説明

連続鋳造機の二次冷却用スプレーノズルの閉塞防止方法

【課題】 鋳造中に二次冷却帯でスプレー幅切りを実施しても、スプレー幅切りを実施したスプレーノズルのノズル閉塞を防止することのできる閉塞防止方法を提供する。
【解決手段】 連続鋳造鋳片1を冷却する二次冷却水の第1の給水配管系統7a,7b,7cを、スプレー幅切りを行わない鋳片幅中央部の部分7aと、鋳片幅中央部より外側のスプレー幅切りを行う部分7b,7cとに分離するとともに、スプレー幅切りを行う部分では、前記第1の給水配管系統の他に、ノズル閉塞を防止するに足りる少流量の冷却水を供給する第2の給水配管系統8a、8bを設け、鋳造しているときには、スプレー幅切りを行うために、前記第1の給水配管系統から二次冷却水を供給していないスプレーノズルに、前記第2の給水配管系統から常に少流量の冷却水を供給し、鋳造していないときには、前記第2の給水配管系統に設置した流量調節弁4b、4cを全開近傍に開いて冷却水を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機で鋳造中の鋳片を冷却するための二次冷却用スプレーノズルの閉塞防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機における鋳片の二次冷却では、通常、二次冷却帯を複数の冷却ゾーンに区分し、各冷却ゾーン毎に1つの流量調節弁で二次冷却水の流量制御を行っている。二次冷却帯の各冷却ゾーンは、最小単位でもユニット交換可能なロールセグメント単位となっており、1つの流量調節弁の系統下に多数のスプレーノズルが配置されている。
【0003】
ところで、スラブ連続鋳造機では、幅の異なる種々のサイズの鋳片を鋳造する必要があり、二次冷却帯のスプレーノズルは、最大幅のスラブ鋳片の鋳造に適用するべく、最大幅のスラブ鋳片の端部にも二次冷却水が噴霧されるように、幅方向にほぼ等間隔で並べて配置されている。
【0004】
しかし、幅の狭いスラブ鋳片を鋳造する際に、最大幅のスラブ鋳片に相当する範囲に二次冷却水を噴霧すると、幅の狭い鋳片の短辺面には、本来長辺面を冷却するべき二次冷却水が噴霧され、短辺面及び短辺面と長辺面とのコーナー部が過冷却となって、鋳片の曲げ或いは曲げ戻しなどの矯正時の引張応力によって、鋳片の表面に、横割れや、横割れの1種である、鋳片の長辺面から短辺面にわたるコーナー割れ(「コーナーカギ割れ」ともいう)が発生する。特に、Nb、B、Vなどの合金元素を添加した鋼種でこれら横割れの発生が顕著となる。
【0005】
そこで、この短辺側の過冷却を防止するために、例えば特許文献1に開示されるように、冷却ゾーンを鋳片幅方向で2ないし3の範囲に分離し、最大幅のスラブ鋳片を鋳造する際には、全てのスプレーノズルから噴霧し、鋳造する鋳片の幅に応じて端部側のスプレーノズルから順に中央部側のスプレーに向かって、冷却水を止める或いは冷却水量を減少させ、最小幅の鋳片の場合には幅中央部のスプレーノズルだけで冷却する方法が行われている。この技術は、「スプレー幅切り」或いは単に「幅切り」と呼ばれている。
【特許文献1】特開昭63−290670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなスプレー幅切り方法では以下の問題点がある。
【0007】
先ず、最大の問題点は、幅の狭い鋳片を鋳造する際に、必要としない端部側のスプレーノズルからの冷却水の噴霧を停止すると、鋳造中に停止したスプレーノズルの流出孔にスケールやモールドパウダーなどが付着・侵入し、これによって停止したスプレーノズルが閉塞してしまうということである。
【0008】
そこで、必要としない端部側のスプレーノズルからの冷却水を停止せずに、閉塞防止用の少流量の冷却水を流すことが試みられている。しかしながらこの場合、鋳片短辺側が過冷却とならないようにするためには、閉塞防止用の冷却水を極端に少なくする必要がある一方で、スプレー幅切りしない場合には大流量が必要となるが、大流量から極度の少流量までを制御可能な流量調節弁が存在せず、従って、スプレーノズルの閉塞を重視した場合には、スプレー幅切りを十分に実施できないという問題点がある。
【0009】
この場合に、大流量用の流量調節弁と少流量用の流量調節弁とを並列して設け、スプレー幅切り時に少流量用の流量調節弁を用いて流量制御するという方法も採れるが、スプレー幅切り時の冷却水流量が定常時の流量に較べて大幅に少なく、配管内の流速が定常時の流量に較べて大幅に低下し、配管内のスケールや錆を洗い流すことができず、結局、スプレーノズルの閉塞を発生させる。
【0010】
スプレーノズルが閉塞した状態で、スプレー幅切りを必要としない幅のスラブ鋳片を鋳造すると、鋳片端部側に冷却水が噴霧されず、冷却不足によって凝固完了点が連続鋳造機の機長を超え、異常バルジングなどのトラブルを引き起こす。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、連続鋳造機において、鋳造中に二次冷却帯でスプレー幅切りを実施しても、スプレー幅切りを実施したスプレーノズルのノズル閉塞を防止することのできる閉塞防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための第1の発明に係る連続鋳造機の二次冷却用スプレーノズルの閉塞防止方法は、連続鋳造鋳片を冷却する二次冷却水の第1の給水配管系統を、スプレー幅切りを行わない鋳片幅中央部の部分と、鋳片幅中央部より外側のスプレー幅切りを行う部分と、に分離するとともに、スプレー幅切りを行う部分では、前記第1の給水配管系統の他に、ノズル閉塞を防止するに足りる少流量の冷却水を供給する第2の給水配管系統を設け、鋳造しているときには、スプレー幅切りを行うために、前記第1の給水配管系統から二次冷却水を供給していないスプレーノズルに、前記第2の給水配管系統から常に少流量の冷却水を供給し、鋳造していないときには、前記第2の給水配管系統に設置した流量調節弁を全開近傍に開いて冷却水を供給することを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明に係る連続鋳造機の二次冷却用スプレーノズルの閉塞防止方法は、第1の発明において、前記スプレー幅切りを行う部分では、スプレー幅切りを行う複数の部分に分割してそれぞれ独立して冷却水を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スプレー幅切りを行う部分には部分ごとに少流量の冷却水を供給することの可能な第2の給水配管系統を設け、鋳造しているときには、第2の給水配管系統から常に少流量の冷却水を供給するので、鋳造中にスケールやモールドパウダーなどによってスプレーノズルが閉塞することが防止され、また、鋳造していないときには、第2の給水配管系統に設置した流量調節弁を全開近傍に開いて冷却水を供給するので、仮に鋳造中に第2の給水配管系統の淀み部にスケールや錆が堆積しても、非鋳造中に流量調節弁をほぼ全開した状態で冷却水を流すので、第2の給水配管系統に堆積したスケールや錆は洗い流されてしまい、スプレー幅切りを行う部分のスプレーノズルの閉塞を、長期に亘って安定して防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は、本発明を実施する際に用いた二次冷却水の給水配管系統を示すフロー図である。尚、図1は、スラブ鋳片の上面側に設けられたスプレーノズルのみを表示している。
【0016】
図1において、二次冷却水を供給するポンプ(図示せず)から延びる主配管6には、遮断弁3aが設置され、遮断弁3aの下流側で2つの給水系統に枝分かれしている。1つの給水系統は、流量調節弁4a及び流量計5aが設置された第1の給水配管7となり、他の1つの給水系統は、スプレーノズル2b及びスプレーノズル2cのノズル閉塞を防止するに足りる少流量の冷却水を供給する第2の給水配管8となっている。第1の給水配管7は、スラブ鋳片1を冷却するための二次冷却水の給水系統である。
【0017】
第1の給水配管7は、スラブ鋳片1の幅W1 、W2 、W3 に応じて二次冷却水のスプレー幅切りが可能となるように、第1の給水配管系統7a、第1の給水配管系統7b及び第1の給水配管系統7cの3つに分離されており、分離した第1の給水配管系統7aの先端にはスプレーノズル2aが設置され、第1の給水配管系統7bの先端にはスプレーノズル2bが設置され、また、第1の給水配管系統7cの先端にはスプレーノズル2cが設置されている。そして、第1の給水配管系統7bには遮断弁3bが設置され、第1の給水配管系統7cには遮断弁3cが設置されている。
【0018】
つまり、スラブ鋳片1の幅がW3 の場合には、遮断弁3b,3cが開放され、第1の給水配管系統7a,7b,7cから二次冷却水が供給され、スプレーノズル2a,2b,2cから二次冷却水が噴霧される。スラブ鋳片1の幅がW2の場合には、遮断弁3bが開放されて遮断弁3cが閉鎖され、スプレーノズル2cが幅切り対象となって、第1の給水配管系統7a,7bから二次冷却水が供給されて、スプレーノズル2a,2bから二次冷却水が噴霧される。また、スラブ鋳片1の幅がW1の場合には、遮断弁3b,3cが閉鎖され、スプレーノズル2b,2cが幅切り対象となって、第1の給水配管系統7aから二次冷却水が供給されて、スプレーノズル2aから二次冷却水が噴霧される。
【0019】
一方、第2の給水配管8は2つに枝分かれし、枝分かれした1つは、遮断弁3d、流量調節弁4b及び流量計5bを備えた第2の給水配管系統8aとなり、この第2の給水配管系統8aは第1の給水配管系統7bに連通している。また、枝分かれした他の1つは、遮断弁3e、流量調節弁4c及び流量計5cを備えた第2の給水配管系統8bとなり、この第2の給水配管系統8bは第1の給水配管系統7cに連通している。即ち、第2の給水配管系統8aから供給された冷却水は、第1の給水配管系統7bを経由してスプレーノズル2bから噴出し、また、第2の給水配管系統8bから供給された冷却水は、第1の給水配管系統7cを経由してスプレーノズル2cから噴出するように構成されている。
【0020】
この場合、流量調節弁4b及び流量調節弁4cは、流量調節弁4aに比べて1/5ないし1/20程度の少流量の制御が可能であり、第2の給水配管系統8aの配管径及び第2の給水配管系統8bの配管径は、それぞれ連通する第1の給水配管系統7b及び第1の給水配管系統7cの配管径の1/3ないし1/5程度である。
【0021】
ここで、例えばスラブ幅がW1 のスラブ鋳片1を鋳造する場合には、遮断弁3aを開放した状態として、遮断弁3b及び遮断弁3cを閉じ、流量計5aの測定値をフィードバックしながら流量調節弁4aよって所定量の冷却水を供給する。供給された冷却水は第1の給水配管系統7aを経由してスプレーノズル2aからスラブ鋳片1に噴霧される。スプレーノズル2b及びスプレーノズル2cはスプレー幅切りの状態となる。
【0022】
この場合に、遮断弁3d及び遮断弁3eを開放し、流量計5bの測定値をフィードバックしながら流量調節弁4bによって、スプレーノズル2bのノズル閉塞を防止するに足りる少流量に調節して、第2の給水配管系統8aに冷却水を供給すると同時に、流量計5cの測定値をフィードバックしながら流量調節弁4cによって、スプレーノズル2cのノズル閉塞を防止するに足りる少流量に調節して、第2の給水配管系統8bに冷却水を供給する。第2の給水配管系統8aに供給された冷却水はスプレーノズル2bから流出し、スプレーノズル2bのノズル閉塞が防止され、第2の給水配管系統8bに供給された冷却水はスプレーノズル2cから流出し、スプレーノズル2cのノズル閉塞が防止される。ここで、スプレーノズル2b,2cのノズル閉塞を防止するに足りる少流量とは、例えばスプレーノズル2b,2cが水平方向に向いて設置されているとした場合、このスプレーンノズルから流出する冷却水が、スラブ鋳片1に届かず、鋳片支持ロールに降り注ぐ程度の流量であるという意味である。この流量は、使用するスプレーノズルの噴霧容量によって異なるので、冷却水量の絶対値は一概には規定できない。
【0023】
このようにしてスラブ鋳片1の鋳造を実施する。鋳造終了後の連続鋳造機内へのダミーバーの挿入、ダミーバーヘッドと鋳型とのシール作業、或いは新たなタンディッシュの準備作業時などの非鋳造時には、流量調節弁4b及び流量調節弁4cを全開または全開近傍とし、第2の給水配管系統8a及び第2の給水配管系統8bに冷却水を供給する。
【0024】
これにより、仮に第2の給水配管系統8aまたは第2の給水配管系統8bの内部に鋳造中にスケールや錆が堆積しても、堆積したスケールや錆は洗い流されてしまい、スプレーノズル2b,2cの閉塞を防止することができる。前述したように、第2の給水配管系統8a及び第2の給水配管系統8bの配管径は、それぞれ連通する第1の給水配管系統7b及び第1の給水配管系統7cの配管径の1/3ないし1/5程度であるので、第2の給水配管系統8aまたは第2の給水配管系統8bの内部に堆積したスケールや錆は、流量調節弁4b及び流量調節弁4cを全開または全開近傍とすることにより、十分に洗い流されてしまう。
【0025】
このように、非鋳造中に冷却水を流す目的は、堆積したスケールや錆を洗い流すことであり、非鋳造中の全ての期間で実施する必要はなく、数分間から十数分間程度でも十分である。プロセスコンピューターを用いて流量調節弁4b及び流量調節弁4cの開度を制御すれば、上記処理を自動的に実施することができる。
【0026】
また、非鋳造時に、遮断弁3b及び遮断弁3cを開放し、流量調節弁4aを全開または全開近傍として、第1の給水配管系統7b及び第1の給水配管系統7cに冷却水を供給してもよい。仮に、第1の給水配管系統7b及び第1の給水配管系統7cにスケールや錆が堆積しても、このようにすることで洗い流すことができる。遮断弁3b及び遮断弁3cを開放する場合には、逆流を防止するために、遮断弁3d及び遮断弁3eを閉鎖することが好ましい。
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、スプレー幅切りを行う部分には少流量の冷却水を供給することの可能な第2の給水配管系統を設け、鋳造中には、第2の給水配管系統から常に少流量の冷却水を供給してスプレーノズルの閉塞を防止し、また、非鋳造中には、第2の給水配管系統に設置した流量調節弁を全開近傍に開いて冷却水を供給してスプレーノズルの閉塞を防止するので、スプレーノズルの閉塞が長期間に亘って安定して防止される。
【0028】
尚、本発明は上記説明の範囲に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記説明では、スプレー幅切りを実施する部分を2箇所としているが、1箇所でも構わず、また、3箇所以上であっても構わない。また、スプレー幅切りを行う部分にそれぞれスプレーノズルが幅方向に1つ(両端部合計で2つ)及び2つ(両端部合計で4つ)設置されているが、どのような組み合わせで幅切りの部分を構成しても構わない。要は、その連続鋳造機で鋳造するスラブ鋳片のサイズ構成に応じて、最適な幅切りができるように幅切りの範囲を決めればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する際に用いた二次冷却水の給水配管系統を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スラブ鋳片
2a スプレーノズル
2b スプレーノズル
2c スプレーノズル
3a 遮断弁
3b 遮断弁
3c 遮断弁
3d 遮断弁
3e 遮断弁
4a 流量調節弁
4b 流量調節弁
4c 流量調節弁
5a 流量計
5b 流量計
5c 流量計
6 主配管
7 第1の給水配管
7a 第1の給水配管系統
7b 第1の給水配管系統
7c 第1の給水配管系統
8 第2の給水配管
8a 第2の給水配管系統
8b 第2の給水配管系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造鋳片を冷却する二次冷却水の第1の給水配管系統を、スプレー幅切りを行わない鋳片幅中央部の部分と、鋳片幅中央部より外側のスプレー幅切りを行う部分と、に分離するとともに、スプレー幅切りを行う部分では、前記第1の給水配管系統の他に、ノズル閉塞を防止するに足りる少流量の冷却水を供給する第2の給水配管系統を設け、鋳造しているときには、スプレー幅切りを行うために、前記第1の給水配管系統から二次冷却水を供給していないスプレーノズルに、前記第2の給水配管系統から常に少流量の冷却水を供給し、鋳造していないときには、前記第2の給水配管系統に設置した流量調節弁を全開近傍に開いて冷却水を供給することを特徴とする、連続鋳造機の二次冷却用スプレーノズルの閉塞防止方法。
【請求項2】
前記スプレー幅切りを行う部分では、スプレー幅切りを行う複数の部分に分割してそれぞれ独立して冷却水を供給することを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造機の二次冷却用スプレーノズルの閉塞防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−39770(P2009−39770A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209087(P2007−209087)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】