説明

過熱蒸気生成方法及び過熱蒸気生成システム、並びに蒸気発電方法及び蒸気発電システム

【課題】蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するに際し、省エネルギ化を図ることができるようにした過熱蒸気生成方法及び過熱蒸気生成システム、並びに蒸気発電方法及蒸気発電システムを提供すること。
【解決手段】蒸気発生ボイラ1を生成源とする飽和水蒸気S0から、その一部を抜き出した抜き出し飽和水蒸気S0’と、飽和水蒸気S0から抜き出し飽和水蒸気S0’が抜き出された後の過熱化対象飽和水蒸気S0”とを得る工程と、抜き出し飽和水蒸気S0’を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気S1にする工程と、抜き出し過熱蒸気S1と過熱化対象飽和水蒸気S0”とを熱交換して抜き出し過熱蒸気S1を凝縮させて、過熱化対象飽和水蒸気S0”を加熱して過熱蒸気S2にする工程と、抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じたドレン水WDを蒸気発生ボイラ1の給水系2に回収する工程とを含むことを特徴とする過熱蒸気生成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するに際し、省エネルギ化を図ることができるようにした、過熱蒸気生成方法及び過熱蒸気生成システム、並びに、これらを組み入れて省エネルギ化を図って蒸気発電を行うことができるようにした、蒸気発電方法及び蒸気発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先に本出願人は、飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するに際し、エネルギ利用効率良く過熱蒸気を得ることができるとともに、燃焼式蒸気加熱器を用いる場合とは違って、燃料用配管や排気用配管などが不要で装置設置費用が少なくて済むようにすることを目的として、過熱蒸気生成方法を提案している(特許文献1)。
【0003】
この従来の過熱蒸気生成方法は、図7に示すように、水蒸気供給源からの飽和水蒸気S0から、該飽和水蒸気S0の一部を抜き出した抜き出し飽和水蒸気S0’と、前記飽和水蒸気S0から前記抜き出し飽和水蒸気S0’が抜き出された後の過熱化対象飽和水蒸気S0”とを得、圧縮機51により前記抜き出し飽和水蒸気S0’を断熱圧縮して過熱蒸気S1にし、凝縮器(蒸気加熱器)52によってこの抜き出し過熱蒸気S1と前記過熱化対象飽和水蒸気S0”とを熱交換して抜き出し過熱蒸気S1を凝縮させることにより、過熱化対象飽和水蒸気S0”を加熱して過熱蒸気S2を得るようにしている。
【0004】
この従来の過熱蒸気生成方法によると、前記圧縮に要する電気エネルギ量に対して例えばその10倍を上回る熱エネルギ量を過熱化対象飽和水蒸気S0”に供給することができ、エネルギ利用効率良く過熱蒸気S2を得ることができる。また、燃焼式蒸気加熱器とは違って、抜き出し飽和水蒸気S0’を断熱圧縮するようにしたものであるから、燃料用配管や排気用配管などが不要で装置設置費用が少なくて済む。
【特許文献1】特開2004−190949号公報(第2−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の過熱蒸気生成方法では、凝縮器(蒸気加熱器)52において抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じた高温・高圧のドレン水(凝縮水)を回収することについて考慮されていなかった。このため、飽和水蒸気S0の生成源である蒸気発生ボイラを含めて過熱蒸気S2の生成に要するエネルギを低減して、省エネルギ化を図るという点において改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明の課題は、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を生成するに際し、省エネルギ化を図ることができるようにした、過熱蒸気生成方法及び過熱蒸気生成システム、並びに、これらを組み入れて省エネルギ化を図って蒸気発電を行うことができるようにした、蒸気発電方法及蒸気発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
請求項1の発明は、過熱蒸気を生成させる過熱蒸気生成方法において、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気から、該飽和水蒸気の一部を抜き出した抜き出し飽和水蒸気と、前記飽和水蒸気から前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の過熱化対象飽和水蒸気とを得る工程と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気と前記過熱化対象飽和水蒸気とを熱交換して前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収する工程とを含むことを特徴とする過熱蒸気生成方法である。
【0009】
請求項2の発明は、過熱蒸気を生成させる過熱蒸気生成システムにおいて、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を供給するための飽和水蒸気供給経路と、前記飽和水蒸気の一部を抜き出し飽和水蒸気として導出するための抜き出し飽和水蒸気導出経路と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする圧縮機と、前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の前記飽和水蒸気供給経路からの過熱化対象飽和水蒸気と前記圧縮機からの前記抜き出し過熱蒸気とを熱交換して、前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気にする蒸気加熱器と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収するドレン水回収経路とを備えていることを特徴とする過熱蒸気生成システムである。
【0010】
請求項3の発明は、過熱蒸気を蒸気タービンに供給して、該蒸気タービンで発電機を駆動して発電を行う蒸気発電方法において、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気から、該飽和水蒸気の一部を抜き出した抜き出し飽和水蒸気と、前記飽和水蒸気から前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の過熱化対象飽和水蒸気とを得る工程と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気と前記過熱化対象飽和水蒸気とを熱交換して前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収する工程と、前記蒸気タービンに前記得られた過熱蒸気を供給する工程と、前記蒸気タービンからの低圧飽和水蒸気を導出する工程とを含むことを特徴とする蒸気発電方法である。
【0011】
請求項4の発明は、過熱蒸気を蒸気タービンに供給して、該蒸気タービンで発電機を駆動して発電を行う蒸気発電システムにおいて、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を供給するための飽和水蒸気供給経路と、前記飽和水蒸気の一部を抜き出し飽和水蒸気として導出するための抜き出し飽和水蒸気導出経路と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする圧縮機と、前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の前記飽和水蒸気供給経路からの過熱化対象飽和水蒸気と前記圧縮機からの前記抜き出し過熱蒸気とを熱交換して、前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を得る蒸気加熱器と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収するドレン水回収経路と、前記蒸気タービンに前記蒸気加熱器で得られた過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給経路と、前記蒸気タービンからの低圧飽和水蒸気を導出する低圧飽和水蒸気導出経路とを備えていることを特徴とする蒸気発電システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の過熱蒸気生成方法又は過熱蒸気生成システムは、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気S0から、その一部(蒸気流量で例えば5%程度)を抜き出した飽和水蒸気である抜き出し飽和水蒸気S0’と、該抜き出し飽和水蒸気S0’が抜き出された後の過熱化対象の飽和水蒸気S0”と得、前記抜き出し飽和水蒸気S0’を断熱圧縮して過熱蒸気S1にし、この抜き出し過熱蒸気S1を凝縮させて該過熱蒸気S1の持つ蒸発潜熱を放出させることで、前記過熱化対象飽和水蒸気S0”を加熱して過熱蒸気S2を得るように構成されるとともに、従来とは違って、前記抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じた高温・高圧のドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収するように構成されている。したがって、蒸気発生ボイラへの投入エネルギを減らすことができて省エネルギ化を図ることができる。
【0013】
本発明の蒸気発電方法は、過熱蒸気を蒸気タービンに供給して、該蒸気タービンで発電機を駆動して発電を行うに際し、前記過熱蒸気生成方法を組み入れて過熱蒸気を得るように構成されており、また、本発明の蒸気発電システムは、前記過熱蒸気生成システムを組み入れて過熱蒸気を得るように構成されている。したがって、本発明の蒸気発電方法又は蒸気発電システムは、従来に比べ省エネルギ化を図って蒸気発電を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による過熱蒸気生成方法が実施される過熱蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【0015】
この過熱蒸気生成システムは、図1に示すように、蒸気発生ボイラ1を生成源とする飽和水蒸気S0を供給するための飽和水蒸気供給経路11と、この飽和水蒸気供給経路11の途中から分岐し、前記飽和水蒸気S0の一部を抜き出し飽和水蒸気S0’として導出するための抜き出し飽和水蒸気導出経路12と、この抜き出し飽和水蒸気導出経路12からの前記抜き出し飽和水蒸気S0’を断熱圧縮して過熱蒸気S1にし、この抜き出し過熱蒸気S1を得る圧縮機4と、この圧縮機4に抜き出し過熱蒸気供給経路13によって連絡され、前記抜き出し飽和水蒸気S0’が抜き出された後の前記飽和水蒸気供給経路11からの過熱化対象飽和水蒸気S0”と圧縮機4からの前記抜き出し過熱蒸気S1とを熱交換して、抜き出し過熱蒸気S1を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気S0”を加熱して過熱蒸気S2を得る蒸気加熱器(凝縮器)6と、前記抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じたドレン水WDを蒸気発生ボイラ1の給水タンク2に回収するドレン水回収経路15とを備えている。また、図1において、3は蒸気発生ボイラ1に給水タンク2からの給水を送るための給水用ポンプ、5は圧縮機4を駆動するための圧縮機駆動用電動機、14は蒸気加熱器6からの過熱蒸気S2を消費設備へ供給するための過熱蒸気供給経路である。なお、飽和水蒸気供給経路11において分岐点aに近接にし、かつ分岐点aの上流位置にドレンセパレータを設けるようにしてよい。
【0016】
次に、図1を参照して本発明の過熱蒸気生成方法について、蒸気流量3000kg/h,圧力0.75MPaA(A:絶対圧力),温度216.4℃の過熱蒸気S2(飽和温度168℃)を生成する場合を例に説明する。
【0017】
まず、蒸気発生ボイラ1に給水W(流量3000kg/h,圧力0.75MPaA,温度20℃)と後述する高温・高圧のドレン水WD(流量165kg/h,圧力2.30MPaA,温度219.5℃)とが供給され、蒸気発生ボイラ1によって飽和水蒸気S0(流量3165kg/h,圧力0.75MPaA,温度167.8℃)が生成される。
【0018】
この生成された飽和水蒸気S0のうちの流量で5.2%の飽和水蒸気は、抜き出し飽和水蒸気S0’(流量165kg/h,圧力0.75MPaA,温度167.8℃)として、飽和水蒸気供給経路11から分岐した抜き出し飽和水蒸気導出経路12を介して圧縮機4に導入される。一方、飽和水蒸気S0のうちの残りの飽和水蒸気は、過熱化対象飽和水蒸気S0”(流量3000kg/h,圧力0.75MPaA,温度167.8℃)として飽和水蒸気供給経路11を介して蒸気加熱器6に導入される。
【0019】
飽和水蒸気供給経路11から分岐した前記抜き出し飽和水蒸気S0’は、圧縮機4で断熱圧縮されることにより過熱蒸気S1となり、生成されたこの抜き出し過熱蒸気S1(流量165kg/h,圧力2.30MPaA,温度297.8℃)は、抜き出し過熱蒸気供給経路13を介して前記蒸気加熱器6に供給される。
【0020】
この蒸気加熱器6において、過熱化対象飽和水蒸気S0”と抜き出し過熱蒸気S1との熱交換によって抜き出し過熱蒸気S1が凝縮し、これによって抜き出し過熱蒸気S1がその蒸発潜熱を放出して、過熱化対象飽和水蒸気S0”を加熱することにより、過熱蒸気S2(流量3000kg/h,圧力0.75MPaA,温度216.4℃)が生成される。なお、蒸気加熱器6は、例えばシェル&チューブ式の熱交換形式のものであり、伝熱管内に抜き出し過熱蒸気S1を導入し、伝熱管外側に過熱化対象飽和水蒸気S0”を導く構造のものである。
【0021】
そして、蒸気加熱器6において抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じた高温・高圧のドレン水WD(流量165kg/h,圧力2.30MPaA,温度219.5℃)が、ドレン水回収経路15を介して蒸気発生ボイラ1の給水タンク2に回収されるようになっている。
【0022】
この場合、過熱蒸気S2の生成に必要な本発明過熱蒸気生成方法による投入エネルギは、蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギ2440kWと圧縮機4の動力14kWとから、合計2454kWになる。以下、このことについて説明する。
【0023】
まず、給水Wが持つ熱エネルギは、流量3000(kg/h)÷3600(s)×83.9(kJ/kg)≒70kWである。前記83.9(kJ/kg)は、給水W(圧力0.75MPaA,温度20℃)の比エンタルピである。また、飽和水蒸気S0が持つ熱エネルギは、流量3165(kg/h)÷3600(s)×2766(kJ/kg)≒2431kWである。前記2766(kJ/kg)は、飽和水蒸気S0(圧力0.75MPaA,温度167.8℃)の比エンタルピである。また、飽和水蒸気S0”が持つ熱エネルギは、流量3000(kg/h)÷3600(s)×2766(kJ/kg)≒2305kWである。前記2766(kJ/kg)は、飽和水蒸気S0”の比エンタルピである。
【0024】
また、抜き出し過熱蒸気S1が持つ熱エネルギは、流量165(kg/h)÷3600(s)×3010(kJ/kg)≒138kWである。前記3010(kJ/kg)は、抜き出し過熱蒸気S1(圧力2.30MPaA,温度297.8℃)の比エンタルピである。また、過熱蒸気S2が持つ熱エネルギは、流量3000(kg/h)÷3600(s)×2879(kJ/kg)≒2400kWである。前記2879(kJ/kg)は、過熱蒸気S2(圧力0.75MPaA,温度216.4℃)の比エンタルピである。また、ドレン水WDが持つ熱エネルギは、流量165(kg/h)÷3600(s)×941(kJ/kg)≒43kWである。前記941(kJ/kg)は、ドレン水WD(圧力2.30MPaA,温度219.5℃)の比エンタルピである。
【0025】
そして、前記したところの、飽和水蒸気S0が持つ熱エネルギ2431kWと、給水Wが持つ熱エネルギ70kWと、ドレン水WDが持つ熱エネルギ43kWとから、蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギは、(ボイラ出口エネルギ2431kW−給水エネルギ70kW−ドレン回収エネルギ43kW)÷ボイラ熱効率95%の計算により、2440kWになる。
【0026】
また、抜き出し飽和水蒸気S0’から抜き出し過熱蒸気S1を生成するのに必要な圧縮機4の動力は、流量165(kg/h)÷3600(s)×(3010(kJ/kg)−2766(kJ/kg))÷圧縮機総合効率80%の計算により、14kWになる。よって、前述したように、過熱蒸気S2の生成に必要な本発明過熱蒸気生成方法による投入エネルギは、蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギ2440kWと圧縮機4の動力14kWとから、合計2454kWになる。
【0027】
図3は従来技術が実施される過熱蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【0028】
従来技術(特開2004−190949号公報)では、図3に示すように、抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じた高温・高圧のドレン水WDは、エネルギ回収がなされることなく、ドレン水排出経路16を経て排出される。この場合の蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギは、(ボイラ出口エネルギ2431kW−給水エネルギ74kW)÷ボイラ熱効率95%の計算により、2482kWになる。また、圧縮機4の動力は、本発明の過熱蒸気生成方法と同じく14kWである。したがって、過熱蒸気S2の生成に必要な従来技術による投入エネルギは、前記2482kWと前記14kWとから合計2496kWになる。
【0029】
図4は蒸気発生ボイラと燃焼式蒸気加熱器とによる過熱蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【0030】
この場合の蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギは、(ボイラ出口エネルギ2305kW−給水エネルギ70kW)÷ボイラ熱効率95%の計算により、2353kWになる。また、蒸気発生ボイラ1で生成された飽和水蒸気S0”から過熱蒸気S2を生成するのに必要な燃焼式蒸気加熱器9への燃料エネルギは、流量3000(kg/h)÷3600(s)×(2879(kJ/kg)−2766(kJ/kg))÷熱効率74%の計算により、128kWになる。したがって、蒸気発生ボイラ1及び燃焼式蒸気加熱器9による場合の過熱蒸気S2の生成に必要な投入エネルギは、前記2353kWと前記128kWとから合計2481kWになる。
【0031】
以上説明した結果を表1に示す。表1には、本発明過熱蒸気生成方法と、従来技術(特開2004−190949号公報)と、蒸気発生ボイラ及び燃焼式蒸気加熱器による方法とにおいて、過熱蒸気S2(蒸気流量3000kg/h,圧力0.75MPaA,温度216.4℃)を生成するのに要する投入エネルギを示してある。
【0032】
【表1】

【0033】
表1からわかるように、蒸気発生ボイラ1と燃焼式蒸気加熱器9とによる方法(図4)をベースとした場合、従来技術(図3)では省エネルギ効果が生じなくなっている。これに対して、本発明の過熱蒸気生成方法では、従来技術とは違って、抜き出し過熱蒸気S1の凝縮により生じた高温・高圧のドレン水WDを蒸気発生ボイラ1の給水タンク2に回収して、ドレン水WDが持つ熱エネルギを有効利用するようにしているので、27kWの省エネルギとなる。
【0034】
図2は本発明の一実施形態による蒸気発電方法が実施される蒸気発電システムのプロセスフロー図である。蒸気タービン7、発電機8及び低圧飽和水蒸気導出経路17が付加されている点以外は、前記図1に示す構成と同一なので、図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について説明する。
【0035】
この蒸気発電システムは、図2に示すように、前記図1に示す構成に加え、蒸気加熱器6からの過熱蒸気S2が過熱蒸気供給経路14を介して供給される蒸気タービン7と、この蒸気タービン7を駆動源として発電を行う発電機8と、蒸気タービン7からの低圧飽和水蒸気S3を導出し、図示しない消費設備に供給するための低圧飽和水蒸気導出経路17とを備えている。
【0036】
次に、図2を参照して本発明の蒸気発電方法について、蒸気流量3000kg/h,圧力0.75MPaA,温度216.4℃の過熱蒸気S2を生成して、蒸気タービン7を駆動源として発電を行い、蒸気タービン7で仕事をした蒸気流量3000kg/h,圧力0.25MPaA,温度127.4℃の低圧飽和水蒸気S3を図示しない消費設備に供給する場合を例に説明する。なお、過熱蒸気S2の生成方法については、前記図1の場合と同じであるから説明を省略する。
【0037】
図2に示すように、蒸気加熱器6からの過熱蒸気S2は、蒸気タービン7に供給されて仕事した後、低圧飽和水蒸気S3として低圧飽和水蒸気導出経路17を介して図示しない消費設備に供給されるようになっている。蒸気タービン7は圧力比3にて作動される。低圧飽和水蒸気S3が持つ熱エネルギは、流量3000(kg/h)÷3600(s)×2716(kJ/kg)≒2263kWである。前記2716(kJ/kg)は、低圧飽和水蒸気S3(圧力0.25MPaA,温度127.4℃)の比エンタルピである。
【0038】
この場合、発電出力は、流量3000(kg/h)÷3600(s)×(2879(kJ/kg)−2716(kJ/kg))×(減速機機械効率89%)×(発電機効率93%)の計算により、113kWになる。
【0039】
そして、本発明の蒸気発電方法による場合、発電出力113kWと低圧飽和水蒸気S3とを得るのに必要な投入エネルギは、蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギ2440kWと圧縮機4の動力14kWとから合計2454kWである。
【0040】
図5は従来技術が実施される蒸気発電システムのプロセスフロー図である。
【0041】
従来技術(特開2004−190949号公報)による発電の場合、発電出力113kWと低圧飽和水蒸気S3とを得るのに必要な投入エネルギは、蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギ2482kWと圧縮機4の動力14kWとから合計2496kWである。
【0042】
図6は蒸気発生ボイラのみによる飽和蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【0043】
この場合、低圧飽和水蒸気S3を得るのに必要な投入エネルギは、蒸気発生ボイラ1への燃料エネルギであって、(ボイラ出口エネルギ2263kW−給水エネルギ70kW)÷ボイラ熱効率95%の計算により、2309kWである。
【0044】
以上説明したところの、本発明の蒸気発電方法の場合、従来技術による発電の場合、及び蒸気発生ボイラのみによる低圧飽和水蒸気S3を生成する場合のそれぞれの投入エネルギを、表2に示してある。そして、蒸気発生ボイラのみで飽和水蒸気を生成する場合に対して、飽和水蒸気をいったん過熱蒸気にし、該過熱蒸気にて蒸気タービンによる発電を行ってから最終的に飽和水蒸気(蒸気タービンからの使用済み蒸気)を生成する場合の効率をリパワリング効率と定義する。すなわち、リパワリング効率(%)=(発電出力)/(発電するために追加投入したエネルギ)×100とする。
【0045】
【表2】

【0046】
表2からわかるように、従来技術(特開2004−190949号公報)による発電の場合では、リパワリング効率が60%となっている。これに対して、本発明の蒸気発電方法では、リパワリング効率が78%となり、従来技術に比べ省エネルギ化を図って蒸気発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態による過熱蒸気生成方法が実施される過熱蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態による蒸気発電方法が実施される蒸気発電システムのプロセスフロー図である。
【図3】従来技術が実施される過熱蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【図4】蒸気発生ボイラと燃焼式蒸気加熱器とによる過熱蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【図5】従来技術が実施される蒸気発電システムのプロセスフロー図である。
【図6】蒸気発生ボイラのみによる飽和蒸気生成システムのプロセスフロー図である。
【図7】従来の過熱蒸気生成方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
1…蒸気発生ボイラ
2…給水タンク
3…給水用ポンプ
4…圧縮機
5…圧縮機駆動用電動機
6…蒸気加熱器
7…蒸気タービン
8…発電機
11…飽和水蒸気供給経路
12…抜き出し飽和水蒸気導出経路
13…抜き出し過熱蒸気供給経路
14…過熱蒸気供給経路
15…ドレン水回収経路
17…低圧飽和水蒸気導出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気を生成させる過熱蒸気生成方法において、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気から、該飽和水蒸気の一部を抜き出した抜き出し飽和水蒸気と、前記飽和水蒸気から前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の過熱化対象飽和水蒸気とを得る工程と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気と前記過熱化対象飽和水蒸気とを熱交換して前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収する工程とを含むことを特徴とする過熱蒸気生成方法。
【請求項2】
過熱蒸気を生成させる過熱蒸気生成システムにおいて、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を供給するための飽和水蒸気供給経路と、前記飽和水蒸気の一部を抜き出し飽和水蒸気として導出するための抜き出し飽和水蒸気導出経路と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする圧縮機と、前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の前記飽和水蒸気供給経路からの過熱化対象飽和水蒸気と前記圧縮機からの前記抜き出し過熱蒸気とを熱交換して、前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気にする蒸気加熱器と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収するドレン水回収経路とを備えていることを特徴とする過熱蒸気生成システム。
【請求項3】
過熱蒸気を蒸気タービンに供給して、該蒸気タービンで発電機を駆動して発電を行う蒸気発電方法において、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気から、該飽和水蒸気の一部を抜き出した抜き出し飽和水蒸気と、前記飽和水蒸気から前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の過熱化対象飽和水蒸気とを得る工程と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気と前記過熱化対象飽和水蒸気とを熱交換して前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気にする工程と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収する工程と、前記蒸気タービンに前記得られた過熱蒸気を供給する工程と、前記蒸気タービンからの低圧飽和水蒸気を導出する工程とを含むことを特徴とする蒸気発電方法。
【請求項4】
過熱蒸気を蒸気タービンに供給して、該蒸気タービンで発電機を駆動して発電を行う蒸気発電システムにおいて、蒸気発生ボイラを生成源とする飽和水蒸気を供給するための飽和水蒸気供給経路と、前記飽和水蒸気の一部を抜き出し飽和水蒸気として導出するための抜き出し飽和水蒸気導出経路と、前記抜き出し飽和水蒸気を断熱圧縮し、抜き出し過熱蒸気にする圧縮機と、前記抜き出し飽和水蒸気が抜き出された後の前記飽和水蒸気供給経路からの過熱化対象飽和水蒸気と前記圧縮機からの前記抜き出し過熱蒸気とを熱交換して、前記抜き出し過熱蒸気を凝縮させることにより、前記過熱化対象飽和水蒸気を加熱して過熱蒸気を得る蒸気加熱器と、前記抜き出し過熱蒸気の凝縮により生じたドレン水を前記蒸気発生ボイラの給水系に回収するドレン水回収経路と、前記蒸気タービンに前記蒸気加熱器で得られた過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給経路と、前記蒸気タービンからの低圧飽和水蒸気を導出する低圧飽和水蒸気導出経路とを備えていることを特徴とする蒸気発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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