説明

道路舗装機械の敷き均し装置

【課題】主スクリードプレートを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とするとともに、クラウンをつけた際に主スクリードプレートの機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切板との間にできる隙間を簡便な方法で閉塞して施工中に該隙間からアスファルト合材のアスファルト分がスクリード装置内に侵入するのを阻止し、低コストで道路舗装機械の性能向上を図る。
【解決手段】クラウンをつけた際のスクリードプレート左右一体型の主スクリードプレート4bにおける幅方向中央部の曲がりに応じて該主スクリードプレート4bと共に曲がり、曲がりの生じた主スクリードプレート4bにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム6又は前部仕切板7との間にできる隙間sを閉塞する閉塞用部材10を主スクリードプレート4bに固設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装機械の敷き均し装置に関するものであり、特に、主スクリードプレートを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とし、この型の欠点であるクラウンをつけた際のアスファルト合材のアスファルト分の侵入に対しては、これを簡便な方法で阻止することにより低コストで道路舗装機械の性能向上を図ることが可能な道路舗装機械の敷き均し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路舗装機械の敷き均し装置に関連する第1の従来技術として、例えば、図2〜図5の(a)、(b)に示すようなものがある。図2において、敷き均し装置(以下、スクリード装置とも云う)は、主スクリード1の後方に第1、第2の伸縮スクリード2,3が前後に一対並設されている。スクリード装置は、第1の伸縮スクリード2と第2の伸縮スクリード3を互いに反対方向に移動させることにより、敷き均し幅を拡張させることが可能に構成されている。
【0003】
このようなスクリード装置において、主スクリード1における主スクリードプレートの構造には、スクリードプレート左右分割型のものとスクリードプレート左右一体型のものとがある。図3は、この両型のうち、スクリードプレート左右分割型の主スクリード1Aを背面から見た詳細構成を示している。同図において、左右に分割された主スクリードプレート4a,4aの中央部には、図4の(a)、(c)にも示すように、該左右の主スクリードプレート4a,4a間の位置ずれを防止するため、複数の部材で構成された左右ずれ止め部5が備えられている。
【0004】
また、図4(b)等に示すように、主スクリードプレート4aの上方側にはスクリードフレーム6が備えられ、主スクリードプレート4aの進行方向前方側には、アスファルト合材がスクリードフレーム6側に及ぶのを規制する前部仕切り板7が立設されている。前部仕切り板7の前方には進行方向前方側から、スクリード装置に入るアスファルト合材の表面を予備的に均すストライクオフプレート8及びアスファルト合材の初期転圧を行うタンパ9が設けられている。
【0005】
図5(a)は、上記図3及び図4の(a)、(b)、(c)に示すスクリードプレート左右分割型の主スクリードプレートを備えたスクリード装置において、舗装品質の向上を図る目的で主スクリードプレートを幅方向中央部で曲げてクラウンをつけた場合(図5(a)はプラスクラウンの場合)を示している。スクリードプレート左右分割型のものは、前述のように、左右に分割された主スクリードプレート4a,4aの中央部に複数の部材からなる左右ずれ止め部5が備えられていて構造がやや複雑になるが、図5(a)に示すように、クラウンをつけても、左右の主スクリードプレート4a,4aとスクリードフレーム6又は前部仕切り板7との間に隙間ができないため、施工中にアスファルト合材のアスファルト分が分離したいわゆるノロがスクリード装置内に侵入し難い。
【0006】
一方、図5(b)は、スクリードプレート左右一体型の主スクリードプレートを備えたスクリード装置にクラウンをつけた場合を示している。スクリードプレート左右一体型の主スクリードは、左右の主スクリードプレート4b部分に位置ずれが発生することがないため、その中央部の構造が簡単になるが、クラウンをつけた場合に主スクリードプレート4bの幅方向中央部が図示のように曲面になる。このため、主スクリードプレート4bにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム6又は前部仕切り板7との間に2mm程度の僅かの隙間sができ、施工中に、この隙間sからアスファルト合材のアスファルト分が分離したいわゆるノロがスクリード装置内に侵入し易い。
【0007】
第2の従来技術として、例えば、次のような舗装機械のタンパ装置における合材侵入防止装置が知られている。この従来技術は、タンパ装置におけるタンパエッジの前後にあるストライクオフプレート及びスクリードプレートとの間隙部に、それぞれタンパエッジに接触するスクレーパを設け、それぞれのスクレーパの先端部がタンパエッジに一定の押圧力で当接するような付勢手段を備えさせている。
【0008】
そして、タンパエッジの前後にあるストライクオフプレート及びスクリードプレートとの間隙部に、それぞれスクレーパを設けて付勢手段でタンパエッジへ押圧してあるので、このスクレーパにより前後の間隙部が閉塞されている。このため、施工中にアスファルト合材のアスファルト分が、タンパエッジの前後の間隙部から侵入しようとしても、スクレーパにより間隙部が閉塞されているので、アスファルト分の侵入が阻止される。したがって、アスファルト分が堆積して固化することが防止され、施工準備時に行っていたアスファルト分を軟化するための加熱作業が不要になる(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、第3の従来技術として、例えば、次のような道路舗装車両のスクリード装置が知られている。この従来技術は、タンパ装置におけるタンパエッジが上下動する摺動面の隙間からスクリード本体内に侵入したアスファルト合材等の堆積物を受ける合材受けを、前記タンパ装置に隣接して着脱可能に設置し且つ、前記スクリード本体の外側に取り外し可能に設けている。
【0010】
そして、タンパエッジが上下動する摺動面の隙間からスクリード本体内部に侵入したアスファルト合材等の堆積物は、タンパ装置に隣接して設けている合材受けで順次受けられ、この合材受けに溜まる。また、合材受けはスクリード本体から取り外し可能になっているので、堆積物を載せたままスクリード本体から合材受けを取り外すと、堆積物も一緒に取り出されて、作業がし易いスクリード本体の外で廃棄等の処理を行うことができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−133167号公報
【特許文献2】特許第4620077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図2〜図5の(a)、(b)に示した第1の従来技術において、スクリードプレート左右一体型の主スクリードプレートを備えた主スクリードは、左右の主スクリードプレート部分に位置ずれが発生することがないため、その中央部の構造が簡単になって低コスト化に寄与しうる。しかし、クラウンをつけた場合に主スクリードプレートの幅方向中央部が曲面になる。このため、主スクリードプレートにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切り板との間に2mm程度の隙間ができ、施工中に、この隙間からアスファルト合材のアスファルト分が分離したいわゆるノロがスクリード装置内に侵入し易い。したがって、主スクリードプレート表面がノロで覆われて施工時における該主スクリードプレートの加熱不良が発生し、道路舗装機械の性能低下を招くという問題がある。そして、隙間ができないように、主スクリードプレートとスクリードフレーム又は前部仕切り板等をボルト又は溶接等で固定してしまうと曲げを阻止しようとする剛性が大きくなり、即ち材料の断面係数が大きくなり、クラウンをつける際に主スクリードプレートがうまく曲がらないという問題が生じる。
【0013】
特許文献1に記載の第2の従来技術においては、タンパエッジの前後にあるストライクオフプレート及びスクリードプレートとの間隙部に、それぞれタンパエッジに対する押圧傾向が付与されたスクレーパを設けて前後の間隙部を閉塞している。これにより、施工中にアスファルト合材のアスファルト分が、タンパエッジの前後の間隙部から侵入するのを阻止して、間隙部及びスクリード内にアスファルト分が堆積して固化するのを防止している。
【0014】
また、特許文献2に記載の第3の従来技術においては、タンパ装置におけるタンパエッジが上下動する摺動面の隙間からスクリード本体内に侵入したアスファルト合材等の堆積物を受ける合材受けを、タンパ装置に隣接して着脱可能に設け、この合材受けに溜まった堆積物を合材受けごとスクリード本体外に取り出して廃棄処理するようにしている。
【0015】
そこで、主スクリードプレートを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とするとともに、クラウンをつけた際に主スクリードプレートの機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切板との間にできる隙間を簡便な方法で閉塞して施工中に該隙間からアスファルト合材のアスファルト分がスクリード装置内に侵入するのを阻止し、低コストで道路舗装機械の性能向上を図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、主スクリードにスクリードプレート左右一体型の主スクリードプレートを備え、該主スクリードプレートに近接してスクリードフレーム及び前部仕切板が配設された道路舗装機械の敷き均し装置において、クラウンをつけた際の前記主スクリードプレートにおける幅方向中央部の曲がりに応じて該主スクリードプレートと共に曲がり、曲がりの生じた前記主スクリードプレートにおける機械進行方向前端縁近傍と前記スクリードフレーム又は前記前部仕切板との間にできる隙間を閉塞する閉塞用部材を前記主スクリードプレートに固設した道路舗装機械の敷き均し装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、スクリードプレート左右一体型の主スクリードプレートは、その幅方向中央部を曲げてクラウンをつけた際、この曲がりの生じた主スクリードプレートにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切板との間に2mm程度の僅かの隙間ができる。これに対し、主スクリードプレートに固設されて該主スクリードプレートの曲がりに応じて主スクリードプレートと共に曲がる閉塞用部材により前記隙間が閉塞される。この結果、施工中に前記隙間からアスファルト合材のアスファルト分が分離したいわゆるノロがスクリード装置内に侵入するのが阻止される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明は、主スクリードプレートを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とするとともに、この主スクリードプレートの幅方向中央部を曲げてクラウンをつけた際に曲がりの生じた主スクリードプレートにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切板との間にできる隙間を、主スクリードプレートに固設されて該主スクリードプレートの曲がりに応じて主スクリードプレートと共に曲がる簡便な構成の閉塞用部材で閉塞したことで、施工中に前記隙間からアスファルト合材のアスファルト分がスクリード装置内に侵入するのを阻止することができて低コストで道路舗装機械の性能向上を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る道路舗装機械の敷き均し装置におけるスクリードプレート左右一体型の主スクリードプレート部分を示す図であり、(a)は一部省略して示す平面図、(b)は敷き均し装置(スクリード装置)にクラウンをつけた場合の図(a)の主スクリードプレート部分の形の変化を一部省略して示す背面図。
【図2】従来のスクリード装置における主スクリード及び第1、第2の伸縮スクリードの配設態様を示す平面図。
【図3】従来のスクリードプレート左右分割型の主スクリードプレートを備えた主スクリードの詳細構成を示す背面図。
【図4】図3の主スクリード中の左右ずれ止め部、スクリードフレーム及び前部仕切り板等の配設位置を示す図であり、(a)は図3中のX−X線に沿う断面図、(b)は図3中のY−Y線に沿う断面図、(c)は図3中のZ−Z線に沿う断面図。
【図5】従来のスクリード装置においてクラウンをつけた場合の主スクリードプレート、スクリードフレーム及び前部仕切り板の各部材部分の形の変化を一部省略して示す背面図であり、(a)は主スクリードプレートがスクリードプレート左右分割型の場合、(b)は主スクリードプレートがスクリードプレート左右一体型の場合。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、主スクリードプレートを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とするとともに、クラウンをつけた際に主スクリードプレートの機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切板との間にできる隙間を簡便な方法で閉塞して施工中に該隙間からアスファルト合材のアスファルト分がスクリード装置内に侵入するのを阻止し、低コストで道路舗装機械の性能向上を図るという目的を達成するために、主スクリードにスクリードプレート左右一体型の主スクリードプレートを備え、該主スクリードプレートに近接してスクリードフレーム及び前部仕切板が配設された道路舗装機械の敷き均し装置において、クラウンをつけた際の前記主スクリードプレートにおける幅方向中央部の曲がりに応じて該主スクリードプレートと共に曲がり、曲がりの生じた前記主スクリードプレートにおける機械進行方向前端縁近傍と前記スクリードフレーム又は前記前部仕切板との間にできる隙間を閉塞する閉塞用部材を前記主スクリードプレートに固設することにより実現した。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の好適な実施例1を図1の(a)、(b)を参照して説明する。なお、図1の(a)、(b)において、前記図5(b)における部材又は部位と同一ないし均等のものは、前記と同一符号を以って示し重複した説明を省略する。まず、本実施例に係る道路舗装機械の敷き均し装置の構成を説明する。
【0022】
図1の(a)、(b)において、本実施例では、クラウンをつけた際に幅方向中央部に曲がりの生じたスクリードプレート左右一体型の主スクリードプレート4bにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム6又は前部仕切板7との間にできる隙間sを閉塞する閉塞用部材10が、その隙間sのできる部分の直ぐ後部(機械進行方向に対する後部)に相当する主スクリードプレート4b上に溶接等により固設されている。
【0023】
閉塞用部材10は、クラウンをつけた際の主スクリードプレート4bにおける幅方向中央部の曲がりに応じて該主スクリードプレート4bと共に曲がるように、小さな剛性となる低高の部材が用いられている。クラウンをつけた際に幅方向中央部に曲がりの生じた主スクリードプレート4bにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム6又は前部仕切板7との間にできる隙間sは2mm程度であるため、閉塞用部材10は低高であっても、主スクリードプレート4bの曲がりに応じて該主スクリードプレート4bと共に曲がることで、前記隙間sを十分に閉塞することが可能である。
【0024】
次に、上述のように構成された本実施例に係る道路舗装機械の敷き均し装置の作用を説明する。図1(b)において、スクリードプレート左右一体型の主スクリードプレート4bは、その幅方向中央部を曲げてクラウンをつけた際、この曲がりの生じた主スクリードプレート4bにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム6又は前部仕切板7との間に2mm程度の僅かの隙間sができる。
【0025】
これに対し、その隙間sのできる部分の直ぐ後部に相当する主スクリードプレート4b上に固設されて該主スクリードプレート4bの曲がりに応じて主スクリードプレート4bと共に曲がる閉塞用部材10により前記隙間sが閉塞される。この結果、施工中に前記隙間sからアスファルト合材のアスファルト分が分離したいわゆるノロがスクリード装置内に侵入するのが阻止される。
【0026】
上述したように、本実施例に係る道路舗装機械の敷き均し装置においては、主スクリードプレート4bを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とするとともに、この主スクリードプレート4bの幅方向中央部を曲げてクラウンをつけた際に曲がりの生じた主スクリードプレート4bにおける機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム6又は前部仕切板7との間にできる隙間sを、その隙間sのできる部分の直ぐ後部に相当する主スクリードプレート4b上に固設されて該主スクリードプレート4bの曲がりに応じて主スクリードプレート4bと共に曲がる簡便な構成の閉塞用部材10で閉塞したことで、施工中に前記隙間sからアスファルト合材のアスファルト分がスクリード装置内に侵入するのを阻止することができる。したがって低コストで道路舗装機械の性能向上を図ることができる。
【0027】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
主スクリードプレートを中央部の構造が簡単なスクリードプレート左右一体型とするとともに、クラウンをつけた際に主スクリードプレートの機械進行方向前端縁近傍とスクリードフレーム又は前部仕切板との間にできる隙間を簡便な方法で閉塞して施工中に該隙間からアスファルト合材のアスファルト分がスクリード装置内に侵入するのを阻止し、低コストで性能向上を図ることが不可欠な乳剤散布機能付き及び無しのアスファルトフィニッシャ等を含む敷き均し機械に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 主スクリード
2 第1の伸縮スクリード
3 第2の伸縮スクリード
4a スクリードプレート左右分割型の主スクリードプレート
4b スクリードプレート左右一体型の主スクリードプレート
5 左右ずれ止め部
6 スクリードフレーム
7 前部仕切り板
8 ストライクオフプレート
9 タンパ
10 閉塞用部材
s 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主スクリードにスクリードプレート左右一体型の主スクリードプレートを備え、該主スクリードプレートに近接してスクリードフレーム及び前部仕切板が配設された道路舗装機械の敷き均し装置において、
クラウンをつけた際の前記主スクリードプレートにおける幅方向中央部の曲がりに応じて該主スクリードプレートと共に曲がり、曲がりの生じた前記主スクリードプレートにおける機械進行方向前端縁近傍と前記スクリードフレーム又は前記前部仕切板との間にできる隙間を閉塞する閉塞用部材を前記主スクリードプレートに固設したことを特徴とする道路舗装機械の敷き均し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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