説明

運動状態検出方法及び運動状態検出装置

【課題】従来の加速度センサーや角速度センサーの代わりとなる電力消費の少ないセンサーを開発する。
【解決手段】対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体を有するセンサーを用い、単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第1のレベル値と第2のレベル値とを算出し、第1のレベル値の2乗和による第1の検出値が第1の所定の値以下の場合は、第1の検出値を測定値とし、第1の検出値が第1の所定の値を超えた場合は、前記第2のレベル値の2乗和による第2の検出値を測定値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動状態検出方法及び運動状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の運動状態の検出は、一般に加速度センサーや角速度センサーを物体に取り付けて行われることが多い。運動状態の検出対象としては自動車、航空機、船舶、産業用ロボットなどがある。このような対象の場合、制御の正確さを求めることから、センサーの検出精度の高さが重要となるが、常時電力を供給し続けることが可能な環境で使用されることから消費電力の大小は問題としない場合が多い。
【0003】
また、上記した検出対象以外に、特許文献1には人の状態監視を目的として加速度計を人体に装着することが提案されている。このような場合、加速度計内に電池などの電力供給源を有することになる。しかしながら、加速度センサーや角速度センサーは常時電力を消費していることから電力供給源の交換の頻度が煩わしく感じられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−81632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、人の状態監視を目的とする場合には消費電力の少なさが求められることになる。また、人の状態監視以外でも今後の環境問題への対応を考慮して、現在使用されているセンサー及びセンサーを用いた装置と比較してより消費電力の小さなセンサー及び装置の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくともひとつを解決するためになされたものであり、以下の運動状態検出方法及び運動状態検出装置の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本発明に係るひとつの運動状態検出方法は、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、を用い、単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される複数のレベル値を規定し、前記複数のレベル値の中から前記単位時間におけるレベル値を第1のレベル値として算出する第1の処理と、前記第1のレベル値に第2の所定の値を加算して第2のレベル値を算出する第2の処理と、連続する複数の前記単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出すると共に、前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出する第3の処理と、を含み、前記第1の検出値が第1の所定の値以下の場合は前記第1の検出値を測定値とし、前記第1の検出値が前記第1の所定の値を超えた場合は前記第2の検出値を前記測定値とすることを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、を有する消費電力の小さなセンサーを用いて加速度を算出することができる。また、第1の検出値及び第2の検出値を求め、第1の検出値が第1の所定の値を超えた場合は第2の検出値を測定値とすることで、加速度の算出範囲を広げることができる。該センサーは、与えられる加速度が大きくなるにつれ球状の導電体が電極に張り付くような状態が発生する。このことから単位時間におけるセンサーの出力の変化の回数に上限が存在する。これにより第1のレベル値を基に算出した第1の検出値は上限値が存在し、センサーを装着した対象の加速度の値が第1の所定の値以上に大きくなると、第1の検出値とセンサーを装着した対象の加速度の値との差が徐々に大きくなる。第1の所定の値は、第1の検出値とセンサーを装着した対象の加速度の値との差が無視できなくなる値のことである。従って、第1の検出値が第1の所定の値を越えた時点で、第1のレベル値に第2の所定の値を加算して得た第2のレベル値を基に算出する第2の検出値を測定値とすることで、加速度の測定範囲の上限を第1の所定の値よりも大きくすることができ、測定範囲を広げることができる。第2の所定の値は、センサーからの導通の状態を示す信号の変化の仕方によって決まる値である。第1の所定の値及び第2の所定の値は、例えば、実験又はシミュレーションにより求めることができる。
【0009】
[適用例2]
上記の適用例に係る運動状態検出方法において、前記導通の状態から前記非導通の状態への変化及び前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の少なくとも一方を検出状態として検出し、前記第2の所定の値は、前記検出状態の検出回数を基にして定められる値であることが好ましい。
【0010】
この方法によれば、球状の導電体は加速度が大きくなると一対の電極に張り付いたような状態になる時間が長くなり、検出状態の検出回数が少なくなる傾向があることから、検出状態の検出回数を基にして第2の所定の値を決めることができる。
【0011】
[適用例3]
本発明の適用例に係る他のひとつの運動状態検出方法は、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、を用い、第1の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第1の複数のレベル値を規定し、前記第1の単位時間において前記第1の複数のレベル値の中から第1のレベル値を算出する第1の処理と、連続する複数の前記第1の単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出する第2の処理と、第2の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第2の複数のレベル値を規定し、前記第2の単位時間において前記第2の複数のレベル値の中から第2のレベル値を算出する第3の処理と、連続する複数の前記第2の単位時間における複数の前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出する第4の処理と、を含み、前記第1の検出値が所定の値以下の場合に、前記第2の検出値の値と前記第2の検出値の値に対応して定められた定数とを乗算して得た値を測定値とすることを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、を有する消費電力の小さなセンサーを用いて加速度を算出することができる。また、第1の検出値が所定の値以下の場合に第2の検出値を基にした測定値を求めることで、加速度の算出範囲を広げることができる。第1のレベル値を基に算出した第1の検出値は、センサーを装着した対象の加速度と特定の範囲内において相関関係を持つ。第2の検出値を、第1の単位時間と時間の長さの異なる第2の単位時間におけるレベル値から算出することで、同一の加速度を計測した場合に第2の検出値は第1の検出値とは異なる値となり、第2の検出値がセンサーを装着した対象の加速度と相関関係がとれる範囲を、第1の検出値がセンサーを装着した対象の加速度と相関関係のとれる範囲よりも広くすることができる。第2の検出値はセンサーを装着した対象の加速度と異なる値をとるが、第2の検出値と、第2の検出値のとる値に対応して定められた定数との乗算を行うことで、使用可能な測定値を得ることが可能となる。上記の所定の値及び第2の検出値の取る値に対応して定められた定数は実験又はシミュレーションにより求めることができる。
【0013】
[適用例4]
上記の適用例に係る他のひとつの運動状態検出方法において、前記第2の単位時間の長さは、前記第1の単位時間の1/2であることが好ましい。
【0014】
この方法によれば、第2の単位時間の長さを第1の単位時間の長さの1/2とすることで、第2の検出値とセンサーを装着した対象の加速度とが相関関係となる範囲を、第1の検出値とセンサーを装着した対象の加速度とが相関関係となる範囲よりも広げることができる。
【0015】
[適用例5]
本発明の適用例に係るひとつの運動状態検出装置は、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体とを含むセンサーと、前記導通の状態から前記非導通の状態への変化及び前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の少なくとも一方を検出状態として検出し、前記検出状態から測定値を算出する演算処理部と、を有し、前記演算処理部は、単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される複数のレベル値を規定し、前記複数のレベル値の中から前記単位時間におけるレベル値を第1のレベル値として算出し、前記第1のレベル値に、第2の所定の値を加算して第2のレベル値を算出し、複数の連続する前記単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出し、前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出し、前記第1の検出値が第1の所定の値以下の場合は、前記第1の検出値を測定値とし、前記第1の検出値が前記第1の所定の値を超える場合は、前記第2の検出値を測定値とすることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、を有する消費電力の小さなセンサーを用いて加速度を算出することができる。また、第1の検出値及び第2の検出値を求めることで、加速度の算出範囲を広げることができる。該センサーは、与えられる加速度が大きくなるにつれ球状の導電体が電極に張り付くような状態が発生する。このことから単位時間における検出状態の検出回数に上限が存在する。これにより第1のレベル値を基に算出した第1の検出値に上限値が存在し、センサーを装着した対象の加速度の値が第1の所定の値以上に大きくなると、第1の検出値とセンサーを装着した対象の加速度の値との差が徐々に大きくなる。第1の所定の値は、第1の検出値とセンサーを装着した対象の加速度の値との差が無視できなくなる値のことである。従って、第1の検出値が第1の所定の値を越えた時点で、第1のレベル値に第2の所定の値を加算して得た第2のレベル値を基に算出する第2の検出値を測定値とすることで、センサーを装着した対象の加速度の測定の上限値を第1の所定の値よりも大きくすることができ、測定範囲を広げることができる。第2の所定の値は、検出状態の検出の状況によって決まる値である。第1の所定の値及び第2の所定の値は、例えば、実験又はシミュレーションにより求めることができる。
【0017】
[適用例6]
上記の適用例に係る運動状態検出装置において、前記第2の所定の値は、前記検出状態の検出回数を基にして定められる値であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、球状の導電体は加速度が大きくなると一対の電極に張り付いたような状態になる時間が長くなり、検出状態の検出回数が少なくなる傾向があることから、検出状態の検出回数を基にして第2の所定の値を決めることができる。
【0019】
[適用例7]
本発明に係る他のひとつの運動状態検出装置は、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体とを含むセンサーと、前記導通の状態から前記非導通の状態への変化及び前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の少なくとも一方を検出状態として検出し、前記検出状態から測定値を算出する演算処理部と、を有し、第1の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第1の複数のレベル値を規定し、前記第1の単位時間において前記第1の複数のレベル値の中から第1のレベル値を算出し、連続する複数の前記第1の単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出し、第2の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第2の複数のレベル値を規定し、前記第2の単位時間において前記第2の複数のレベル値の中から第2のレベル値を算出し、連続する複数の前記第2の単位時間における複数の前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出し、前記第1の検出値が所定の値以下の場合に、前記第2の検出値の値と前記第2の検出値の値に対応して定められた定数とを乗算して得た値を測定値とすることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、を有する消費電力の小さなセンサーを用いて加速度を算出することができる。また、第1の検出値が所定の値以下の場合に第2の検出値を基にした測定値を求めることで、加速度の算出範囲を広げることができる。第1のレベル値を基に算出した第1の検出値は、センサーを装着した対象の加速度と特定の範囲内において相関関係を持つ。第2の検出値を、第1の単位時間と長さの異なる第2の単位時間におけるレベル値から算出することで、同一の加速度を計測した場合に第2の検出値は第1の検出値とは異なる値となり、第2の検出値がセンサーを装着した対象の加速度と相関関係がとれる範囲を、第1の検出値がセンサーを装着した対象の加速度と相関関係の取れる範囲よりも広くすることができる。第2の検出値は与えられた加速度と異なる値をとるが、第2の検出値と、第2の検出値のとる値に対応して定められた定数との乗算を行うことで、使用可能な測定値を得ることが可能となる。上記の所定の値及び第2の検出値の取る値に対応して定められた定数は実験又はシミュレーションにより求めることができる。
【0021】
[適用例8]
上記の適用例に係る他のひとつの運動状態検出装置において、前記第2の単位時間の長さは、前記第1の単位時間の1/2であることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、第2の単位時間の長さを第1の単位時間の長さの1/2とすることで、第2の検出値とセンサーを装着した対象の加速度とが相関関係となる範囲を、第1の検出値とセンサーを装着した対象の加速度とが相関関係となる範囲よりも広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】運動状態検出装置のブロック図。
【図2】レベル算出処理のフローチャート。
【図3】第1実施例における測定値算出のフローチャート。
【図4】第2実施例における測定値算出のフローチャート。
【図5】レベル値の変化を示した図。
【図6】単位時間における導通の状態の例。
【図7】第1実施例における測定値。
【図8】第2実施例における測定値。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の運動状態検出方法及び運動状態検出装置の実施形態について、図を用いて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1に本実施形態における運動状態検出装置10を示す。運動状態検出装置10は、図1に示したセンサー部1、演算処理部2及び出力部3を少なくとも含む。センサー部1は絶縁状態に保たれ位置関係が固定された一対の電極と一対の電極の間に形成される空間内で可動する球状の導電体を有する。演算処理部2はセンサー部1からの出力値からセンサー部1の状態の変化を検出し、検出した状態の変化から測定値を生成して出力部3に出力する。出力部3は、運動状態検出装置10の持つ出力対象に対応して測定値の出力を行う部分である。出力対象は、液晶などを用いた表示部でもよいし、運動状態検出装置10がホスト装置を有する場合はホスト装置にデータとして送信することでもよい。尚、以降の説明において、センサー部1が導通の状態であることをオン、非導通の状態にあることをオフと記載する。
【実施例1】
【0026】
本実施例は、演算処理部2において第1のレベル値から第1の検出値を算出すると共に、第2のレベル値から第2の検出値を算出し、第1の検出値が所定の値以下の場合は第1の検出値を測定値とし、第1の検出値が所定の値を超えたときは第2の検出値を測定値とする例である。本実施例における演算処理部2が実行する処理の一部のフローチャートを図2及び図3に示す。演算処理部2は運動状態検出装置10内部の割込み処理など、運動状態検出装置10全体の制御・管理的な処理も行うが、所謂設計事項の範疇に入ると判断すること、本発明の実施形態、実施例の説明をできるだけ簡便に行うこと、から本実施形態では特に制御・管理的な処理のフローチャートの図示は行わない。例えば割込みフラグなどのリセットなどの制御の図示はない。
【0027】
運動状態検出装置10の電源投入後、まず演算処理部2及び出力部3のパワーオンリセットが動作し、パワーオンリセットの終了後に演算処理部2内の制御部(特に図示はない)が起動し、制御部により演算処理部2及び出力部3の動作モードやパラメーターの設定が行われる。動作モードやパラメーターの設定が行われると、演算処理部2及び出力部3は設定に従った動作を行うことになる。図2及び図3に示したのは、動作モードやパラメーターの設定後の処理フローである。
【0028】
図2について説明する。図2は、第1のレベル及び第2のレベルの算出について示したフローチャートである。上記したように、図2に示すフローチャートがスタートする以前に運動状態検出装置10は、動作モード及びパラメーターの設定が行われている。第1のレベル値TL1n及び第2のレベル値TL2nの算出は本実施例においては演算処理部2の割り込み処理の中のひとつの処理となる。第1のレベル値TL1n及び第2のレベル値TL2nの処理に関係する割り込みは、センサー部1のオン、オフの変化を示す割り込みと単位時間の経過を示す割り込みである。この割り込みの発生の検出・判断を行っているのが、図2・処理S201、処理S202及び処理S205である。
【0029】
まず、割込み要因が単位時間の経過を示すものであるかどうかを判定し(図2・処理S202)、単位時間の経過を示すものであった場合は第2のレベル値TL2nを算出し(図2・処理S203)、第1のレベル値TL1n及び第2のレベル値TL2nを第1の検出値及び第2の検出値の算出を行う処理部(演算処理部2内、特に図示しない)に対して出力する(図2・処理S204)。割込み要因が単位時間の経過を示すものでなかった場合は、センサー部1の状態変化の検出による割込みが発生したかどうかの判定を行う(図2・処理S205)。センサー部1の状態変化による割込みであった場合、まずオンからオフへの変化を示すものであるかどうかを判定し(図2・処理S206)、オンからオフへの変化を示すものであれば、オンの累積時間OnTnを算出する(図2・処理S207)。オフからオンへの変化を示すものであればオフの累積時間OfTnを算出する(図2・処理S210、処理S211)。
【0030】
オンの累積時間OnTn及びオフの累積時間OfTnの算出後、図2・処理S208、処理S209、処理S212、処理S213、処理S214、処理S215及び処理S216により第1のレベル値TL1nを算出し、次の割込みの発生の検出(図2・処理S201)に戻る。単位時間内に算出される第1のレベル値TL1nは割り込みが発生した時点での一時的なレベル値である。上記したように、図2に示したフローチャートの処理により、単位時間が経過する毎に、単位時間における第1のレベル値TL1n及び第2のレベル値TL2nが算出される。
【0031】
尚、第1のレベル値TL1n及びオンの累積時間OnTnなどの変数の末尾のnは0以上の整数を示し、変数の組が複数存在することを表すものである。単位時間が切り替わると直前の単位時間に使用していた変数の組とは異なる変数の組が値をクリアされ使用される。ただし、第1のレベル値TL1nのクリアは、単位時間の切り替わり時におけるセンサー部1の状態を設定する。すなわち、単位時間の切り替わり時にセンサー部1がオンであれば3が設定され、オフであれば0が設定される。変数の組を複数有するのは、ひとつの単位時間が終了し次の単位時間に入るときに、次の単位時間の計測のために変数をクリアしてしまうと直前の単位時間に算出された第1のレベル値TL1n及び第2のレベル値TL2nの算出値を用いての演算ができなくなってしまうことを防ぐためである。本実施例においては、変数の組の切り替え、値のクリアなどは演算処理部2内の制御部が行う。
【0032】
次に、図3について説明する。図3は測定値算出のフローチャートである。まず、第1の検出値及び第2の検出値のクリアが行われる(図3・処理S301)。その後、新たなレベル値が算出されたかどうかを判断する(図3・処理S302)。新たなレベル値が算出されたということは、ひとつの単位時間が経過したことを示す。図2で示したフローチャートの処理により新たに算出された第1のレベル値TL1n及び第2のレベル値TL2nは、図3・処理S302、処理S303及び処理304によって形成されるループにより第1の検出値及び第2の検出値の算出に用いられる。図3・処理303において第1の検出値及び第2の検出値の算出に用いられる式は下記の式(1)である。
【0033】
【数1】

【0034】
式(1)において、V(t)には、第1のレベル値TL1n又は第2のレベル値TL2nの値が入る。式(1)におけるTは、加速度を定義する単位時間の数を示す。図3・処理304の規定回数がTにあたる。尚、kは比例定数である。
【0035】
TとV(t)の関係の例を図5に示す。図5中のT0は単位時間の長さを示す。T0は1秒以内に、Tで示される時間は10秒以内に設定するのが好ましい。図5は、T0が0.1秒、TはT0が10連続したものであり1秒であることを示している。
【0036】
図7は、本実施例における第1の検出値(実線:a1)と第2の検出値の一部(点線:a2)を示したものである。図7の横軸は加振機により運動状態検出装置10に与えた加速度、縦軸は運動状態検出装置10の測定値(加速度)である。図7中dが第1の検出値と第2の検出値のどちらを使用するかを判断する第1の所定の値となる。また、図6は、図7の(A)、(B)及び(C)のそれぞれにおける、ひとつの単位時間T0のセンサー部1のオンの状態を示した図である。図7の(A)、(B)及び(C)はいずれもレベル値は2で同じであるが、実際にセンサー部1がオンとなる合計時間はセンサー部1に与える加振機の加速度により異なっている。加振機により与える加速度が大きければセンサー部1のオンの時間が長い。言い換えれば、センサー部1のオン、オフの切り替えの回数が少ないということである。従って、第1の検出値をセンサー部1のオンの時間又はオン、オフの切り替え回数を基にした補正を行うことで、加振機で与える加速度と運動状態検出装置10の測定値との相関関係の取れる範囲を広げることが可能となる。
【0037】
本実施例では、センサー部1のオン・オフの切り替え回数を基にして算出したパルス数を用いて補正を行った。図2・処理203の計算式がこれにあたる。第2の所定の値α×f(c)を第1のレベル値TL1nに加算することで第2のレベル値TL2nを得ている。本実施例においては、α=2、f(c)=1/C(C:オンのパルス数)とした。これにより図6(A)における第2のレベル値TL2nは5となり、図6(B)における第2のレベル値TL2nは4となり、図6(C)における第2のレベル値TL2nは、3.5となった。
【0038】
図7からわかるように、第1の検出値のみでは測定範囲はeからdの範囲に限られるが、第1の検出値が第1の所定の値dを超えた場合に第2の検出値を測定値とすることで、運動状態検出装置10の測定範囲をeからfに広げることができた。尚、パルス数をカウントする処理は図2のフローチャート内に図示されていないが、図2・処理S206、処理S210の判断結果を用いることによりカウントが可能である。
【実施例2】
【0039】
本実施例は、第1の単位時間における第1の検出値から基準値を決定し、第1の検出値が基準値以下の場合に、第2の単位時間における第3の検出値を基にして加速度を求める例である。本実施例において、第2の単位時間の長さは、第1の単位時間の長さの1/2とした。尚、所謂設計事項の範疇に入ると判断する事項に関しては便宜上説明を行わないことは実施例1と同じである。また、第1の実施例において第2のレベル値及び第2の検出値という表現を用いていることから、異なる実施例ではあるが混同を避けるために第2の単位時間におけるレベル値及び検出値(2乗和)を、それぞれ第3のレベル値及び第3の検出値と表現する。
【0040】
まず、加振機により運動状態検出装置10に与える加速度と第1の検出値とが相関関係となる範囲求め、相関関係が取れる範囲における第1の検出値の最大値を基準値とする。次に第1の検出値が基準値以下の場合に、加振機により運動状態検出装置10に与える加速度と第3の検出値とから、測定値を算出するための乗数値(例えば図4・処理S410に示したα’及び図4・処理411に示したα”)を求める。尚、本実施例におけるレベル値の算出は実施例1と同じ算出法をとることから、レベル値の算出に関しての説明は省略する。
【0041】
図4は、基準値を決定した後の第3の検出値から測定値を求める処理のフローチャートである。まず、第1の検出値及び変数SQ30のクリア(図4・処理S401)、第3の検出値及び変数SQ31のクリア(図4・処理S402)を行う。次に新たなレベル値の算出があったかどうかを検出し(図4・処理S403)、算出があった場合は、第1のレベル値が算出されているかどうかを判断し(図4・処理S404)、第1のレベル値が算出されていれば第1の検出値の算出を行う(図4・処理S405)。上記したように本実施例は第2の単位時間の長さは第1の単位時間の長さの1/2である。また、第1の単位時間の起点と第2の単位時間の起点とを同じに設定してある。これにより、レベル値の算出を検出した場合、第3のレベル値のみが算出されている場合と第1のレベル値及び第3のレベル値が算出されている場合とのふたつの場合が存在する。図4・処理S404又は図4・処理S405の後に図4・処理S406において第3の検出値が算出され、変数SQ31に第3の検出値が保存される(図4・処理S407)。図4は、第1の単位時間の起点が第3の単位時間の起点と同じであることを前提としたフローチャートである。
【0042】
次に第1のレベル値の算出が規定回数行われたかどうかを判断し(図4・処理S408)、行われていなければ規定回数の1/2であるかどうかを判断し(図4・処理S413)、共に該当しない場合はレベル値算出の検出の処理(図4・処理S403)に戻る。第1のレベル値の算出回数が規定数の1/2であった場合には、変数SQ31の値を変数SQ30に保存して(図4・処理S414)図4・処理S402に戻る。第1のレベル値の算出回数が規定回数の1/2であることは、第2の単位時間が経過したことを意味する。しかしながら、図4・処理S408で第1のレベル値の算出回数が規定回数に達していないと判断されている場合は、算出された第3の検出値を測定値の算出に用いることができるかどうかの判断がつかない。
【0043】
図4・処理S408で第1の検出値が規定回数算出されていると判断されると、第1の検出値が基準値以下であるかどうかの判断が行われる(図4・処理S409)。基準値を超えていた場合は測定範囲エラーとなったことを示すコードを、出力部3を介して運動状態検出装置10が有する何らかの出力装置に出力する(図4・処理S412)。出力装置とは、例えば運動状態検出装置10に取り付けられた表示部であったり、ホスト装置などが存在する場合はホスト装置などであったりする。図4・処理S412の実行後、図4・処理S401の処理に戻る。
【0044】
第1の検出値が基準値以下であった場合には、第1の単位時間の前半の第2の単位時間における加速度を変数SQ30の値にα’を乗じた値を測定値0として算出し(図4・処理S410)、第1の単位時間の後半の第2の単位時間における加速度を変数SQ31の値にα”を乗じた値を測定値1として算出する(図4・処理S411)。乗数値α’α”は、上記したように、加振機を用いて評価を行って得た値を使用した。
【0045】
図8に本実施例で得た第1の検出値a1、第3の検出値a3及び測定値mを示す。図8の横軸は加振機により運動状態検出装置10に与えた加速度、縦軸は第1の検出値a1、第3の検出値a3及び測定値mの加速度を示す。第1の検出値a1は図8hからfにおいて加振機により与える加速度との相関関係がなくなるが、第3の検出値a3は算出値が全体的に実際の加速度よりも小さくなるものの、図8eからfの間で加振機により与える加速度との間で相関関係を有することができた。従って、図8hにおける第1の検出値a1の値を基準値とし、第1の検出値が基準値以下の場合に第3の検出値を基にして測定値mを算出することにより、第1の検出値を基にした測定では図8eからhの範囲までしか測定できなかったものが、図8eからfの範囲にまで広げることができた。
【0046】
ここで、図6を用いて、単位時間が異なるとレベル値が異なってくることについて簡単に説明する。図6は、図7(A)、(B)及び(C)におけるひとつの単位時間T0におけるオンの状態を示したものである。単位時間T0におけるレベル値は図7(A)、(B)及び(C)のいずれも2である。しかし、単位時間をT0/2にしてみると、前半の単位時間T0/2においてのレベル値は、図7(A)が2であり、図7(B)が1であり、図7(C)が1となり、後半の単位時間T0/2においてのレベル値は、図7(A)が2であり、図7(B)が2であり、図7(C)が1となる。このことから、単位時間の長さを調整することで、レベル値を調整することが可能であることがわかる。尚、本実施例は、第1の単位時間の起点が第2の単位時間の起点と同じになるようにしたが、第1の単位時間と第2の単位時間の関係はこれに限られたものではない。基本的には実験又はシミュレーションなどにより目的に適した関係を見出して使用することになる。
【0047】
上述したように、本発明を適用することにより、加速度センサーと比較してより消費電力の小さな、一対の電極と一対の電極間に配置された可動する導電体とを有するセンサーを用いて加速度を算出することができる。これにより、人の状態監視を目的とする場合に用いる監視装置や機器の制御に用いるための運動検出部分をより消費電力の小さなものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…センサー部、2…演算処理部、3…出力部、10…運動状態検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、
前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体と、
を用い、
単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される複数のレベル値を規定し、
前記複数のレベル値の中から前記単位時間におけるレベル値を第1のレベル値として算出する第1の処理と、
前記第1のレベル値に、第2の所定の値を加算し第2のレベル値を算出する第2の処理と、
連続する複数の前記単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出すると共に、前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出する第3の処理と、
を含み、
前記第1の検出値が第1の所定の値以下の場合は、前記第1の検出値を測定値とし、
前記第1の検出値が前記第1の所定の値を超えた場合は、前記第2の検出値を前記測定値とすることを特徴とする運動状態検出方法。
【請求項2】
前記導通の状態から前記非導通の状態への変化及び前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の少なくとも一方を検出状態として検出し、
前記第2の所定の値は、前記検出状態の検出回数を基にして定められる値であることを特徴とする請求項1に記載の運動状態検出方法。
【請求項3】
対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、
前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態とする球状の導電体と、
を用い、
第1の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第1の複数のレベル値を規定し、
前記第1の単位時間において前記第1の複数のレベル値の中から第1のレベル値を算出する第1の処理と、
連続する複数の前記第1の単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出する第2の処理と、
第2の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第2の複数のレベル値を規定し、
前記第2の単位時間において前記第2の複数のレベル値の中から第2のレベル値を算出する第3の処理と、
連続する複数の前記第2の単位時間における複数の前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出する第4の処理と、
を含み、
前記第1の検出値が所定の値以下の場合は、前記第2の検出値の値と前記第2の検出値の値に対応して定められた定数とを乗算して得た値を測定値とすることを特徴とする運動状態検出方法。
【請求項4】
前記第2の単位時間の長さは、前記第1の単位時間の1/2であることを特徴とする請求項3に記載の運動状態検出方法。
【請求項5】
対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、
前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体とを含むセンサーと、
前記導通の状態から前記非導通の状態への変化及び前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の少なくとも一方を検出状態として検出し、前記検出状態から測定値を算出する演算処理部と、
を有し、
前記演算処理部は、
単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される複数のレベル値を規定し、
前記複数のレベル値の中から前記単位時間におけるレベル値を第1のレベル値として算出し、
前記第1のレベル値に、第2の所定の値を加算して第2のレベル値を算出し、
複数の連続する前記単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として、前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出し、
前記第1の検出値が第1の所定の値以下の場合は、前記第1の検出値を測定値とし、
前記第1の検出値が前記第1の所定の値を超える場合は、前記第2の検出値を測定値とすることを特徴する運動状態検出装置。
【請求項6】
前記第2の所定の値は、前記検出状態の検出回数を基にして定められる値であることを特徴とする請求項5に記載の運動状態検出装置。
【請求項7】
対向配置され、互いの位置関係が固定された一対の電極と、
前記一対の電極間に存在し、前記一対の電極を導通の状態及び非導通の状態のいずれかの状態とする可動する球状の導電体とを含むセンサーと、
前記導通の状態から前記非導通の状態への変化及び前記非導通の状態から前記導通の状態への変化の少なくとも一方を検出状態として検出し、前記検出状態から測定値を算出する演算処理部と、
を有し、
第1の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第1の複数のレベル値を規定し、
前記第1の単位時間において前記第1の複数のレベル値の中から第1のレベル値を算出し、
連続する複数の前記第1の単位時間における複数の前記第1のレベル値の2乗和の値を第1の検出値として算出し、
第2の単位時間における前記導通の状態の時間の占める割合によって決定される第2の複数のレベル値を規定し、
前記第2の単位時間において前記第2の複数のレベル値の中から第2のレベル値を算出し、
連続する複数の前記第2の単位時間における複数の前記第2のレベル値の2乗和の値を第2の検出値として算出し、
前記第1の検出値が所定の値以下の場合は、前記第2の検出値の値と前記第2の検出値の値に対応して定められた定数とを乗算して得た値を測定値とすることを特徴とする運動状態検出装置。
【請求項8】
前記第2の単位時間の長さは、前記第1の単位時間の1/2であることを特徴とする請求項7に記載の運動状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−164047(P2011−164047A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29844(P2010−29844)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】