る変位計の出力から、皿バネ12の変位量(Δxs1、Δxs2、Δys1、Δys2)を算出する。すなわち、変位計の出力から所定のゼロ位置との差を算出して、皿バネ12の変位量(Δxs1、Δxs2、Δys1、Δys2)を算出する。
【0028】
さらに、バネ変位測定部13cは、皿バネ12の変位量(Δxs1、Δxs2、Δys1、Δys2)から、軽圧下量の判定条件に用いる以下のパラメータをΔX、ΔYs、ΔZを算出する。なお、下式から解るように、ΔXは、上流側の皿バネ12の変位量の平均値であり、ΔYは、上流側の皿バネ12の変位量の平均値である。
ΔX=1/2Δxs1+1/2Δxs2
ΔY=1/2Δys1+1/2Δys2
ΔZ=ΔX−ΔY
【0029】
バネ変位判定部13bは、バネ変位測定部13aにより算出されたΔX、ΔYs、ΔZに基づいて、軽圧下量が適正範囲にあるか否か判定する。その判定に用いる判定条件は以下の(条件1)および(条件2)である。
(条件1
ΔZ<1/2Z
(条件2
ΔX<1/2Z または
ΔY<1/2Z
ここで、Zは、1セグメントあたりの圧下量(いわゆる軽圧下勾配)であり、軽圧下セグメント8の入り側の圧下ロール7の間隔dinおよび出側の圧下ロール7の間隔doutを用いて、Z=din−doutにて定義される。
【0030】
操業条件変更部13eは、上記支柱変位判定部13bおよびバネ変位判定部13dによる判定結果に基づいて、連続鋳造機1の操業条件を変更する。図4を参照しながら先述したように、本発明の実施形態に係る軽圧下セグメント8は、所定の荷重以下である場合、上流側支柱11aおよび下流側支柱11bにのみが、圧下ロールを介して鋳片6に印加する荷重を受け止め、所定の荷重以上である場合、皿バネ12が撓むことによって、圧下ロールを介して鋳片6に印加する荷重を受け止める構成である。したがって、操業条件変更部13eは、所定の荷重以下である場合、支柱変位判定部13b判定結果に基づいて、連続鋳造機1の操業条件を変更し、所定の荷重以上である場合、バネ変位判定部13dによる判定結果に基づいて、連続鋳造機1の操業条件を変更する。
【0031】
なお、操業条件変更部13eが変更する連続鋳造機1の操業条件の例としては、鋳造された鋳片6を冷却するための冷却水、または鋳片6を鋳型5から引き抜く速度などが考えられる。また、例えば、軽圧下セグメント8の圧下ロール7の間隔を変更することにより、軽圧下量自体を変更することも可能である。
【0032】
以下、上記説明した本発明の実施形態に係る連続鋳造方法の効果について検討する。
【0033】
図6および図7は、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法により鋳造したスラブにおける中心偏析度を測定した測定データの表である。測定方法は、スラブの断面中心部における厚さ方向に関する炭素濃度を分析して、その最大値をCmaxとし、平均炭素濃度(つまり溶鋼での炭素濃度)をC0として、Cmax/C0を中心偏析度と定義したものである。つまり、この定義では、中心偏析度が1に近づくほど中心偏析は低減することになる。ここでは、中心偏析度が1.1以上となった場合に中心偏析が悪化したものとして不良判定を行う。
【0034】
実験に用いた装置は、図1に示した連続鋳造機1と同様である。この連続鋳造機1を用いて低炭素アルミキルド鋼の鋳造を行った。鋳造したスラブは、鋳片厚み250mmかつ鋳片幅2100mmであり、2次冷却比水量を1.6L/kgとし、鋳片引き抜き速度を1.4m/minとした。軽圧下セグメント8の配置は、メニスカスから21〜23m、23〜25m、25〜27mの位置にそれぞれ第1〜3の軽圧下セグメント8を配置した。各軽圧下セグメント8における圧下ロール7は8本であり、圧下ロール7の外径は230mmである。また、1セグメントでの軽圧下勾配Zは、1.7mm/segとしている。
【0035】
以上の条件の下、第1〜3の軽圧下セグメント8の皿バネ12の変位量および支柱11の変位量と中心偏析度の関係を測定した。図6は、皿バネ12の変位量と中心偏析度の関係を示す表であり、図7は、支柱11の変位量と中心偏析度の関係を示す表である。なお、図6および図7では紙面の都合上、第2軽圧下セグメントの皿バネ変位と中心偏析度の関係のみを記載している。
【0036】
図6から理解できるように、(条件1)ΔZ<1/2Zおよび(条件2)ΔX<1/2ZまたはΔY<1/2Zを満す場合には、スラブの中心偏析度が1.1より低いことが解る。一方、図7から理解できるように、(条件1)ΔZ<1/40Zおよび(条件2)ΔX<1/40ZまたはΔY<1/40Zを満す場合には、スラブの中心偏析度が1.1より低いことが解る。したがって、図6および図7を合わせて検討すると、本発明の実施形態にか係る軽圧下量判定方法では、所定の荷重以下である場合、(条件1)および(条件2)を満たしているときに適正範囲であると判定し、所定の荷重以上である場合、(条件1)および(条件2)を満たしているときに適正範囲であると判定すればよいことが解る。
【0037】
図8から図11は、それぞれ(条件1)ΔZ<1/40Z、(条件2)ΔX<1/40ZまたはΔY<1/40Z、(条件1)ΔZ<1/2Z、および(条件2)ΔX<1/2ZまたはΔY<1/2Zの効果を理解しやすいように視覚化したグラフである。
【0038】
図8は、(条件2)を満たしている測定データについて、軽圧下勾配Zと皿バネ変位の勾配ΔZとの関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。図8のグラフから読み取れるように、(条件2)ΔX<1/2ZまたはΔY<1/2Zを満たしている条件下では、(条件1)ΔZ<1/2Zを満たす領域(図中破線下側領域)で中心偏析度が低く抑えられていることが解る。
【0039】
図9は、(条件1)を満たしている測定データについて、上流側皿バネ変位ΔXと下流側皿バネ変位ΔYとの関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。図9のグラフから読み取れるように、(条件1)ΔZ<1/2Zを満たしている条件下では、(条件2)ΔX<1/2ZまたはΔY<1/2Zを満たす領域(図中破線L字領域)で中心偏析度が低く抑えられていることが解る。
【0040】
図10は、(条件2)を満たしている測定データについて、軽圧下勾配Zと皿バネ変位の勾配ΔZとの関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。図10のグラフから読み取れるように、(条件2)ΔX<1/40ZまたはΔY<1/40Zを満たしている条件下では、(条件1)ΔZ<1/40Zを満たす領域(図中破線下側領域)で中心偏析度が低く抑えられていることが解る。
【0041】
図11は、(条件1)ΔZ<1/40Zを満たしている条件下において、(条件2)ΔX<1/40ZまたはΔY<1/40Zを満たしているか否かで、中心偏析度が異なる様子を表すグラフである。図11に示されるグラフは、(条件1)を満たす測定データについて、上流側支柱変位ΔXと下流側支柱変位ΔYとの関係を座標平面上の位置で表し、中心偏析度を点の大きさで表したグラフである。図11のグラフから読み取れるように、(条件2)ΔX<1/40ZまたはΔY<1/40Zを満たす領域(図中破線L字領域)では中心偏析度が低く抑えられていることが解る。
【0042】
以上より、本発明の実施形態に係る連続鋳造方法によれば、鋳造された鋳片6を軽圧下するための圧下ロール7を保持するフレームを支持する支柱の変位量を測定するステップと、軽圧下セグメント8を過度な荷重から保護するために支柱11に設けられた皿バネ12の変位量を測定するステップと、軽圧下セグメント8が鋳片6に掛ける荷重が所定以下である場合、支柱11の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判断する支柱判定ステップと、軽圧下セグメント8が鋳片に掛ける荷重が所定以上である場合、皿バネ12の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定する弾性機構判定ステップと、この判定の結果に基づき連続鋳造の操業条件を変更するステップを含むので、過大な荷重が軽圧下セグメントに印加された場合でも、軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定し,鋳片の中心偏析を低減することができる。
【0043】
弾性機構判定ステップは、以下に掲げる判定条件に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定するので、鋳片6の中心偏析の悪化を適切に抑制することができる。(条件1)ΔZ<1/2Z、(条件2)ΔX<1/2ZまたはΔY<1/2Z。ただし、ΔXは、上流側の皿バネ12の変位量の平均値であり、ΔYは、下流側の皿バネ12の変位量の平均値であり、ΔZは、ΔYとΔXとの差であり、Zは軽圧下セグメント8の軽圧下勾配である。
【0044】
支柱判定ステップは、以下に掲げる判定条件に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定するので、鋳片6の中心偏析の悪化を適切に抑制することができる。(条件1)ΔZ<1/40Z、(条件2)ΔX<1/40ZまたはΔY<1/40Z。ただし、ΔXは、上流側の支柱11の変位量の平均値であり、ΔYは、下流側の支柱11の変位量の平均値であり、ΔZは、ΔYとΔXとの差であり、Zは軽圧下セグメント8の軽圧下勾配である。
【0045】
以上、本発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。
【符号の説明】
【0046】
1 連続鋳造機
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片
7 圧下ロール
8 軽圧下セグメント
9 油圧シリンダ
10 フレーム
11 支柱
12 皿バネ
13 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造された鋳片を軽圧下するための圧下ロール対を保持するフレームを支持する支柱の変位量を測定するステップと、
軽圧下セグメントを過度な荷重から保護するために前記支柱に設けられた弾性機構における前記弾性機構の変位量を測定するステップと、
前記軽圧下セグメントが鋳片に掛ける荷重が所定以下である場合、前記支柱の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判断する支柱判定ステップと、
前記軽圧下セグメントが鋳片に掛ける荷重が所定以上である場合、前記弾性機構の変位量に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定する弾性機構判定ステップと、
前記判定の結果に基づき連続鋳造の操業条件を変更するステップと
を含むことを特徴とする連続鋳造方法。
【請求項2】
前記弾性機構判定ステップは、以下に掲げる判定条件に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造方法。
(条件1
ΔZ<1/2Z
(条件2
ΔX<1/2Z または
ΔY<1/2Z
ただし、ΔXは、上流側の前記弾性機構の変位量の平均値であり、ΔYは、下流側の前記弾性機構の変位量の平均値であり、ΔZは、ΔYとΔXとの差であり、Zは前記軽圧下セグメントの軽圧下勾配である。
【請求項3】
前記支柱判定ステップは、以下に掲げる判定条件に基づき軽圧下量が適正範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造方法。
(条件1
ΔZ<1/40Z
(条件2
ΔX<1/40Z または
ΔY<1/40Z
ただし、ΔXは、上流側の前記支柱の変位量の平均値であり、ΔYは、下流側の前記支柱の変位量の平均値であり、ΔZは、ΔYとΔXとの差であり、Zは前記軽圧下セグメントの軽圧下勾配である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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