説明

道路用照明システム

【課題】商用電源や太陽電池を不要とする道路用照明システムであって、暗部や夜間においても照明を行うことができる道路用照明システムを提供すること。
【解決手段】高速陸橋1に固定される発電街路灯10であり、表示部を支持する中空筒状の街路灯本体と、この街路灯本体の内部に配置された発電ユニットを備える。発電ユニットは、高速陸橋1の振動によって表示部の電力を発電する圧電素子を有する。例えば、発電ユニットは、街路灯本体の内壁に対して直交状する向きで固定された可撓性を有する振動板を備え、この振動板の側面に圧電素子を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路肩等に設置されて路面を照らすための道路用照明システムに関し、特に電源構造に特徴を有する道路用照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、街路灯で照明を行うための電源としては、商用電源が最も一般的であるが、災害によって商用電源が遮断された場合や環境負荷の低減を考慮して、太陽電池を電源とする街路灯も実用化されている。例えば、特許文献1には、ケーシング本体に太陽電池を定着し、その太陽電池によって発電した電力を蓄電池にて蓄電し、この蓄電池からの電力により発光ダイオードを点灯させるソーラー電源街路灯が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−015610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、太陽電池を用いた街路灯は、太陽光が到達可能な位置でしか利用できず、トンネル内の如き暗部には適さないため、設置箇所が限定されてしまう。また、街路灯が点灯するのは太陽光が得られない夜間であることから、昼間に太陽電池にて発電された電力を夜間まで蓄電するためのバッテリーが必要になり、街路灯が大型化すると共にその製造コストが増大する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、商用電源や太陽電池を不要とする道路用照明システムであって、暗部や夜間においても照明を行うことができる道路用照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、請求項1に記載の道路用照明システムは、道路設備に固定される照明装置と発電ユニットを備え、前記発電ユニットは、前記道路設備の振動によって前記照明装置の電力を発電する圧電素子を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の道路用照明システムは、請求項1に記載の道路用照明システムにおいて、前記照明装置は、照明部と、当該照明部を支持する中空筒状の照明装置本体を備え、前記発電ユニットを、前記照明装置本体の内部に配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の道路用照明システムは、請求項1に記載の道路用照明システムにおいて、前記道路設備は、陸橋であり、前記発電ユニットを、前記陸橋又は当該陸橋の付帯設備に固定したユニットケースの内部に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の道路用照明システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の道路用照明システムにおいて、前記発電ユニットは、前記道路設備の振動に伴って振動するものであって、可撓性を有する振動板を備え、前記振動板の側面に前記圧電素子を固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明によれば、車両の走行等によって生じた道路設備の振動に伴って圧電素子が振動して変形することで、圧電素子から放電された電力を利用して照明装置を点灯させることができる。このため、商用電源や太陽電池を用いることなく、暗部や夜間においても照明を行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の本発明によれば、発電ユニットを照明装置本体の内部に配置することで、電気系統の耐久性や耐水性を高めることが容易である。
【0012】
請求項3に記載の本発明によれば、車両の走行等によって振動が比較的生じ易い陸橋又は当該陸橋の付帯設備に発電ユニットを配置したことにより、圧電素子の変形を促進でき、発電効率を高めることができる。また、発電ユニットをユニットケースの内部に配置することで、電気系統の耐久性や耐水性を高めることが容易である。
【0013】
請求項4に記載の本発明によれば、振動板を介して圧電素子を変形させることで、圧電素子の変形を増幅でき、発電効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照して、この発明に係る道路用照明システムの一実施の形態を詳細に説明する。図1は、道路用照明システムを備えた高速陸橋の斜視図である。この高速陸橋1は、高速道路の一部を構成する陸橋であって、図示しない橋脚にて支持された路面2と、この路面2の両側方に立設された遮音壁3とを備えて構成されており、この遮音壁3には複数の発電街路灯10が間隔を隔てて固定されている。また、高速陸橋1の底部には、複数の発電装置30が間隔を隔てて固定されている。
【0015】
最初に、発電街路灯10について説明する。図2は発電街路灯10の側面図、図3は街路灯本体11の拡大縦断面図である。図2に示すように、発電街路灯10は、街路灯本体11と表示部12を備えて構成されている。ここで、発電街路灯10、街路灯本体11、表示部12は、それぞれ、特許請求の範囲における照明装置、照明装置本体、照明部に対応する。街路灯本体11は、表示部12を支持する支持手段であり、金属又は樹脂にて中空長筒状に形成されており、その下端部は図示しない公知の取り付け構造によって遮音壁3に取り付けられると共に、その上端部には表示部12が取り付けられている。図3に示すように、街路灯本体11の内部には、複数の発電ユニット20が設けられているが、この発電ユニット20の構造については後述する。表示部12は、白熱電球、蛍光灯、あるいはLED(Liquid Emitting Diode)の如き図示しない光源を内蔵し、この光源を発電ユニット20にて発電された電力を用いて点灯させることで、路面2を照明することができる。
【0016】
次に、発電装置30について説明する。図4は発電装置30の拡大縦断面図である。図4に示すように、発電装置30は、ユニットケース31の内部に、発電街路灯10の内部に設けたものと同様の複数の発電ユニット20を備えて構成されている。ユニットケース31は、発電装置30を高速陸橋1に取り付けるための取付手段であり、金属又は樹脂にて中空箱状に形成されており、図示しない公知の取り付け構造によって高速陸橋1の底面に取り付けられる。
【0017】
次に、発電ユニット20について説明する。図5は発電ユニット20における振動板の変形前の側面図、図6は発電ユニット20における振動板の変形時の側面図である。発電ユニット20は、振動板21及び一対の圧電素子22を備えて構成されている。振動板21は、圧電素子22に応力を加える支持体であると共に、圧電素子22の割れ強度を補強する補強材を兼ねるものであり、可撓性と耐久性を有する金属板より形成される。この振動板21に用いる具体的な材料は任意であるが、例えば、ステンレスの薄板を用いることができる。この振動板21の平面形状は任意であるが、外力に対して均等に変形することが好ましく、本実施の形態においては振動板21の平面形状を長方形状としている。この振動板21は、街路灯本体11又はユニットケース31の内壁に直交する向きで、当該内壁に対して溶着等にて固定されている。
【0018】
一対の圧電素子22は、表示部12の電力を発電するものであって、圧力により変形することで電気を生じる素子であり、例えば、チタン酸バリウム、ジルコニア等の圧電セラミックス、リチウムタンタレート(LiTaO3)等の圧電単結晶からなる。各圧電素子22は、板状であって、その平面形状を振動板21よりも短い長方形状としており、振動板21の両面において、当該振動板21に対して接着剤等にて固定されている。振動板21に対する圧電素子22の平面的な配置位置は任意であるが、振動板21の平面中心位置における変形量が最も大きくなることから、当該平面中心位置に圧電素子22を配置することが好ましく、本実施の形態においては振動板21と同心となる位置に圧電素子22を配置している。なお、このように振動板21に圧電素子22を固定することで、当該圧電素子22も、街路灯本体11又はユニットケース31の内壁に直交する向きに配置されることになる。
【0019】
図示は省略するが、圧電素子22は、一方の面にプラス端子、他方の面にマイナス端子を有し、プラス端子と結線されたプラスリード線と、マイナス端子と結線されたマイナスリード線が引き出されている。そして、発電街路灯10に関しては、これらリード線が街路灯本体11の内部を介して表示部12に接続されることで、当該表示部12に対して電力が供給される。あるいは、発電装置30に関しては、ユニットケース31からこれらリード線が引き出されて表示部12に接続されることで、当該表示部12に対して電力が供給される。ただし、圧電素子22と表示部12との相互間に公知のブリッジ回路等の各種電気素子を配置してもよい。なお、1つの表示部12に対しては、発電街路灯10の内部の圧電素子22と、発電装置30の内部の圧電素子22との両方を接続してもよく、あるいは、いずれか一方のみを接続してもよい。
【0020】
このような道路照明システムによれば、路面2を走行する車両の振動が遮音壁3を介して街路灯本体11に伝達され、この街路灯本体11の振動が振動板21に伝達されることで、この振動板21が変形する。あるいは、路面2を走行する車両の振動が高速陸橋1を介して発電装置30のユニットケース31に伝達され、このユニットケース31の振動が振動板21に伝達されることで、この振動板21が変形する。そして、この振動板21の変形に伴って圧電素子22が変形することで、圧電素子22から放電された電力して表示部12を点灯させることができる。このため、商用電源や太陽電池を用いることなく、暗部や夜間においても照明を行うことができる。特に、振動板21を介して圧電素子22を変形させることで、圧電素子22の変形を増幅でき、発電効率を高めることができる。また、発電ユニット20、プラスリード線、及びマイナスリード線を含む電源系統の全部又は少なくとも一部を街路灯本体11やユニットケース31の内部に配置できるので、耐久性や耐水性を高めることが容易である。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0022】
発電街路灯10は、高速陸橋1の遮音壁3に限らず、振動が生じ得る任意の場所に設置することができ、一般道路の路肩に設置したり、道路標識の支柱に設置してもよい。
【0023】
発電装置30は、高速陸橋1に直接固定する場合の他、この高速陸橋1の付帯設備に固定してもよい。このような付帯設備としては、例えば、高速陸橋1の側部や下方に施設された点検用通路、道路の高架下の道路照明、道路の上方や側方に設置された各種の道路標識(内照大型道路標識や内照反射式道路標識等)、道路の上方や側方に設置された各種の交通情報提供装置(街路情報板、藻字情報板、あるいは図形情報板等)、トンネル内の換気施設(ジェットファン)、有料道路の料金所に設置された料金所ブースの空調施設を挙げることができる。特に、点検用通路のように道路の振動を増大させる設備や、換気施設のようにそれ自体が振動を発生させる設備に発電装置30を取り付けることで、発電効率を高めることが可能になる。
【0024】
発電ユニット20は、商用電源や蓄電池等と併せて回路構成することで、電流の蓄放電を行う構成としてもよく、あるいは、コンデンサの如き平滑素子にて平滑化を行う等、公知の電気回路を適用することができる。また、発電ユニット20を街路灯本体11又はユニットケース31の内壁ではなく外壁に固定してもよく、あるいは振動板21を省略して圧電素子22のみを街路灯本体11又はユニットケース31の内壁に直接固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明に係る道路照明システムは、路面を照明する照明システムとして利用でき、特に外部から加えられた力を電気に変換して電源とすることでができるため、従来電源として利用していた商用電力や太陽電池を省略することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る道路照明システムを備えた高速陸橋の斜視図である。
【図2】発電街路灯の側面図である。
【図3】街路灯本体の拡大縦断面図である。
【図4】発電装置の拡大縦断面図である。
【図5】発電ユニットにおける振動板の変形前の側面図である。
【図6】発電ユニットにおける振動板の変形時の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 高速陸橋
2 路面
3 遮音壁
10 発電街路灯
11 街路灯本体
12 表示部
20 発電ユニット
21 振動板
22 圧電素子
30 発電装置
31 ユニットケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路設備に固定される照明装置と発電ユニットを備え、
前記発電ユニットは、前記道路設備の振動によって前記照明装置の電力を発電する圧電素子を有すること、
を特徴とする道路用照明システム。
【請求項2】
前記照明装置は、照明部と、当該照明部を支持する中空筒状の照明装置本体を備え、
前記発電ユニットを、前記照明装置本体の内部に配置したこと、
を特徴とする請求項1に記載の道路用照明システム。
【請求項3】
前記道路設備は、陸橋であり、
前記発電ユニットを、前記陸橋又は当該陸橋の付帯設備に固定したユニットケースの内部に配置したこと、
を特徴とする請求項1に記載の道路用照明システム。
【請求項4】
前記発電ユニットは、前記道路設備の振動に伴って振動するものであって、可撓性を有する振動板を備え、
前記振動板の側面に前記圧電素子を固定したこと、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の道路用照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−15705(P2010−15705A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172196(P2008−172196)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(507419172)株式会社音力発電 (8)
【Fターム(参考)】