説明

運転履歴データ管理装置及びこれを用いた運転履歴データ管理システム

【課題】表示クライアントからのデータ検索要求に応じて運転履歴データを検索し、表示クライアントでの表示を開始させるまでの時間を短縮する運転履歴データ管理装置を得る。
【解決手段】運転履歴データ受信部3により発電プラント2から運転履歴データを周期的に受信し、運転履歴データ保存部4により運転履歴データ5として記憶装置に保存し、一方、表示クライアント8から送信されたデータ検索要求をデータ送受信部7により受信すると、データ検索要求処理部6が、受信したデータ検索要求を、複数のデータ検索要求に分割し、この分割された複数のデータ検索要求により順次、運転履歴データ5の検索を行い、分割検索結果が得られるつど、表示クライアント8に送信し、ユーザインタフェース部10により受信のつど、表示させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火力発電、水力発電などのプラントの運転履歴データを管理し、表示クライアントからのデータ検索要求に応じる運転履歴データ管理装置及びこれを用いた運転履歴データ管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転履歴データ管理装置においては、プラントから周期的に送信されてくる運転履歴データを長期間にわたって保存することが主な目的の一つになっている。従来、プラントから運転履歴データ管理装置に送信されてくる運転履歴データの伝送周期は、大規模なプラントの場合には、1分周期ないしは30秒周期程度であったが、近年、運転履歴データを事故解析や予防保全などに活用することを目的として、1〜5秒程度の短い周期の運転履歴データを扱うケースが多くなってきた。それに伴って、運転履歴データ管理装置が扱うデータ量は従来と比較して約10〜60倍に増大している。
【0003】
運転履歴データ管理装置に長期保存された運転履歴データは、表示デバイス、キーボードやマウスを備えた表示クライアント上から参照され、横軸を時間軸として各運転履歴データの時系列的な変化を折れ線グラフで表示するトレンドグラフや、一覧表の形式で各運転履歴データを表示するデータ一覧表示などの形態で利用される。
表示クライアントからは、表示したい運転履歴データを一意に特定する識別子(PID)と期間を指定し、運転履歴データ管理装置にデータ検索要求を送信し、運転履歴データ管理装置は、データ検索要求にしたがって、運転履歴データ管理装置に保存されている運転履歴データから必要な運転履歴データを抽出し、表示クライアントに抽出結果を送信する。
このデータ検索要求は、一般的に複数のPIDを指定し、同一の画面上、例えば1枚のトレンドグラフ上に10本の折れ線グラフを同時に表示させ、関連するデータを同時に確認できるようになっている。
【0004】
さらに近年、複数のプラントを遠隔地にて監視を行う要求に応えるべく、それぞれのプラントに運転履歴データ管理装置を設置し、それら複数の運転履歴データ管理装置と表示クライアントをネットワークで接続することで、複数のプラントの運転履歴データを遠隔地にある表示クライアントに表示できるようになっている。
各プラントに設置された運転履歴データ管理装置と表示クライアントを結ぶネットワークは、プラントの地理的条件などの制約から様々な形態のネットワークで結ばれるが、データ伝送に利用可能な帯域は、数十kbps〜数百Mbpsと大きな開きがある。
以上のような状況を踏まえ、保存したデータに優先度を設けて、必要なデータを効率的に取得できるようにする手法(例えば、特許文献1を参照)、また保存するデータの期間を細分化することで、データ保存処理がデータ検索処理を阻害しないようにする手法(例えば、特許文献2を参照)を採るなどの対策が採られてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−209258号公報(第4〜8頁、図1)
【特許文献2】特開2006−318014号公報(第4〜8頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の運転履歴データ管理装置では、表示クライアントから送信されるデータ検索要求
に対して、データ検索結果をすべてまとめて1回で返信していた。
表示クライアント側では、運転履歴データ管理装置にデータ検索要求を送信してからデータ検索結果が返ってくるまでの間、表示デバイス上にデータを表示させることができない。運転履歴データ管理装置に保存されているデータの収集周期が短い場合には、扱うデータ量が膨大になるため、運転履歴データ管理装置上でのデータ検索処理、および運転履歴データ管理装置から表示クライアントまでのネットワークの伝送処理などに時間を要し、表示デバイス上にデータ検索結果を表示させるまでに時間がかかるという問題があった。
【0007】
また、表示クライアントは、数台〜数十台程度同時に利用され、時間帯によってはデータ検索要求が集中することがあった。運転履歴データ管理装置では、各表示クライアントから送信されてきたデータ検索要求を順番に処理するため、他の表示クライアントのデータ検索要求に対する処理の待ち時間が発生し、データ検索結果を表示させるまでに時間がかかるという問題があった。
また、1台の表示クライアントから、ネットワークで接続された複数の運転履歴データ管理装置に対してデータ検索要求を行った場合、各運転履歴データ管理装置と表示クライアント間のネットワーク接続形態は様々であり、利用可能なデータ伝送帯域にもばらつきがあるため、表示クライアントの表示デバイス上にデータ検索結果を表示させる際には、最もデータ伝送に時間がかかる運転履歴データ管理装置からのデータが到着するまでデータを表示させることができないという問題があった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、表示クライアントからのデータ検索要求に応じて運転履歴データを検索し、表示クライアントでの表示を開始させるまでの時間を短縮する運転履歴データ管理装置及びこれを用いた運転履歴データ管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係わる運転履歴データ管理装置においては、プラントからの運転履歴データを受信する運転履歴データ受信部、この運転履歴データ受信部により受信された運転履歴データを保存する運転履歴データ保存部、表示クライアントからデータ検索要求を受信するとともに、データ検索要求に応じたデータ検索結果を表示クライアントに送信する運転履歴データ管理装置側データ送受信部、この運転履歴データ管理装置側データ送受信部により受信された表示クライアントからのデータ検索要求を、複数のデータ検索要求に分割し、この分割された複数のデータ検索要求により順次保存された運転履歴データの検索を行い、分割検索結果が得られるつど、運転履歴データ管理装置側データ送受信部を介して表示クライアントに送信するデータ検索要求処理部を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、以上説明したように、プラントからの運転履歴データを受信する運転履歴データ受信部、この運転履歴データ受信部により受信された運転履歴データを保存する運転履歴データ保存部、表示クライアントからデータ検索要求を受信するとともに、データ検索要求に応じたデータ検索結果を表示クライアントに送信する運転履歴データ管理装置側データ送受信部、この運転履歴データ管理装置側データ送受信部により受信された表示クライアントからのデータ検索要求を、複数のデータ検索要求に分割し、この分割された複数のデータ検索要求により順次保存された運転履歴データの検索を行い、分割検索結果が得られるつど、運転履歴データ管理装置側データ送受信部を介して表示クライアントに送信するデータ検索要求処理部を備えたので、表示クライアントからのデータ検索要求を受信してから、表示クライアントで検索結果の表示を開始させるまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1、実施の形態3及び実施の形態4による運転履歴データ管理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態2による運転履歴データ管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態3による運転履歴データ管理装置のデータ検索要求分割方法を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態4による運転履歴データ管理装置の運転履歴データの保存方法を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態5による運転履歴データ管理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による運転履歴データ管理装置の構成を示すブロック図である。
図1において、運転履歴データ管理装置1は、発電プラント2から周期的に運転履歴データを受信し、保存しておき、表示クライアント8からのデータ検索要求に基づき、そのデータ検索要求を分割して運転履歴データを検索し、分割して検索された結果の運転履歴データを表示クライアント8に送信し、表示クライアント8では、分割された運転履歴データを受信のつど、表示するようになっている。
運転履歴データ管理装置1は、記憶装置を有するコンピュータによって形成され、次の機能により構成されている。
運転履歴データ受信部3は、発電プラント2から周期的に送信される運転履歴データを受信する。運転履歴データ保存部4は、運転履歴データ受信部3によって受信された運転履歴データを運転履歴データ5として長期間にわたって記憶装置に保存する。この運転履歴データ5は、複数のデータ種別を有し、それぞれデータ種別を示す識別子(PID)を付与している。そして、PIDごとに収集周期を異なるようにしてもよい。
データ送受信部7(運転履歴データ管理装置側データ送受信部)は、表示クライアント8との間でネットワークを介してデータを送受信する。データ検索要求処理部6は、表示クライアント8からのデータ検索要求を、複数のデータ検索要求に分割して、分割されたデータ検索要求単位で、運転履歴データ5のデータ検索を行い、その検索結果をデータ送受信部7経由で、ネットワークを介して表示クライアント8に送信する。この分割は、検索された結果の運転履歴データのデータ量を考慮して行われ、実施の形態1では、収集期間によって行われる。
【0013】
表示クライアント8は、汎用PCなどにより、次のように構成されている。
データ送受信部9(表示クライアント側データ送受信部)は、ネットワークを介して運転履歴データ管理装置1のデータ送受信部7との間でデータの送受信を行う。
ユーザインタフェース部10は、ユーザとのインタフェース画面を形成し、データ検索要求を生成して、データ送受信部9を経由して運転履歴データ管理装置1に送信するとともに、データ検索要求に応じて運転履歴データ管理装置1から分割されて送信される検索結果を受信するたびに、部分的なデータに基づいて表示するようになっている。
【0014】
次に、動作について説明する。
運転履歴データ管理装置1の利用者は、表示クライアント8を操作し、表示クライアント8のユーザインタフェース部10によりデータ検索要求を作成する。このデータ検索要求には、運転履歴データのデータ種別を示すPIDと、検索開始時刻と検索終了時刻(検索期間)と、1分ごとや30分ごとなどの周期などが含まれる。データ検索要求は、表示クライアント8側のデータ送受信部9から運転履歴データ管理装置1側のデータ送受信部
7に送られ、さらにデータ検索要求処理部6に送られる。
データ検索要求処理部6は、表示クライアント8から送られてきたデータ検索要求を複数のデータ検索要求に分割して、運転履歴データ5のデータ検索を行い、分割されたデータ検索要求単位の検索結果で、運転履歴データ管理装置1側のデータ送受信部7、表示クライアント8側のデータ送受信部9を経て、ユーザインタフェース部10に個々に送られる。
【0015】
ユーザインタフェース部10は、表示クライアント8側のデータ送受信部9から分割されたデータ検索結果を受信するたびに、表示可能な部分のデータを表示する。
例えば、表示クライアント8側が、或るPIDを持ち、1秒周期の運転履歴データを10日分取得するデータ検索要求をユーザインタフェース部10から行うケースを考える。
1秒周期の運転履歴データの10日分では、864000個のデータを扱うことになる。従来の方法では、全データ、すなわち864000個のデータをユーザインタフェース部10が受け取ってからデータ表示が行われていた。
これに対し、本実施の形態1では、データ検索要求処理部6が「1秒周期の運転履歴データを10日分」というデータ検索要求を、「1秒周期の運転履歴データを1日分」というデータ検索要求10個分に分割し、この分割されたデータ検索要求単位でデータ検索を行う。10分割されたデータ検索要求の検索結果は、検索のつど、個々に表示クライアント8のユーザインタフェース10に送られ、ユーザインタフェース部10は、1日単位に分割されたデータ検索結果を受信するたびに、画面の表示更新を行う。
このときの表示クライアント8のユーザインタフェース部10による表示は、所定の、または選択されたグラフ形式、あるいは一覧表形式によって行われる。
大量のデータを表示クライアント8上に表示させる場合には、表示エリアのスクロール操作、ページ切り替え操作などの画面操作が伴うが、利用者が画面操作を行い、画面に表示させるのに必要になるまでに、順次送られるデータ検索結果を取得していれば、操作上支障はない。
【0016】
次に、運転履歴データ管理装置1と表示クライアント8の間のネットワーク帯域が十分でない場合を考える。
データ検索要求とデータ検索結果のそれぞれのデータ通信量を比較した場合、一般的にはデータ検索結果の方がデータ量は多くなる。表示クライアント8側のデータ送受信部9から運転履歴データ管理装置1側のデータ送受信部7へのデータ伝送時間は、データ伝送量が小さいため、ネットワークの帯域が十分でないとしても無視できるレベルである。
これに対して、運転履歴データ管理装置1側のデータ送受信部7から表示クライアント8側のデータ送受信部9へのデータ伝送では、かなりのデータ伝送時間が必要になる。
本実施の形態1では、データ検索結果を部分的にも随時表示させることによって、利用者がデータ検索要求を行ってから最初にデータが表示されるまでの時間を大幅に短縮することが可能になる。
【0017】
実施の形態1によれば、運転履歴データ管理装置は、データ検索要求を分割して運転履歴データを検索し、分割された検索結果の運転履歴データを、ネットワークを介して表示クライアントに送信し、表示クライアントは、分割された検索結果を受信のつど、表示するようにしたので、データ検索要求から最初のデータ表示までの時間を短縮することができる。
【0018】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2による運転履歴データ管理装置の構成を示すブロック図である。
図2において、1〜10は図1におけるものと同一のものである。図2では、表示クライアント8は、表示クライアント8a、8bの2台が運転履歴データ管理装置1にそれぞ
れネットワークを介して接続されている。このため運転履歴データ管理装置1は、データ送受信部7をデータ送受信部7a、7bの2つ有している。さらに運転履歴データ管理装置1にスケジューラ11を設け、デーア検索要求処理部6により利用される。スケジューラ11には、データ検索要求処理部6によって、表示クライアント8a、8bからのデータ検索要求が分割されて出力され、これをスケジューラ11が、表示クライアント8a、8bの分割されたデータ検索要求を、表示クライアント8a、8bが交互に取り出せるようにスケジューリングする。
図2の表示クライアント8a、8bは、それぞれデータ送受信部9a、9bとユーザインタフェース部10a、10bを有している。
【0019】
実施の形態1は、運転履歴データ管理装置1に対して、表示クライアント8が1台接続されたケースであった。実施の形態2は、表示クライアント8が2台接続されるケースを考える。
表示クライアント8aと表示クライアント8bから同時にデータ検索要求が行われた場合を考える。各表示クライアント8a、8bからのデータ検索要求は、データ検索要求処理部6で順番に処理される。そのため、データ検索結果を一括で送信する方法を採る場合、ワーストケースでは、通常のデータ検索の2倍の時間がかかることになる。
本実施の形態2のデータ検索要求処理部6は、実施の形態1で実現したデータ検索要求を複数のデータ検索要求に分割する機能を有するのに加え、2台の表示クライアントから同時に行われたデータ検索要求に対して、等しくデータ検索結果を返信するためにスケジューラ11を使用する。
【0020】
データ検索要求処理部6は、表示クライアント8aからデータ検索要求を受け取ると、データ検索要求を複数に分割し、スケジューラ11に登録する。その後、データ検索要求処理部6は、分割したデータ検索要求を、スケジューラ11から1つずつ取り出し、取り出した順番にデータ検索処理を行う。
処理中に別の表示クライアント8bからデータ検索要求があった場合でも、同様にデータ検索要求を分割してスケジューラ11に登録し、スケジューラ11のスケジューリングにより、データ検索要求処理部6がスケジューラ11から分割したデータ検索要求を取り出す際には、表示クライアント8aのデータ検索要求と表示クライアント8bのデータ検索要求とを交互に取り出されるようになっている。
【0021】
実施の形態2によれば、ほぼ同時に2台の表示クライアントからデータ検索要求が行われた場合でも、データ検索結果を一括で送信する場合に比べて、それぞれの表示クライアントで最初にデータが表示されるまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0022】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3による運転履歴データ管理装置のデータ検索要求分割方法を説明する図である。
図3(a)は、実施の形態1でのデータ検索要求分割方法による検索結果を示す図、図3(b)は、実施の形態3でのデータ検索要求分割方法による検索結果を示す図である。図3(a)では、データ検索期間を時系列に等分割されたデータとなっており、図3(b)では、データ検索結果を一定の間隔でサンプリングし、さらにサンプリング開始位置を1つずつずらして(サンプリング開始時刻を順次ずらして)形成された分割データ(分割検索結果)となっている。
【0023】
実施の形態3の構成は、図1と同じであり、図1を援用して説明する。
実施の形態1では、表示クライアント8からのデータ検索要求を複数のデータ検索要求に分割する際、図3(a)のように、データ検索期間を時系列に等分割していた。そのため、データ検索期間の先頭部分の表示はすぐに行われるが、データ検索期間の最後の部分
については、すべてのデータ検索が終了するまでデータを表示することができないという問題があった。
【0024】
本実施の形態3は、実施の形態1とはデータ検索要求処理部6の内部処理が異なっている。実施の形態3のデータ検索要求処理部6では、データ検索要求の分割方法を改良し、データ検索結果を一定の間隔でサンプリングし、さらにサンプリング開始位置を1つずつずらした分割データになるように分割する。具体例を図3(b)に示す。
図3を用いて、データ検索結果が時系列的に並んだデータa1〜a12の計12個で、これらを4分割することを例に挙げる。実施の形態1では、12個のデータを時系列の先頭から順に4等分するため、図3(a)のように、「a1〜a3」、「a4〜a6」、「a7〜a9」、「a10〜a12」のように3個ずつ計4つの伝送ブロックに分割される。
一方、本実施の形態3では、図3(b)のように、先頭のブロックは「a1、a5、a9」のように4個おきにサンプリングした伝送ブロックが作成され、以下、「a2、a6、a10」、「a3、a7、a11」、「a4、a8、a12」というブロックが作成される。
【0025】
プラントの運転履歴データは、もともと連続的に変化する温度や圧力や流量などの様々なプロセス量から作成されているため、時系列的に並んだ3つのデータがあった場合、2番目の値は、1番目の値と3番目の値の間の値になることが多い。
或るプロセス量の時系列的変化を折れ線グラフで表現するとき、すなわち表示クライアント8上で、或るプロセス量をトレンドグラフで表示した場合、一定間隔でサンプリングしたデータでグラフを描画したとしても、プロセス量の時系列的な変化の概略は表現が可能になる。
【0026】
実施の形態3によれば、表示クライアントは、データ検索要求をすれば、分割されたデータを受信するつど表示するが、この表示に当たって、最初に概略のグラフ表示を行い、順次、詳細なグラフ表示を行うようにすることができる。
【0027】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4による運転履歴データ管理装置の運転履歴データの保存方法を説明する図である。
図4(a)は、実施の形態1〜実施の形態3の運転履歴データを示す図、図4(b)は、実施の形態4の運転履歴データを示す図である。図4(a)では、1分周期の運転履歴データ1日分の保存方法として、1分データ60個からなる1時間ごとのファイル24個を形成している。図4(b)では、1分周期の運転履歴データ1日分の保存方法として、1分データ48個からなる30分周期の1日分の運転履歴データのファイルを、1分ずつずらしながら、30個形成している。
【0028】
実施の形態4の構成は、図1と同じであり、図1を援用して説明する。
実施の形態3では、時系列的に順番に並んで保存されている運転履歴データ5をデータ検索要求処理部6にて、一定間隔でサンプリングされたデータ検索結果の分割データを作成していた。この分割データの作成に当たっては、データの並べ替えが必要であり、実施の形態1のような時系列的に分割したデータを作成する場合に比較して複雑な処理が必要になる。
また、同じ条件でデータ検索要求を行った場合でも、その都度、データの並べ替え処理が実行されるため、効率が悪いという問題がある。
実施の形態4は、このため、運転履歴データ5を、予め実施の形態3のような分割方法に対応させて保存しておくようにしたものである。
【0029】
本実施の形態4では、実施の形態1とは、運転履歴データ保存部4の内部処理と運転履歴データ5の内部構造が異なっている。
次に、1分周期の運転履歴データ1日分の保存方法を例にあげて説明する。
実施の形態1における運転履歴データ5の内部構造は、図4(a)のとおりで、運転履歴データ保存部4は、発電プラント2から受信した運転履歴データを運転履歴データ5へ1時間分の1分データ60個を1ファイルとして計24個のファイルに保存する。
図4(a)のように保存されている運転履歴データ5から、実施の形態3のような、一定周期でサンプリングしたデータを作成する場合、例えば30分間隔でサンプリングした分割データを作成しようとする場合、1つの分割データを作成するためには、全24個のファイルをアクセスする必要がある。
【0030】
一方、本実施の形態4では、図4(b)のように、運転履歴データを保存するため、ファイル単位の運連履歴データを取得するだけで、30分間隔のサンプリングデータを得ることができる。すなわち、データ検索要求処理部6の処理時間を短縮することができる。
運転履歴データ保存部4が、運転履歴データ5にデータ保存を行う頻度と、データ検索要求処理部6が運転履歴データ5のデータを参照する頻度を比較すると、圧倒的に後者の頻度が高いため、実施の形態3と比較して、本実施の形態4の方が、速い応答性を実現することができる。
【0031】
実施の形態4によれば、予め所定間隔のサンプリングデータを運転履歴データとして保存しておくことにより、データ検索要求処理部の処理速度を高め、応答の速いデータ表示を行うことができる。
【0032】
実施の形態5.
図5は、この発明の実施の形態5による運転履歴データ管理装置の構成を示すブロック図である。
図5において、1、2、8〜10は、図1におけるものと同一のものである。図5では、表示クライアント8に複数の運転履歴データ管理装置1が接続されている。個々の運転履歴データ管理装置1a、1b、1cが、それぞれ表示クライアント8のデータ送受信部9に接続されている。各運転履歴データ管理装置1a、1b、1cは、また、発電プラント2a、2b、2cにそれぞれ接続され、各別の周期で運転履歴データを収集し、保存している。
【0033】
実施の形態1〜実施の形態4では、いずれも運転履歴データ管理装置1が1台のみ表示クライアント8に接続された構成であったが、本実施の形態5では、同じ外部インタフェース(データ送受信部)を持った複数の運転履歴データ管理装置1a、1b、1cと表示クライアント8が接続された構成であり、複数の運転履歴データ管理装置1a、1b、1cからの運転履歴データを、表示クライアント8の1つの画面に表示する場合についてのものである。
【0034】
各運転履歴データ管理装置1a、1b、1cと表示クライアント8の間は、ネットワークで接続されているが、データ伝送に利用可能な伝送帯域は異なっており、さらに各運転履歴データ管理装置1a、1b、1cの処理能力に差がある場合を考える。
表示クライアント8から各運転履歴データ管理装置1a、1b、1cに対して、データ検索要求を送った場合、表示クライアント8が各運転履歴データ管理装置1a、1b、1cからデータ検索結果を受信するまでの時間は、各運転履歴データ管理装置1a、1b、1c内での処理時間およびネットワークの帯域に大きく依存する。
したがって、表示クライアント8上で複数の運転履歴データ管理装置1a、1b、1cに保存されている運転履歴データ5を同時に表示しようとする場合、すべてのデータ検索結果が表示クライアント8に送信されてくるまでデータ表示を行わない場合には、画面表
示は、最も応答が遅い運転履歴データ管理装置に影響されることになる。
【0035】
本実施の形態5では、表示クライアント8のユーザインタフェース部10が、各運転履歴データ管理装置1a、1b、1cからデータ検索結果が送信されてきたタイミングで、そのつどデータ表示を行うようにした。
こうすることで、利用者がデータ検索要求を行ってから、最初にデータが表示されるまでの時間を大幅に短縮することが可能になる。
また、一部の運転履歴データ管理装置で異常が発生し、データ検索結果を送信できないような状態であっても、その他の運転履歴データ管理装置からのデータを正常に表示させることが可能になる。
【0036】
実施の形態5によれば、処理能力の異なる複数の運転履歴データ管理装置、もしくは各運転履歴データ管理装置と表示クライアント間のデータ伝送に利用可能な帯域が異なるネットワークから構成された場合であっても、複数の運転履歴データ管理装置から送信される運転履歴データを効率よく(最初の表示までの時間を短縮して)表示クライアント上にデータを表示させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 運転履歴データ管理装置
2 発電プラント
3 運転履歴データ受信部
4 運転履歴データ保存部
5 運転履歴データ
6 データ検索要求処理部
7 データ送受信部(運転履歴データ装置側)
8 表示クライアント
9 データ送受信部(表示クライアント側)
10 ユーザインタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントからの運転履歴データを受信する運転履歴データ受信部、
この運転履歴データ受信部により受信された上記運転履歴データを記憶装置に保存する運転履歴データ保存部、
表示クライアントからデータ検索要求を受信するとともに、上記データ検索要求に応じたデータ検索結果を上記表示クライアントに送信する運転履歴データ管理装置側データ送受信部、
この運転履歴データ管理装置側データ送受信部により受信された上記表示クライアントからのデータ検索要求を、複数のデータ検索要求に分割し、この分割された複数のデータ検索要求により順次上記保存された運転履歴データの検索を行い、分割検索結果が得られるつど、上記運転履歴データ管理装置側データ送受信部を介して上記表示クライアントに送信するデータ検索要求処理部を備えたことを特徴とする運転履歴データ管理装置。
【請求項2】
上記データ検索要求処理部は、検索期間によって上記データ検索要求の分割を行うことを特徴とする請求項1記載の運転履歴データ管理装置。
【請求項3】
上記データ検索要求処理部は、上記データ検索要求の分割に当たって、上記分割された複数のデータ検索要求による複数の分割検索結果が、それぞれ一定の間隔でサンプリングされた運転履歴データであり、かつ、各分割検索結果がサンプリング開始時刻を順次ずらして形成されるように、上記データ検索要求の分割を行うことを特徴とする請求項1記載の運転履歴データ管理装置。
【請求項4】
上記運転履歴データ保存部は、上記運転履歴データを、それぞれ一定の間隔でサンプリングされるとともに、サンプリング開始時刻を順次ずらして形成された複数のファイルにして保存し、
上記データ検索要求処理部は、上記運転履歴データ保存部によって保存された上記複数のファイルを読み出すことによって、上記分割検索結果を得ることを特徴とする請求項3記載の運転履歴データ管理装置。
【請求項5】
複数の上記表示クライアントから上記データ検索要求を受信した場合に、上記データ検索要求処理部により、それぞれ分割された上記各表示クライアントの複数のデータ検索要求が入力されるとともに、上記入力された上記データ検索要求を、上記各表示クライアントが順番に1つずつ取り出せるようにスケジューリングするスケジューラを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の運転履歴データ管理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の運転履歴データ管理装置、
この運転履歴データ管理装置とネットワークを介して接続された表示クライアントを備え、
上記表示クライアントは、上記運転履歴データ管理装置に上記データ検索要求を送信するとともに、上記運転履歴データ管理装置から上記データ検索要求に応じたデータ検索結果を受信する表示クライアント側データ送受信部と、
上記運転履歴データ管理装置に送信するデータ検索要求を作成するとともに、上記表示クライアント側データ送受信部によって受信された上記分割検索結果を、受信のつど表示するユーザインタフェース部を有することを特徴とする運転履歴データ管理システム。
【請求項7】
上記表示クライアントは、複数の上記運転履歴データ管理装置とネットワークを介して接続され、上記複数の運転履歴データ管理装置にそれぞれデータ検索要求を送信するとともに、上記ユーザインタフェース部は、上記複数の運転履歴データ管理装置のいずれかから受信した上記分割検索結果を、上記受信のつど表示することを特徴とする請求項6記載
の運転履歴データ管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−22506(P2012−22506A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159646(P2010−159646)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】