遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機
【課題】釘調整の作業性に悪影響を与えることなく、通過孔上方での球詰まりを防止する。
【解決手段】上方に一対の遊技釘21Aが配置され、該一対の遊技釘21Aによって案内された遊技球が通過する通過孔23bを備えた遊技機用スルーチャッカ20であって、通過孔23b(26a)における遊技球の通過を検出する球検出器26と、通過孔23bの前方に配置された前板部24と、該前板部24の上部において、通過孔23bの左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部24aと、該突出部24aの少なくとも上端部に形成され、通過孔23bに向けて下る案内傾斜24bと、突出部24aの左右両側において、一対の遊技釘21Aのそれぞれの下方に釘調整用の工具30を挿入可能な空間Kを形成する逃がし部24cとを備える。
【解決手段】上方に一対の遊技釘21Aが配置され、該一対の遊技釘21Aによって案内された遊技球が通過する通過孔23bを備えた遊技機用スルーチャッカ20であって、通過孔23b(26a)における遊技球の通過を検出する球検出器26と、通過孔23bの前方に配置された前板部24と、該前板部24の上部において、通過孔23bの左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部24aと、該突出部24aの少なくとも上端部に形成され、通過孔23bに向けて下る案内傾斜24bと、突出部24aの左右両側において、一対の遊技釘21Aのそれぞれの下方に釘調整用の工具30を挿入可能な空間Kを形成する逃がし部24cとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機などの遊技機に設けられる遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技球が通過するスルーチャッカを備え、該スルーチャッカに対する遊技球の通過を条件に特定のゲームを開始させる遊技機がある。たとえば、特許文献1、2には、スルーチャッカを遊技盤の左側に配置し、遊技球を遊技盤の左部領域で流下させてスルーチャッカを通過させる遊技機が開示され、特許文献3には、スルーチャッカを遊技盤の右側に配置し、遊技球を右打ちすることによってスルーチャッカを通過させる遊技機が開示されている。
【0003】
スルーチャッカへの遊技球の誘導案内は、スルーチャッカの上方に配置される複数の遊技釘により行うが、遊技釘のレイアウトが遊技球の勢いを減殺し易いものであった場合、スルーチャッカの上部で球詰まりが生じるおそれがある。
【0004】
例えば、2個の遊技球100A、100Bが接近した状態でスルーチャッカ102に近づき、スルーチャッカ102の直前で両者が接触すると、図11(A)、(B)に示すように、先行の遊技球100Aが後続の遊技球100Bによって前方に押し出されてスルーチャッカ102の上端部とガラス板101との間に載り、後続の遊技球100Bが遊技球100Aと遊技盤104との間に入り込むことがある。
その際、後方の遊技球100Bは、図11(A)に示すように、遊技釘103によって逃げ場が塞がれるため、結果的に遊技盤4、ガラス板101及び遊技釘103の三者の間に遊技球100A、100Bが挟まって球詰まりが発生する。
その状態で、さらに後続の遊技球100Cが落下してくると、遊技球100Cに十分な勢いがある場合には、衝撃によって遊技球100A、100Bを崩したり、遊技球100Bを弾き出すことができるが、遊技球100Cの勢いが減殺されて不足する場合には、遊技球100A、100Bを崩したりすることができず、遊技球100Cが遊技球100A、100Bの上に載って球詰まりがさらに進行する。
【0005】
なお、このような球詰まりは、先行及び後続の遊技球100A、100Bの中心を通る直線L1と水平線L2のなす角度θが小さいほど発生しやすい。その理由は、角度θが小さいと、後続の遊技球100Bの力が、先行の遊技球100Aをガラス板101に押し付けるように働き、球詰まりを助長するからである。
【0006】
このような問題を解決するために、図11の(C)、(D)に示すように、スルーチャッカ102の前板部上端を上方に立ち上げて、スルーチャッカ102の入口通路前方に壁部105を形成することが考えられる。このようにすると、スルーチャッカ102の入口通路の前後幅が壁部105によって狭くなるのに伴い、前述した角度θが大きくなるので、結果的に球詰まりの発生を抑制することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−102948号公報
【特許文献2】特開2004−283352号公報
【特許文献3】特開2007−252628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、スルーチャッカ102の入口通路前方に単に壁部105を形成しただけでは、壁部105の上端とガラス板101との間に遊技球100が載る可能性があるので、遊技釘103のレイアウトによっては、図11の(A)、(B)のものと同様の理由で球詰まりが発生するおそれがある。
また、スルーチャッカ102の入口通路前方に壁部105を形成すると、遊技釘103の下方空間が狭く制限されることになるので、遊技釘103の下方に釘調整のための工具を挿入することが困難になり、釘調整の作業性が低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、釘調整の作業性に悪影響を与えることなく、通過孔上方での球詰まりを防止することができる遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成によって把握することができる。
すなわち、本発明の遊技機用スルーチャッカは、上方に一対の遊技釘が配置され、該一対の遊技釘によって案内された遊技球が通過する通過孔を備えた遊技機用スルーチャッカであって、前記通過孔における遊技球の通過を検出する球検出器と、前記通過孔の前方に配置された前板部と、該前板部の上部において、前記通過孔の左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部と、該突出部の少なくとも上端部に形成され、前記通過孔に向けて下る案内傾斜と、前記突出部の左右両側において、前記一対の遊技釘のそれぞれの下方に釘調整用の工具を挿入可能な空間を形成する逃がし部とを備えることを特徴とする。
このようにすると、前板部の上部に、上方に突出する突出部を設けるとともに、その上面に、通過孔に向けて下る案内傾斜を形成したので、前板部の上端部とガラス板との間に載ろうとする遊技球を通過孔に導くことができ、その結果、前板部の上端部とガラス板との間に載った遊技球に起因する球詰まりを防止することが可能になる。
しかも、突出部の左右両側に逃がし部を設け、一対の遊技釘のそれぞれの下方に釘調整用の工具を挿入可能な空間を確保したので、釘調整の作業性に悪影響を与えることもない。
【0011】
また、前記遊技釘は、遊技球を案内する軸部と、該軸部の先端部に設けられ、前記軸部よりも径が大きい傘部とを備え、前記突出部の上端は、前記一対の遊技釘の傘部の下端よりも下方に位置することを特徴とする。
このようにすると、一対の遊技釘の間に上方から板ゲージ(遊技釘の間隔を計測するための板状の金属製測寸部材)を挿入する際、突出部が邪魔になることを防止できる。
【0012】
また、前記突出部の高さは、遊技球の半径以上であることを特徴とする。
このようにすると、スルーチャッカの上端まで到達した遊技球が突出部を乗り越えてガラス板側に流れることを制限できるので、球詰まりが発生する可能性をさらに低減させることができる。
【0013】
また、本発明の遊技機は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスルーチャッカを備えたことを特徴とする。
このようにすると、上記のような効果が得られる遊技機を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機によれば、釘調整の作業性に悪影響を与えることなく、通過孔上方での球詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る遊技機の遊技盤を示す概略正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘を右上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘の正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘の平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘の右側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘のA−A断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るスルーチャッカを左後方から見た斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る取付板を外したスルーチャッカを左後方から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る取付板及び球検出器を外したスルーチャッカを左後方から見た斜視図である。
【図10】(A)は突出部の作用を示すスルーチャッカの断面図、(B)は釘調整用の工具を挿入した状態を示すスルーチャッカの右側面図、(C)は板ゲージを挿入した状態を示すスルーチャッカの要部正面図、(D)は板ゲージを挿入した状態を示すスルーチャッカの断面図である。
【図11】(A)は従来例に係るスルーチャッカの球詰まり状態を示す要部正面図、(B)は従来例に係るスルーチャッカの球詰まり状態を示す断面図、(C)は参考例に係るスルーチャッカの要部正面図、(D)は参考例に係るスルーチャッカの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、実施形態の説明においては、遊技者から見て手前側を「前」、奥側を「後」、右側を「右」、左側を「左」とする。
【0017】
〈遊技機の概略構成〉
図1は、本発明の遊技機の実施態様を示す概略図であって、パチンコ機の機枠に組み込まれる遊技盤10を示した正面図である。
【0018】
図1において、遊技盤10の周辺の若干の領域を除く中央部は遊技領域11となっている。遊技領域11はほぼ円形のガイドレール12に囲まれるように構成され、このガイドレール12は、図中下側から左肩側にかけて外側レール12Aと内側レール12Bを備え、遊技球を外側レール12Aと内側レール12Bの間の通路を通して遊技領域11の上方へ導くようになっている。遊技球は、図示しない機枠に取り付けられた操作レバーで駆動される打槌機構によって、図中下側から外側レール12Aと内側レール12Bの間の通路に発射されるようになっている。なお、遊技領域11の上方から落下する遊技球は、後述する入賞口、始動口等に入賞したものを除いて、遊技領域11の最下端位置に設けられたアウト口13を通して回収されるようになっている。
【0019】
遊技盤10の遊技領域11のほぼ中央であって若干上側に偏位した位置に矩形状の開口14が形成されている。遊技盤10の裏面にはたとえば液晶表示器からなる画像表示装置15が配置され、この画像表示装置15の表示面15Aは前記開口14を通して目視できるようになっている。画像表示装置15は、たとえば、パチンコ遊技の最中においてインフォメーションを表示し、あるいは入賞の際にその興奮を盛り上げさせるような工夫がされた画像を表示するようになっている。
【0020】
遊技領域11の画像表示装置15の下部には、たとえば、表示面15A(開口14)の下辺に沿い遊技者側に若干突出するステージ16が設けられている。このステージ16の上面はたとえば波状の湾曲面となっており、その水平方向における中央部の下部には排出口17が設けられている。遊技球は、表示面15A(開口14)のたとえば左肩近傍からステージ16に連結されるワープルート(図示せず)を通して該ステージ16の上面に至った場合、遊技球はステージ16の円弧面上を揺動しながら排出口17に落下できるようになっている。
【0021】
また、遊技領域11の排出口17の下方には、始動口18が設けられており、この始動口18の下方には大入賞口19が設けられている。始動口18に遊技球が入賞した際に、画像表示装置15の画面上に表示されている特別図柄の変動が所定時間行われるようになっており、画像表示装置15に複数の特別図柄が特定の停止表示態様で停止表示すると、大当たり遊技状態として、大入賞口扉19Aが予め定められた作動条件に従って開閉するようになっている。
【0022】
また、遊技領域11には、遊技球が通過するスルーチャッカ20が設けられている。スルーチャッカ20は、始動口18や大入賞口19のように入賞によって賞球を獲得することはできないが、遊技球の通過を条件に特定のゲームを開始させる等、パチンコ遊技において重要な役割を果すものである。たとえば、本実施形態では、スルーチャッカ20に対する遊技球の通過を、大当り遊技状態における大入賞口扉19Aの開放条件とするために、スルーチャッカ20を遊技盤10の右側に配置し、遊技球を右打ちすることによってスルーチャッカ20を通過させるようになっている。
【0023】
なお、遊技領域11には、上述した始動口18等の部材の他に、複数の遊技釘21、風車22等が散在されて設けられ、これら遊技釘21、風車22等に当たった遊技球は、その当たり方に応じた方向に落下できるようになっている。
【0024】
〈スルーチャッカ〉
次に、本発明の実施形態に係るスルーチャッカ20について、図1〜図10を参照して説明する。
これらの図に示すように、本実施形態のスルーチャッカ20は、スルーチャッカ本体23、前板部24、取付板25及び球検出器26を備えて構成されている。
【0025】
図8及び図9に示すように、スルーチャッカ本体23は、球検出器26を後方から挿入するための中空部23aが形成された鞘形状を有するとともに、上下方向に貫通する通過孔23bが形成されている。通過孔23bは、遊技球が通過可能な径寸法を有しており、上方から流入した遊技球を下方に排出させる。
なお、本実施形態のスルーチャッカ20は、通過した遊技球の排出方向及び排出位置を規定する排出誘導路27を備えるため、スルーチャッカ20を通過した遊技球は、下方に排出されず、所定の距離だけ左側方に誘導されてから排出されるが、排出誘導路27の有無は任意である。
【0026】
前板部24は、スルーチャッカ本体23の前方に配置され、遊技盤10の前方を覆うガラス板28の内面に沿う板状部材である。本実施形態の前板部24は、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27と一体に樹脂成形されるとともに、遊技盤10を装飾する装飾板に兼用されている。
【0027】
取付板25は、スルーチャッカ20を遊技盤10に取り付けるための板部材であり、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27の裏側に位置決めした後、ビス(図示せず)で固定される。具体的には、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27に形成される位置決め凸部23c、27aとの対応位置に位置決め孔25aを備えるとともに、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27に形成されるボス部23d、27bとの対応位置にビス貫通孔25bを備えている。また、取付板25は、遊技盤10に対して位置決めするための位置決め凸部25cと、遊技盤10に対してビス固定するためのビス貫通孔25dを備えている。
【0028】
取付板25におけるスルーチャッカ本体23との対応位置には、球検出器26を後方から挿入するための挿入孔25eが形成されるとともに、該挿入孔25eの縁部には、後方に突出する抜止め片25fが形成されている。この抜止め片25fは、僅かな弾性変形が可能であり、取付板25の挿入孔25eを介してスルーチャッカ本体23の中空部23aに球検出器26を挿入する際には、弾性変形により退避しているが、球検出器26を所定の位置まで挿入すると、図7に示すように、球検出器26の下面に沿うとともに、先端部に形成される係止爪25gが球検出器26の背面に係合し、球検出器26を抜止めするようになっている。
【0029】
球検出器26は、スルーチャッカ本体23の通過孔23bと連通する通過孔26aを備え、該通過孔26aを通過する遊技球の検出を行う。本実施形態では、球検出器26として通過型近接センサを用いるが、スルーチャッカ20を通過する遊技球を検出可能であれば、他の方式のセンサであってもよい。
【0030】
上記のように構成されたスルーチャッカ20は、遊技盤10の所定の位置に取り付けられる。スルーチャッカ20の上方には、図1〜図6に示すように、一対の遊技釘21Aが配置され、該一対の遊技釘21Aに案内された遊技球がスルーチャッカ20の通過孔23b(26a)を通過するようになっている。
【0031】
図11に示すような従来例に係るスルーチャッカ102では、スルーチャッカ102の上流において、遊技釘のレイアウト等が遊技球の勢いを減殺し易いものであった場合、スルーチャッカ102の上部で球詰まりが発生する可能性があった(理由は段落[0004]を参照)。特に、図1に示す本実施形態の遊技盤10においては、スルーチャッカ20を遊技領域11の右側に配置し、右打ちによってスルーチャッカ20を通過させるにあたり、遊技球の誘導経路(図1の破線参照)に緩やかに傾斜した傾斜案内板29を配置し、遊技球の勢いを調整しているので、遊技球の勢いを減殺し易く、従来のスルーチャッカ102では球詰まりが発生する可能性が高い。以下、このような球詰まりを防止する本発明特有の構成について説明する。
【0032】
図1〜図10に示すように、前板部24の上部において、通過孔23bの左右方向の中央部に対応する位置には、上方に突出する突出部24aが形成されている。そして、突出部24aの少なくとも上端部には、通過孔23bに向けて下る案内傾斜24bが形成されている。このようにすると、2個の遊技球が近接して噛み込むようなタイミングでスルーチャッカ20に流下した場合であっても、突出部24aの壁部(後面部)に当接する遊技球は、壁部により弾かれて通過孔23bに導かれ、また、突出部24aの上端部に当接する遊技球は、案内傾斜24bにより案内されて通過孔23bに導かれるので、前板部24の上端部とガラス板28との間に遊技球が載ったり、これに起因する球詰まりを防止することができる。
【0033】
また、突出部24aは、スルーチャッカ20の入口通路の前後幅を狭くするので、前述した角度θが大きくなり、結果的に球詰まりの発生を抑制することができる。つまり、図10の(A)に示すように、先行及び後続の遊技球の中心を通る直線L1と水平線L2のなす角度θが小さいと、後続の遊技球の力が、先行の遊技球をガラス板28に押し付けるように働き、球詰まりを助長するおそれがあるが、角度θが大きいと、後続の遊技球の力が、先行の遊技球を下方または左右方向に弾き出すように働くので、仮に図10の(A)に示すように、2個の遊技球が近接して噛み込むようなタイミングでスルーチャッカ20に流下した場合であっても、その後に流下する3番目の遊技球が後続の遊技球に当たったとき、後続の遊技球が先行の遊技球を弾き出し、球詰まりを防止することができる。
【0034】
また、突出部24aの左右両側には、一対の遊技釘21Aのそれぞれの下方に空間Kを確保する逃がし部24cが形成されている。この逃がし部24cによって確保される空間Kは、釘調整用の工具30を挿入するための空間であり、突出部24aを設けても釘調整の作業性に悪影響を与えることが回避される(図10の(B)参照)。
【0035】
ところで、一対の遊技釘21Aは、遊技球を案内する軸部21aと、該軸部21aの先端部に設けられ、軸部21aよりも径が大きい傘部21bとを備えて構成されている。そして、一対の遊技釘21Aは、板ゲージ31を用いて間隔調整が行われるが、その際に突出部24aが邪魔にならないようにしてある。すなわち、突出部24aの上端を、一対の遊技釘21Aの傘部21bの下端よりも下方に位置させる。このようにすると、一対の遊技釘21Aの間に上方から板ゲージ31を挿入する際、突出部24aが邪魔になることを防止できる(図10の(C)参照)。
【0036】
また、突出部24aの高さHは、遊技球の半径R以上であることが好ましい。その理由は、スルーチャッカ20の上端まで到達した遊技球が突出部24aを乗り越えてガラス板28側に流れることを制限し、球詰まりが発生する可能性をさらに低減させることができるからである(図10の(A)参照)。
なお、突出部24aの上面は、案内傾斜24bを備えるので、突出部24aの高さHとしては、ガラス板28側の高さH1と、通過孔23b側の高さH2(H2<H1)が存在するが、遊技球の乗り越えを防止するためには、通過孔23b側の高さH2を遊技球の半径R以上とすることが好ましい。
【0037】
前板部24の上端部に突出部24aを形成すると、突出部24aによって通過孔23bの前方が覆われ、通過孔23bに対する遊技球の進入が視認できなくなるおそれがある。このような問題は、突出部24aを透明としたり、突出部24aに視認用の孔を設けることにより回避できる。
【0038】
以上のように構成された本実施形態によれば、上方に一対の遊技釘21Aが配置され、該一対の遊技釘21Aによって案内された遊技球が通過する通過孔23bを備えた遊技機用スルーチャッカ20であって、通過孔23b(26a)における遊技球の通過を検出する球検出器26と、通過孔23bの前方に配置された前板部24と、該前板部24の上部において、通過孔23bの左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部24aと、該突出部24aの少なくとも上端部に形成され、通過孔23bに向けて下る案内傾斜24bとを備えるので、前板部24の上端部とガラス板28との間に載ろうとする遊技球を通過孔23bに導くことができ、その結果、前板部24の上端部とガラス板28との間に載った遊技球に起因する球詰まりを防止することが可能になる。
【0039】
しかも、突出部24aの左右両側において、一対の遊技釘21Aのそれぞれの下方に釘調整用の工具30を挿入可能な空間Kを形成する逃がし部24cを備えるので、突出部24aを設けても釘調整の作業性に悪影響を与えることを防止できる。
【0040】
また、遊技釘21Aは、遊技球を案内する軸部21aと、該軸部21aの先端部に設けられ、軸部21aよりも径が大きい傘部21bとを備え、突出部24aの上端は、一対の遊技釘21Aの傘部21bの下端よりも下方に位置するので、一対の遊技釘21Aの間に上方から板ゲージ31を挿入する際、突出部24aが邪魔になることを防止できる。
【0041】
また、突出部24aの高さHは、遊技球の半径R以上であるため、スルーチャッカ20の上端まで到達した遊技球が突出部24aを乗り越えてガラス板28側に流れることを制限でき、その結果、球詰まりが発生する可能性をさらに低減させることができる。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0043】
たとえば上述した実施態様では、スルーチャッカを備える遊技機の一例としてパチンコ機を挙げて説明したものである。しかし、パチンコ機に限定されることはなく、たとえば、じゃん球遊技機のような他の遊技機にも適用することができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、突出部24aの正面視形状を略山形(丸みを帯びた半円形状)としているが、突出部24aの正面視形状はこれに限られず、例えば、矩形状等の他の形状であってもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、突出部24aの形成位置を前板部24の前端としているが、突出部24aの形成位置はこれに限られず、例えば、前板部24の前端から後側に後退した位置としてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、スルーチャッカ20の位置を遊技盤10の右側としているが、スルーチャッカ20の位置はこれに限られず、遊技盤10の左側としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10……遊技盤、20……スルーチャッカ、21……遊技釘、21a……軸部、21b……傘部、21a……軸部、21A……遊技釘、23……スルーチャッカ本体、23b……通過孔、24……前板部、24a……突出部、24b……案内傾斜、24c……逃がし部、25……取付板、26……球検出器、26a……通過孔、27……排出誘導路、28……ガラス板、29……傾斜案内板、30……釘調整用の工具、31……板ゲージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機などの遊技機に設けられる遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技球が通過するスルーチャッカを備え、該スルーチャッカに対する遊技球の通過を条件に特定のゲームを開始させる遊技機がある。たとえば、特許文献1、2には、スルーチャッカを遊技盤の左側に配置し、遊技球を遊技盤の左部領域で流下させてスルーチャッカを通過させる遊技機が開示され、特許文献3には、スルーチャッカを遊技盤の右側に配置し、遊技球を右打ちすることによってスルーチャッカを通過させる遊技機が開示されている。
【0003】
スルーチャッカへの遊技球の誘導案内は、スルーチャッカの上方に配置される複数の遊技釘により行うが、遊技釘のレイアウトが遊技球の勢いを減殺し易いものであった場合、スルーチャッカの上部で球詰まりが生じるおそれがある。
【0004】
例えば、2個の遊技球100A、100Bが接近した状態でスルーチャッカ102に近づき、スルーチャッカ102の直前で両者が接触すると、図11(A)、(B)に示すように、先行の遊技球100Aが後続の遊技球100Bによって前方に押し出されてスルーチャッカ102の上端部とガラス板101との間に載り、後続の遊技球100Bが遊技球100Aと遊技盤104との間に入り込むことがある。
その際、後方の遊技球100Bは、図11(A)に示すように、遊技釘103によって逃げ場が塞がれるため、結果的に遊技盤4、ガラス板101及び遊技釘103の三者の間に遊技球100A、100Bが挟まって球詰まりが発生する。
その状態で、さらに後続の遊技球100Cが落下してくると、遊技球100Cに十分な勢いがある場合には、衝撃によって遊技球100A、100Bを崩したり、遊技球100Bを弾き出すことができるが、遊技球100Cの勢いが減殺されて不足する場合には、遊技球100A、100Bを崩したりすることができず、遊技球100Cが遊技球100A、100Bの上に載って球詰まりがさらに進行する。
【0005】
なお、このような球詰まりは、先行及び後続の遊技球100A、100Bの中心を通る直線L1と水平線L2のなす角度θが小さいほど発生しやすい。その理由は、角度θが小さいと、後続の遊技球100Bの力が、先行の遊技球100Aをガラス板101に押し付けるように働き、球詰まりを助長するからである。
【0006】
このような問題を解決するために、図11の(C)、(D)に示すように、スルーチャッカ102の前板部上端を上方に立ち上げて、スルーチャッカ102の入口通路前方に壁部105を形成することが考えられる。このようにすると、スルーチャッカ102の入口通路の前後幅が壁部105によって狭くなるのに伴い、前述した角度θが大きくなるので、結果的に球詰まりの発生を抑制することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−102948号公報
【特許文献2】特開2004−283352号公報
【特許文献3】特開2007−252628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、スルーチャッカ102の入口通路前方に単に壁部105を形成しただけでは、壁部105の上端とガラス板101との間に遊技球100が載る可能性があるので、遊技釘103のレイアウトによっては、図11の(A)、(B)のものと同様の理由で球詰まりが発生するおそれがある。
また、スルーチャッカ102の入口通路前方に壁部105を形成すると、遊技釘103の下方空間が狭く制限されることになるので、遊技釘103の下方に釘調整のための工具を挿入することが困難になり、釘調整の作業性が低下するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、釘調整の作業性に悪影響を与えることなく、通過孔上方での球詰まりを防止することができる遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成によって把握することができる。
すなわち、本発明の遊技機用スルーチャッカは、上方に一対の遊技釘が配置され、該一対の遊技釘によって案内された遊技球が通過する通過孔を備えた遊技機用スルーチャッカであって、前記通過孔における遊技球の通過を検出する球検出器と、前記通過孔の前方に配置された前板部と、該前板部の上部において、前記通過孔の左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部と、該突出部の少なくとも上端部に形成され、前記通過孔に向けて下る案内傾斜と、前記突出部の左右両側において、前記一対の遊技釘のそれぞれの下方に釘調整用の工具を挿入可能な空間を形成する逃がし部とを備えることを特徴とする。
このようにすると、前板部の上部に、上方に突出する突出部を設けるとともに、その上面に、通過孔に向けて下る案内傾斜を形成したので、前板部の上端部とガラス板との間に載ろうとする遊技球を通過孔に導くことができ、その結果、前板部の上端部とガラス板との間に載った遊技球に起因する球詰まりを防止することが可能になる。
しかも、突出部の左右両側に逃がし部を設け、一対の遊技釘のそれぞれの下方に釘調整用の工具を挿入可能な空間を確保したので、釘調整の作業性に悪影響を与えることもない。
【0011】
また、前記遊技釘は、遊技球を案内する軸部と、該軸部の先端部に設けられ、前記軸部よりも径が大きい傘部とを備え、前記突出部の上端は、前記一対の遊技釘の傘部の下端よりも下方に位置することを特徴とする。
このようにすると、一対の遊技釘の間に上方から板ゲージ(遊技釘の間隔を計測するための板状の金属製測寸部材)を挿入する際、突出部が邪魔になることを防止できる。
【0012】
また、前記突出部の高さは、遊技球の半径以上であることを特徴とする。
このようにすると、スルーチャッカの上端まで到達した遊技球が突出部を乗り越えてガラス板側に流れることを制限できるので、球詰まりが発生する可能性をさらに低減させることができる。
【0013】
また、本発明の遊技機は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスルーチャッカを備えたことを特徴とする。
このようにすると、上記のような効果が得られる遊技機を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遊技機用スルーチャッカ及びそれを備えた遊技機によれば、釘調整の作業性に悪影響を与えることなく、通過孔上方での球詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る遊技機の遊技盤を示す概略正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘を右上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘の正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘の平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘の右側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るスルーチャッカ及び遊技釘のA−A断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るスルーチャッカを左後方から見た斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る取付板を外したスルーチャッカを左後方から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る取付板及び球検出器を外したスルーチャッカを左後方から見た斜視図である。
【図10】(A)は突出部の作用を示すスルーチャッカの断面図、(B)は釘調整用の工具を挿入した状態を示すスルーチャッカの右側面図、(C)は板ゲージを挿入した状態を示すスルーチャッカの要部正面図、(D)は板ゲージを挿入した状態を示すスルーチャッカの断面図である。
【図11】(A)は従来例に係るスルーチャッカの球詰まり状態を示す要部正面図、(B)は従来例に係るスルーチャッカの球詰まり状態を示す断面図、(C)は参考例に係るスルーチャッカの要部正面図、(D)は参考例に係るスルーチャッカの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、実施形態の説明においては、遊技者から見て手前側を「前」、奥側を「後」、右側を「右」、左側を「左」とする。
【0017】
〈遊技機の概略構成〉
図1は、本発明の遊技機の実施態様を示す概略図であって、パチンコ機の機枠に組み込まれる遊技盤10を示した正面図である。
【0018】
図1において、遊技盤10の周辺の若干の領域を除く中央部は遊技領域11となっている。遊技領域11はほぼ円形のガイドレール12に囲まれるように構成され、このガイドレール12は、図中下側から左肩側にかけて外側レール12Aと内側レール12Bを備え、遊技球を外側レール12Aと内側レール12Bの間の通路を通して遊技領域11の上方へ導くようになっている。遊技球は、図示しない機枠に取り付けられた操作レバーで駆動される打槌機構によって、図中下側から外側レール12Aと内側レール12Bの間の通路に発射されるようになっている。なお、遊技領域11の上方から落下する遊技球は、後述する入賞口、始動口等に入賞したものを除いて、遊技領域11の最下端位置に設けられたアウト口13を通して回収されるようになっている。
【0019】
遊技盤10の遊技領域11のほぼ中央であって若干上側に偏位した位置に矩形状の開口14が形成されている。遊技盤10の裏面にはたとえば液晶表示器からなる画像表示装置15が配置され、この画像表示装置15の表示面15Aは前記開口14を通して目視できるようになっている。画像表示装置15は、たとえば、パチンコ遊技の最中においてインフォメーションを表示し、あるいは入賞の際にその興奮を盛り上げさせるような工夫がされた画像を表示するようになっている。
【0020】
遊技領域11の画像表示装置15の下部には、たとえば、表示面15A(開口14)の下辺に沿い遊技者側に若干突出するステージ16が設けられている。このステージ16の上面はたとえば波状の湾曲面となっており、その水平方向における中央部の下部には排出口17が設けられている。遊技球は、表示面15A(開口14)のたとえば左肩近傍からステージ16に連結されるワープルート(図示せず)を通して該ステージ16の上面に至った場合、遊技球はステージ16の円弧面上を揺動しながら排出口17に落下できるようになっている。
【0021】
また、遊技領域11の排出口17の下方には、始動口18が設けられており、この始動口18の下方には大入賞口19が設けられている。始動口18に遊技球が入賞した際に、画像表示装置15の画面上に表示されている特別図柄の変動が所定時間行われるようになっており、画像表示装置15に複数の特別図柄が特定の停止表示態様で停止表示すると、大当たり遊技状態として、大入賞口扉19Aが予め定められた作動条件に従って開閉するようになっている。
【0022】
また、遊技領域11には、遊技球が通過するスルーチャッカ20が設けられている。スルーチャッカ20は、始動口18や大入賞口19のように入賞によって賞球を獲得することはできないが、遊技球の通過を条件に特定のゲームを開始させる等、パチンコ遊技において重要な役割を果すものである。たとえば、本実施形態では、スルーチャッカ20に対する遊技球の通過を、大当り遊技状態における大入賞口扉19Aの開放条件とするために、スルーチャッカ20を遊技盤10の右側に配置し、遊技球を右打ちすることによってスルーチャッカ20を通過させるようになっている。
【0023】
なお、遊技領域11には、上述した始動口18等の部材の他に、複数の遊技釘21、風車22等が散在されて設けられ、これら遊技釘21、風車22等に当たった遊技球は、その当たり方に応じた方向に落下できるようになっている。
【0024】
〈スルーチャッカ〉
次に、本発明の実施形態に係るスルーチャッカ20について、図1〜図10を参照して説明する。
これらの図に示すように、本実施形態のスルーチャッカ20は、スルーチャッカ本体23、前板部24、取付板25及び球検出器26を備えて構成されている。
【0025】
図8及び図9に示すように、スルーチャッカ本体23は、球検出器26を後方から挿入するための中空部23aが形成された鞘形状を有するとともに、上下方向に貫通する通過孔23bが形成されている。通過孔23bは、遊技球が通過可能な径寸法を有しており、上方から流入した遊技球を下方に排出させる。
なお、本実施形態のスルーチャッカ20は、通過した遊技球の排出方向及び排出位置を規定する排出誘導路27を備えるため、スルーチャッカ20を通過した遊技球は、下方に排出されず、所定の距離だけ左側方に誘導されてから排出されるが、排出誘導路27の有無は任意である。
【0026】
前板部24は、スルーチャッカ本体23の前方に配置され、遊技盤10の前方を覆うガラス板28の内面に沿う板状部材である。本実施形態の前板部24は、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27と一体に樹脂成形されるとともに、遊技盤10を装飾する装飾板に兼用されている。
【0027】
取付板25は、スルーチャッカ20を遊技盤10に取り付けるための板部材であり、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27の裏側に位置決めした後、ビス(図示せず)で固定される。具体的には、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27に形成される位置決め凸部23c、27aとの対応位置に位置決め孔25aを備えるとともに、スルーチャッカ本体23及び排出誘導路27に形成されるボス部23d、27bとの対応位置にビス貫通孔25bを備えている。また、取付板25は、遊技盤10に対して位置決めするための位置決め凸部25cと、遊技盤10に対してビス固定するためのビス貫通孔25dを備えている。
【0028】
取付板25におけるスルーチャッカ本体23との対応位置には、球検出器26を後方から挿入するための挿入孔25eが形成されるとともに、該挿入孔25eの縁部には、後方に突出する抜止め片25fが形成されている。この抜止め片25fは、僅かな弾性変形が可能であり、取付板25の挿入孔25eを介してスルーチャッカ本体23の中空部23aに球検出器26を挿入する際には、弾性変形により退避しているが、球検出器26を所定の位置まで挿入すると、図7に示すように、球検出器26の下面に沿うとともに、先端部に形成される係止爪25gが球検出器26の背面に係合し、球検出器26を抜止めするようになっている。
【0029】
球検出器26は、スルーチャッカ本体23の通過孔23bと連通する通過孔26aを備え、該通過孔26aを通過する遊技球の検出を行う。本実施形態では、球検出器26として通過型近接センサを用いるが、スルーチャッカ20を通過する遊技球を検出可能であれば、他の方式のセンサであってもよい。
【0030】
上記のように構成されたスルーチャッカ20は、遊技盤10の所定の位置に取り付けられる。スルーチャッカ20の上方には、図1〜図6に示すように、一対の遊技釘21Aが配置され、該一対の遊技釘21Aに案内された遊技球がスルーチャッカ20の通過孔23b(26a)を通過するようになっている。
【0031】
図11に示すような従来例に係るスルーチャッカ102では、スルーチャッカ102の上流において、遊技釘のレイアウト等が遊技球の勢いを減殺し易いものであった場合、スルーチャッカ102の上部で球詰まりが発生する可能性があった(理由は段落[0004]を参照)。特に、図1に示す本実施形態の遊技盤10においては、スルーチャッカ20を遊技領域11の右側に配置し、右打ちによってスルーチャッカ20を通過させるにあたり、遊技球の誘導経路(図1の破線参照)に緩やかに傾斜した傾斜案内板29を配置し、遊技球の勢いを調整しているので、遊技球の勢いを減殺し易く、従来のスルーチャッカ102では球詰まりが発生する可能性が高い。以下、このような球詰まりを防止する本発明特有の構成について説明する。
【0032】
図1〜図10に示すように、前板部24の上部において、通過孔23bの左右方向の中央部に対応する位置には、上方に突出する突出部24aが形成されている。そして、突出部24aの少なくとも上端部には、通過孔23bに向けて下る案内傾斜24bが形成されている。このようにすると、2個の遊技球が近接して噛み込むようなタイミングでスルーチャッカ20に流下した場合であっても、突出部24aの壁部(後面部)に当接する遊技球は、壁部により弾かれて通過孔23bに導かれ、また、突出部24aの上端部に当接する遊技球は、案内傾斜24bにより案内されて通過孔23bに導かれるので、前板部24の上端部とガラス板28との間に遊技球が載ったり、これに起因する球詰まりを防止することができる。
【0033】
また、突出部24aは、スルーチャッカ20の入口通路の前後幅を狭くするので、前述した角度θが大きくなり、結果的に球詰まりの発生を抑制することができる。つまり、図10の(A)に示すように、先行及び後続の遊技球の中心を通る直線L1と水平線L2のなす角度θが小さいと、後続の遊技球の力が、先行の遊技球をガラス板28に押し付けるように働き、球詰まりを助長するおそれがあるが、角度θが大きいと、後続の遊技球の力が、先行の遊技球を下方または左右方向に弾き出すように働くので、仮に図10の(A)に示すように、2個の遊技球が近接して噛み込むようなタイミングでスルーチャッカ20に流下した場合であっても、その後に流下する3番目の遊技球が後続の遊技球に当たったとき、後続の遊技球が先行の遊技球を弾き出し、球詰まりを防止することができる。
【0034】
また、突出部24aの左右両側には、一対の遊技釘21Aのそれぞれの下方に空間Kを確保する逃がし部24cが形成されている。この逃がし部24cによって確保される空間Kは、釘調整用の工具30を挿入するための空間であり、突出部24aを設けても釘調整の作業性に悪影響を与えることが回避される(図10の(B)参照)。
【0035】
ところで、一対の遊技釘21Aは、遊技球を案内する軸部21aと、該軸部21aの先端部に設けられ、軸部21aよりも径が大きい傘部21bとを備えて構成されている。そして、一対の遊技釘21Aは、板ゲージ31を用いて間隔調整が行われるが、その際に突出部24aが邪魔にならないようにしてある。すなわち、突出部24aの上端を、一対の遊技釘21Aの傘部21bの下端よりも下方に位置させる。このようにすると、一対の遊技釘21Aの間に上方から板ゲージ31を挿入する際、突出部24aが邪魔になることを防止できる(図10の(C)参照)。
【0036】
また、突出部24aの高さHは、遊技球の半径R以上であることが好ましい。その理由は、スルーチャッカ20の上端まで到達した遊技球が突出部24aを乗り越えてガラス板28側に流れることを制限し、球詰まりが発生する可能性をさらに低減させることができるからである(図10の(A)参照)。
なお、突出部24aの上面は、案内傾斜24bを備えるので、突出部24aの高さHとしては、ガラス板28側の高さH1と、通過孔23b側の高さH2(H2<H1)が存在するが、遊技球の乗り越えを防止するためには、通過孔23b側の高さH2を遊技球の半径R以上とすることが好ましい。
【0037】
前板部24の上端部に突出部24aを形成すると、突出部24aによって通過孔23bの前方が覆われ、通過孔23bに対する遊技球の進入が視認できなくなるおそれがある。このような問題は、突出部24aを透明としたり、突出部24aに視認用の孔を設けることにより回避できる。
【0038】
以上のように構成された本実施形態によれば、上方に一対の遊技釘21Aが配置され、該一対の遊技釘21Aによって案内された遊技球が通過する通過孔23bを備えた遊技機用スルーチャッカ20であって、通過孔23b(26a)における遊技球の通過を検出する球検出器26と、通過孔23bの前方に配置された前板部24と、該前板部24の上部において、通過孔23bの左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部24aと、該突出部24aの少なくとも上端部に形成され、通過孔23bに向けて下る案内傾斜24bとを備えるので、前板部24の上端部とガラス板28との間に載ろうとする遊技球を通過孔23bに導くことができ、その結果、前板部24の上端部とガラス板28との間に載った遊技球に起因する球詰まりを防止することが可能になる。
【0039】
しかも、突出部24aの左右両側において、一対の遊技釘21Aのそれぞれの下方に釘調整用の工具30を挿入可能な空間Kを形成する逃がし部24cを備えるので、突出部24aを設けても釘調整の作業性に悪影響を与えることを防止できる。
【0040】
また、遊技釘21Aは、遊技球を案内する軸部21aと、該軸部21aの先端部に設けられ、軸部21aよりも径が大きい傘部21bとを備え、突出部24aの上端は、一対の遊技釘21Aの傘部21bの下端よりも下方に位置するので、一対の遊技釘21Aの間に上方から板ゲージ31を挿入する際、突出部24aが邪魔になることを防止できる。
【0041】
また、突出部24aの高さHは、遊技球の半径R以上であるため、スルーチャッカ20の上端まで到達した遊技球が突出部24aを乗り越えてガラス板28側に流れることを制限でき、その結果、球詰まりが発生する可能性をさらに低減させることができる。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0043】
たとえば上述した実施態様では、スルーチャッカを備える遊技機の一例としてパチンコ機を挙げて説明したものである。しかし、パチンコ機に限定されることはなく、たとえば、じゃん球遊技機のような他の遊技機にも適用することができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、突出部24aの正面視形状を略山形(丸みを帯びた半円形状)としているが、突出部24aの正面視形状はこれに限られず、例えば、矩形状等の他の形状であってもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、突出部24aの形成位置を前板部24の前端としているが、突出部24aの形成位置はこれに限られず、例えば、前板部24の前端から後側に後退した位置としてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、スルーチャッカ20の位置を遊技盤10の右側としているが、スルーチャッカ20の位置はこれに限られず、遊技盤10の左側としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10……遊技盤、20……スルーチャッカ、21……遊技釘、21a……軸部、21b……傘部、21a……軸部、21A……遊技釘、23……スルーチャッカ本体、23b……通過孔、24……前板部、24a……突出部、24b……案内傾斜、24c……逃がし部、25……取付板、26……球検出器、26a……通過孔、27……排出誘導路、28……ガラス板、29……傾斜案内板、30……釘調整用の工具、31……板ゲージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に一対の遊技釘が配置され、該一対の遊技釘によって案内された遊技球が通過する通過孔を備えた遊技機用スルーチャッカであって、
前記通過孔における遊技球の通過を検出する球検出器と、
前記通過孔の前方に配置された前板部と、
該前板部の上部において、前記通過孔の左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部と、
該突出部の少なくとも上端部に形成され、前記通過孔に向けて下る案内傾斜と、
前記突出部の左右両側において、前記一対の遊技釘のそれぞれの下方に釘調整用の工具を挿入可能な空間を形成する逃がし部とを備える
ことを特徴とする遊技機用スルーチャッカ。
【請求項2】
前記遊技釘は、遊技球を案内する軸部と、該軸部の先端部に設けられ、前記軸部よりも径が大きい傘部とを備え、
前記突出部の上端は、前記一対の遊技釘の傘部の下端よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載の遊技機用スルーチャッカ。
【請求項3】
前記突出部の高さは、遊技球の半径以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機用スルーチャッカ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスルーチャッカを備えたことを特徴とする遊技機。
【請求項1】
上方に一対の遊技釘が配置され、該一対の遊技釘によって案内された遊技球が通過する通過孔を備えた遊技機用スルーチャッカであって、
前記通過孔における遊技球の通過を検出する球検出器と、
前記通過孔の前方に配置された前板部と、
該前板部の上部において、前記通過孔の左右方向の中央部に対応する位置から上方に突出する突出部と、
該突出部の少なくとも上端部に形成され、前記通過孔に向けて下る案内傾斜と、
前記突出部の左右両側において、前記一対の遊技釘のそれぞれの下方に釘調整用の工具を挿入可能な空間を形成する逃がし部とを備える
ことを特徴とする遊技機用スルーチャッカ。
【請求項2】
前記遊技釘は、遊技球を案内する軸部と、該軸部の先端部に設けられ、前記軸部よりも径が大きい傘部とを備え、
前記突出部の上端は、前記一対の遊技釘の傘部の下端よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載の遊技機用スルーチャッカ。
【請求項3】
前記突出部の高さは、遊技球の半径以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機用スルーチャッカ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスルーチャッカを備えたことを特徴とする遊技機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−31583(P2013−31583A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169619(P2011−169619)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000121693)奥村遊機株式会社 (978)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000121693)奥村遊機株式会社 (978)
【Fターム(参考)】
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