説明

進行波増幅器

本発明は、増幅器と伝送ラインとを備える進行波増幅器に関する。進行波増幅器は、伝送ラインの損失の補償、信号の増幅、および増幅器を伝送ラインに逆並列に結合させることによる入力と出力の間の分離を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの伝送ラインと、少なくとも2つの増幅器と、を備える進行波増幅器に関する。本発明は、さらに、進行波の増幅を提供するための方法およびこのような進行増幅器または方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,550,513号において、全差動増幅器が述べられている。この増幅器は、複数の相互接続され分配された増幅器段を備え、各増幅器段は、高周波入力信号を受け取る入力手段を有する。分配された各増幅器段に高周波入力信号を伝送するための一対の伝送ラインが、設けられている。回路は、また、分配された各増幅器段に接続され、合計された差動出力を適切な出力端子に供給する、一対の出力伝送ラインを備える。さらに、バイアス手段が設けられており、DC電流を分配された増幅器段に供給し、高周波差動出力の振幅を制御する。この差動増幅器は、リターン電流が流れるグランド平面を有する不平衡の伝送ラインを備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、改善された進行波増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、前記増幅器が、前記伝送ラインに逆並列に結合された、進行波増幅器によって達成される。これにより、第1伝送ラインにおける進行波が、第1増幅器に供給され、前記第1増幅器は、この入力信号を増幅し、この増幅された信号を、前記第2伝送ラインの進行波に加える。前記第2伝送ラインの進行波は、第2増幅器の入力ポートに供給され、前記第2増幅器も、この信号を増幅し、増幅された信号を、前記第1伝送ラインの進行波に加える。2つの連続する増幅器が、伝送ラインに逆並列に結合されていることが望ましい。増幅された信号は、伝送ライン上の信号に加えられ、各増幅器により、進行波が増幅される。
【0005】
このような進行波増幅器を提供することにより、信号を増幅し、伝送ラインの損失を補償し、同相モード電流を減少させ、入力および出力信号を分離し、反射波を抑制することができる。
【0006】
前記結合手段を提供する実施形態においては、増幅器を、伝送ラインに電気的に結合することができる。好ましくは、前記結合手段は、請求項4または請求項5に記載の電気的接続または方向性結合である。方向性結合回路は、方向性および分離を、進行波増幅器に加えることができる。
【0007】
請求項3に記載の結合は、増幅器と伝送ラインの間の容易な結合を可能にする。空間的なオフセットが許容されるため、設計の制限を克服することができる。
【0008】
請求項6に記載の進行波増幅器が、さらに好ましい。2つの伝送ラインにおける進行波は、180°の位相差を有することができる。増幅器の出力信号を、伝送ライン上の進行波に結合する際、信号の位相は、増幅信号が進行波に加わるように整合する必要がある。
【0009】
請求項10に記載の進行波増幅器は、さらなる回路による増幅器の減結合を可能にする。
【0010】
特に、2つの伝送ラインと少なくとも2つの増幅器を有する前述の進行波増幅器を用いて、進行波増幅を提供する方法において、前記伝送ラインにおける前記進行波は、180°の位相差を有し、一対の前記増幅器の出力は、第1伝送ラインの進行波が第1増幅器に供給されるように、前記伝送ラインに逆並列に供給され、前記第1増幅器は、増幅された信号を、前記第2伝送ラインの進行波に加え、前記第2伝送ラインの進行波は、第2増幅器に供給され、前記第2増幅器は、増幅された信号を、前記第1伝送ラインの進行波に加える方法が、本発明のさらなる態様である。
【0011】
本発明の他のさらなる態様は、光システム、光スイッチマトリックス、光通信システム、RF広帯域製品、マイクロ波通信、衛星TVまたは衛星通信用のセットトップボックス、衝突防止レーダー、ワイヤレスローカルループ、GaAsなどの先進ICプロセッサおよびInPプロセスにおける、進行波増幅器の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、一般的な進行波増幅器(TWA:Travelling-Wave Amplifier)を示している。このTWAは、トランジスタの寄生を、伝送ラインの一体部分として使用することに基づいている。複数のトランジスタ3を、それらの間の適切な接続線で接続することにより、分配された、すなわち合成の伝送ラインが形成される。この伝送ラインは、信号喪失の代わりに、信号利得を示す。
【0013】
合成伝送ラインは、トランジスタ3のゲート回路において、インダクタ8aと、トランジスタ3の入力インダクタンスとにより形成される。合成ドレイン伝送ラインが、インダクタ6aおよびキャパシタ6bにより形成される。インダクタ6aおよびキャパシタ6bは、伝送ラインの寄生により形成される。伝送ラインは、それらの特性インピーダンス4および5で終端となる。
【0014】
入力信号が、信号ジェネレータ2bとジェネレータインピーダンス2aとを備えるジェネレータ2から、トランジスタに供給される。各トランジスタ3に対し、入力信号は、トランジスタ3のゲート線のフラクションを通じた波として、このトランジスタ3の入力を駆動しドレイン電流を生成する前に、伝播する。ドレイン電流は、ドレイン線に前方向波を生成し、この前方向波は、出力負荷10aを有する出力10に伝播する。
【0015】
このようなTWAの帯域は、2つの合成ライン間の遅延ミスマッチが原因となり、限定されてしまう。利得−帯域の積は、トランジスタ電力−利得のカットオフ周波数により抑制される。
【0016】
図2に示されているのは、図1に示されるTWAのブロック図である。伝送ライン12,14は、増幅器16に接続されており、増幅器16は、キャパシタ6bと、トランジスタ3と、インダクタ6aおよび8aとを備えることができる。
【0017】
図3は、本発明に係るTWAのブロック図を示している。図示されているのは、伝送ライン12,14である。これらの伝送ライン12,14は、入力12a,14aと、出力12b,14bとを有する。これらの伝送ライン12,14は、増幅器16により結合されている。これらの増幅器は、伝送ラインに逆並列(anti-parallel)に結合されている。第1増幅器16の出力は、伝送ライン14に結合されている。次の増幅器16の出力は、伝送ライン12に結合されている。これは、連続する2つの増幅器16が、伝送ライン12,14に、異なる方向性を有して結合されることを意味している。増幅器16の入力は、必ずしも、出力と空間的に同位置に配置する必要はなく、空間的オフセット20を有していてもよい。増幅器16の入力および出力は、結合装置18により伝送ライン12,14に結合され、結合装置18は、単純な電気接続または方向性結合回路とすることができ、TWA回路に方向性と分離を提供する。伝送ライン12,14における進行波は、180°の位相差を有する。各増幅器16の出力における増幅された信号は、伝送ラインにおいて、この信号が各進行波に加わるようなものとする必要がある。位相整合は、オフセット20、増幅器16の位相、および/または、結合装置18の位相を変化させることにより、達成される。
【0018】
図4は、伝送ライン12,14に結合された1つの増幅器16を示している。増幅器は、キャパシタ16aと、インピーダンス16bと、トランジスタ16cとを備える。伝送ライン12および14は、キャパシタ22b,24bおよびインダクタ22a,24aにより、Veeに結合される。トランジスタ16cは、そのDCバイアスを伝送ラインから受け取る。16個の連続する増幅器16により、TWAは、4.6GHzのポイントで−3dBを有する11dBの利得を持つことができ、これは、結果として16.5GHzの利得−帯域の積となる。本発明の意図は、100GHz以上までの周波数を使用することである。特に光ネットワークにおいて、信号処理の帯域は、大きくする必要があり、例えば10GHzの帯域が一般的である。光ネットワークにおいては、レーザーおよびフォトダイオードが、異なる接続を有するため、差動伝送ラインが、しばしば用いられる。光スイッチマトリックスにおいて、差動伝送ラインは、2mmまでの長さとすることができる。これらは、半導体基板上に具体化され、かつ、多くの入力および出力を接続できる必要があり、これは、本発明に係るTWAにより達成される。発明的なTWAは、光スイッチングマトリックスのノードにおける欠点および信号損失を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面により明確となり、これらを参照して説明される。
【図1】図1は、本発明に係る分配された進行波増幅器を示している。
【図2】図2は、本発明に係る標準的な進行波増幅器のブロック図を示している。
【図3】図3は、本発明に係る進行波増幅器である。
【図4】図4は、本発明に係る進行波増幅器のノードである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの伝送ラインと、少なくとも2つの増幅器と、を備え、
前記増幅器は、前記伝送ラインに逆並列に結合される、ことを特徴とする進行波増幅器。
【請求項2】
前記増幅器を前記伝送ラインにそれぞれ結合するための結合手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の進行波増幅器。
【請求項3】
前記増幅器の入力ポートから一方の前記伝送ラインへの前記結合は、前記増幅器の出力ポートから他方の前記伝送ラインへの結合からのセットオフにより、空間的であることを特徴とする請求項1に記載の進行波増幅器。
【請求項4】
前記結合手段は、電気的接続であることを特徴とする請求項2に記載の進行波増幅器。
【請求項5】
前記結合手段は、方向性結合回路であることを特徴とする請求項2に記載の進行波増幅器。
【請求項6】
前記増幅器の出力信号の位相は、各伝送ラインの進行波の位相と整合されていることを特徴とする請求項1に記載の進行波増幅器。
【請求項7】
前記空間的オフセットは、前記位相整合を提供することを特徴とする請求項3に記載の進行波増幅器。
【請求項8】
前記増幅器の位相は、前記位相整合を提供することを特徴とする請求項1に記載の進行波増幅器。
【請求項9】
前記結合手段は、前記位相整合を提供することを特徴とする請求項2に記載の進行波増幅器。
【請求項10】
前記増幅器は、DCバイアス電圧を、前記伝送ラインから引き出すことを特徴とする請求項1に記載の進行波増幅器。
【請求項11】
特に、2つの伝送ラインと少なくとも2つの増幅器を有する請求項1に記載の進行波増幅器を用いて、進行波増幅を提供する方法であって、
前記伝送ラインにおける前記進行波は、180°の位相差を有し、
一対の前記増幅器の出力は、第1伝送ラインの進行波が第1増幅器に供給されるように、前記伝送ラインに逆並列に供給され、
前記第1増幅器は、増幅された信号を、前記第2伝送ラインの進行波に加え、前記第2伝送ラインの進行波は、第2増幅器に供給され、
前記第2増幅器は、増幅された信号を、前記第1伝送ラインの進行波に加える、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
光システム、光スイッチマトリックス、光通信システム、RF広帯域製品、マイクロ波通信、衛星TVまたは衛星通信用のセットトップボックス、衝突防止レーダー、ワイヤレスローカルループ、GaAsなどの先進ICプロセッサおよびInPプロセスにおける、請求項1に記載の進行波増幅器または請求項11に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−506879(P2006−506879A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552958(P2004−552958)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004831
【国際公開番号】WO2004/047288
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】