説明

運転診断装置および運転支援装置

【課題】 安全運転診断および省燃費診断を行う際に、効率的な診断を行うことができるとともに、診断結果の正確性に優れたものとすることができる運転診断装置および運転支援装置を提供する。
【解決手段】 運転支援ECU1は、安全運転診断部15において、ドライバの安全運転度合いを診断するとともに、エコ運転診断部16において、ドライバのエコ運転診断を行う。また、運転支援ECU1は、診断配分切替部12を備えており、車両が走行する走行路の傾斜に応じて、安全運転診断およびエコ運転診断の診断配分を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転するドライバの運転診断およびこの運転診断結果を用いた運転支援を行う運転診断装置および運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転するドライバの運転診断を行う運転診断装置として、従来、ドライバの車両運転状況に対して、運転診断を行う運転診断装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この運転診断装置では、運転診断として、安全運転に関する安全運転診断および省燃費運転に関する省燃費診断を行っている。また、この運転診断装置では、走行属性毎に安全運転診断または省燃費診断を行っている。このため、走行場所や条件に影響されることなく公平な安全運転診断および省燃費診断を行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−243856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1における運転診断装置では、安全運転診断および省燃費診断のいずれを行うかについてなどの条件を特に定めていない。このため、たとえば、安全運転診断に適した状況であっても、安全運転診断および省燃費診断のいずれをも行うこととなる。したがって、その分効率的な診断を行うことができなかったり、診断結果の正確性に欠けたりすることがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、安全運転診断および省燃費診断を行う際に、効率的な診断を行うことができるとともに、診断結果の正確性に優れたものとすることができる運転診断装置および運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明に係る運転診断装置は、車両を運転するドライバの運転診断として、安全確認診断と省燃費運転診断とを行う運転診断手段を備える運転診断装置において、車両の走行環境を検出する走行環境検出手段と、安全確認診断と省燃費診断の比率を調整する診断比率調整手段と、を備え、診断比率調整手段は、走行環境検出手段で検出された車両の走行環境に基づいて、安全確認診断と省燃費運転診断の比率を調整することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る運転診断装置においては、安全確認診断と省燃費診断の比率を調整する診断比率調整手段と、を備えており、走行環境検出手段で検出された車両の走行環境に基づいて、安全確認診断と省燃費運転診断の比率を調整している。このため、安全運転診断および省燃費診断のいずれを行う状況に適しているかの判断を行うことができる。したがって、安全運転診断および省燃費診断を行う際に、効率的な診断を行うことができるとともに、診断結果の正確性に優れたものとすることができる。
【0008】
ここで、車両の走行環境は、車両の進行方向に対する傾斜方向である態様とすることができる。
【0009】
車両の進行方向に対する傾斜方向によって、安全運転診断および省燃費診断の適正が大きく変化する。このため、車両の走行環境が、車両の進行方向に対する傾斜方向であることにより、さらに診断結果の優れたものとすることができる。
【0010】
また、車両におけるステアリングの左右位置にそれぞれかかる圧力を検出する圧力センサが設けられており、運転診断手段は、ステアリングにかかる左右の荷重変化を用いて、ドライバの安全確認度合いを診断する態様とすることもできる。
【0011】
このように、ステアリングにかかる左右の荷重変化を用いることにより、ドライバの安全度合いを簡易でありながら正確に診断することができる。
【0012】
さらに、車両の走行環境は、車両における外界の見通し度合いである外界見通度合であり、運転診断手段は、走行環境検出手段で検出された外界見通度合を用いて、ドライバの安全確認度合いを診断する態様とすることができる。
【0013】
このように、外界見通し度合いを用いてドライバの安全確認度合いを診断することにより、車両の周囲の状況をも加味した安全運転診断を行うことができる。したがって、さらに精度よく安全運転診断を行うことができる。
【0014】
また、上記課題を解決した本発明に係る運転支援装置は、上記運転診断装置と、車両のシート位置調整を行うシート位置調整手段および車両のステアリング位置を調整するステアリング位置調整手段のうちの少なくとも一方と、を備え、走行環境検出手段で検出された外界見通度合を用いて、シート位置およびステアリング位置のうちの少なくとも一方を調整することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る運転支援装置においては、走行環境検出手段で検出された外界見通度合を用いて、シート位置およびステアリング位置のうちの少なくとも一方を調整する。このため、安全運転確認を行う際に好適にドライバに対する運転支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る運転診断装置および運転支援装置によれば、安全運転診断および省燃費診断を行う際に、効率的な診断を行うことができるとともに、診断結果の正確性に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置のブロック構成図である。
【図2】ドライバシートの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る運転支援装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】左右安全確認診断の手順を示すフローチャートである。
【図5】左右安全確認支援の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(d)は、いずれも一時停止交差点における車両の停止位置とその周囲の障害物との位置関係を模式的に示す平面図である。
【図7】左右確認診断を行う際の確認時間のパラメータを示す図である。
【図8】左右確認支援を行う際のアクチュエータの作動量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る運転診断装置を備える運転支援装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置は、運転支援ECU(Electronic control unit)1を備えている。運転支援ECU1には、ナビゲーション装置2、外界計測センサ3、車両センサ4、シート圧センサ5、シートバック圧センサ6、およびステアリング圧センサ7が接続されている。さらに、運転支援ECU1には、ステアリングコラム可動アクチュエータ8、シートスライドアクチュエータ9、およびマッサージ機能アクチュエータ10が接続されている。
【0020】
ナビゲーション装置2は、全地球測位システム(Global PositioningSystem、以下「GPS」という)等を利用して自車両の現在位置を検出するとともに、走行目的地までの各種案内を行う。このナビゲーション装置2は、自車両の現在位置周辺の地図をディスプレイ上に表示するための地図情報データベースを保持している。また、ナビゲーション装置2は、自車両の位置に関する位置情報および自車両の現在位置周辺における地図情報を運転支援ECU1に送信する。
【0021】
外界計測センサ3は、車両の前方に取り付けられたカメラやレーダなどを備えている。カメラでは、車両の前方を撮像し、撮像した画像に画像処理を施すことにより、自車両の周囲における障害物等の障害物情報を取得する。また、レーダは、レーザレーダやミリ波レーダ等からなり、自車両の周囲における障害物と自車両との距離を計測し、距離情報として取得する。外界計測センサ3は、取得した障害物情報や距離情報を運転支援ECU1に送信する。
【0022】
車両センサ4は、車速センサ、ブレーキセンサ、前後左右加速度センサ、ステアリングセンサ、エンジン出力センサ、アクセル開度センサ等を備えて構成されている。車両センサ4では、これらのセンサに基づいて、車両の走行速度や走行方向などの走行情報を取得する。車両センサ4は、取得した走行情報を運転支援ECU1に送信する。
【0023】
シート圧センサ5は、車両の運転席における着座シートに設けられており、ドライバがシートに着座した際に掛かるシート圧力を検出しているシート圧センサ5は、検出したシート圧力に関するシート圧情報を運転支援ECU1に送信する。
【0024】
シートバック圧センサ6は、車両の運転席におけるシートバックに設けられており、ドライバがシートバックに寄りかかった際に掛かるシートバック圧を検出している。シートバック圧センサ6は、検出したシートバック圧に関するシートバック圧情報を運転支援ECU1に送信する。
【0025】
ステアリング圧センサ7は、車両のステアリングホイールに設けられており、ステアリング圧力を検出している。ステアリング圧センサ7は、ステアリング圧力として、ステアリングに対して、前後方向にかかる圧力(以下「前後方向圧力」という)およびドライバがステアリングを握ることに基づく前後方向への圧力(以下、「グリップ圧力」という)を検出している。このうち、ステアリングの前後方向にかかる圧力は、主に車両の加減速に起因して生じる。また、グリップ圧力については、ステアリングの左右それぞれについて検出している。このステアリング圧センサ7では、ステアリングホイールの回転状態に係わらず、ステアリング圧の検出が可能とされている。ステアリング圧センサ7は、検出したステアリング圧に関するステアリング圧情報を運転支援ECU1に送信する。
【0026】
また、運転支援ECU1は、走行環境検出部11、診断配分切替部12、安全運転規範モデルデータベース13、および省燃費運転(エコノミー運転、以下「エコ運転」という)規範モデルデータベース14を備えている。また、運転支援ECU1は、安全運転診断部15、エコ運転診断部16、診断結果データベース17、およびアクチュエータ制御部18を備えている。
【0027】
走行環境検出部11は、ナビゲーション装置2から送信された位置情報および地図情報に基づいて、自車両が走行する際の周囲の環境である走行環境を取得する。ここで取得する走行環境としては、たとえば自車両の走行路の傾斜方向や一時停止交差点などがある。走行環境検出部11は、取得した走行環境を走行環境情報として診断配分切替部12、安全運転診断部15、およびエコ運転診断部16に出力する。
【0028】
診断配分切替部12は、走行環境検出部11から出力された走行環境情報に基づいて、安全運転診断とエコ運転診断との間における診断配分を調整し、安全運転診断とエコ運転診断との配分を決定した診断配分に切り替える。診断配分切替部12は、安全運転診断とエコ運転診断との診断配分を、調整した診断配分に切り替えるための切替信号を安全運転診断部15およびエコ運転診断部16にそれぞれ出力する。
【0029】
安全運転規範モデルデータベース13は、安全運転診断を行う際の規範モデルとなる安全運転規範モデルを記憶している。安全運転規範モデルには、走行環境に応じた安全運転を行うための規範となるモデルが含まれる。具体的には、一時停止時には左右確認を行うなどのモデルが記憶されている。
【0030】
エコ運転規範モデルデータベース14は、エコ運転診断を行う際の規範モデルとなるエコ運転規範モデルを記憶している。エコ運転規範モデルには、走行環境に応じたエコ運転を行うための規範となるモデルが含まれる。具体的には、車両の走行時に、所定の車速の範囲内で走行を行うなどのモデルが記憶されている。
【0031】
安全運転診断部15は、走行環境検出部11から出力される走行環境情報、外界計測センサ3、車両センサ4、シート圧センサ5、シートバック圧センサ6、およびステアリング圧センサ7から送信される各情報に基づいて、ドライバの安全運転度合いを診断する。また、安全運転診断部15は、安全運転診断を行う際に、安全運転規範モデルデータベース13から安全運転規範モデルを読み出す。
【0032】
さらに、安全運転診断部15は、読み出した安全運転規範モデルに対して、走行環境検出部11から出力された走行環境情報および各センサから送信された各情報を参照することにより、安全運転診断を行う。また、安全運転診断を行う際には、診断配分切替部12から出力される切替信号に応じた配分で診断を行う。安全運転診断部15は、ドライバの安全運転に対する診断結果である安全運転診断結果を診断結果データベース17に記憶させる。
【0033】
エコ運転診断部16は、走行環境検出部11から出力される走行環境情報、外界計測センサ3、車両センサ4、シート圧センサ5、シートバック圧センサ6、およびステアリング圧センサ7から送信される各情報に基づいて、ドライバのエコ運転度合いを診断する。また、エコ運転診断部16は、エコ運転診断を行う際に、エコ運転規範モデルデータベース14からエコ運転規範モデルを読み出す。
【0034】
さらに、エコ運転診断部16は、読み出したエコ運転規範モデルに対して、走行環境検出部11から出力された走行環境情報および各センサから送信された各情報を参照することにより、エコ運転診断を行う。また、エコ運転診断を行う際には、診断配分切替部12から出力される切替信号に応じた配分で診断を行う。エコ運転診断部16は、ドライバの安全運転に対する診断結果であるエコ運転診断結果を診断結果データベース17に記憶させる。
【0035】
診断結果データベース17は、安全運転診断部15から出力される安全運転診断結果を記憶している。さらに、診断結果データベース17は、エコ運転診断部16から出力されるエコ運転診断結果を記憶している。ここで、安全運転診断結果には、ドライバが一時停止交差点で左右安全確認を行ったか否かの判断結果が含まれている。
【0036】
アクチュエータ制御部18は、診断結果データベース17に記憶されている安全運転診断結果およびエコ運転診断結果に基づいて、ステアリングコラム可動アクチュエータ8、シートスライドアクチュエータ9、およびマッサージ機能アクチュエータ10の作動量を算出する。アクチュエータ制御部18は、算出した各アクチュエータ8〜10の作動量に応じた制御信号を各アクチュエータ8〜10にそれぞれ送信する。
【0037】
また、ステアリングコラム可動アクチュエータ8は、ステアリングコラムに設けられており、ステアリングホイールを前後に移動させるものである。ステアリングコラム可動アクチュエータ8は、運転支援ECU1におけるアクチュエータ制御部18から送信される制御信号に基づいて、ステアリングホイールを前後方向に移動させる。
【0038】
シートスライドアクチュエータ9は、運転席であるドライバシートを支持するスライド機構に設けられており、ドライバシートを前後方向に移動させるものである。シートスライドアクチュエータ9は、運転支援ECU1におけるアクチュエータ制御部18から送信される制御信号に基づいて、ドライバシートを前後に移動させる。
【0039】
マッサージ機能アクチュエータ10は、運転席におけるシートバックに設けられており、図示しないローラを上下に移動させるものである。ローラは、シートバック内に2つ設けられており、図2に示すように、運転席におけるシートバック30の内側に設けられた左側ローラ案内路31および右側ローラ案内部32に沿ってそれぞれ上下に移動可能とされている。マッサージ機能アクチュエータ10は、左側ローラ案内路31および右側ローラ案内部32に沿ってローラを上下に移動させる。
【0040】
次に、本実施形態に係る運転支援装置における処理手順について説明する。図3は、本実施形態に係る運転支援装置における処理手順を示すフローチャートである。
【0041】
図3に示すように、本実施形態に係る運転支援装置においては、図示しない個人認証装置によってドライバの個人認証を行う(S1)。個人認証を行うことにより、ドライバ個々の安全運転診断およびエコ運転診断が行われる。ここで用いられる個人認証装置としては、たとえばドライバの顔を撮像した画像に画像処理を施してドライバの個人を認証する装置や、ドライバが有する識別カードを読み込む装置などを用いることができる。また、ここでの個人認証の内容には、ドライバの属性、たとえばドライバの身体能力などが含まれる。個人認証が済んだら、走行環境検出部11は、ナビゲーション装置2から送信される位置情報および地図情報に基づいて、自車両の走行環境を取得する(S2)。
【0042】
自車両の走行環境を取得したら、診断配分切替部12は、自車両の走行路の傾斜方向を取得し、取得した傾斜方向に基づいて、自車両の走行環境が上り坂であるか否かを判断する(S3)。上り坂を走行する場合、車両の速度が出難く、燃費も悪くなる。さらには、発進の際に車両にかかる負担が大きくなる。この結果、運転診断を行う場合には、安全運転診断よりもエコ運転診断を行う際の診断結果が顕著に反映されやすくなる。
【0043】
このため、自車両の走行環境が上り坂であるか否かの判断の結果、自車両の走行環境が上り坂であると判断した場合には、安全運転診断よりもエコ運転診断を重視し、安全運転診断とエコ運転診断との診断比率を調整して、エコ運転診断対安全運転診断を80対20とする(S4)。その結果、エコ運転診断の診断比率を80%に設定し、安全運転診断の診断比率を20%に設定する。
【0044】
一方、車両の走行環境が上り坂でないと判断した場合には、車両の走行環境が下り坂であるか否かを判断する(S5)。自車両の走行環境が下り坂である場合、発進への負担は下がるものの、速度超過傾向が生じる。この結果、運転診断を行う際には、エコ運転診断よりも安全運転診断を行う際の診断結果が顕著に反映されやすくなる。
【0045】
このため、自車両の走行環境が下り坂であるか否かの判断の結果、自車両の走行環境が下り坂であると判断した場合には、エコ運転診断よりも安全運転診断を重視し、エコ運転診断対安全運転診断を20対80とする(S6)。その結果、安全運転診断の診断比率を80%に設定し、エコ運転診断の診断比率を20%に設定する。
【0046】
さらに、車両の走行環境が下り坂でないと判断した場合には、車両の走行環境は平坦路であることとなる。車両の走行環境が平坦路である場合には、エコ運転診断と安全運転診断とを同じ程度で行うことができるので、エコ運転診断対安全運転診断を50対50とする(S7)。その結果、安全運転診断の診断比率を50%に設定し、エコ運転診断の診断比率を50%に設定する。
【0047】
続いて、安全運転診断部15およびエコ運転診断部16において、設定された診断比率に応じた安全運転診断およびエコ運転診断を行う。ここで、安全運転診断部15では、安全運転診断の一部として、車両が一時停止交差点に差し掛かった場合に、左右安全確認を行ったか否かを判断している。また、診断結果データベース17には、左右安全確認を行ったか否かの診断結果が蓄積されている。アクチュエータ制御部18では、この左右安全確認の診断結果に応じて、各アクチュエータ8〜10の一時停止交差点における制御内容を決定する。
【0048】
そこで、ナビゲーション装置2から送信されるナビゲーション情報を参照し、安全運転診断およびエコ運転診断を行った後、車両が一時停止交差点に差し掛かったか否かを判断する(S8)。その結果、一時停止交差点に差し掛かっていないと判断した場合には、そのまま運転支援ECU1における処理を終了する。
【0049】
また、車両が一時停止交差点に差し掛かったと判断した場合には、診断結果データベース17から左右安全確認診断結果の蓄積情報を読み出して確認する(S9)。それから、ステップS1における個人認証の際に確認したドライバの身体能力が低いか否か、あるいは、診断結果データベース17に記憶された左右安全確認診断結果が良いか否かを判断する(S10)。
【0050】
身体能力が低いか否かの判断は、年齢や性別、さらにはドライバの健康状態等によって予め個人認証対象として記録されており、その記録を確認することによって行われる。また、左右安全確認診断結果が良いか否かの判断は、一時停止交差点において、過去に左右安全確認を行った割合が所定のしきい値を超えるか否かによって行われる。
【0051】
その結果、身体能力が低い、および左右安全確認診断結果が良いという2つの条件の一方または両方を満たすと判断した場合には、アクチュエータ制御部18において、左右安全確認支援を行い(S11)、その後、安全運転診断部15において、左右安全確認診断を行う(S12)。また、ステップS10において、身体能力が低くなく、かつ左右安全確認診断結果が良くないと判断した場合には、左右安全確認支援を行うことなく、左右安全確認診断を行う(S12)。
【0052】
それから、左右安全確認診断の結果を診断結果データベース17に蓄積して(S13)、運転支援ECU1における処理を終了する。
【0053】
続いて、左右安全確認支援(S11)および左右安全確認診断(S12)の手順について説明する。ここでは、先に左右安全確認診断の手順を説明し、続いて、左右安全確認支援の手順を説明する。図4は、左右安全確認診断の手順を示すフローチャートである。
【0054】
図4に示すように、左右安全確認支援を行う際には、安全運転診断部15は、シート圧センサ5によって計測されて送信されたシート圧情報に基づくシート圧を取得する(S21)。安全運転診断部15では、前回取得したシート圧と今回取得したシート圧とを比較し、取得したシート圧が車両前方に増加しているか否かを判断する(S22)。
【0055】
ドライバが安全確認を行う際には、上体を前方に移動させるため、シート圧が前方に移動することとなる。したがって、ステップS22における判断の結果、シート圧が車両前方に増加していないと判断した場合には、ドライバに左右確認意図がないと判断して(S32)、左右安全確認診断の処理を終了する。
【0056】
一方、取得したシート圧が車両前方に増加していると判断した場合には、安全運転診断部15は、シートバック圧センサ6によって計測されて送信されたシートバック圧情報に基づくシートバック圧を取得する(S23)。安全運転診断部15では、前回取得したシートバック圧と今回取得したシートバック圧とを比較し、取得したシートバック圧が減少方向に変化しているか否かを判断する(S24)。
【0057】
ドライバが安全確認を行う際には、上体を前方に移動させるため、シートバック圧が減少することとなる。したがって、ステップS24における判断の結果、シート圧が減少方向に変化していないと判断した場合には、ドライバに左右確認意図がないと判断して(S32)左右安全確認診断の処理を終了する。
【0058】
また、取得したシートバック圧が減少方向に変化していると判断した場合には、安全運転診断部15は、ステアリング圧センサ7によって計測されて送信されたステアリング圧情報に基づくステアリング圧を取得する(S25)。安全運転診断部15では、前回取得したステアリング圧と今回取得したステアリング圧とを比較し、前後方向圧力が後方に向けて増加しているか否かを判断する(S26)。
【0059】
ここで、ドライバが安全確認を行う際には、上体を前方に移動させるため、ステアリングが後方に押し出されることとなる。したがって、ステップS26における判断の結果、前後方向圧力が後方に向けて増加していないと判断した場合には、ドライバに左右確認意図がないと判断して(S32)、左右安全確認診断の処理を終了する。
【0060】
一方、前後方向圧力が後方に向けて増加していると判断した場合には、ステアリングの左右のグリップ圧力が前方に増加しているか否かを判断する(S27)。ステアリングの左右のグリップ力が前方に増加していないと判断した場合には、ドライバに左右確認意図がないと判断して(S32)、左右安全確認診断の処理を終了する。
【0061】
また、ステアリングの左右のブリップ力が前方に増加していると判断した場合には、ドライバが右確認を行ったか否かを判断する(S28)。右確認を行ったか否かの判断では、次の2つの右確認条件が揃った場合に、右確認を行ったと判断する。その1つ目の条件である第1右確認条件は、ステアリングの右側のグリップ圧力が増大するかまたは変化がないとともに、ステアリング前方に圧力が増大するかまたは変化がないことである。その2つ目の条件である第2右確認条件は、ステアリング左グリップの圧力が後方に増大することである。
【0062】
その結果、第1右確認条件および第2右確認条件の一方または両方が成立していないと判断した場合には、右確認を行っていないと判断できる。この場合には、左右確認が不十分であると判断して(S33)、左右安全確認診断を終了する。また、第1右確認条件および第2右確認条件の両方が成立していると判断した場合には、ドライバが左確認を行ったか否かを判断する(S29)。
【0063】
左確認を行ったか否かの判断では、次の2つの左確認条件が揃った場合に、左確認を行ったと判断する。その1つ目の条件である第1左確認条件は、ステアリングの左側のグリップ圧力が増大するかまたは変化がないとともに、ステアリング前方に圧力が増大するかまたは変化がないことである。その2つ目の条件である第2左確認条件は、ステアリング右グリップの圧力が後方に増大することである。
【0064】
その結果、第1左確認条件および第2左確認条件の一方または両方が成立していないと判断した場合には、左確認を行っていないと判断できる。この場合には、左右確認が不十分であると判断して(S33)、左右安全確認診断を終了する。また、第1左確認条件および第2左確認条件の両方が成立していると判断した場合には、ドライバが再び右確認を行ったか否かを判断する(S30)。ドライバが再び右確認を行ったか否かの判断は、ステップS28において行われた判断と同一の手順で行われる。
【0065】
そして、第1右確認条件および第2右確認条件の両方が成立していると判断した場合には、再度右確認を行ったと判断し、十分な左右確認を行ったと判断して(S31)、左右安全確認診断を終了する。一方、第1右確認条件および第2右確認条件の一方または両方が成立していないと判断した場合には、右確認を行ってないと判断し、左右確認不十分であると判断して(S33)、左右安全確認診断を終了する。
【0066】
続いて、左右安全確認支援の手順について説明する。図5は、左右安全確認支援の手順を示すフローチャートである。
【0067】
図5に示すように、左右安全確認支援においては、アクチュエータ制御部18は、シートスライドアクチュエータ9を作動させて、ドライバが着座するドライバシートを前方にスライドさせる(S41)。ドライバシートを前方にスライドさせることにより、ドライバが前方を覗き込みやすくする。次に、ステアリングコラム可動アクチュエータ8を作動させて、ステアリングホイールを車両の前方にスライドさせる(S42)。ステアリングホイールを前方にスライドさせることにより、ドライバが上体を前方に移動させる際の移動を補助する。
【0068】
それから、マッサージ機能アクチュエータ10を作動させて、マッサージ機能アクチュエータ10における左側ローラを押し出す(S43)。マッサージ機能アクチュエータ10における左側ローラを押し出すことにより、ドライバが右安全確認を行う際の上体のひねりを補助する。続いて、マッサージ機能アクチュエータ10を作動させて、マッサージ機能アクチュエータ10における右側ローラを押し出す(S44)。マッサージ機能アクチュエータ10における右側ローラを押し出すことにより、ドライバが左安全確認を行う際の上体のひねりを補助する。
【0069】
さらに、マッサージ機能アクチュエータ10を作動させて、マッサージ機能アクチュエータ10における左側ローラを押し出す(S45)。マッサージ機能アクチュエータ10における左側ローラを押し出すことにより、ドライバが右安全確認を行う際の上体のひねりを補助する。こうして、左右安全確認支援の処理を終了する。
【0070】
このように、本実施形態に係る運転支援装置においては、走行環境に基づいて、安全運転診断とエコ運転診断の診断比率を調整している。具体的には、走行環境が上り坂であれば、安全運転診断の比率を高くし、下り坂であれば、エコ運転診断の比率を高くしている。このため、運転診断に適する走行環境に応じた診断比率とすることができるので、効率的な診断を行うことができるとともに、診断結果の正確性に優れたものとすることができる。その結果、安全運転診断とエコ運転診断を効率よく共存させることができることができるとともに、ドライバにとっても納得性の高い運転診断を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態に係る運転支援装置では、左右安全確認診断を行う際に、ステアリング圧を利用している。このため、ドライバが行う左右確認を確実にモニタリングすることができる。その結果、安全運転診断を確実に行うことができるとともに、ドライバの成りすましを防止することもできる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る運転支援装置においては、左右安全確認診断結果が低くない場合に、左右安全確認支援を行い、左右安全確認を行いやすくしている。このため、左右安全確認を行う運転行動を習慣化させるための動機付けを高めることができる。さらに、ドライバの身体能力が低い場合にも左右安全確認支援を行うようにしている。このため、たとえば高齢者など、安全運転確認を行うために多くの苦労を要するドライバに対して、左右安全確認支援を行うことができる。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、安全運転診断とエコ運転診断との比率を20:80、50:50、80:20の3パターンで設定しているが、これら以外の比率で設定することもできるし、さらに多くのパターンを設定することもできる。
【0074】
また、左右安全確認診断を行うにあたり、右確認および左確認を行う際、ステアリング圧のみを利用している。これに対して、たとえば、ステアリング圧がかかる時間を検出し、ステアリング圧がかかった時間が所定にしきい値を超える場合に右確認および左確認等を行ったと判断する態様とすることもできる。
【0075】
さらに、ステアリング圧がかかった時間を利用する場合には、外界計測センサ3の検出結果に応じて、一時停止交差点における障害物の存在を検出し、障害物の状態に基づいて外界見通し度合いを判断し、外界見通し度合いに応じて安全確認時間を調整する態様とすることもできる。なお、ここでの安全確認時間とは、安全確認行動をとった際に、安全確認を行ったと認められる時間をいう。この態様の例について、図6〜図8を参照して説明する。図6(a)〜(d)は、いずれも一時停止交差点における車両の停止位置とその周囲の障害物との位置関係を模式的に示す平面図である。
【0076】
ここで、図6(a)では、車両からの見通しが良好である状態を示している。また、図6(b)では、車両から見て右側に障害物Xが存在し、右側の見通しが悪い場合の状態を示している。さらに、図6(c)では、車両から見て左側に障害物Xが存在し、左側の見通しが悪い場合の状態を示している。そして、図6(d)では、車両から見て両側に障害物Xが存在し、両側の見通しが悪い場合の状態を示している。
【0077】
また、図7は、左右確認診断を行う際の確認時間のパラメータを示す図、図8は、左右確認支援を行う際のアクチュエータの作動量を示す図である。図8におけるアクチュエータの作動量としては、左右ローラの押し出し量、ドライバシートの移動量(以下「シート移動量」という)、ステアリングの移動量(以下「ステア移動量」という)がある。
【0078】
たとえば、図6(a)に示すように、車両Mが一時停止する交差点において、見通しが良好である場合について説明する。この場合には、図7に示すように、一回目の右確認時間、左確認時間、2回目の右確認時間をいずれも見通し良好時の確認時間である第1確認時間に設定する。
【0079】
また、このときに左右確認支援を行うにあたり、シート移動量を、見通し良好時のシート移動量である第1シート移動量Saに設定する。さらに、ステア移動量を、見通し良好時のステア移動量である第1ステア移動量Sbに設定する。また、第1右確認時左ローラ押し出し量、左確認時右ローラ押し出し量、および第2右確認時左ローラ押し出し量を、いずれも見通し良好時のローラ押し出し量である第1ローラ押し出し量Paに設定する。
【0080】
さらに、図6(b)に示すように、車両の右側の見通しが悪い場合には、図7に示すように、1回目の右確認時間および2回目の右確認時間をいずれも見通しが悪い時の確認時間である第2確認時間TAに設定し、左確認時間を第1確認時間Taに設定する。ここで、第2確認時間TAは、第1確認時間Taよりも短い時間に設定されている。
【0081】
また、このときに左右確認支援を行うにあたり、図8に示すように、シート移動量を、見通しが悪い時のシート移動量である第2シート移動量SAに設定する。さらに、ステア移動量を、見通しが悪い時のステア移動量である第2ステア移動量SBに設定する。また、第1右確認時左ローラ押し出し量および第2右確認時左ローラ押し出し量を、見通しが悪い時のローラ押し出し量である第2ローラ押し出し量PAに設定し、左確認時右ローラ押し出し量を第1ローラ押し出し量Paに設定する。
【0082】
ここで、第2シート移動量SAおよび第2ステア移動量SBは、いずれの第1シート移動量Saおよび第1ステア移動量Sbよりも大きな値に設定されている。また、第2ローラ押し出し量PAは、第1ローラ押し出し量Paよりも大きな値に設定されている。
【0083】
さらに、図6(c)に示すように、車両の左側の見通しが悪い場合には、図7に示すように、左確認時間を第2確認時間TAに設定し、1回目の右確認時間および2回目の右確認時間をいずれも第1確認時間Taに設定する。また、このときに左右確認支援を行うにあたり、図8に示すように、シート移動量およびステア移動量を、それぞれ第2シート移動量SAおよび第2ステア移動量SBに設定する。さらに、左確認時右ローラ押し出し量を第2ローラ押し出し量PAに設定し、第1右確認時左ローラ押し出し量および第2右確認時左ローラ押し出し量を、第1ローラ押し出し量Paに設定する。
【0084】
そして、図6(d)に示すように、車両の両側の見通しが悪い場合には、図7に示すように、1回目の右確認時間、左確認時間、および2回目の右確認時間をいずれも第2確認時間TAに設定する。また、このときに左右確認支援を行うにあたり、図8に示すように、シート移動量およびステア移動量を、それぞれ第2シート移動量SAおよび第2ステア移動量SBに設定する。さらに、第1右確認時左ローラ押し出し量、左確認時右ローラ押し出し量、および第2右確認時左ローラ押し出し量を、第2ローラ押し出し量PAに設定する。
【0085】
このように、一時停止交差点における障害物の状態に応じて、確認時間を調整して設定している。具体的に、障害物が存在する方向の確認を行う際には、確認時間を長くするようにしている。このため、より精度の高い安全運転診断を行うことができる。さらに、一時停止交差点における障害物の状態に応じて、アクチュエータの作動量を調整して設定している。具体的に、障害物が存在する方向の確認を行う際には、アクチュエータの作動量を大きくするようにしている。このため、安全運転確認を行う際のドライバの支援をより好適に行うことができる。
【0086】
なお、上記の例では、障害物の有無に応じて、確認時間やアクチュエータの作動量を二者択一として調整するようにしているが、その他、障害物の位置や大きさ、あるいは障害物までの距離等、種々の状態に応じて、確認時間やアクチュエータの作動量として、2段階を超える複数段階に設定する態様とすることもできる。
【0087】
また、上記実施形態では、左右安全確認診断結果が良い場合に左右安全確認支援を行うようにしているが、左右安全確認診断結果が悪い場合に、左右安全確認支援を行う態様とすることもできる。この場合には、左右安全確認を行わないドライバに対して、左右安全確認を促進することができる。かかる態様の場合には、左右安全確認を行わない傾向の強いドライバに対して、安全確認支援を行うことができるので、左右安全確認の実施率を高くすることができる。
【0088】
さらに、上記実施形態では、身体能力が低いドライバに対して一律的に左右安全確認支援を行うようにしているが、身体能力が低いドライバであっても、左右安全確認診断結果がある良い場合に左右安全確認支援を行う態様とすることもできる。この態様では、身体能力が低いドライバに対しても、好適に左右安全確認を促進することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…運転支援ECU、2…ナビゲーション装置、3…外界計測センサ、4…車両センサ、5…シート圧センサ、6…シートバック圧センサ、7…ステアリング圧センサ、8…ステアリングコラム可動アクチュエータ、9…シートスライドアクチュエータ、10…マッサージ機能アクチュエータ、11…走行環境検出部、12…診断配分切替部、13…安全運転規範モデルデータベース、14…エコ運転規範モデルデータベース、15…安全運転診断部、16…エコ運転診断部、17…診断結果データベース、18…アクチュエータ制御部、30…シートバック、31…左側ローラ案内路、32…右側ローラ案内部、M…車両、X…障害物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転するドライバの運転診断として、安全確認診断と省燃費運転診断とを行う運転診断手段を備える運転診断装置において、
前記車両の走行環境を検出する走行環境検出手段と、
前記安全確認診断と前記省燃費診断の比率を調整する診断比率調整手段と、を備え、
前記診断比率調整手段は、前記走行環境検出手段で検出された前記車両の走行環境に基づいて、前記安全確認診断と前記省燃費運転診断の比率を調整することを特徴とする運転診断装置。
【請求項2】
前記車両の走行環境は、前記車両の進行方向に対する傾斜方向である請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記車両におけるステアリングの左右位置にそれぞれかかる圧力を検出する圧力センサが設けられており、
前記運転診断手段は、前記ステアリングにかかる左右の荷重変化を用いて、前記ドライバの安全確認度合いを診断する請求項1または請求項2に記載の運転診断装置。
【請求項4】
前記車両の走行環境は、前記車両における外界の見通し度合いである外界見通度合であり、
前記運転診断手段は、前記走行環境検出手段で検出された前記外界見通度合を用いて、前記ドライバの安全確認度合いを診断する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の運転診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運転診断装置と、
前記車両のシート位置調整を行うシート位置調整手段および前記車両のステアリング位置を調整するステアリング位置調整手段のうちの少なくとも一方と、を備え、
前記走行環境検出手段で検出された前記外界見通度合を用いて、前記シート位置および前記ステアリング位置のうちの少なくとも一方を調整することを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−272069(P2010−272069A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125455(P2009−125455)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】