説明

遠心分離機

【課題】遠心分離中に停電が起きた際、停電したままで速やかにロータを減速させて過遠心や温度上昇による試料の変性を防ぎ、試料の回収ができ、また停電状態で潤滑や冷却が不足するなかでの高速回転による駆動部の軸受のダメージを防止する遠心分離機を提供する。
【解決手段】停電検出回路20で停電を検出したら制御部4によって減速制御に切り替え、その回生電力で遠心分離機自体の電力を供給する。そのために、停電中に減速制御を開始できる程度の補助電源6を備え、電力系統を共用する遠心分離機以外の機器への電力分配を避けるため電路遮断手段5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電が発生した際にロータを速やかに減速させ、試料回収までの時間短縮を図った遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機により試料の分離を行なう際は、それぞれ試料の分離目的に応じたロータの回転速度、運転時間、ロータ室の温度などの遠心条件を遠心分離機に設定する。遠心分離機は設定された遠心条件に従って、商用電源から受電する電力を使って動作する。
【0003】
ロータを回転駆動するモータには制御装置によって回転速度維持のために適切に制御された電力が供給される。遠心時間は制御装置によって管理され、設定された時間が経過するか、使用者による停止操作があればロータを減速、停止させる。高速回転に伴うロータの発熱を抑制し所定の温度に維持するための冷却装置が設けられた遠心分離機の場合は、冷却装置も制御装置によって適切に駆動される。これらの制御を行なう制御装置自体も商用電源から電力供給を受けて動作する。
【0004】
ロータを減速させる際は、モータを制動してロータの回転エネルギーを取り出す必要があり、取り出されたエネルギーは抵抗器で電力から熱に変換して機外に放出するか、下記特許文献1のように商用電源に対して逆潮流の電流を流して電力設備に返還する方法がとられている。
【0005】
遠心分離中に停電が発生するとロータの回転速度は低下(失速)する。制御装置にも電力が供給されないので制動も行なうことはできず、自然に停止するまでに長時間を要する。例えば大型のロータの場合は停止するまでに4時間を要するものもある。また冷却機能を有する遠心分離機であれば冷却機能も停止するので、ロータが高速で回転していれば空気との摩擦による発熱などによりロータ温度が上昇する。ロータが低速の場合でも外気温度がロータに熱伝導するので、設定温度によってはロータが意図しない温度に変化してしまう。
【0006】
また、停電中はモータの冷却ファンや、軸受部へのオイル潤滑ポンプなども停止してしまうため、長時間の惰性による回転が軸受部などにダメージを与える可能性もあった。
【0007】
このように停電が発生して遠心分離が遂行できない状況下では、過遠心や温度上昇による試料の変性などを避け、必要に応じて試料の保管や再調製を図るため、速やかにロータが停止して試料が回収できる状態になることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3360400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の遠心分離機では、電力が供給されていない状態では減速のための制動制御すら行なうことができない。一般に、停電中にもドアを手動で開ける手段は設けられているが、充分な時間が経過してロータが確実に停止する前にドアを開けることは、危険防止のため禁止されている。従って使用者は、電源が回復しない限りはロータの停止を待つ以外の手立てがない状態に置かれる。そのため長時間の回転による過遠心や温度上昇による変性を防ぐことができなかった。
【0010】
一方、ロータを減速させるときに発生する回生電力を電源系統に逆潮流を起こして返還する方法を用いた遠心分離機においては固有の以下のような特徴がある。減速中に停電が発生すると、逆潮流電力は同一電力系統に接続された周囲のすべての設備、例えば照明や空調設備、分析器、情報機器などに電力供給することになり、充分な電力を供給できないため逆潮流の電圧を維持できない。その結果、速やかに遠心分離機が停電状態となって減速制御ができなくなり、ロータは自然停止となるまで回転し続けてしまう。
【0011】
ところが、操作者が遠心分離機自体の電源スイッチを切った場合は、逆潮流の電力の行き場がないため遠心分離機自体のみへ給電し、制御装置、冷却装置なども駆動しながら減速制御を続けることができる。本発明者は、この点に着目し、ロータ減速時の回生電力を停電時においても有効利用する着想を得たものである。
【0012】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、停電が発生した際に、ロータを回転駆動する駆動部を制動制御して速やかに停止させ、前記ロータで保持された試料の回収までの時間短縮を図った遠心分離機を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、停電が発生しても、前記駆動部の冷却や潤滑が不充分な状態でロータが回転し続ける時間を短縮して前記駆動部が有する軸受部のダメージを軽減する遠心分離機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様は、遠心分離機である。この遠心分離機は、試料を保持するロータと、前記ロータを回転駆動する駆動部と、前記駆動部の制御を行う制御部とを備えた構成において、前記制御部は受電電力の遮断中に回生制動による前記ロータの減速制御を開始することを特徴とする。
【0015】
前記態様において、電源経路を遮断する電路遮断手段が設けられており、前記制御部は、受電電力の遮断中に前記電路遮断手段を動作させて前記電源経路を遮断する構成であるとよい。
【0016】
前記態様において、前記受電電力の遮断中に、前記ロータの減速制御を開始するために必要な電力を供給する補助電源を設けた構成であるとよい。
【0017】
前記態様において、前記制御部は、ロータの減速制御により回転エネルギーを交流電力に変換するものであるとよい。
【0018】
前記態様において、前記制御部は、制御基幹部と、前記受電電力を整流する双方向電力変換器と、前記双方向電力変換器と前記駆動部間に接続されるインバータとを有し、前記制御基幹部は前記双方向電力変換器及びインバータを制御して前記駆動部の回転速度制御を行うものであり、前記受電電力の遮断中に前記減速制御によって発生した電力を前記双方向電力変換器が交流電圧に変換してから前記制御基幹部に給電する構成であるとよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、遠心分離機において停電が発生した際に(受電電力が遮断した際に)ロータの回生制動による減速制御を行うので、停電中にも制御部を動作させる電力を自給することができる。従って、前記ロータを回転駆動する駆動部を制動制御して速やかに停止させ、前記ロータで保持された試料の回収までの時間短縮を図ることができる。また、停電が発生しても、前記駆動部の冷却や潤滑が不充分な状態で前記ロータが回転し続ける時間を短縮して前記駆動部が有する軸受部のダメージを軽減することができる。
【0021】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る遠心分離機の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態の電気回路構成を示すブロック図である。
【図3】前記電気回路における制御基幹部の内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施の形態における制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明に係る遠心分離機の実施の形態を示す概略構成図である。この図に示すように、遠心分離機1は、遠心室(ロータ室)9と、遠心室9内に配置されていて試料を保持するロータ2と、ロータ2を回転駆動する駆動部3と、駆動部3の回転制御の他、遠心分離機全体の制御をつかさどる制御部4とを備えている。ロータ2は遠心室9の底面部に露出した駆動部3の回転軸に着脱自在に載置されている。駆動部3はモータを内蔵し、モータによって回転軸を回転駆動するものである。遠心室9は上部開口を有し、この上部開口はドア17によって開閉自在となっている。
【0025】
遠心分離機1には電源オン/オフ(ON/OFF)を行なう電源スイッチ7、制御部4によって開路動作させることが可能な電路遮断手段5を経由して交流電源(商用電源)8が接続されている。また、停電が発生しても遠心分離機1が所定の動作をするための補助電源6が設けられている。補助電源6は充放電可能な二次電池を用い、常にトリクル充電して満充電状態にしておくことが望ましい。
【0026】
図2は遠心分離機1の電気回路構成を示すブロック図である。この図において、制御部4は、制御基幹部31と、受電電力を整流する双方向電力変換器32と、この整流出力を平滑する平滑コンデンサ33と、双方向電力変換器32からの電力供給を受けるインバータ34とを有している。この制御部4は電源スイッチ7と電路遮断手段5を経由して交流電源8に接続されている。交流電源8からの交流入力は、平滑コンデンサ33に接続された電源用双方向電力変換器32に供給されている。また、インバータ34は平滑コンデンサ33と駆動部3に接続され双方向に電力変換可能なものである。電源用双方向電力変換器32、インバータ34はともに制御基幹部31によって動作を制御されて駆動部3の回転速度制御を行う。制御基幹部31には停電時にも所定の動作をするための電力供給が可能な補助電源6が設けられている。
【0027】
さらに、遠心分離機1は、真空ポンプ11、冷却装置12、ドアロック解除装置13、オイルポンプ14、ファン15及びリークバルブ16を備えている。ここで、真空ポンプ11は遠心室9内を真空吸引するものであり、リークバルブ16は遠心室9内の真空を大気圧にリークするものであり、冷却装置12は遠心室9内を冷却するものである。ドアロック解除装置13はドア17のロック解除を行うものである。オイルポンプ14はモータを含む駆動部3の軸受部などへのオイル潤滑を行うものである。ファン15は駆動部3のモータの冷却や制御部4の冷却などを行うものである。真空ポンプ11は真空ポンプ制御リレー21で、冷却装置12は冷却装置制御リレー22で、それぞれオン/オフされる。各リレー21,22の制御は制御基幹部31で行う。また、電源スイッチ7と電路遮断手段5間に交流電源8側の停電を検出するための停電検出回路20が設けられており、この停電検出出力が制御基幹部31に供給されるようになっている。停電検出回路20は、例えば電圧や周期を監視するものなどであるが、停電検出が可能であれば、具体的構成は任意である。
【0028】
ここで図5のフローチャートを用いて遠心分離機1の動作を説明する。運転を開始して(ステップ500)、運転中に停電の発生(受電電力の遮断)を検出すると(ステップ510)、制御部4は駆動部3や冷却装置12などすべての装置の制御を中断する(ステップ520)。これは電力消費を抑制して補助電源6による駆動時間を延ばし、後述する減速制御の開始までに必要な電力を、より少容量の補助電源6で供給できるようにするためである。
【0029】
一般的に停電の発生源は電源系統の途中にあり、発生源より遠心分離機側の電源系統は遠心分離機以外にも多数の機器、たとえば冷蔵庫やパーソナルコンピュータなどが接続されていることが多い。したがって、電源回路がつながったままでは、後述する回生電力は周囲の機器へ供給することになるが、多数の機器を駆動する程度の電力を回生電力で供給することはできない。そこで、後述する回生電力を遠心分離機1のみで使用するため、電路遮断手段5を駆動して電源回路を遮断する(ステップ530)。
【0030】
次に、補助電源6を昇圧して駆動部3の減速制御に必要なDCリンク電圧を平滑コンデンサ33に供給し(ステップ540)、駆動部3を回生制動により減速制御してロータ2の減速を開始する(ステップ550)。充分な減速勾配でロータ2が減速しはじめると、ロータ2の回転エネルギーは回生電力となって平滑コンデンサ33に帰還し、さらに電源用双方向電力変換器32から制御基幹部31を含む交流電源側に交流電圧として供給されるので、交流電圧で動作する真空ポンプ11や冷却装置12を駆動することができる。そこで制御部4はステップ560で、各部の制御を再開する。このとき真空ポンプ11や冷却装置12、あるいはオイルポンプ14やファン15などの制御を再開する(ステップ561〜566)が、回生電力の量や動作の必要性などに応じて制御対象を適宜選択するとよい。
【0031】
さらにロータ2が減速すると、回転速度が低下するに従い回生電力も減少し、それまで駆動していた各部品を駆動できなくなる。そこでロータ2の回転速度低下(ステップ570)に応じて各部の制御を停止する(ステップ580、およびステップ581〜586)。そしてロータ2の停止を判定すると(ステップ590)、ロータ2が載置されているロータ室9にリークバルブ16を開いてエアリークし(ステップ600)、ドアロック解除装置13を作動させてドア17のロックを解除し(ステップ610)、停電に際しての動作を終了する(ステップ620)。
【0032】
次に遠心分離機1の動作を図4のタイムチャートで説明する。遠心分離機1が運転を開始してロータ2の回転速度401が上昇し、所定の回転速度で定速運転しいる時刻tで停電が発生し交流電源8からの交流電源電力405が遮断されたとする。制御部4は交流電源電力405の遮断後すみやかに補助電源電力406の電力に切り替えて制御を継続できるように構成されていて回転速度401は所定の回転速度を維持する。次に制御部4は時刻tで全ての制御を中断するとともに電路遮断信号403を出力して電路遮断手段5を動作させ、電路の遮断を行なう。その結果、回転速度401は駆動力を失い緩やかに失速を始める。そして時刻tで制御部4がロータ2の回生制動による減速制御を開始すると回転速度401の減速勾配は次第に急峻になるとともに、ロータ2の回転エネルギーが回生電力407として取出せるようになり、時刻tでは補助電源電力406を使わずに減速制御を維持できるようになる。このとき回生電力407が充分確保できるならば、真空ポンプ11やオイルポンプ14の駆動、冷却装置12の駆動を伴う温度制御などを再開するとよい。また、補助電源電力406が充放電可能な二次電池を用いているならば充電電力として用いるとよい。
【0033】
ロータ2の減速が続くと時刻tで回転速度401が低下しはじめ、回生電力407が少なくなるので、再び補助電源電力406が必要となり、時刻tでは補助電源電力406のみでの制御となる。このときは真空ポンプ11やオイルポンプ14の駆動、冷却装置12の駆動を伴う温度制御などを行っているならば、再び中断して補助電源電力406の消費を低減すれば、その後の制御に必要な電力を多く残しておくことができる。
【0034】
そして時刻tでロータ2が停止した後、ドアロック解除信号402を出力して、補助電源電力406が続く限り図示しないドアロックを解除しておくと、使用者がロータ2又はロータ2が保持している試料を回収するのに都合がよい。
【0035】
このように、駆動電力404として交流電源電力405が停電によって無くなった後、駆動電力404として補助電源電力406及び回生電力407の一方若しくは両方を利用することで、ロータ2の迅速な減速制御が可能である。
【0036】
図3は、制御部4の主要部分である制御基幹部31の内部構成の例を示すブロック図である。交流電源8から供給された電力は交流と直流を双方向動作可能な電源用双方向電力変換器32を駆動する電力変換駆動回路315、駆動部3を駆動・回生制御可能なインバータ34を駆動するインバータ駆動回路316に供給されるとともに、絶縁トランス314を経由してCPU・ロジック回路318、および補助電源6に給電している。CPU・ロジック回路318は補助電源6からも並列給電されているため、交流電源8に停電が発生しても動作を継続できるよう構成されている。
【0037】
補助電源6(二次電池のみでなく、DAコンバータ、充電回路などの周辺回路構成も内蔵している)はまた絶縁トランス313へも給電しており、絶縁トランス313からも電力変換駆動回路315、インバータ駆動回路316に給電され、交流電源8が停電となっても電力を供給できるように構成されている。また、電力変換回路315やインバータ駆動回路316に必要とされる電圧が通常12Vから30V程度であるのに対し、駆動部3の減速を始めるのに必要となる平滑コンデンサ33の電圧は通常100V以上であり、その電圧(前記DCリンク電圧)を発生させるため昇圧回路317にも電力供給している。
【0038】
補助電源6として必要な電力量を試算するに、たとえば150,000rpmで回転する小形の超遠心分離機の消費電力は約700Wであり、また減速制御を開始して回生電力が発生する状態に遷移するまでの時間は10秒以下であることから、この間の電力を供給するために必要な電力量は、700W×10秒/3600秒=1.9Whである。本実施の形態では交流電源8の停電とともに速やかにすべての制御を中断して減速制御への遷移を開始するので、実際には1.9Whよりさらに少ない電力量で本発明の動作を実現できる。
【0039】
電力量だけで換算すれば、市販されている標準的な単3型ニッケル水素充電池1本分(1.2V2Ah=2.4Wh)で足りる計算になる。しかし単3型ニッケル水素充電池1本では上記した700Wを得るための大電流(700W÷1.2V=583A)を出力できない。そこで大電流放電に対応できるように、例えばリチウムイオン電池や鉛蓄電池で12V3Ah(36Wh)程度の容量を確保すればよい。
【0040】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0041】
(1) 遠心分離機1において停電が発生した際にロータ2の回生制動による減速制御を行うので、停電中にも制御部4を動作させる電力を自給することができ、速やかにロータを減速させることができ、試料の回収までの時間を短縮することができ、過遠心や温度上昇による試料の変性を防ぐことができる遠心分離機を実現できる。
【0042】
(2) 制御部4は、停電による受電電力の遮断中に電路遮断手段5を動作させて電源経路を遮断するので、停電が発生した際に、ロータ2の制動制御によって発生した電力を、同一の電源系統に接続されている他の機器に供給しないようにすることができ、遠心分離機自体の制御に有効利用できる。
【0043】
(3) 停電による受電電力の遮断中に、ロータ2の減速制御を開始するために必要な電力を供給する補助電源6を設けたので、遠心分離機1において停電が発生した際に回転しているロータ2の減速制御を開始するための電力を遠心分離機1の動作状況にかかわらず調達することができる。
【0044】
(4) 制御部4は、ロータ2の減速制御により回転エネルギーを交流電力に変換し、遠心分離機1において停電が発生した際にロータ2の減速制御によって発生した電力を交流にして制御基幹部31や真空ポンプ11、冷却装置12に給電できるので、制御基幹部31は例えば真空ポンプ11などの交流機器の動作を制御することができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、ロータ2が所定の速度で回転しているときに停電が発生した場合を示したが、ロータ2が加速中や減速中に停電が発生した場合にも本発明は適用できる。減速中に電源スイッチ7が遮断された場合、回生による電圧が発生しているので停電検出回路20による停電の検出は単に電圧のみでは検出できない可能性があるが、例えば交流電源(商用電源)の周波数を基準として回生電圧の周波数を制御し、交流電源の周波数が検出できないときは周波数が変化、たとえば商用周波数には存在しない55Hzに変化するようにしておき、周波数の変動を併用して停電検出するなどの工夫が必要である。
【0046】
実施の形態では、電源スイッチ7と電路遮断手段5を別個に設けているが、例えば両方の機能を併せ持つデュアルコイル型サーキットプロテクタにより1個の部品で実現することも可能である。補助電源6は、必ずしも制御部4の中に入れる必要はなく、使用者が交換可能なように遠心分離機1の外部に置いて接続してもよい。また補助電源6は充放電可能な二次電池を想定しているが、交流電源が停電したときに電力を供給できる手段であればよく、たとえば非常用発電機や一次電池又はスーパーキャパシタ(電気二重層キャパシタ)でも適用可能であり、さらには平滑コンデンサ33を充分に大容量化することによって共用も可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 遠心分離機
2 ロータ
3 駆動部
4 制御部
5 電路遮断手段
6 補助電源
7 電源スイッチ
8 交流電源
9 遠心室
11 真空ポンプ
12 冷却装置
13 ドアロック解除装置
14 オイルポンプ
15 ファン
16 リークバルブ
20 停電検出回路
21 真空ポンプ制御リレー
22 冷却装置制御リレー
31 制御基幹部
32 電源用双方向電力変換器
33 平滑コンデンサ
34 インバータ
313 絶縁トランス
314 絶縁トランス
315 電力変換駆動回路
316 インバータ駆動回路
317 昇圧回路
318 CPU・ロジック回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するロータと、
前記ロータを回転駆動する駆動部と、
前記駆動部の制御を行う制御部とを備えた遠心分離機において、
前記制御部は受電電力の遮断中に回生制動による前記ロータの減速制御を開始することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
電源経路を遮断する電路遮断手段が設けられており、前記制御部は、前記受電電力の遮断中に前記電路遮断手段を動作させて前記電源経路を遮断することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記受電電力の遮断中に、前記ロータの減速制御を開始するために必要な電力を供給する補助電源を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記制御部は、ロータの減速制御により回転エネルギーを交流電力に変換することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記制御部は、制御基幹部と、前記受電電力を整流する双方向電力変換器と、前記双方向電力変換器と前記駆動部間に接続されるインバータとを有し、前記制御基幹部は前記双方向電力変換器及びインバータを制御して前記駆動部の回転速度制御を行うものであり、前記受電電力の遮断中に前記減速制御によって発生した電力を前記双方向電力変換器が交流電圧に変換してから前記制御基幹部に給電することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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