説明

運搬容器および気体中の不純物の測定方法

【課題】 測定結果が安定して得られ、また不純物の試料への付着のための暴露および試料の取扱作業が簡便な気体の不純物の測定方法およびそれに適した容器の提供。。
【解決手段】 密閉構造を有し、容器内に板状試料を支持するための試料支持部が設けられ、支持される板状試料の垂線方向の容器の一部が、開放可能な蓋を有する板状試料の暴露用および運搬用の容器、および気体中の微量成分を測定したい場所において前記の容器の蓋部を開放または取り外した状態で固体試料を配置して試料を気体に暴露し、試料に微量成分を付着させた後、蓋部を取り付け密閉状態とした後、試料および容器を分析場所まで搬送し、蓋部を開放または取り外して、試料を取り出し、当該試料に付着した不純物を分析することを特徴とする気体中の不純物の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体中の不純物の測定方法、さらにそれに好適な運搬容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や医薬の生産や研究開発においては、出来る限り清浄な雰囲気であることが要求されている。例えば電子部品の生産においては、微細な量の有機物や無機物の製品への混入によって、目的とする製品が得られないという問題が生じる。そこで雰囲気の不純物の定量が重要になってきており、特許文献1では、雰囲気中に固体試料を暴露し、雰囲気中の成分が付着した固体試料の表面をX線光電子分光法によって分析する評価方法が開示されている。さらに固体試料への暴露を固体試料ホルダー上で行い、その後固体試料と固体試料ホルダーとを別に準備した密閉容器に封入し、それを搬送し、分析装置に装着することが開示されている。
【特許文献1】特開2003−57198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような暴露、封入の方法では測定結果にばらつきがでやすいこと、また作業が繁雑という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者らは測定結果のばらつき低減や作業の煩雑さ解決するために、暴露および搬送用の容器の形態に注目し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、容器として
板状試料の暴露用および運搬用の容器であって、密閉構造を有し、容器内に板状試料を支持するための試料支持部が設けられ、支持される板状試料の垂線方向の容器の一部が、開放可能な蓋を有する容器、
底部および底部に設けられた板状試料支持部を有し、蓋部が底部と着脱可能であって試料全体を包含可能なものであることを特徴とする前記の容器、
容器の内部の表面が金属であることを特徴とする前記いずれかの容器、であり
また、気体中の不純物の測定方法として、
気体中の微量成分を測定したい場所において前記いずれかの容器の蓋部を開放または取り外した状態で固体試料を配置して試料を気体に暴露し、試料に微量成分を付着させた後、蓋部を取り付け密閉状態とした後、試料および容器を分析場所まで搬送し、蓋部を開放または取り外して、試料を取り出し、当該試料に付着した不純物を分析することを特徴とする気体中の不純物の測定方法、
測定対象の不純物が有機物である前記不純物の測定方法、
分析方法がガスクロマトグラフィ、ガスクロマトグラフ質量分析法、熱脱着ガスクロマトグラフィ、熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析法、イオンモビリティースペクトル法、高速液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフ質量分析法、イオンクロマトグラフィ、X線光電子分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法、およびフーリエ変換赤外分光法のいずれかである前記いずれかの不純物の測定方法からなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、気体中の微量成分を測定する方法における測定用の試料を簡便な操作で暴露、搬送することができ、測定結果が再現性よく得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜4の各図におけるAは本発明の容器を示す例であり、容器は板状試料を密閉格納している。また図1〜4の各図におけるBは本発明の容器の蓋部を開放し、板状試料を気体に暴露している状態を示すものである。
【0008】
図1のAに示す容器は底部3、底部3の上部に結合した試料支持部4,ならびに蝶番101により周動可能に固定され、下部は離脱可能な固定具102で固定された蓋部2を有する。図1のBに示すがごとく、板状試料の搭載、取り外しおよび気体への暴露の際には固定具102を開放し、蝶番101を軸として蓋部2を周動させ蓋部2を容器1の上部に載置する。
【0009】
図2のAに示す容器は底部3、底部3の上部に結合した試料支持部4,ならびに溝を有する部位103および固定具102で固定された蓋部2を有する。図2Bに示すがごとく、板状試料の搭載、取り外しおよび気体への暴露の際には固定具102を開放し、溝を有する部位102に沿って蓋部2をスライド移動させ蓋部2を容器1から取り外す。
【0010】
図3のAに示す容器は底部3、底部3の上部に結合した試料支持部4,ならびに固定具102で固定された蓋部2を有する。蓋部は板状試料をほぼ覆い尽くすよう底部の無い立体(図では直方体)を有する。図3のBに示すがごとく、固定具を外し蓋部2を容器1から取り外す。
【0011】
図4のAに示す容器は底部3、底部3の上部に結合した試料支持部4,ならびに溝を有する部位103および固定具102で固定された蓋部2を有する。蓋部は板状試料をほぼ覆い尽くすよう底部の無い直方体の形状を有する。板状試料の搭載、取り外しおよび気体への暴露の際には、図3のBに示すがごとく、固定具を外し蓋部2を容器1から取り外す。
【0012】
図1〜4に示す態様の他、板状試料の垂線方向の部位と容器の上部とが蓋部として開放可能な形態としてもよい。
【0013】
図1および図2に示すように蓋部が板状試料の背面に存在しない容器は、気体への暴露において、気体の流れをなるべく作りたくないとき好ましく、一方図3および図4に示すように蓋部が底部が開放された直方体の場合には、板状試料の着脱が容易であるという特徴がある。さらに図3に示すような板状試料を覆う蓋部によれば、蓋部の開放、閉止において、回転手段やスライドさせる機構が容器に必要なく、より不純物の測定結果が安定して得られるという特徴がある。
【0014】
容器から板状試料への汚染を防止するという観点から容器を構成する材料、特に容器の内部の材料にも注目すべきである。有機物を分析の対象とする場合、容器の内部が金属製であることが、好ましく例えばステンレス、アルミニウムが例示される。もちろんプラスチックを主材料として、容器内部への表面部分を金属製としてもよい。また無機物を分析の対象とする場合、容器の内部がプラスチック製であることが好ましく、例えばフッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂などが例示される。特にフッ素系樹脂の使用が好ましい。
【0015】
次に、本発明の容器を用いての気体中の不純物の測定方法について説明する。
【0016】
上述したような容器を準備し、極めて清浄な空気の環境に置く。また不純物を付着させるための板状試料を準備する。板状試料としては、もとから付着している不純物の量が極めて少ないものが好ましく、例えば半導体製造用の半導体ウエハ、詳しくは半導体製造用のシリコンウエハやガラスウエハが好ましく使用される。ウエハのような薄いものに限らず、厚みが大きい板状材料も使用可能である。
【0017】
次に、容器の蓋部を開放し、板状試料を試料支持部に載置し密閉し、気体の不純物を測定する場所へ搬送する。
【0018】
測定目的の場所において、蓋部を開放し、気体中にある不純物を付着させ、所定時間経過後蓋部を閉め、容器を密閉する。不純物が付着する板状試料の試料支持部への取り付け作業があれば、その操作による予想外の不純物付着がおき、分析の結果に影響を及ぼすことになる。本発明の容器を用いた暴露によれば、測定目的の雰囲気での、測定目的の雰囲気において、不純物が付着する板状試料自体の試料支持部への取り付け作業が不要となるため、上述の問題による分析結果への影響が生じない。
【0019】
また本発明の容器では板状試料の垂線方向が、気体の雰囲気に向けて容器の構成材料で遮断されていないので、気体の不純物を効率的に板状試料に付着させることができる。
【0020】
板状試料を暴露し、その後密閉した容器は分析装置のある室内に搬送され、板状試料を取り外し、板状試料の表面にある不純物を定性的又は定量的に分析する。
【0021】
分析手段としては、板状試料表面にある不純物を有機溶剤などで洗浄・回収し、回収液を得て、ガスクロマトグラフィ、またはガスクロマトグラフ質量分析計で測定する方法、板状試料を加熱して付着している不純物を脱離させガスクロマトグラフィで測定(熱脱着ガスクロマトグラフィ)する方法、同様にガスクロマトグラフ質量分析計で測定(熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析)する方法、同様にイオンモビリティースペクトル法で測定する方法、板状試料表面にある不純物を有機溶剤や純水などで洗浄・回収し、回収液を高速液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフ質量分析法、イオンクロマトグラフィで測定する方法、板状試料表面をX線光電子分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法、フーリエ変換赤外分光法で分析する方法、などがあげられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の容器および板状試料を暴露している状態を示す斜視図。
【図2】別の態様の容器および板状試料を暴露している状態を示す斜視図。
【図3】別の態様の容器および板状試料を暴露している状態を示す斜視図。
【図4】別の態様の容器および板状試料を暴露している状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0023】
1:容器
2:蓋部
3:底部
4:試料支持部
5:板状試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状試料の暴露用および運搬用の容器であって、密閉構造を有し、容器内に板状試料を支持するための試料支持部が設けられ、支持される板状試料の垂線方向の容器の一部が、開放可能な蓋を有する容器。
【請求項2】
底部および底部に設けられた板状試料支持部を有し、蓋部が底部と着脱可能であって試料全体を包含可能なものであることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
容器の内部の表面が金属であることを特徴とする請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
気体中の微量成分を測定したい場所において請求項1〜3いずれかの容器の蓋部を開放または取り外した状態で固体試料を配置して試料を気体に暴露し、試料に微量成分を付着させた後、蓋部を取り付け密閉状態とした後、試料および容器を分析場所まで搬送し、蓋部を開放または取り外して、試料を取り出し、当該試料に付着した不純物を分析することを特徴とする気体中の不純物の測定方法。
【請求項5】
測定対象の不純物が有機物である請求項4記載の不純物の測定方法。
【請求項6】
分析方法が、ガスクロマトグラフィ、ガスクロマトグラフ質量分析法、熱脱着ガスクロマトグラフィ、熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析法、イオンモビリティースペクトル法、高速液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフ質量分析法、イオンクロマトグラフィ、X線光電子分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法、およびフーリエ変換赤外分光法のいずれかである請求項4又は5記載の不純物の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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