説明

遊技機用セキュリティチップ及び遊技機用照合機

【課題】十分な秘匿性を備えるとともに、必要があるときは十分なセキュリティを確保した上で外部から情報の読み出しやバスの状態の確認ができるようにする。
【解決手段】本発明の遊技機用セキュリティチップは、少なくとも二以上のレベルの設定が可能とされた照合機が接続されたときに、その照合機の設定レベルを判定する照合機レベル判定手段を備え、前記照合機に設定されたレベルがあるレベルと判定されたときは、その照合機に許された特定種類のセキュリティチップのみのユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を可能にし、前記照合機に設定されたレベルが前記レベルよりも高いレベルと判定されたときは、すべての種類のセキュリティチップ内のユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に使用される遊技機用セキュリティチップ、及び、このようなセキュリティチップから必要な情報を読み出すことを可能にする遊技機用照合機に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコやパチスロ等の遊技機は、動作の内容が種々の法律によって規制されている他、検査機関による所定の検査を受けることが義務づけられている。このような遊技機には、動作の違法な改変を防止するためのセキュリティチェック回路が含まれたセキュリティチップが搭載されている。
【0003】
セキュリティチップは一般にセキュリティチップメーカによって製造され、各遊技機メーカに提供される。遊技機メーカは、遊技機のソフトウェアを開発する際に、セキュリティチップメーカが製造したセキュリティチップを実際の基板に搭載し、動作を試しながら開発を進める。そのため、最終的な販売対象の制御プログラムコードその他のデータが作成されると、検査機関での検査に必要な量産時と同等のチップ、すなわちセキュリティコードが付与されたチップが必要となる。
【0004】
セキュリティチップコードの付与を行う機関は、遊技機メーカから依頼があると、遊技機メーカが書き込んだプログラム等のデータに基づいてハッシュ計算等の所定の計算を行って、遊技機メーカが書き込んだデータによって一意的に定まるセキュリティコードを生成し、これをセキュリティチップ内の所定の領域に書き込む。セキュリティコードが書き込まれたセキュリティチップは、実際の遊技機に搭載されたあと、検査機関による検査を受ける。この検査に合格した遊技機と同一の機械は販売可能になり、量産時にはこの機械と同一のROM内容がコピーされたセキュリティチップを搭載した遊技機が、各遊技ホール等へ引き渡される。
【0005】
セキュリティコードが書き込まれたセキュリティチップは、遊技機に電源が投入された時点でセキュリティチェックを実行する。すなわち、セキュリティチップのメモリに書き込まれているプログラム等のデータに基づいてセキュリティコードの付与を行う機関と同じ計算方法で生成したコードと、予め書き込まれているセキュリティコードとが一致するかどうかを判定する。プログラムやデータの一部が改変されていると、その時点で生成されたコードは予め書き込まれているセキュリティコードとは一致しなくなるため、遊技機はプログラム又はデータの改変がなされたと判断し、その時点で中央処理装置(CPU)の動作を停止させる。セキュリティチップのこのような仕組みによって、遊技機のプログラム等の改変の防止が図られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
量産されたセキュリティチップは、遊技機に搭載されて遊技機市場に広く流通することになる。このようなセキュリティチップのメモリに記録されている内容を、誰もが簡単に読み出すことができるとすると、悪意者は読み出したプログラムに基づいて偽造チップを製造したり、秘匿性の高いプログラムの内容を解析して知的財産として保護されるべきプログラムの内容を模倣することが想定される。
【0007】
一方で、遊技機が市場に出た後、セキュリティチップのメモリに記録されている内容を読み出すことが一切できないとすると、正常動作と異常動作をセキュリティチップの外部で判定できないため、遊技機の保守管理の観点からも不都合が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情のもとでなされたものであり、内部に記録されたプログラム等の重要な情報について十分な秘匿性を備えるとともに、必要があるときは十分なセキュリティを確保した上で外部からこれらの情報の読み出しやバスの状態の確認ができる遊技機用セキュリティチップ及び照合機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、遊技機の動作を制御する中央処理装置、及び、遊技機のユーザプログラム及びセキュリティコードが書き込まれるユーザメモリが含まれ、遊技機の起動時に前記セキュリティコードに基づいてセキュリティチェックを実行する遊技機用セキュリティチップであって、少なくとも二以上のレベルの設定が可能とされた照合機が接続されたときに、その照合機の設定レベルを判定する照合機レベル判定手段を備え、前記照合機に設定されたレベルが第1のレベルと判定されたときは、その照合機に許された特定のセキュリティチップであるときのみユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を許可し、前記照合機に設定されたレベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルと判定されたときは、種類に関係なくセキュリティチップ内のユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を許可することを特徴とする。
【0010】
上記セキュリティチップについて、前記第1のレベルと第2のレベルの間に、少なくとも第3及び第4のレベルが用意され、前記照合機に設定されたレベルが第3のレベルと判定されたときは、その照合機に許された特定のセキュリティチップのみユーザプログラムの読み出しを許可するとともに、前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を禁止し、前記照合機に設定されたレベルが第4のレベルと判定されたときは、ユーザプログラムの読み出しを禁止するとともに、その照合機に許された特定のセキュリティチップであるときのみ前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を可能にするものとすることもできる。
【0011】
前記照合機に許された特定のセキュリティチップか否かの識別は、当該照合機に付与された識別情報と、前記ユーザメモリのプログラム管理エリアに書き込まれた識別情報とが一致するか否かによって行うものである、請求項1又は2に記載の遊技機用セキュリティチップ。
【0012】
さらに、上記遊技機用セキュリティチップには、前記照合機の設定レベルが所定のレベルのときに、当該照合機からの信号に基づいて遊技機のセキュリティチップの動作を停止させる機能を備えることもできる。
【0013】
上記の課題を解決するために、遊技機の動作を制御する中央処理装置、及び、遊技機のユーザプログラム及びセキュリティコードが書き込まれるユーザメモリが含まれ、遊技機の起動時に前記セキュリティコードに基づいてセキュリティチェックを実行する遊技機用セキュリティチップから、前記ユーザメモリに記憶されたデータの読み出し及びバス上のデータの出力を許可する遊技機用照合機であって、少なくとも二以上のレベルの設定が可能とされ、前記遊技機用セキュリティチップと接続されたときに、その設定レベルを前記遊技機用セキュリティチップのレベル判定手段によって判定されるようにしたレベル設定手段を備え、設定レベルが第1のレベルのときは、特定のセキュリティチップのみのユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力が可能となり、設定レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルのときは、すべての種類のセキュリティチップ内のユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力が可能になることを特徴とする。
【0014】
上記遊技機用照合機について、前記レベル設定手段により前記第1のレベルと第2のレベルの間に、少なくとも第3及び第4のレベルの設定が可能とされ、設定レベルが第3のレベルのときは、その照合機に許された特定のセキュリティチップのみユーザプログラムの読み出しは可能になるが、前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力は不可となり、設定レベルが第4のレベルのときは、ユーザプログラムの読み出しは不可となるが、特定のセキュリティチップであるときのみ前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力が可能になるようにする。
【0015】
前記特定種類のセキュリティチップか否かの識別は、当該照合機に付与された識別情報と、遊技機用セキュリティチップのユーザメモリのプログラム管理エリアに書き込まれた識別情報とが一致するか否かによって行うものである、請求項5又は6に記載の遊技機用照合機。
【0016】
上記、遊技機用照合機について、前記設定レベルが所定のレベルのときに、遊技機のセキュリティチップの動作を停止させる機能を備えることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、遊技機用セキュリティチップと遊技機用照合機との間において予めレベルを設定しておくことによって、例えば、行政機関又は検査機関などには高いレベルを設定することによってあらゆるメーカのセキュリティチップからデータの読み出しやバス状態の確認を行うことができるようにし、遊技機メーカには低いレベルを設定することによって、自社のセキュリティチップからのみデータの読み出しやバス状態の確認を行うことができるようにすることが可能となる。これにより、内部に記録されたプログラム等の重要な情報について十分な秘匿性を備えるとともに、必要があるときは十分なセキュリティを確保した上で外部からこれらの情報の読み出しやバスの状態の確認が可能となり、前述の不都合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して、本発明に係る遊技機用セキュリティチップの実施の一形態について説明する。
【0019】
本実施形態では、例えば、セキュリティチップメーカから検査機関に供与される照合機と、遊技機メーカに供与される照合機について異なるレベルを設定し、それらのレベルに基づいてセキュリティチップ内のROMに記憶されたユーザプログラム等の読み出しの許否及びバスから外部端子への出力の許否を制御するとともに、遊技機メーカに供与する照合機については、各遊技機メーカが自社で製造した遊技機のセキュリティチップ内のROMのデータは読み出すことができるようにするが、他社の製造した遊技機のセキュリティチップ内のROMのデータは読み出すことができないようにする。
【0020】
このようなことを実現するために、セキュリティチップ側では、接続された照合機ごとに設定されているレベルを判定できるようにする。具体的には、検査機関が所有している照合機にはもっとも高いレベルを付与し、このようなレベルを持った照合機は、すべてのメーカの遊技機のセキュリティチップからユーザプログラム等のデータを読み出しや外部端子から内部のバス上のデータを取り出すことができるようにする。一方、遊技機メーカに供与される照合機には、これよりも低いレベルを付与しておき、このレベルの照合機と判定された場合には、そのメーカが開発した遊技機のセキュリティチップのみから、ユーザプログラム等のデータの読み出しや外部端子から内部のバス上のデータの出力ができるようにし、他のメーカが開発した遊技機のセキュリティチップからはユーザプログラム等の読み出し等はできないようにする。
【0021】
図1は、遊技機1内の遊技機制御基板2に搭載されたセキュリティチップ3の中のROMに記憶されているユーザプログラムを読み出すために、セキュリティチップ3と照合機4とを接続し、さらに、照合機4とパソコン5とを接続した状態を示している。図1の場合は、セキュリティチップ3のROMに記憶されているユーザプログラムは、ROMライタと同じように読み出され、パソコン5の画面上に表示される。
【0022】
図2は、セキュリティチップ3内のバスの状態(バス出力)を外部のロジックステートアナライザ等から観察するために、セキュリティチップ3に、照合機4とロジックステートアナライザ6を接続した状態を示している。図2の場合は、後述のようにしてバスから外部端子への出力を許可する信号が、照合機4からセキュリティチップ3へ送られることによって、バスの信号が外部へと出力されることになる。
【0023】
図3は、セキュリティチップ3のROMに記憶されているユーザプログラムを読み出すために、セキュリティチップ3を遊技機1から取り外して照合機7に装着し、さらにこの照合機7にパソコン5を接続した状態を示している。通常、図3のように、セキュリティチップ3を遊技機1から取り外してソケット経由で照合するタイプの照合機7は、検査機関のみに供与され、遊技機メーカには供与されない。このように、セキュリティチップ3を遊技機1から取り外して載せるタイプの照合機7には、謄本チップとの比較照合が可能であり、もっとも高いレベルが設定される。なお、図3の照合機7は、セキュリティチップ3を遊技機1に取り付けた状態で図1や図2のような照合動作を行うことも可能である。
【0024】
さらに、遊技機メーカに供与する照合機には無いが検査機関に供与する照合機には備えられる機能として、セキュリティチップの動作を停止させる機能がある。これは、正規のセキュリティチップは遊技機内に確かに存在しているが、実際に遊技機を制御するプログラムを内蔵した制御手段は別のところに違法に取り付けられていて、その制御手段により遊技機を不正者に有利になるように制御するといった不正を発見するための機能である。照合機を動作状態の遊技機に接続しただけだと、セキュリティチップが正規のものかどうかの判別はできるが、動作中の遊技機を制御しているプログラムがそのセキュリティチップに記憶されている正規のプログラムなのか不正者が違法に取り付けた部品に記憶されている不正なプログラムなのかは判別できない。
【0025】
しかし、正規のセキュリティチップで動作しているプログラムを強制的に停止させる機能を持たせることによって、不正なプログラムが動作している場合には、これを簡単に見分けることができる。すなわち、特別なレベルの照合機にプログラムの停止を指令する機能を備え、この指令によって実際にプログラムを停止させ、例えば液晶画面が実際に停止することを確認することによって、正規のプログラムが動作していることを簡便に確認できる。
【0026】
図4は、図1〜図3に示したセキュリティチップ3の回路のブロック図である。同図において、中央処理装置(CPU)10は、遊技機の全体的な動作を制御する。ユーザメモリはユーザROM12及びユーザRAM14からなり、ユーザROM12の中には、パチンコなどを開発、製造する遊技機メーカが開発したユーザプログラム及び必要なデータが格納され、ユーザRAM14には遊技動作の実行時に必要な作業データが一時的に記憶される。
【0027】
符号16はマップ切替回路であり、これはモード制御回路24から出力制御信号生成回路26を介して、セキュリティチップ3に用意されている三つのモード、すなわち「セキュリティモード」、「PROMモード」、「ユーザモード」のいずれかの信号が入ったときに、それぞれのモードに応じて予め用意されているメモリマップに切り替える。ここで、「セキュリティモード」とは、セキュリティチェック回路52によってユーザROM12のセキュリティチェックを行う他、ユーザモードで使用する回路の設定などを行うモードである。「ユーザモード」とは、ユーザROM12に書き込まれているユーザプログラムを実行するモードであり、このモードに移行すると、ユーザROMのリセットアドレスからユーザプログラムを実行する。「PROMモード」とは、ユーザROMに対してユーザプログラムの読み出し及び書き込みを実行するモードである。
【0028】
ブートROM18は起動時に立ち上がるプログラムが格納されたメモリであり、ブートRAM20は起動時に使用されるRAMである。クロック回路30は、基板のクロック信号を受け入れてクロック信号をチップ全体に供給する。出力制御信号生成回路26からは、「セキュリティモード」、「PROMモード」、「ユーザモード」のいずれかに応じた制御信号が出力され、バス50を介してバッファ32、34、36、38、40に対して供給され、それぞれのバッファの入力や出力の可否を制御する。セキュリティモードにおけるセキュリティチェックは、セキュリティチェック回路52によって実行される。
【0029】
バッファ32、34、36、38、40のうち、バッファ32はコントロール出力制御信号の出力を制御するものであり、バッファ34はアドレスの入力及び出力を制御するものであり、バッファ36はデータの入力及び出力を制御するものであり、バッファ38はパラレルデータの入力を制御するものであり、バッファ40はアドレスデコード回路44からのチップセレクト信号などの出力を制御するものである。セキュリティチップにロジックステートアナライザ等が接続された状態でバスの出力が許可されると、これらの出力はロジックステートアナライザによって読み取ることができる。バッファ32、34、36からの出力の許否は、各モード及び照合機からの信号によって制御される。バッファ32、34、36は、ユーザモードにおいてバス出力禁止の場合、内部デバイス(ユーザROM12、ユーザRAM14及びその他のアプリケーション回路(不図示))へのアクセスタイミングでは出力せず、外部デバイスに設定されたメモリ又はI/Oマップにアクセスするときのみ出力し、バス出力許可の場合、すべてのバス状態を出力する。
【0030】
図4のセキュリティチップにはさらに、特殊要求回路54及び照合ブロック56が設けられている。照合用ブロック56は、図1、図2の照合機4や図3の照合機7が接続されたときに、照合機内の照合通信回路66(図6参照)との間でシリアル通信を行い、照合機に設定されているレベルを検出するとともに、低いレベルの照合機が接続されている場合は、その照合機が供与されたメーカを特定する。特殊要求回路54は、照合機がROM読み出し、バス出力、CPU停止の要求を行ったときにこれを認識し、モード制御回路24に送出する。
【0031】
図5は、図4に示したセキュリティチップ3のうち、照合用ブロック56、特殊要求回路54、モード制御回路24の部分を抜き出し詳しく示したブロック図である。照合用ブロック56には照合通信回路、認証制御回路、レベル格納回路が含まれている。このうち照合通信回路は、照合機との通信を行う回路であり、通信の結果、レベル格納回路のレベル(これについては後述する)に応じて、認証制御回路が特殊要求信号を出力する。特殊要求回路54には、特殊要求解析回路及び要求出力回路が含まれており、照合ブロック56からの特殊要求信号を特殊要求解析回路が解析し、その結果に基づいて要求出力回路が各要求をモード制御回路24へ出力する。
【0032】
モード制御回路24には、要求受信回路、モード格納回路、ROM読出要求情報記憶回路、バス出力制御情報記憶回路、CPU停止要求情報記憶回路、制御出力回路が含まれている。要求受信回路は、特殊要求回路54から受信した各要求に対し、モード格納回路内に格納されるモードに基づいて、各制御信号を出力する。
【0033】
図6は、外部からセキュリティチップ3に接続してセキュリティチップ3との間で所定の信号のやり取りを行うことができる照合機7の制御装置のブロック図である。CPU60は、記憶回路62(ROM及びRAMが含まれる)内のROMに記憶されているプログラムによってその動作が制御される。その際、必要に応じて記憶回路62のRAMが作業領域として使用される。記憶回路62のROMには、この照合機が供与される遊技機メーカを特定することができるメーカコードが記憶されている(図7参照)。
【0034】
クロック回路64は、照合機全体に対して必要なクロック信号を供給する。照合通信回路66は、照合機をセキュリティチップと接続してセキュリティチップの照合ブロック56(図4、図5参照)との間で通信を行う。照合通信回路66には、また、セキュリティチップ3の照合回路56と同様にレベル格納回路(不図示)が含まれている。この通信は、前述のようにシリアル通信である。表示制御回路70は、照合動作の結果に基づいて「OK」、「NG」を表すLEDを点灯させたり、操作説明や照合結果などをLCDに表示させる。
【0035】
外部I/F制御回路72は、照合機からプリンタへ照合結果を出力したり、パソコンやオンライン監視装置などとの通信を制御する。照合制御回路74は、照合開始スイッチからその旨の入力があったときに、照合動作を開始する。また、照合制御回路74にCPU停止SWからその旨の入力があったときは、後述のようにして遊技機のCPUの動作を停止させるための制御信号を生成する。
【0036】
チップ信号入出力制御回路(検査チップ用)68及びチップ信号入出力制御回路(謄本チップ用)78は、セキュリティチップを遊技機の基板から取り外し、照合機に載せて検査する場合に使用される回路である。したがって、通常遊技機メーカに供与される照合機の場合であれば、この部分の回路を設けないまま供与することもできるし、この部分を設けてあっても所定の権限を有する者以外の使用を禁止する手段を設けておいてもよい。
【0037】
チップ信号入出力制御回路(検査チップ用)68は、量産用のセキュリティチップを遊技機の基板から取り外して検査する際に、取り外した検査対象のチップからの信号の入出力を制御する回路である。チップ信号入出力制御回路(謄本チップ用)78は、謄本用のセキュリティチップを取り付けて検査を行うときに使用される回路で、謄本チップからの信号の入出力を制御する。ここで、謄本チップを用いた検査とは、謄本チップと検査対象のチップとをそれぞれ照合機に取り付け、それぞれのチップからの信号又はユーザROMの内容に相違がないことを確認することで、セキュリティチップが正規のものであると判別する検査方法である。
【0038】
図7は、図4に示したセキュリティチップ内のユーザROM12のメモリマップである。図7の左側の図から分かるように、ユーザROM12の内部は大きく分けて「プログラムコードエリア」、「プログラムデータエリア」、「プログラム管理エリア」から構成される。「プログラムコードエリア」及び「プログラムデータエリア」には、遊技機の実際の動作を制御するためのプログラム及びデータが書き込まれる。
【0039】
プログラム管理エリアには例えば128バイトの記憶領域が用意され、ここにプログラムを管理するために必要な情報が記憶される。具体的には、図7の右側に拡大して示すように、「ヘッダ」、前述の「メーカコード」、「製品コード」、「プログラムコードエンドアドレス」、「各種設定」、「使用禁止エリア」、「読み出しRAMエリア」、「セキュリティコード」の各領域から構成されている。
【0040】
遊技機メーカが遊技機のソフトウェアの開発を実行する際に、ユーザROMのうち、「プログラムコードエリア」及び「プログラムデータエリア」に自社の遊技機を制御するプログラムを書き込む。また、プログラム管理エリアに関しては、セキュリティコード以外の領域に、必要な情報を書き込む。新たな遊技機のソフトウェアの開発が完了し、遊技機メーカによって必要なコードが書き込まれると、セキュリティコードを付与する機関が、ユーザROMに書かれている情報に基づいてセキュリティコードを生成し、これをプログラム管理エリアのセキュリティコード領域に書き込む。こうしてセキュリティコードが書き込まれたチップに基づいて、遊技機メーカは所定の機関の型式試験を受ける。そして、この試験に合格したチップに基づいて、量産用チップにデータをコピーして、実際の遊技機に搭載する。
【0041】
図8は、照合機の照合通信回路66に含まれる前述のレベル格納回路に設定することが可能なレベル(本実施形態ではレベル0,1,2,3,4の5段階のレベル)と、各レベルのときに可能となる動作を表として示している。照合機に設定されているレベルがレベル0のときは、ROMからのユーザプログラムの読み出し、並びにセキュリティチップ3内のバスの出力は、セキュリティチップ内蔵ROMに記憶されたメーカコード(図7参照)と照合機7のROMに記憶されたメーカコード(図6参照)とが一致したときのみ可能となる。レベル1のときは、ROMからのユーザプログラムの読み出しは不可であるが、バスの出力は可能となる。レベル2のときは、ROMからのユーザプログラムの読み出しは可能であるが、バスの出力は不可である。レベル3のときは、ROMからのユーザプログラムの読み出しも、バスの出力も可能となる。
【0042】
レベル4のときは、ROMからのユーザプログラムの読み出し及びバスの出力が可能となるのに加え、照合機からの指示により、セキュリティチップの動作を停止させることが可能となる。かかる機能によって実際にプログラムを停止させ、例えば液晶画面が実際に停止することを確認することによって、正規のプログラムが動作していることを簡便に確認することが可能となる。
【0043】
次に、図9のフローチャートを参照して、照合機によって遊技機のセキュリティチップのROMに記憶されたユーザプログラムの読み出し及びバス上のデータの出力を可能とする場合のセキュリティチップの動作について説明する。照合機によってROM読み出し及びバスデータの出力を行うためには、予め照合機を遊技機に接続し、セキュリティチップは照合機に設定されているレベルを認識し、レベル認証を行う。そして、そのレベルが「0」の場合には、前述のように相互のメーカコード(特許請求の範囲における「識別情報」に対応する)を比較し、両者のメーカコードが一致するかどうかを判定し、一致した場合にはじめて、これ以降の読み出し動作が可能となり、照合機から遊技機に対して、ROM読み出し要求信号及びバス出力要求信号をそれぞれ与える。
【0044】
正規の照合機が接続された状態で、図4のモード制御街路24にシステムリセットが入ると(XSRST=Low)(S1)、PRG端子がHighかどうかかを見る(S2)。ここでPRG端子がHighではない場合には、PROMモードに移行する(S3)。ただし、PROMモードに移行しても今回のROM読み出しが禁止されたチップにおいては、ROM内のプログラムを読み出すことはできずに、プログラムの書き込み(ワンタイム)とベリファイの命令のみを受け付け、各命令があったときにそれぞれが実行される。一方、S2においてPRG端子がHighの場合、セキュリティモードに移行する(S4)。
【0045】
セキュリティモードに移行すると、S5以降においてROM読み出し及び他の要求があるかどうかをモニターする。ROM読み出し及び他の要求を受け付けるときには、前述の照合機のレベル認証及び相互のメーカコードの確認が行われ、同様の認証及び確認が以降の要求を受け付ける際にも判定条件となる。S5のROM読み出し要求は、図1及び図2に示した照合機4又は図3に示した照合機7から出される要求であり、ROM読出要求があると、ROM読出設定のフラグを立てて、後にこのフラグを見てROM内のプログラムを読み出すことが可能な状態となる(S6)。一方、S5でROM読出要求がなければ、S7でバス出力要求の有無を確認する。S7でバス出力要求があれば、バス出力許可設定のフラグを立てて、ユーザプログラムが実行されたとき出力制御信号生成回路26は、各バッファの出力制御信号(図4に示したADDR出力制御信号やDATA出力制御信号など)を出力することで、バス出力を開放可能な状態になる(S8)。
【0046】
続いて、セキュリティチェックを行う(S9)。すなわち、図4のセキュリティチェック回路52によってユーザROM12のセキュリティチェックが行われる。このセキュリティチェックの結果がNGであれば、S10でCPUを停止させ(S10)、セキュリティチェックの結果がOKであれば、ユーザモードに移行し(S11)、ユーザプログラムに基づき遊技が実行される(S12)。バス出力許可設定のフラグが立っていれば、この時点でバスの外部へ出力がなされる。なお、フラグが立っていなくても、外部アクセスについてはバスや制御信号が出力される。その後、CPUは、CPUの停止要求があるかどうかを継続的にモニターする(S13)。そして、CPU停止要求があった場合には、CPUを停止させる(S10)。
【0047】
上記のように、S6においてROM読み出し許可が設定されていれば、照合機からROMに記憶されたユーザプログラムを読み出すことができる。具体的には、図4に示した照合ブロック56が、チップ外部の照合機などから特殊要求があったときに、特殊要求回路54に要求してバス出力要求又はROM読み出し要求を行う。また、S8においてバス出力許可が設定されていれば、バス出力の要求があったときに、図4の出力制御信号生成回路26が、各バッファに対して出力許可の信号を出力することにより、各バスの出力が開放され、チップ外部のロジックステートアナライザ等によって、ユーザプログラム実行中のバス出力をモニターすることが可能となる。
【0048】
また、S13におけるCPUの停止要求は、照合機からの要求である。もし正規のセキュリティチップが正常に動作しているのであれば遊技機はその時点で停止するはずであるが(S10)、もし照合機からこのような要求を送ったにもかかわらず遊技機が動作を停止しないとすれば、その動作は正規のチップとは別の不正なチップが隠し装着されて不正なプログラムが動作していると考えられ、そのような不正を容易に検知することができる。なお、このようなCPU停止要求は、前述のように特別なレベルの照合機のみに装着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】セキュリティチップと照合機とを接続し、さらに、照合機とパソコンとを接続した状態を示した図である。
【図2】セキュリティチップに、照合機とロジックステートアナライザを接続した状態を示した図である。
【図3】セキュリティチップを遊技機から取り外して照合機に装着し、さらにこの照合機にパソコンを接続した状態を示した図である。
【図4】本発明の実施の一形態に係る遊技機用セキュリティチップのブロック図である。
【図5】図4に示したセキュリティチップ3のうち、照合用ブロック56、特殊要求回路54、モード制御回路24の部分を抜き出し詳しく示したブロック図である。
【図6】本発明の実施の一形態に係る遊技機用照合機の制御装置のブロック図である。
【図7】図4に示したセキュリティチップ内のユーザROM12のメモリマップである。
【図8】照合機の照合通信回路66に含まれる前述のレベル格納回路に設定することが可能なレベルと、各レベルのときに可能となる動作を表として示した図である。
【図9】照合機によって遊技機のセキュリティチップのROMに記憶されたユーザプログラムの読み出し及びバス上のデータの出力を可能とする場合のセキュリティチップの動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 遊技機
2 遊技機制御基板
3 セキュリティチップ
4 照合機
7 照合機
10 CPU
12 ユーザROM
14 ユーザRAM
16 マップ切替回路
18 ブートROM
20 ブートRAM
24 モード制御回路
26 出力制御信号生成回路
32,34,36,38,40 バッファ
50 バス
52 セキュリティチェック回路
54 特殊要求回路
56 照合用ブロック
60 CPU
62 記憶回路
66 照合通信回路
68 チップ信号入力制御回路(検査チップ用)68
70 表示制御回路
74 照合制御回路
78 チップ信号入力制御回路(謄本チップ用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機の動作を制御する中央処理装置、及び、遊技機のユーザプログラム及びセキュリティコードが書き込まれるユーザメモリが含まれ、遊技機の起動時に前記セキュリティコードに基づいてセキュリティチェックを実行する遊技機用セキュリティチップであって、
少なくとも二以上のレベルの設定が可能とされた照合機が接続されたときに、その照合機の設定レベルを判定する照合機レベル判定手段を備え、
前記照合機に設定されたレベルが第1のレベルと判定されたときは、その照合機に許された特定のセキュリティチップであるときのみユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を許可し、前記照合機に設定されたレベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルと判定されたときは、種類に関係なくセキュリティチップ内のユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を許可することを特徴とする遊技機用セキュリティチップ。
【請求項2】
前記第1のレベルと第2のレベルの間に、少なくとも第3及び第4のレベルが用意され、前記照合機に設定されたレベルが第3のレベルと判定されたときは、その照合機に許された特定のセキュリティチップのみユーザプログラムの読み出しを許可するとともに、前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を禁止し、前記照合機に設定されたレベルが第4のレベルと判定されたときは、ユーザプログラムの読み出しを禁止するとともに、その照合機に許された特定のセキュリティチップであるときのみ前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力を可能にするものである、請求項1に記載の遊技機用セキュリティチップ。
【請求項3】
前記照合機に許された特定のセキュリティチップか否かの識別は、当該照合機に付与された識別情報と、前記ユーザメモリのプログラム管理エリアに書き込まれた識別情報とが一致するか否かによって行うものである、請求項1又は2に記載の遊技機用セキュリティチップ。
【請求項4】
前記照合機の設定レベルが所定のレベルのときに、当該照合機からの信号に基づいて遊技機のセキュリティチップの動作を停止させる機能を備えた、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の遊技機用セキュリティチップ。
【請求項5】
遊技機の動作を制御する中央処理装置、及び、遊技機のユーザプログラム及びセキュリティコードが書き込まれるユーザメモリが含まれ、遊技機の起動時に前記セキュリティコードに基づいてセキュリティチェックを実行する遊技機用セキュリティチップから、前記ユーザメモリに記憶されたデータの読み出し及びバス上のデータの出力を許可する遊技機用照合機であって、
少なくとも二以上のレベルの設定が可能とされ、前記遊技機用セキュリティチップと接続されたときに、その設定レベルを前記遊技機用セキュリティチップのレベル判定手段によって判定されるようにしたレベル設定手段を備え、
設定レベルが第1のレベルのときは、特定のセキュリティチップのみのユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力が可能となり、設定レベルが前記第1のレベルよりも高い第2のレベルのときは、すべての種類のセキュリティチップ内のユーザプログラムの読み出し及び前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力が可能になることを特徴とする遊技機用照合機。
【請求項6】
前記レベル設定手段により前記第1のレベルと第2のレベルの間に、少なくとも第3及び第4のレベルの設定が可能とされ、設定レベルが第3のレベルのときは、その照合機に許された特定のセキュリティチップのみユーザプログラムの読み出しは可能になるが、前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力は不可となり、設定レベルが第4のレベルのときは、ユーザプログラムの読み出しは不可となるが、特定のセキュリティチップであるときのみ前記セキュリティチップ内のバス上のデータの出力が可能になる、請求項5に記載の遊技機用照合機。
【請求項7】
前記特定種類のセキュリティチップか否かの識別は、当該照合機に付与された識別情報と、遊技機用セキュリティチップのユーザメモリのプログラム管理エリアに書き込まれた識別情報とが一致するか否かによって行うものである、請求項5又は6に記載の遊技機用照合機。
【請求項8】
前記設定レベルが所定のレベルのときに、遊技機のセキュリティチップの動作を停止させる機能を備えた、請求項5乃至7のうちいずれか一項に記載の遊技機用照合機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−90019(P2009−90019A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265598(P2007−265598)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(591107481)株式会社エルイーテック (37)
【Fターム(参考)】