説明

運転シミュレーション用端末装置、運転シミュレーション実行方法及びそのプログラム

【課題】より臨場感に溢れる運転シミュレーションを実現する端末装置を提供すること。
【解決手段】ゲーム機100は、他者が運転しゲームユーザが同乗する車両の車両データをその車両の車室内で取得する車両データ取得手段10と、その他者の運転データを取得する運転データ取得手段11と、ゲームユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得手段12と、その車両の現在位置データに基づいてその車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得手段13と、車両データと走行コースに関する情報とに基づいてその走行コースを走行する車両の仮想画像を生成する仮想画像生成手段14と、運転データと操作データとに基づいて仮想画像生成手段14が生成した仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御手段15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転シミュレーション用端末装置、運転シミュレーション実行方法及びそのプログラムに関し、特に、他者が運転する車両に同乗するユーザが運転シミュレーションを行うための運転シミュレーション用端末装置、運転シミュレーション実行方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開催中の自動車レースに競技者として仮想的に参加することで、現に行われている自動車レースの状況に応じて仮想的に競技用自動車を運転できるようにするレース仮想参加装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、ユーザが実際に乗り込んだ電車の加速度を検出しながら実際に電車を運転するプロの運転手とユーザの操作結果とを比較し、ユーザによるゲーム上の電車の運転操作とそのプロの運転操作との一致度を採点する電車運転体験ゲーム機能を有する携帯端末装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2003−175278号公報
【特許文献2】特表2002−523156号公報
【特許文献3】特開2008−173138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の装置で実行されるゲームは、ユーザが実際の競技用自動車に搭乗するわけではないので臨場感に欠けるものとなってしまう。また、特許文献3に記載の装置で実行されるゲームは、ユーザが実際に電車に乗り込んだ状態で実行されるものの、実際の電車が出力するデータを取得するものではなく、実際の電車を運転する運転者が競技に参加しているわけではないので、技術を競い合うゲームとしては面白みに欠けるものとなってしまう。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、より臨場感に溢れる運転シミュレーションを実現する端末装置、その運転シミュレーションの実行方法、及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る運転シミュレーション用端末装置は、他者が運転しユーザが同乗する車両の車両データを該車両の車室内で取得する車両データ取得手段と、前記車両の現在位置データに基づいて前記車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得手段と、前記車両を運転する他者の運転データを取得する運転データ取得手段と、ユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得手段と、前記車両データ取得手段が取得する車両データと前記走行コース情報取得手段が取得する走行コースに関する情報とに基づいて該走行コースを走行する前記車両の仮想画像を生成する仮想画像生成手段と、前記運転データ取得手段が取得する運転データと前記操作データ取得手段が取得する操作データとに基づいて前記仮想画像生成手段が生成した前記仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第二の発明に係る運転シミュレーション実行方法は、他者が運転しユーザが同乗する車両の車両データを該車両の車室内で取得する車両データ取得ステップと、前記車両の現在位置データに基づいて前記車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得ステップと、前記車両を運転する他者の運転データを取得する運転データ取得ステップと、ユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得ステップと、前記車両データ取得ステップで取得される車両データと前記走行コース情報取得ステップで取得される走行コースに関する情報とに基づいて該走行コースを走行する前記車両の仮想画像を生成する仮想画像生成ステップと、前記運転データ取得ステップで取得される運転データと前記操作データ取得ステップで取得される操作データとに基づいて前記仮想画像生成ステップで生成された前記仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第三の発明は、運転シミュレーション用端末装置を、他者が運転しユーザが同乗する車両の車両データを該車両の車室内で取得する車両データ取得手段、前記車両の現在位置データに基づいて前記車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得手段、前記車両を運転する他者の運転データを取得する運転データ取得手段、ユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得手段、前記車両データ取得手段が取得する車両データと前記走行コース情報取得手段が取得する走行コースに関する情報とに基づいて該走行コースを走行する前記車両の仮想画像を生成する仮想画像生成手段、及び、前記運転データ取得手段が取得する運転データと前記操作データ取得手段が取得する操作データとに基づいて前記仮想画像生成手段が生成した前記仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御手段、として機能させるためのプログラムである。
【0009】
また、第四の発明は、ゲーム機であることを特徴とする第一の発明に係る運転シミュレーション用端末装置である。
【発明の効果】
【0010】
上述の手段により、本発明は、より臨場感に溢れる運転シミュレーションを実現する端末装置、その運転シミュレーションの実行方法、及びそのプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明に係る運転シミュレーション用端末装置の一例であるゲーム機の構成例を示すブロック図であり、ゲーム機100は、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント製のPSP(登録商標)や任天堂製ニンテンドーDS(登録商標)等のような携帯型のゲーム機であって、制御部1、通信部2、記憶部3、測位部4、入力部5、表示部6、及び音声出力部7を有し、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント製のゲームソフトであるグランツーリスモ(登録商標)のようなレーシングゲームを実行する。
【0013】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、車両データ取得手段10、運転データ取得手段11、操作データ取得手段12、走行コース情報取得手段13、仮想画像生成手段14、及び仮想画像表示態様制御手段15のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0014】
通信部2は、ゲーム機100とゲームユーザの競走相手となる他者が運転する車両であってゲームユーザが同乗する車両(以下、「対象車両」とする。)との間の通信を制御するためのインターフェースであり、例えば、専用ケーブルを用いてその対象車両のCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載LANに接続されるインターフェースである。この場合、対象車両は、その専用ケーブルを受け入れる差し込み口をセンターコンソールに備えるものとする。
【0015】
また、通信部2は、Bluetooth等の無線通信規格により、ゲーム機100と対象車両との間の無線通信を制御するようにしてもよい。
【0016】
記憶部3は、レーシングゲームを実行するために必要な情報を記憶するための装置であり、例えば、ハードディスクデバイスであって、レーシングゲームのソフトウェアプログラム、レースの実況を伝えるための音声データ、走行コースに関する情報を体系的に構成するコース情報データベース30(以下、「コース情報DB30」とする。)、及び、ゲームユーザが視認する仮想車両(対象車両をゲーム画面上に仮想的に表示させたものである。)に関する情報を体系的に構成する車両情報データベース31(以下、「車両情報DB31」とする。)を記憶する。
【0017】
コース情報DB30は、例えば、サーキットコースのカーブ形状、道路勾配、及び路面状態等の数値データ、並びに、サーキットコースの各地点における背景画像データ(実写画像、CG画像の何れであってもよい。)等を体系的に構成するデータベースである。
【0018】
また、車両情報DB31は、例えば、馬力、重量、及び空気抵抗等の各種車両の性能を示す数値データ、並びに、各種車両の前面、背面、側面、上面等の画像データ等を体系的に構成するデータベースである。
【0019】
測位部4は、対象車両及びゲーム機100の位置を測定するための装置であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号を受信し、受信した信号に基づいて現在位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0020】
また、測位部4は、例えば、株式会社エディア製のMAPLUS(登録商標)のようにゲーム機100に接続される携帯型のナビゲーションシステムであってもよく、対象車両に搭載されるカーナビゲーションシステムや路車間通信機(例えば、サーキットのコース脇に所定間隔で設置された磁気ネイル等が発信する情報を受信するための装置である。)であってもよい。なお、対象車両に搭載される装置が出力する情報を用いる場合には、その情報は、通信部2を介してゲーム機100に送信されてもよい。
【0021】
入力部5は、ゲームユーザの入力を受け付けるための装置であり、例えば、ゲーム機100上に搭載される十字キーやプッシュボタンである。
【0022】
また、入力部5は、例えば、助手席に搭載されるフォースフィードバック機能を備えたステアリングコントローラ、アクセルコントローラ、ブレーキコントローラ、シフトコントローラ等であってもよい。なお、これらのコントローラは、好適には、専用ケーブルを介してゲーム機100に接続される。通信部2を介してやり取りされる情報量を過度に増大させないようにするためである。
【0023】
表示部6は、ゲームの内容を表示するための装置であり、例えば、ゲーム機100に搭載される液晶ディスプレイであって、走行コースを走行する仮想車両の背面画像をその走行コースの背景画像と共に表示する。
【0024】
また、表示部6は、車載ディスプレイや車載HUD(Head Up Display)であってもよく、その場合、ゲーム機100が生成した画像データは、専用ケーブルを介して車載ディスプレイや車載HUDに送信されてもよい。
【0025】
音声出力部7は、ゲームの内容を音声出力するための装置であり、例えば、ゲーム機100に内蔵される内蔵スピーカであって、進行するレーシングゲームの実況を伝える音声を出力する。
【0026】
また、音声出力部7は、車載スピーカであってもよく、その場合、ゲーム機100が生成した音声データは、専用ケーブルを介して車載スピーカに送信される。
【0027】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0028】
車両データ取得手段10は、ゲームユーザの競走相手となる他者が運転する対象車両に関するデータを取得するための手段であり、例えば、通信部2を介して、対象車両の車種及び重量等の固定値、並びに、車速、加速度、ヨーレート、ロールレート、ピッチレート、車輪速、横加速度、傾斜角、エンジン回転数、車輪転舵角等の変動値を取得する。
【0029】
運転データ取得手段11は、ゲームユーザの競走相手となる他者が運転する対象車両の運転データを取得するための手段であり、例えば、通信部2を介して、対象車両のアクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、ステアリング操舵角、シフト位置等の運転データを取得する。
【0030】
車両データの取得は、仮想車両の挙動をできるだけ詳細に表示部6で再現できるようにするためのものであり、ゲーム機100は、車両データ取得手段10が取得する車両データに基づいて、仮想車両の傾きやタイヤの滑り具合、排気ガスの排出具合等を表示部6に詳細に描画できるようにする。
【0031】
また、ゲーム機100は、車両データ取得手段10が取得する車両データと運転データ取得手段11が取得する運転データとに基づいて対象車両の性能(例えば、加速性能、アクセルレスポンス、ステアリングレスポンス、ブレーキの効き具合等である。)を詳細に認識することができ、対象車両に対応する仮想車両の性能とゲームユーザが画面上で操作する仮想操作車両の性能とを同等とし(例えば、その競走相手による実際のアクセルペダルの踏み込み量に対する仮想車両の加速度合いと、ゲームユーザによるアクセル操作に対応するプッシュボタンの押し込み量に対する仮想操作車両の加速度合いとを対応させることを意味する。)、ゲームユーザとその競走相手となる他者とが互角の条件の下で競い合えるようにする。
【0032】
操作データ取得手段12は、ゲームユーザが操作する仮想操作車両の操作データを取得するための手段であり、例えば、入力部5を介して、仮想操作車両のアクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、ステアリング操舵角、シフト位置等の操作データ(例えば、アクセルペダルの踏み込み、ブレーキペダルの踏み込み、ステアリングの回転、シフト位置の変更のそれぞれの操作に対応するプッシュボタンや十字キーの操作量である。)を取得する。
【0033】
走行コース情報取得手段13は、対象車両が走行しようとするコースに関する情報を取得するための手段であり、例えば、測位部4が検出する位置情報に基づいてコース情報DB30にある情報の中から対象車両が位置するサーキットコースを特定し、そのサーキットコースに関する詳細な情報(例えば、走行地点に対応する背景画像である。)を取得できるようにする。
【0034】
仮想画像生成手段14は、仮想画像を生成するための手段であり、例えば、車両データ取得手段10が取得した車両データに基づいて車両情報DB31にある情報の中から対象車両に相当する仮想車両の外観に関するデータを取得し、ゲーム中に対象車両の挙動を反映させるための仮想車両画像を生成する。
【0035】
また、仮想画像生成手段14は、走行コース情報取得手段13により、コース情報DB30にある情報の中から対象車両が存在するサーキットコース上の位置に対応する背景画像を取得し、その背景画像を表示部6に表示させる背景画像として採用する。なお、仮想画像生成手段14は、対象車両に搭載される車載カメラが撮像する画像を背景画像として採用してもよい。
【0036】
その後、仮想画像生成手段14は、仮想車両画像を背景画像上に重畳させ、ゲームユーザがその対象車両をその直ぐ後方から見ているような仮想的な画像を生成する。ゲームユーザが操作する仮想操作車両がその対象車両に対応する仮想車両の直ぐ後に追従して走行している様子を表現するためである。この場合、ゲームユーザは、仮想操作車両に搭乗する仮想的なドライバの視点からその他者が運転する対象車両(仮想車両)を眺めながらその仮想操作車両を操作することとなる。なお、その他者が運転する対象車両(仮想車両)の背面画像は、ゲームユーザがその先のコース形状を視認できるよう、半透明画像又は輪郭のみを描いた画像であってもよい。
【0037】
或いは、仮想画像生成手段14は、ゲームユーザが操作する仮想操作車両の画像をその背景画像上に重畳させ、競走相手である他者がその仮想操作車両をその直ぐ後方から見ているような仮想的な画像を生成するようにしてもよい。
【0038】
ゲームユーザが操作する仮想操作車両がその対象車両に対応する仮想車両の直ぐ前を先行して走行している様子を表現するためである。この場合、ゲームユーザは、競走相手である他者の視点から自身が操作する仮想操作車両を眺めながらその仮想操作車両を操作することとなる。なお、その仮想操作車両の背面画像は、ゲームユーザがその先のコース形状を視認できるよう、半透明画像又は輪郭のみを描いた画像であってもよい。
【0039】
仮想画像表示態様制御手段15は、仮想画像の表示態様をゲームユーザの入力に応じて制御するための手段であり、例えば、車両データ取得手段10が取得した車両データと走行コース情報取得手段13が取得したコース情報とに基づいて仮想画像生成手段14が生成した仮想画像を別の視点から見たように再描画する。
【0040】
例えば、仮想画像表示態様制御手段15は、運転データ取得手段11が取得した競走相手である他者の運転データと、操作データ取得手段12が取得したゲームユーザの操作データとを比較し、例えば、アクセルペダル踏み込み量の差、ブレーキペダル踏み込み量の差、ステアリング操舵角の差、又はシフト位置の違いに基づいて、仮想画像の見え方を微調整する。
【0041】
例えば、仮想画像表示態様制御手段15は、ゲームユーザが操作する仮想操作車両が先行する対象車両(仮想車両)から遅れたと判断した場合、仮想車両画像の大きさを低減させて対象車両が遠ざかったことを表現する。
【0042】
また、仮想画像表示態様制御手段15は、ゲームユーザが操作する仮想操作車両が先行する対象車両(仮想車両)の真後ろの位置から僅かに左側に相対移動したと判断した場合、仮想車両画像の表示位置を僅かに右側に相対移動させて対象車両と仮想操作車両との間のコース取りの違いを表現する。
【0043】
なお、このような仮想車両画像の見え方の微調整は、ゲームユーザが操作する仮想操作車両を先行させる状況を表現する場合も同様である。
【0044】
このようにして、ゲーム機100は、対象車両の実際の挙動に応じたその対象車両の仮想的な背面画像を、ゲーム機100の液晶ディスプレイに表示しながら、或いは、HUDによってゲームユーザの前にある対象車両のウインドウシールドに投影しながら、ゲームユーザが操作する仮想操作車両があたかもその対象車両の後に追従して走行しているかのような状況をゲームユーザに視認させることができる。
【0045】
また、ゲーム機100は、対象車両の実際の挙動に応じた仮想操作車両の背面画像を、ゲーム機100の液晶ディスプレイに継続的に表示しながら、或いは、HUDによってゲームユーザの前にあるウインドウシールドに投影しながら、ゲームユーザが操作する仮想操作車両があたかもその対象車両の前を先行して走行しているかのような状況をゲームユーザに視認させることができる。
【0046】
以上の構成により、ゲームユーザは、その競走相手である他者が運転する対象車両の加速、減速、又はカーブ通過等によって生じるGフォースをあたかも自身の運転によるものであるかのように体感しながら、その競争相手との仮想的なレースを楽しむことができる。
【0047】
また、ゲームユーザが操作する仮想操作車両とその競争相手である他者が運転する対象車両に対応する仮想車両とがほとんど連なった状態で拮抗しながら走行している様子を表現するので、ゲームユーザは、対象車両の加速、減速、又はカーブ通過等によって生じるGフォースを違和感なく体感することができる。
【0048】
一方で、その競争相手である他者も、対象車両を実際に運転しながら、音声出力部7が出力するレースの実況を伝える音声によってゲームユーザに対する優劣を確認でき、そのゲームユーザとの仮想的なレースを楽しむことができる。
【0049】
次に、図2を参照しながら、ゲーム機100がレーシングゲームを開始させるときのゲーム開始前準備処理について説明する。なお、図2は、ゲーム開始前準備処理の流れを示すフローチャートであり、ゲーム機100を携帯するゲームユーザがその競争相手である他者(例えば、サーキット走行を指導するプロドライバーである。)が運転する対象車両に搭乗し、専用ケーブルを用いてゲーム機100と対象車両とが接続される場合を想定する。
【0050】
最初に、ゲーム機100の制御部1は、通信部2を介して対象車両から送信されてくる情報の有無に基づいてその対象車両に接続されたか否かを判定する(ステップS1)。
【0051】
接続を確認できた場合(ステップS1のYES)、制御部1は、記憶部3に記憶されたレーシングゲームを起動させ(ステップS2)、走行コースの選択画面を表示させる。
【0052】
接続を確認できない場合(ステップS1のNO)、制御部1は、レーシングゲームを起動させることなく一旦処理を終了させる。接続が確立しない限りゲーム機100は、車両データや運転データを収集することができないからである。
【0053】
走行コース選択画面を表示させる際に、制御部1は、測位部4の出力に基づいて現在位置データを取得し、走行コース情報取得手段13により、記憶部3のコース情報DB30に記憶された複数のサーキットコースに関する情報からその現在位置データに対応するサーキットコースに関する情報を選択し、選択したサーキット名を画面に表示させてゲームユーザの確認入力を求めるようにする。
【0054】
入力部5を介してゲームユーザの確認入力を受けると、ゲーム機100は、そのサーキットコースで仮想的なレースを行うことを決定し(ステップS3)、コース情報DB30からそのサーキットコースに関する情報をRAMに取得するようにする。
【0055】
また、制御部1は、車両データ取得手段10により対象車両から車種、ボディカラー、装備品等に関するデータを取得し(ステップS4)、その対象車両の外観を特定した上で、仮想画像生成手段14によりその対象車両に対応する仮想車両画像を生成する(ステップS5)。
【0056】
このようにして、制御部1は、レーシングゲームを実行する上で必要な基本的なデータを準備し、レーシングゲームを開始可能とする。
【0057】
次に、図3を参照しながら、レーシングゲームの進行中にゲーム機100が行うゲーム進行時更新処理について説明する。なお、図3は、ゲーム進行時更新処理の流れを示すフローチャートであり、ゲーム機100は、この処理を所定周期で繰り返し実行するものとする。
【0058】
最初に、制御部1は、車両データ取得手段10により、対象車両の車速、加速度、ヨーレート、ロールレート、ピッチレート、車輪速、横加速度、傾斜角、エンジン回転数、車輪転舵角等の車両データを取得する(ステップS10)。
【0059】
その後、制御部1は、走行コース情報取得手段13により、測位部4が取得する現在位置データに基づいて、コース情報DB30に記憶されたコース情報から現在位置に対応するコース情報を取得する(ステップS11)。
【0060】
その後、制御部1は、仮想画像生成手段14により、車両データに基づいて仮想車両画像を生成し、且つ、コース情報に基づいて背景画像を生成してその仮想車両画像を背景画像上に重畳させて、ゲームユーザ自身が実際に搭乗する対象車両をその直ぐ後方から見ているような仮想画像を生成する(ステップS12)。このとき、仮想車両画像は、未だ表示部6に表示されていない。ゲームユーザの仮想空間における正確な視点(以下、「ユーザ視点」とする。)が未だ決定されていないためである。
【0061】
その後、制御部1は、運転データ取得手段11により、対象車両を運転する競走相手のアクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、ステアリング操舵角、シフト位置等の運転データを取得し(ステップS13)、且つ、操作データ取得手段12により、ゲームユーザによる、アクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、ステアリング操舵角、シフト位置等のそれぞれに対応する操作量を取得する(ステップS14)。
【0062】
その後、制御部1は、仮想画像表示態様制御手段15により、その競争相手とゲームユーザとの間の各種操作量の差に基づいて、仮想車両画像として表示される対象車両を基準とする仮想操作車両の相対位置を決定し、ユーザ視点を決定する。なお、ユーザ視点は、当初は仮想車両画像の直ぐ真後ろを走行する仮想操作車両に搭乗する仮想ドライバ(ゲームユーザ)の視点位置とされ、その後の操作量の差に応じて累積的且つ継続的に変化する。
【0063】
その後、仮想画像表示態様制御手段15は、仮想画像生成手段14によって生成された仮想画像が上述のように決定されたユーザ視点から見た態様となるように仮想画像をゲーム画面上に描画する(ステップS15)。
【0064】
その後、制御部1は、現時点における仮想車両(対象車両)と仮想操作車両との間の位置関係や仮想操作車両の動きに基づいて、レースの実況(例えば、順位、車間距離、コース取り等に関するものである。)を伝える音声データを音声出力部7から出力させる(ステップS16)。
【0065】
以上の構成により、ゲーム機100は、レーシングゲーム内での競走相手となる他者の運転による対象車両に同乗するゲームユーザが、時間的なずれもなくGフォースを体感できるようにするので、より臨場感に溢れるゲームをゲームユーザに提供することができる。
【0066】
また、ゲーム機100は、音声出力部7を介してゲームユーザが操作する仮想操作車両の位置や動きを競争相手に伝えるので、対象車両を実際に運転する競争相手もレースの臨場感を楽しむことができる。
【0067】
また、ゲーム機100は、対象車両の車室内で対象車両に接続されるので、対象車両の外部にあるゲーム機と対象車両とを無線通信を介して接続するよりも多くのデータをやり取りすることができ、レーシングゲーム内における対象車両に対応する仮想車両をより詳細に描写することができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0069】
例えば、上述の実施例において、ゲーム機100は、仮想車両及び仮想操作車両の何れか一方を後ろから見た仮想画像を表示させるが、双方の車両を上空から見た仮想画像を表示させるようにしてもよい。
【0070】
また、上述の実施例では、運転シミュレーション用端末装置がゲーム機100である場合について説明するが、運転シミュレーション用端末装置は、携帯電話、PDA、又は携帯パソコン等の各種端末装置であってもよく、上述の実施例におけるレーシングゲームは、運転教育を目的としたソフトウェアプログラムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るゲーム機の構成例を示すブロック図である。
【図2】ゲーム開始前準備処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】ゲーム進行時準備処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 制御部
2 通信部
3 記憶部
4 測位部
5 入力部
6 表示部
7 音声出力部
10 車両データ取得手段
11 運転データ取得手段
12 操作データ取得手段
13 走行コース情報取得手段
14 仮想画像生成手段
15 仮想画像表示態様制御手段
30 コース情報データベース
31 車両情報データベース
100 ゲーム機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他者が運転しユーザが同乗する車両の車両データを該車両の車室内で取得する車両データ取得手段と、
前記車両の現在位置データに基づいて前記車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得手段と、
前記車両を運転する他者の運転データを取得する運転データ取得手段と、
ユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得手段と、
前記車両データ取得手段が取得する車両データと前記走行コース情報取得手段が取得する走行コースに関する情報とに基づいて該走行コースを走行する前記車両の仮想画像を生成する仮想画像生成手段と、
前記運転データ取得手段が取得する運転データと前記操作データ取得手段が取得する操作データとに基づいて前記仮想画像生成手段が生成した前記仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御手段と、
を備えることを特徴とする運転シミュレーション用端末装置。
【請求項2】
他者が運転しユーザが同乗する車両の車両データを該車両の車室内で取得する車両データ取得ステップと、
前記車両の現在位置データに基づいて前記車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得ステップと、
前記車両を運転する他者の運転データを取得する運転データ取得ステップと、
ユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得ステップと、
前記車両データ取得ステップで取得される車両データと前記走行コース情報取得ステップで取得される走行コースに関する情報とに基づいて該走行コースを走行する前記車両の仮想画像を生成する仮想画像生成ステップと、
前記運転データ取得ステップで取得される運転データと前記操作データ取得ステップで取得される操作データとに基づいて前記仮想画像生成ステップで生成された前記仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御ステップと、
を備えることを特徴とする運転シミュレーション実行方法。
【請求項3】
運転シミュレーション用端末装置を、
他者が運転しユーザが同乗する車両の車両データを該車両の車室内で取得する車両データ取得手段、
前記車両の現在位置データに基づいて前記車両が走行する走行コースに関する情報を取得する走行コース情報取得手段、
前記車両を運転する他者の運転データを取得する運転データ取得手段、
ユーザが入力する操作データを取得する操作データ取得手段、
前記車両データ取得手段が取得する車両データと前記走行コース情報取得手段が取得する走行コースに関する情報とに基づいて該走行コースを走行する前記車両の仮想画像を生成する仮想画像生成手段、及び、
前記運転データ取得手段が取得する運転データと前記操作データ取得手段が取得する操作データとに基づいて前記仮想画像生成手段が生成した前記仮想画像の表示態様を制御する仮想画像表示態様制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
ゲーム機であることを特徴とする請求項1に記載の運転シミュレーション用端末装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−142300(P2010−142300A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320258(P2008−320258)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】