説明

遠心分離機及びロータの識別方法

【課題】複数のロータを交換可能な遠心分離機において、ロータの種類を簡単かつ確実にを識別する機能を提供すること。
【解決手段】 制御装置5に予め、使用可能なロータの種類に対応させて、識別子配置情報、慣性モーメント情報等を記憶させておき、遠心分離機100の使用前には、使用者の所有するロータの種類を登録する。運転を開始すると、識別子検知機8が識別子配置情報を検出して制御装置5で装着されたロータ1の種類を特定し、回転数信号センサ6の検出信号から制御装置5が慣性モーメントIを算出してロータ1の種類を特定する。識別子情報から特定されたロータ1の種類と、慣性モーメント情報から特定されたロータ1の種類とが相違している場合には、遠心分離機100の運転を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離機及びそのロータ識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機のロータは予め定められた許容回転速度で運転されるようになっており、許容速度を超えるとロータは破損するおそれがある。万一、ロータが破損すれば、機器が損害を被るだけでなく、使用者の安全も脅かされることになるから、ロータの破損は絶対的に避けなければならない。
【0003】
このため、複数のロータを交換可能な遠心分離機においては、装着されたロータを確実に識別し、使用者が装着されたロータの許容回転速度を超える値を遠心分離機に誤って設定しても、速やかにその誤りを報知する機能が求められている。
【0004】
従来のロータの識別方法は、例えばロータに同心円上に識別子を配置し、識別子の配置角度を検出することで装着されたロータの種類を識別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ロータを所定トルクで回転させ、加速中の時間と回転数の変化量の比によりロータの慣性モーメントを演算し、ロータが持つ固有の慣性モーメントと照合することによりロータを選定する方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−198219
【特許文献2】特公平7−95008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の識別子によるロータの識別方法では、識別に使われる制御装置が故障したりあるいは識別子の装着に誤りがあり、装着したロータとは別のロータと識別してしまう場合がある。また、誤って識別した場合でも、識別したロータが正しいかどうかを判定することができない。
【0007】
特許文献2に記載の慣性モーメントによるロータの識別方法では、慣性モーメントが近似するロータが複数存在すると識別することができないため、遠心分離機で用いることができるロータのラインアップが少なくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、使用可能なロータの種類を減少させることなく、簡便かつ正確にロータを識別することができる遠心分離機と該遠心分離機に適用するロータの識別方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、試料を保持して遠心分離する着脱可能なロータと、前記ロータを回転させるモータと、前記モータを駆動制御する制御装置とを有し、複数種類のロータを選択的に使用可能な遠心分離機であって、前記ロータの種類を識別するロータ情報を前記ロータの種類と対応させて記憶するロータ情報記憶手段と、前記ロータ情報記憶手段に記憶されたロータの中から少なくとも1つのロータの種類を登録するロータ登録手段と、前記ロータ情報を検出するロータ情報検出手段と、前記ロータ情報記憶手段に記憶されたロータ情報と、前記ロータ情報検出手段が検出したロータ情報とを比較して、前記ロータの種類を識別するロータ識別手段とを有し、前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータのロータ情報を検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応するロータ情報と前記ロータ情報検出手段が検出したロータ情報とを比較して、前記ロータの種類を識別することを技術的特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遠心分離機において、前記遠心分離機に装着するロータの種類を選定するロータ選定手段を更に有し、前記制御装置は、前記ロータ識別手段が識別したロータの種類と、前記ロータ選定手段が選定したロータの種類とが相違する場合に、前記ロータの回転を停止することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の遠心分離機において、前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報であり、前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータの識別子配置情報を検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する識別子配置情報と前記ロータ情報検出手段が検出した識別子配置情報とを比較して、前記ロータの種類を識別することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の遠心分離機において、前記ロータ情報は、前記ロータの慣性モーメント情報であり、前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータの慣性モーメントを検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する慣性モーメント情報と前記ロータ情報検出手段が検出した前記慣性モーメントとを比較して、前記ロータの種類を識別することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の遠心分離機において、前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報、及び前記ロータの慣性モーメント情報であり、
【0014】
前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータの識別子配置情報及び慣性モーメントを検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する識別子配置情報と、前記ロータ情報検出手段が検出した識別子配置情報とを比較して特定した前記ロータの種類と、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する慣性モーメント情報と、前記ロータ情報検出手段が検出した慣性モーメントとを比較して特定した前記ロータの種類とが一致する場合にのみ、前記特定した種類を前記ロータの種類として識別することを特徴としている。
【0015】
請求項6に記載の発明は、試料を保持し遠心分離機に着脱可能に装着され、制御装置が制御するモータにより回転するロータの識別方法であって、前記ロータの種類を識別するロータ情報を前記ロータの種類と対応させて記憶するロータ情報記憶ステップと、前記ロータ情報記憶ステップで記憶されたロータの中から少なくとも1つのロータの種類を登録するロータ登録ステップと、前記遠心分離機に装着されたロータの前記ロータ情報を検出するロータ情報検出ステップと、前記ロータ登録ステップで登録されたロータのロータ情報と、前記ロータ情報検出ステップで検出したロータ情報とを比較して、前記ロータの種類を識別するロータ識別ステップと、を有することを技術的特徴としている。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のロータの識別方法において、前記遠心分離機に装着するロータの種類を選定するロータ選定ステップと、前記ロータ識別ステップで識別したロータの種類と、前記ロータ選定ステップで選定したロータの種類とが相違する場合に、前記制御装置が前記ロータの回転を停止するロータ停止ステップと、を有することを特徴としている。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のロータ識別方法において、前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報であることを特徴としている。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のロータ識別方法において、前記ロータ情報は、前記ロータの慣性モーメント情報であることを特徴としている。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のロータ識別方法において、前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報、及び前記ロータの慣性モーメント情報であり、前記ロータ識別ステップにおいて、前記識別子配置情報により特定した前記ロータの種類と、前記慣性モーメント情報により特定した前記ロータの種類とが一致する場合にのみ、前記特定した種類を前記ロータの種類として識別することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、遠心分離機を使用する際に、使用可能なロータの中から少なくとも1つのロータの種類を予め登録する。よって、使用可能なロータの種類を減らすことなく、使用者の要求を満たしながら識別の際に参照するロータ情報の数を少なくすることができ、確実にロータの識別を行うことができる。また、2つの識別方法を併用することにより、制御装置が故障したりあるいは識別子の装着に誤りがあり、装着したロータとは別のロータと識別してしまっても、間違いを直ちに発見することができる。更に、識別子の配置や慣性モーメントが近似していてもロータの識別が可能になり、使用者の目的に応じた多岐にわたるラインアップのロータを供給できることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図4は本発明の一実施の形態による遠心分離機の構成及び動作を説明する図である。図1に、遠心分離機100の構成、図2に制御装置5のブロック図を示す。
【0023】
図1に示すように、遠心分離機100は、ロータ1、回転軸3、モータ4、制御装置5、操作パネル9、表示装置10を備え、ロータ1に保持された試料2を遠心分離する装置である。また、遠心分離機100は、モータ4の回転数を計測する回転数信号センサ6、ロータ1の種類を識別するための識別子7、及び識別子7を検出する識別子検出器8を備えている。
【0024】
ロータ1は、分離する試料2を保持し、回転軸3に着脱可能に装着され、モータ4によって駆動されて回転する。ロータ1は、材質、形状の異なる多数のものと交換できる。また、ロータ1の種類を識別するための識別子7を備えている。回転軸3は、モータ4の回転をロータ1に伝達する。
【0025】
モータ4は、制御装置5によって回転を制御され、所定の回転数でロータ1を回転させる。制御装置5は、予め操作パネル9から入力されて設定された回転数と回転数信号センサ6からの信号とによりモータ4の回転を制御するとともに、後述するロータ情報を記憶し、ロータの種類の識別を行う。
【0026】
操作パネル9は、モータ4の回転数、遠心処理の時間、温度等を設定するための操作キーなどを備えたパネルである。表示装置10は、モータ4の回転数、遠心処理の時間、温度、装着されているロータ1の種類、及び遠心分離機100の運転の状況や問題が発生した際の状況等を表示する。
【0027】
回転数信号センサ6は、モータ4の回転数を計測し、計測した回転数に応じた信号を制御装置5に送信する。識別子7は、例えばロータ1の底面の同心円上に、ロータ1の種類毎に定められた所定の角度の組み合わせに従う配置、数が備えられている。識別子7は、例えば磁石であり、通常1つ以上配置されている。識別子7の位置、数等の識別子配置情報は、ロータ1固有の情報としてロータ1の種類と対応したテーブルとして予め制御装置5の後述するROM53に記憶されている。識別子検出器8は磁気センサであり、識別子7と対向する位置に一個又は所定の角度毎に複数個配置されている。識別子検出器8は識別子7を検出し、その位置、数等の識別子配置情報を制御装置5に送信する。
【0028】
図2に示すように制御装置5は、互いにバス59で接続されたCPU51、ROM53、RAM55、EEPROM57を備え、遠心分離機100における各データの授受や遠心処理動作を制御する。
【0029】
CPU51は、遠心分離機100の遠心処理動作、ロータの識別処理動作等を制御する演算処理装置である。ROM53は、ロータの識別処理動作を制御するプログラム等を記憶する読み取り専用メモリである。RAM55は、例えば遠心処理時の回転数、処理時間、処理温度の設定値等のデータを一時的に記憶するメモリである。EEPROM57は、使用者が操作パネル9を介して入力した所有するロータ1の種類、遠心分離機100で使用可能なロータ1の固有のデータである識別子7に関する識別子配置情報、実験などで求められた慣性モーメント情報、許容回転速度等をロータ1の種類と対応させたテーブルとして記憶するメモリである。
【0030】
次に、ロータ1の慣性モーメントIについて説明する。図3に遠心分離機100に装着できるロータの持つ固有の慣性モーメントと許容回転速度の関係を示す。図3において、横軸は慣性モーメントI、縦軸は許容回転速度(RPM)である。ここでは、一つの長方形が1種類のロータに対応している。慣性モーメントに最小値Iminから最大値Imaxまでの幅があるのは、同一種類のロータでも保持する試料の量等によって慣性モーメントの変動が生じるためである。
【0031】
図3に示すように、遠心分離機100に装着可能なロータは多数存在する。ここでは21種類を記載している。図示の各ロータは、定められた許容回転速度(RPM)、並びに試料を搭載しない場合の最小の慣性モーメントIminと試料を許容された容量まで搭載した際の最大の慣性モーメントImaxを固有のデータとして有している。各ロータの持つ固有の慣性モーメントIはIminからImaxまでの範囲の任意の値となる。遠心分離機100に装着できるすべて(ここでは21種類)のロータの許容回転速度(RPM)、及び慣性モーメントの最小値Imin、最大値Imaxで定義される慣性モーメント情報のデータは、ロータの種類と対応して制御装置5のROM53にあらかじめ記憶されている。
【0032】
上記のように遠心分離機100に装着できるロータは、使用者の目的に応じ材質、形状の異なる多数のロータが用意されているため、慣性モーメントが近似する複数のロータが存在する。例えば、装着されたロータの慣性モーメントIを測定して、慣性モーメントI=Ibが得られた場合には、図3に示すように、ロータRb、ロータRd、ロータRe、ロータRf、ロータRgの5つのロータである可能性がある。
【0033】
しかし、実際に利用する使用者の立場に立ってみると、目的に応じて購入しているケースがほとんどであるため、所有するロータの数が多くとも数個であり、装着可能な多数のロータのうちの一部のロータでしかない。図3では、使用者が所有するロータを、ロータRa、ロータRb、ロータRcとしている。この場合には、所有する3個のロータは慣性モーメントが重複していないため、慣性モーメントI=Ibを有するのはロータRbのみとなり、単一のロータを識別できることになる。
【0034】
次に、図4のフローチャートを参照しながら、本実施の形態による遠心分離機100のロータ識別処理動作について説明する。
【0035】
まず、使用者が、所有するロータを登録する(ステップ61)。上記したように、遠心分離機100の運転を開始する前に、使用者が所有するロータRa、ロータRb、ロータRcを、操作パネル9を操作して制御装置5のEEPROM57に登録する。このとき、表示装置10に使用可能な全種類のロータに関する識別子配置情報、慣性モーメント情報の一覧をROM53より読み出して表示し、表示された中から選択するようにしてもよい。
【0036】
次に、ロータ1を装着し回転をスタートさせる(ステップ62)。ロータ1が回転すると識別子検出器8は、ロータ1底面の同心円上に配置された識別子7の配置角度及び配置数を検出し、ロータ1の種類を識別する(ステップ63)。識別子検出器8が、識別子の位置、数を検出する方法については、上述の特許文献1等に記載されているように、識別子検出器8からの出力を解析して行うことができる。
【0037】
このとき、識別子検出器8は識別子配置情報となる出力を制御装置5に送信する。制御装置5は、識別子検出器8の出力から識別子7の位置、配置を解析し、EEPROM57に記憶された識別子配置情報及びに記憶されたロータの種類と比較照合し、ロータ1の種類を特定する。
【0038】
しかしこのままでは、例えば識別する制御装置5がロータを誤って識別したりあるいは識別子7の装着に誤りがあり、装着したロータ1とは別のロータと識別してしまった場合、誤りをチェックすることができない。そこで、ロータ識別の二重チェック機能として次の検証を行う。
【0039】
制御装置5は、ロータ1を所定トルクTの基で回転したときの加速中の時間dtと回転数信号センサ6からの信号を受けて測定された回転速度の変化量dωから式:I=T・(dω/dt)により慣性モーメントIの測定を行う(ステップ64)。ここで、制御装置5は、EEPROM57に記憶された慣性モーメント情報と測定された慣性モーメントとを比較照合し、ロータ1の特定を行う(ステップ65)。例えば、測定された慣性モーメントがIbであれば、運転前に登録したロータRa、ロータRb、ロータRcの中で慣性モーメントIbを持つロータRbが装着したロータであると特定する。
【0040】
次に、ステップ63において識別子検出器8を用いて特定したロータの種類と、ステップ65において慣性モーメント情報から特定したロータの種類とが、一致しているか否か検証する(ステップ66)。一致していない場合には、CPU51による誤識別、識別子7の装着の誤り、または規定以上の試料2を搭載したことによる慣性モーメントの最大値Imaxの超過などの不具合要因が考えられる。よって、このまま運転を続けると、機器に損害を与えたり使用者の安全を損ねることがあるため、直ちに制御装置5はモータ4を停止し、遠心分離機100の運転を停止する(ステップ67)。
【0041】
一致している場合にはそのまま運転を継続し(ステップ68)、作業が終了すれば(ステップ69)処理を終了する。
【0042】
なお、上記実施の形態において、EEPROM57が、ロータ情報記憶手段に対応し、操作パネル9及びEEPEOM57が、ロータ登録手段に対応し、識別子検出器8、回転数信号センサ6が、ロータ情報検出手段に対応する。また、ロータ登録ステップはステップ61、ロータ情報検出ステップは、ステップ63、64、ロータ識別ステップは、ステップ63、65、66、ロータ停止ステップはステップ67で実行する。
【0043】
以上詳細に説明したように、本実施の形態による遠心分離機100によれば、制御装置5に予め、使用可能なロータの種類に対応させて、識別子配置情報、慣性モーメント情報等を記憶させておき、遠心分離機100の使用前には、使用者の所有するロータの種類を登録する。運転を開始すると、識別子検知機8が識別子配置情報を検出して制御装置5で装着されたロータ1の種類を特定し、回転数信号センサ6の検出信号から制御装置5が慣性モーメントIを算出してロータ1の種類を特定する。識別子情報から特定されたロータ1の種類と、慣性モーメント情報から特定されたロータ1の種類とが相違している場合には、遠心分離機100の運転を停止する。
【0044】
よって、使用者が所有している単一または複数のロータの種類を操作パネル9によりEEPEOM57登録することができるので、識別子情報及び慣性モーメント情報を用いたロータの種類の識別における参照データの数を縮小できる。また慣性モーメントIの近似がほとんどなくなるようにでき、誤識別を低減可能である。たとえ装着できるロータの中に慣性モーメントIが近似するロータが複数存在しても、使用者が所有するロータに限定すると慣性モーメントIが近似することは希であるため、単一のロータを正しく選定することができる。
【0045】
また、2通りの識別を用いた二重チェック機能を採用しているので、CPU51の誤動作や、識別子7の配置の誤り、慣性モーメントIの近似等によりいずれかの方法で識別に誤りがあっても、両方の識別結果が相違している場合には運転を停止するので、破損事故等を未然に防止することが可能になる。
【0046】
尚、本発明の遠心分離機は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0047】
例えば、識別子及び識別子検出器は磁気を利用したものに限定されず、例えば光源と光センサ等他のもので代用することは可能である。また、制御装置に備えられた記憶装置の種類は上記したものに限定されず、他の種類のメモリを用いてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、識別子情報による識別と慣性モーメント情報による識別とを併用したが、運転開始前に使用者が装着予定のロータを操作パネル9から入力して選定しておき、選定したロータの種類と、上記識別子情報による識別と慣性モーメント情報による識別のいずれかにより識別されたロータの種類とが異なった場合には、運転を停止するという処理を行うようにしてもよい。
【0049】
更に、識別子によるロータの種類の特定と、慣性モーメントによる特定とは、順序が逆でもよい。ロータの種類の特定方法として、一定の回転数でロータを回転させて風損の測定を行う等別の特定方法を用いてもよく、この場合にも他の特定方法、または装着予定のロータの種類を予め入力する方法等と併用して2重のチェックを行うことが有効である。
【0050】
更に、識別されたロータの種類に対し、設定された遠心分離機の回転数が許容回転速度を超えている場合には、表示装置にその旨を表示したり、回転を停止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態による遠心分離機100の構成を示す図。
【図2】制御装置5のブロック図。
【図3】遠心分離機100に使用可能なロータの持つ固有の慣性モーメントと許容回転速度の関係を示す図。
【図4】遠心分離機100のロータ識別処理動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1:ロータ 2: 試料 3:回転軸 4:モータ 5:制御装置 6:回転数検出センサ 7:識別子 8:識別子検出器 9:操作パネル 10:表示装置 100: 遠心分離機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持して遠心分離する着脱可能なロータと、前記ロータを回転させるモータと、前記モータを駆動制御する制御装置とを有し、複数種類のロータを選択的に使用可能な遠心分離機であって、
前記ロータの種類を識別するロータ情報を前記ロータの種類と対応させて記憶するロータ情報記憶手段と、
前記ロータ情報記憶手段に記憶されたロータの中から少なくとも1つのロータの種類を登録するロータ登録手段と、
前記ロータ情報を検出するロータ情報検出手段と、
前記ロータ情報記憶手段に記憶されたロータ情報と、前記ロータ情報検出手段が検出したロータ情報とを比較して、前記ロータの種類を識別するロータ識別手段と、
を有し、
前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータのロータ情報を検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応するロータ情報と前記ロータ情報検出手段が検出したロータ情報とを比較して、前記ロータの種類を識別することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記遠心分離機に装着するロータの種類を選定するロータ選定手段を更に有し、
前記制御装置は、前記ロータ識別手段が識別したロータの種類と、前記ロータ選定手段が選定したロータの種類とが相違する場合に、前記ロータの回転を停止することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報であり、
前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータの識別子配置情報を検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する識別子配置情報と前記ロータ情報検出手段が検出した識別子配置情報とを比較して、前記ロータの種類を識別することを特徴とする請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記ロータ情報は、前記ロータの慣性モーメント情報であり、
前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータの慣性モーメントを検出し、前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する慣性モーメント情報と前記ロータ情報検出手段が検出した前記慣性モーメントとを比較して、前記ロータの種類を識別することを特徴とする請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報、及び前記ロータの慣性モーメント情報であり、
前記ロータ情報検出手段は、前記遠心分離機に装着されたロータの識別子配置情報及び慣性モーメントを検出し、
前記ロータ識別手段は、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する識別子配置情報と、前記ロータ情報検出手段が検出した識別子配置情報とを比較して特定した前記ロータの種類と、前記ロータ登録手段により登録された前記ロータの種類に対応する慣性モーメント情報と、前記ロータ情報検出手段が検出した慣性モーメントとを比較して特定した前記ロータの種類とが一致する場合にのみ、前記特定した種類を前記ロータの種類として識別することを特徴とする請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項6】
試料を保持し遠心分離機に着脱可能に装着され、制御装置が制御するモータにより回転するロータの識別方法であって、
前記ロータの種類を識別するロータ情報を前記ロータの種類と対応させて記憶するロータ情報記憶ステップと、
前記ロータ情報記憶ステップで記憶されたロータの中から少なくとも1つのロータの種類を登録するロータ登録ステップと、
前記遠心分離機に装着されたロータの前記ロータ情報を検出するロータ情報検出ステップと、
前記ロータ登録ステップで登録されたロータのロータ情報と、前記ロータ情報検出ステップで検出したロータ情報とを比較して、前記ロータの種類を識別するロータ識別ステップと、
を有することを特徴とするロータ識別方法。
【請求項7】
前記遠心分離機に装着するロータの種類を選定するロータ選定ステップと、
前記ロータ識別ステップで識別したロータの種類と、前記ロータ選定ステップで選定したロータの種類とが相違する場合に、前記制御装置が前記ロータの回転を停止するロータ停止ステップと、
を有することを特徴とする請求項6に記載のロータ識別方法。
【請求項8】
前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報であることを特徴とする請求項6または7に記載のロータ識別方法。
【請求項9】
前記ロータ情報は、前記ロータの慣性モーメント情報であることを特徴とする請求項6または7に記載のロータ識別方法。
【請求項10】
前記ロータ情報は、前記ロータの種類を識別するために前記ロータに設けられた識別子の数及び位置を含む識別子配置情報、及び前記ロータの慣性モーメント情報であり、
前記ロータ識別ステップにおいて、前記識別子配置情報により特定した前記ロータの種類と、前記慣性モーメント情報により特定した前記ロータの種類とが一致する場合にのみ、前記特定した種類を前記ロータの種類として識別することを特徴とする請求項6または7に記載のロータ識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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