説明

過塩素酸アンモニウムと場合によって硝酸塩とを含む水溶液の生物学的浄化方法

本発明は、過塩素酸アンモニウムと場合によって硝酸イオンとを含む水溶液の生物学的浄化方法に関する。当該方法は、それぞれ、好気条件において硝化バクテリアを用いて炭素含有無機素地と栄養素との存在下で行われるものと、嫌気条件において脱硝バクテリアを用いて炭素含有有機素地と栄養素との存在下で行われるものとである、硝化/脱硝処理ステップと、上記硝化/脱硝処理ステップとは別で行われる、嫌気条件で、過塩素酸イオン還元バクテリアを炭素含有有機素地と栄養素との存在下で行われる、過塩素酸還元ステップとを有し、前記過塩素酸還元ステップは、前記水溶液が硝酸イオンを含んでいる場合、硝化/脱硝処理ステップとは別に、その下流において行われる。前記方法は、過塩素酸アンモニウムと硝酸塩とを含む水溶液の浄化に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に過塩素酸アンモニウムの水溶液を浄化する方法に関する。本発明で扱う方法は、生物学的方法である。本発明は、特に、過塩素酸アンモニウムの製造や、過塩素酸アンモニウムを含む生成物の製造または破壊における、過塩素酸アンモニウムが混入した工業廃水を含んだ水溶液の処理の用途についてのものである。
本方法は、特に、過塩素酸アンモニウムと硝酸塩とを含む水溶液の浄化に特に適している。
【0002】
本発明の方法は、過塩素酸アンモニウムと硝酸塩、例えば硝酸ナトリウムをその組成に含むエネルギー物質(自力推進や自動車の安全装置に使用される推進剤、民生・軍事用爆発物等)の製造または破壊時に生成される廃棄物である水溶液の処理に非常に適している。
【背景技術】
【0003】
軍需品、特にそこに含まれるエネルギー物質は、所定の貯蔵寿命後には破壊される必要がある。焼却して破壊することは可能だが、焼却だと煙が発生するので環境的に問題がある。より興味深いのは、水中でエネルギー物質を粉砕する工程を含む方法である。さて、このようなエネルギー物質、特に弾道ミサイルの発射ブースターに使われる推進剤は、50重量%を超える過塩素酸アンモニウム粉末を含んでいることが多い。自動車の安全装置であるエアバッグ装置用の推進剤では、過塩素酸アンモニウムと硝酸塩(例えば硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸グアニジン、塩基性硝酸銅等)を含んでいるものがある。よって、粉砕用の水溶液は、溶解状態において、多量の過塩素酸アンモニウムと場合によって硝酸塩とを含んでいる。このような水溶液は排出前に浄化されなければならない。多用途性を考慮すると、産業設備は、含有物として、(付加的な)硝酸塩を含まない過塩素酸アンモニウムと(付加的な)過塩素酸アンモニウムを含む過塩素酸アンモニウムとの両方の廃液を処理可能であることが求められる。
【0004】
先行技術はバクテリア科について記載しており、アンモニウムイオンを酸化可能であるものや、硝酸塩や亜硝酸イオンを還元するもの、過塩素酸イオンを還元するものがある。
【0005】
ここで、過塩素酸イオンを還元可能なバクテリアは、硝酸塩/亜硝酸イオンを還元することも可能であることを強調しておく。過塩素酸イオンと硝酸塩/亜硝酸イオンが両方ある場合、嫌気条件下の反応装置では、バクテリアによる過塩素酸イオンの消費と硝酸塩/亜硝酸イオンの消費とがバッティングし、そして常に硝酸塩/亜硝酸イオンの消費のほうが大いに優先される。実際、過塩素酸イオンと硝酸塩/亜硝酸イオンとが混合されている場合、バクテリアによる過塩素酸イオンの消費の開始はほとんど硝酸塩/亜硝酸イオンが消費されてしまった後になる。
【0006】
特許出願FR2788055は、アンモニウムイオンを硝化するニトロソコッカス属、ニトロソスピラ属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属のバクテリアについて開示している。また、同出願および特許出願FR2864561は、硝酸塩と亜硝酸イオンを還元する、シュードモナス属、ミクロコッカス属、デニトロバチルス属、スピリルム属、アクロモバクター属のバクテリアを開示している。米国特許6,423,533および米国特許5,302,285は、過塩素酸イオンと硝酸イオンを還元可能なバクテリア株(最初の特許ではDM−17、次の特許ではHAP1)を開示している。科学論文「「Microbial Degradation of Perchlorate: Principles and Applications", in Environmental Engineering Science, Volume 20, Number 5, 2003, and "Dechloromonas agitata gen. nov., sp. nov and Dechlorosoma suillum gen. nov., sp. nov., two novel environmentally dominant (per)chlorate reducing bacteria and their phylogenetic position」:International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology:2001:51:527-533」も、過塩素酸イオンを還元することができるバクテリア属やバクテリア株を開示している。
【0007】
これらの従来技術文献は、バクテリアが環境中に存在する、特に水処理プラントの活性汚泥や堆積泥中に存在するとしている。
【0008】
上記のようなバクテリアが、過塩素酸とアンモニウムイオンとを含む水溶液処理方法の実施に使われてきた。
【0009】
特許出願FR2788055に記載の方法は、過塩素酸アンモニウム水溶液を2つの反応装置で続けてバクテリア処理する、2つのステップからなる方法である。一つ目の反応装置は、好気条件下で、硝化バクテリアを含む活性汚泥を、これらバクテリアの代謝用の鉱物炭素と栄養素との少なくとも一つの供給源とともに有している。次の反応装置では、嫌気条件下で、脱硝バクテリアと過塩素酸イオンを還元するバクテリアとを含む活性汚泥を、これらバクテリアの代謝用の有機炭素と栄養素との少なくとも一つの供給源とともに有している。
【0010】
硝化の第一ステップは好気条件の反応装置にて行われるので、アンモニウムイオン(NH)が硝酸塩(NO)と亜硝酸(NO)イオンとに酸化される。この反応に影響するパラメータは水素イオン指数と、溶存酸素濃度と、鉱物炭素濃度とである。バクテリアの活動により多少の酸性化が起こるが、反応を最大化しておくには、水素イオン指数を中性に保つ必要がある。このため、ソーダを反応装置に加える。酸素供給を促進すべく、空気も反応装置内に注入する。炭素の供給源は一般的に、反応装置に接触するかその中に注入される空気中のCOである。微量元素を中心とした栄養素は、反応装置内の泥でのバクテリア繁殖に必要である。供給される微量元素は、CaCl、MgSO、KHPO、FeClの混合物でもよい。注入される鉱物塩の量は、望ましくは以下である:(KHPO/N=0.5);(MgSO/N=0.27);(CaCl/N=0.04)。塩化第二鉄は、好ましくはFeCl/N=0.015の割合で付加される。微量元素は、自動ポンプシステムによって安定してかつ常に供給されることが多い。
【0011】
嫌気条件の反応装置内での第二ステップは、硝酸塩(NO)と亜硝酸塩(NO)の気体状の窒素(N)への還元と、過塩素酸(ClO)を塩化物(Cl)に還元することによる脱硝とである。炭素を含む有機物の供給は、例えば、メタノールまたは酢酸を反応装置に供給することによってなされる。栄養素の供給については上記ステップと同様である。反応に影響する制御パラメータは、温度、水素イオン指数、および酸素濃度である。繰り返すが、過塩素酸イオンを還元可能なバクテリアは、硝酸塩/亜硝酸イオンも還元可能である。よって、脱硝反応と過塩素酸イオン還元とが嫌気条件の反応装置内でバッティングし、最初の反応(脱硝)が優先されるために、第二の反応(過塩素酸イオン還元)の効率が変わってしまう。こうして、この場合、過塩素酸処理の効率が最適化されず、処理時間がかかってしまう。一般的には以下のようになる。
【0012】
−硝酸塩/亜硝酸イオンの分解に3日間、その間過塩素酸イオンの消費はほとんどなし
−80%を超える過塩素酸イオンの還元に27日間
産業設備におけるサイクルの場合。
硝酸塩/亜硝酸イオン存在下での過塩素酸イオンの処理時間は、硝酸塩/亜硝酸イオンの量が限られている場合、すなわち処理対象の溶液に含まれるアンモニウムイオンの酸化によってのみ発生する程度のものであれば、許容範囲である。しかし、処理する溶液が硝酸塩/亜硝酸イオンを含む場合(反応開始時に過塩素酸アンモニウムに加えて付加的に含まれている場合)、処理時間は許容できない長さになる。
【0013】
(床洗浄や固体推進剤のリサイクルで発生する)過塩素酸イオンを含む廃棄水溶液の処理方法は、米国特許5,302,285にも開示されている。過塩素酸イオンを還元可能な特殊なバクテリア(HAP1)を有する嫌気性の第一反応装置でまず反応が実施され、次に好気性の第二反応装置で有機物の処理が行われる。しかし、HAP1バクテリアは硝酸イオンも還元可能なため、処理対象の水溶液が硝酸塩を含んでいる場合、この方法による過塩素酸イオン処理の効率にも影響が出る。
【0014】
こうして、当業者であれば、過塩素酸アンモニウムを含み、硝酸塩も含んでいる可能性のある水溶液の浄化方法であって、効率的、単純、経済的に、過塩素酸アンモニウムと硝酸塩/亜硝酸イオンとを高効率で還元できる方法の必要性が理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許5,302,285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の第一の目的は、過塩素酸アンモニウム(すなわち過塩素酸イオン(ClO)とアンモニウムイオン(NH))と場合によって硝酸イオン(NO)とを含む水溶液の生物学的浄化方法であって、それぞれ、好気条件において硝化バクテリアを用いて炭素含有無機素地と栄養素との存在下で行われるものと、嫌気条件において脱硝バクテリアを用いて炭素含有有機素地(好ましくはCO)と栄養素との存在下で行われるものとである、硝化/脱硝処理ステップと、上記硝化/脱硝処理ステップとは別で行われる、嫌気条件で、過塩素酸イオン還元バクテリアを炭素含有有機素地と栄養素との存在下で行われる、過塩素酸還元ステップとを有し、前記過塩素酸還元ステップは、前記水溶液が硝酸イオンを含んでいる場合、硝化/脱硝処理ステップとは別に、その下流において行われる方法である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
特徴として、過塩素酸還元ステップは、硝化/脱硝ステップとは別個で行われる。過塩素酸還元ステップはこのように、いかなる脱硝ステップとも切り離して行われる。
【0018】
(浄化される)前記水溶液は、過塩素酸イオンと、アンモニウムイオン(つまり過塩素酸アンモニウム)と、硝酸イオン(場合による:浄化の前に分解された物質から発生)を含むので、前記過塩素酸還元ステップは、前記硝化/脱硝ステップの下流にて行われる。これにより、過塩素酸イオン還元から硝酸イオン還元への還元バクテリアの活動対象の移行が防がれる。
【0019】
(浄化される)前記水溶液が(浄化の前に分解された物質から発生する)硝酸イオンを含まない場合、前記過塩素酸還元ステップが行われるのは、硝化/脱硝ステップの上流でも下流でもよいが、硝化/脱硝ステップの上流で行われることが好ましい。過塩素酸還元ステップを硝化/脱硝ステップの下流で行う場合、(硝化/脱硝ステップの後では)残留する硝酸塩/亜硝酸イオンの存在を完全には排除できないからである。
【0020】
少なくとも一つの反応装置(Ri)で行われる硝化/脱硝ステップは、少なくとも一つの脱硝ステップの前に行われる少なくとも一つの硝化ステップを有する。アンモニウム、硝酸塩、亜硝酸イオンの完全除去を目的とした場合を考慮し、硝化および/または脱硝ステップを複数有することについても本発明の範囲外としない。一般的に、前記硝化/脱硝ステップでは、(再利用ありまたは無しの)硝化ステップと、(再利用ありまたは無しの)脱硝ステップとを、下記の変形例の少なくとも一つに基づいて行う。
【0021】
2つの直列に接続された反応装置において、一つ目(R1)では好気条件下で硝化反応、二つ目(R2)では嫌気条件下で脱硝反応、または、
硝化/脱硝機能が切り替え可能な単一の反応装置(R3)において、好気条件下、次いで嫌気条件下で、硝化反応、次に脱硝反応。
【0022】
前記過塩素酸イオン還元ステップは、それぞれ、嫌気条件下で、過塩素酸イオン還元特殊機能を備えた少なくとも一つの別の反応装置(R’i)(一般的に単一の別の嫌気性反応装置(R’1))において行われる。
【0023】
本発明の方法は、このように、直列に接続された2つの反応装置(硝化と脱硝を交互に行う反応装置と過塩素酸イオン還元ステップ用反応装置)か、または直列に3つの反応装置(硝化反応装置、脱硝反応装置、過塩素酸還元反応装置)を用いて行われる。
【0024】
嫌気条件の反応装置では、本発明において、溶解分子酸素濃度が1mg/l未満であることが望ましい。好気条件の反応装置では、本発明において、その中に気泡を注入する手段を有しているのが望ましい(最低酸素濃度は2mg/lを超えるのが望ましい)。
【0025】
好気性反応装置における硝化/脱硝ステップ(より正確には硝化ステップ)で用いられる硝化バクテリアは、アンモニウムイオンの亜硝酸塩と硝酸イオンへの硝化が可能なものである。このようなバクテリアは、例えば、ニトロソコッカス属、ニトロソスピラ属、ニトロソモナス属、ニトロバクター属である。これらは通常、水処理プラントの活性汚泥や堆積泥中に存在する。
【0026】
嫌気条件の反応装置における硝化/脱硝ステップ(より正確には脱硝ステップ)で用いられる脱硝バクテリアは、硝酸塩と亜硝酸イオンを分子窒素の脱硝可能なものである。これらのバクテリアも一般的なバクテリアで、水処理プラントの活性汚泥や堆積泥中に見受けられるシュードモナス属、ミクロコッカス属、デニトロバチルス属、スピリルム属、アクロモバクター属のバクテリアである。
【0027】
嫌気条件で行われる(一般的に単一の反応装置を用い、再利用を伴うか伴わない)過塩素酸イオン還元ステップで用いられるバクテリアは、先行技術の過塩素酸イオン還元バクテリアとして知られるバクテリアであって、例えば、表1の、「Microbial Degradation of Perchlorate: Principles and Applications", Environmental Engineering Science, Volume 20, Number 5, 2003」に記載のものである。前記過塩素酸還元ステップに適したバクテリアは、エキシグオバクテリウム・メキシカナム、セレウス菌および/またはスタフィロコッカス・ワーネリおよび/またはスタフィロコッカス・パステウリに属するものでもよく、従来技術において知られているものであるが、これらが過塩素酸イオン還元機能を有することについては本願で最近示されたことである。過塩素酸還元ステップにはエキシグオバクテリウム・メキシカナムおよび/またはセレウス菌を用いるのが好ましく、エキシグオバクテリウム・メキシカナムを用いるのがさらに好ましい。
【0028】
第一の変形例では、本発明の方法は、培養株由来のバクテリアを各反応装置(上記のように、本方法で用いる少なくとも2つの反応装置)にそれぞれ適切に接種することで行うこともできる。硝化バクテリア、脱硝バクテリア、過塩素酸還元バクテリアは、この場合培養株由来である。
【0029】
第二の変形例は、活性汚泥中に存在する硝化バクテリア、脱硝バクテリア、過塩素酸還元バクテリアを反応装置に接種することで行うこともできる。この活性汚泥は、上記バクテリア(本発明の方法の実行に適したもの)を含むことが当業者にとって周知である活性汚泥である。このような活性汚泥は、一般的に、(都市下水処理用の)水処理プラントや堆積泥から得られる。各反応装置はこうした汚泥を十分な量内蔵している。
【0030】
第二の変形例の範囲内において、反応装置内の、過塩素酸イオン還元機能を有する活性汚泥(過塩素酸還元バクテリアを含む汚泥)は、脱硝機能あるいは脱硝および過塩素酸イオン還元の両機能を有する既存の反応装置、特に、特許出願FR2788055に記載の方法を実行するための反応装置から得られた汚泥からなっていてもよい。
【0031】
過塩素酸イオン還元機能を有する反応装置に内蔵された活性汚泥に含まれるバクテリアを過塩素酸イオン還元用に特殊化するフェイズが、一般的に必要とされる。特に、前記反応装置を工業サイクルで使用する場合に望まれる効率レベルの達成にはこれが必要である。この特殊化フェイズは、炭素含有有機素地と栄養素との存在下で、過塩素酸イオン還元機能を有する前記反応装置内の活性汚泥に、過塩素酸イオンを連続的に、望ましくは段階的に量を増やして付加することで実行される。(この活性汚泥は、一般的に、都市下水処理用の汚泥や堆積泥、あるいは脱硝用または脱硝と過塩素酸還元用の反応装置から得られた汚泥であり、繁殖可能な最低限の量の適切なバクテリアを含んだものである。)過塩素酸イオン還元用への活性汚泥の特殊化には、一般的に1ヶ月から6ヶ月かかる。本発明の方法の実行に直接関わらない反応装置にて、事前に特殊化フェイズを本発明の方法から「独立して」行っておくことも、本発明の範囲から除外されない。
【0032】
各反応装置内のバクテリアを含む汚泥は(過塩素酸イオン還元機能を有する反応装置内の汚泥については特殊化フェイズ後に)順化される。
【0033】
活性汚泥が含むバクテリアの順化は、反応装置(硝化するものについては好気条件、脱硝および過塩素酸イオン還元するものについては嫌気条件)に、(処理される水溶液の存在下で)前記バクテリアを培養、増殖するために栄養素と適当な炭素源とを供給することによって、調整することで達成される。
【0034】
汚泥を用いた本発明の方法の実施形態の詳細に関わらず、各反応装置に導入される汚泥内のバクテリアの順化の後では、当該方法の工業サイクル(過塩素酸アンモニウム(つまり過塩素酸イオン(ClO)とアンモニウムイオン(NH)、場合によってはさらに硝酸イオン(NO))を含む水溶液の生物学的浄化)が十分な効率で開始できる。
【0035】
ここまで、各反応装置に接種して行う本発明の方法の第一の変形例と、汚泥(同様の例で既に使われたものでもそうでなくてもよい)を用いる本発明の方法の第二の変形例とを説明したが、これら以外の変形例も本発明の一部である。例えば、どの種類の汚泥を用いるかによって変わる変形例や、どの少なくとも一つの反応装置に接種を行う一方どの少なくとも一つの別の反応装置に活性汚泥を導入するかによって変わる混合変形例などである。
【0036】
本発明の別の態様は、過塩素酸還元機能を有する反応装置内のバクテリアに供給される、素地の種類や有機炭素源に関し、より詳細には、前記過塩素酸の処理コストと効果との最適化を目的とするものである。従来技術に記載の素地は、特に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸を含む集合から選ばれるものである。これについて、出願人は、過塩素酸還元の効率と処理コストとを勘案すると、上記以外の素地も可能性を有していることを示した。具体的には、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸ナトリウム、植物脂肪酸などの石けん、あるいはこれらの混合物である。よって、本発明の方法は、酢酸、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸ナトリウム、植物脂肪酸などの石けん、あるいはこれらの混合物から選ばれる有機素地を用いて好適に実施される。
【0037】
好適には、排液を、本方法の少なくともひとつのステップ(硝化ステップ、脱硝ステップ、過塩素酸還元ステップ)の終了時に濾過することで、一方では沈殿物が濾過されて取り除かれた排液が得られ、他方ではその少なくとも一部が(元の反応装置にて)再利用されるバクテリアが豊富な濃縮液が得られる。
【0038】
本発明の方法によれば、過剰分の非溶解過塩素酸アンモニウムを場合によっては硝酸塩の存在下で含む飽和溶液を含む多量の過塩素酸アンモニウムを含有する水溶液の処理が可能となる。この水溶液は、特に、100g/lまでの過塩素酸アンモニウムと、場合によって100g/lまでの硝酸塩とを含む。
【0039】
本発明は、さらに、以下のステップを有する、過塩素酸還元(活性汚泥の特殊化プロセス)用に特殊化された活性汚泥を得る方法に関する。
【0040】
空の反応装置に、嫌気条件で、都市下水路または堆積泥から得られた活性汚泥と、脱硝機能を有する反応装置または脱硝と過塩素酸イオン還元の両機能を合わせ持つ反応装置から得られた活性汚泥と、さらに炭素含有有機素地および栄養素とを導入するステップ。
過塩素酸イオンを、好ましくは段階的に量を増加させて前記反応装置に連続的に投入するステップ。
【0041】
また、上記方法によって得られた(特殊化された)汚泥の使用および/または過塩素酸還元用のバクテリアである、エキシグオバクテリウム・メキシカナム、セレウス菌、スタフィロコッカス・ワーネリ、および/またはスタフィロコッカス・パステウリの使用に関する。ここで、これらのバクテリアはそれ自体としては新規なものではないが、これらを新規な用途(過塩素酸の還元)に用いることが本出願では推奨されていることを簡単に指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】過塩素酸イオンの連続供給による過塩素酸イオンの還元のための活性汚泥の特殊な処理を示している。
【図2】図1の特殊な処理中での前記過塩素酸イオンの特定還元率の増加を示している。
【図3】特殊処理(0〜40日:曲線のA部分)次いで過塩素酸処理用の前記活性汚泥の順化フェイズ(40〜400日以上:曲線のB部分)における、過塩素酸イオンの供給に対するSOM(有機懸濁物質)の経時変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
活性汚泥の過塩素酸イオンを還元する特殊な処理の詳細
汚泥サンプルは脱硝および過塩素酸イオン還元機能を有する反応装置から取り出され、嫌気条件下で、炭素含有素地からメタノールの供給を受ける。前記反応装置では、過塩素酸アンモニウムを含む廃棄水溶液処理用の産業設備内で、特許出願FR2788055が開示する方法を10年にわたって適用した。最初の汚泥は、フランスのボルドー市のルイファルグ通り北にある下水処理施設から得た。
【0044】
汚泥サンプルは、過塩素酸還元機能を持つことになる、(別の)反応装置に入れられる。ここで、汚泥サンプルは下記の過塩素酸イオン還元用の特殊な処理にかけられることになる。この特殊処理中、過塩素酸イオン還元機能を(後で)有する反応装置は、嫌気条件に保たれる。
【0045】
摂氏15度から35度の間の温度で(O<1mg/l)をかき混ぜる。炭素を含む素地(酢酸)と栄養素とを前記反応装置内の前記汚泥のバクテリアに供給する。
【0046】
図1が示すように、過塩素酸イオン還元機能を(後で)有する反応装置内の汚泥は、過塩素酸イオン還元用に、0.5g/lから8g/lの過塩素酸イオンの40日にわたる連続追加供給(前記の過塩素酸イオン濃度は反応装置に供給される溶液の前記イオンの濃度)によって特殊化される。反応装置への新たな供給は、前回供給の過塩素酸イオンが全て還元されてから行われる。過塩素酸イオンの追加供給後、反応装置内の過塩素酸イオン濃度は低下してゼロに戻る。
【0047】
過塩素酸イオン消費率は、最初の過塩素酸イオン追加供給から増加するが、これが過塩素酸イオン処理用の汚泥の特殊化の効果を示している。このことは、図2が示すように、特殊処理において行われる汚泥による過塩素酸イオンの特定還元率(一日のSOM1グラムあたりの消費過塩素酸イオン(ミリグラム)によって表される。前記の条件では、前記の率は、200mg ClO/g SOM/dに近い、当初の低い特定還元率から、特殊処理の最後には500mg ClO/g SOM/d前後の安定した値にまで増加する。
【0048】
下記の表1で、出願人は、石けん(例えばカルボン酸カリウム塩および/またはカルボン酸ナトリウム)のような有機炭素含有素地と、酢酸やメタノールに代表される、従来技術に開示されているものではない植物脂肪酸とによって、前記酢酸およびメタノールとともに得られる範囲において、高い分解率が達成されることを示している。
【0049】
【表1】

【0050】
図3は、特殊処理および順化フェイズにおける、SOM濃度の変化を示している。最初の40日間でSOMの濃度は顕著に減少している。過塩素酸イオンの分解ができない汚泥バクテリアは「消滅」している。40日経過後は、SOMの濃度の上昇が見られる。この上昇は、順化フェイズにおける、特定の過塩素酸還元バクテリアの顕著な増加を示している。これによって、この特定のバクテリアの上昇率が決定され得る。
【0051】
特殊処理の終了時には、汚泥は、過塩素酸還元に特化したバクテリアである、エキシグオバクテリウム・メキシカナム、セレウス菌、スタフィロコッカス・ワーネリ、および/またはスタフィロコッカス・パステウリを有している。前記汚泥の解析から、パスツール研究所が前記バクテリアを同定した。前記特殊な汚泥におけるバクテリアの90%より多くはこれらのものからなっている。また、前記バクテリアは数値的重要性の順に並べてある。これらは、従来技術では過塩素酸イオンを還元可能なものとして記載されていない。
【0052】
過塩素酸アンモニウムと硝酸塩とを含む水溶液の(本発明の)産業処理の例
本例は、過塩素酸アンモニウムと硝酸塩との両方を含む水溶液の処理に関する。この方法は、反応1(アンモニウムの硝化)、反応2(脱硝)、反応3(過塩素酸の還元)という連続したステップによって行われる。
【0053】
装置は主に、直列に接続された3つの反応装置であって、硝化機能を有する150mの容積の反応装置1と、脱硝機能を有する130mの容積の反応装置2と、過塩素酸イオン還元機能を有する50mの容積の反応装置3とからなる。これらの反応装置は、攪拌、水素イオン指数制御、空気注入(有効化されている場合とそうでない場合がある)を行う手段と、排水を供給および排出する手段と、追加の化合物を供給する手段とを有している。
【0054】
反応装置1は好気条件で開放されており、操作可能な空気供給システムを有している。この反応装置は順化された硝化活性汚泥を内蔵している。これに、7kg O/hの流量の空気と、微量元素(リン酸カリウム(50kg/d)、硫酸マグネシウム(48kg/d)、塩化カルシウム(6kg/d)、塩化第二鉄(39kg/d))と、水素イオン指数制御用のソーダとが供給される。
【0055】
反応装置2、3は、嫌気条件であり密閉されている。反応装置2は、順化された脱硝活性汚泥を内蔵し、酢酸(82kg/d)の供給を受ける。また、栄養素(微量元素と塩化第二鉄)が反応装置1の排液から供給される。
【0056】
反応装置3は、汚泥、つまり特殊化および順化された汚泥を還元する過塩素酸イオンを内蔵する。この反応装置には、酢酸(460kg/d)や、リン酸カリウム(50kg/d)、硫酸マグネシウム(48kg/d)、塩化カルシウム(6kg/d)といった微量元素が供給される。
【0057】
反応装置1には、次に、10g/lの過塩素酸アンモニウムと4g/lの硝酸塩とを含む水溶液が、1.14m/hの速度で連続的に供給される。この水溶液は活性汚泥と攪拌により混合される。温度は摂氏15度より上に保たれる。
【0058】
反応装置1を出た排液(装置内に5.5日間存在)は、ほとんどアンモニウムイオンを含んでいない(1%)。この廃液が、上記供給率で溢れ出すことで反応装置2に供給される。
【0059】
反応装置2を出た排液は、アンモニウム(<1%)を含まず、硝酸塩や亜硝酸塩をほとんど含まず(<1%)、上記供給率で溢れ出すことで反応装置3に供給される。反応装置2における処理時間は4.75日である。
【0060】
反応装置3では、反応装置2を出た排液が、特殊化および順化された過塩素酸イオン還元用の活性汚泥と、攪拌により混合される。温度は摂氏15度を超える値に保たれる。この反応装置3を出た排液は、サブミクロンサイズの孔を有する膜システムによって、95m/hの流量で濾過される。濾過後の排水のSOM濃度は、30mg/lより下である。得られた濃縮液は反応装置3に戻される。処理時間としては、一般的に2日間で99.9%の過塩素酸イオンが還元される。
【0061】
前記の濾過された排液からは、アンモニウム、硝酸塩、亜硝酸塩、過塩素酸、沈殿物が浄化されている。この方法(本発明の実施形態の方法)によると、排液中のアンモニウム、硝酸塩/亜硝酸塩、過塩素酸の濃度は1重量%より下となる。排液は環境中に排出可能である。
【0062】
本発明の方法によると、過塩素酸イオンの99.9%の除去に必要は処理時間は2日だけで済む。産業規模で発展した従来技術の特許出願FR2788055の方法では、80%を超える過塩素酸イオンの除去に27日かかっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過塩素酸アンモニウムと場合によって硝酸イオンとを含む水溶液の生物学的浄化方法であって、
それぞれ、好気条件において硝化バクテリアを用いて炭素含有無機素地と栄養素との存在下で行われるものと、嫌気条件において脱硝バクテリアを用いて炭素含有有機素地と栄養素との存在下で行われるものとである、硝化/脱硝処理ステップと、
上記硝化/脱硝処理ステップとは別で行われる、嫌気条件で、過塩素酸イオン還元バクテリアを炭素含有有機素地と栄養素との存在下で行われる、過塩素酸還元ステップとを有し、
前記過塩素酸還元ステップは、前記水溶液が硝酸イオンを含んでいる場合、硝化/脱硝処理ステップとは別に、その下流において行われることを特徴とする、生物学的浄化方法。
【請求項2】
前記過塩素酸イオン還元バクテリアは、エキシグオバクテリウム・メキシカナム、セレウス菌および/またはスタフィロコッカス・ワーネリおよび/またはスタフィロコッカス・パステウリに属することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硝化バクテリア、前記脱硝バクテリア、前記過塩素酸還元バクテリアは、培養株由来であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記硝化バクテリア、前記脱硝バクテリア、前記過塩素酸還元バクテリアは活性汚泥中に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記活性汚泥が、都市下水路または堆積泥から得られることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記過塩素酸還元バクテリアが、脱硝機能を有する反応装置または脱硝と過塩素酸イオン還元の両機能を合わせ持つ反応装置から得られた活性汚泥内に存在することを特徴とする、請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記過塩素酸還元バクテリアが、過塩素酸還元用に特殊化された活性汚泥内に存在することを特徴とする、請求項1、2、4、6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
過塩素酸還元用に特殊化された前記活性汚泥が、
空の反応装置に、嫌気条件で、都市下水路または堆積泥から得られた活性汚泥と、脱硝機能を有する反応装置または脱硝と過塩素酸イオン還元の両機能を合わせ持つ反応装置から得られた活性汚泥と、さらに炭素含有有機素地および栄養素とを導入するステップと、
過塩素酸イオンを、好ましくは段階的に量を増加させて連続的に投入するステップとを有する方法によって得られることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
過塩素酸の還元が、酢酸や、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸ナトリウム、植物脂肪酸などの石けん、あるいはこれらの混合物から選ばれる炭素含有有機素地の存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記ステップの少なくとも一つの終了時に、前記排液を濾過して、沈殿物が除去された排液と、少なくとも一部は再利用されるバクテリアの豊富な濃縮液とを得ることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液が、最大100g/lの過塩素酸アンモニウムを含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶液が、100g/l未満の硝酸塩を含むことを特徴とする、請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
直列に接続された、硝化反応装置と、脱硝反応装置と、過塩素酸還元反応装置との3つの反応装置で行われることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−523590(P2011−523590A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512183(P2011−512183)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051029
【国際公開番号】WO2009/156673
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(506100082)エスエムウー (24)
【氏名又は名称原語表記】SME
【住所又は居所原語表記】2,boulevard du General Martial,Valin 75015 Paris,FRANCE
【Fターム(参考)】