説明

遠心成形用コンクリート組成物及びそれを用いるコンクリート製品の製造方法

【課題】 遠心成形の際の成形性やコンクリート製品の性能を損なうことなく、スラッジ発生量、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率を低減でき、且つ、最適な処方を容易に決定することができる遠心成形用コンクリート組成物と、当該組成物を用いて遠心成形によりコンクリート製品を製造する方法の提供。
【解決手段】 結合材の量を基準として、側鎖にポリオキシアルキレン基(但し、アルキレン基の炭素数は2乃至4である)を有するポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で含有し、且つ、水を30重量%以上の量で含有することを特徴とする遠心成形用コンクリート組成物を用いる。また、当該組成物を遠心成形工程に供することを特徴とするコンクリート製品の製造方法を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心成形によってコンクリート製品を製造する際に使用されるコンクリート組成物と、当該組成物を用いて遠心成形によりコンクリート製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製品中、ヒューム管、パイル、ポール等は、遠心成形法によって製造されている。具体的には、セメント、水、骨材及び各種混和材や混和剤を含有し、予め練混ぜられたコンクリート組成物を、円筒形型枠に充填し、次いで遠心力を負荷する。このような遠心成形法では、遠心成形直後の成形品の構成は均一ではなく、概略、外側から順に、コンクリート層、モルタル層、ペースト層という構成となっている。この最内層のペースト層は、ノロ又はスラッジと呼称されている。
【0003】
スラッジは、遠心成形の際に水とセメントや骨材中の微粉とから生成される水スラリーであり、強アルカリ性である。スラッジは、成形後に管等の成形品の外に排出され、沈降分離や中和処理に供され、その後、固形分は産業廃棄物として処理されている。このため、スラッジの処理には多額の費用がかかっている。また、地球環境保護の観点からも、スラッジの廃棄量は極力低減されることが望ましい。
【0004】
また、コンクリートの製造に際しては、コンクリートの流動性の調節等の目的で減水剤を添加する。しかし、この減水剤、特にナフタレンスルホン酸系高性能減水剤を用いて遠心成形を行なうと、スラッジの量が多くなるとともに、製造されたコンクリート管の内面の締まりが悪くなる傾向にあり、そのために、遠心成形時間を長く取る必要があるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するため、特許文献1において、(メタ)アクリル酸(塩)と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(塩)との共重合体である減水剤と、ポリ(メタ)アクリルアミド部分加水分解物(塩)であるノロ固形分低減剤とを添加してなるコンクリートを用いて遠心成形を行なうことが提案された。特許文献1には、これら2種類の添加剤を使用することにより、ノロ中の固形分重量が低減され、また、内面仕上がり状態の良好なコンクリート管が得られたと記載されている。特許文献2には、(高性能)減水剤、α−オレフィンと不飽和カルボン酸の共重合体の金属塩及び凝結硬化促進剤を含有するノロの低減が可能なセメント組成物が記載されている。特許文献2には、このセメント組成物を用いると、スランプと強度が低下することなく排出されるノロの量を大幅に低減できると記載されている。
【0006】
しかし、これらの特許文献に記載された発明では、複数の添加剤を組み合わせて使用する必要があり、最適処方の決定が容易ではないと考えられる。また、特許文献1に記載の発明においては、減水剤を含有するコンクリート組成物を調製した後に、別途、例えばシャワーリングにより、ノロ固形分低減剤を添加しなくてはならないという作業上の問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開平5−306151
【特許文献2】特開平10−36159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、遠心成形の際の成形性やコンクリート製品の性能を損なうことなく、スラッジ発生量、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率を低減でき、且つ、最適な処方を容易に決定することができる遠心成形用コンクリート組成物と、当該組成物を用いて遠心成形によりコンクリート製品を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、第一の発明は、結合材の量を基準として、側鎖にポリオキシアルキレン基(但し、アルキレン基の炭素数は2乃至4である)を有するポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で含有し、且つ、水を30重量%以上の量で含有することを特徴とする遠心成形用コンクリート組成物に関する。
【0010】
また、第二の発明は、結合材の量を基準として、側鎖にポリオキシアルキレン基(但し、アルキレン基の炭素数は2乃至4である)を有するポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で含有し、且つ、水を30重量%以上の量で含有するコンクリート組成物を用いて遠心成形を行なうことを特徴とするコンクリート製品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、コンクリート製品の製造工程中、遠心成形の際の成形性や、コンクリート製品の性能を損なうことなく、スラッジ発生量、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率を低減することができるようになる。
【0012】
本発明により、遠心成形工程時間が短くても、締まりがよく、内面状態が良好なコンクリート製品が得られる。
【0013】
本発明のコンクリート組成物の処方は単純であるため、最適な処方を容易に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
第一の発明に係る遠心成形用コンクリート組成物は、必須成分として、セメント等の結合材、水、骨材、及び側鎖にポリオキシアルキレン基(但し、アルキレン基の炭素数は2乃至4である)を有するポリカルボン酸系減水剤を含有する。「側鎖にポリオキシアルキレン基を有するポリカルボン酸系減水剤」は、以下においては、「ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤」と呼称することがある。
【0016】
結合材とは、JIS A 0203において定義されているように、水と反応してコンクリートの強度発現に寄与する物質を生成するものを指す。その例としては、各種ポルトランドセメントを代表例とするセメント類、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカ質混合剤、ごみ焼却灰、下水汚泥等が挙げられる。
【0017】
骨材としては、この技術分野で通常用いられている細骨材や粗骨材が例示される。
【0018】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤は、不飽和カルボン酸(若しくはその塩又はエステル)単量体(I)のホモポリマー、又は、不飽和カルボン酸(若しくはその塩又はエステル)単量体(I)とこの単量体(I)と共重合可能な他の単量体(II)一種以上とのコポリマーであって、側鎖部分にポリオキシアルキレン基を有する減水剤又は高性能減水剤である。ここで、不飽和カルボン酸単量体(I)及び他の単量体(II)のエチレン性不飽和結合に由来する炭化水素鎖が主鎖であり、主鎖以外の部分が側鎖である。ポリオキシアルキレン基は、側鎖の水酸基にアルキレンオキシドを付加させることによって導入されたものである。なお、水酸基の定義には、アルコール又はフェノール性水酸基のみならず、カルボキシル基中の水酸基も含まれる。また、水酸基の水素原子が他の原子や基で置換され、塩又はエステルとなっていてもよい。
【0019】
不飽和カルボン酸単量体(I)の例としては、エチレン性不飽和結合を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、そのエステルとしては、低級(炭素数1乃至3程度)アルキルエステル等が挙げられる。なお、エステルを用いる場合、本発明に係るポリカルボン酸系減水剤の親水性が損なわれないように、全単量体中の10モル%以下の量で用いることが好ましい。
【0020】
他の単量体(II)の例としては、アリルアルコール、アリルアルコールのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アリルアルコールの低級(炭素数1乃至3程度)アルキルエステル、及びスチレン等が挙げられる。また、他の単量体(II)は、単量体(I)とは異なる不飽和カルボン酸(若しくはその塩又はエステル)単量体であってもよい。
【0021】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤の側鎖に存在するポリオキシアルキレン基におけるアルキレン基の炭素数は、2乃至4である。オキシアルキレン基は、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドに由来するものであることが好ましい。また、一個所の水酸基に付加されるアルキレンオキシドの数は、2乃至300個であることが好ましく、5乃至100個であることが更に好ましい。
【0022】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法でポリエチレングリコールに換算した分子量で、1,000乃至500,000であることが好ましく、3,000乃至300,000であることが更に好ましく、5,000乃至100,000であることが特に好ましい。
【0023】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤の化学式の例を示すと、以下のとおりである。
【0024】
【化1】

【0025】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤は、公知の重合方法、例えばラジカル重合法によって製造することができる。なお、ポリオキシアルキレン基は、予め単量体に結合されている。即ち、ポリオキシアルキレン基を有する単量体が、(共)重合に供される。
【0026】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤として、下記の方法で測定したときに、セメントに対する吸着量が全有機体炭素量として0.6mg/g−セメント以上のものを使用することが好ましい:
(減水剤のセメントに対する吸着量の測定方法)
(1)JIS R 5210に規定する普通ポルトランドセメント、水及び減水剤を、セメントの量を基準として、水が60重量%となる量で、また、減水剤は、その固形分量が0.2重量%となる量で用意する;
(2)これらの材料を、20℃にて練混ぜ、セメントペーストを調製する;
(3)練混ぜ開始から3分後に、セメントペーストを濾過し、液相を分取する;
(4)液相中の全有機体炭素量を測定し、その測定値からセメントに由来する全有機体炭素量(ブランク)を差し引く;
(5)添加した減水剤の全有機体炭素量から、(4)で算出されたセメントに吸着しなかった減水剤に由来する全有機体炭素量を差し引き、その値をセメントの重量で除する。
【0027】
なお、全有機体炭素量の測定は、全有機体炭素計を用いて行なえばよい。また、添加した減水剤の全量に対応する全有機炭素量や、前記普通ポルトランドセメントに由来する全有機体炭素量(ブランク)は、既知であればその値を使用することもできる。
【0028】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤の中、前記普通ポルトランドセメントに対する吸着量が全有機体炭素量として0.6mg/g−セメント以上のものを用いると、遠心成形を行なうことによって発生するスラッジの量、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率が著しく低減され、コンクリート管の内面の仕上がりがさらに良好となる。なお、ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤として、セメントに対する吸着量が全有機体炭素量として0.6乃至1.8mg/g−セメントのものが更に好ましい。
【0029】
第一の発明に係る遠心成形用コンクリート組成物は、ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤と水の量に特徴がある。即ち、結合材の量を基準として、ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で含有し、且つ、水を30重量%以上の量で含有する。
【0030】
ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤は、通常は水溶液で供給される。この水溶液中の固形分、即ち乾燥残渣が、減水剤の本体である有効成分である。本発明に係る遠心成形用コンクリート組成物においては、結合材の量を基準として、ポリエーテルポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で、好ましくは0.05乃至0.18重量%となる量で、さらに好ましくは0.06乃至0.17重量%となる量で、特に好ましくは0.06乃至0.15重量%となる量で使用する。
【0031】
第一の発明で使用するポリエーテルポリカルボン酸系減水剤は、セメント等の結合材への吸着力が適当であり、また、オキシアルキレン基を有するために親水性が高いので、コンクリート組成物からの水の滲出と、その水に伴われてのセメントや骨材中の微粉の排出を防止することができる。結合材に対する吸着力が強すぎる減水剤も弱すぎる減水剤も、遠心成形において、微粉を伴った水の排出を助長する。
【0032】
水は、結合材の量を基準として、30重量%以上の量、好ましくは32重量%以上の量で用いる。水の量が30重量%未満の配合処方の場合には、バサバサして十分な練混ぜができないことがあり、この問題を解決するためには、減水剤を増量する必要が生じる。なお、水の量の上限は、この技術分野で通常使用される量の上限値であり、特に限定されないが、おおよそ40重量%である。
【0033】
第一の発明の遠心成形用コンクリート組成物は、上記必須成分のほか、必要に応じ、また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分、例えば各種混和剤を含有していてもよい。
【0034】
第二の発明のコンクリート製品の製造方法は、第一の発明に係る遠心成形用コンクリート組成物を用いて遠心成形を行なうことに特徴がある。遠心成形は、より具体的には、例えば次のようにして行なう。
【0035】
先ず、常法により、結合材、水、骨材、及びポリエーテルポリカルボン酸系減水剤を練混ぜ、コンクリート組成物を調製する。当該組成物を円筒形型枠に充填し、遠心力を負荷する。遠心力は、回転速度を段階的に大きくすることによって段階的に大きくしてゆき、最大遠心力は、例えば30乃至40G程度である。また、総遠心時間は5乃至30分間程度である。次いで、遠心成形工程で滲出してきたスラッジを排出する。その後、必要に応じ、成形品の内表面が平滑となるように、手作業で仕上げ処理を行なう。この仕上げ処理の際にもスラッジが滲出してくるので、それも排出する。その後、水中養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等の方法で養生し、製品とする。
【0036】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0037】
以下の材料を用い、以下の配合処方でコンクリート組成物を調製し、それを用いて遠心成形を行なった。
【0038】
(使用材料)
結合材: 市販の普通ポルトランドセメント3銘柄の等量混合品、密度=3.15g/cm
細骨材: 大井川旧河川砂、密度=2.58g/cm
粗骨材: 青梅産砕石1505、密度=2.65g/cm
減水剤: 市販の次の5銘柄を使用
(a)スーパー200、グレースケミカルズ社製の側鎖にポリオキシエチレン基を有するポリエーテルポリカルボン酸系高性能減水剤、固形分含有量=18.5重量%、液状
(b)スーパー300CF、グレースケミカルズ社製の側鎖にポリオキシエチレン基を有するポリエーテルポリカルボン酸系高性能減水剤、固形分含有量=18.8重量%、液状
(c)レオビルド8000SS、BASFポゾリス社製の側鎖にポリオキシエチレン基を有するポリエーテルポリカルボン酸系高性能減水剤、固形分含有量=19.3重量%、液状
(d)ワーク500、日本ゼオン社製のポリオキシアルキレン基を有さないポリカルボン酸系高性能減水剤、固形分含有量=34.8重量%、液状
(e)マイティ150、花王社製のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系高性能減水剤、固形分含有量=40重量%、液状
(コンクリートの配合)
基本配合処方は、表1に記載のとおりである。
【0039】
【表1】

【0040】
また、減水剤の使用量は、表2に記載のとおりである。
【0041】
【表2】

【0042】
(コンクリートの製造)
上記の材料を、目標スランプ値=12±2.5cmのコンクリート配合処方(上記基本配合処方に減水剤を添加したもの)に従って計量し、強制二軸ミキサにてコンクリート量50リットルを練混ぜし、コンクリート組成物を調製した。コンクリート組成物の温度は21乃至22℃であった。
【0043】
また、これらの組成物を用いてスランプ(JIS A 1101)及び空気量(JIS A 1128)を測定した。その結果を表3に示す。表3から明らかなように、スランプはいずれも目標値を充足しており、空気量は適切であった。
【0044】
(遠心成形)
円筒形の遠心成形用型枠(内径:20cm;長さ:16cm)に7kgのコンクリート組成物を投入し、低速(2G)2分間、中速(10G)2分間、高速(30G)6分間の条件で遠心成形を行なった。
【0045】
各々のコンクリート組成物について、3個の遠心成形品を製造した。
【0046】
(スラッジ量の測定及び遠心成形品の評価)
遠心成形終了後、スラッジを排出させ、スラッジ発生量、スラッジ発生率、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率を測定、算出した。結果を表3に示す。なお、表3に示した値は、減水剤の種類が異なる各々のコンクリート組成物について、3個の遠心成形品について測定、算出した値の平均値である。
【0047】
また、遠心成形品の内面の仕上がり状態を観察し、その結果も表3に示した。
【0048】
【表3】

【0049】
表3から明らかなように、本発明のコンクリート組成物を用いると、スラッジ発生量、スラッジ発生率、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率の何れもが少なく、且つ、遠心成形後の内面の仕上がり状態も良好であった。
【0050】
比較例のコンクリート組成物、即ち、ポリオキシアルキレン基を有さないポリカルボン酸系高性能減水剤(ワーク500)やナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系高性能減水剤(マイティ150)を用いたものでは、スラッジ発生量、スラッジ発生率、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率の何れもが多く、且つ、遠心成形後の内面に、薄い柔らかい層が目立った。
【実施例2】
【0051】
実施例1で使用したポリエーテルポリカルボン酸系高性能減水剤3銘柄について、セメントに対する吸着量を測定し、吸着した全有機体炭素量で表した。具体的には、以下のようにして実験を行なった。結果を表4に示す。
【0052】
(減水剤のセメントに対する吸着量の測定方法)
(1)JIS R 5210に規定する普通ポルトランドセメント、水及び減水剤を、セメントの量を基準として、水が60重量%となる量で、また、減水剤は、その固形分量が0.2重量%となる量で用意する;
(2)これらの材料を、20℃にて練混ぜ、セメントペーストを調製する;
(3)練混ぜ開始から3分後に、セメントペーストを濾過し、液相を分取する;
(4−1)液相中の全有機体炭素量xを測定する;
(4−2)減水剤を用いないこと以外は同様の処理をして、液相中のセメントに由来する全有機体炭素量y(ブランク)を測定する;
(5)添加した減水剤の全量に対応する全有機体炭素量zから、セメントに吸着しなかった減水剤に由来する全有機体炭素量(x−y)を差し引き、その値(z−(x−y))をセメントの重量で除する。
【0053】
使用したセメントは、実施例1で結合材として用いたものと同様の、市販の普通ポルトランドセメント3銘柄の等量混合品(密度=3.15g/cm)であった。
【0054】
また、全有機炭素量の測定は、(株)島津製作所製の全有機体炭素計TOC−500を用いて行なった。
【0055】
セメントに添加した減水剤全量に対応する全有機体炭素量zも、全有機体炭素計で測定した。
【0056】
【表4】

【0057】
実施例1において、ポリエーテルポリカルボン酸系高性能減水剤3銘柄中、スーパー200を用いたときに、スラッジがやや多く、内面仕上がり状態も他の2銘柄に劣ったが、これは、他の2銘柄に比べ、スーパー200がセメントに対する吸着力が小さいためであることがわかった。
【実施例3】
【0058】
減水剤としてスーパー300CFを用い、その添加量を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表5に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
表5から明らかなように、本発明のコンクリート組成物を用いると、スラッジ発生量、スラッジ発生率、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率の何れもが少なく、且つ、遠心成形後の内面の仕上がり状態も良好であった。中でも、減水剤添加量が0.0658重量%のものと0.1128重量%のものは、スラッジ発生等が少なく且つ遠心成形後の内面の仕上がり状態が非常に良好で、バランスがよいといえる。
【0061】
これに対し、減水剤無添加の場合には、遠心成形後において、薄い柔らかい層が目立ち、ノロが十分に排出されなかった。また、減水剤の量が多すぎると、遠心成形の際に滲出してくる水の量が増すとともに、セメントや骨材中に含まれている微粉が水に分散され易くなるため、スラッジ発生量、スラッジ発生率、スラッジ固形分量及びスラッジ固形分率の何れもが多かった。
【0062】
なお、減水剤無添加の場合には、遠心成形の際に滲出してくる水に、セメントや骨材中に含まれている微粉が分散され難いため、減水剤を多量に使用した場合と比べ、スラッジ固形分量がやや少なくなっている。
【実施例4】
【0063】
減水剤としてスーパー300CFを用い、コンクリートの配合を表6に記載のものに変更したことと空気量の測定は行わなかったこと以外は、実施例1と同様に実験を行なった。結果を表7に示す。
【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
表7から明らかなように、水結合材比が30重量%以上の処方(S−1乃至S−3)では、遠心成形によって良好な製品が得られた。なお、水結合材比が30重量%以上であっても小さい値である場合(S−3)には、遠心成形後のコンクリート管の内面にごくわずかではあるがノロ層が生じた。これに対し、水結合材比が30重量%未満で本発明に規定する量の減水剤を使用した例(S−4)では、練混ぜたコンクリートはバサバサ状態で、且つ、遠心成形後の内面には未充填部分が見られた。そこで、水結合材比はあまり変化させずに、減水剤の量を増やして十分に練混ぜることができるようにしたところ(S−5)、非常に作業性が悪く、且つ、遠心成形後のコンクリート管の内面に薄いノロ層が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材の量を基準として、側鎖にポリオキシアルキレン基(但し、アルキレン基の炭素数は2乃至4である)を有するポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で含有し、且つ、水を30重量%以上の量で含有することを特徴とする遠心成形用コンクリート組成物。
【請求項2】
ポリカルボン酸系減水剤が、下記の方法で測定したときに、セメントに対する吸着量が全有機体炭素量として0.6mg/g−セメント以上のものである、請求項1に記載の遠心成形用コンクリート組成物:
(減水剤のセメントに対する吸着量の測定方法)
(1)JIS R 5210に規定する普通ポルトランドセメント、水及び減水剤を、セメントの量を基準として、水が60重量%となる量で、また、減水剤は、その固形分量が0.2重量%となる量で用意する;
(2)これらの材料を、20℃にて練混ぜ、セメントペーストを調製する;
(3)練混ぜ開始から3分後に、セメントペーストを濾過し、液相を分取する;
(4)液相中の全有機体炭素量を測定し、その測定値からセメントに由来する全有機体炭素量(ブランク)を差し引く;
(5)添加した減水剤の全有機体炭素量から、(4)で算出されたセメントに吸着しなかった減水剤に由来する全有機体炭素量を差し引き、その値をセメントの重量で除する。
【請求項3】
結合材の量を基準として、側鎖にポリオキシアルキレン基(但し、アルキレン基の炭素数は2乃至4である)を有するポリカルボン酸系減水剤を当該減水剤の固形分量が0.03乃至0.20重量%となる量で含有し、且つ、水を30重量%以上の量で含有するコンクリート組成物を用いて遠心成形を行なうことを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項4】
ポリカルボン酸系減水剤が、下記の方法で測定したときに、セメントに対する吸着量が全有機体炭素量として0.6mg/g−セメント以上のものである、請求項3に記載のコンクリート製品の製造方法:
(減水剤のセメントに対する吸着量の測定方法)
(1)JIS R 5210に規定する普通ポルトランドセメント、水及び減水剤を、セメントの量を基準として、水が60重量%となる量で、また、減水剤は、その固形分量が0.2重量%となる量で用意する;
(2)これらの材料を、20℃にて練混ぜ、セメントペーストを調製する;
(3)練混ぜ開始から3分後に、セメントペーストを濾過し、液相を分取する;
(4)液相中の全有機体炭素量を測定し、その測定値からセメントに由来する全有機体炭素量(ブランク)を差し引く;
(5)添加した減水剤の全有機体炭素量から、(4)で算出されたセメントに吸着しなかった減水剤に由来する全有機体炭素量を差し引き、その値をセメントの重量で除する。

【公開番号】特開2008−297185(P2008−297185A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147674(P2007−147674)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(591224331)グレースケミカルズ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】