説明

遅延ポンプ機構およびポンプ式製品

【課題】利用者の操作によって当該利用者の両手へ容器内容物を放出可能なポンプ機構を提供する。
【解決手段】利用者の押下げ操作にともなうピストン群(2,4,8)の下動によって、上流側充填室Aの内容物は環状下側ピストン(9)および外側コイルスプリング(10)を下動させながら下流側充填室Cに流入する。操作ボタン1を離すとピストン群は、外側コイルスプリングおよび内側コイルスプリング(11)の復帰力によって、充填室Cの吐出弁(8d,2c)を閉状態に維持したまま上動する。このとき容器内容物が吸上げられる充填室Aの小径流入口(5d)の流入抵抗により放出開始地点までの上動時間をかせいでいる。環状上側ピストン(8)の外側上面部分(8e)がカラーリング(7)の下端面部分(7b)に当接して吐出弁が開くと、充填室Cの内容物は環状下側ピストンおよび外側コイルスプリングの押出し作用で外部空間に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルコール液による両手洗浄などに用いられる遅延ポンプ機構、すなわち容器内容物が、利用者の放出操作終了時点よりも遅延して外部空間に放出される機能を備えた遅延ポンプ機構に関する。
【0002】
通常のポンプ機構は、操作ボタンを利用者が放出操作するとき自体のピストンの移動により、内容物収納済みのいわばバッファ空間域の吐出弁(下流弁)が開き、吸込弁(上流弁)がそれまでと同じく閉じたままの状態となって、当該空間域の内容物を外部空間に放出している。
【0003】
このように、内容物が外部空間に放出されるのは利用者が手や指で操作ボタンを例えば押下げるときのみであるため、内容物を両手で受けるような使い方はできなかった。
【0004】
ポンプ式製品の様々な場面での使い方を考えると、例えば両手洗浄などを簡単に、かつ確実に行える使い勝手のよい遅延ポンプ機構が必要とされるところであり、本発明はこのような要請に応えるものである。
【背景技術】
【0005】
従来、利用者によって押下げられた操作ボタンがその押下げ操作解除後に自動復帰する際に収納空間域の内容物を外部空間に放出するタイプのポンプ機構が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
ただ、このポンプ機構は、押下げ操作時から押下げ操作解除後の操作ボタン復帰時までの間、内容物を連続的に放出するものである。
【特許文献1】実開平2−137958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の上記ポンプ機構は、操作ボタンの押下げ操作にともなって内容物を放出し、かつ、この内容物放出状態を押下げ操作後の操作ボタンの復帰時にも継続させたものである。
【0008】
すなわち、内容物の放出操作終了時から内容物の放出動作開始時までのタイミングを遅延させることにより、利用者が、内容物をその両手で確実に受けることができるようにするといった着想に基づいていない。
【0009】
そのため、利用者は操作ボタンを押していた方の手に例えば洗浄用アルコールなどを十全に噴霧させることが難しいという問題点があった。
【0010】
そこで本発明では、利用者が放出操作を終了してから内容物放出動作用のピストンが所定位置まで復帰した段階ではじめて内容物吐出弁が開くような遅延ポンプ機構を用いて、利用者の両手への容器内容物の放出動作の安定化,確実化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以上の課題を次の遅延ポンプ機構を用いて解決する。
(1)容器内容物が、利用者の放出操作終了時点よりも遅延して外部空間に放出される機能を備えた遅延ポンプ機構であって、
前記放出操作のための操作部(例えば後述の操作ボタン1)と、
前記放出操作により、内容物の吸込弁(例えば後述の環状受け部5cおよび吸込弁作用部6b)から中間弁(例えば後述の中間弁作用部3aおよび環状受け部4b、または中間弁体18および環状受け部4b)までの間の内容物圧力が増加する上流側空間域(例えば後述の上流側充填室A,A’)と、
前記内容物圧力の増加に応じて前記上流側空間域の前記中間弁が開くことにより、当該上流側空間域の内容物が、外部空間に放出されることなしに流入する下流側空間域(例えば後述の下流側充填室C,C’)と、
前記放出操作の終了にともない、前記下流側空間域を、その吐出弁(例えば後述の吐出弁作用部2cおよび逆スカート部8d、または吐出弁作用部16dおよび環状凸部20d)が閉じて内容物が収納された状態のまま所定位置まで変位させて、その後、当該吐出弁が開いて当該内容物を前記外部空間に放出する遅延作動手段とを備えたものとする。
(2)上記(1)において、
前記遅延作動手段は、
前記操作部と一体化して前記上流側空間域を形成する第1のピストン(例えば後述の鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3および筒状下側ピストン4、または筒状下側ピストン4,環状上側ピストン16および鞘状中間部材17)と、
前記中間弁の下流側において前記第1のピストンとともに前記下流側空間域を形成する第2のピストン(例えば後述の環状下側ピストン9)および第3のピストン(例えば後述の環状上側ピストン8,鞘状上側ピストン20)と、
前記第2のピストンを静止モード位置に付勢する第1の弾性部材(例えば後述の外側コイルスプリング10)と、
前記第1のピストンと前記第3のピストンとの間に形成される前記吐出弁と、
前記第3のピストンの前記所定位置を設定する規制部材(例えば後述のカラーリング7,19)と、を備えたものであり、
前記操作部の放出操作に基づく前記第1のピストンの移動により、
前記中間弁が開き、かつ前記吐出弁が閉じて、前記吸込弁が閉状態の前記上流側空間域の内容物を前記下流側空間域に流入させるともに、前記第3のピストンが前記第1のピストンと連動し、
前記吐出弁が閉じた状態の前記下流側空間域への内容物流入にともなって、前記第2のピストンが前記第1の弾性部材に抗する形で移動し、
前記操作部の放出操作終了後の前記第1の弾性部材に基づく前記第2のピストンの復帰動作により、
前記吐出弁がそれまでと同じように閉じて前記下流側空間域の内容物を保持したまま、前記第1および前記第3の各ピストンが前記規制部材の方に連動し、
前記第3のピストンが前記規制部材の作用により停止した後、前記第1のピストンがさらに移動することにより前記吐出弁が開いて、
前記下流側空間域の内容物が、開状態の前記吐出弁から外部空間に、前記第1の弾性部材の前記第2のピストンに対する付勢力で放出されるものとする。
(3)上記(2)において、
前記上流側空間域は、
前記第1のピストンとシリンダ(例えば後述のシリンダ5および内側シリンダ6)との間に設定される空間域であり、
前記下流側空間域は、
前記第1のピストン,その外側の前記第2および前記第3の各ピストンと、シリンダ(例えば後述のシリンダ5)との間に設定される空間域である。
(4)上記(2)において、
前記遅延作動手段は、
前記第1のピストンを静止モード位置に付勢する第2の弾性部材(例えば後述の内側コイルスプリング11)を備えたものとする。
(5)上記(2)において、
前記上流側空間域への流入口(例えば後述の小径流入口5d)は、
そこでの内容物流入抵抗を大きくして、前記第1および前記第3の各ピストンが前記規制部材の方に連動するときの速度を低下させるものとする。
【0012】
本発明は、以上の構成からなる遅延ポンプ機構および、これを備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明はこのように、
(11)容器本体側からの吸込弁と外部空間への吐出弁との間の内容物収納用の空間域を、当該吸込弁から続く上流側空間域と、当該吐出弁に続く下流側空間域とに少なくとも分けて構成し、
(12)操作部の放出操作の際には上流側空間域の内容物を吐出弁閉状態の下流側空間域に移動させるだけであり(外部空間には放出しない)、
(13)放出操作終了後にこの下流側空間域を所定位置まで変位させた時点で吐出弁が開状態となり、ここではじめて下流側空間域の内容物が外部空間に放出される、
ものである。
【0014】
そのため利用者は、操作部の放出操作を終了した後であせることもなしに落ち着いて、容器内容物を両手部分に簡単に、また確実に移すことができる。
【0015】
また、上流側空間域の構成要素である第1のピストンを静止モード位置に付勢する第2の弾性部材を省略した形によっても、放出操作終了後に下流側空間域が所定位置まで変位した時点で吐出弁が開状態に設定されるようにしているので、遅延ポンプ機構製造に際してのコストダウンを図ることができる。
【0016】
また、上流側空間域への内容物流入抵抗を大きくして、当該空間域の構成要素である第1のピストンが放出操作終了後に放出動作開始位置まで復帰する際の低速化を図っているので、利用者の放出操作終了後から内容物の放出開始までの遅延時間をかせいで、利便性の高い遅延ポンプ機構にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1乃至図8を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
図1〜図4は、遅延作動モード(図4参照)において、上限位置で停止した環状上側ピストン8に対して鞘状上側ピストン2が更に上動することにより、吐出弁(2c,8d)が開くタイプの遅延式ポンプ機構に関するものである。
【0019】
ここで、
図1は、本発明の遅延式ポンプ機構(その1)の静止モードを示し、
図2は、図1の操作ボタンをその最下動位置まで押下げた状態、すなわち中間弁が開いて上流側充填室Aの内容物が中間充填室Bおよび下流側充填室Cに移動する状態の押下げモードを示し、
図3は、図2の操作ボタンの押圧操作解除後であってまだ吐出弁(外部空間への出力弁)が閉じたままの状態、すなわち下流側充填室Cに内容物が閉じ込められてそのままピストン群がそれぞれ最初の静止モード位置の方に上動していく状態の復帰モードを示し、
図4は、図3の復帰モードの後半段階で吐出弁が開いた状態、すなわち下流側充填室Cの内容物が当該吐出弁から外部空間に放出される遅延作動モードを示している。
【0020】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば螺子部分1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0021】
なお、図1〜図4におけるアルファベット付でない主たる構成要素は、操作ボタン1,鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3,筒状下側ピストン4,シリンダ5,内側シリンダ6,カラーリング7,環状上側ピストン8,環状下側ピストン9,外側コイルスプリング10および内側コイルスプリング11などである。
【0022】
図1〜図4において、
1は利用者の押圧操作力やコイルスプリングの付勢力(弾性力)などに基づいて上下動する操作ボタン,
1aは当該操作ボタンの筒状部の外周面に形成された螺子部分,
1bは放出口にいたる内容物の放出用通路,
【0023】
2は上部外周面の嵌合機能により操作ボタン1と一体化して外部空間への通路域を備えた鞘状上側ピストン,
2aは大径の上側筒状部の内周面縦方向に複数形成された凹状部,
2bは当該上側筒状部の最大径部分を構成している環状垂下部,
2cは小径の下側鞘状部の上部外周面からなる吐出弁作用部,
【0024】
3は上部内周面の嵌合機能により鞘状上側ピストン2と一体化して後述の筒状下側ピストン4の流入口4cに対する中間弁機能を備えた鞘状中間ピストン,
3aは当該ピストンの下端部分に設けられた半球状の中間弁作用部,
3bは当該中間弁作用部を支持する複数の螺旋状の弾性片部,
【0025】
4は上部内周面の嵌合機能により鞘状中間ピストン3と一体化して当該ピストンとの間で弁作用を呈する筒状下側ピストン,
4aは当該ピストンの上部分に複数形成されて後述の中間充填室Bと下流側充填室Cとを連通させるための孔部,
4bは中間弁作用部3aに対応した漏斗態様の環状受け部,
4cは当該環状受け部に形成された内容物の流入口,
4dは当該環状受け部の外底面側に複数形成されて後述の内側コイルスプリング11を受ける縦リブ状部,
4eは後述の内側シリンダ6の内周面に常時密接するシール・被案内用のスカート部,
【0026】
5は上述の各ピストン2,3,4を収容してそれぞれの移動空間を提供するシリンダ,
5aは当該シリンダの上側外周面に形成された環状鍔部,
5bは当該環状鍔部の下方部分に形成されて容器内部の負圧化を阻止するための減圧防止用孔部,
5cは後述の吸込弁作用部6bに対応した漏斗態様の環状受け部,
5dは当該環状受け部に形成された内容物の小径流入口,
5eは上端側内周面に複数形成された縦リブ状部,
【0027】
6はシリンダ5の内底面側に配設されて当該シリンダの小径流入口5dに対する吸込弁機能を備えた内側シリンダ,
6aは当該内側シリンダの底面部分に形成された貫通部,
6bは当該貫通部の近くに設けられた半球状の吸込弁作用部,
6cは当該吸込弁作用部を支持する複数の弾性片部,
6dは後述の内側コイルスプリング11を受ける環状底面部,
6eは後述の外側コイルスプリング10を受ける環状鍔部,
【0028】
7はシリンダ5の上側外周面と嵌合して上側ピストン2の案内部や後述の環状上側ピストン8の上動位置規制部などとして作用するカラーリング,
7aは最内側筒状部の内周面上側部分に形成された螺子部分(製品出荷時や製品陳列時などに操作ボタン1の螺子部分1aとの螺合状態に設定される),
7bは最内側筒状部の下端面部分,
7cは(当該筒状部の外側の)環状垂下部の外周面部分にシリンダ5の縦リブ状部5eと対応する形で複数形成された縦リブ状部,
【0029】
8はシリンダ5の内部における鞘状上側ピストン2などの外側空間域に配設されて、後述の下流側充填室Cの内容物へのシール作用や吐出弁作用(外部空間への出力弁作用)を呈する環状上側ピストン,
8aは底面部分の径方向に複数形成された内容物通過用の溝状部,
8bはシリンダ5の内周面に常時密接するシール・被案内用のスカート部,
8cは環状垂下部2b(鞘状上側ピストン2)の内周面に常時密接するシール・被案内用のスカート部,
8dは図2の押下げモードや図3の復帰モードのときに吐出弁作用部2c(鞘状上側ピストン2)の外周面に密接するシール・弁作動用の逆スカート部(吐出弁作用部分),
8eは同じく押下げモードや復帰モードにおいて環状垂下部2b(鞘状上側ピストン2)の下端面に当接して当該環状上側ピストンを鞘状上側ピストン2と一体的に連動させる機能を備えた外側上面部分,
【0030】
9はシリンダ5の内部における筒状下側ピストン4などの外側空間域に図示上方向の付勢力(弾性力)を受ける態様で配設されて、後述の下流側充填室Cの内容物へのシール作用や押圧作用(押上駆動作用)を呈する環状下側ピストン,
9aはシリンダ5の内周面に常時密接するシール・被案内用のスカート部,
9bは筒状下側ピストン4の孔部4aより下側の外周面に常時密接するシール・被案内用の逆スカート部,
9cは後述の外側コイルスプリング10を受ける環状段部,
【0031】
10は環状下側ピストン9を図示上方向(環状上側ピストン8と当接する方向)に付勢する外側コイルスプリング,
【0032】
11は筒状下側ピストン4を図示上方向(図1の静止モードの位置方向)に付勢する内側コイルスプリング,
【0033】
12は内容物が収納された容器本体,
12aは当該容器本体の首部,
【0034】
13はシリンダ5の環状鍔部5aの底面と容器本体12の首部12aの上端面とに挟持された環状シール部材,
【0035】
14は容器本体12の首部12aの外周面と螺合して、シリンダ5の環状鍔部5aおよび環状シール部材13を、当該首部の上端面との間に挟みこんだ状態で当該容器本体に固定する筒状のカバーキャップ,
【0036】
Aはシリンダ5の流入口5b(吸込弁)から筒状下側ピストン4の流入口4c(中間弁)にいたるシリンダ内空間域からなる上流側充填室,
Bは筒状下側ピストン4の流入口4c(中間弁)から孔部4aにいたるシリンダ内空間域からなる中間充填室,
Cは筒状下側ピストン4の孔部4aから鞘状上側ピストン2の吐出弁作用部2cおよび環状上側ピストン8の逆スカート部8d(吐出弁)にいたるシリンダ内空間域からなる下流側充填室,
【0037】
s1は押下げモードでの上流側充填室Aから中間充填室Bおよび下流側充填室Cへの内容物の概略的な流れ,
s2は復帰モードでの容器本体側から上流側充填室Aへの内容物の概略的な流れ,
s3は遅延作動モードでの下流側充填室Cから外部空間への内容物の概略的な流れ,
をそれぞれ示している。
【0038】
上述の操作ボタン1,鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3,筒状下側ピストン4,シリンダ5,内側シリンダ6,カラーリング7,環状上側ピストン8,環状下側ピストン9,容器本体12およびカバーキャップ14はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものである。なお、外側コイルスプリング10および内側コイルスプリング11は金属製や合成樹脂製のものであり、環状シール部材13は合成樹脂製やゴム製のものである。
【0039】
また、外側コイルスプリング10のばね係数は例えば1800gf/cm〜2200gf/cmであり、内側コイルスプリング11のばね係数は例えば230gf/cm〜380gf/cmである。
【0040】
図1〜図4の遅延ポンプ機構の基本的特徴は、
(21)利用者が図1の静止モードにおける操作ボタン1を押下げてこれと一体の連結ピストン(鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3および筒状下側ピストン4)を下動させることにより、中間弁作用部3aが環状受け部4bから離間して、上流側充填室Aの内容物が中間充填室Bおよび(吐出弁が閉状態の)下流側充填室Cに移動し(図2のs1)、
(22)この下流側充填室Cへの内容物移動にともなって環状下側ピストン9が内容物の圧力で下動することにより、(吐出弁が閉状態の)当該充填室Cに放出対象の内容物が収納され、
(23)その後利用者が操作ボタン1の押下げ操作を止めると、下流側充填室Cは、その内容物容積を略維持して吐出弁閉状態のまま、外側コイルスプリング10の付勢力などに基づいて上動していき(図3参照)、
(24)この上動途中の環状上側ピストン8の外側上面部分8eがカラーリング7の最内側筒状部の下端面部分7bに当接して停止した以後は、操作ボタン1および上記連結ピストンが環状上側ピストン8に対して上動し、その結果、吐出弁が開き、すなわち図4で示すように環状上側ピストン8の逆スカート部8dと鞘状上側ピストン2の外周面(吐出弁作用部2c)とのそれまでの密接状態が解除され、
(25)この密接状態解除により、下流側充填室Cの内容物は、外側コイルスプリング10の作用で上動を続ける環状下側ピストン9からいわば押し出される形で、開状態の吐出弁域や操作ボタン1の放出用通路1bを経て外部空間に流出する(図4のs3)、
ことである。
【0041】
このように、操作ボタンが押下げられる途中や図2の下死点位置では吐出弁は閉じたままに維持され、利用者が操作ボタンの押下げ操作を止めて、すなわち操作ボタンから手,指を離して、当該操作ボタンが所定位置(図4の位置)まで復帰した後ではじめて吐出弁が開き、容器内容物が外部空間に放出される。
【0042】
そのため、利用者は操作ボタンの押下げ操作した方の手も含めた両手で容器内容物を確実に受けることができる。
【0043】
図1は、操作ボタン1がその上死点で止まった状態を示している。
【0044】
このとき、上流側充填室Aや中間充填室Bなどには、前回の内容物放出動作にともなう一連のピストン群(鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3,筒状下側ピストン4,環状上側ピストン8および環状下側ピストン9)の初期位置への復帰動作により、内容物が収納されている。また、吸込弁および中間弁は閉状態、吐出弁は開状態になっている。
【0045】
ただ、吐出弁は開いているものの、環状下側ピストン9は、図示のように、その内周面の上端縁部分が鞘状中間ピストン3の上端側外周面(テーパ状面)に密接し、かつその逆スカート部9bが筒状下側ピストン4の孔部4aより下方の外周面に密接しているので、当該密接部分より上流側の空間域(下流側充填室Cの一部,中間充填室Bおよび上流側充填室A)が外部空間と連通することはない。
【0046】
なお、環状上側ピストン8および環状下側ピストン9は外側コイルスプリング10の付勢力によりそれぞれの上死点で静止している。すなわち、環状上側ピストン8はカラーリング7の下端面部分7bに当接し、環状下側ピストン9はこの環状上側ピストンと鞘状中間ピストン3の各周面部分に当接している。
【0047】
図2は、図1の操作ボタン1を下死点まで押下げた状態を示している。
【0048】
静止モード位置の操作ボタン1が押下げられる過程においては、
(31)先ず、当該操作ボタンと一体になっている鞘状上側ピストン2の環状垂下部2bの下端部分が、静止状態の環状上側ピストン8の外側上面部分8eに当接し、かつ、吐出弁作用部2cが逆スカート部8dに密接し、
(32)この当接(密接)後、環状上側ピストン8は鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3および筒状下側ピストン4と一体になって下動し、
(33)この筒状下側ピストン4の可動にともなって、上流側充填室Aの容積が小さくなり、そこの内容物圧力が大きくなるので、鞘状中間ピストン3の中間弁作用部3aがその支持用の弾性片部3bの弾性力に抗する形で上方に変位し、
(34)この中間弁作用部3aの変位により、それまで閉じていた筒状下側ピストン4の環状受け部4bとの間のエリアが開いた状態となり、
(35)この開状態の空間域や孔部4aを経て、上流側充填室Aの内容物が中間充填室Bおよび下流側充填室Cへと流入し(s1参照)、
(36)この下流側充填室Cへの内容物流入にともなって、その圧力を下方向に受ける環状下側ピストン9が外側コイルスプリング10の付勢力に抗する形で図2の下死点位置まで移動する、
ことになる。このとき吐出弁(2c,8d)は勿論閉じたままである。
【0049】
図3は、図2の押下げモードにおける操作ボタン1の押圧操作を利用者が止めた後で一連のピストン群および操作ボタンが吐出弁閉状態のまま上動する状態を示している。
【0050】
操作ボタン1の押圧操作が解除されると先ず、概略、一連のピストン群(鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3,筒状下側ピストン4,環状上側ピストン8および環状下側ピストン9)および操作ボタン1は、図2の下流側充填室Cの状態(空間域の大きさや吐出弁の閉状態など)をそのままに保持しながら上方向に移動していく。
【0051】
このとき、通常のポンプ機構の吸込弁動作と同じように、内側シリンダ6の吸込弁作用部6bがその支持用の弾性片部6cの弾性力に抗する形で上方に変位してシリンダ5の環状受け部5cとの間が開状態となり、容器内容物が小径流入口5dから上流側充填室Aに流入する(s2参照)。
【0052】
上記ピストン群は、この小径流入口5dから上流側充填室Aへの内容物の流入程度に応じる形で上方向へ移動していく。
【0053】
ここで小径流入口5dは、容器本体12から上流側充填室Aへの内容物の流入抵抗を大きくして、上記ピストン群の移動速度を抑えている。
【0054】
これにより、図3の復帰モードの開始時(=利用者が操作ボタン1から手,指を離した段階)から図4の遅延作動モードの開始時(=吐出弁が開いて下流側充填室Cの内容物が外部空間に放出され始める段階)までの遅延時間をかせいでいる。
【0055】
なお上記ピストン群の主たる移動駆動源は、環状下側ピストン9の付勢用の外側コイルスプリング10である。
【0056】
すなわち、当該外側コイルスプリング10の上方向への付勢力が環状下側ピストン9および下流側充填室Cの内容物を介して環状上側ピストン8に伝達され、当該ピストン8は、その外側上面部分8dに鞘状上側ピストン2の環状垂下部2bをいわば載せて、上記連結ピストンとの一体物の形で上方向へと移動していく。
【0057】
このピストン群(鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3,筒状下側ピストン4,環状上側ピストン8および環状下側ピストン9)の一体化した上動は、環状上側ピストン8の外側上面部分8dがカラーリング7の下端面部分7bに当接するまで続く。
【0058】
このときのピストン群の上動開始からカラーリング7との当接までの移動ストロークは例えば20〜25mmで、移動所要時間は例えば4〜7秒である。
【0059】
図4は、環状上側ピストン8の外側上面部分8dがカラーリング7の下端面部分7bに当接した後の吐出弁開状態の遅延作動モードを示している。
【0060】
すなわち、外側上面部分8dが下端面部分7bに当接すると、
(41)環状上側ピストン8は勿論この下端面部分7bとの当接状態で停止し、
(42)環状上側ピストン8の外側上面部分8dに載せられていた鞘状上側ピストン2,鞘状中間ピストン3,筒状下側ピストン4の連結ピストンは、内側コイルスプリング11の付勢力により上方向に移動し、
(43)この連結ピストン(鞘状上側ピストン2)の上動にともない、それまでの環状上側ピストン8の逆スカート部8dと鞘状上側ピストン2の吐出弁作用部2cとの密接状態が解除されて、吐出弁が開き、鞘状中間ピストン3の上面部分が環状上側ピストン8の底面部分と当接した状態に移行し、
(44)この吐出弁の開状態で環状下側ピストン9が外側コイルスプリング10の付勢力により上方向に移動して、これにより下流側充填室Cの内容物が「環状上側ピストン8の溝状部8a−吐出弁域−鞘状上側ピストン2の凹状部2a・内部空間域−操作ボタン1の放出用通路1b」などを経て外部空間にいわば押し出される、
ことになる。
【0061】
そして環状下側ピストン9は、その上端縁部分が環状上側ピストン8および鞘状中間ピストン3の各周面部分に当接した段階で停止し、図1の静止モードの状態に戻る。
【0062】
図5〜図8は、遅延作動モード(図8参照)において、吐出弁(16d,20d)を閉状態に設定・保持するための上側コイルスプリング21の付勢力に抗して、環状上側ピストン16が上限位置で停止した鞘状上側ピストン20に対して更に上動することにより、当該吐出弁が開くタイプの遅延式ポンプ機構に関するものである。
【0063】
ここで、
図5は、本発明の遅延式ポンプ機構(その2)の静止モードを示し、
図6は、図5の操作ボタンをその最下動位置まで押下げた状態、すなわち中間弁が開いて上流側充填室Aの内容物が中間充填室Bおよび下流側充填室Cに移動する状態の押下げモードを示し、
図7は、図6の操作ボタンの押圧操作解除後であってまだ吐出弁(外部空間への出力弁)が閉じたままの状態、すなわち下流側充填室Cに内容物が閉じ込められてそのままピストン群がそれぞれ最初の静止モード位置の方に上動していく状態の復帰モードを示し、
図8は、図7の復帰モードの後半段階で吐出弁が開いた状態、すなわち下流側充填室Cの内容物が当該吐出弁から外部空間に放出される遅延作動モードを示している。
【0064】
なお、新たに用いる参照番号は以下の通りであり、その他の操作ボタン1,筒状上側ピストン5,内側シリンダ6,環状下側ピストン9,外側コイルスプリング10,容器本体12,環状シール部材13およびカバーキャップ14、ならびにこれらのアルファベット付き参照番号は図1〜図4のそれと同じものを用いる。
【0065】
図5〜図8において、
15は上部外周面の嵌合機能により操作ボタン1と一体化して外部空間への通路域を備えた筒状上側ピストン,
15aは当該筒状上側ピストンの最大径部分を構成している環状垂下部,
15bは環状垂下部15aに複数形成されて、後述の片部20bをガイドするスリット状部,
【0066】
16はシリンダ5の内部に配設されて、後述の下流側充填室C’の内容物へのシール作用を呈する環状上側ピストン,
16aは底面部分の径方向に複数形成された内容物通過用の溝状部,
16bはシリンダ5の内周面に常時密接するシール・被案内用のスカート部
16cは中央部分に形成された筒状部,
16dは筒状部16cの下端側の内周部からなる吐出弁作用部,
16eは環状垂下部15aの下端が当接する上面部分,
【0067】
17は筒状下側ピストン4および環状上側ピストン16と一体に係合して、その鞘状底面が後述の中間弁体18の上方への移動を規制する態様の鞘状中間部材,
【0068】
18は環状受け部4bに当接することでの流入口4cに対する弁作用を有するボール状の中間弁体,
【0069】
19はシリンダ5の上側外周面と嵌合して筒状上側ピストン15の案内部や環状上側ピストン16および後述の鞘状上側ピストン20の上動位置規制部などとして作用するカラーリング
19aは最内側筒状部の内周面上側部分に形成された螺子部分(製品出荷時や製品陳列時などに操作ボタン1の螺子部分1aとの螺合状態に設定される),
19bは最内側筒状部の下端面部分,
19cは(当該筒状部の外側の)環状垂下部の外周面部分にシリンダ5の縦リブ状部5eと対応する形で複数形成された縦リブ状部,
19dは最内側筒状部の内周面に形成された環状段部,
【0070】
20は環状上側ピストン16との間で吐出弁作用(外部空間への出力弁作用)を呈する鞘状上側ピストン,
20aは筒状上側ピストン15の内周面に当接してシール作用を呈する上側スカート部,
20bは先端が環状段部19dに当接することで吐出弁作用を開状態にする複数の片部,
20cは筒状部16cの上側内周面に当接してシール作用を呈する下側スカート部,
20dは吐出弁作用部16dとの間に吐出弁作用を有する環状凸部,
20eは下側スカート部20cと環状凸部20dの間に形成された鞘状部の孔部,
【0071】
21は環状上側ピストン20を環状上側ピストン16に対して図示上方向(環状凸部が筒状部の下端に当接刷る方向)に付勢する上側コイルスプリング,
【0072】
A’はシリンダ5の流入口5b(吸込弁)から筒状下側ピストン4の流入口4c(中間弁)にいたるシリンダ内空間域からなる上流側充填室,
B’は筒状下側ピストン4の流入口4c(中間弁)から孔部4aにいたるシリンダ内空間域からなる中間充填室,
C’は筒状下側ピストン4の孔部4aから環状上側ピストン16の吐出弁作用部16dおよび環状上側ピストン20の環状凸部20d(吐出弁)にいたるシリンダ内空間域からなる下流側充填室,
【0073】
s4は押下げモードでの上流側充填室A’から中間充填室B’および下流側充填室C’への内容物の概略的な流れ,
s5は復帰モードでの容器本体側から上流側充填室A’への内容物の概略的な流れ,
s6は遅延作動モードでの下流側充填室C’から外部空間への内容物の概略的な流れ,
をそれぞれ示している。
【0074】
上述の筒状上側ピストン15,環状上側ピストン16,鞘状中間部材17,カラーリング19および鞘状上側ピストン20はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものである。なお、中間弁体18および上側コイルスプリング21は金属製や合成樹脂製のものである。
【0075】
また、上側コイルスプリング21のばね係数は、外側コイルスプリング10のばね係数に対して十分に小さい例えば230gf/cm〜1500gf/cmである。
【0076】
図5〜図8の遅延ポンプ機構の基本的特徴は、
(51)利用者が図5の静止モードにおける操作ボタン1を押下げてこれと一体の筒状上側ピストン15と、当該筒状上側ピストン15の下端(環状垂下部15aの下端)に当接した連結ピストン(筒状下側ピストン4,環状上側ピストン16および鞘状中間部材17)を下動させることにより、環状凸部20dが吐出弁作用部16dに密接し、中間弁体18は環状受け部4bから離間して、上流側充填室A’の内容物が中間充填室B’および(吐出弁が閉状態の)下流側充填室Cに移動し(図6のs4)、
(52)この下流側充填室Cへの内容物移動にともなって環状下側ピストン9が内容物の圧力で下動することにより、(吐出弁が閉状態の)当該充填室C’に放出対象の内容物が収納され、
(53)その後利用者が操作ボタン1の押下げ操作を止めると、下流側充填室C’は、その内容物容積を略維持して吐出弁閉状態のまま、外側コイルスプリング10の付勢力に基づいて上動していき(図7参照)、
(54)この上動途中の鞘状上側ピストン20の片部20bがカラーリング19の環状段部19dに当接して停止した以後は、操作ボタン1,筒状上側ピストン15および上記連結ピストンが鞘状上側ピストン20に対して上動し、その結果、吐出弁が開き、すなわち図8で示すように鞘状上側ピストン20の環状凸部20dと環状上側ピストン16の吐出弁作用部16dとのそれまでの密接状態が解除され、
(55)この密接状態解除により、下流側充填室C’の内容物は、外側コイルスプリング10の作用で上動を続ける環状下側ピストン9からいわば押し出される形で、開状態の吐出弁域や操作ボタン1の放出用通路1bを経て外部空間に流出する(図8のs6)、
ことである。
【0077】
このように、操作ボタンが押下げられる途中や図6の下死点位置では吐出弁は閉じたままに維持され、利用者が操作ボタンの押下げ操作を止めて、すなわち操作ボタンから手,指を離して、当該操作ボタンが所定位置(図8の位置)まで復帰した後ではじめて吐出弁が開き、容器内容物が外部空間に放出される。
【0078】
そのため、利用者は操作ボタンの押下げ操作した方の手も含めた両手で容器内容物を確実に受けることができる。
【0079】
図5は、操作ボタン1がその上死点で止まった状態を示している。
【0080】
このとき、上流側充填室A’や中間充填室B’などには、前回の内容物放出動作にともなう一連のピストン群(筒状下側ピストン4,環状下側ピストン9,筒状上側ピストン15,環状上側ピストン16,鞘状中間部材17および鞘状上側ピストン20)の初期位置への復帰動作により、内容物が収納されている。また、吸込弁および中間弁は閉状態、吐出弁は開状態になっている。
【0081】
ただ、吐出弁は開いているものの、環状下側ピストン9は、図示のように、その上端縁部分が鞘状中間部材17の上端側フランジ部の下面に密接し、かつその逆スカート部9bが筒状下側ピストン4の孔部4aより下方の外周面に密接しているので、当該密接部分より上流側の空間域(下流側充填室C’の一部,中間充填室B’および上流側充填室A’)が外部空間と連通することはない。
【0082】
なお、連結ピストン(筒状下側ピストン4,環状上側ピストン16および鞘状中間部材17)および環状下側ピストン9は外側コイルスプリング10の付勢力によりそれぞれの上死点で静止している。すなわち、前記連結ピストンは環状上側ピストン16の上面部分16eがカラーリング19の下端面部分19bに当接し、環状下側ピストン9は連結ピストンの鞘状中間部材17の上側フランジ部下面に当接している。
【0083】
図6は、図5の操作ボタン1を下死点まで押下げた状態を示している。
【0084】
静止モード位置の操作ボタン1が押下げられる過程においては、
(61)先ず、当該操作ボタンと一体になっている筒状上側ピストン15の環状垂下部15aの下端部分が、静止状態の環状上側ピストン16の上面部分16eに当接し、
(62)この当接後、筒状下側ピストン4,環状上側ピストン16および鞘状中間部材17は一体になって下動し、
(63)この下動の初期段階で、片部20bと環状段部19dが離間し、上側コイルスプリング21の付勢力により吐出弁作用部16dが環状凸部20dに密接して保持され、
(64)続くこの筒状下側ピストン4の下動にともなって、上流側充填室A’の容積が小さくなり、そこの内容物圧力が大きくなるので、中間弁体18がその自重に抗する形で上方に移動し、
(65)この中間弁体18の移動により、それまで閉じていた筒状下側ピストン4の環状受け部4bとの間のエリアが開いた状態となり、
(65)この開状態の空間域や孔部4aを経て、上流側充填室A’の内容物が中間充填室B’および下流側充填室C’へと流入し(s4参照)、
(66)この下流側充填室C’への内容物流入にともなって、その圧力を下方向に受ける環状下側ピストン9が外側コイルスプリング10の付勢力に抗する形で図6の下死点位置まで移動する、
ことになる。このとき吐出弁は勿論閉じたままである。
【0085】
図7は、図6の押下げモードにおける操作ボタン1の押圧操作を利用者が止めた後で一連のピストン群および操作ボタンが吐出弁閉状態のまま上動する状態を示している。
【0086】
操作ボタン1の押圧操作が解除されると先ず、概略、一連のピストン群(筒状下側ピストン4,環状下側ピストン9,筒状上側ピストン15,環状上側ピストン16,鞘状中間部材17および鞘状上側ピストン20)および操作ボタン1は、図6の下流側充填室C’の状態(空間域の大きさや吐出弁の閉状態など)をそのままに保持しながら上方向に移動していく。
【0087】
このとき、通常のポンプ機構の吸込弁動作と同じように、内側シリンダ6の吸込弁作用部6bがその支持用の弾性片部6cの弾性力に抗する形で上方に変位してシリンダ5の環状受け部5cとの間が開状態となり、容器内容物が小径流入口5dから上流側充填室Aに流入する(s5参照)。
【0088】
上記ピストン群は、この小径流入口5dから上流側充填室A’への内容物の流入程度に応じる形で上方向へ移動していく。
【0089】
ここで小径流入口5dは、容器本体12から上流側充填室Aへの内容物の流入抵抗を大きくして、上記ピストン群の移動速度を抑えている。
【0090】
これにより、図7の復帰モードの開始時(=利用者が操作ボタン1から手,指を離した段階)から図8の遅延作動モードの開始時(=吐出弁が開いて下流側充填室C’の内容物が外部空間に放出され始める段階)までの遅延時間をかせいでいる。
【0091】
なお上記ピストン群の移動駆動源は、環状下側ピストン9の付勢用の外側コイルスプリング10である。
【0092】
すなわち、当該コイルスプリング10の上方向への付勢力が環状下側ピストン9および下流側充填室C’の内容物を介して環状上側ピストン16に伝達され、当該ピストン16は、その上面部分16eに筒状上側ピストン15の環状垂下部15aをいわば載せて、上記連結ピストンとの一体物の形で上方向へと移動していく。
【0093】
このピストン群(筒状下側ピストン4,環状下側ピストン9,筒状上側ピストン15,環状上側ピストン16,鞘状中間部材17および鞘状上側ピストン20)の一体化した上動は、鞘状上側ピストン20の片部20bがカラーリング19の環状段部19dに当接するまで続く。
【0094】
このときのピストン群の上動開始からカラーリング19との当接までの移動ストロークは例えば20〜25mmで、移動所要時間は例えば4〜7秒である。
【0095】
図8は、鞘状上側ピストン20の片部20bがカラーリング19の環状段部19dに当接した後、さらに鞘状上側ピストン20以外のピストン群(筒状下側ピストン4,環状下側ピストン9,筒状上側ピストン15,環状上側ピストン16および鞘状中間部材17)が一体化して上動し、環状上側ピストン16の上面部分16eがカラーリング19の下端面部分19bに当接した吐出弁開状態の遅延作動モードを示している。
【0096】
すなわち、片部20bが下端面部分19bに当接すると、
(71)鞘状上側ピストン20は勿論この下端面部分19bとの当接状態で停止し、
(72)環状上側ピストン8の環状凸部20dに当接していた筒状下側ピストン4,環状上側ピストン16および鞘状中間部材17の連結ピストンは、外側コイルスプリング10の付勢力により上側コイルスプリング21を圧縮しながら上方向に移動し、
(73)この連結ピストンの上動にともない、それまでの吐出弁作用部16dと環状凸部20dとの密接状態が解除されて、吐出弁が開き、環状上側ピストン16の上面部分16eがカラーリング19の下端面部分19bと当接した状態に移行し、
(74)この吐出弁の開状態で環状下側ピストン9が外側コイルスプリング10の付勢力により上方向に移動して、これにより下流側充填室Cの内容物が「環状上側ピストン16の溝状部16a−吐出弁域孔部20e−鞘状上側ピストン20の内部空間域−筒状上側ピストン15の内部空間域−操作ボタン1の放出用通路1b」などを経て外部空間にいわば押し出される、
ことになる。
【0097】
そして環状下側ピストン9は、その上端縁部分が鞘状中間部材17の上側フランジ部下面に当接した段階で停止し、図5の静止モードの状態に戻る。
【0098】
本発明が、図示の遅延ポンプ機構に限定されないことは勿論である。
【0099】
例えば容器本体12からシリンダ5への入口部分の内容物流入抵抗を大きくするための構成要素は、図示の小径流入口5dの外、任意の形状,構造のものでよい。
【0100】
また、図1〜図4の遅延ポンプ機構(その1)では、図3の復帰モードの最終段階における環状上側ピストン8の停止後に、上記連結ピストン(鞘状上側ピストン2)を上方向に駆動して吐出弁を開状態にするための内側コイルスプリング11を積極的に用いているが、これを省略してもよい。
【0101】
この場合、図3の復帰モードで上動中の環状上側ピストン8が停止した後、鞘状上側ピストン2は、
(81)それまでの環状上側ピストン8との連動に基づく上方向への慣性力により吐出弁開状態に移行し、
(82)この移行後は、環状下側ピストン9の逆スカート部9bから受ける摩擦力により吐出弁開状態を維持する、
ことになる。
【0102】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、アルコール消毒液,液体ソープ,シャンプー,リンス,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォームなどの各種用途のものがある。
【0103】
容器本体に収納する内容物は、例えば、水,アルコール類,油成分,界面活性剤,高分子化合物,粉状物,各用途に応じた有効成分などである。
【0104】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0105】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0106】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0107】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0108】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0109】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0110】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】遅延式ポンプ機構(その1)の静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の操作ボタンをその最下動位置まで押下げた状態、すなわち中間弁が開いて上流側充填室Aの内容物が中間充填室Bおよび下流側充填室Cに移動する状態の押下げモードを示す説明図である。
【図3】図2の操作ボタンの押圧操作解除後であってまだ吐出弁(外部空間への出力弁)が閉じたままの状態、すなわち下流側充填室Cに内容物が閉じ込められてそのままピストン群がそれぞれ最初の静止モード位置の方に上動していく状態の復帰モードを示す説明図である。
【図4】図3の復帰モードの後半段階で吐出弁(外部空間への出力弁)が開いた状態、すなわち下流側充填室Cの内容物が当該吐出弁から外部空間に放出される遅延作動モードを示す説明図である。
【図5】遅延式ポンプ機構(その2)の静止モードを示す説明図である。
【図6】図5の操作ボタンをその最下動位置まで押下げた状態、すなわち中間弁が開いて上流側充填室A’の内容物が中間充填室B’および下流側充填室C’に移動する状態の押下げモードを示す説明図である。
【図7】図6の操作ボタンの押圧操作解除後であってまだ吐出弁(外部空間への出力弁)が閉じたままの状態、すなわち下流側充填室C’に内容物が閉じ込められてそのままピストン群がそれぞれ最初の静止モード位置の方に上動していく状態の復帰モードを示す説明図である。
【図8】図7の復帰モードの後半段階で吐出弁(外部空間への出力弁)が開いた状態、すなわち下流側充填室C’の内容物が当該吐出弁から外部空間に放出される遅延作動モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0112】
1:操作ボタン
1a:螺子部分
1b:内容物の放出用通路
2:鞘状上側ピストン
2a:凹状部
2b:環状垂下部
2c:吐出弁作用部
3:鞘状中間ピストン
3a:中間弁作用部
3b:弾性片部
4:筒状下側ピストン
4a:孔部
4b:環状受け部
4c:流入口
4d:縦リブ状部
4e:スカート部
5:シリンダ
5a:環状鍔部
5b:減圧防止用孔部
5c:環状受け部
5d:小径流入口
5e:縦リブ状部
6:内側シリンダ
6a:貫通部
6b:吸込弁作用部
6c:弾性片部
6d:環状底面部
6e:環状鍔部
7:カラーリング
7a:螺子部分
7b:下端面部分
7c:縦リブ状部
8:環状上側ピストン
8a:内容物通過用の溝状部
8b:スカート部
8c:スカート部
8d:逆スカート部(吐出弁作用部分)
8e:外側上面部分
9:環状下側ピストン
9a:スカート部
9b:逆スカート部
9c:環状段部
10:外側コイルスプリング
11:内側コイルスプリング
12:容器本体
12a:首部
13:環状シール部材
14:カバーキャップ
15:筒状上側ピストン
15a:環状垂下部
15b:スリット状部
16:環状上側ピストン
16a:溝状部
16b:スカート部
16c:筒状部
16d:吐出弁作用部
16e:上面部分
17:鞘状中間部材
18:中間弁体
19:カラーリング
19a:螺子部分
19b:下端面部分
19c:縦リブ状部
19d:環状段部
20:鞘状上側ピストン
20a:上側スカート部
20b:片部
20c:下側スカート部
20d:環状凸部(吐出弁作用部分)
20e:孔部
21:上側コイルスプリング
A,A’:上流側充填室
B,B’:中間充填室
C,C’:下流側充填室
s1:上流側充填室Aから中間充填室Bおよび下流側充填室Cへの内容物の流れ
s2:容器本体側から上流側充填室Aへの内容物の流れ
s3:下流側充填室Cから外部空間への内容物の流れ
s4:上流側充填室A’から中間充填室B’および下流側充填室Cへの内容物の流れ
s5:容器本体側から上流側充填室A’への内容物の流れ
s6:下流側充填室C’から外部空間への内容物の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内容物が、利用者の放出操作終了時点よりも遅延して外部空間に放出される機能を備えた遅延ポンプ機構であって、
前記放出操作のための操作部と、
前記放出操作により、内容物の吸込弁から中間弁までの間の内容物圧力が増加する上流側空間域と、
前記内容物圧力の増加に応じて前記上流側空間域の前記中間弁が開くことにより、当該上流側空間域の内容物が、外部空間に放出されることなしに流入する下流側空間域と、
前記放出操作の終了にともない、前記下流側空間域を、その吐出弁が閉じて内容物が収納された状態のまま所定位置まで変位させて、その後、当該吐出弁が開いて当該内容物を前記外部空間に放出する遅延作動手段と、
を備えたことを特徴とする遅延ポンプ機構。
【請求項2】
前記遅延作動手段は、
前記操作部と一体化して前記上流側空間域を形成する第1のピストンと、
前記中間弁の下流側において前記第1のピストンとともに前記下流側空間域を形成する第2および第3のピストンと、
前記第2のピストンを静止モード位置に付勢する第1の弾性部材と、
前記第1のピストンと前記第3のピストンとの間に形成される前記吐出弁と、
前記第3のピストンの前記所定位置を設定する規制部材と、を備えたものであり、
前記操作部の放出操作に基づく前記第1のピストンの移動により、
前記中間弁が開き、かつ前記吐出弁が閉じて、前記吸込弁が閉状態の前記上流側空間域の内容物を前記下流側空間域に流入させるともに、前記第3のピストンが前記第1のピストンと連動し、
前記吐出弁が閉じた状態の前記下流側空間域への内容物流入にともなって、前記第2のピストンが前記第1の弾性部材に抗する形で移動し、
前記操作部の放出操作終了後の前記第1の弾性部材に基づく前記第2のピストンの復帰動作により、
前記吐出弁がそれまでと同じように閉じて前記下流側空間域の内容物を保持したまま、前記第1および前記第3の各ピストンが前記規制部材の方に連動し、
前記第3のピストンが前記規制部材の作用により停止した後、前記第1のピストンがさらに移動することにより前記吐出弁が開いて、
前記下流側空間域の内容物が、開状態の前記吐出弁から外部空間に、前記第1の弾性部材の前記第2のピストンに対する付勢力で放出される、
ことを特徴とする請求項1記載の遅延ポンプ機構。
【請求項3】
前記上流側空間域は、
前記第1のピストンとシリンダとの間に設定される空間域であり、
前記下流側空間域は、
前記第1のピストン,その外側の前記第2および前記第3の各ピストンと、シリンダとの間に設定される空間域である、
ことを特徴とする請求項2記載の遅延ポンプ機構。
【請求項4】
前記遅延作動手段は、
前記第1のピストンを静止モード位置に付勢する第2の弾性部材を、
備えていることを特徴とする請求項2記載の遅延ポンプ機構。
【請求項5】
前記上流側空間域への流入口は、
そこでの内容物流入抵抗を大きくして、前記第1および前記第3の各ピストンが前記規制部材の方に連動するときの速度を低下させるものである、
ことを特徴とする請求項2記載の遅延ポンプ機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の遅延ポンプ機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−230699(P2008−230699A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335345(P2007−335345)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】