説明

遠赤外線温熱器

【課題】身体のほとんどを局部的に温熱できるとともに、収納しやすいコンパクトな構造の遠赤外線温熱器を提供する。
【解決手段】遠赤外線を放射する面状の遠赤外線ヒータを備えた面状発熱体1の両側に回動自在に遠赤外線を反射する反射板2が面状発熱体側に折り畳み可能に枢着され、前記面状の遠赤外線ヒータが断熱板を介し合成樹脂板に取り付けられるとともに、前記面状の遠赤外線ヒータとの間に空気層を有する複数のドーム状の突起9を形成した遠赤外線を透過させる表側の合成樹脂板が重ねられている遠赤外線温熱器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕、足、腰、胸あるいは腰などに遠赤外線を照射して温熱することができる遠赤外線温熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線を身体に照射することにより温熱して体内温度を高めることにより冷え性を治療したりあるいはむくみを取ったりするなどの温熱治療に、面状ヒータを備えた遠赤外線温熱器が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アーチ状に湾曲成形したアルミニウム製フレーム材の湾曲内面にウレタン発泡材と、炭素繊維混抄紙からなり遠赤外線を放射する面状発熱体とを順に積層したアーチ状ヒータを備えた遠赤外線温熱器が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、略半円筒形の面状ヒータの内周全面において温度分布を略一定にすることが可能で、前記略半円筒形の焦点近傍に位置する使用者に遠赤外線を略均一に照射することができる面状ヒータを略半円筒形のカバーの内側に設けた遠赤外線温熱器が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、足裏からふくらはぎまでの脚部を広範囲に渡って温めることができて、冷え症等の施療効果を向上させ得る遠赤外線温熱器として、この遠赤外線温熱器は、少なくとも脚の足裏からふくらはぎ迄を覆う深さの側板と足部を載せ置く面積をもつ底板とからなる筐体と、該側板と底板の各内側に、シート状の遠赤外線ヒータを設けた遠赤外線温熱器が開示されている。
【特許文献1】特開平8−96935号公報
【特許文献2】特開2003−115363号公報
【特許文献3】特開2000−102555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1や2の遠赤外線温熱器は、身体が入る大きさのアーチ形をしているために、一方の手や足のみを集中的に温熱しようとする場合には、ヒータと被温熱部との間に大きな空間が形成されて温熱効果が得られにくい。また、大きさのアーチ形をしているために、持ち運びにくく、かつ広い収納スペースが必要となるという問題がある。また、積層体でアーチ形に形成する必要があるために、温熱器の構造やその製造が複雑となる問題がある。
【0007】
前記特許文献3の遠赤外線温熱器は、足とふくらはぎを温熱することができるだけであり、手、背中、腰などを局所的に温熱することができない欠点がある。また、筐体の側板と底板の各内側に、面ヒータを設けるため、構造が複雑となり、また、筐体であるため、ある程度の収納スペースが必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、身体のほとんどを局部的に温熱できるとともに、収納しやすいコンパクトな構造の遠赤外線温熱器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠赤外線温熱器は、遠赤外線を放射する面状の遠赤外線ヒータを備えた面状発熱体の両側に回動自在に遠赤外線を反射する反射板が面状発熱体側に折り畳み可能に枢着され、前記面状の遠赤外線ヒータが断熱板を介し合成樹脂板に取り付けられるとともに、前記面状の遠赤外線ヒータとの間に空気層を有する複数のドーム状の突起を形成した遠赤外線を透過させる表側の合成樹脂板が重ねられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は次のとおりである。
【0011】
(1)反射板を折り畳むことにより平らな形状にしてコンパクトにできるので、小さなスペースに収納することができる。
【0012】
(2)面状の遠赤外線ヒータとの間に空気層を有する複数のドーム状の突起を形成したことにより、広角度に遠赤外線を輻射することができるとともに、空気層により過熱を防止することができる。
【0013】
(3)反射板により、人体から輻射された遠赤外線を反射させるので、温熱効果を促進することができる。
【0014】
(4)遠赤外線を透過し、耐衝撃性、耐熱性に優れたポリカーボネイト板を使用することにより、遠赤外線を効率よく利用できるとともに、安全に利用することができる。
【0015】
(5)従来の全面にヒータを設ける温熱器に比べて、両側はヒータを設けることなく反射板にしているので、ヒンジ部に電気を供給する手段を設ける必要がないのでヒンジ部の構造が簡単であり、また、反射板により消費電力を抑えることもできる。
【0016】
(6)反射板の上縁に凹みを形成することにより、抱え込んで使用する際に、脇の下を支持し易くなり、楽な姿勢で温熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の遠赤外線温熱器を示し、(a)は反射板を開いた状態の正面図、(b)は同斜視図、図2は図1(a)のA−A断面図、図3は本発明の遠赤外線温熱器の反射板を閉じた状態を示す斜視図、図4は本発明の遠赤外線温熱器の使用状態の一例を示す図である。
【0019】
図1において、遠赤外線温熱器は、面状の遠赤外線ヒータ6を備えた面発熱体1と、この面発熱体1の両側にヒンジ3を介して折り畳み自在に枢着された反射板2から構成される。
【0020】
面発熱体1は、図2に示すように、裏側の合成樹脂板4と表側の合成樹脂板5の間に面状の遠赤外線ヒータ6が挟持されている。面状の遠赤外線ヒータ6には、周知のものを使用することができる。
【0021】
遠赤外線ヒータ6を挟持する合成樹脂板は、遠赤外線を透過する耐衝撃性、耐熱性に優れたものを使用し、本実施例では、ポリカーボネイト板を使用している。
【0022】
裏側のポリカーボネイト板4には、断熱材7を介して面状の遠赤外線ヒータ6が取り付けられる。断熱材7により裏側へ熱が逃げないようにする。
【0023】
遠赤外線ヒータ6に接する表側のポリカーボネイト板5には、間隔をおいて、遠赤外線ヒータ6との間に空気層8を有するドーム状の突起9を縦方向及び横方向に間隔をおいて複数形成する。空気層8を有するドーム状の突起9により、広角度に遠赤外線を輻射することができ、且つ空気層8により過熱を防止することができる。
【0024】
すなわち、遠赤外線ヒータ6としてカーボン面状発熱体を使用して遠赤外線を照射する場合、遠赤外線は熱量(温度)に応じて照射量が増すという特徴がある。遠赤外線の照射量を増すためには発熱体の温度設定を挙げる必要があるが、本発明の面発熱体1は人体と接触するため低温やけどなどを起こすおそれを加味しなければならないが、本発明の面発熱体1は突起9を設けることにより人体との間に空間が形成され、熱が人体へ過剰に伝わるのを防ぎ、人体にとって快適な温度を保つことができる。
【0025】
また、遠赤外線は光線の一種であり直進する性質を持つものであるが、表面の突起9により遠赤外線に微妙な屈折が生じ、多方向の照射が可能となる。表面が屈曲していること点も多方向への照射を促すこととなる。
【0026】
面発熱体1の上部には、温度や時間を制御するコントローラボックス10が配置され、温度、時間の設定ボタン、温度、時間の表示ランプ、スタート/ストップボタンが配置されている。使用者はこれらのボタンを操作して温熱温度、使用時間を調節することができる。
【0027】
面発熱体1の両側の反射板2は、鏡面仕上げした板13、例えばアルミ板が裏側のポリカーボネイト板11と表側の透明のポリカーボネイト板12の間に挟持されている。反射板2により、人体から輻射された遠赤外線が反射されて温熱効果を促進することができる。
【0028】
突起により反射板方向へ照射された遠赤外線は、鏡面加工された反射板2により跳ね返され、再度人体方向へ集中する。これにより、面発熱体1を中央部に設置するだけで遠赤外線を側面からも人体へ照射させることが可能となる。
【0029】
遠赤外線温熱器を収納する場合は、図2に示すように、両側の反射板2を面発熱体側に倒して畳むことにより平らにして厚みを小さく、コンパクトにすることができるので、小さなスペースに収納することができる。
【0030】
また、反射板2の上縁には凹み14を形成して、抱え込んで使用する際に、脇の下を支持し易くするようにしてもよい。
【0031】
次に、本発明の遠赤外線温熱器の使用方法について説明する。
【0032】
図4に示すように、下肢15を温熱する場合、折り畳まれた状態の反射板2を起こして、コ字形にして面発熱体1を反射板2で支持する。次いで、下肢15を反射板2の下に入れる。その後、コントローラ10の温度とタイマーをセットし、スタートボタンをONにして温熱を開始する。温熱終了後は、反射板2を面発熱体1側に倒して折り畳んで平らにして収納する。
【0033】
本発明の温熱器は、図4に示す下肢の温熱だけでなく、寝た状態で胸や腹に面発熱体を当てて温熱することができる。また、椅子に掛けてコ字形にした温熱器を立てて面発熱体をふくらはぎに当てたり、椅子の背もたれにコ字形にした温熱器を立て、反射板の上縁の凹みに脇の下を支持して面発熱体を腰にあてたりして温熱することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の遠赤外線温熱器を示し、(a)は反射板を開いた状態の正面図、(b)は同斜視図である。
【図2】図1(a)のA−A断面図である。
【図3】本発明の遠赤外線温熱器の反射板を閉じた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の遠赤外線温熱器の使用状態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1:面発熱体
2:反射板
3:ヒンジ
4:裏側の合成樹脂板(ポリカーボネイト板)
5:表側の合成樹脂板(ポリカーボネイト板)
6:遠赤外線ヒータ
7:断熱材
8:空気層
9:突起
10:コントローラボックス
11:裏側のポリカーボネイト板
12:表側のポリカーボネイト板
13:鏡面仕上げした板
14:凹み
15:下肢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外線を放射する面状の遠赤外線ヒータを備えた面状発熱体の両側に回動自在に遠赤外線を反射する反射板が面状発熱体側に折り畳み可能に枢着され、前記面状の遠赤外線ヒータが断熱板を介し合成樹脂板に取り付けられるとともに、前記面状の遠赤外線ヒータとの間に空気層を有する複数のドーム状の突起を形成した遠赤外線を透過させる表側の合成樹脂板が重ねられていることを特徴とする遠赤外線温熱器。
【請求項2】
前記表側の合成樹脂板が透明なポリカーボネイト板であることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線温熱器。
【請求項3】
反射板の上縁に脇の下を支持するための凹みが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の遠赤外線温熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−417(P2009−417A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166265(P2007−166265)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【特許番号】特許第4195489号(P4195489)
【特許公報発行日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000153225)株式会社NIKKEN (2)
【Fターム(参考)】