説明

道路標識柱用の再生カバー

【課題】道路標識柱が損傷し、又は汚損した場合、該道路標識柱を路面から取り外すことなく、迅速,容易に修復し得る技術を提供する。
【解決手段】既設の道路標識柱1の外径寸法dに対して摺動可能に嵌合する内径寸法Dを有する白色弾性筒体2aから成る再生カバー2を予め構成しておく。上記再生カバー2は、白色弾性筒体2aの外周面に再帰反射テープ2bを巻き付けるとともに、その筒壁にピン孔2cを穿ってある。損耗した道路標識柱1の柱状標識体1aに、前記再生カバー2の白色弾性筒体2aを外嵌し、ピン孔2cとピン孔1eとを合わせ、連結ピン3を差し込んで抜け止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標識柱が損傷を受けたり汚損したりした場合、これを補修して再生するカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1の下半部に符号1を付して示した器具は、道路標識柱の1例である。
道路標識柱は一般に、柱状標識体1aの下端部に台座1bが取り付けられており、この台座1bに固着された取付ネジ1cによって路面に設置される。
通常、メネジ穴を有する部材(図示省略)が路面に埋設固定されており、該部材のメネジ穴に前記の取付ネジを嵌め合わせ、締め付けて固定される。
【0003】
前記柱状標識体1aの外周に再帰反射テープ1dを巻き付けて、視認性を向上させている。詳しくは、裏面に粘着剤が塗布された再帰反射テープを巻き付けて粘着されている。
前記柱状標識体1aは、しばしば通行車両の衝突を受けるので損傷を被る。ところが、この柱状標識体を頑丈に構成しておくと、衝突した車両が著しく破損するのみでなく、運転者等が負傷する。
このため、柱状標識体はフレキシブルな材料(一般にポリウレタン)で構成され、衝突時の衝撃を緩和するように考慮されている。
【特許文献1】特開平10−102438号公報
【特許文献2】特開平9−100515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路標識柱は、通行車両の衝突を受けて損傷する。また、排気ガス等で汚染されて視認性が低下する。
道路標識柱は交通安全の為に重要な役割を受け持っているので、損耗したら復元しなければならない。しかし新品と交換すると経済的な負担が大き過ぎるので、道路維持者は損傷した箇所を部分的に補修したり、汚染された標識面を洗浄したりしているのが現状である。
【0005】
前記の補修工事や洗浄作業に多大の時間と労力とを費やしている。これによって道路維持の経費が増大することも放置できないが、施工のために交通を制限しなければならないので、道路の交通を妨げてしまう。その上、交通を制限してはいても道路上の作業は危険である。
道路上の作業時間を短縮するため、道路標識柱を路面から取り外して修復しようとすると、標識柱の取外し・取付け作業を必要とし、修復作業中は代替標識柱を取り付けておかねばならないので作業工数が増加する。
【0006】
道路上における作業時間を短縮するため、台座に対して柱状標識体を容易に着脱し得るように改良した道路標識柱が公知である。しかし、、修復作業そのものを迅速容易に行ない得るようにする技術的改良は未だ不十分である。
【0007】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、
破損または汚損した道路標識柱を路面に設置した侭の状態で、該道路標識柱を迅速容易に、かつ低コストで補修して再生させる技術を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次の通りである。
図の下半部に描かれている道路標識柱1が破損し又は汚損したとき、予め準備しておいた筒状の再生カバー2を柱状標識体1aに被せ、連結ピン3で抜け止めする。
上記の再生カバーは、既設の柱状標識体1aと同程度の弾性を有する白色の材料で構成し、再帰反射テープ2bを巻き付けておく。再生カバーの地色が白いので、再帰反射テープの視認性が際立つ。
既設道路標識柱のピン孔1eは、予め設けておけばベターであるが、再生カバー装着に際して穿っても、さしたる不具合を生じない。
【0009】
上述の原理に基づく具体的な構成として、請求項1の発明に係る道路標識柱用の再生カバーは(図1参照)柱状標識体(1a)の損傷又はは汚損を補修再生するカバー部材であって、
上記柱状標識体に対して摺動挿脱可能に嵌合する内径を有し、弾性材料で成形された白色の筒体(2a)と、該白色筒体の外周面に貼着された再帰反射テープ(2b)と、上記白色筒体の筒壁に穿たれたピン孔(2c)とを具備していることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係る道路標識柱用の再生カバーの構成は、前記請求項1の発明の構成要件に加えて、(図1参照)前記の白色弾性筒体(2a)はスチレンゴムプラスチックから成り、溶解パラメーター値SP8〜10の溶剤で表面処理されており、
前記の再帰反射テープ(2b)は、前記表面処理後に3〜15分放置した後、前記白色弾性筒体に粘着されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明を適用すると、既設の道路標識柱が損傷し又は汚損した場合、白色弾性筒体を被せて迅速かつ容易に修復することができる。
該白色弾性筒体に再帰反射テープが巻き付けられているから良好な視認性を有し、しかも地色が白いので再帰反射テープが目立って、良好な視認性が得られる。
前記白色弾性筒体が弾性を有しているため、修復した後に通行車両の衝突を受けても衝撃を緩和することができる。
【0012】
請求項2の発明を前記請求項1の発明に併せて適用すると、弾性筒体がスチレンゴムプラスチック(例えばリケンテクノス株式会社製レオストマーLQR7950N)で成形されているので、適宜の弾性を有し、白色に構成することが容易で、耐候性に富み、かつ高価ではない。
しかも、適切に表面処理されて適正な放置時間が置かれているので再帰反射テープが確実強固に粘着される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1の下半部に描かれている道路標識柱1は、先に従来例として段落番号0002および0003で説明した器具である。この道路標識柱が損傷または汚損された場合、本発明を適用して修復再生した1例について以下に説明する。
上記道路標識柱の柱状標識体1aの外径寸法をdとする。この既設の道路標識柱に合わせて、予め、次に述べるような再生カバー2を準備しておく。
【0014】
本例の再生カバー2は、白色の弾性筒体2aを主要構造部材とし、その外周に再帰反射テープ2bを巻き付けてある。
上記白色弾性筒体2aの内径寸法Dは、前記柱状標識体1aの外径寸法dに対して摺動可能に嵌合するように設定してある。
【0015】
前記白色弾性筒体2aの適宜の箇所に、ピン孔2cが穿たれている。このピン孔の配設箇所は限定されないが、施工者にとって作業し易い箇所(たとえば膝の高さ以上、肩の高さ以下)であることが望ましい。
上記のピン孔2cに適合する連結ピン3を予め準備しておく。この連結ピンの構造は限定されないが、本実施形態のように矢印形ないし銛形に構成しておくと、挿入が容易でしかも脱落しにくいので好適である。 該連結ピンの実効長さ寸法は、白色弾性筒体2aの肉厚寸法よりも長く設定する。
【0016】
本実施形態の白色弾性筒体2aは、リケンテクノス株式会社製レオストマーLQR7950Nで構成した。
【0017】
本発明者らの研究によれば、前記リケンテクノス株式会社製レオストマーLQR7950Nは柱状標識体として適度の弾性を有し、かつ強靭で、しかも対候性に優れているが、再帰反射テープ(の裏面に塗布されている粘着剤)に対する粘着親和性が必ずしも充分でない。
そこで本例においては、粘着親和性を改善する傾向を有する添加剤を加えるとともに、溶剤で表面処理を施した。溶剤としてはSP(溶解パラメーター)値8〜10の範囲のものが良く、8.6〜9.7の範囲が更に望ましい。
溶剤塗布後の放置時間も重要であって、常温付近(18〜25℃)で3〜10分間が適当であり、3〜6分間であれば更に望ましい。15分間以上は好ましくない。
【0018】
以上に説明したような再生カバー20及び連結ピン3を準備しておき、既設の道路標識柱が損耗,汚染した場合、その柱状標識体1aに再生カバー2を被せる。この被せ作業工程はほとんど即時的に遂行される。次に、後述するようにして白色弾性筒体2aの抜け止めを施す。
すなわち、白色弾性筒体2aに設けられているピン孔2cと、道路標識柱1の柱状標識体1aに設けられているピン孔1eとを合わせて、その中へ連結ピン3を差し込む。
この場合、柱状標識体1aの外形寸法と白色弾性筒体2aの内径寸法とが適正に嵌合しているので、両者の間のガタが小さく、連結ピン3の挿通操作が容易である。
被補修物である柱状標識体1aのピン孔1eは、予め穿っておくことが望ましいが、修復作業に際してドリルで穿孔しても、さしたる時間,労力を要しない。
【0019】
上述のようにして修復した再生カバーも、時間経過に伴って再び損傷し及び/又は汚損が進行する。
これを再度修復するには、連結ピン3を除去して、損耗した再生カバーを抜き取り、新品の再生カバー2を被せて連結ピン3を装着すれば良い。連結ピンの除去は、該連結ピンを切断することにより容易に行ない得る。
2回目以降の修復に際しては、既設の柱状標識体1aが既にピン孔1eを穿たれているので作業がいっそう容易である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施形態を説明するために示したもので、1部を破断して描いた斜視図
【符号の説明】
【0021】
1…道路標識柱
1a…柱状標識体
1b…台座
1c…取付けネジ
1d…再帰反射テープ
1e…ピン孔
2…再生カバー
2a…白色弾性筒体
2b…再帰反射テープ
2c…ピン孔
3…連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状標識体の損傷もしくは汚損を再生する再生カバーであって、
上記柱状標識体に対して摺動挿脱可能に嵌合する内径を有し、弾性材料で成形された白色の筒体と、該白色筒体の外周面に貼着された再帰反射テープと、上記白色筒体の筒壁に穿たれたピン孔とを具備していることを特徴とする、道路標識柱用の再生カバー。
【請求項2】
前記の白色筒体はスチレンゴムプラスチックから成り、溶解パラメーター値SP8〜10の溶剤で表面処理されており、
前記の再帰反射テープは、前記表面処理後に3〜15分間放置した後、前記白色筒体に粘着されたものであることを特徴とする、請求項1に記載した道路標識柱用の再生カバー。

【図1】
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【公開番号】特開2007−231651(P2007−231651A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55980(P2006−55980)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(593210352)株式会社協立研究所 (4)
【出願人】(300067848)東陽ポリマック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】