説明

運転支援用の通信タグ及び運転支援システム

【課題】通信タグを携帯している歩行者だけでなく、通信タグを携帯していない歩行者についても、その存在を運転者に知らせることができるようにした運転支援用の通信タグ及び運転支援システムを提供する。
【解決手段】短距離無線通信部11と、GPSモジュール15と、携帯端末検出部53と、中距離無線通信部13と、を備える。短距離無線通信部11は、例えばBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信で通信する。GPSモジュール15は、通信タグの位置情報を取得する。携帯端末検出部53は、短距離無線通信で通信可能な携帯端末を、短距離無線通信部11を介して検出する。中距離無線通信部13は、GPSモジュール15によって取得された通信タグ10の位置情報と、携帯端末検出部53によって検出されたHMI端末30b〜30dに関する情報とを、短距離無線通信よりも通信距離が長い中距離無線通信(タグ通信)で送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信タグの周囲で携帯端末が検出された場合に、この検出された携帯端末の存在を車両に通知する運転支援用の通信タグ及び運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術では、歩行者は接近警告装置を携帯すると共に、車両にはデータキャリアが取り付けられている。接近警告装置とデータキャリアは、RFID(Radio Frequency IDentification)により通信することが可能である。歩行者が道路を通行している間、この歩行者が携帯する接近警告装置は質問電波を所定のゾーン(範囲)に送出する。このゾーンを車両が入るとデータキャリアは質問電波を受信し、この質問電波に対する応答電波を返信する。接近警告装置は、この応答電波を受信することにより、車両の接近を検出して歩行者へ通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−173499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来技術では、歩行者が携帯する接近警告装置と車両との間でRFIDによる無線通信が行われる。このため、接近警告装置を携帯している歩行者と車両との間が離れている場合でも、この歩行者の存在をRFIDによる無線通信で車両の運転者に知らせることができる。しかしながら、接近警告装置(以下、通信タグともいう。)を携帯していない歩行者については、その存在を無線通信で運転者に知らせることはできないという課題があった。
【0005】
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、通信タグを携帯している歩行者だけでなく、通信タグを携帯していない歩行者についても、その存在を運転者に知らせることができるようにした運転支援用の通信タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、携帯端末検出手段と、第2の無線通信手段と、を備える。携帯端末検出手段は、第1の無線通信方式で通信可能な携帯端末を検出する。第2の無線通信手段は、当該通信タグの位置情報と、携帯端末検出手段によって検出された携帯端末に関する情報とを、第1の無線通信方式よりも通信距離が長い第2の無線通信方式で送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の無線通信方式で通信可能な携帯端末が通信タグの周囲で検出された場合には、この携帯端末の存在を、通信タグの周囲から遠く離れた位置に存在する(例えば、通信タグから数十〜数百メーター程度離れた位置を走行している)車両に第2の無線通信方式で通知することができる。車両は、この通知される情報に基づいて、通信タグの周囲に携帯端末が存在することを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る運転支援システム100の構成例を示す概要図である。
【図2】通信タグ10の構成例を示す図である。
【図3】制御部50の構成例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る通信タグ10の処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る通信タグ10のステップ(S)15の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る通信タグ10のステップ(S)17の処理内容を示すフローチャートである。
【図7】車両3と歩行者1aとの位置関係の一例を示す図である。
【図8】中距離無線通信の送信周期Ts1、Ts2及び受信周期Tr1、Tr2の一例を示す図である。
【図9】車両3に搭載されているモニター画面7の一例を示す図である。
【図10】HMI端末30の一例を示す図である。
【図11】運転支援システム100であって、通信タグ10の短距離無線通信エリア内に同一型タグ20が存在する場合を示す概要図である。
【図12】第2実施形態に係る制御部150の構成例を示す図である。
【図13】第2実施形態に係る通信タグ10のステップ(S)15の処理内容を示すフローチャートである。
【図14】通信タグ10における中距離無線通信の送信周期Ts1、Ts4と受信周期Tr1、Tr4の一例及び、同一型タグ20における中距離無線通信の送信周期Ts´4と受信周期Tr´4の一例を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る通信タグ10の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、第1実施形態に係る運転支援システム100の構成例を示す概要図である。この運転支援システム100は、少なくとも通信タグ10を携帯している歩行者1aの存在を車両3の運転者に通知するためのシステムである。この運転支援システム100は、例えば、通信タグ10と、通信タグ10とペアリングされている(即ち、接続設定されている)HMI(Human Machine Interface)端末30aと、車載送受信機5とを備える。HMI端末30aは、例えば、表示機能を有する携帯電話などの携帯端末である。
【0010】
図1では、歩行者1aが携帯している通信タグ10と、この通信タグ10とペアリングされているHMI端末30aとを携帯している場合を例示している。この例では、歩行者1aの周囲に他の歩行者1b〜1dが存在する。これらの歩行者1b〜1dは、例えば、HMI端末30b〜30dをそれぞれ携帯している。また、図1では、歩行者1aから百メートル〜数百メートル離れた場所を車両3が走行している場合を例示している。車両3には、車載送受信機5などが搭載されている。まず、通信タグ10の構成例について説明する。
【0011】
図2は、通信タグ10の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、この通信タグ10は、端末間短距離無線通信部(以下、短距離無線通信部という。)11と、中距離無線通信部(即ち、タグ通信部)13と、GPS(Global Positioning System)モジュール15と、制御部50と、記憶部17と、カウント部19と、電源制御回路21と、バッテリー23と、充放電制御回路25と、インジケータ27と、メイン電源スイッチ29と、を有する。
【0012】
短距離無線通信部11は、例えばBluetooth、Zigbeeなどの端末間短距離無線通信方式(以下、短距離無線通信という。)でデータの送受信を行う。短距離無線通信部11には、アンテナ12が接続されている。短距離無線通信部11の通信可能な範囲(即ち、通信距離)は、例えば、数メートル〜数十メートルである。この短距離無線通信部11は、例えばHMI端末30a〜30dとBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信で接続することができる。
【0013】
中距離無線通信部13は、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)などの中距離無線通信方式(以下、中距離無線通信という。)でデータの送受信を行う。中距離無線通信はタグ通信ともいう。中距離無線通信部13には、アンテナ14が接続されている。この中距離無線通信部13の通信距離は、例えば、百メートル〜数百メートルである。中距離無線通信部13は、例えば車両3に搭載されている車載送受信機5と中距離無線通信で接続することができる。
【0014】
上記の短距離無線通信部11及び中距離無線通信部13は、データの送受信に要する電力は誘導起電力ではなく、バッテリー23から得る。これにより、短距離無線通信部11及び中距離無線通信部13は、外部の磁界環境に依存することなく、安定してデータの送受信を行うことができる。また、中距離無線通信部13は、バッテリーから電力の供給を受けることにより、百メートル〜数百メートルという、タグ通信の中では比較的に中〜長距離の通信距離を実現することができる。なお、中距離無線通信部13による中距離無線通信は、短距離無線通信部11による短距離無線通信と比較して通信距離が長い。このため、中距離無線通信部13は、短距離無線通信部11と比較して通信処理に多くのエネルギー(電力)を消費する。
【0015】
GPSモジュール15は、衛星測位システムを利用して自己の現在位置を定期的に検出する。また、GPSモジュール15は、自己が移動している場合は、その移動速度や、移動方向も定期的に検出する。このGPSモジュール15にはアンテナ16が接続されており、衛星から送信されてくる信号を受信する。
制御部50は、短距離無線通信部11、中距離無線通信部13、GPSモジュール15、記憶部17、カウント部19、インジケータ27、電源制御回路21、充放電制御回路25にそれぞれ接続されている。制御部50は、短距離無線通信部11、中距離無線通信部13、GPSモジュール15、充放電制御回路25などから各種の情報を取得する。そして、この取得した情報に基づいて、制御部50は各種の処理を実行する。この各種の処理を実行するために、制御部50は、図3に示すように、例えば、移動状態検出部51と、携帯端末検出部53と、送信周期調整部55と、受信周期調整部57と、車両検出部59と、車両接近判定部61と、情報提供部63と、を有する。制御部50は、例えばCPUなどのロジック回路で構成されている。
【0016】
記憶部17は、制御部50が取得した情報を記憶(格納)する。記憶部17は、例えばフラッシュメモリなどで構成されている。カウント部19は、時間を計測する。カウント部19は、例えば、フリップフロップを多段に接続した回路で構成されている。
電源制御回路21は、短距離無線通信部11や中距離無線通信部13、GPSモジュール15に電力を供給する。バッテリー23は、通信タグ10の電源である。このバッテリー23は、充放電制御回路25を介して外部電源から充電される。充放電制御回路25は、バッテリー23の蓄電量(電圧)を予め設定された上限値と下限値との間に維持し、その過充電や過放電を防止する。インジケータ27は、自己の通信状態やバッテリーの残量を外部に表示する。メイン電源スイッチ29は、歩行者(ユーザー)の操作により、オン、オフされるスイッチである。このメイン電源スイッチ29をオンにすることにより、充放電制御回路25が動作し、バッテリー23から電源制御回路21に所定の電力が供給される。
【0017】
次に、第1実施形態に係る通信タグ10の処理を、図4〜図6を参照して説明する。
図4は、第1実施形態に係る通信タグ10の処理を示すフローチャート(メインルーチン)である。ここでは、通信タグ10が実行する処理を説明する。
図4のステップ(S)11では、GPSモジュール15が、衛星から送信されてくる信号に基づいて自己の現在位置を取得する。また、GPSモジュール15は、自己が移動している場合(即ち、現在位置が時間と共に変化する場合)には、現在位置と共に、移動速度及び移動方向を取得する。ステップ(S)12では、ステップ(S)11で測定された位置に関する情報(即ち、GPS情報)がGPSモジュール15から出力される。出力されたGPS情報は記憶部17に格納される。
【0018】
ステップ(S)13では、図3に示した移動状態検出部51が、記憶部17に格納されているGPS情報を読み出す。そして、移動状態検出部51は、この読み出したGPS情報に基づいて、予め設定された時間(例えば、1分)当たりの移動量を算出する。
ステップ(S)14では、移動状態検出部51は、この算出された移動量に基づいて、通信タグ10を携帯している歩行者1aが歩行状態にあるか否かを判定する。一例を挙げると、移動状態検出部51は、ステップ(S)13で算出された移動量が毎分20メートル〜200メートルの範囲内である場合は、歩行状態と判定する。また、移動状態検出部51は、ステップ(S)13で算出された移動量が毎分20メートル〜200メートルの範囲外である場合には、歩行状態でない(即ち、非歩行状態)と判定する。
【0019】
ステップ(S)14で歩行状態と判定された場合はステップ(S)15へ進む。ステップ(S)14で非歩行状態と判定された場合はステップ(S)19へ進む。ステップ(S)15では、短距離無線通信部11を介した携帯端末の検索と、この検索結果に基づく中距離無線通信の設定処理が行われる。一方、ステップ(S)19では、中距離無線通信部13は動作、即ち、通信処理(送信処理と受信処理)を停止する。
【0020】
図5は、ステップ(S)15の処理内容を示すフローチャート(サブルーチン)である。図5のステップ(S)31では、カウント部19が時間の計測をゼロ(0)から開始する。ステップ(S)32では、短距離無線通信部11は、例えばBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信を開始する。ステップ(S)33では、携帯端末検出部53が、短距離無線通信部11を介して携帯端末を検索する。即ち、携帯端末検出部53の制御下で、短距離無線通信部11は、携帯端末から送信されてくる短距離無線通信の受信を試みる。
【0021】
一例を挙げると、通信タグ10を中心に半径数メートルから数十メートルの範囲内に、HMI端末30a〜30dが存在する場合には、これらのHMI端末30a〜30dから送信されてくるBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信が通信タグ10の短距離無線通信部11で受信される。
ステップ(S)34では、携帯端末検出部53が、ペアリングされているHMI端末30a以外の他の携帯端末の有無を判定する。一例を挙げると、携帯端末検出部53は、HMI端末30bから送信されてくる短距離無線通信が予め設定された時間(例えば、1分)の間受信された場合に、他の携帯端末が周囲に存在すると判定する。また、携帯端末検出部53は、HMI端末30a以外の他の携帯端末から送信されてくる短距離無線通信が受信されない、又は、受信される場合でもその期間が予め設定された時間(例えば、1分)よりも短い場合には、他の携帯端末は周囲に存在しないと判定する。
【0022】
他の携帯端末が周囲に存在すると判定された場合はステップ(S)35へ進み、存在しないと判定された場合はステップ(S)38へ進む。なお、他の携帯端末が存在すると判定された場合は、検出された携帯端末の個数(即ち、検出個数)に関する情報が記憶部17に格納される。一例を挙げると、携帯端末検出部53がHMI端末30a〜30dを検出した場合には、検出個数n=4が記憶部17に格納される。
【0023】
ステップ(S)35では、ステップ(S)33での検出結果に基づいて、制御部50が中距離無線通信の通信周期(即ち、送信周期及び受信周期)を調整する。この調整は下記のように行われる。
送信周期調整部55は、記憶部17から検出個数に関する情報を読み出す。そして、送信周期調整部55は、この読み出した情報に基づいて、中距離無線通信部13による中距離無線通信の送信周期を調整する。この調整は、例えば下記の式(1)に基づいて行うことができる。
Ts1/n≦Ts2≦Ts1…(1)
Ts1は他の携帯端末が検出されかった場合(以下、通常時ともいう)の送信周期、Ts2は他の携帯端末が検出された場合の調整後の送信周期、nは検出された携帯端末の個数である。この例では、携帯端末検出部53によって、他の携帯端末を含むHMI端末30a〜30dが検出され、n=4であるから、送信周期Ts2はTs1の1倍〜1/4倍の範囲で調整される(後述の図8(a)及び(b)を参照)。
【0024】
また、このステップ(S)35では、受信周期調整部57が、中距離無線通信部13による中距離無線通信の受信周期も調整する。即ち、受信周期調整部57は、記憶部17から検出個数に関する情報を読み出す。そして、受信周期調整部57は、この読み出した情報に基づいて、中距離無線通信部13による中距離無線通信の受信周期を調整する。この調整は、例えば下記の式(2)に基づいて行うことができる。
Tr1/n≦Tr2≦Tr1…(2)
Tr1は通常時の受信周期、Tr2は他の携帯端末が検出された場合の調整後の受信周期である。この例ではn=4であるから、受信周期Tr2はTr1の1倍〜1/4倍の範囲で調整される(後述の図8(a)及び(b)を参照)。
【0025】
ステップ(S)36では、中距離無線通信部13は、調整後の通信周期Ts2、Tr2で中距離無線通信を開始する。ステップ(S)37では、カウント部19が時間の計測を停止する。カウント部19のカウント値はゼロに戻される。ステップ(S)37の後は、図4へ戻る。なお、ステップ(S)38では、中距離無線通信部13は、通常時の通信周期Ts1、Tr1で中距離無線通信を開始する。
【0026】
図4のステップ(S)16では、中距離無線通信部13は、ステップ(S)15で設定された送信周期Ts1で、GPSモジュール15により取得された最新のGPS情報と、自己のID情報と、検出された携帯端末の個数(即ち、検出個数)に関する情報とを送信する。この例では、検出個数に関する情報として、n=4が送信される。これらの情報は、中距離無線通信部13での通信可能な範囲内を走行している車両3の車載送受信機5で受信することができる。
【0027】
ステップ(S)17では、中距離無線通信部13での受信処理と、短距離無線通信部11での送受信処理が行われる。
図6は、ステップ(S)17の処理内容を示すフローチャート(サブルーチン)である。図6のステップ(S)51では、車両検出部59が、中距離無線通信部13を介して車両3のID情報及び、車両3のGPS情報(即ち、車両3に搭載されているGPSモジュールにより測位された、車両3の位置情報)を受信したか否かを判定する。車両3のID情報及びGPS情報を受信したと判定された場合はステップ(S)52へ進み、受信していないと判定された場合はステップ(S)56へ進む。なお、車両3のID情報及びGPS情報を受信したと判定された場合は、それらの情報は記憶部17に格納される。
【0028】
ステップ(S)52では、車両接近判定部61が、通信タグ10(自己)のGPS情報と車両3のGPS情報とから、車両3が自己に接近中か否かを判定する。車両3が自己に接近中であると判定した場合はステップ(S)53へ進み、接近中でないと判定した場合はステップ(S)56へ進む。
ステップ(S)53では、車両接近判定部61が、車両3が自己に到達するまでの到達予想時間が、予め設定された時間(例えば、10秒)以下であるか否かを判定する。或いは、車両接近判定部61は、車両と自己との間の距離が、予め設定された距離(例えば、100メートル)以下であるか否かを判定する。
【0029】
図7は、車両3と歩行者1aとの位置関係の一例を示す図である。図7では、例えば、歩行者1aが携帯している通信タグ10の短距離無線通信エリアの半径をrとする。また、通信タグ10と車両3との間の距離をLとする。距離Lは、通信タグ10のGPS座標(即ち、GPSモジュール15により測位された座標位置)と、車両3のGGPS座標(即ち、車両3に搭載されているGPSモジュールにより測位された座標位置)との距離である。さらに、距離Lの方向(即ち、歩行者1aに向かう方向)における車両3の時速をVとする。このとき、車両3が歩行者1aのもとに到達するまでの到達予想時間tは、例えば下記の式(3)で示される。
(L−r)/V≦t≦(L+r)/V…(3)
上記の時間t、又は距離Lが、例えば10秒又は100メートル以下であると判定された場合はステップ(S)54へ進み、10秒又は100メートルを超えた値であると判定された場合はステップ(S)56へ進む。
【0030】
ステップ(S)54では、情報提供部63が、短距離無線通信部11を介して、通信タグ10の短距離無線通信エリア内に存在する、HMI端末30a以外の他の携帯端末に車両3の接近情報を提供する。例えば、この短距離無線通信エリア内にHMI端末30bが存在する場合は、このHMI端末30bは車両3の接近情報をBluetooth、Zigbeeなどで受信する。
【0031】
また、このステップ(S)54と前後して、或いは並行してステップ(S)55の処理が行われる。ステップ(S)55では、情報提供部63が、短距離無線通信部11を介して、通信タグ10とペアリングされているHMI端末30aに車両3の接近情報を提供する。即ち、通信タグ10は、ペアリングしているHMI端末30aを通して、歩行者1aに車両3の接近を通知する。ステップ(S)54、55の後は、図4へ戻る。
【0032】
図4のステップ(S)18では、メイン電源スイッチ29のオン、オフが判断される。
メイン電源スイッチ29がオンのまま維持される場合はステップ(S)11へ戻る。また、歩行者1aの操作等により、メイン電源スイッチ29がオフにされる場合は、図4に示した通信タグ10の処理を終了する。
図8(a)及び(b)は、中距離無線通信の送信周期Ts1、Ts2及び受信周期Tr1、Tr2の一例を示す図である。図8(a)及び(b)に示すように、中距離無線通信の送信周期がTs2の場合は、Ts1の場合よりも、時間当たりの送信モードの実行回数を増やすことができる。これにより、中距離無線通信部13は、より小まめに更新された情報を送信することが可能となる。
【0033】
(動作)
次に、第1実施形態の動作例について説明する。ここでは、動作例を分かり易く説明するために、図1に示した場合を想定する。即ち、歩行者1aは、通信タグ10とHMI端末30aとを携帯している。また、歩行者1aの周囲に他の歩行者1b〜1dが存在する。歩行者1b〜1dはHMI端末30b〜30dをそれぞれ携帯している。さらに、車載送受信機5を搭載した車両3が、歩行者1a〜1dから百メートル〜数百メートル離れた場所を走行している場合を想定する。
【0034】
まず、通信タグ10のGPSモジュール15は、自己の現在位置を一定の時間をおいて繰り返し取得する。この現在位置に関する情報は、記憶部17を介して制御部50に読み出される。制御部50は、この読み出した情報に基づいて、自己の移動状態が歩行状態に相当するか否かを判定する。
自己の移動状態が歩行状態に相当するとき、制御部50は、短距離無線通信部11を介して、携帯端末の検索を一定の時間を置いて繰り返し行う。この検索により、通信タグ10とペアリングされているHMI端末30a以外の、他の携帯端末を検出したときには、中距離無線通信部13による中距離無線通信の送信周期及び受信周期の調整を行う。
【0035】
例えば、検出された携帯端末がHMI端末30a〜30dの場合は、他の携帯端末を検出した場合であり、検出された携帯端末の個数(即ち、検出個数)は、n=4個である。この場合は、図8(a)及び(b)に示したように、中距離無線通信の送信周期及び受信周期をそれぞれTs2及びTr2に変更(調整)する。なお、中距離無線通信部13において、少なくとも送信モードの長さ(即ち、1回当たりの送信時間)は、調整の前後でそれぞれ同じ値に維持されるものとする。また、受信モードの長さは送信モードの長さよりも十分に長いため、調整後の受信モードの長さ(即ち、1回当たりの受信時間)は調整前と比べて短く設定してもよい。例えば、図8(b)に示した調整後の受信モードの長さは、図8(a)に示した調整前の受信モードの長さの1/2倍に設定されている。
【0036】
このように、中距離無線通信の通信周期が調整された後で、中距離無線通信部13は、通信タグ10(自己)のID情報とGPS情報、及び、携帯端末の検出個数に関する情報を送信する。送信された通信タグ10のID情報とGPS情報は、車両3の搭載されている車載送受信機5で受信される。
図9は、車両3に搭載されているモニター画面7の一例を示す図である。図9に示すモニター画面7は、例えば、車両3に搭載されているカーナビゲーションシステムの一部であり、マップと共に歩行者1aの位置と、歩行者1a〜1dの人数を表示する。この例では、車載送受信機5は、携帯端末の検出個数に関する情報として、n=4を受信している。このため、モニター画面7には、歩行者1aの位置と併せて、歩行者1a〜1dの人数(4名)が表示される。
【0037】
また、このカーナビゲーションシステムは、モニター画面7での表示と併せて(或いは、モニター画面7での表示とは別に)、歩行者の存在をスピーカーから音声で運転者に通知してもよい。通知内容は、例えば、車両3が歩行者1aに到達するまでの到達予測時間、歩行者1aと車両3との間の距離、及び、歩行者の人数などが挙げられる。これにより、車両3の運転者は、車両3の進行方向(例えば、直進の場合や直進方向、右折の場合は右折方向、左折の場合は左折方向など。)に歩行者1aが存在することを知ることができる。また、車両3の運転者は、歩行者1aの周囲に他の歩行者1b〜1dが存在する場合(即ち、通信タグ10がHMI端末30b〜30dを検出した場合)は、それらの存在と歩行者の人数を知ることができる。
【0038】
一方で、中距離無線通信部13は、車載送受信機5から送信されてくる車両3のID情報と、車両3のGPS情報とを取得する。制御部50は、この車両3のGPS情報と、自己のGPS情報とに基づいて、車両3が自己に接近中か否かを判断する。
車両3が接近中の場合は、さらに車両3が自己に到達するまでの到達予想時間(又は、車両3と自己との間の距離)を算出する。この時間(又は、距離)が予め設定された値以下の場合には、制御部50が短距離無線通信部11を介して、HMI端末30b〜30dに車両3の接近情報を送信する。HMI端末30b〜30dを携帯している歩行者1b〜1dは、HMI端末30b〜30dを通して、車両3の接近を知ることができる。
【0039】
また、これと前後して、或いは並行して、制御部50は、短距離無線通信部11を介して、通信タグ10とペアリングされているHMI端末30aに車両3の接近情報を通知する。即ち、通信タグ10は、ペアリングしているHMI端末30aを通して、歩行者1aに車両3の接近を通知する。通知内容は、例えば、車両3が歩行者1aに到達するまでの到達予測時間、歩行者1aと車両3との間の距離などが挙げられる。通信タグ10のHMI端末30b〜30dに対する通知内容と、HMI端末30aに対する通知内容は同一であってもよいし、その一部が異なっていてもよい。
【0040】
図10は、HMI端末30の一例を示す図である。図10に示すように、HMI端末30(30a〜30d)は、車両3がどの方向から接近してくるかを画面に表示してもよい。さらに、HMI端末30は、車両3の接近に応じて、内蔵スピーカーからブザーを鳴らしたり、端末自体を振動させたり、LED(light emitting diode)等のインジケータを点滅させたりしてもよい。この場合、HMI端末30は、車両3との距離や到達予想時間に応じて、音量を徐々に高めたり、徐々に強く振動したり、点滅の間隔を徐々に短くしたりしてもよい。これにより、歩行者1aは、かりに車両3が後方から近づいてくるような場合でも、HMI端末30aを介して車両3の接近を知ることができる。
【0041】
この第1実施形態及び、後述の第2、第3実施形態では、短距離無線通信が第1の無線通信方式に対応し、短距離無線通信部11が第1の無線通信手段に対応している。GPSモジュール15が位置情報取得手段に対応している。中距離無線通信が第2の無線通信方式に対応し、中距離無線通信部13が第2の無線通信手段に対応している。携帯端末検出部53が携帯端末検出手段に対応している。送信周期調整部55が送信周期調整手段に対応している。車両検出部59が車両検出手段に対応している。車両接近判定部61が車両接近判定手段に対応している。また、車載送受信機5が車載機器の受信手段に対応している。モニター画面7が車載機器の表示手段に対応している。
【0042】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態は、次のような効果を奏する。
(1)通信タグ10は、自己のID情報、GPS情報を遠く離れた位置に存在する(例えば、通信タグ10から数十〜数百メーター程度離れた位置を走行している)車両3に通知する。また、通信タグ10は、ペアリングしているHMI端末30a以外の他の携帯端末(例えば、HMI端末30b〜30d)を検出した場合は、検出された他の携帯端末に関する情報も車両3に通知する(ステップ(S)16)。車両3は、この通知される情報に基づいて、通信タグ10の周囲に携帯端末が存在するか否かを知ることが可能となる。これにより、例えば、車両3の運転者は、通信タグ10を携帯している歩行者1aだけでなく、通信タグ10を携帯していない他の歩行者1b〜1dについても、その存在を知ることができる。
【0043】
(2)中距離無線通信部13は、携帯端末に関する情報として、検出された携帯端末の個数(即ち、検出個数)に関する情報を送信する。例えば、携帯端末検出部53がHMI端末30a〜30dを検出した場合、中距離無線通信部13は、HMI端末の検出個数n=4を、通信タグ10のID情報及びGPS情報と併せて送信する(ステップ(S)16)。車載送受信機5は、この送信されてきた情報を受信することができる。これにより、車両3の運転者は、歩行者1aの周囲に他の歩行者1b〜1dが存在すること、及び、歩行者1a〜1dの人数を知ることができる。
(3)送信周期調整部55は、携帯端末の検出結果に基づいて、中距離無線通信の送信周期を調整する。例えば、携帯端末の検出個数が予め設定された個数以上の場合に、中距離無線通信の送信周期を通常のts1から、より短いts2に変更する(ステップ(S)35)。これにより、当該通信タグ10の周囲に携帯端末が多く存在する場合は、検出個数に関する最新情報を通常よりも更新の頻度を高めて、車両に通知することができる。
【0044】
(4)移動状態検出部51は、GPSモジュール15によって取得された自己のGPS情報に基づいて、自己の移動状態を検出する(ステップ(S)13、14)。中距離無線通信部13は、検出された自己の移動状態が歩行状態に相当しない場合は動作を停止する(ステップ(S)19)。つまり、通信タグ10は、歩行者が歩行していないと推測されるときは、中距離無線通信による通信処理を停止する。これにより、バッテリーの消費を抑えることができる。
(5)中距離無線通信部13は、中距離無線通信を停止した後で、自己の移動状態が歩行状態に相当するようになった場合は、中距離無線通信を開始する(ステップ(S)14)。つまり、通信タグ10は、歩行者が歩行を再開したと推測されるときは、中距離無線通信を再開する。これにより、通信タグ10は、車両3の運転者に対して歩行者1a等の存在を再び通知することが可能となる。
【0045】
(6)中距離無線通信部13は、例えば、百メートル〜数百メートル先を走行している車両3のID情報、GPS情報を取得する(ステップ(S)51)。車両検出部59は、この車両3のGPS情報と自己のGPS情報とに基づいて、車両3が自己に接近しているか否かを判定する(ステップ(S)52)。そして、車両3が接近していると判定された場合に、短距離無線通信部11は、車両3の接近情報をBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信で送信する(ステップ(S)54、55)。これにより、例えば、通信タグ10を携帯している歩行者1aだけでなく、通信タグ10を携帯していない歩行者1b〜1dにも、HMI端末30b〜30dを介して車両3の接近を知らせることができる。
【0046】
(変形例)
(1)上記の第1実施形態では、中距離無線通信部13は、検出された携帯端末に関する情報として、HMI端末30a〜30dの検出個数に関する情報を送信する場合を例示した。しかしながら、上記の第1実施形態及び、後述の各実施形態において、通信タグが送信する上記情報は、検出個数に関する情報に限定されるものではない。
例えば、通信タグ10は、上記情報として、検出されたHMI端末30b〜30dと当該通信タグ10(自己)との間の距離情報を送信してもよい。即ち、通信タグ10は、自己のID情報及びGPS情報と併せて、検出個数に関する情報と距離情報の両方を送信してもよい。又は、通信タグ10は、自己のID情報及びGPS情報と併せて、距離情報を送信してもよい(検出個数に関する情報は送信しなくてもよい。)。
この場合も、車載送受信機5は、この送信されてきた情報を受信する。そして、図9に示すように、例えばモニター画面7において、歩行者1b〜1dが存在し得る範囲が、歩行者1aを中心とする破線等で示される。これにより、車両3の運転者は、歩行者1aを中心として、他の歩行者1b〜1dが存在し得る範囲を把握することができる。
【0047】
(2)上記の第1実施形態において、中距離無線通信部13は、通信タグ10(自己)のID情報、GPS情報、検出された携帯端末に関する情報に加えて、自己を携帯している歩行者1aの歩行者種別情報を送信してもよい。歩行者種別情報とは、例えば“幼児”“児童”“高齢者”“身障者“などの情報のことである。歩行者種別情報は例えば記憶部17に予め格納しておく。そして、例えば、図4に示したステップ(S)16で、歩行者種別情報が記憶部17から読み出される。読み出された歩行者種別情報を、中距離無線通信部13が送信する。
この送信されてきた歩行者種別情報を車載送受信機5が受信する。車両3の運転者は、この受信した歩行者種別情報を例えばモニター画面7やスピーカーからの音声で知ることができる。例えば、歩行者1aが幼児や児童である場合、歩行者1aが突然走り出したり、車道に飛び出したりする可能性について、運転者は事前に留意することができる。
【0048】
(3)上記の第1実施形態では、歩行者1aが通信タグ10を携帯し、この通信タグ10を介して歩行者1aの存在が車両3に通知される場合を例示した。しかしながら、上記の第1実施形態及び、後述の各実施形態において、通信タグ10は、歩行者に携帯されることに限定されるものではない。例えば、通信タグ10は、道路上の障害物や荷物等に取り付けられていてもよい。このような場合は、通信タグ10を介して、道路上の障害物や荷物等の存在が車両に通知される。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、この第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成を有する部分には同一の符号を付して説明する。上記の第1実施形態では、通信タグ10は、HMI端末30a〜30dなどの携帯端末の検出結果に基づいて、中距離無線通信の送信周期を調整する場合を例に説明した。
第2実施形態では、図11に示すように、通信タグ10の周囲に、この通信タグ10と同一機能を有する他の通信タグ(即ち、同一型タグ)20が存在する場合を想定する。この想定のもとで、通信タグ10が同一型タグ20を検出し、その検出の結果に基づいて、中距離無線通信の送信周期を調整する場合の例を説明する。
【0050】
(構成)
図12は、第2実施形態に係る制御部150の構成例を示す図である。
図12に示すように、この制御部150は、例えば、移動状態検出部51と、携帯端末検出部53と、送信周期調整部55と、受信周期調整部57と、車両検出部59と、車両接近判定部61と、情報提供部63と、通信タグ検出部65と、を有する。制御部150は、例えばCPUなどのロジック回路で構成されている。この第2実施形態では、図2に示した通信タグ10において、制御部50を制御部150に置き換えるものとする。
【0051】
図13は、第2実施形態に係る通信タグ10のステップ(S)15の処理内容を示すフローチャート(サブルーチン)である。図13のステップ(S)71では、カウント部19が時間の計測をゼロ(0)から開始する。ステップ(S)72では、短距離無線通信部11は、例えばBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信を開始する。
ステップ(S)73では、携帯端末検出部53が、短距離無線通信部11を介して携帯端末と同一型タグ20とを検索する。即ち、携帯端末検出部53の制御下で、短距離無線通信部11は、携帯端末から送信されてくる短距離無線通信や、同一型タグ20から送信されてくる短距離無線通信の受信を試みる。例えば、通信タグ10を中心に半径数メートルから数十メートルの範囲内に同一型タグ20が存在する場合には、この同一型タグ20から送信されてくるBluetooth、Zigbeeなどの短距離無線通信が通信タグ10の短距離無線通信部11で受信される。
【0052】
ステップ(S)74では、携帯端末検出部53が、ペアリングされているHMI端末30a以外の他の携帯端末の有無を判定する。このステップ(S)74で行われる処理は、図5に示したステップ(S)34で行われる処理と同じである。
他の携帯端末が周囲に存在すると判定された場合はステップ(S)75へ進み、存在しないと判定された場合はステップ(S)79へ進む。なお、他の携帯端末が存在すると判定された場合は、検出された携帯端末の個数(即ち、検出個数)に関する情報が記憶部17に格納される。一例を挙げると、携帯端末検出部53がHMI端末30a〜30dを検出した場合には、検出個数n=4が記憶部17に格納される。
【0053】
ステップ(S)75では、通信タグ検出部65が、同一型タグ20の有無を判定する。一例を挙げると、通信タグ検出部65は、同一型タグ20から送信されてくる短距離無線通信が、予め設定された時間(例えば、1分)の間受信された場合に、同一型タグ20が周囲に存在すると判定する。また、通信タグ検出部65は、同一型タグ20から送信されてくる短距離無線通信が受信されない、又は、受信される場合でもその期間が予め設定された時間(例えば、1分)よりも短い場合には、同一型タグ20は周囲に存在しないと判定する。同一型タグ20が周囲に存在しないと判定された場合はステップ(S)76へ進み、存在すると判定された場合はステップ(S)83へ進む。
【0054】
ステップ(S)76では、ステップ(S)73での検出結果に基づいて、制御部50が中距離無線通信の通信周期(即ち、送信周期及び受信周期)を調整する。この例では、ステップ(S)76で行われる処理は、図5に示したステップ(S)35で行われる処理と同じである。送信周期調整部55が中距離無線通信の送信周期をTs2に調整すると共に、受信周期調整部57が中距離無線通信の受信周期をTr2に調整する。
【0055】
ステップ(S)77では、中距離無線通信部13は、調整後の通信周期Ts2、Tr2で中距離無線通信を開始する。ステップ(S)78では、カウント部19が時間の計測を停止する。カウント部19のカウント値はゼロに戻される。ステップ(S)78の後は、図4へ戻る。
一方、ステップ(S)79で行われる処理は、ステップ(S)75で行われる処理と同じである。同一型タグ20が周囲に存在しないと判定された場合はステップ(S)80へ進み、存在すると判定された場合はステップ(S)81へ進む。
【0056】
ステップ(S)81では、ステップ(S)73での検出結果に基づいて、送信周期調整部55及び受信周期調整部57が、中距離無線通信の送信周期及び受信周期をそれぞれ調整する。この調整は、例えば下記の式(4)、式(5)に基づいて行うことができる。
Ts1≦Ts3≦m×Ts1…(4)
Ts3は他の携帯端末が検出されず、且つ、同一型タグ20が検出された場合の調整後の送信周期である。mは検出された同一型タグ20の個数に自己を加えた個数である。例えば、同一型タグ20が1個検出された場合はm=2であるから、送信周期Ts3はTs1の1倍〜2倍の範囲で調整される。
Tr1≦Tr3≦m×Tr1…(5)
Tr3は他の携帯端末が検出されず、且つ、同一型タグ20が検出された場合の調整後の受信周期である。この例ではm=2であるから、受信周期Tr3はTr1の1倍〜2倍の範囲で調整される。ステップ(S)82では、中距離無線通信部13は、調整後の通信周期Ts3、Tr3で中距離無線通信を開始する。
【0057】
他方、ステップ(S)83でも、ステップ(S)73での検出結果に基づいて、送信周期調整部55及び受信周期調整部57が、中距離無線通信の送信周期及び受信周期をそれぞれ調整する。この調整は、例えば下記の式(6)、式(7)に基づいて行うことができる。
Ts1/n≦Ts4≦m×Ts1…(6)
Ts4は他の携帯端末が検出され、且つ、同一型タグ20も検出された場合の調整後の送信周期である。この例では、n=4、m=2であるから、送信周期Ts4はTs1の1/4倍〜2倍の範囲で調整される(後述の図14(b)を参照)。
Tr1/n≦Tr4≦m×Tr1…(7)
Tr4は他の携帯端末が検出され、且つ、同一型タグ20も検出された場合の調整後の受信周期である。この例では、n=4、m=2であるから、受信周期Tr4はTr1の1/4倍〜2倍の範囲で調整される(後述の図14(b)を参照)。ステップ(S)84では、中距離無線通信部13は、調整後の通信周期Ts4、Tr4で中距離無線通信を開始する。
【0058】
図14(a)及び(b)は、通信タグ10における中距離無線通信の送信周期Ts1、Ts4と受信周期Tr1、Tr4の一例を示す図である。図14(c)は、同一型タグ20における中距離無線通信の送信周期Ts´4と受信周期Tr´4の一例を示す図である。
図14(a)及び(b)に示すように、通信タグ10において、中距離無線通信の送信周期をTs1からTs4に変更すると共に、受信周期をTr1からTr4に変更すると、時間当たりの送信モードの実行回数が少なくなる。受信モードに比べて送信モードは電力の消費が大きい。このため、中距離無線通信部13での消費電力量を低減することが可能となる。
【0059】
また、通信タグ10の中距離無線通信部13が通信周期Ts4、Tr4で動作を開始するとき、この通信タグ10の周囲には同一型タグ20が存在する。図14(c)に示すように、この同一型タグ20も、通信タグ10と同じように、中距離無線通信でGPS情報等を送信している。
ここで、図11に示したように、通信タグ10及び同一型タグ20と、車両3との間が十分に離れているとき、通信タグ10と同一型タグ20は、車両3の運転者から見ると、ほぼ同じ位置に存在する。つまり、通信タグ10と車両3との間が十分に離れているとき、通信タグ10のGPS情報と同一型タグ20のGPS情報は、車両3の運転者から見てほぼ同一の位置情報といえる。このとき、通信タグ10のGPS情報と同一型タグ20のGPS情報の差は、運転者から見て許容される範囲の誤差である。従って、通信タグ10と車両3との間が十分に離れているときは、通信タグ10と同一型タグ20は、車両3に対してGPS情報の送信処理をお互いに分担することができる。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0060】
(動作)
次に、第2実施形態の動作例を説明する。第1実施形態と同様、動作例を分かり易く説明するために、図11に示した場合を想定する。
まず、通信タグ10のGPSモジュール15は自己の現在位置を一定の時間を置いて繰り返し取得する。この現在位置に関する情報は、記憶部17を介して制御部150に読み出される。制御部150は、この読み出した情報に基づいて、通信タグ10(自己)の移動状態が歩行状態に相当するか否かを判定する。
制御部150は、自己の移動状態が歩行状態に相当するとき、短距離無線通信部11を介して、携帯端末と同一型タグ20の検索を一定の時間を置いて繰り返し行う。この検索により、通信タグ10とペアリングされていない他の携帯端末、又は、同一型タグ20のうちの少なくとも一方が検出されたときは、制御部150は中距離無線通信の通信周期の調整を行う。中距離無線通信部13は、調整後の通信周期で動作を開始する。これ以降の動作は、第1実施形態と同じである。
この第2実施形態では、通信タグ検出部65が通信タグ検出手段に対応している。
【0061】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態は、第1実施形態の効果に加えて、次のような効果を奏する。
(1)通信タグ検出部65は、短距離無線通信部11を介して同一型タグ20を検出する。送信周期調整部55は、この同一型タグ20の検出結果に基づいて、送信周期を調整する。例えば、同一型タグが検出された場合には、送信周期調整部55は中距離無線通信の送信周期をTs1からTs3又はTs4に変更する。時間当たりの送信モードの実行回数を少なくできるため、中距離無線通信部13での消費電力量を低減することが可能となる。
(2)また、通信タグ10の周囲で同一型タグ20が検出されたとき、この同一型タグ20も、通信タグ10と同じように、中距離無線通信を行う。通信タグ10と車両3との間が十分に離れているとき、通信タグ10のGPS情報と同一型タグ20のGPS情報は、車両3の運転者から見てほぼ同一の位置情報といえる。従って、通信タグ10と車両3との間が十分に離れているときは、通信タグ10と同一型タグ20は、車両3に対してGPS情報の送信処理をお互いに分担することができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、この第3実施形態において、上記の各実施形態と同様の構成を有する部分には同一の符号を付して説明する。
第1実施形態では、移動状態検出部51は、GPSモジュール15による測位情報(即ち、GPS情報)に基づいて、通信タグ10を携帯している歩行者1aが歩行状態にあるか否かを判定する場合について説明した(ステップ(S)14)。第3実施形態では、このステップ(S)14の後で、移動状態検出部51が、通信タグ10を携帯している歩行者1aが車両内に居るか否かを判定する場合の例を説明する。
【0063】
(構成)
図15は、第3実施形態に係る通信タグ10の処理を示すフローチャート(メインルーチン)である。第3実施形態では、第1実施形態と比較して、ステップ(S)14とステップ(S)15との間に新たにステップ(S)21が設けられている。それ以外の構成は、第1実施形態で説明した図4と同じである。従って、ここでは、ステップ(S)21の処理内容について説明する。
図15のステップ(S)21では、移動状態検出部51は、車載機器から出力される短距離無線通信(例えば、車載Bluetooth機器からの信号)を検出しているか否かを判定する。この検出は、短距離無線通信部11を介して、予め設定された時間(例えば、1分)の間行われる。なお、検出したBluetooth信号が車載機器から出力された信号であるか否かの判定は、この信号に含まれるプロファイル情報に基づいて行うことができる。例えば、検出したBluetooth信号のプロファイルがHFPであれば、この信号は車載機器から出力された信号であると判定することができる。
【0064】
ステップ(S)21で、車載Bluetooth信号を検出していると判定された場合は、歩行者1aは車両3内か、若しくは車両3以外の他の車両内に居ると判断される。この場合は、ステップ(S)19へ進み、中距離無線通信部13は動作を停止する。一方、ステップ(S)21で、車載Bluetooth機器からの信号を検出していないと判定された場合は、ステップ(S)15へ進む。なお、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0065】
(動作)
次に、第3実施形態の動作例を説明する。第1実施形態と同様、動作例を分かり易く説明するために、図1に示した場合を想定する。
まず、通信タグ10のGPSモジュール15は自己の現在位置を一定の時間を置いて繰り返し取得する。この現在位置に関する情報は、記憶部17を介して制御部50に読み出される。制御部50は、この読み出した情報に基づいて、自己の移動状態が歩行状態に相当するか否かを判定する。
自己の移動状態が歩行状態に相当するとき、制御部50は、短距離無線通信部11を介して、車載Bluetooth信号の検出を試みる。車載Bluetooth信号を例えば1分間検出された場合は、歩行者1aは車両3内か、若しくは車両3以外の他の車両内に居ると判断される。その場合は、中距離無線通信部13の動作が停止される。一方、車載Bluetooth信号が検出されない、又は、検出されてもその期間が例えば1分未満の場合は、制御部50は、短距離無線通信部11を介して、同一型タグの検索を一定の時間を置いて繰り返し行う。これ以降の動作は、第1実施形態又は第2実施形態と同じである。
【0066】
(第3実施形態の効果)
この第3実施形態は、第1実施形態又は第2実施形態の効果に加えて、次のような効果を奏する。
(1)中距離無線通信部13は、予め設定された時間(例えば、1分)の間、車載Bluetooth信号が受信された場合は、中距離無線通信を停止する(ステップ(S)21、19)。車載Bluetooth信号が受信された場合は、通信タグ10を携帯している歩行者1aが車両に搭乗していると推測される。このため、中距離無線通信部13は、その通信処理を停止してバッテリーの消費を抑えることができる。
(2)中距離無線通信部13は、車載Bluetooth信号の受信状況に応じて、停止した中距離無線通信を開始する。即ち、中距離無線通信部13は、中距離無線通信を停止した後で、車載Bluetooth信号が例えば1分間受信されない場合は、動作を開始する(ステップ(S)21、15、16)。車載Bluetooth信号が受信されない場合は、通信タグ10を携帯している歩行者1aが降車したと推測することができる。このため、中距離無線通信部13は、その通信処理を開始する。
【0067】
(変形例)
上記の第3実施形態では、移動状態検出部51が、車載Bluetooth信号に基づいて、歩行者1aが車両内に居るか否かを判定する場合を例示した。しかしながら、本実施形態において、移動状態検出部51は、車載Bluetooth信号に、GPSモジュール15で取得される自己のGPS情報(例えば、高速移動を検出、或いは、信号を全く受信できないなど)を加味して、歩行者1aが車両内に居るか否かを判定してもよい。これにより、移動状態検出部51による判定精度をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0068】
1a〜1d 歩行者
3 車両
5 車載送受信機
7 モニター画面
10 通信タグ
11 短距離無線通信部
12、14、16 アンテナ
13 中距離無線通信部
15 GPSモジュール
17 記憶部
19 カウント部
20 同一型タグ
21 電源制御回路
23 バッテリー
25 充放電制御回路
27 インジケータ
29 メイン電源スイッチ
30a〜30d HMI端末
50 制御部
51 移動状態検出部
53 携帯端末検出部
55 送信周期調整部
59 車両検出部
61 車両接近判定部
63 情報提供部
65 通信タグ検出部
100 運転支援システム
Tr1 (通常時の)受信周期
Tr2、Tr3、Tr4 (調整後の)受信周期
Ts1 (通常時の)送信周期
Ts2、Ts3、Ts4 (調整後の)送信周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に自己の存在を通知するための運転支援用の通信タグであって、
第1の無線通信方式で通信する第1の無線通信手段と、
当該通信タグの位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記第1の無線通信方式で通信可能な携帯端末を、前記第1の無線通信手段を介して検出する携帯端末検出手段と、
前記位置情報取得手段によって取得された当該通信タグの位置情報と、前記携帯端末検出手段によって検出された前記携帯端末に関する情報とを、前記第1の無線通信方式よりも通信距離が長い第2の無線通信方式で送信する第2の無線通信手段と、を備えることを特徴とする運転支援用の通信タグ。
【請求項2】
前記第2の無線通信手段は、前記携帯端末に関する情報として、検出された前記携帯端末の個数情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項3】
前記第2の無線通信手段は、前記携帯端末に関する情報として、検出された前記携帯端末と当該通信タグとの間の距離情報を送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項4】
前記携帯端末の検出結果に基づいて前記第2の無線通信方式の送信周期を調整する送信周期調整手段、をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項5】
前記第1の無線通信手段を介して、当該通信タグと同一機能を有する他の通信タグを検出する通信タグ検出手段、をさらに備え、
前記送信周期調整手段は、前記他の通信タグの検出結果に基づいて前記送信周期を調整することを特徴とする請求項4に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項6】
前記位置情報取得手段によって取得された当該通信タグの位置情報に基づいて、当該通信タグの時間当たりの移動量を検出する移動量検出手段、をさらに備え、
前記第2の無線通信手段は、前記移動量が予め設定された許容移動量範囲から外れた場合には、前記第2の無線通信方式による送信処理を停止することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項7】
前記第2の無線通信手段は、前記第2の無線通信方式による送信処理を停止した後で、前記移動量が前記許容移動量範囲内となった場合には、前記第2の無線通信方式による送信処理を開始することを特徴とする請求項6に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項8】
前記第2の無線通信手段は、予め設定された時間の間、車載用無線通信が前記第1の無線通信手段で受信された場合には、前記第2の無線通信方式による送信処理を停止することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項9】
前記第2の無線通信手段は、前記第2の無線通信方式による送信処理を停止した後で、予め設定された時間の間、前記車載用無線通信が前記第1の無線通信手段で受信されない場合には、前記第2の無線通信方式による送信処理を開始することを特徴とする請求項8に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項10】
前記第2の無線通信手段を介して前記車両を検出する車両検出手段と、
前記車両検出手段によって検出された前記車両の位置情報と、前記位置情報取得手段によって取得された当該通信タグの位置情報とに基づいて、前記車両が当該通信タグに接近しているか否かを判定する車両接近判定手段、をさらに備え、
前記第1の無線通信手段は、
前記車両接近判定手段によって前記車両が接近していると判定された場合に、前記車両の接近情報を前記第1の無線通信方式で送信することを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の運転支援用の通信タグ。
【請求項11】
車両に通信タグの存在を通知するための運転支援システムであって、
前記通信タグと、前記車両に搭載される車載機器と、を含み、
前記通信タグは、
第1の無線通信方式で通信する第1の無線通信手段と、
当該通信タグの位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記第1の無線通信方式で通信可能な携帯端末を、前記第1の無線通信手段を介して検出する携帯端末検出手段と、
前記位置情報取得手段によって取得された当該通信タグの位置情報と、前記携帯端末検出手段によって検出された前記携帯端末に関する情報とを、前記第1の無線通信方式よりも通信距離が長い第2の無線通信方式で送信する第2の無線通信手段と、を備え、
前記車載機器は、
前記通信タグから前記第2の無線通信方式で送信されてくる前記通信タグの位置情報と、前記携帯端末に関する情報とを受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記通信タグの位置情報と、前記携帯端末に関する情報とを音声又は画像の少なくとも一方で表示する表示手段と、を備えることを特徴とする運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−25527(P2013−25527A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158969(P2011−158969)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】