説明

運転管理装置

【課題】内燃機関の積算運転時間を、新たに追加装備を必要とすることなく、簡単にユーザに通知することを可能にする。
【解決手段】運転管理装置12は、内燃機関20の運転を制御する制御部41と、制御部によって監視される内燃機関の積算運転時間Tdのデータを記憶する記憶部42と、内燃機関の運転状態を表示する表示部53とを備える。制御部は、予め設定されている所定のタイミングに、積算運転時間に応じた点滅回数の点滅表示をするように、表示部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、汎用エンジンを搭載した携帯型インバータ発電機等、内燃機関の積算運転時間を表示可能な運転管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用エンジン、もしくは汎用エンジンを搭載する発電機には、エンジンオイル交換時期を主とするメンテナンスに重要な積算運転時間を知らせるために、エンジン点火パルスをカウントするアナログ式アワーメータ、あるいは、液晶表示や7セグメントLED(Light Emitted Diode)等のデジタルアワーメータが取り付けられている。また、発電状態や、過負荷、発電制御システムエラー、オイル警告等、運転状態を通知する表示灯も取り付けられている。
【0003】
ところで、汎用エンジン、もしくは汎用エンジンを搭載する発電機に、メンテナンスのために運転状態を表示する技術については従来から多数出願されており、例えば、特許文献1には、計器パネルの内部に液晶表示部と警告灯を有する動力車両が開示されている。また、特許文献2には、ワーニング発生時の運転時間等エンジンの運転状況を記憶し、表示するエンジン管理装置が開示されている。また、特許文献3には、押しボタンスイッチが操作される毎に記録した故障履歴を表示し、エンジン停止スイッチと押しボタンスイッチの操作とが同時に行われた場合、先に記録された故障履歴を消去するエンジンの故障履歴表示装置が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記した従来技術によれば、出力表示灯の他に、新たな表示デバイスとしてアワーメータや故障履歴専用の表示装置を追加装備する必要があった。このため、特に、携帯型インバータ発電機等コンパクトな製品への適用は、低コスト化を図る上で不利であった。また、汎用エンジンや発電機のレイアウト面での制約やデザイン面での制約がある。
【0005】
一方、サービスマンが持つ専用の診断ツールを使用すれば、例えば、汎用エンジンが内蔵するインバータユニットのメモリを参照することにより、積算運転時間に関する情報を確認することができる。しかしながら、専用の診断ツールを使用する必要があるため、操作が面倒である。このため、診断ツール等を使用することなく、ユーザが簡単に積算運転時間を視認可能な技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−343191号公報(段落「0006」〜「0007」、図6)
【特許文献2】特開平11−311149号公報(段落「0009」、図3)
【特許文献3】特開2005−299532号公報(段落「0006」〜「0009」、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内燃機関の積算運転時間を、新たに追加装備を必要とすることなく、かつ、簡単にユーザに報知することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明では、内燃機関の積算運転時間を管理する運転管理装置において、前記内燃機関の運転を制御する制御部と、この制御部によって監視される前記積算運転時間のデータを記憶する記憶部と、前記内燃機関の運転状態を表示する表示部とを備え、この表示部は、前記運転状態を表示する他に、前記積算運転時間を表示する機能を兼ねており、前記制御部は、予め設定されている所定のタイミングに、前記積算運転時間に応じた点滅回数の点滅表示をするように、前記表示部を制御する構成であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の運転管理装置において、前記制御部は、前記表示部に前記点滅表示をさせた後に、前記表示部による表示を前記内燃機関の運転状態の表示に切り替えるように制御する構成であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に記載の運転管理装置において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関の始動時であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、請求項3に記載の運転管理装置において、前記内燃機関には、発電機が連結されており、前記内燃機関の始動時において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関の始動に伴い前記発電機が発電を開始し、この発電機から前記制御部が電力の供給を受けて、動作を開始した後であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、請求項1又は請求項2に記載の運転管理装置において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関の停止時であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、請求項5に記載の運転管理装置において、前記内燃機関には、発電機が連結されており、前記内燃機関の停止時において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関が停止指令を受けたときから、前記発電機が前記制御部の動作に必要な電力を発電している間であることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、請求項1又は請求項2に記載の運転管理装置において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関が始動してから停止するまでの間であって、少なくとも1回であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、制御部は、内燃機関の運転時間を監視して、積算運転時間のデータを取得し、表示部に積算運転時間のデータを点滅によって表示させる。つまり、表示部は、内燃機関の運転状態を表示する他に、積算運転時間を表示する機能を兼ねる。このため、新たな追加装備なしに、ユーザに積算運転時間を適切に報知することができる。しかも、積算運転時間を報知する部材を別個に設ける必要がないので、内燃機関の低コスト化を図ることができるとともに、内燃機関のデザイン上の制約を回避することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、制御部が、表示部に積算運転時間のデータを点滅表示させた後、表示部による表示を点滅表示直前の内燃機関の運転状態の表示に切り替える。このため、ユーザは切り替えのための操作を必要としないため、使い勝手がよい。
【0017】
請求項3に係る発明では、制御部が、内燃機関の始動時に内燃機関の積算運転時間のデータを点滅表示することにより、ユーザは、始動時にオイル交換等のメンテナンス時期を判断できるため利便性が向上する。
【0018】
請求項4に係る発明では、制御部が、内燃機関の始動時であって、制御部の動作に必要な電力が確保され、制御部が動作を開始した直後に内燃機関の積算運転時間のデータを点滅表示することにより、ユーザに積算運転時間を的確に報知することができる。このため、積算運転時間の報知の信頼性を向上させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、制御部が、内燃機関の停止時に内燃機関の積算運転時間のデータを点滅表示することにより、ユーザは、内燃機関の停止時にオイル交換等のメンテナンス時期を判断することができる。始動時に表示する場合に比べて、メンテナンス作業に入るまでの期間が短縮される。このため、エンジンの保守効率が良い。
【0020】
請求項6に係る発明では、制御部が、内燃機関の停止時であって、制御部の動作に必要な電力が確保され制御部が動作を停止した直後に内燃機関の積算運転時間のデータを点滅表示することにより、ユーザに積算運転時間を的確に通知することができる。このため、積算運転時間の報知の信頼性を向上させることができる。
【0021】
請求項7に係る発明では、制御部が、内燃機関の始動から停止に至るまでの間に、内燃機関の積算運転時間のデータを点滅表示することにより、ユーザは、内燃機関の運転中にオイル交換等のメンテナンス時期を判断することができる。このため、内燃機関の始動時あるいは停止時に表示する場合に比較して融通性が増し、利便性の一層の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施例1の運転管理装置を搭載した可搬式エンジン発電機の外観構造を示す図である。
【図2】図1に示された可搬式エンジン発電機の系統を模式的に示す図である。
【図3】図2に示された運転管理装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示されたエンジンを始動操作した時点から制御部が表示処理を実行し終わるまでの一連の手順を示すフローチャートである。
【図5】図4に示された表示制御処理を実行するためのサブルーチンの制御フローチャートである。
【図6】図5に示された積算運転時間の表示制御処理を実行するためのサブルーチンの制御フローチャートである。
【図7】図6に示された表示制御処理によって表示される6パターンの点滅制御例を示す図である。
【図8】本発明に係る実施例2の運転管理装置を搭載したエンジンの外観構造を示す図である。
【図9】図8に示されたエンジンの系統を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
先ず、実施例1について図1〜図7に基づき説明する。
図1は、実施例1の運転管理装置が搭載された可搬式エンジン発電機10の外観を示している。図2は、可搬式エンジン発電機10の系統を模式的に示している。
図2に示すように、可搬式エンジン発電機10は、エンジン発電ユニット11と、運転管理装置12とからなり、ケース13(図1参照)に収納されている。エンジン発電ユニット11は、汎用エンジン20と発電機30とからなる。
【0025】
エンジン20は、略水平なクランク軸21を備え、クランクケース22の中に溜められているオイルJuによって各摺動部分を潤滑する潤滑方式の、内燃機関である。このエンジン20はリコイルスタータ23を備えている。
【0026】
リコイルスタータ23は、作業者(ユーザ)が手動によってエンジン20を始動させる始動装置であり、例えばクランク軸21又はクランク軸21に直結したフライホイール24の先端に設けられている。
【0027】
発電機30は、エンジン20の出力によって交流電力を発電する多極オルタネータであり、例えば、フライホイール24に設けられた永久磁石31と、この永久磁石31に隣接して配置したコイル32とからなる。
【0028】
リコイルスタータ23のノブ23aを引っ張ることによってエンジン20を始動させることができ、エンジン20がひとたび始動回転すると、発電機30(多極オルタネータ)が三相交流の電気を発電する。発電機30によって発電された電力は、運転管理装置12に内蔵されたインバータにより一旦整流された後、高品質な商用電源と同じ周波数の正弦波である、交流に再度変換されて出力される。
なお、リコイルスタータ23及び発電機30は、カバー25によって覆われている。
【0029】
図3は、運転管理装置12の内部構成を示している。図2及び図3に示されるように、運転管理装置12は、インバータ部40と操作パネル部50からなる。インバータ部40は、制御部41と、記憶部42と、インバータ制御電源部43と、表示駆動部44とを含む。
【0030】
制御部41は、例えば、マイクロプロセッサ(CPU)によって構成され、内蔵、もしくは外付けされるプログラムメモリ(不図示)からプログラムを読み出し、このプログラムによる制御に基づき、エンジン発電ユニット11の制御を行う構成である。
【0031】
また、制御部41は、上記したプログラム制御の下で、予め設定されている所定のタイミングに、記憶部42から積算運転時間Tdのデータを読み出し、積算運転時間Tdに応じた点滅回数の点滅表示をするように、表示駆動部44を介して表示部53を制御する構成である。ここで、積算運転時間Tdとは、エンジン20が実質的に運転されている時間の積算値である。また、所定のタイミングとは、エンジン20の始動時、エンジン20の停止時、および始動時から停止時に至る適宜の時点である。
【0032】
記憶部42は、例えば、EEPROM(Electricaly Erasable PROM)等の不揮発性メモリで構成され、ここでは、制御部41による制御の下で積算運転時間Tdのデータが記録される。インバータ制御電源部43は、発電機30により発電された電力を整流して直流とし、その直流を、高品質な商用電源と同じ周波数の正弦波である交流に再度変換して出力コンセント52へ供給するものである。表示駆動部44は、表示部53を駆動するICである。
【0033】
操作パネル部50は、メインスイッチ51と出力コンセント52と表示部53を有する。メインスイッチ51は、エンジン20の電源系統をオン、オフするためのロータリスイッチであり、オフ位置からオン位置へ操作することにより、エンジン20の始動に備えるとともに、オン位置からオフ位置へ戻すことによりエンジン20を停止させることができる。出力コンセント52は、発電機30によって発電された電力を出力する端子であり、操作パネル50上に実装されている。
【0034】
表示部53は、エンジン20及び発電機30の運転状態を表示するものであり、操作パネル50上に実装されている。この表示部53は、図1に示すように、LED(Light Emitted Diode)からなる3個の表示部53a〜53cによって構成されている。第1表示部53aは、発電機30の出力状態を報知するための、出力表示灯の機能を有する。第2表示部53bは、エンジン20及び発電機30の過負荷状態を報知するための、過負荷警告灯の機能を有している。第3表示部53cは、エンジン20に溜められているオイルJuが下限値まで低下したことを報知するための、オイル警告灯の機能を有している。
【0035】
次に、エンジン20を始動操作した時点から制御部41が制御処理を実行するまでの一連の手順を、図1〜図3を参照しつつ、図4に基づき説明する。
【0036】
一連の手順は、まず、作業者がメインスイッチ51をオン操作する(ステップS01)。次に、メインスイッチ51のオン状態において、作業者がリコイルスタータ23のノブ23aを引っ張ることにより、リコイルスタータ23を始動操作する(ステップS02)。この結果、エンジン20が始動する(ステップS03)。エンジン20の始動に伴い、発電機30が発電を開始する(ステップS04)。その後、発電機30の出力電圧が一定以上の安定した電圧になることで、発電機30から供給される電力によって、制御部41及びインバータ制御電源部43は自動的に起動する(ステップS05)。そして、制御部41のCPUの初期化が実行される(ステップS06)。ここで、初期化とは、内蔵レジスタのゼロクリア、接続ポートの診断等をいう。次に、制御部41は、初期化に引き続いて、表示制御処理を実行する(ステップS07)。この表示制御処理については、後述するサブルーチン(図5参照)によって実行される。
【0037】
図5は、図4に示されたステップS07(表示制御処理)を実行するための、サブルーチンを示している。
図5に示すサブルーチンにおいては、先ず、不図示の内蔵タイマの時間Tcを”0”にリセットした上で、このタイマをスタートさせることにより(ステップS101)、エンジン20の積算運転時間Td(アワーメータ値Td)の監視を開始する。「積算運転時間Td」とは、エンジン20を運転した時間の積算値である。次に、記憶部42から、前回の積算運転時間Tdのデータを読み出す(ステップS102)。「前回の積算運転時間Td」(前回のアワーメータ値Td)とは、エンジン20が前回停止する直前に記憶部42に保存された、積算運転時間Tdのデータである。
【0038】
次に、ステップS102において読み出された、前回の積算運転時間Tdに応じた点滅回数の点滅表示をするように、第1表示部53aを制御する(ステップS103)。この点滅回数の表示制御処理については、後述するサブルーチン(図6参照)によって実行される。次に、第1表示部53aの表示モードを、通常のエンジン20運転状態を表す表示モードに切り替える(ステップS104)。つまり、第1表示部53aは通常の出力表示灯の表示モードを果たす。
【0039】
次に、ステップS105において、表示間隔の基準時間Tsの値を、所定の初期値Tinに設定する(Ts=Tin)。この初期値Tinは、エンジン20の作動特性や使用条件によって、予め設定されているものである。初期値Tinは、例えば2分、15分、1時間、・・・に設定される。次に、ステップS106において、倍率αの値を”1”に設定する(α=1)。この倍率αは、基準時間Tsの値を増加させるものである。
【0040】
次に、積算運転時間Tdの値を更新する(ステップS107)。つまり、上記ステップS102で読み出された積算運転時間Tdの値を、ステップS107を実行する時点の時間Tcによって、更新する。次に、メインスイッチ51がオン操作されたか否かを判断する(ステップS108)。メインスイッチ51がオン(on)であると判断した場合には、タイマによってカウントされた時間Tcが表示間隔の基準時間Tsに達したか否かを判断する(ステップS109)。ここで達していない(Tc<Ts)と判断した場合には、達するまでステップS107〜S109を繰り返す。
【0041】
その後、ステップS109において、時間Tcが基準時間Tsに達した場合には、ステップS107で更新された積算運転時間Tdに応じた点滅回数の点滅表示をするように、第1表示部53aを制御する(ステップS110)。この点滅回数の表示制御処理については、後述するサブルーチン(図6参照)によって実行される。次に、第1表示部53aの表示モードを、エンジン20の通常の運転状態を表す表示モードに切り替える(ステップS111)。つまり、第1表示部53aは通常の出力表示灯の表示モードを果たす。
【0042】
次に、基準時間Tsの値を一定値だけ増加させる(ステップS112)。つまり、倍率αの値に”1”を加算し、その加算値を元の基準時間Tsに乗算することにより、新たな基準時間Tsとする(Ts=Ts・(α+1))。この結果、基準時間Tsの値は、ステップS112を実行するたびに2倍、3倍と倍増する。その後、ステップS107に戻る。
【0043】
以上のように、制御部41は、メインスイッチ51がオン状態を維持している間中、タイマがスタートしてから、基準時間Tsを経過するたびに、第1表示部53aに対して、更新された最新の積算運転時間Tdに応じた点滅回数の点滅表示をさせる。
【0044】
一方、エンジン20の運転中にメインスイッチ51をオフ操作すると、ステップS108において、メインスイッチ51がオフ(off)であると判断する。この場合には、ステップS107で更新された積算運転時間Tdに応じた点滅回数の点滅表示をするように、第1表示部53aを制御する(ステップS113)。この点滅回数の表示制御処理については、後述するサブルーチン(図6参照)によって実行される。
【0045】
次に、発電機30による発電動作の停止処理を実行する(ステップS114)。次に、記憶部42の所定の領域に、監視していた積算運転時間Tdのデータを保存した上で(ステツプS115)、インバータ制御電源部43による電源の供給停止処理を実行する。(ステップS116)。その後、この図5に示すサブルーチンを終了して、上記図4のステップS07に戻る。なお、ステップS113とステップS114は、同時に実行してもよい。
【0046】
ところで、一般に、エンジンはメインスイッチがオフになったときから、クランク軸が慣性によって、ある程度の時間だけ回り続けた後に、完全に停止することが知られている。本発明におけるエンジン20も、メインスイッチ51がオフになったとき(エンジン20が制御部41から停止指令を受けたとき)から、クランク軸21が慣性によって、ある程度の時間だけ回り続けた後に、完全に停止する。すなわち、エンジン20が完全停止するまでには空転時間を要する。クランク軸21にはフライホイール24が設けられているので、この傾向が強い。
【0047】
この点を踏まえて、上記ステップS113〜S116は、エンジン20が停止指令を受けたときから、発電機30が制御部41の動作に必要な電力を発電している間に実行される。
【0048】
以上の説明から明らかなように、制御部41が第1表示部53aに対して、積算運転時間Tdに応じた点滅回数の点滅表示させるタイミングは、エンジン20の始動時(ステップS103)、エンジン20が始動してから停止するまでにおける所定の時点毎(ステップS110)、エンジン20停止時(ステップS113)である。
【0049】
このように、点滅表示タイミングが到来すると、制御部41は、記憶部42領域から最新の積算運転時間Tdを読み出す。続いて、制御部41は、この積算運転時間Tdによって決まる点滅周期にしたがい、表示駆動部44を制御して、第1表示部53aの表示駆動を行う。このとき、制御部41は、第1表示部53aを点滅表示させるが、点滅周期は積算運転時間Tdに依存するものとする。その後、制御部41は、第1表示部53aを通常の運転状態を表す表示モードに切り替える。
【0050】
図6は、図5に示されたステップS103,S110,S113(積算運転時間の表示制御処理)を実行するための、サブルーチンを示している。
制御部41は、まず、積算運転時間Tdと、点滅なし表示の場合の閾値である100時間とを比較する(ステップS201)。ここで、積算運転時間Tdが100時間未満であると判断した場合には、LED点滅カウンタCu(制御部41が実行するプログラムに割り当てられたカウンタ)に値”0”を設定し(ステップS202)、一方、積算運転時間Tdが100時間以上であると判断した場合には(ステップS201”NO”)、更に、積算運転時間Tdが点滅回数1回の閾値である100時間から200時間未満の範囲にあるか否かを判断する(ステップS203)。
【0051】
ここで、積算運転時間Tdが、点滅回数1回の閾値である100時間から200時間未満の範囲にあると判断した場合には(ステップS203”YES”)、LED点滅カウンタCuに値”1”を設定し(ステップS204)、一方、200時間以上であると判断した場合には(ステップS203”N0”)、更に、積算運転時間Tdが点滅回数2回の閾値である200時間から300時間未満の範囲にあるか否かを判断する(ステップS205)。
【0052】
ここで、積算運転時間Tdが、200時間から300時間未満の範囲にあると判断した場合には(ステップS205”YES”)、LED点滅カウンタCuに値”2”を設定し(ステップS206)、一方、300時間以上であると判断した場合には(ステップS205”N0”)、更に、積算運転時間Tdが点滅回数3回の閾値である300時間から400時間未満の範囲にあるか否かを判断する(ステップS207)。
【0053】
ここで、積算運転時間Tdが、300時間から400時間未満の範囲にあると判断した場合には(ステップS207”YES”)、LED点滅カウンタCuに値”3”を設定し(ステップS208)、一方、400時間以上であると判断した場合には(ステップS207”N0”)、更に、積算運転時間Tdが点滅回数4回の閾値である400時間から500時間未満の範囲にあるか否かを判断する(ステップS209)。
【0054】
ここで、積算運転時間Tdが、400時間から500時間未満の範囲にあると判断した場合には(ステップS209”YES”)、LED点滅カウンタCuに値”4”を設定し(ステップS210)、一方、500時間以上であると判断した場合には(ステップS209”N0”)、LED点滅カウンタCuに値”5”を設定する(ステップS211)。
【0055】
このように、上記ステップS202,S204,S206,S208,S210,S211のいずれか1つを実行した後に、制御部41は、LED点滅カウンタCuに設定された値が”0”を超えているか否かを判断する(ステップS212)。ここで、値”0”を超えていると判断した場合(ステップS212”YES”)には、制御部41は、表示駆動部44を制御して第1表示部53aを1回点滅させた後に(ステップS213)、LED点滅カウンタCuから値”1”を減算する(Cu=Cu−1)ことによって、LED点滅カウンタCuを更新し(ステップS214)、ステップS212に戻る。制御部41は、LED点滅カウンタCuの値が0になるまで上記ステップS212〜S214の一連の動作を繰り返す。
【0056】
制御部41は、LED点滅カウンタCuが0になった時点で(ステップS212”No”)、表示モードを点滅表示モードから通常表示モードに切り替え、第1表示部53aを通常の出力表示灯として制御する(ステップS215)。その後、この図6に示すサブルーチンを終了して、上記図4のステップS103,S110又はS113に戻る。
このように、制御部41は、プログラムによりカウントされるLED点滅カウンタCuにより、上記した点滅回数を制御する。
【0057】
次に、上記図6の制御フローチャートにより実行される、6つの点滅パターンについて、図7に基づき説明する。図7(a)〜(f)は、積算運転時間Tdによる点滅パターンを時間軸(横軸)方向にパルスで示した図である。なお、パルスのデューティ比「T1/(T1+T2)」は任意であり、例えば1/2〜2/3に設定される。
【0058】
(a)は、積算運転時間Tdが100時間未満の場合の第1点滅パターンであり、全く点滅しない。この第1点滅パターンは、図6のステップS202及びS212〜S215によって実行される。
(b)は、積算運転時間Tdが100時間から200時間未満の場合に、1回点滅する、第2点滅パターンである。この第2点滅パターンは、図6のステップS204及びS212〜S215によって実行される。
(c)は、積算運転時間Tdが200時間から300時間未満の場合に、2回点滅する、第3点滅パターンである。この第3点滅パターンは、図6のステップS206及びS212〜S215によって実行される。
(d)は、積算運転時間Tdが300時間から400時間未満の場合に、3回点滅する、第4点滅パターンである。この第4点滅パターンは、図6のステップS208及びS212〜S215によって実行される。
(e)は、積算運転時間Tdが400時間から500時間未満の場合に、4回点滅する、第5点滅パターンである。この第5点滅パターンは、図6のステップS210及びS212〜S215によって実行される。
(f)は、積算運転時間Tdが500時間以上の場合に、5回点滅する、第6点滅パターンである。この第6点滅パターンは、図6のステップS211〜S215によって実行される。
【0059】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
制御部41は、エンジン20(内燃機関)の運転時間を監視して、積算運転時間Tdのデータを取得し、表示部53における第1表示部53aに積算運転時間Tdのデータを点滅によって表示させる。つまり、第1表示部53aは、エンジン20の運転状態を表示する他に、積算運転時間Tdを表示する機能を兼ねる。このため、新たな追加装備なしに、ユーザに積算運転時間Tdを適切に報知することができる。しかも、積算運転時間Tdを報知する部材を別個に設ける必要がないので、エンジン20や発電機30の低コスト化を図ることができるとともに、エンジン20や発電機30のデザイン上の制約を回避することができる。
【0060】
また、第1表示部53aに積算運転時間Tdのデータを点滅表示させた後、第1表示部53aによる表示を点滅表示直前のエンジン20の運転状態の表示に切り替える。このため、ユーザは切り替えのための操作を必要としないため、使い勝手がよい。
【0061】
また、制御部41が、エンジン20の始動時にエンジン20の積算運転時間Tdのデータを点滅表示することにより、ユーザは、始動時にオイル交換等のメンテナンス時期を判断できるため、利便性が向上する。
【0062】
また、制御部41は、エンジン20の始動時であって、制御部41の動作に必要な電力が確保され、制御部41が動作を開始した直後にエンジン20の積算運転時間Tdのデータを点滅表示することにより、ユーザに積算運転時間Tdを的確に通知することができる。このため、積算運転時間Tdの報知の信頼性を向上させることができる。
【0063】
また、制御部41が、エンジン20の停止時にエンジン20の積算運転時間Tdのデータを点滅表示することにより、ユーザは、エンジン20の停止時にオイル交換等のメンテナンス時期を判断することができる。始動時に表示する場合に比べて、メンテナンス作業に入るまでの期間が短縮される。このため、エンジン20の保守効率が良い。
【0064】
また、制御部41が、エンジン20の停止時であって、制御部41の動作に必要な電力が確保され制御部41が動作を停止した直後に、エンジン20の積算運転時間Tdのデータを点滅表示することにより、ユーザに積算運転時間Tdを的確に報知することができる。このため、積算運転時間Tdの報知の信頼性を向上させることができる。
【0065】
また、制御部41が、エンジン20の始動から停止に至るまでの間に、エンジン20の積算運転時間Tdのデータを点滅表示することにより、ユーザは、エンジン20の運転中に、オイル交換等のメンテナンス時期を判断することができる。このため、エンジン20の始動時あるいは停止時に表示する場合に比較して、融通性が増し、利便性の一層の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0066】
次に、実施例2について図8〜図9に基づき説明する。
図8は、実施例2の運転管理装置が搭載された汎用エンジン20の外観を示している。図9は、図8に示された汎用エンジン20の系統を模式的に示している。なお、上記図1〜図7に示す実施例と実質的に同じ構成の部材については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図8及び図9に示すように、実施例2の汎用エンジン20の基本的な構成は、上記図2に示すエンジン20と実質的に同じ構成であり、説明を省略する。クランク軸21は、クランクケース22から外方へ比較的大きく延びている。クランク軸21において、外方へ延びた部分には、プーリ、歯車等の各種の負荷が連結される。
【0068】
実施例2の汎用エンジン20は、リコイルスタータ23と発電機30と運転管理装置120を備えている。リコイルスタータ23及び発電機30の各構成は、上記図2に示す実施例1の構成と実質的に同じ構成であり、説明を省略する。
【0069】
運転管理装置120は、インバータ部140と操作パネル部150からなる。インバータ部140は、制御部141と記憶部42と表示駆動部44とからなる。操作パネル部150はメインスイッチ51と表示部153とからなる。図8に示すように、メインスイッチ51及び表示部153は、エンジン20の側面に配置されている。
【0070】
実施例2における発電機30が発生した電力は、エンジン20自体及び運転管理装置120によって消費されるだけであり、外部に供給されない。このため、運転管理装置120は、上記図3に示すインバータ制御電源部43及び出力コンセント52が廃止されている。
【0071】
制御部141は、上記図3に示す制御部41に対して、インバータ制御電源部43を制御する機能が廃止されているだけであり、他の構成については、制御部41と実質的に同じである。表示部153は、上記図1に示す3個の表示部53a〜53cの1つに対して、実質的に同じ構成であればよい。
【0072】
上記図4〜図6に示す実施例1の制御フローチャートについては、実施例2においても実質的に同じであり、説明を省略する。
以上の説明から明らかなように、実施例2は、上記実施例1と同様の作用、効果を有する。
【0073】
なお、本発明では、図6に示すステップS201,S203,S205,S207,S209における各々の閾値は、100時間単位に限定されるものではなく、任意である。
また、表示部53,153はエンジン20の運転状態を表示するものであればよく、種類や構成に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の運転管理装置12,120は、汎用エンジン、もしくは汎用エンジンを搭載する発電機、その中でも特に可搬式エンジン発電機の出力表示灯に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0075】
10…可搬式エンジン発電機、11…エンジン発電機ユニット、12,120…運転管理装置、20…汎用エンジン、30…発電機、41,141…制御部、42…記憶部、51…メインスイッチ、52…出力コンセント、53,153…表示部、Td…積算運転時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の積算運転時間を管理する運転管理装置において、
前記内燃機関の運転を制御する制御部と、この制御部によって監視される前記積算運転時間のデータを記憶する記憶部と、前記内燃機関の運転状態を表示する表示部とを備え、
この表示部は、前記運転状態を表示する他に、前記積算運転時間を表示する機能を兼ねており、
前記制御部は、予め設定されている所定のタイミングに、前記積算運転時間に応じた点滅回数の点滅表示をするように、前記表示部を制御する構成であることを特徴とした運転管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記表示部に前記点滅表示をさせた後に、前記表示部による表示を前記内燃機関の運転状態の表示に切り替えるように制御する構成であることを特徴とした請求項1記載の運転管理装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関の始動時であることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の運転管理装置。
【請求項4】
前記内燃機関には、発電機が連結されており、
前記内燃機関の始動時において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関の始動に伴い前記発電機が発電を開始し、この発電機から前記制御部が電力の供給を受けて、動作を開始した後であることを特徴とした請求項3に記載の運転管理装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関の停止時であることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の運転管理装置。
【請求項6】
前記内燃機関には、発電機が連結されており、
前記内燃機関の停止時において、前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関が停止指令を受けたときから、前記発電機が前記制御部の動作に必要な電力を発電している間であることを特徴とした請求項5に記載の運転管理装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記表示部に対して前記点滅表示をさせるタイミングは、前記内燃機関が始動してから停止するまでの間であって、少なくとも1回であることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の運転管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−190123(P2010−190123A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35524(P2009−35524)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】