説明

運動案内装置及び運動案内装置用カバー

【課題】クーラント等の液体や微粉塵等の異物が内部に侵入するのを確実に防止することができる運動案内装置を提供する。
【解決手段】軌道部材11と、軌道部材11に複数の転動体を介して組み付けられる移動体本体と、移動体本体の相対移動方向各端面に取り付けられる蓋部材を有する運動案内装置において、移動体20の上面20dに対応する上部壁2a、移動体20の左右一対の側面20fに対応する左右一対の側壁2bを有して、移動体20の上面20d及左右一対の側面20fのうち、少なくとも移動体本体と蓋部材との接合部分を覆うカバー1を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材と移動体との間に転がり運動可能に複数の転動体を介在させた運動案内装置に関し、特にクーラント等の水分や微細な粉塵が飛散する環境下で使用するのに好適な運動案内装置及び運動案内装置用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
運動案内装置は、テーブル等の案内対象の直線運動又は曲線運動を案内する機械要素である。この種の運動案内装置として、軌道レールと、軌道レールに沿って移動可能に組み付けられる移動ブロックと、を備えるリニアガイドが知られている。軌道レールに対する移動ブロックの相対的な移動を円滑にするために、軌道レールと移動ブロックとの間には転がり運動可能に多数の転動体(ボールやローラ)が介在される。移動ブロックは、移動ブロック本体と、移動ブロック本体の移動方向の両端部に設けられる一対のエンドプレートと、を有する。軌道レールには、長手方向に伸びる転動体転走溝が形成される。移動ブロック本体には、軌道レールの転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝、及び負荷転動体転走溝と平行な転動体戻し路が形成される。エンドプレートには、負荷転動体転走溝の一端と転動体戻し路の一端とを接続する円弧状の方向転換路が形成される。軌道レールの転動体転走溝と移動ブロック本体の負荷転動体転走溝との間の負荷転動体転走路、無負荷転動体戻し路、及び一対の方向転換路によってサーキット状の転動体循環路が構成される。この転動体循環路に多数の転動体が配列・収容される。
【0003】
リニアガイドは、さまざまな産業機械や工作機械で用いられ、その使用環境もさまざまである。たとえば、切粉や塵埃等の多い環境下で使用されることもある。その場合には、リニアガイド内に塵埃等の異物が侵入すると、摩耗や早期寿命の原因となるため、異物の侵入を防止する必要がある。このような異物侵入防止構造の例として、特許文献1には、軌道レールに所定の取付スパンで取り付けられた二つの移動ブロック間の間隙や、移動ブロック端のエンドプレート等の部品の周囲を覆うように、外部から嵌め込まれる防塵カバーが開示されている。防塵カバーは、エンドプレート等の部品に嵌め込まれた後、それ自体の弾性力によって当該部品に固定される。このような防塵カバーを設けることで、異物の多い環境でリニアガイドを使用しても、移動ブロック間に塵埃等が溜まることを防ぐことができる。また、エンドプレートは一般に樹脂からなることから、エンドプレートを防塵カバーで覆うことにより、高温の異物によりエンドプレートが変形するのを防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4109341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工作機械で使用されるリニアガイドは、塵埃や切粉のみならず、クーラント等の水分にさらされることも多い。クーラント等の水分は、リニアガイドのわずかなすきまにも入りやすい。そのクーラントに塵埃や切粉が混ざると、塵埃や切粉がクーラントとともにリニアガイド内に侵入し、リニアガイドの故障を招くことになる。したがって、リニアガイドをクーラント等の水分からも保護する必要がある。
【0006】
しかし、移動ブロック本体の端面やこれに接触するエンドプレート、あるいはエンドプレートに接触する他の部品を完全な平面に形成することは不可能であり、これらの間にはクーラント等の水分が侵入可能な僅かなすきまが空く。クーラント等の水分が移動ブロックの内部に侵入すると、水分によって移動ブロックの内部の潤滑剤の物性が変化し、潤滑剤が流し出されることがあり、こうなると良好な潤滑状態が得られなくなるおそれがある。移動ブロックへのクーラントの侵入は、移動ブロックにクーラントが直接かかることに起因したり、可搬物を伝わって移動ブロックにクーラントが伝わってくることに起因したりする。
【0007】
上記特許文献1に記載の防塵カバーは、二つの移動ブロック間の間隙や、エンドプレート等の移動ブロック本体の端部に取り付けられる部品を覆うものであるが、移動ブロック本体の端面とエンドプレートの間の僅かなすきまを介した水分の侵入を防ぐことはできない。
【0008】
移動ブロックの内部に塵埃や切粉が侵入するのを防止するために、移動ブロックの移動方向の端部に軌道レールとの間のすきまを塞ぐシール部材(エンドシール)を取り付けたり、移動ブロックの底面に軌道レールとの間の隙間を塞ぐシール部材(サイドシール)を取り付けたりすることも行われている。しかし、シール部材を取り付けても移動ブロック本体の端面とエンドプレートの間の隙間を塞ぐことはできない。しかも、シール部材が取り付けられた部品とシール部材との間の僅かなすきまを介してクーラント等の液体が移動ブロックの内部に侵入するおそれもある。
【0009】
そこで本発明は、クーラント等の液体や微粉塵等の異物が内部に侵入するのを確実に防止することができる運動案内装置、及び運動案内装置用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、上面及び左右一対の側面を有し、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路が形成される蓋部材を含み、前記軌道部材の上面に対向する中央部及び前記軌道部材の左右一対の側面に対応する左右一対の袖部を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、前記移動体の上面に対応する上部壁、前記移動体の左右一対の側面に対応する左右一対の側壁を有して、前記移動体の上面及び左右一対の側面のうち、少なくとも前記移動体本体と前記蓋部材との接合部分を覆うカバーと、を備える運動案内装置である。
【0011】
本発明の他の態様は、上面及び左右一対の側面を有し、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有し、前記軌道部材の上面に対向する中央部及び前記軌道部材の左右一対の側面に対応する左右一対の袖部を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置に取り付けられるカバーであって、前記カバーは、前記移動体の上面に対応する上部壁、前記移動体の左右一対の側面に対応する左右一対の側壁を有して、前記移動体の上面及び左右一対の側面のうち、少なくとも前記移動体本体と前記蓋部材との接合部分を覆う運動案内装置用カバーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の上面に対応する上部壁、移動体の左右一対の側面に対応する左右一対の側壁を有するカバーで、移動体本体と蓋部材との接合部分を覆うので、クーラント等の液体や微粉塵等の異物が移動体本体と蓋部材との接合部分を介して移動体の内部に侵入するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態の運動案内装置であるリニアガイドの斜視図(図1(a)は上面側の斜視図であり、図1(b)は底面側の斜視図である)
【図2】カバーの分解斜視図
【図3】カバーを取り外したリニアガイドの斜視図
【図4】カバーの詳細図(図4(a)はカバー本体の斜視図であり、図4(b)は端部壁の斜視図であり、図4(c)は底壁の斜視図である)
【図5】カバーを取り付けた状態及びカバーを取り外した状態の運動案内装置の斜視図(図中上段(a―1)〜(a−3)は取付け面をカバーから露出させた例を示し、図中下段(b―1)〜(b−3)は取付け面及び突当て面をカバーから露出させた例を示す)
【図6】カバー本体と底壁の接合方法の他の例を示す斜視図
【図7】カバーの移動方向の長さを調節する長さ調節手段を示す斜視図
【図8】カバーの移動方向の長さを調節する長さ調節手段の他の例を示す斜視図
【図9】カバーの移動方向の長さを調節する長さ調節手段の他の例を示す斜視図(リニアガイドの全体図)
【図10】図9のリニアガイドの詳細図(図10(a)は正面図であり、図10(b)は移動方向に沿った断面図である)
【図11】カバーの移動方向の長さを調節する長さ調節手段のさらに他の例を示す斜視図(リニアガイドの全体図)
【図12】図11のリニアガイドの斜視図(端部カバーをカバー本体から取り外した状態)
【図13】カバーの移動方向の長さを調節する長さ調節手段のさらに他の例を示すカバー本体及び端部カバーの断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の運動案内装置の実施形態を説明する。図1(a)及び(b)は、本発明の第一実施形態の運動案内装置であるリニアガイドの斜視図を示す。図1(a)はカバーで覆われたリニアガイドの上面側の斜視図を示し、図1(b)はカバーで覆われたリニアガイドの底面側の斜視図を示す。
【0015】
軌道部材としての軌道レール11には、長手方向に直線運動可能に移動体としての移動ブロック20が組み付けられる。軌道レール11には、軌道レール11をベッド、コラム等の固定部に取り付けるための挿通孔13が形成される。挿通孔13にボルトを通し、ボルトを固定部にねじ込むことによって軌道レール11が固定部に取り付けられる。移動ブロック20の上面には、移動ブロック20をテーブル等の可動部に取り付けるためのねじ穴5が形成される。可動部にボルトを通し、ボルトをねじ穴5にねじ込むことによって、可動部が移動ブロック20に取り付けられる。移動ブロック20の上面には、平面視で四角形状の取付け面8が形成される。正確にいえば、実際に可動部に取り付けられるのは、四角形の取付け面8の幅方向の両端部のみである。取付け面8には精度を出すための研削加工が施される。この取付け面8は、可動部を取り付ける際の基準面になる。カバー1は移動ブロック20の、取付け面8以外の移動ブロック20の全ての面、すなわち取付け面8以外の上面20d、左右一対の側面20f、移動方向の端面20g及び底面20hを覆う(図2)。
【0016】
図2はカバー1の分解斜視図を示す。カバー1は、上部壁2a及び左右一対の側壁2bを有するカバー本体2と、カバー本体2の移動方向の端部に結合される一対の端部壁3−1,3−2と、カバー本体2の底に結合される一対底壁4−1,4−2と、を有する。カバー本体2の上部壁2aは移動ブロック20の上面20dに対応し、カバー本体2の左右一対の側壁2bは移動ブロック20の左右一対の側面20fに対応する。端部壁3−1,3−2は移動ブロックの移動方向の端面20gに対応する。底壁4−1,4−2は移動ブロック20の底面20hに対応する。これらのカバー本体2、一対の端部壁3−1,3−2、及び一対の底壁4−1,4−2は、樹脂の射出成型によるか、又は金属板のプレス加工により形成された後、互いに一体に結合される。材質が樹脂の場合、これらの部品は超音波溶着により一体に結合される。材質がステンレス等の金属の場合、これらの部品は溶接により一体に結合される。カバー1にはボルト等の締結による繋ぎ目が存在しないので、カバー1の外部から内部に液体が侵入することがなく、カバー1の内部が液体に対して密封される。
【0017】
図1(b)に示すように、カバー1には軌道レール11との干渉を避けるための開口部3a,4aが形成される。すなわち、カバー1の一対の端部壁3−1,3−2それぞれには、軌道レール11との干渉を避けるために軌道レール11の断面形状に対応した開口部3aが形成され、一対の底壁4−1,4−2間には、軌道レール11との干渉を避けるために軌道レール11に沿った開口部4aが形成される。カバー1と軌道レール11との間にすきまが生ずると、このすきまからカバー1の内部に液体が侵入する。これを防止するために、カバー1の開口部3a,4aにはシール部材41,42が接着等により一体に固定される。すなわち、端部壁3−1,3−2には端部壁3−1,3−2と軌道レール11との間のすきまを塞ぐ端部壁シール部材41が固定され、底壁4−1,4−2には底壁4−1,4−2と軌道レール11との間のすきまを塞ぐ底壁シール部材42が固定される(図2も参照)。端部壁シール部材41及び底壁シール部材42は軌道レール11に密着する。
【0018】
図3は、カバー1を取り外したリニアガイドの斜視図を示す。この実施形態におけるリニアガイドは、直線状に延びる軌道部材としての軌道レール11と、この軌道レール11に沿って移動可能に組み付けられる移動体としての移動ブロック20と、を備える。軌道レール11と移動ブロック20との間には、転がり運動可能に多数の転動体としてのボール32が介在される。
【0019】
軌道レール11は略断面四角形状の長尺体であり、上面11d、左右一対の側面11f、及び底面11hを有する。軌道レール11の左右一対の側面11fの上端部には、長手方向に延びる突条11bが設けられる。突条11bの上下には転動体転走部としてのボール転走溝11aが1条ずつ形成される。軌道レール11の全体としては4条のボール転走溝11aが形成される。ボール転走溝11aの断面形状は、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、又は二つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ溝形状である。軌道レール11には長手方向に所定の間隔をおいて、軌道レール11を上下方向に貫通する挿通孔13が複数開けられる。これらの挿通孔13に挿入したボルトを用いて、軌道レール11をベッド、コラム等の固定部に固定する。
【0020】
移動ブロック20は、移動体本体としての移動ブロック本体21と、該移動ブロック本体21の移動方向の両端に取り付けられた蓋部材としてのエンドプレート22と、を備えている。
【0021】
移動ブロック本体21は、軌道レール11を水平面に配置した状態において、軌道レール11の上面に対向する中央部21−1と、軌道レール11の左右の側面に対向する一対の袖部21−2,21−3を有して略鞍形状に形成される。移動ブロック本体21の中央部21−1には、テーブル等の案内対象に移動ブロック20をボルトで固定するためのねじ穴5が加工される。
【0022】
移動ブロック本体21の内側には、中央部21−1と袖部21−2,21−3の境を挟んで両側に一つずつ、負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝20aが形成される。負荷ボール転走溝20aは、軌道レール11のボール転走溝11aに対向しており、移動ブロック本体21全体で計4条形成される。負荷ボール転走溝20aも、ボール転走溝11aと同様に、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、又は二つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ溝形状に形成される。軌道レール11のボール転走溝11aと移動ブロック本体21の負荷ボール転走溝20aとの間に、ボール32が負荷を受けながら転がり運動する負荷転動体転走路としての負荷ボール転走路が形成される。移動ブロック本体21には、負荷ボール転走溝20aから所定間隔を開けて、負荷ボール転走路と平行な転動体戻し路としてのボール戻し路20bが設けられる。ボール32は荷重から解放された状態でこのボール戻し路20b内を戻る。
【0023】
蓋部材としてのエンドプレート22は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、軌道レール11に跨った状態で移動ブロック本体21の移動方向の両端に取り付けられる。すなわち、エンドプレート22は、軌道レール11を水平面に配置した状態において、軌道レール11の上面に対向する中央部22−1と、軌道レール11の左右の側面に対向する一対の袖部22−2,22−3を有して略門形形状に形成される。エンドプレート22には、軌道レール11のボール転走溝11aと移動ブロック本体21の負荷ボール転走溝20aとで形成される負荷ボール転走路と、ボール戻し路20bを接続するU字状の方向転換路の外周側が形成されている。方向転換路の内周側は移動ブロック本体21に一体に形成されている。この方向転換路と、負荷ボール転走路と、ボール戻し路20bとによって、サーキット状のボール循環路が構成される。ボール循環路には、多数のボール32が配列される。ボール32同士の接触を防止するために、ボール32間にはスペーサ34が介在されると共に、スペーサ34は帯状のバンド35で一連に連結される。
【0024】
エンドプレート22の移動方向の外側の端面には、エンドシール29が取り付けられる。エンドシール29は、軌道レール11の表面に接触して軌道レール11の表面に付着した異物等が移動ブロック20内に侵入するのを防ぐ。
【0025】
次に、本発明の特徴であるカバー1について説明する。図2に示すように、カバー1は、上部壁2a及び左右一対の側壁2bを有するカバー本体2と、カバー本体2の移動方向の端部に結合される一対の端部壁3−1,3−2と、カバー本体2の底に結合される一対の底壁4−1,4−2と、を備える。カバー本体2、一対の端部壁3−1,3−2及び一対の底壁4−1,4−2が一体化された後は、カバー1の内部に移動ブロック20を入れ込むことができない。このため、カバー1が複数の分割体に分割されている。カバー1の分割の仕方、及び分割したカバー1を結合する方法には、複数のパターンが存在するが、この実施形態では一例として、カバー1をカバー本体2、一対の端部壁3−1,3−2、及び一対の底壁4−1,4−2に五分割し、超音波溶着によってこれらを結合する例を説明する。
【0026】
図4(a)〜図4(c)に示すように、カバー本体2は、移動ブロック本体21及びエンドプレート22の上面を覆う上部壁2a、移動ブロック本体21及びエンドプレート22の左右一対の袖部21−2,21−3,22−2,22−3の側面を覆う一対の側壁2bを有する。
【0027】
図4(a)に示すように、上部壁2aには、移動ブロック本体21の取付け面8に形状を合わせた四角形状の開口部2cが形成される。開口部2cの内周には、移動ブロック20の取付け面8に密着するシール部材44が接着等により固定される。この実施形態のカバー本体2の材質は樹脂である。シール部材44はカバー本体2よりも軟質のゴム又は樹脂(正確にいえばヤング率の小さい材料)からなる。シール部材44の樹脂としては、各種のエラストマ(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系)、あるいは各種の合成樹脂(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系等)を用いることができる。耐薬品性、スプリング特性を考慮すると、ポリエステル系エラストマが最も望ましい。カバー本体2の開口部2cを移動ブロック20の取付け面8の周囲に嵌めると、一段低くなった移動ブロック20の取付け面8の周囲とカバー本体2との間でシール部材44が圧縮され、これにより移動ブロック20の取付け面8とカバー本体2との間がシールされる。
【0028】
カバー本体2の移動方向の端面には、端部壁3−1,3−2を位置決めするための位置決め用ボス孔2eが形成される。端部壁3−1,3−2を嵌められるようにC字状のカバー本体2の移動方向の端面には外周縁に沿って端部壁3−1,3−2に向かって僅かに突出する凸条2iが形成される。カバー本体2の下面には、底壁4−1,4−2を位置決めするための位置決め用ボス孔2fが形成される。底壁4−1,4−2を嵌められるようにカバー本体2の下面には外周縁に沿って底壁4−1,4−2に向かって僅かに突出する凸条2jが形成される。
【0029】
なお、カバー本体2の開口部2cの内周面の替わりに、カバー本体2の上部壁2aの下面側にシール部材44を設けてもよい。カバー本体2と底壁4−1,4−2とを結合するときに、カバー本体2を移動ブロック20に向かって引き下げると、カバー本体2の上部壁2aと移動ブロック20の上面との間でシール部材が押しつぶされる。カバー本体2にシール部材44を固定する替わりに、移動ブロック20の取付け面8とカバー本体2のとの間に液体ガスケット等のコーキング剤を充填してもよい。
【0030】
図4(b)に示すように、端部壁3−1,3−2は薄板状に形成される。端部壁3−1,3−2には、軌道レール11の断面形状に対応する開口部3aが形成される。開口部3aの内周には、軌道レール11に密着する端部壁シール部材41が接着等により固定される。端部壁シール部材41の材質はカバー本体2のシール部材44と同一である。端部壁3−1,3−2の外周部には、カバー本体2の端面の凸条2iが嵌まる段差状の凹み3bが形成される。端部壁3−1,3−2の4隅には、カバー本体2の位置決め用ボス孔2eに嵌まる位置決め用ボス3cが設けられる。位置決め用ボス3cの僅かに内側には、断面三角形の溶着リブ3fが形成される。カバー本体2の移動方向の端面に端部壁3−1,3−2を取り付け、端部壁3−1,3−2の位置決め用ボス3c及びカバー本体2の位置決め用ボス孔2eによってカバー本体2に端部壁3−1,3−2を位置決めする。このとき、カバー本体2の移動方向の端面の凸条2iが端部壁3−1,3−2の段差状に凹み3bに嵌まる。位置決め後、端部壁3−1,3−2又はカバー本体2に超音波振動を与えて端部壁3−1,3−2をカバー本体2に超音波溶着する。超音波振動が断面三角形の溶着リブ3fに集中的な伸縮運動を起こさせるので、樹脂溶融温度まで極めて短時間で発熱し、効率良く溶着が行われる。
【0031】
図4(c)に示すように、底壁4−1,4−2は四角形の板状に形成される。底壁4−1,4−2の長辺側の側面4a(開口部4a)には、軌道レール11の側面に密着する底壁シール部材42が接着等により固定される。底壁シール部材42は底壁4−1,4−2の長手方向の全長に渡って伸びる。底壁シール部材42の材質はカバー本体2のシール部材44と同一である。底壁4−1,4−2の上面には、カバー本体2の位置決め用ボス孔2fに嵌まる位置決め用ボス4bが設けられる。底壁4−1,4−2の上面には、位置決め用ボス孔2fに隣接して、断面三角形の溶着リブ4cが形成される。底壁4−1,4−2の一辺には、カバー本体2の下面の凸条2jが嵌まる段差状の凹み4fが形成される。カバー本体2の底面に底壁4−1,4−2を取り付け、底壁4−1,4−2の位置決め用ボス4b及びカバー本体2の位置決め用ボス孔2fによってカバー本体2に対して底壁4−1,4−2を位置決めする。このとき、カバー本体2の下面の凸条2jが底壁4−1,4−2の段差状に凹み4fに嵌まる。位置決め後、底壁4−1,4−2又はカバー本体2に超音波振動を与えて底壁4−1,4−2をカバー本体2に超音波溶着する。超音波溶着の際、断面三角形の溶着リブ4cが溶融する。
【0032】
カバー本体2に端部壁3−1,3−2及び底壁4−1,4−2を超音波溶着したとき、底壁4−1,4−2の底壁シール部材42の長さ方向の端部が端部壁3−1,3−2の端部壁シール部材41に密着する(図1(b)参照)。端部壁シール部材41と底壁シール部材42との接合部分から水が侵入するのを防止するために接合部分を接着するのが望ましい。
【0033】
図2に示すように、軌道レール11に移動ブロック20を組み付けた状態で、カバー1を移動ブロック20に取り付けようとすると、上述のようにカバー1を全体で五つに分割する必要がある。しかし、軌道レール11から取り外された状態の移動ブロック20にカバー1を取り付ける場合、カバー1を五つに分割する必要はない。この場合、カバー本体2と一対の端部壁3−1,3−2とが一体に樹脂成形されてもよいし、一対の端部壁3−1,3−2と一対の底壁4−1,4−2とが一体に樹脂成形されてもよい。
【0034】
図5(a−1)に示すように、移動ブロック20の取付け面8はカバー1から露出する。図5(a−3)に示すように、取付け面8がその周囲のカバー1よりも高くなるように、移動ブロック20の取付け面8の周囲には、取付け面8の周囲を掘り下げる追加工51が施される。追加工51は、既存の製品に対する機械加工(例えばエンドミルによる切削加工)である。追加工51によって移動ブロック20の取付け面8の周囲に取付け面8がその周囲よりも一段高くなるように段差が形成される。段差の高さはカバー1の厚みよりも厚く、カバー1を移動ブロック20に取り付けた状態で、取付け面8はカバー1よりも一段高くなる。移動ブロック20の取付け面8の周囲とカバー1との間はシール部材44によってシールされる。
【0035】
図5(b―1)〜(b−3)は追加工の他の例を示す。この例では、移動ブロック20の上面の取付け面8だけでなく、移動ブロック20の側面上部の突当て面9もカバー1から露出させている。移動ブロック20を可動部に取り付ける際、移動ブロック20の側面20fの突当て面9を基準面に突き当て、移動ブロック20の幅方向の位置決めをした後、移動ブロック20を可動部に取り付ければ、移動ブロック20を可動部に精度よく取り付けることができる。このためこの例では、取付け面8だけでなく突当て面9もカバー1から露出させている。
【0036】
図5(b−1)に示すように、移動ブロック20の取付け面8及び突当て面9が露出するように、カバー1にはL字形状に折れ曲がった開口部2cが形成される。開口部2cは、カバー1の上部壁2aから側壁2bに渡る。図5(b−3)に示すように、移動ブロック20の上面には、取付け面8及び突当て面9の周囲を掘り下げる追加工52が施される。追加工52によって、移動ブロック20の取付け面8及び突当て面9がその周囲よりも一段高くなるように段差が形成される。図5(b−3)において、追加工52は取付け面8の周囲の三辺、及び突当て面9の長さ方向の両端部に施される。段差の高さはカバー1の厚みよりも厚く、カバー1を取り付けた状態で、取付け面8はカバー1よりも上方に突出し、かつ突当て面9はカバー1よりも側方に突出する。なお、移動ブロック20の突当て面9よりも下方は、製品の段階にて突当て面9よりも内側に引っ込んでいるので、追加工52を施す必要はない。移動ブロック20の取付け面8及び突当て面9の周囲とカバー1との間はシール部材44によってシールされる。なお、この例では移動ブロック20の一対の突当て面9のうちの一方の突当て面9のみを露出させているが、両方の突き当て面9を露出させてもよい。この場合、カバー1には、移動ブロック20の取付け面8及び一対の一対の突き当て面9を露出させる開口部2cが形成される。
【0037】
図2に示すように、本実施形態によれば、移動ブロック20の上面20dに対応する上部壁2a、及び移動ブロック20の左右一対の側面20fに対応する左右一対の側壁2bを有するカバー本体2で、移動ブロック本体21とエンドプレート22との接合部分を覆うので、クーラント等の液体や微粉塵等の異物が移動ブロック本体21とエンドプレート22との接合部分を介して移動ブロック20の内部に侵入するのを防止できる。
【0038】
さらに本実施形態によれば、カバー1に移動ブロック20の移動方向の端面20gに対応する端部壁3−1,3−2、及び移動ブロック20の底面20hに対応する底壁4−1,4−2を設けるので、全方位からの液体の侵入を防ぐことができる。リニアガイドは水平面内に配置されることが多いので、移動ブロック20の上面20d及び一対の側面20fをカバー1で覆えば、液体が移動ブロック本体21とエンドプレート22との接合部分を介して移動ブロック20の内部に侵入するのを防止することができる。しかし、リニアガイドは水平面内だけでなく、垂直面内に配置されることもある。例えば工作機械のY軸に用いられるリニアガイドは軌道レール11が水平方向を向くように垂直面内に配置され、工作機械のZ軸に用いられるリニアガイドは軌道レール11が上下方向を向くように垂直面内に配置される。このような場合、移動ブロック20の上面20d及び側面20fをカバー1で覆っただけでは、移動ブロック20の移動方向の端面20g側や移動ブロック20の底面20h側からの液体の侵入を許してしまう。これを防止するために、本実施形態では移動ブロック20の移動方向の端面20g及び移動ブロック20の底面20hもカバー1で覆っている。そして、カバー1の開口部3a,4aと軌道レール11との間のすきまをシール部材41,42で塞いでいる。
【0039】
図6は、カバー本体2と底壁4−1,4−2の接合方法の他の例を示す。この例では、底壁4−1,4−2はL字状に曲げられていて、カバー本体2と底壁4−1,4−2とはボルト等の結合手段によって結合されている。カバー本体2と底壁4−1,4−2との間にはシール部材48が介在されていて、カバー本体2と底壁4−1,4−2との間のすきまから液体が侵入しないようになっている。
【0040】
図7ないし図12は、カバー1に移動方向の長さを調節する長さ調節手段を設けた例を示す。カバー1には移動方向の長さを調節するのは、付属装置を取り付けた移動ブロック20の長さの変化に対応するためである。移動ブロック20には、潤滑装置、エンドシール、積層形接触スクレーパ、金属スクレーパ等の付属装置が積層されることがある。カバー1の移動方向の長さを調節することによってこのような付属装置も覆うことができる。潤滑装置は、軌道レール11のボール転走溝11aに潤滑油やグリース等の潤滑剤を供給する装置である。エンドシールは、軌道レール11の表面に接触して軌道レール11の表面に付着した異物等が移動ブロック20内に侵入するのを防ぐ異物侵入防止装置である。積層形接触スクレーパは、微細な異物の移動ブロック20内への侵入を防止する異物侵入防止装置である。積層形接触スクレーパは、ケーシング内部にフェルト状の板材を複数枚移動方向に積層して構成される。金属スクレーパは、軌道レール11に貼り付いたスパッタ等の異物を排除する異物侵入防止装置である。金属スクレーパは軌道レール11の表面に接触しない。
【0041】
図7は、カバー1の長さ調節手段として、カバー本体2の一対の側壁2bの内壁面に多数のスリット54を形成した例を示す。多数のスリット54は、上下方向に伸び、互いに平行であり、カバー1の移動方向に配列される。付属装置の長さに応じて端部壁3−1を挿入するスリット54が選択される。スリット54に端部壁3−1を挿入した後、端部壁3−1とカバー本体2とは超音波溶着又は溶接される。
【0042】
図8は、カバー1の移動方向の長さを調節する長さ調節手段の他の例を示す。この例では、カバー本体2がカバー1の長さ方向に二分割されている。一方の分割カバー本体2−2の側壁2bの内側先端部には、断面三角形状の爪部55が形成される。他方の分割カバー本体2−1の側壁2bの外側先端部には、断面三角形の爪部56がカバー1の移動方向に多数形成される。分割カバー本体2−2を分割カバー本体2−1に向かって移動させると、分割カバー本体2−2の一対の側壁2bが外側に広がるように撓み、分割カバー本体2−1の一対の側壁2bが内側に狭まるように撓む。その後、分割カバー本体2−2の一対の側壁2b、及び分割カバー本体2−1の一対の側壁2bが元の状態に復元し、分割カバー本体2−2の爪部55が分割カバー本体2−1の爪部56に引っ掛かかる。これにより、分割カバー本体2−2と分割カバー本体2−1とを引き離すことができなくなる。分割カバー本体2−1には多数の爪部56が形成されるので、分割カバー本体2−2を分割カバー本体2−1に対して任意の位置に係合させることができ、したがってカバー1の移動方向の長さを調節することができる。カバー1の移動方向の長さを調節した後、分割カバー本体2−2と分割カバー本体2−1とは超音波溶着又は溶接される。
【0043】
図9及び図10は、カバー1の移動方向の長さを調節する長さ調節手段のさらに他の例を示す。この例では、カバー本体2の移動方向の端面に複数のリブ57を積層することによって、カバー1の移動方向の長さを調節している。図9に示すように、移動ブロック20は取り付け面8を露出させた状態でカバー本体2が取り付けられる。カバー本体2は、移動ブロック20の上面に対応する上部壁2a、移動ブロック20の左右一対の側面に対応する及び左右一対の側壁2b、及び移動ブロック20の底面に対応する底壁2kを有する。カバー本体2の上部壁2aには取付け面を露出させるように開口部2cが形成される。図10(a)に示すように、カバー本体2の上部壁2aと移動ブロック20との間にはシール部材59が介在され、カバー本体2の開口部2cの周囲のシールが保たれている。
【0044】
図9に示すように、リブ57は、略C字形状に形成される。移動方向に積み重ねることができるように、リブ57の移動方向の一端側57aが大径に形成され、他端側57bが小径に形成される。リブ57は樹脂の射出成型品である。付属装置の長さに応じて、積み重ねられるリブ57の数が決定される。
【0045】
積層したリブ57の移動方向の端部には、軌道レール11の表面に付着したスパッタ等を除去するスクレーパとして機能する、金属製の端部カバー58が取り付けられる。端部カバー58は、付属装置の上面を覆う上部壁58a、付属装置の左右一対の袖部の側面を覆う一対の側壁58b及び付属装置の移動方向の外側の端面を覆う端部壁58cを有する。端部壁58cは、移動方向と直交する断面において、移動ブロック本体21とほぼ同じ形をしている。58dは、端部壁58cにおける開口部であり、開口部58dは、移動ブロック20の相対移動時に端部カバー58が軌道レール11と干渉しない大きさに設定される。
【0046】
図10(a)に示すように、端部カバー58の端部壁58cには左右対称に一対のボルト33が通される。ボルト33は端部壁58cに空けられたボルト通し孔58eを通る。図10(b)に示すように、エンドプレート22に潤滑装置61、エンドシール62、積層形接触スクレーパ63を積層した状態で、カバー本体2の端面に複数のリブ57を積層する。積層したリブ57の内側にすきまが生じないように付属装置61〜63にはさらに薄板状の複数毎のスペーサ66が重ねられる。リブ57に端部カバー58をかぶせ、締結部材としての取付用ボルト33をボルト通し孔58eに挿入し、移動ブロック本体21に固定する。これにより、移動ブロック本体にエンドプレート22、付属装置61〜63、及び端部カバー58が固定される。また、移動ブロック本体21に端部カバー58を固定することによって、複数のリブ57もカバー本体2と端部カバー58との間に挟まれて互いに密着する。リブ57同士、リブ57と端部カバー58との間の繋ぎ目をコーキング剤で埋めてもよい。端部カバー58とスペーサ66との間には、軌道レール11の表面に接触して軌道レール11の表面に付着した異物等が移動ブロック20内に侵入するのを防ぐエンドシール69が取り付けられる。図10(a)に示すように、カバー1の底壁4−1には、軌道レール11との間のすきまを塞ぐサイドシール64が取り付けられる。サイドシール64は軌道レール11の長手方向に伸び、その長手方向の両端部でエンドシール69に密着する。エンドシール69とサイドシール64との接点を接着してもよい。
【0047】
図11及び図12は、カバー1の移動方向の長さを調節する長さ調節手段のさらに他の例を示す。この例では、カバー本体2に対して、端部カバー58をカバー1の移動方向にスライドさせて、カバー1の移動方向の長さを調節している。
【0048】
カバー本体2は、移動ブロック20の上面を覆う上部壁2a、移動ブロック20の一対の側面を覆う一対の側壁2b、移動ブロック20の底面を覆う底壁2dを有する。カバー本体2の上面には、取付け面8を露出させるための開口部2cが形成される。カバー本体2の長さ方向の端部は端部カバー58によって覆われる。端部カバー58は、付属装置の上面を覆う上部壁58a、付属装置の左右一対の袖部の側面を覆う一対の側壁58b、付属装置の移動方向の外側の端面を覆う端部壁58c、付属装置の底面を覆う底壁58fを有する。端部壁58cには、軌道レール11と端部壁58cとの間のすきまを塞ぐシール部材66が設けられる(図12参照)。
【0049】
カバー本体2に対して端部カバー58がスライドすることができるように、端部カバー58の内側の寸法はカバー本体2の端部の外側の寸法にほぼ等しい。カバー本体2の端部に端部カバー58を被せ、付属装置の長さに応じて端部カバー58をスライドさせる。端部カバー58の位置を調節したら、接着剤によって端部カバー58をカバー本体2に固定すると共に、これらの間の生ずるすきまを埋める。接着剤を用いる替わりに超音波溶着によって端部カバー58をカバー本体2に結合してもよい。
【0050】
図13は、カバー1の移動方向の長さを調節する長さ調節手段のさらに他の例を示す。この例では、カバー本体2の上部壁2aの上面及び左右一対の側壁2bの外側の側面に門形形状の複数の引っ掛かり部2gが形成される。複数の引っ掛かり部2gは、カバー1の移動方向に多段に形成される。カバー本体2を覆う端部カバー58には押しボルト68が取り付けられる。押しボルト68を締めれば、押しボルト68の先端がカバー本体2に当接し、端部カバー58がカバー本体2に対して図中右方向に移動する。端部カバー58の引っ掛かり部58gとカバー本体2の引っ掛かり部2gには、弾性体からなるシール部材69が介在される。シール部材69は引っ掛かり部58gと引っ掛かり部2gとの間に挟まれて圧縮変形する。これにより、カバー本体2と端部カバー58との間がシールされる。端部カバー58の引っ掛かり部58gと協働するカバー本体2の引っ掛かり部2gの位置を1段目、2段目、3段目に変化させることによって、カバー1の移動方向の長さを調節することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【0052】
例えば、カバー本体、底壁及び端部壁の結合は、超音波溶着や溶接に限られることはなく、これらの部品にフランジを設けた上でボルト結合してもよいし、これらの部品をパチンと嵌めるいわゆるスナップフィット方式を採用してもよいし、これらの部品を接着剤で接着してもよい。ただし、ボルト結合、スナップフィット方式を用いた場合、繋ぎ目から液体が侵入しないように繋ぎ目をシールする必要がある。
【0053】
カバー本体に移動ブロックの取付け面を露出させるための開口部を設けることなく、移動ブロックの取付け面もカバーで覆ってもよい。可動部の取り付け精度がラフでもいい場合には、移動ブロックの取付け面の上面にカバーの上部壁を介して可動部が取り付けられてもよい。
【0054】
上記実施形態では、移動ブロックに、付属装置として、潤滑装置、エンドシール、積層形接触スクレーパ及び金属スクレーパを取り付けた例を説明しているが、これらの付属装置は必ず取り付けられるものではなく、付属装置は必要に応じて選択することができる。カバー本体の移動方向の長さは、取り付ける付属装置によって適宜調節される。
【0055】
本実施例では転動体にボールを用いる例を説明したが、転動体はボールに限定されるものではなく、ローラであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…カバー,2…カバー本体,2a…上部壁,2b…側壁,2c…開口部,3−1,3−2…端部壁,3a…端部壁の開口部,4−1,4−2…底壁,4a…底壁の開口部,8…取付け面,9…突当て面,11…軌道レール(軌道部材),11a…ボール転走溝(転動体転走部).20…移動ブロック(移動体),20a…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部),20b…ボール戻し路(転動体戻し路),21移動ブロック本体(移動体本体),22…エンドプレート(蓋部材),32…ボール(転動体),21−1…移動ブロック本体の中央部,21−2,21−3…移動ブロック本体の袖部,41…端部壁シール部材,42…底壁シール部材,44…シール部材,61-63…付属装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び左右一対の側面を有し、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、
前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路が形成される蓋部材を含み、前記軌道部材の上面に対向する中央部及び前記軌道部材の左右一対の側面に対応する左右一対の袖部を有する移動体と、
前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、
前記移動体の上面に対応する上部壁、前記移動体の左右一対の側面に対応する左右一対の側壁を有して、前記移動体の上面及び左右一対の側面のうち、少なくとも前記移動体本体と前記蓋部材との接合部分を覆うカバーと、を備える運動案内装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記移動体の相対移動方向の端面に対応する端部壁を有して、前記移動体の相対移動方向の端面をも覆うことを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記移動体の底面に対応する底壁を有して、前記移動体の底面のうち、少なくとも前記移動体本体と前記蓋部材との接合部分をも覆うことを特徴とする請求項2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記カバーには、前記カバーの相対移動方向の端部壁と前記軌道レールとの間のすきまを塞ぐ端部壁シール部材、及び前記カバーの底壁と前記軌道レールとの間のすきまを塞ぐ底壁シール部材が設けられることを特徴とする請求項3に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記カバーには、前記移動体の上面の、前記移動体を相手部材に取り付けるための取付け面が、前記カバーから露出するように開口部が形成され、
前記カバーの開口部の周囲には、前記カバーと前記移動体との間のすきまを塞ぐシール部材が設けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項6】
前記カバーには、前記移動体の側面の、前記移動体を相手部材に突き当てるための突当て面も、前記カバーから露出するように前記開口部が形成されることを特徴とする請求項5に記載の運動案内装置。
【請求項7】
前記カバーは、複数の樹脂製の分割体を溶着によって結合させてなるか、又は複数の金属製の分割体を溶接によって結合させてなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項8】
前記移動体が、相対移動方向の端部に潤滑装置又は異物侵入防止装置を含む付属装置の少なくとも一つをさらに有し、
前記カバーには、前記付属装置の少なくとも一つを覆うことができるように前記カバーの相対移動方向の長さを調節する長さ調節手段が設けられることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項9】
上面及び左右一対の側面を有し、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有し、前記軌道部材の上面に対向する中央部及び前記軌道部材の左右一対の側面に対応する左右一対の袖部を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置に取り付けられるカバーであって、
前記カバーは、前記移動体の上面に対応する上部壁、前記移動体の左右一対の側面に対応する左右一対の側壁を有して、前記移動体の上面及び左右一対の側面のうち、少なくとも前記移動体本体と前記蓋部材との接合部分を覆う運動案内装置用カバー。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−112412(P2012−112412A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260266(P2010−260266)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】