説明

過剰増殖疾患のアントラキノンによる治療

本発明は、過剰増殖障害を治療するための活性を有するアントラキノン化合物に関する。さらに本発明は、過剰増殖障害を治療するために、化合物を単独または一つもしくは複数の他の活性薬剤もしくは治療との組み合わせで用いる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、過剰増殖障害を治療するための活性を有する化合物に関する。さらに本発明は、過剰増殖障害を治療するために、化合物を単独または一つもしくは複数の他の活性薬剤もしくは治療との組み合わせで用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
関連技術
米国における死亡の四分の一は癌によるものであり、死因の第二位を占めている。U.S. Cancer Statistics Working Group; United States Cancer Statistics: 1999-2001 Incidence, Atlanta (GA): Department of Health and Human Services, Centers for Disease Control and Prevention, and National Cancer Institute (2004)。米国立がん研究所はほぼ1,000万人の米国人が浸潤癌の既往歴を有すると報告している一方、米国癌学会は2004年中に130万人を超える米国人が浸潤癌の診断を受けることになり、そのうち50万例以上が死に至ると推定している。American Cancer Society, Cancer Facts & Figures 2004(非特許文献1)。これらの統計は米国における診断が予想される100万例の基底および扁平細胞皮膚癌は除外している。
【0003】
癌はその起源となる器官および細胞組織に基づいて分類され、下記が含まれる:(i)癌腫(体表面を覆っている、または体内の器官および様々な腺を裏打ちしている細胞層である、上皮組織に生じる最も一般的な種類の癌);(ii)白血病(骨髄、リンパ節および脾臓を含む造血組織に発生);(iii)リンパ腫(リンパ系の細胞に発生);(iv)黒色腫(皮膚の上皮細胞の間に位置する色素細胞に発生);および(v)肉腫(骨、筋および血管などの体の結合組織に発生)。(Molecular Biology of the Cell: Third Edition, ''Cancer,'' Chapter 24, pp.1255-1294, B. Alberts et al., (eds.), Garland Publishing, Inc., New York (1994)(非特許文献2);およびStedman's Pocket Medical Dictionary; Williams and Wilkins, Baltimore (1987)(非特許文献3)参照)。これらの広い癌分類の中で、いくつか挙げると乳癌、肺癌、膵臓癌、大腸癌、および前立腺癌などの100を超える癌の下位分類がある。
【0004】
癌細胞は様々な化学物質、放射線、ウイルスへの曝露からの細胞DNAへの損傷(すなわち、DNA配列の変化または発現パターンの変化)の結果として、またはある種の十分に解明されていない体内の細胞シグナリング事象が起こる場合に発生する。細胞DNAが損傷される場合はほとんど、細胞は死滅するか、またはDNAを修復しうるかのいずれかである。しかし、癌細胞の場合、損傷されたDNAは修復されず、細胞は分化を続けて、変化した細胞生理学および機能を示す。
【0005】
新生物、すなわち腫瘍は、異常で、加速された増殖速度(すなわち、過剰増殖性の細胞増殖)によって生じる細胞の塊である。腫瘍細胞が一つの塊に限局されたままであるかぎり、腫瘍は良性と考えられる。しかし、癌性腫瘍は他の組織に浸潤する能力を有し、悪性と呼ばれる。一般に、癌細胞は次の二つの遺伝性の性質によって定義される:細胞およびそれらの子孫が1)正常な抑制に逆らって複製する、および2)他の細胞の領分に浸潤し、コロニー形成する。
【0006】
癌性腫瘍は非常に複雑な脈管構造および分化した組織からなる。癌性腫瘍の大多数は低酸素成分を有し、これらは放射線療法および化学療法を含む標準の抗癌治療に比較的抵抗性である。Brown, Cancer Res. 59: 5863 (1999)(非特許文献4);およびKunz, M. et al., Mol Cancer 2:1 (2003)(非特許文献5)。ThomlinsonおよびGrayはヒト腫瘍の最初の解剖学的モデルを示し、これは血管と神経腫瘍組織との間にある厚さ100から150μmの低酸素組織層を記載している。
【0007】
研究により、いくつかの癌性腫瘍内の低酸素組織は、一連の複雑なメカニズムによって癌の進行を促進することが明らかにされている。Brown.(非特許文献4)、前記、およびKunz et al.(非特許文献5)、前記参照。これらの中には、特定のシグナル伝達経路および遺伝子調節メカニズムの活性化、遺伝子突然変異の選択プロセスの誘導、腫瘍細胞アポトーシスならびに腫瘍血管形成がある。これらのメカニズムのほとんどは腫瘍進行に寄与している。したがって、組織低酸素は腫瘍の攻撃性および転移の中心的因子であると考えられてきた。腫瘍内の低酸素組織を標的とする治療法は、腫瘍関連の癌および/または障害を患っている患者に、確実に改善された治療を提供すると思われる。
【0008】
癌に加えて、所与の組織内の低酸素発生に関連するいくつかの過剰増殖疾患および/または障害がある。例えば、Shweiki et al.は、不十分な酸素レベルは、低酸素組織の必要性を補うために、しばしば新血管新生を引き起こすと説明している。新血管新生は、血管内皮成長因子(VEGF)などの特定の成長因子の発現によって仲介される。Shweiki et al., Nature 359:843 (1992)(非特許文献6)。しかし、組織発現を制御するために十分なフィードバックメカニズムなしに、低酸素に反応して特定の組織または成長因子が直接または間接的にアップレギュレートされると、様々な疾患および/または障害が確実に起こると考えられる(すなわち、低酸素により悪化した過剰増殖による)。例として、VEGFの過剰発現レベルを有する低酸素により悪化した過剰増殖疾患および/または障害には、加齢性黄斑変性症および糖尿病性網膜症などの眼の血管形成疾患、ならびに肝硬変が含まれる。Frank, Ophthalmic Res. 29:341 (1997)(非特許文献7);Ishibashi et al., Graefe's Archive Clin. Exp. Ophthamol. 235:159 (1997)(非特許文献8);Corpechot et al., Hepatology 35:1010 (2002)(非特許文献9)参照。
【0009】
米国特許第5,132,327号(特許文献1)は下記の構造を有するアントラキノンプロドラッグ化合物群を記載している:

式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素、X、NH-A-NHRおよびNH-A-N(O)R'R''からなる群より別々に選択され、ここでXはヒドロキシ、ハロゲノ、アミノ、C1-4アルコキシまたはC2-8アルカノイルオキシであり、AはNHとNHRまたはN(O)R'R''との間の鎖長が少なくとも2炭素原子のC2-4アルキレン基であり、かつR、R'およびR''はそれぞれ、窒素原子に結合している炭素原子がヒドロキシ基を持たず、炭素原子が二つのヒドロキシ基で置換されることはない、C1-4アルキル基ならびにC2-4ヒドロキシアルキルおよびC2-4ジヒドロキシアルキル基からなる群より別々に選択されるか、またはR'およびR''は一緒になってR'およびR''が結合している窒素原子と共に環内に3から7個の原子を有する複素環基を形成するC2-6アルキレン基であるが、ただしR1からR4の少なくとも一つは基NH-A-N(O)R'R''であり、この化合物は任意に生理的に許容される塩の形である。これらの化合物は癌の治療において有用であると記載されている。
【0010】
米国特許第5,132,327号(特許文献1)に開示されている化合物の中に化合物AQ4N(1,4-ビス{[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}-5,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオンビス-N-オキシドがある。

【0011】
AQ4Nは強力な抗過剰増殖活性を有し、かつ放射線および通常の化学療法剤の抗腫瘍効果を増強することが明らかにされている。Patterson, Drug Metab. Rev. 34:581 (2002)(非特許文献10)。多くの腫瘍細胞に対して、AQ4Nは本質的に細胞毒性ではなく;低酸素腫瘍において、これは細胞毒性化合物AQ4(1,4-ビス{[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ}-5,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン)に変換される。AQ4に関連する活性の中にDNA中への挿入およびトポイソメラーゼII活性の阻害がある。
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,132,327号
【非特許文献1】American Cancer Society, Cancer Facts & Figures 2004
【非特許文献2】Molecular Biology of the Cell: Third Edition, ''Cancer,'' Chapter 24, pp.1255-1294, B. Alberts et al., (eds.), Garland Publishing, Inc., New York (1994)
【非特許文献3】Stedman's Pocket Medical Dictionary; Williams and Wilkins, Baltimore (1987)
【非特許文献4】Brown, Cancer Res. 59: 5863 (1999)
【非特許文献5】Kunz, M. et al., Mol Cancer 2:1 (2003)
【非特許文献6】Shweiki et al., Nature 359:843 (1992)
【非特許文献7】Frank, Ophthalmic Res. 29:341 (1997)
【非特許文献8】Ishibashi et al., Graefe's Archive Clin. Exp. Ophthamol. 235:159 (1997)
【非特許文献9】Corpechot et al., Hepatology 35:1010 (2002)
【非特許文献10】Patterson, Drug Metab. Rev. 34:581 (2002)
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は、癌などの過剰増殖障害を治療するための組成物および方法に関する。本発明の一つの局面は、被験者の過剰増殖疾患を治療、改善、または予防する方法であって、該被験者に式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの治療的有効量を投与する段階を含む方法に関する:

式中:
R1、R2、R3およびR4は独立に水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1-4アルコキシ、C2-8アルカノイルオキシ、NH-A-NHR、またはNH-A-N(O)R'R''であり;
AはNHとNHRまたはN(O)R'R''との間の鎖長が少なくとも2炭素原子のC2-4アルキレン基であり;かつ
R、R'およびR''は独立に、窒素原子に結合している炭素原子がヒドロキシ基を持たず、炭素原子が二つのヒドロキシ基で置換されることはない、C1-4アルキル、C2-4ヒドロキシアルキル、またはC2-4ジヒドロキシアルキルであるか;または
R'およびR''は一緒になってR'およびR''が結合している窒素原子と共に環内に3から7個の原子を有する複素環基を形成するC2-6アルキレン基であり;
ただしR1からR4の少なくとも一つはNH-A-N(O)R'R''である。
【0014】
本発明の一つの態様において、式Iの化合物はAQ4Nである。

【0015】
本発明のさらなる局面は、動物の過剰増殖障害を治療、改善、または予防する方法であって、動物に式Iを有する化合物の治療的有効量を、一つまたは複数の活性薬剤または治療、例えば、化学療法剤または放射線療法剤/治療との組み合わせで投与する段階を含む方法である。
【0016】
本発明の好ましい態様において、一つまたは複数の化学療法剤は、過剰増殖障害の治療のために用いられる、用いられてきた、または有用であることが公知である、いかなる化学療法剤であってもよい。
【0017】
本発明の好ましい態様において、一つまたは複数の放射線療法剤または治療は、外部照射療法、近接照射療法、温熱療法、放射線外科術、荷電粒子線療法、中性子線療法、光線力学療法、または放射性核種療法でありうる。
【0018】
本発明の一つの態様において、式Iを有する化合物を一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤もしくは治療の投与前、投与中、および/または投与後に投与することができる。本発明のもう一つの態様において、式Iを有する化合物を一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤もしくは治療との組み合わせで投与する方法を複数回繰り返す。
【0019】
本発明の式Iを有する化合物と一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤もしくは治療との組み合わせは相加的効力または相加的治療効果を有すると思われる。本発明は、治療効果が相加的効果よりも大きい相乗的組み合わせも含む。好ましくは、そのような組み合わせは望まれない、または有害な作用を低減する、または回避することになる。特定の態様において、本発明に含まれる組み合わせ療法は、式Iを有する化合物あるいは任意の化学療法剤または放射線療法剤もしくは治療単独の投与に比べて、全般的に改善された治療法を提供することになる。特定の態様において、既存または実験的化学療法剤または放射線療法剤もしくは治療の用量が低減されるか、または投与頻度が低くなり、これは患者の服薬遵守を高め、それにより治療法を改善し、かつ望まれない、または有害な作用を低減することになる。
【0020】
さらに、本発明の方法は、これまで未治療の患者で有用であるだけでなく、放射線療法、化学療法、および/または手術を含むが、それらに限定されるわけではない、現行の標準的および/または実験的癌療法に対して部分的または完全に抵抗性の患者の治療においても有用であると思われる。好ましい態様において、本発明は他の治療法に対して抵抗性または不応性であることが明らかにされている、またはその可能性がある、過剰増殖障害の治療または改善のための治療法を提供することになる。
【0021】
いかなる理論にも縛られるつもりはないが、本発明のN-オキシド化合物のいくつかは、細胞毒性が非常に減弱されたプロドラッグとして機能すると考えられる。これらのN-オキシド化合物は標的組織内で低酸素状態によって活性化され(すなわち、窒素原子で還元され)、続いて宿主細胞DNAにおける塩基対の間に挿入されると考えられる。本発明の他のN-オキシド化合物は本質的な細胞毒性を有することもある。細胞毒性を高めるための化合物の標的には、DNA、ヘリカーゼ、微小管、タンパク質キナーゼC、ならびにトポイソメラーゼIおよびIIが含まれることが企図される。いくつかの病的組織は、過剰増殖を促進する著しい低酸素成分を有するため、組織のこの部分が優先的に標的になると考えられる。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明の一つの局面は、被験者の過剰増殖疾患を治療、改善、または予防する方法であって、該被験者に式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの治療的有効量を投与する段階を含む方法に関する:

式中:
R1、R2、R3およびR4は独立に水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1-4アルコキシ、C2-8アルカノイルオキシ、NH-A-NHR、またはNH-A-N(O)R'R''であり;
AはNHとNHRまたはN(O)R'R''との間の鎖長が少なくとも2炭素原子のC2-4アルキレン基であり;かつ
R、R'およびR''は独立に、窒素原子に結合している炭素原子がヒドロキシ基を持たず、炭素原子が二つのヒドロキシ基で置換されることはない、C1-4アルキル、C2-4ヒドロキシアルキル、またはC2-4ジヒドロキシアルキルであるか;または
R'およびR''は一緒になってR'およびR''が結合している窒素原子と共に環内に3から7個の原子を有する複素環基を形成するC2-6アルキレン基であり;
ただしR1からR4の少なくとも一つはNH-A-N(O)R'R''である。
【0023】
有用なアルキル基には、直鎖または分枝C1-10アルキル基、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t-ブチル、sec-ブチル、3-ペンチル、アダマンチル、ノルボルニル、および3-ヘキシル基が含まれる。
【0024】
有用なハロまたはハロゲン基には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。
【0025】
有用なアルコキシ基には、前述のC1-10アルキル基の一つで置換された酸素、特にメトキシおよびエトキシが含まれる。
【0026】
有用なアルカノイルオキシ基には、前述のC1-10アルキル基の一つで置換されたアシルオキシ、特にアセチルおよびプロピオニルが含まれる。
【0027】
有用な複素環基には、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizinyl)、ピロリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、イソクロマニル、クロマニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、テトロノイルおよびテトラモイル基が含まれる。
【0028】
本発明のもう一つの局面に従い、式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量、および少なくとも一つの他の活性薬剤が、少なくとも一つの薬学的に許容される担体を有する薬学的組成物の形で提供される。特定の場合に、少なくとも一つの他の活性薬剤は化学療法剤(活性ビタミンD化合物を含む)である。式Iを有する化合物は他の活性薬剤と共に一つの製剤に製剤してもよく、または独立に製剤してもよい。
【0029】
本発明の一つの局面に従い、過剰増殖障害を治療、改善、または予防する方法であって、式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量をそれを必要としている動物に投与する方法が提供される。本発明の特定の局面において、過剰増殖障害は癌である。一つの態様において、癌は固形腫瘍である。もう一つの態様において、癌は大腸癌、脳癌、神経膠腫、多発性骨髄腫、頭頸部癌(食道癌を除く)、肝細胞癌、黒色腫、卵巣癌、子宮頸癌、腎臓癌、および非小細胞肺癌からなる群より選択される。
【0030】
本発明のさらなる局面は、過剰増殖障害を治療、改善、または予防する方法であって、それを必要とする患者に式Iを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を、少なくとも一つの他の活性薬剤または治療との組み合わせで投与する段階を含む方法に関する。特定の態様において、式Iを有する化合物と化学療法剤との組み合わせを投与する。一つの態様において、化学療法剤はゲムシタビンおよびイリノテカンから選択される。
【0031】
式Iを有する化合物で治療することができる過剰増殖障害には、任意のいくつかの癌などの、任意の低酸素により悪化した過剰増殖疾患および/または障害が含まれる。一般に、そのような癌には膀胱、脳、乳房、子宮頚、結腸、子宮内膜、食道、頭頸部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、口腔、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、および精巣の癌が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの癌の特定のものはより具体的に急性および慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、子宮頸過形成、絨毛膜癌、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ性白血病、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、本態性血小板増多、尿生殖器癌、有毛細胞性白血病、頭頸部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵島細胞腺腫、髄様甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄性およびリンパ性白血病、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真性多血症、原発性脳癌、原発性マクログロブリン血症、前立腺癌、腎細胞癌、横紋筋肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、ならびにウィルムス腫瘍と呼ぶことができる。一つの態様において、癌は固形腫瘍である。もう一つの態様において、癌は大腸癌、脳癌、神経膠腫、多発性骨髄腫、頭頸部癌(食道癌を除く)、肝細胞癌、黒色腫、卵巣癌、子宮頸癌、腎臓癌、および非小細胞肺癌からなる群より選択される。
【0032】
本発明に従って治療することができる動物には、式Iを有する化合物の投与から利益を受けうるすべての動物が含まれる。そのような動物には、ヒト、イヌおよびネコなどのペット、ならびにウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物が含まれる。
【0033】
本明細書において用いられる「薬学的組成物」なる用語は、その個々の成分または構成要素がそれ自体薬学的に許容される、例えば、経口投与が予測される場合、経口使用のために許容され;局所投与が予測される場合、局所的に許容され;かつ静脈内投与が予測される場合、静脈内で許容される、限定的組成物と理解される。
【0034】
本明細書において用いられる「治療的有効量」なる用語は、障害の一つもしくは複数の症状の改善を来す、または障害の進行を防止する、または障害の退行を引き起こすのに十分な治療薬の量を意味する。例えば、癌の治療に関して、治療的有効量は好ましくは、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも100%腫瘍増殖の速度を低下させる、腫瘍の量を減少させる、転移の数を減少させる、腫瘍進行までの時間を延長する、または生存期間を延長する治療薬の量を意味する。
【0035】
本明細書において用いられる「予防する」、「予防すること」、および「予防」なる用語は、動物における病的細胞(例えば、過剰増殖または腫瘍細胞)の出現の低減を意味する。予防は、例えば、被験者における病的細胞を完全になくすこともある。予防は部分的であってもよく、その場合被験者における病的細胞の出現が本発明なしに出現するよりも少ない。
【0036】
式Iを有する化合物は薬学的に許容される塩として提供することもできる。薬学的に許容される塩(すなわち付加塩)の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩およびシュウ酸塩などの無機および有機酸付加塩;ならびにヒドロキシナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、トロメタン)およびN-メチル-グルカミンなどの塩基による無機および有機塩基付加塩が含まれる。塩は典型的には遊離塩基に比べて類似の生理的性質を有するが、特定の酸付加塩は好ましい物理化学的性質、例えば、高い溶解性、改善された安定性を示すこともある。一つの特定の薬学的に許容される塩はジマレイン酸塩などのマレイン酸塩である。
【0037】
本発明の特定の化合物は、光学異性体を含む立体異性体として存在することもある。本発明はすべての立体異性体、およびそのような立体異性体のラセミ混合物と当業者には周知の方法に従って分離しうる個々の鏡像異性体の両方を含む。
【0038】
本発明の特定の態様において、式Iを有する化合物を一つまたは複数の他の活性薬剤(例えば、化学療法剤)または治療との組み合わせで投与する。非限定例として、患者を癌などの過剰増殖障害について、式Iを有する化合物の治療的有効量を放射線療法剤/治療または化学療法剤の投与との組み合わせで投与することにより治療することができる。
【0039】
「組み合わせで」とは、複数の治療の使用を意味する。「組み合わせで」なる用語の使用は、過剰増殖障害に対し治療中の被験者に治療を投与する順を制限するものではない。第一の治療を過剰増殖障害の被験者に、第二の治療投与の前、同時、または第二の治療投与を含む任意の周期的治療法の中で投与することができる。例えば、第一の治療を第二の治療の5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間前に投与することもでき;または第一の治療を第二の治療の5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間後に投与することもできる。そのような治療は、例えば、式Iを有する化合物の、一つまたは複数の化学療法剤または放射線療法剤/治療との組み合わせでの投与を含む。
【0040】
本明細書において用いられる「化学療法剤」なる用語は、癌などの過剰増殖障害の治療、予防または改善のために有効であることが当業者に公知の、いかなる化学療法剤も意味することが意図される。化学療法剤には、小分子、合成薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、三重らせんおよび生物活性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列が含まれるが、それらに限定されるわけではない、DNAおよびRNAポリヌクレオチド)、抗体、合成または天然無機分子、模擬薬剤、および合成または天然有機分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。過剰増殖障害の治療または改善のために有用であることが公知である、またはそのために用いられてきた、もしくは現在用いられているいかなる薬剤も、式Iを有する化合物との組み合わせで用いることができる。過剰増殖障害の治療または改善のために用いられてきた、または現在用いられている治療薬に関する情報については、例えば、Hardman et al., eds., 2002, Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Therapeutics 10th Ed, Mc-Graw-Hill, New York, NYを参照されたい。
【0041】
本発明の方法および組成物において有用な特定の化学療法剤には、アルキル化剤、抗代謝剤、有糸分裂阻害剤、エピポドフィロトキシン、抗生物質、ホルモンおよびホルモン拮抗薬、酵素、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、イミダゾテトラジン誘導体、細胞保護剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節剤、レチノイド、治療的抗体、分化剤、免疫調節剤、血管形成阻害剤ならびに抗血管形成剤が含まれる。
【0042】
特定の化学療法剤には、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生菌、ベバセイズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセット、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンディフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペグアデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロネートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、化学療法剤はゲムシタビンおよびイリノテカンから選択される。
【0043】
化学療法剤は、過剰増殖障害の治療のために有効であると当業者が認識している用量で投与することができる。特定の態様において、化学療法剤は式Iを有する化合物の相加的または相乗的効果のため、当技術分野において用いられるよりも低用量で投与することができる。
【0044】
本明細書において用いられる「放射線療法剤」なる用語は、過剰増殖障害を治療または改善するのに有効であることが当業者に公知の、いかなる放射線療法剤も意味し、それらに限定されるわけではないことが意図される。例えば、放射線療法剤は近接照射療法または放射性核種療法において投与されるものなどの薬剤でありうる。
【0045】
近接照射療法は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。一般に、近接照射療法は、腫瘍自体の内部などの癌治療中の被験者の体内に放射線源を、腫瘍が放射線源に最大限に曝露され、健常組織の曝露を最小限に抑えるように挿入することを含む。近接照射療法で投与することができる代表的放射性同位体には、リン32、コバルト60、パラジウム103、ルテニウム106、ヨウ素125、セシウム137、イリジウム192、キセノン133、ラジウム226、カリフォルニウム252、または金198が含まれるが、それらに限定されるわけではない。近接照射療法のために有用な投与法ならびに器具および組成物はMazeron et al., Sem. Rad. Onc. 12:95-108 (2002)ならびに米国特許第6,319,189号、第6,179,766号、第6,168,777号、第6,149,889号、および第5,611,767号に記載されている。
【0046】
放射性核種療法は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。一般に、放射性核種療法は優先的に癌性細胞内に蓄積する、またはその表面に結合する放射性同位体の全身投与を含む。放射性核種の優先的蓄積は、急速に増殖している細胞内への放射性核種の取り込み、特別な標的指向なしの癌性組織による放射性核種の特異的蓄積、または新生物に特異的な生体分子への放射性核種の結合を含むいくつかのメカニズムによって仲介されうる。
【0047】
放射性核種療法において投与することができる代表的放射性同位体には、リン32、イットリウム90、ジスプロシウム165、インジウム111、ストロンチウム89、サマリウム153、レニウム186、ヨウ素131、ヨウ素125、ルテチウム177、およびビスマス213が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの放射性同位体はすべて生体分子に連結して標的指向の特異性を提供しうるが、ヨウ素131、インジウム111、リン32、サマリウム153、およびレニウム186はそのような結合なしに全身投与することができる。当業者であれば、放射性同位体療法において特定の新生物を標的とするために、その新生物上の細胞表面分子に基づき、用いる特定の生体分子を選択することができる。特定の細胞に対する特異性を提供する生体分子の例は、Thomas, Cancer Biother. Radiopharm. 17:71-82 (2002)の論文において概説されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、放射性核種療法のために有用な投与法および組成物は米国特許第6,426,400号、第6,358,194号、第5,766,571号において見いだすことができる。
【0048】
本明細書において用いられる「放射線療法」は、過剰増殖障害を治療または改善するのに有効であることが当業者に公知の、いかなる放射線療法も意味し、それらに限定されるわけではないことが意図される。例えば、放射線療法は外部照射療法、温熱療法、放射線外科術、荷電粒子線療法、中性子線療法、または光線力学療法でありうる。
【0049】
外部照射療法は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。一般に、外部照射療法は被験者体内の限定された塊を高エネルギービームで照射し、それによりその塊内の細胞死を引き起こすことを含む。照射される塊は好ましくは治療する癌全体を含み、好ましくは可能な限り少量の健常組織を含む。外部照射療法のために有用な投与法ならびに器具および組成物は、米国特許第6,449,336号、第6,398,710号、第6,393,096号、第6,335,961号、第6,307,914号、第6,256,591号、第6,245,005号、第6,038,283号、第6,001,054号、第5,802,136号、第5,596,619号、および第5,528,652号において見いだすことができる。
【0050】
温熱療法は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、温熱療法は寒冷切除療法でありうる。他の態様において、温熱療法は加温療法でありうる。さらに他の態様において、温熱療法は腫瘍の温度を加温療法よりも高く上げる療法でありうる。
【0051】
寒冷切除療法は、新生物塊の凍結を含み、細胞内および細胞外の氷結晶の沈着;細胞膜、タンパク質、および細胞小器官の破裂;ならびに高浸透圧環境の誘導を引き起こし、それにより細胞死をまねく。寒冷切除療法において有用な方法および器具はMurphy et al., Sem. Urol. Oncol. 19:133-140 (2001)および米国特許第6,383,181号、第6,383,180号、第5,993,444号、第5,654,279号、第5,437,673号、および第5,147,355号に記載されている。
【0052】
加温療法は典型的には新生物塊の温度を約42℃から約44℃の範囲に上昇させることを含む。癌の温度はこの範囲よりもさらに高くしてもよいが、そのような温度は周囲の健常組織への傷害を増大させうる一方で、治療する腫瘍内の細胞死増大を引き起こすことはない。加温療法において腫瘍を当業者には公知のいかなる手段で加熱してもよいが、それらに限定されるわけではない。例えば、腫瘍をマイクロ波、高密度焦点式超音波、強磁性サーモシード(thermoseed)、局所電流場、赤外線照射、湿式または乾式高周波切除、レーザー光凝固、レーザー組織内温熱療法、および電気焼灼法により加熱しうるが、それらに限定されるわけではない。マイクロ波および高周波は導波管アプリケーター、ホーン、スパイラル、電流シート、およびコンパクトアプリケーターにより生成することができる。
【0053】
腫瘍の温度を高めるための他の方法、器具および組成物は、Wust et al., Lancet Oncol. 3:487-97 (2002)の論文に概説されており、米国特許第6,470,217号、第6,379,347号、第6,165,440号、第6,163,726号、第6,099,554号、第6,009,351号、第5,776,175号、第5,707,401号、第5,658,234号、第5,620,479号、第5,549,639号、および第5,523,058号に記載されている。
【0054】
放射線外科術は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。一般に、放射線外科術は被験者体内の限定された塊を手動で誘導する放射線源に曝露し、それによりその塊内の細胞死を引き起こすことを含む。照射される塊は好ましくは治療する癌全体を含み、好ましくは可能な限り少量の健常組織を含む。典型的には、治療する組織をまず通常の外科的技術を用いて露出し、次いで外科医が手動で放射線源をその領域に誘導する。または、放射線源を、例えば、腹腔鏡を用いて照射する組織の近くに設置することもできる。放射線外科術のために有用な方法および器具はValentini et al., Eur. J. Surg. Oncol. 28:180-185 (2002)および米国特許第6,421,416号、第6,248,056号、および第5,547,454号に詳細に記載されている。
【0055】
荷電粒子線療法は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、荷電粒子線療法はプロトンビーム放射線療法でありうる。他の態様において、荷電粒子線療法はヘリウムイオン放射線療法でありうる。一般に、荷電粒子線療法は被験者体内の限定された塊を荷電粒子ビームで照射し、それによりその塊内の細胞死を引き起こすことを含む。照射される塊は好ましくは治療する癌全体を含み、好ましくは可能な限り少量の健常組織を含む。荷電粒子線療法の投与法は米国特許第5,668,371号に記載されている。
【0056】
中性子線療法は、過剰増殖障害の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、中性子線療法は中性子捕捉療法でありうる。そのような態様において、中性子を照射すると放射線を放出し、新生物塊に優先的に蓄積する化合物を被験者に投与する。続いて、腫瘍を低エネルギー中性子ビームで照射し、化合物を活性化して、癌性細胞を死滅させる崩壊産物を放出させる。活性化する化合物は、前述の放射線核種の標的指向のために有用な方法、またはLaramore, Semin. Oncol. 24:672-685 (1997)および米国特許第6,400,796号、第5,877,165号、第5,872,107号、および第5,653,957号に記載の方法に従って、標的組織に優先的に蓄積させることができる。
【0057】
他の態様において、中性子線療法は高速中性子線療法でありうる。一般に、高速中性子線療法は、被験者体内の限定された塊を中性子ビームで照射し、それによりその塊内の細胞死を引き起こすことを含む。
【0058】
光線力学療法は、癌の治療または改善において有効であることが当業者に公知の、いかなるスケジュール、用量、または方法に従って投与することもできるが、それらに限定されるわけではない。一般に、光線力学療法は新生物塊に優先的に蓄積し、新生物を光線に対して感作する光増感剤を投与し、次いで腫瘍を適当な波長の光線に曝露することを含む。そのような曝露により、光増感剤は、例えば、一重項酸素などの細胞毒性物質の産生を触媒し、この物質は癌性細胞を死滅させる。光線力学療法のために有用な投与法ならびに器具および組成物はHopper, Lancet Oncol. 1:212-219 (2000)および米国特許第6,283,957号、第6,071,908号、第6,011,563号、第5,855,595号、第5,716,595号、および第5,707,401号に開示されている。
【0059】
放射線療法は、外科術の前または後、化学療法の前または後、および化学療法中の時々に、過剰増殖細胞を破壊するために投与することができる。放射線療法は過剰増殖障害の症状を軽減する、例えば、疼痛を減らすために、待期的理由により投与することもできる。放射線療法を用いて治療することができる腫瘍のタイプには、完全に切除することができない局在化腫瘍、ならびに完全な切除が許容されない機能的もしくは審美的欠損を引き起こす、または許容されない外科的リスクを伴うと考えられる転移および腫瘍がある。
【0060】
過剰増殖障害を治療する際に用いる特定の放射線量および投与法はいずれも、様々な因子に依存することが理解されると思われる。したがって、本発明の方法に従って用いることができる放射線量はそれぞれの状況における特定の必要に応じて決定される。線量は、腫瘍のサイズ、腫瘍の位置、患者の年齢および性別、投与頻度、他の腫瘍の有無、転移の可能性などの因子に依存することになる。放射線療法の当業者であれば、Hall, E. J., Radiobiology for the Radiologist, 5th edition, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, Philadelphia, PA, 2000;Gunderson, L. L. and Tepper J. E., eds., Clinical Radiation Oncology, Churchill Livingstone, London, England, 2000;およびGrosch, D. S., Biological Effects of Radiation, 2nd edition, Academic Press, San Francisco, CA, 1980を参照することにより、いかなる特定の腫瘍に対する用量および投与法も容易に確認することができる。特定の態様において、放射線療法剤および治療は式Iを有する化合物の相加的または相乗的効果のため、当技術分野において公知のものよりも低用量で投与することができる。
【0061】
本発明の組成物はいかなる適当な様式、例えば、単位用量剤形、例えば、錠剤型剤形、液剤、ゼラチンカプセル剤形を含む硬もしくは軟カプセル剤形、サシェ、またはロゼンジでの、例えば、経口または口腔内投与のために用いることができる。組成物は、例えば、クリーム、ペースト、ローション、ゲル、軟膏、湿布剤、パップ剤、硬膏剤、皮膚パッチなどの剤形で、例えば、皮膚への塗布のため、または例えば、点眼剤、眼科用ローションもしくは眼科用ゲル製剤で、眼への適用のために、非経口または局所投与することもできる。易流動性剤形、例えば、液剤、乳剤および懸濁剤を、例えば、病巣内注入のために用いることもでき、あるいは例えば、浣腸もしくは坐剤として直腸内に、または例えば、鼻用噴霧剤もしくはエアロゾルとして鼻内投与することもできる。微結晶粉末を吸入、例えば、鼻、副鼻腔、喉または肺への送達用に製剤することもできる。経皮組成物/装置およびペッサリーを、本発明の化合物の送達用に用いてもよい。組成物は、式Iを有する化合物(または他の活性化合物)の送達を促進する物質、例えば、リポソーム、ポリマーまたはコポリマー(例えば、分枝鎖ポリマー)を追加で含んでいてもよい。本発明の好ましい剤形には、経口剤形および静脈内剤形が含まれる。
【0062】
静脈内剤形には、ボーラス注射および点滴注入が含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましい態様において、静脈内剤形は典型的には汚染菌に対する被験者の自然の防御を回避するため、無菌であるか、または被験者への投与前に滅菌することができる。静脈内剤形の例には、米国薬局方注射用水;注射用塩化ナトリウム、注射用リンゲル液、注射用デキストロース、注射用デキストロースおよび塩化ナトリウム、注射用乳酸リンゲル液が含まれるが、それらに限定されるわけではない水性媒体;エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが含まれるが、それらに限定されるわけではない水混和性媒体;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルが含まれるが、それらに限定されるわけではない非水性媒体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0063】
本発明の薬学的組成物は、一つまたは複数の添加物をさらに含んでいてもよい。当技術分野において周知の添加物には、例えば、粘着性減少剤、消泡剤、緩衝化剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、リンゴ酸、フマル酸、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロール、例えば、α-トコフェロール(ビタミンE))、保存剤、キレート剤、粘度調節剤、緊張化剤(tonicifier)、着香料、着色料、臭気物質、乳白剤、懸濁化剤、結合剤、充填剤、可塑剤、滑沢剤、およびその混合物が含まれる。そのような添加物の量は、当業者であれば、望まれる特定の性質に従って容易に決定することができ、式Iを有する化合物が安定である、例えば、抗酸化剤添加物により還元されないように製剤することができる。
【0064】
添加物は増粘剤を含んでいてもよい。適当な増粘剤は、例えば、薬学的に許容されるポリマー材料および無機増粘剤を含む、当技術分野において公知で、用いられているものであってもよい。本発明の薬学的組成物において用いるための例示的増粘剤には、ポリアクリレートおよびポリアクリレートコポリマー樹脂、例えば、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸/メタクリル酸樹脂;アルキルセルロース、例えば、メチル、エチルおよびプロピルセルロースを含むセルロースおよびセルロース誘導体;ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシプロピルアルキルセルロース;アシル化セルロース、例えば、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;およびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのその塩;例えばポリ-N-ビニルピロリドンおよびビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニルピロリドンコポリマーを含むポリビニルピロリドン;例えば、ポリ酢酸ビニルおよびアルコールを含むポリビニル樹脂、ならびにトラガカントゴム、アラビアゴム、アルギネート、例えば、アルギン酸、およびその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムを含む他のポリマー材料;ならびにアタパルジャイト、ベントナイトおよび親水性二酸化ケイ素生成物、例えば、アルキル化(例えばメチル化)シリカゲル、特にコロイド状二酸化ケイ素生成物を含むケイ酸塩などの無機増粘剤が含まれる。
【0065】
前述のそのような増粘剤は、例えば、徐放効果を提供するために含まれうる。しかし、経口投与が意図される場合、増粘剤の使用は必要とされないこともある。一方、増粘剤の使用は、例えば、局所適用が予測される場合は指示される。
【0066】
本発明の一つの態様において、式Iを有する化合物を国際公開公報第03/076387号に記載のとおりに製剤する。特に、水性溶液に溶解後、溶液のpHが5から9の範囲内となるように化合物を製剤する。
【0067】
式Iを有する化合物の用量は特定の化合物の活性および/または毒性、治療中の状態、ならびに投与に用いている薬学的組成物の物理的形状に応じて変動することになるが、指標として、1日に体重1kgあたり0.1から50mgなどの高用量が有用でありうるが、1日に体重1kgあたり0.1から20mgの範囲で選択される用量が適当であることが多いと言うことができる。当業者であれば、適当な用量を決定するための方法に精通している。式Iを有する化合物の毒性、活性および/または選択性を評価する方法は、Lee et al.、前記、およびPCT国際特許出願公開公報第92/15300号、前記に記載のとおりに実施してもよく、式Iを有する化合物の用量範囲を概算および/または決定する際に有用でありうる。
【0068】
特定の場合において、式Iを有する化合物の用量は、例えば、少なくとも第二の過剰増殖障害治療との組み合わせで用いる場合は低くなると思われ、特定の化合物の活性および/または毒性、治療中の状態、ならびに投与に用いている薬学的組成物の物理的形状に応じて変動することもある。
【0069】
本発明の組成物を単位用量剤形に製剤する場合、式Iを有する化合物は好ましくは単位用量あたり0.01から2000mgの間の量で含まれることになる。より好ましくは、式Iを有する化合物の単位用量あたりの量は約0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、もしくは2000mgまたはその中の任意の量である。
【0070】
組成物の単位用量剤形がカプセル剤である場合、カプセル中に含まれる成分の全量は好ましくは約10〜1000μLである。より好ましくは、カプセル中に含まれる成分の全量は約100〜300μLである。もう一つの態様において、カプセル中に含まれる成分の全量は好ましくは約10〜1500mg、好ましくは約100〜1000mgである。
【0071】
本発明の組成物中の成分の相対比は、当然のことながら、関係する組成物の特定のタイプに応じてかなり変動することになる。相対比は、組成物中の成分の特定の機能によっても変動することになる。相対比は、用いる特定の成分および生成組成物の所望の物理的特徴、例えば、局所使用のための組成物の場合、これが流動性の液体であるべきか、ペーストであるべきかによっても変動することになる。任意の特定の場合における実行可能な比の決定は、一般には当業者の能力の範囲内であると思われる。したがって、下記に示された比および相対重量範囲はすべて、本発明の教示を個別に示すにすぎず、本発明をその最も広い局面で限定するものではないと理解されるべきである。
【0072】
本発明の組成物中の式Iを有する化合物の量は、当然のことながら、例えば、所期の投与経路および他の成分が含まれる程度に応じて変動することになる。しかし、一般に、式Iを有する化合物は、組成物の全重量に基づき、約0.005重量%から20重量%の量で含まれることが適当である。特定の態様において、式Iを有する化合物は、組成物の全重量に基づき、約0.01重量%から15重量%の量で含まれる。
【0073】
前述に加えて、本発明は本明細書の上で定義した薬学的組成物生成のための方法であって、その個々の成分を密接な混合物とする段階と、必要な場合には得られた組成物を単位用量剤形に配合する、例えば、該組成物を錠剤、ゼラチンの、例えば、軟もしくは硬カプセル、または非ゼラチンカプセルに充填する段階とを含む方法も提供する。
【0074】
式Iを有する化合物は当技術分野において周知の方法により、かつ米国特許第5,132,327号に開示されているとおりに調製することができる。
【0075】
以下の実施例は本発明の方法および組成物を例示するものであって、限定的なものではない。臨床療法において通常遭遇し、当業者には明白な様々な条件およびパラメーターの他の適当な改変および適応は、本発明の精神および範囲内である。
【0076】
実施例1
リンパ腫、白血病、および多発性骨髄腫におけるAQ4およびAQ4Nの細胞毒性
異なるリンパ腫、白血病、および多発性骨髄腫細胞株に対するAQ4およびAQ4Nの細胞毒性を、酸素正常状態のインビトロで試験した。MTS色素を用いての標準細胞毒性アッセイを行い、各化合物のIC50をもとめた。細胞を化合物に24時間曝露し、薬物曝露の24〜72時間後に染色した。陽性対照は化学療法剤を当技術分野において有効であることが示されている用量で用いた。表1に示すとおり、結果はAQ4が細胞株の多くに対して細胞毒性であり、そのIC50値はナノモル濃度からナノモル濃度以下の範囲であることを示している。AQ4NはAQ4に比べて活性が低いか、または不活性であったが、試験を酸素正常状態で行ったため、これらの条件下ではAQ4NからAQ4へのわずかな変換があると予想される。ほとんどの場合、AQ4は少なくとも標準の化学療法剤と同等の細胞毒性を示した。
(表1)リンパ腫、白血病、および多発性骨髄腫における細胞毒性

ALL-急性リンパ性白血病;AML-急性骨髄性白血病;CML-慢性骨髄性白血病;CLL-慢性リンパ性白血病;T-ALL-T細胞急性リンパ性白血病;Dox-ドキソルビシン;VLB-ビノレルビン;NA-不活性(IC50>100μM)
【0077】
実施例2
インビボでのリンパ腫および多発性骨髄腫におけるAQ4Nの細胞毒性
リンパ腫および多発性骨髄腫に対するAQ4Nの細胞毒性効果を、腫瘍モデルを用いてインビボで試験した。腫瘍細胞をマウスの腹腔内に移植し、AQ4Nの様々な治療スケジュールを試験した。動物の生存期間を追跡した。他の化学療法剤の標準用量を対照として用いた。
【0078】
P388マウスCLLモデルを用いて、AQ4Nを投与すると生存期間を延長させることが明らかとなった(図1)。1日1回60mg/kgを3回投与すると1日目に180mg/kgまたは隔日で60mg/kgを3回投与するよりも大きく生存を延長し、後者は4日毎に60mg/kgを4回投与するよりも有効であったため、生存はAQ4Nへの初期曝露増大に相関していることが明らかとなった(図1)。AQ4Nは生存の延長においてミトキサントロンよりも有効であることも判明した(図2)。データを生存期間に関して解析すると、AQ4Nは少なくともミトキサントロンと同等に有効であり(図3)、再現性のある結果を提供する(図4)ことが明らかとなった。
【0079】
L1210マウスALLモデルを用いて、AQ4Nを投与すると生存期間を延長させることが明らかとなった(図5)。ここでも、1日1回90mg/kgを2回投与すると1日1回45mg/kgを3回投与するよりも大きく生存を延長し、後者は4日毎に45mg/kgを3回、またはいずれかのスケジュールで30mg/kgを投与するよりも有効であったため、生存はAQ4Nへの初期曝露増大に相関していることが明らかとなった(図5)。1日1回90mg/kgを2回のAQ4Nは生存の延長においてミトキサントロンまたはカルムスチンとほぼ同等に有効であることも判明した(図6)。データを生存期間に関して解析すると、AQ4Nは少なくともミトキサントロンと同等で、カルムスチンよりも有効であり(図7)、再現性のある結果を提供する(図8)ことが明らかとなった。
【0080】
ナマルバヒトリンパ腫モデルを用いて、AQ4Nを投与すると腫瘍増殖を阻害することが明らかとなった(図9)。3日毎に60mg/kgを2回のAQ4Nは腫瘍増殖の阻害においてミトキサントロンとほぼ同等に有効であることも判明した(図9)。
【0081】
実施例3
固形腫瘍におけるAQ4およびAQ4Nの細胞毒性
異なる固形腫瘍細胞株に対するAQ4およびAQ4Nの細胞毒性を、酸素正常状態のインビトロで試験した。MTS色素を用いての標準細胞毒性アッセイを行い、各化合物のIC50をもとめた。細胞を化合物に24時間曝露し、薬物曝露の24〜72時間後に染色した。陽性対照は化学療法剤を当技術分野において有効であることが示されている用量で用いた。表2に示すとおり、結果はAQ4が細胞株の多くに対して細胞毒性であり、そのIC50値はナノモル濃度からナノモル濃度以下の範囲であることを示している。AQ4NはAQ4に比べて活性が低いか、または不活性であったが、試験を酸素正常状態で行ったため、これらの条件下ではAQ4NからAQ4へのわずかな変換があると予想される。多くの場合、AQ4は少なくとも標準の化学療法剤と同等の細胞毒性を示した。
(表2)固形腫瘍における細胞毒性

Gem-ゲムシタビン;SN38-7-エチル-10-ヒドロ-カンプトテシン;Dox ドキソルビシン;NA-不活性(IC50>100μM)
【0082】
実施例4
インビボでの固形腫瘍におけるAQ4Nの細胞毒性
固形腫瘍に対するAQ4Nの細胞毒性効果を、マウス腫瘍モデルを用いてインビボで試験した。腫瘍細胞をマウスの皮下に移植し、約50〜100mm3のサイズになるまで増殖させた(10〜17日)。AQ4Nの様々な治療スケジュールを試験し、動物の腫瘍体積を追跡した。他の化学療法剤の標準用量を対照として用いた。
【0083】
BXPC-3膵臓癌モデルを用いて、AQ4Nを漸増用量で投与すると腫瘍増殖を阻害し、3日毎に90mg/kgを4回の投与はゲムシタビンとほぼ同程度に有効であることが明らかとなった(図10)。投与スケジュールをさらに改良して、3日毎に60mg/kgを6回および3日毎に90mg/kgを6回のAQ4N投与は未処置対照群に比べて統計学的に有意(p<0.0002)な高い結果を提供することが明らかとなり、効力はゲムシタビンに匹敵するものであった(図11)。AQ4Nおよびゲムシタビン投与を組み合わせた場合、AQ4Nまたはゲムシタビン単独の投与よりもわずかに良いことが示された(図12)。
【0084】
HT-29大腸癌モデルを用いて、AQ4Nを漸増用量で投与すると腫瘍増殖を阻害し、隔日で60mg/kgを6回の投与は未処置対照群に比べて腫瘍増殖阻害に対する有意(p=0.021)な効果を有し、またイリノテカンの2用量よりも有意(p=0.048)に高い腫瘍増殖阻害を有することが明らかとなった(図13)。投与スケジュールをさらに改良して、隔日で60mg/kgを6回のAQ4N投与はイリノテカンの3用量に比べて有意に高い効力を示すことはなかった(p=0.074)(図14)。AQ4Nおよびイリノテカン投与を組み合わせた場合、AQ4Nまたはイリノテカン単独の投与よりも大きい腫瘍増殖阻害を示した(図15)。組み合わせ治療のさらに詳しい試験により、2、8、16、および23日目に90mg/kgのAQ4Nと1、8、および15日目に40mg/kgのイリノテカンとの組み合わせが最も有効な結果を提供し、いずれかの薬剤単独に比べて有意(p=0.045)な腫瘍増殖阻害を示すことが明らかとなった(図16)。
【0085】
実施例5
AQ4Nの組織および腫瘍特異性
被験者への投与後のAQ4Nの分布を調べるために、ベンゼン環とメチル基の両方に14Cで標識したAQ4Nを、皮下BXPC-3膵臓癌腫瘍を有するマウスに投与し(20mg/kg;120μCi/kg)、放射能の分布を追跡した。結果(表3に示す)は、AQ4N放射能が肝臓、脾臓、大腸、腎臓、および膵臓に不均一に蓄積することを示している。放射能分布の時間経過は大腸内のAQ4Nの蓄積を示し、大腸癌の治療における有用性を示唆するものである(図17)。放射性AQ4Nの半減期は、特に脾臓で長く、AQ4Nが低頻度の投与でも有効でありうることを示唆している(図18)。
(表3)標識AQ4Nの分布

【0086】
ここまで本発明を詳細に記載してきたが、当業者であれば、広範で同等の条件、製剤および他のパラメーターの範囲内で、本発明またはその任意の態様の範囲に影響することなく、本発明を実施しうることを理解すると思われる。本明細書において引用するしべての特許、特許出願、および発行物はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、P388慢性リンパ性白血病マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図2】図2は、P388慢性リンパ球白血病マウスモデルに対するAQ4N、ミトキサントロン、およびカルムスチンの効果の比較を示す図である。
【図3】図3は、P388慢性リンパ性白血病マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの、生存期間に関する効果を示す図である。
【図4】図4は、P388慢性リンパ性白血病マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果の再現性を示す図である。
【図5】図5は、L1210急性リンパ性白血病マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図6】図6は、L1210急性リンパ性白血病マウスモデルに対するAQ4N、ミトキサントロン、およびカルムスチンの効果の比較を示す図である。
【図7】図7は、L1210急性リンパ性白血病マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの、生存期間に関する効果を示す図である。
【図8】図8は、L1210急性リンパ性白血病マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果の再現性を示す図である。
【図9】図9は、ナマルバヒトリンパ腫マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図10】図10は、BXPC-3膵臓癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図11】図11は、BXPC-3膵臓癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図12】図12は、BXPC-3膵臓癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4N単独およびゲムシタビンとの組み合わせの効果を示す図である。
【図13】図13は、HT-29大腸癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図14】図14は、HT-29大腸癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4Nの効果を示す図である。
【図15】図15は、HT-29大腸癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4N単独およびイリノテカンとの組み合わせの効果を示す図である。
【図16】図16は、HT-29大腸癌マウスモデルに対する異なる用量のAQ4N単独およびイリノテカンとの組み合わせの効果を示す図である。
【図17】図17は、放射性同位体標識したAQ4Nのマウスへの投与後の分布を示す図である。
【図18】図18は、放射性同位体標識したAQ4Nのマウスへの投与後の分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療、改善、または予防法であって、それを必要としている動物に式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグの治療的有効量を投与する段階を含む方法:

式中:
R1、R2、R3およびR4は独立に水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1-4アルコキシ、C2-8アルカノイルオキシ、NH-A-NHR、またはNH-A-N(O)R'R''であり;
AはNHとNHRまたはN(O)R'R''との間の鎖長が少なくとも2炭素原子のC2-4アルキレン基であり;かつ
R、R'およびR''は独立に、窒素原子に結合している炭素原子がヒドロキシ基を持たず、炭素原子が二つのヒドロキシ基で置換されることはない、C1-4アルキル、C2-4ヒドロキシアルキル、またはC2-4ジヒドロキシアルキルであるか;または
R'およびR''は一緒になってR'およびR''が結合している窒素原子と共に環内に3から7個の原子を有する複素環基を形成するC2-6アルキレン基であり;
ただしR1からR4の少なくとも一つはNH-A-N(O)R'R''である。
【請求項2】
前記式Iの化合物がAQ4N:

またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
癌が大腸癌、脳癌、神経膠腫、多発性骨髄腫、頭頸部癌(食道癌を除く)、肝細胞癌、黒色腫、卵巣癌、子宮頸癌、腎臓癌、および非小細胞肺癌である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
一つまたは複数の他の活性薬剤または治療を動物に投与する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
一つまたは複数の他の活性薬剤または治療が化学療法剤および放射線療法剤/治療からなる群より独立に選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
一つまたは複数の化学療法剤および一つまたは複数の放射線療法剤/治療の両方を投与する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
化学療法剤が、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生菌、ベバセイズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセット、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンディフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペグアデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロネートからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
化学療法剤がゲムシタビンまたはイリノテカンである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
式Iを有する化合物を活性薬剤または治療の投与の前に投与する、請求項4記載の方法。
【請求項10】
式Iを有する化合物を活性薬剤または治療の投与と同時に投与する、請求項4記載の方法。
【請求項11】
式Iを有する化合物の投与を活性薬剤または治療の投与後も継続する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
式Iを有する化合物を活性薬剤または治療の投与後に投与する、請求項4記載の方法。
【請求項13】
方法を少なくとも一回繰り返す、請求項4記載の方法。
【請求項14】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグと、一つまたは複数の他の化学療法剤とを含む薬学的組成物:

式中:
R1、R2、R3およびR4は独立に水素、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、C1-4アルコキシ、C2-8アルカノイルオキシ、NH-A-NHR、またはNH-A-N(O)R'R''であり;
AはNHとNHRまたはN(O)R'R''との間の鎖長が少なくとも2炭素原子のC2-4アルキレン基であり;かつ
R、R'およびR''は独立に、窒素原子に結合している炭素原子がヒドロキシ基を持たず、炭素原子が二つのヒドロキシ基で置換されることはない、C1-4アルキル、C2-4ヒドロキシアルキル、またはC2-4ジヒドロキシアルキルであるか;または
R'およびR''は一緒になってR'およびR''が結合している窒素原子と共に環内に3から7個の原子を有する複素環基を形成するC2-6アルキレン基であり;
ただしR1からR4の少なくとも一つはNH-A-N(O)R'R''である。
【請求項15】
式Iの化合物がAQ4N(化合物1):

またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
化学療法剤が、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生菌、ベバセイズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセット、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンディフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オブリメルセン、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペグアデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、およびゾレドロネートからなる群より選択される、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項17】
化学療法剤がゲムシタビンまたはイリノテカンである、請求項14記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−531720(P2008−531720A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558228(P2007−558228)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/007452
【国際公開番号】WO2006/096458
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507294971)ノバセア インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】