説明

道路ネットワークの抽出装置

【課題】リモートセンシング画像から道路ネットワークを簡単かつ高速に抽出する。
【解決手段】リモートセンシング画像211に基づいて、被覆処理と細線化処理とを行った後に、所定の数Nの互いに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部206と、所定の角度θについて各道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部ステップ207と、生成された2N個の直線が囲む領域内の全ての点(x, y)について、各端点と点(x, y)を結ぶ線分に対応する2値画像の画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部208と、各端点と点(xmax, ymax)とを結ぶ線分を生成する結合処理部209と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星画像や航空写真などのリモートセンシング画像から道路ネットワークを抽出して道路地図を作成する技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
リモートセンシング画像から道路地図を作成するには、大きく分けて2つの過程を経る。第1の過程は、リモートセンシング画像に対して被覆分類を行って道路と思われる領域を抽出する道路領域抽出過程である。通常、この道路領域抽出過程の結果では、何箇所か道路がギャップによって寸断されており、これを連結する必要がある。特に複数の道路が交差する地点で寸断されている場合が多い。第2の過程は、複数の道路領域の間のギャップを埋めて道路ネットワークを生成する道路ネットワーク化過程である。
【0003】
埋めるべきギャップの形状は、主にI字路・Y字路・X字路・T字路がある。I字路では二つの道路が一点で交わる。Y字路では三つの道路が一点で交わる。X字路では四つの道路が一点で交わる。T字路ではある道路に斜めに別の道路が交わる。
【0004】
下記非特許文献1のネットワーク化の方法では、交差点をモデル化して複数のテンプレートを予め用意しておき、これらのテンプレートとリモートセンシング画像とのテンプレートマッチング処理を行い、最もマッチするものを選び出してギャップを埋める。その他、出願人の発明として、下記の特許文献1から3までがあり、いずれも画像から道路領域を切り出す技術を開示している。
【0005】
【非特許文献1】G. Koutani, K. Uchimura and Z. Hu:Road updating from high resolution arial imagery using road intersection model:http://www.photogrammetry.ethz.ch/pitsanulok_workshop/papers/25.pdf
【非特許文献2】ウィキペディア:K平均法:http://ja.wikipedia.org/wiki/K%E5%B9%B3%E5%9D%87%E6%B3%95
【非特許文献3】酒井幸市:デジタル画像処理入門:pp.68-70、pp.87-90 CQ出版(2002)
【非特許文献4】柳井久江:エクセル統計 ――実用多変量解析編――:pp.115-117 オーエムエス出版(2004)
【特許文献1】特開2006−23958号公報
【特許文献2】特開2007−73009号公報
【特許文献3】特開2007−33931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の方法の問題点は、計算量を大きくなることである。例えば、Y字路を処理する場合、3つの道路間の角度の違うテンプレートごとに、そのテンプレートの向きと位置をパラメータとしてテンプレートマッチングを行う必要があり、テンプレートの数×テンプレートの向きの数×テンプレートの位置の数に比例する計算量を必要とする。一般に、従来の道路ネットワーク化の方法は、多くの計算量を必要としていた。
【0007】
本発明は、リモートセンシング画像から道路ネットワークを簡単かつ高速に抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リモートセンシング画像から道路を抽出する処理を行う道路ネットワーク抽出装置であって、前記リモートセンシング画像に被覆分類を適用して、道路領域を示す画素の値と、道路領域でない画素の値と、する2値画像を生成する被覆分類処理部と、前記2値画像を細線化して道路セグメントを生成する細線化処理部と、前記道路セグメントの互いに隣接する端点、又は、前記道路セグメントとそれに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部と、所定の角度θについて各道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成するか、又は、所定の角度θについて道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部と、±θの方向に延びる直線が囲む領域内の全ての点(x, y)内において、端点と点(x, y)を結ぶ線分と対応する前記道路領域を示す画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部と、端点と前記点(xmax, ymax)とを結ぶ線分を生成する結合処理部と、を有することを特徴とする道路ネットワーク抽出装置が提供される。
【0009】
ここで、2本の道路セグメントを選択した場合に、いずれか一方のみの延長線が他方に交わるか否かを判定して、T字路であるか、T字路以外であるかを判定する。
【0010】
また、本発明は、リモートセンシング画像から道路を抽出する処理を行う道路ネットワーク抽出装置であって、前記リモートセンシング画像に被覆分類を適用して、道路領域を示す画素の値と、道路領域でない画素の値と、する2値画像を生成する被覆分類処理部と、前記2値画像を細線化して道路セグメントを生成する細線化処理部と、前記道路セグメントのうちから2本を選択した場合に、いずれか一方のみの延長線が他方に交わるか否かを判定して、交わる場合にはT字路であると判定し、所定の数Nの互いに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部と、所定の角度θについて各道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部と、生成された2N個の直線が囲む領域内の全ての点(x, y)について、各端点と点(x, y)を結ぶ線分と対応する前記道路領域を示す画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部と、各端点と前記点(xmax, ymax)とを結ぶ線分を生成する結合処理部と、を有することを特徴とする道路ネットワーク抽出装置である。なお、細線化処理には微小な道路セグメントを消去する処理を含む。この方法が必要とする計算量は2N個の直線が囲む領域内の点の数に比例する。
【0011】
本発明は、リモートセンシング画像から道路を抽出する処理を行う道路ネットワーク抽出装置であって、前記リモートセンシング画像に被覆分類を適用して、道路領域を示す画素の値と、道路領域でない画素の値と、する2値画像を生成する被覆分類処理部と、前記2値画像を細線化して道路セグメントを生成する細線化処理部と、前記道路セグメントのうちから2本を選択した場合に、両方が互いに交わるか否かを判定して、交わる場合にはT字路以外であると判定し、道路セグメントとそれに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部と、所定の角度θについて道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部と、生成された2個の直線ともう一方の道路セグメントとの交点を求め、これらの二つの交点を結ぶ線分上の点(x, y)と端点を結ぶ線分とに対応する前記道路領域を示す画素の数を点(x, y)と端点を結ぶ線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部と、端点と前記点(xmax, ymax)を結ぶ線分を生成する結合処理部と、を有することを特徴とする道路ネットワーク抽出装置であっても良い。なお、細線化処理には微小な道路セグメントを消去する処理を含む。この方法が必要とする計算量は二つの交点を結ぶ線分上の点の数に比例する。
【0012】
また、本発明は、上記処理ステップを実行する方法、該ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム、該プログラムを記録するコンピュータ読みとり可能な記録媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、道路領域間のギャップを埋める処理は、必要な計算量が定義域に属する点の数に比例するので、テンプレートマッチングなどにより処理するよりも高速に処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態による道路抽出技術について図面を参照しながら説明を行う。図1は、本実施の形態による道路ネットワークの抽出処理の概要を示すフローチャート図である。図2は、本実施の形態による道路ネットワークの抽出装置のハードウェアシステムの一例を示す機能ブロック図である。
【0015】
図2に示すように、本実施の形態による道路抽出装置は、入力装置、出力装置、処理装置203、および、記憶装置210を有している。入力装置としては、マウス201とキーボード202とがシステムの処理装置203に接続されている。マウス201とキーボード202とは、コマンドの起動やパラメータの入力などに用いられる。出力装置としては、例えばディスプレイ装置215がシステムの処理装置に接続されている。ディスプレイ装置215は、画像データ、システムの状態、および、入力のプロンプトなどを表示するのに用いられる。
【0016】
処理装置203は、被覆分類処理部204・細線化処理部205・選択処理部206・直線生成処理部207・最適化処理部208・結合処理部209を含む。記憶装置210は、リモートセンシング画像の記憶領域211・分類画像の記憶領域212・作業用2値画像の記憶領域213・出力2値画像の記憶領域214を含む。
【0017】
被覆分類処理部204は、リモートセンシング画像211を入力として道路と分類された画像等の画像の分類処理を行い、得られた結果を分類画像の記憶領域212に出力する。細線化処理部205は、道路と分類された領域に対して細線化処理を適用して、道路セグメントを、作業用2値画像記憶領域213および出力2値画像記憶領域214に出力する。選択処理部206は、作業用2値画像記憶領域213に記憶されている作業用2値画像を走査して、互いに隣接している道路セグメントの端点のクラスタ、または、互いに隣接している道路セグメントと道路セグメントの端点との組を選択する。
【0018】
尚、ここで、近くにある2本の道路セグメントを選択した場合に、いずれか一方のみの延長線が他方に交わるか否かを判定して、YesであればT字路であると判定し、Noであれば(道路セグメントの両方の延長線が交わる場合)、T字路以外(Y字路、X字路、I字路)であると判定する。
【0019】
直線生成処理部207は、所定の角度θについて、選択された各道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に引かれた直線の情報を算出する。最適化処理部208は、直線生成処理部207により得られた直線の情報から、作業用2値画像213上に最適化の定義域を求める。次に定義域内の全ての点について、各端点と点とを結ぶ線分に対応する2値画像である分類画像212の道路領域を示す画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点を求める。
【0020】
尚、本実施の形態においては、「線分の道路らしさ」は値1の道路領域を示す画素の、線分上の全画素に対する割合としている。一般に、画素値の総和に基づくと、線分は道路の領域を通るが、道路以外の領域も無制限に通ることを許してしまうため、適していない。
【0021】
すなわち、例えば、以下の2つの線分のパターンを考える。
L1:000111010010000
L2:0011101000
画素値の総和では、L1は5、L2は4となり、L1の方が値は大きくなってしまうが、「道路らしさ」、すなわち割合では、L1は5/15=0.333…となり、L2は4/10=0.4となり、L2の方が値は大きくなる。従って、割合で考えるのが妥当である。
【0022】
結合処理部209は、各端点と最大になる点とを結ぶ線分を、出力2値画像214内に生成する。表示処理部は、ディスプレイ215に表示させる制御を行う。
【0023】
図1に示すように、上記の処理装置において、まず処理を開始すると(start)、ステップ101の被覆分類は、次のようにして処理する。まず、リモートセンシング画像の画素をRGB色空間に写像する。次にRGB色空間において、K平均法に基づいてクラスタリングする(上記非特許文献2参照)。すなわち、
(1)各要素xiに対してランダムにクラスタに割り振る。
(2)割り振った要素をもとに、各クラスタにおいて中心Vjを計算する。計算は、通常、割り当てられた各要素の平均が使用される。
(3)各xiと各Vjとのユークリッド距離を求め、xiを最も近い中心のクラスタに割り当て直す。
(4)上記の処理で全てのxiのクラスタの割り当てが変化しなかった場合は処理を終了する。それ以外の場合は、新しく割り振られたクラスタからVjを再計算して上記の処理を繰り返す。
【0024】
また、別途、リモートセンシング画像から道路の色情報を求めておく。この色情報に基づいて、クラスタリング結果から道路領域と判断されるものを、マウスなどを利用して手作業で抽出し、道路領域に対応する画素の値を“1”、それ以外の画素の値を“0”とする分類画像を生成する。この作業は画像認識などを利用して自動的に行うこともできる(上記非特許文献2参照)。
【0025】
ステップ102の細線化処理においては、ステップ101で得られた2値画像を、例えば左上から順次ラスタ走査し、値が“1”の画素を囲む周辺の8個の画素を調べ、いくつかのパターン条件のうち、少なくとも1つに合致すれば、その中心の値“1”の画素を値“0”に変更する。これを変更が生じなくなるまで繰り返す(上記非特許文献3参照]。
【0026】
図1のステップ103の選択処理においては、画像の全体をみて、端点が近いもの(クラスタ)を検索する。すべての細線の端点を要素とする階層的クラスタ分析を行う。階層的クラスタ分析は、以下の手順で行われる(上記非特許文献4参照)。
(1)1つの要素からなるクラスタを生成する。
(2)閾値以下の、最も距離の短い2つのクラスタを融合して1つのクラスタを生成する。
(3)融合が起きなければ処理を終了し、融合が起きれば上記の(2)に戻る。
【0027】
ここで、距離は最長距離に基づいて決める。すなわち、2つのクラスタ間の距離をそれぞれのクラスタから1つずつ選んだ要素間のユークリッド距離の中で最も大きな値として定義する。上記の階層的クラスタ分析により、互いに隣接する端点の組が生成できる(上記比特許文献4参照)。選択ができる場合(YES)には、ステップ105に進むが、選択ができなくなった場合には、処理を終了させる(end)。
【0028】
図1のステップ106の最適化処理は、直線で囲まれた定義域を求める処理と、求めた定義域上での計算の処理と、から構成される。定義域を求める処理は、次の手順で行われる。
(1)2次元配列を用意して、その各要素に0を代入する。
(2)互いに隣接する全ての端点について、その端点を始点とする直線の組で囲まれる2次元配列の要素の値を1つ増やす。
【0029】
端点の数をNとすると、上記の処理の結果、値がNである2次元配列の要素が定義域に対応するようになる。
【0030】
定義域上での計算の処理は、定義域上の全ての点と隣接する端点とを結ぶ線分の道路らしさを計算し、道路らしさが最大になる定義域上の点を求める。線分の道路らしさは線分に対応する2値画像の画素の数を線分の全画素数で除算した値で定義される。
【0031】
次いで、最適化された道路・端点を結合して道路を生成する(ステップ107)。ステップ103からステップ107の処理を継続的に実行し、選択する対象となる端点がなくなると(104でNO)、処理を終了する(end)。
【0032】
図3A・Bは、本発明の第1の実施の形態による道路抽出技術であって、その抽出方法をI字路に適用した例を示す図である。図3A(a)においては、被覆分類処理部204が、上記非特許文献2に示されているように、被覆分類処理を行った結果として得られた2値画像を表示画面301に表示させた図であり、2つの道路領域303a・303bが示されている。この道路領域303a・303bは、ノイズなどを含んでいるため、太めの領域として示されている。図3A(b)は、細線化処理部205が上記非特許文献3に記載されているように、被覆分類処理がなされた道路領域303a・303bに細線化処理を適用した結果として生成された道路セグメント305a・305bを示す図である。
【0033】
ここで、近くにある2本の道路セグメント305a・305bを選択処理部206が選択した場合に、いずれか一方のみの延長線が他方に交わるか否かを判定すると、この場合にはNoであるため(道路セグメントの両方の延長線L1・L4が交わる場合に該当する)、T字路以外(この場合はI字路)であると判定する。図3A(c)は、所定の角度θについて選択処理部206が選択した各道路セグメント305a・305bの端点P1、P2からその延長方向の±θの方向に直線生成処理部207が生成した直線L2、L3、及び、L5、L6を示す。図3A(d)は四つの直線L2・L3、L5、L6で囲まれた領域R1(α、β、γ)を示す。この領域R1内の全ての点(x, y)について、最適化処理部208は、各端点P1、P2と点(x, y)とを結ぶ線分に対応する2値画像の画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点を求める。図3A(e)の黒丸Pmaxはその値が最大になる点を示している。図3A(f)は、結合処理部209が、値が最大となる点Pmaxと二つの道路セグメントの端点P1、P2とを結合し、道路のネットワーク化が完了したことを示す図である。
【0034】
図3Bは、図3A(d)に対応する図であり、最適化処理の詳細を示す図である。交点(x,y)は、領域R1内に存在するが、最適化の例として、この交点のうち図に示される点P31とP32とを比較してみる。交点P31を形成する線L31−L32と、交点P32を形成する線L41−L42と、を比較すると、線L31−L32は2値画素の画素値が“1”である領域R11と対応する画素数が、線41−42と領域R12とが対応する領域の画素数よりもはるかに多いことがわかる(L31−L32>>L41−L42)。このようにして、領域R1内の交点(x、y)について、それぞれの交点における、交点を形成する線と対応する2値画素の画素値が“1”である画素の割合が最大となる交点Pmaxを求めることができる。尚、対応する画素は、必ずしも領域R1内に入っていなくても、交点が領域R1内に入っていれば良い。値“1”の画素の割合が最大となるということは、その線に沿った領域が実際の道路であるとすることが最も確かであるという考え方に基づくものである。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態による道路抽出技術であって、その抽出方法をT字路に適用した例について図4を参照しながら説明を行う。図4A(a)は、被覆分類処理部204が、上記非特許文献2に示されているように、被覆分類処理を行った結果として得られた2値画像を表示画面401に表示させた図であり、2つの道路領域403a・403bが示されている。図4A(b)は、道路領域403a・403bに細線化処理部205が細線化処理を適用した結果として生成された道路セグメント405a・405bの例を示す図である。
【0036】
ここで、近くにある2本の道路セグメント405a・405bを選択処理部206が選択した場合に、いずれか一方のみの延長線が他方に交わるか否かを判定すると、この場合にはYesであるため(道路セグメントの一方の延長線L51が他方の道路セグメント405bに交わる場合に該当する)、T字路であると判定する。
【0037】
図4A(c)は、直線生成処理部207が、所定の角度θについて各道路セグメントの端点(図ではP50)からその延長方向の±θの方向に生成した直線L52・L53を示す。点線L51は、道路セグメントの端点P50からの延長方向を示す線である。
【0038】
図4A(d)の太線領域R51は、生成された2個の直線L52・L53と、もう一方の道路セグメント405bとの交点P51・P52を求め、これらの2つの交点P51・P52を結ぶ線分である。
【0039】
最適化処理部208は、この線分P51−P52(R51)上の点と端点P50とを結ぶ線分に対応する2値画像の画素の数をこの点と端点P50とを結ぶ線分の全画素数で除算した値が最大になる点Pmaxを求める。図4A(e)の黒丸Pmaxは、その値が最大になる点を示す。図4A(f)は、結合処理部209が、値が最大となる点Pmaxと道路セグメントの端点P50を結合し、道路ネットワーク化が完了したことを示す図である。
【0040】
図4Bは、図4A(d)に対応する図であり、最適化処理の詳細を示す図である。交点最適化の例として、端点P50と線分領域R51内に交点を形成する線L51〜L54までを比較すると、線L51は2値画素の画素値が“1”である領域R21と対応する画素数が、線L54における2値画素の画素値が“1”である領域R23と対応する画素数よりもはるかに多いことがわかる(L51>>L54)。このようにして、領域R21内の交点(x、y)について、それぞれの交点における、交点を形成する線と対応する2値画素の画素値が“1”である画素の割合が最大となる交点Pmaxを求めることができる。値“1”の画素の割合が最大となるということは、その線に沿った領域が実際の道路であるとすることが最も確かであるという考え方に基づくものである。
【0041】
図5は、本実施の形態による道路ネットワークの抽出装置を用いて、衛星画像における道路抽出処理を行った例を示す図である。図5(a)は、処理対象である表示領域301を撮影した衛星画像である。この画像は200×160画素のサイズである。符号R101で示された領域が道路であるようにも見えるが、ほとんど見分けがつかないことがわかる。図5(b)は、衛星画像に被覆分類を適用した結果として得られた画像である。表示領域301内に道路領域R102がほぼ白色の領域R102として表されており、その他の領域R103とは区別ができるようになっている。図5(c)は、領域R104内における細線化処理の結果として得られた道路セグメントL101・L102を示す図である。図5(d)は最適化処理により探索された点P101と道路セグメントL101・L102の端点とを線分L103・L104で結合して得られ抽出された道路L101−L103−L104−L102を示す図であり、道路ネットワークがきれいに抽出されていることがわかる。尚、図5に示す道路は、図3に示すように、第1の実施の形態に対応する処理を用いて得られたものである。
【0042】
以上に説明したように、本発明の実施の形態による道路抽出技術によれば、道路領域間のギャップを埋める処理は、必要な計算量が定義域に属する点の数に比例するため、処理の負担を軽減することができ、高速な道路抽出処理を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、道路の抽出装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の道路ネットワークの抽出方法の概要を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の道路ネットワークの抽出方法の一実施例を示すハードウェアシステムのブロック図である。
【図3A】本発明の第1の実施の形態による道路ネットワークの抽出方法をI字路に適用した一実施例の説明図である。
【図3B】図3Aの最適化処理の様子を詳細に示した図である。
【図4A】本発明の第2の実施の形態による道路ネットワークの抽出方法をT字路に適用した一実施例の説明図である。
【図4B】図4Aの最適化処理の様子を詳細に示した図である。
【図5】本実施の形態による道路ネットワークの抽出装置により、実際の衛星画像から道路の抽出処理を行った例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
201…マウス、202…キーボード、203…処理装置、204…被覆分類処理部、205…細線化処理部、206…選択処理部、207…直線生成処理部、208…最適化処理部、209…結合処理部、210…記憶装置、211…リモートセンシング画像、212…分類画像、213…作業用2値画像、214…出力2値画像、215…ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートセンシング画像から道路を抽出する処理を行う道路ネットワーク抽出装置であって、
前記リモートセンシング画像に被覆分類を適用して、道路領域を示す画素の値と、道路領域でない画素の値と、の2値画像を生成する被覆分類処理部と、
前記2値画像を細線化して道路セグメントを生成する細線化処理部と、
前記道路セグメントの互いに隣接する端点、又は、前記道路セグメントとそれに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部と、
所定の角度θについて各道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成するか、又は、所定の角度θについて道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部と、
±θの方向に延びる直線が囲む領域内の全ての点(x, y)内において、端点と点(x, y)を結ぶ線分と対応する前記道路領域を示す画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部と、
端点と前記点(xmax, ymax)とを結ぶ線分を生成する結合処理部と
を有することを特徴とする道路ネットワーク抽出装置。
【請求項2】
リモートセンシング画像から道路を抽出する処理を行う道路ネットワーク抽出装置であって、
前記リモートセンシング画像に被覆分類を適用して、道路領域を示す画素の値と、道路領域でない画素の値と、の2値画像を生成する被覆分類処理部と、
前記2値画像を細線化して道路セグメントを生成する細線化処理部と、
前記道路セグメントのうちから2本を選択した場合に、いずれか一方のみの延長線が他方に交わるか否かを判定して、交わる場合にはT字路であると判定し、所定の数Nの互いに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部と、
所定の角度θについて各道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部と、
生成された2N個の直線が囲む領域内の全ての点(x, y)について、各端点と点(x, y)を結ぶ線分と対応する前記道路領域を示す画素の数を線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部と、
各端点と前記点(xmax, ymax)とを結ぶ線分を生成する結合処理部と
を有することを特徴とする道路ネットワーク抽出装置。
【請求項3】
リモートセンシング画像から道路を抽出する処理を行う道路ネットワーク抽出装置であって、
前記リモートセンシング画像に被覆分類を適用して、道路領域を示す画素の値と、道路領域でない画素の値と、の2値画像を生成する被覆分類処理部と、
前記2値画像を細線化して道路セグメントを生成する細線化処理部と、
前記道路セグメントのうちから2本を選択した場合に、両方が互いに交わるか否かを判定して、交わる場合にはT字路以外であると判定し、道路セグメントとそれに隣接する道路セグメントの端点を選択する選択処理部と、
所定の角度θについて道路セグメントの端点からその延長方向の±θの方向に直線を生成する直線生成処理部と、
生成された2個の直線ともう一方の道路セグメントとの交点を求め、これらの二つの交点を結ぶ線分上の点(x, y)と端点を結ぶ線分とに対応する前記道路領域を示す前記2値画像の画素の数を点(x, y)と端点を結ぶ線分の全画素数で除算した値が最大になる点(xmax, ymax)を求める最適化処理部と、
端点と前記点(xmax, ymax)を結ぶ線分を生成する結合処理部と
を有することを特徴とする道路ネットワーク抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−211150(P2009−211150A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50793(P2008−50793)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】